説明

紙幣投入部の防水構造、及び紙幣取扱装置

【課題】現状の操作性を維持しつつ、紙幣通過センサによる誤動作を低減した紙幣ガイドトレイを備えた紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】この紙幣投入部40は、紙幣を紙幣取扱装置17内部に導く紙幣投入口7と、紙幣投入口7に投入される紙幣下面をガイドする紙幣ガイドトレイ1と、紙幣ガイドトレイ1に形成された排水穴6と、排水穴6よりも紙幣投入方向下流側の紙幣ガイドトレイ1の底面に形成したセンサ設置穴2と、センサ設置穴2内に配置された紙幣通過センサ8と、センサ設置穴2の周縁に沿って紙幣ガイドトレイ1の底面に形成した段差凹陥部4と、段差凹陥部4内に嵌合配置されて紙幣通過センサ8上部の検知面を被覆する透明板3と、段差凹陥部4と排水穴6とを連通する溝部16と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば紙幣を入金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣投入部の改良に関し、特に紙幣投入口に装備した紙幣通過センサの検知部に浸入しようとする雨水を効果的に排出することができる紙幣投入部の防水構造、及び紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣処理装置は各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備されており、この紙幣処理装置には紙幣投入口に雨水が浸入することを防止するための防水構造が設けられている。
図4(a)は従来の紙幣処理装置の紙幣投入口にある紙幣投入部50の外観斜視図であり、図4(b)はその平面図である。図5は、紙幣投入部50を紙幣処理装置に装着した場合に、雨水による誤検知を説明するための断面図である。この紙幣投入部50は、紙幣を紙幣取扱装置17内部に導く紙幣投入口7と、紙幣投入口7に投入される紙幣下面をガイドする紙幣ガイドトレイ1と、紙幣ガイドトレイ1に形成された排水穴6と、排水穴6よりも紙幣投入方向下流側の紙幣ガイドトレイ1の底面に形成したセンサ設置穴2と、センサ設置穴2内に配置された紙幣通過センサ8(図示せず)と、センサ設置穴2の周縁に沿って紙幣ガイドトレイ1の底面に形成した段差凹陥部4と、段差凹陥部4内に嵌合配置されて紙幣通過センサ8上部の検知面を被覆する透明板3と、を備えて構成されている。雨水9は矢印Aのように紙幣処理装置の筐体表面を伝わってB部に溜り水滴10となる。更に雨水9が流れ込むと、重力に負けて水滴10は透明板3上に落下する。透明板3は親水性が大きいので、図6に示すように透明板3の表面に水の膜11を形成する。例えば、紙幣通過センサ8が反射型センサの場合、内部には、発光部12と受光部15があり、紙幣が挿入されない場合は、発光部12から出た光13は、透明板3により屈折して図の実線の光路を描く。このときは、受光部15には光が受光されないので、紙幣が挿入されていないと認識する。ところが、雨水9により透明板3の表面に水の膜11が形成されると、透明板3から出射した光は、点線のように更に屈折して散乱、或いは乱反射して光14となって受光部15に入射する場合がある。これにより、紙幣処理装置は紙幣が挿入されたものと判断して、紙幣を内部に搬送するモータを駆動してしまうといった誤動作が発生する。
また、従来技術として特許文献1には、紙幣挿入口から侵入した液物が紙幣識別装置を装着した機器の内部へ流れ込ませないようにした紙幣識別装置について開示されている。
【特許文献1】特許第3291704号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている従来技術は、紙幣挿入口から流し込まれた液物は、まず紙幣挿入口の底面を構成する傾斜面に形成された液物排出孔を介し紙幣識別装置の外部に迅速に排出され、また装置本体内に侵入した液物は、装置本体の底面下方に配設された液物収集部に一旦収集され、その後この液物収集部に連設された液物案内手段を介し紙幣識別装置が装着された機器の外部へ迅速に排出されるように構成されているため、外部からの液物の浸入を防ぐことはできるが、紙幣挿入口が狭くなり操作性が悪くなるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、センサ設置穴と排水穴を溝部により連通して、センサ設置穴を閉止する透明板上に形成された水の膜を溝部を介して排水穴に導いて水の膜を除去することにより、現状の操作性を維持しつつ、紙幣通過センサによる誤動作を低減した紙幣ガイドトレイを備えた紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、紙幣を紙幣取扱装置内部に導く紙幣投入口に投入される紙幣下面をガイドする紙幣ガイドトレイと、該紙幣ガイドトレイに形成された排水穴と、前記排水穴よりも紙幣投入方向下流側の紙幣ガイドトレイ底面に形成したセンサ設置穴と、を備えた紙幣投入部の防水構造であって、前記センサ設置穴と前記排水穴とを連通する溝部を備えたことを特徴とする。
外部から浸入する液体(例えば雨水)は、装置外部に露出配置された紙幣ガイドトレイに最も浸入し易い。紙幣ガイドトレイには、紙幣が挿入されたことを検知する紙幣通過センサに光を導くためのセンサ設置穴が備えられている。しかし、長時間に亘って雨水が吹きつけられると、徐々に紙幣ガイドトレイの隙間を伝わって雨水が内部に浸入し、水滴が生成されてセンサ設置穴に落下して、紙幣通過センサに水滴が付着する虞がある。そこで本発明では、センサ設置穴と排水穴を連通する溝部を紙幣ガイドトレイに構成して、その溝部を介してセンサ設置穴に付着した水滴を毛細管現象により吸水して排水穴に排水する。これにより、現状の操作性を維持しつつ、紙幣通過センサによる誤動作を低減することができる。
【0005】
請求項2は、前記センサ設置穴は、その周縁に沿って前記紙幣ガイドトレイ底面に形成した段差凹陥部を有しており、該段差凹陥部内に嵌合配置されて前記センサ設置穴を被覆する透明板を配置したことを特徴とする。
外部から浸入する液体(例えば雨水)は、装置外部に露出配置された紙幣ガイドトレイに最も浸入し易い。紙幣ガイドトレイには、紙幣が挿入されたことを検知する紙幣通過センサに光を導くためのセンサ設置穴が備えられている。このセンサ設置穴は、対向する位置に設けられた紙幣通過センサが設けられているので、表面に透明板(ガラス板)をはめ込んで雨水が浸入しないようにする。しかし、長時間に亘って雨水が吹きつけられると、徐々に紙幣ガイドトレイの隙間を伝わって雨水が内部に浸入し、水滴が生成されて透明板に落下する。透明板は親水性が強いため、表面に水の膜を形成する。これにより、光が散乱、或いは乱反射して紙幣通過センサが誤検知する虞がある。そこで本発明では、センサ設置穴と排水穴を連通する溝部を紙幣ガイドトレイに構成して、その溝部を介して透明板上の水の膜を毛細管現象により吸水して排水穴に排水する。これにより、現状の操作性を維持しつつ、紙幣通過センサによる誤動作を低減することができる。
【0006】
請求項3は、前記紙幣ガイドトレイを設定した状態において、前記透明板は前記排水穴より高い位置に配置されることを特徴とする。
液体は高い位置から低い位置に流れやすい。そこで本発明では、紙幣ガイドトレイを設定したときに、透明板が排水穴より高くなるように配置する。これにより、液体の排水をより容易にすることができる。
請求項4は、前記排水穴の形状は、非円形であることを特徴とする。
液体は表面張力により最小の形状になろうとする性質がある。即ち、最も表面積が小さい形は円形である。従って、排水穴が円形の場合は、液体により排水穴を塞いでしまう虞がある。そこで本発明では、排水穴を円形以外の形にする。これにより、排水穴に液体の膜を形成し難くすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、センサ設置穴と排水穴を連通する溝部を紙幣ガイドトレイに構成して、その溝部を介して透明板上の水の膜を吸水して排水穴に排水するので、現状の操作性を維持しつつ、紙幣通過センサによる誤動作を低減することができる。
また、紙幣ガイドトレイを設定したときに、透明板が排水穴より高くなるように配置するので、液体の排水をより容易にすることができる。
また、排水穴を円形以外の形にするので、排水穴に液体の膜を形成し難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1(a)は本発明の紙幣処理装置の紙幣投入口にある紙幣投入部の外観斜視図であり、図1(b)はその平面図である。尚、図5に示す紙幣処理装置に本発明の紙幣投入部40を装着した場合として説明し、同じ構成要素には図5と同じ参照番号を付して説明する。
この紙幣投入部40は、紙幣を紙幣取扱装置17内部に導く紙幣投入口7と、紙幣投入口7に投入される紙幣下面をガイドする紙幣ガイドトレイ1と、紙幣ガイドトレイ1に形成された排水穴6と、排水穴6よりも紙幣投入方向下流側の紙幣ガイドトレイ1の底面に形成したセンサ設置穴2と、センサ設置穴2内に配置された紙幣通過センサ8(図示せず)と、センサ設置穴2の周縁に沿って紙幣ガイドトレイ1の底面に形成した段差凹陥部4と、段差凹陥部4内に嵌合配置されて紙幣通過センサ8上部の検知面を被覆する透明板3と、段差凹陥部4と排水穴6とを連通する溝部16と、を備えて構成されている。
【0009】
即ち、紙幣ガイドトレイ1には、紙幣が挿入されたことを検知する紙幣通過センサ8に光を導くためのセンサ設置穴2が備えられている。このセンサ設置穴2は、対向する位置に設けられた紙幣通過センサ8を保護するために、表面に透明板(ガラス板)3がはめ込まれている。しかし、長時間に亘って雨水が吹きつけられると、雨水9は矢印Aのように紙幣処理装置の筐体表面を伝わってB部に溜り水滴10が生成されて透明板3に落下する。透明板3は親水性が強いため、表面に水の膜を形成する。これにより、光が散乱、或いは乱反射して紙幣通過センサ8が誤検知する虞がある。誤検知する動作については、図6で説明したので説明を省略する。そこで本発明では、センサ設置穴2と排水穴6を連通する溝部16を紙幣ガイドトレイ1に構成して、その溝部16を介して透明板3上の水の膜を吸水して排水穴6に排水する。これにより、現状の操作性を維持しつつ、紙幣通過センサによる誤動作を低減することができる。
【0010】
図2はセンサ設置穴2と排水穴6を連通する溝部16の構成を説明するための拡大図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。紙幣投入口に投入される紙幣下面をガイドする紙幣ガイドトレイ1に排水穴6を貫通して形成する。また、排水穴6よりも紙幣投入方向下流側の紙幣ガイドトレイ1の底面にセンサ設置穴2を形成し、センサ設置穴2の周縁に沿って紙幣ガイドトレイ1の底面に段差凹陥部4を形成する。そして、段差凹陥部4内に紙幣通過センサ8上部の検知面を被覆する透明板3を嵌合配置する。更に、段差凹陥部4と排水穴6とを連通する溝部16を紙幣ガイドトレイ1に形成する。このとき、溝部16は、透明板3上の液体を毛細管現象により吸水するように構成し、紙幣ガイドトレイ1を設定した状態において、透明板3は排水穴6より高い位置に配置されるのが好ましい。また、排水穴6の形状は、非円形であることがより好ましい。本実施形態では、U字型に形成しているが、非円形であれば他の形でもかまわない。尚、矢印Bは水滴が流れる方向を示している。
【0011】
即ち、透明板3上の水の膜を吸水するためには、溝部16を細くして、毛細管現象が起きやすい状態にする必要がある。これにより、簡単な構成で透明板3上の水の膜を吸水することができる。また、液体は高い位置から低い位置に流れやすいので、紙幣ガイドトレイ1を設定したときに、透明板3が排水穴6より高くなるように配置する。これにより、液体の排水をより容易にすることができる。また、液体は表面張力により最小の形状になろうとする性質がある。即ち、最も表面積が小さい形は円形である。従って、排水穴6が円形の場合は、液体により排水穴6を塞いでしまう虞がある。そこで本実施形態では、排水穴6を円形以外の形にする。これにより、排水穴6に液体の膜を形成し難くすることができる。
【0012】
図3は図2をA−A線で切断したときの断面図である。図3(a)は透明板3に水の膜11が付着していないときの図であり、図3(b)は透明板3に水の膜11が付着しているときの図である。図3では透明板3と段差凹陥部4に隙間があるように図示されているが、実際は完全に密着して、例えば、接着剤等により接着されている。また、透明板3の表面の高さは、少なくとも溝部16と同等か、溝部16より低く構成される。更に、前記したように、紙幣ガイドトレイ1を設定したときに、透明板3が排水穴6より高くなるように配置する。以上のように構成することにより、図3(b)に示すように、透明板3上に水の膜11が形成された場合、透明板3の端部aから溝部16の毛細管により水が吸引され、水11aが排水穴6から排水される。その結果、透明板3の表面に付着した水の膜11が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の紙幣処理装置の紙幣投入口にある紙幣投入部の外観斜視図であり、(b)はその平面図である。
【図2】センサ設置穴2と排水穴6を連通する溝部16の構成を説明するための拡大図である。
【図3】(a)(b)は図2をA−A線で切断したときの断面図である。
【図4】(a)は従来の紙幣処理装置の紙幣投入口にある紙幣投入部の外観斜視図であり、(b)はその正面図である。
【図5】紙幣投入部50を紙幣処理装置に装着した場合に、雨水による誤検知を説明するための断面図である。
【図6】誤検知する動作について説明する模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1 紙幣ガイドトレイ、2 センサ設置穴、3 透明板、4 段差凹陥部、5 リブ、6 排水穴、7 紙幣投入口、8 紙幣通過センサ、9 雨水、10 水滴、11 水の膜、12 発光部、13、14 光、15 受光部、16 溝部、17 紙幣処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を紙幣取扱装置内部に導く紙幣投入口に投入される紙幣下面をガイドする紙幣ガイドトレイと、該紙幣ガイドトレイに形成された排水穴と、前記排水穴よりも紙幣投入方向下流側の紙幣ガイドトレイ底面に形成したセンサ設置穴と、を備えた紙幣投入部の防水構造であって、
前記センサ設置穴と前記排水穴とを連通する溝部を備えたことを特徴とする紙幣投入部の防水構造。
【請求項2】
前記センサ設置穴は、その周縁に沿って前記紙幣ガイドトレイ底面に形成した段差凹陥部を有しており、該段差凹陥部内に嵌合配置されて前記センサ設置穴を被覆する透明板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の紙幣投入部の防水構造。
【請求項3】
前記紙幣ガイドトレイを設定した状態において、前記透明板は前記排水穴より高い位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙幣投入部の防水構造。
【請求項4】
前記排水穴の形状は、非円形であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の紙幣投入部の防水構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙幣投入部の防水構造を備えたことを特徴とする紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−92276(P2010−92276A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261786(P2008−261786)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】