説明

紙幣搬送装置

【課題】紙幣を搬送するベルトのずれを防止できる紙幣搬送装置を提供すること。
【解決手段】複数の遊技台1の配列を有する遊技島Aに設置され、遊技のために入金された紙幣Sを搬送する紙幣搬送装置7は、遊技島Aの長さ方向Xに沿って延びる搬送路レール10と、幅方向が上下方向を向くように搬送路レール10に掛け回された1本の無端状の縦置平ベルト13と、搬送路レール10に設けられ、縦置平ベルト13の下方側縁13Bを受ける下リブ54と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の遊技台の配列を有する遊技島に設置され、遊技のために入金された紙幣を搬送する紙幣搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ店等の遊技店には、複数の遊技台を配列することで構成され、遊技台の配列方向に沿って長手の遊技島が存在するところがある。遊技島における遊技台の背面側には、紙幣搬送装置が設けられている。紙幣搬送装置は、遊技のために入金された紙幣を、遊技島の端等に位置する紙幣回収庫まで搬送する。
紙幣搬送装置の一例として、下記特許文献1では、搬送装置が、遊技島の長さ方向における両端に設けられた1対のプーリと、これらのプーリに巻き掛けられたエンドレスの丸ベルトと、丸ベルトを挟持する押えプーリの対とを含んでいる。丸ベルトは、横から見て環状をなす軌跡で周回移動する。そして、遊技島において各遊技台の左隣または右隣には、紙幣識別機が設けられている。紙幣識別機に受け付けられた紙幣は、搬送装置において、周回移動する丸ベルトと押えプーリとに挟持された状態で、遊技島の端の料金収納箱まで搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2753567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の搬送装置では、紙幣搬送用の丸ベルトが1対のプーリ間において自重によって垂れ下がったり、メンテナンス時に店員が丸ベルトに不意に触れたりすることで、丸ベルトが定位置から部分的に下方へずれた状態で周回移動する場合が想定される。この場合、定位置から下方へずれた部分における丸ベルトは、紙幣に十分にグリップしにくくなるので、この部分において紙幣の搬送が滞り、結果として、この部分でジャムが発生しやすくなる。
【0005】
ジャムが発生すると、ジャムの解除に手間がかかる上に、ジャムの発生によって客から寄せられるクレームに対応しなければならなかったり、ジャム解除中に搬送装置の運転(換言すれば、紙幣識別機での入金受付)を停止することによって売上げにロスが生じたりするので、遊技店が被る負担が大きくなる。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、紙幣を搬送するベルトのずれを防止できる紙幣搬送装置を提供することを主たる目的とする。
【0006】
また、この発明は、紙幣を搬送するベルトのずれを矯正できる紙幣搬送装置を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、複数の遊技台の配列を有する遊技島に設置され、遊技のために入金された紙幣を搬送する紙幣搬送装置であって、遊技島の長さ方向に沿って延びる搬送路レールと、幅方向が上下方向を向くように前記搬送路レールに掛け回された1本の無端状の縦置平ベルトと、前記搬送路レールに設けられ、前記縦置平ベルトの下方側縁を受けるガイドリブと、を含むことを特徴とする、紙幣搬送装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記ガイドリブは、前記縦置平ベルトの表面よりも突出していることを特徴とする、請求項1記載の紙幣搬送装置である。
請求項3記載の発明は、前記縦置平ベルトの表面に対向配置され、前記縦置平ベルトを表面側から前記搬送路レールへ押し付ける押付部材を含むことを特徴とする、請求項2記載の紙幣搬送装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記押付部材は、回転自在なガイドローラを含むことを特徴とする、請求項3記載の紙幣搬送装置である。
請求項5記載の発明は、前記搬送路レールの長さ方向における少なくとも一端側には、前記縦置平ベルトを180°反転させるための支持ローラが備えられていて、前記支持ローラは、上下方向に延びる回転軸を有し、その回転軸の両端から軸方向中央へと向かうに従って外径が大きくなるクラウン形状を有することを特徴とする、請求項1記載の紙幣搬送装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、搬送路レールに設けられたガイドリブが縦置平ベルトの下方側縁を受けるので、この縦置平ベルトの下方へのずれを防止できる。
請求項2記載の発明によれば、縦置平ベルトがガイドリブを乗り越えて下方へずれることが困難になるので、縦置平ベルトの下方へのずれを効果的に防止できる。
仮に縦置平ベルトの下方側縁がガイドリブを乗り越えて下方へずれた場合、縦置平ベルトは、ガイドリブに被さった状態になっていて、この状態では、縦置平ベルトには、ガイドリブに接触した部分において、ずれる前の元の定位置へ戻ろうとする張力が作用している。これにより、縦置平ベルトを引き続き周回移動させれば、縦置平ベルトのずれを自動的に定位置まで矯正できる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、押付部材が縦置平ベルトを搬送路レールへ押し付けることで、縦置平ベルトが上下方向において位置決めされるので、縦置平ベルトの下方へのずれを一層効果的に防止できる。
また、仮に縦置平ベルトの下方側縁がガイドリブを乗り越えて下方へずれた場合、縦置平ベルトは、押付部材によってガイドリブへ強く押し付けられた状態になっているので、縦置平ベルトには、ガイドリブに接触した部分において、元の定位置へ戻ろうとする張力が、押付部材に押し付けられない場合よりも大きく作用している。これにより、縦置平ベルトが引き続き周回移動するのに伴って、縦置平ベルトのずれを効率的に定位置まで矯正できる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、押付部材が回転自在なので、縦置平ベルトの円滑な周回移動や紙幣の円滑な搬送が押付部材によって阻害されることを防止できる。
請求項5記載の発明によれば、縦置平ベルトには、支持ローラにおけるクラウン形状によって、クラウン形状の上下方向中央へ縦置平ベルトを寄せようとする力が作用しているので、縦置平ベルトにおいて少なくとも支持ローラに掛かっている部分は、上下にずれることはない。仮に他の部分(支持ローラに掛かっていない部分)で縦置平ベルトが上下のいずれにずれたとしても、縦置平ベルトが引き続き周回移動するのに伴って、当該部分が支持ローラを通過するときに、縦置平ベルトのずれを自動的に定位置まで矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、遊技店内において壁面から離れた位置にある1つの遊技島Aの模式的な平断面図である。
【図2】図2は、遊技店内において壁面沿いに配置された1つの遊技島Aの模式的な平断面図である。
【図3】図3は、紙幣搬送装置7の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、紙幣搬送装置7の縦断面図である。
【図5】図5は、支持ローラ21,28の斜視図である。
【図6】図6は、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の斜視図である。
【図7】図7は、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の縦断面図である。
【図8】図8(a)は、紙幣取込装置14の平断面図であり、図8(b)は、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の斜視図であって、紙幣取込装置14では内部構造だけを抜き出して示している。
【図9A】図9Aは、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の平断面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aとは別の構造の紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の平断面図である。
【図10A】図10Aは、カバー部材15の斜視図である。
【図10B】図10Bは、図10Aの場合よりも伸びた状態にあるカバー部材15の斜視図である。
【図11】図11は、カバー部材15の周辺における紙幣搬送装置7の縦断面図である。
【図12】図12(a)は、第1エンド部11の斜視図であり、図12(b)は、第1エンド部11の平断面図である。
【図13】図13(a)は、第2エンド部12の斜視図であり、図12(b)は、第2エンド部12の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1および図2は、遊技店における1つの遊技島Aの模式的な平断面図である。
図1を参照して、パチンコ店等の遊技店内には、パチンコ台などの遊技台1が複数配置されている。複数の遊技台1は、所定数毎にまとまって配列されていて、所定数の遊技台1のまとまりは、1つの遊技島Aを構成している。遊技店内には、遊技島Aが複数設けられている。
【0015】
1つの遊技島Aにおいて、この遊技島Aを構成する複数の遊技台1は、それぞれの正面1A(遊技客に臨む面)が略面一になるように(図1では左右方向)に配列されている。そのため、複数の遊技台1では、それぞれの背面1Bも略面一になるように並んでいる。遊技台1の配列方向は、遊技島Aの長さ方向Xである。
遊技島Aには、遊技店内において壁面(遊技店の内壁面)から離れた位置にある遊技島A(図1参照)と、遊技店内において壁面沿いに配置された遊技島A(図2参照)とがある。遊技店内において壁面から離れた位置にある遊技島Aでは、図1に示すように、2台の遊技台1が背中合わせで配置されて1つの組をなし、複数の組が、長さ方向Xに並んでいる。図2に示すように、遊技店内において壁面沿いに配置された遊技島Aでは、全ての遊技台1は、遊技店の壁Wに背面1Bを向けた状態で長さ方向Xに並んでいる。
【0016】
図1を参照して、各遊技島Aの長さ方向Xにおける両端面は、妻板(「島飾り」と称される接備品の場合もある。)2(図1でハッチングを付した部分)で覆われている。
そして、各遊技台1の左隣または右隣(図1では、遊技客が遊技台1を正面から見たときにおける遊技台1の左隣)には、長さ方向Xにおいて薄い板状の台間ユニット3が配置されている。各台間ユニット3は、その隣(図1では、正面から見て右隣)の遊技台1に対する専用機であり、遊技客から紙幣を受け付けることによって、対応する遊技台1で遊技するための遊技媒体(パチンコ玉等)を遊技客に貸し出す。各台間ユニット3は、長さ方向Xにおいて隣り合う遊技台1の間、または、長さ方向Xにおける遊技島Aの端に位置する遊技台1と妻板2との間に配置されている。各台間ユニット3の正面3Aは、隣り合う遊技台1の正面1Aと略面一になっている。台間ユニット3は、遊技台1とともに、遊技島Aを構成している。
【0017】
台間ユニット3の正面3Aには、紙幣投入口4が形成されている。紙幣投入口4は、正面から見て縦長のスリットである。台間ユニット3の内部には、紙幣投入口4から連続して台間ユニット3の背面3B側へ延びる受入路5が形成されている。受入路5は、台間ユニット3の背面3Bから露出されている。台間ユニット3の内部には、1対の受入ローラ6が互いに接触した状態で配置されている。受入ローラ6同士の接触部分は、受入路5内に位置している。
【0018】
遊技台1で遊技をしたい遊技客は、遊技をするために必要な紙幣Sを紙幣投入口4に投入することで入金する。紙幣投入口4に投入された紙幣Sは、1対の受入ローラ6の接触部分に進入する。これに伴い、1対の受入ローラ6が回転して紙幣Sを受入路5内に受け入れる。すると、台間ユニット3は、受け入れられた紙幣Sの金額の範囲内で貸し出し可能な数の遊技媒体を遊技客に貸し出す。具体的には、台間ユニット3は、貸し出す数の遊技媒体を遊技客に直接払い出したり、貸し出す数の遊技媒体を払い出すように遊技台1に対して指令を出したりする。ここで、受入ローラ6に限らず、紙幣Sを搬送する(後述する)全てのローラでは、紙幣Sに接触する部分は、紙幣Sによくグリップできるように、摩擦係数が比較的高い材料(ゴム等)で形成されている。
【0019】
遊技島Aには、遊技台1および台間ユニット3の他に、紙幣搬送装置7および回収庫8が設けられている。なお、回収庫8を紙幣搬送装置7の一部とみなしても構わない。
紙幣搬送装置7は、遊技台1での遊技のために台間ユニット3に入金される紙幣Sを搬送するための装置である。紙幣搬送装置7は、遊技島Aの長さ方向Xにおいて長手である。つまり、長さ方向Xは、紙幣搬送装置7の長さ方向でもある。紙幣搬送装置7の長さ方向Xにおける寸法は、遊技島Aの長さ方向Xにおける寸法と大体同じである。紙幣搬送装置7は、遊技島Aにおいて長さ方向Xに配列された複数の遊技台1の背面1Bに沿って配置されている。図1のように、遊技島Aにおいて背中合わせに配置された2つの遊技台1の組が長さ方向Xに並んでいる場合、紙幣搬送装置7は、背中合わせに配置された2つの遊技台1の間に配置されている。一方、壁面沿いに配置された遊技島Aの場合、紙幣搬送装置7は、全ての遊技台1の背面1Bと遊技店の壁Wとの間に配置されている(図2参照)。
【0020】
紙幣搬送装置7は、構成部材として、搬送路レール10と、第1エンド部11と、第2エンド部12と、1本の平ベルト13と、紙幣取込装置14と、カバー部材15と、調整ユニット16とを主に含んでいる。
まずは、これらの構成部材の概要と紙幣搬送装置7の動作とを説明してから、各構成部材の詳細を説明することにする。
【0021】
搬送路レール10は、長さ方向Xに沿って横方向(長さ方向Xと同じ)に延びる長手形状をなしている。搬送路レール10全体の長さ方向Xにおける寸法は、遊技島Aの長さ方向Xにおける寸法と大体同じである。搬送路レール10は、たとえば、アルミニウム等の金属を押出成形することで形成されている。搬送路レール10は、縦方向(図1の紙面に垂直な方向)および前記横方向(長さ方向X)に対する直交する方向(以下では、「直交方向」ということにし、図1における上下方向)においてやや薄い。搬送路レール10は、当該直交方向における一方側の面(一方側面)10Aと、他方側の面(他方側面)10Bとを備えている。一方側面10Aおよび他方側面10Bは、背中合わせに設けられていて、いずれも、縦方向(搬送路レール10の上下方向)に所定の幅を有している。
【0022】
搬送路レール10は、長さ方向Xにおいて、複数の分割レール17に分割されている。この実施形態では、搬送路レール10は、2つの分割レール17に分割されている。2つの分割レール17は、長さ方向Xに沿って並んでいて、図1における左側の分割レール17Aが、搬送路レール10のほとんどの部分を占めていて、図1における右側の分割レール17Bが、搬送路レール10の右端部をなしている。分割レール17Aと分割レール17Bとは、長さ方向Xにおいて間隔を隔てており、この間隔を埋めるように調整ユニット16(図1においてドットで塗り潰した部分)が配置されている。
【0023】
第1エンド部11は、分割レール17Bに対する分割レール17Aの反対側(図1における分割レール17Bの右側)に配置されていて、図1における右側の妻板2に取り付けられつつ、分割レール17Bに対して右側から着脱可能に連結されている。第1エンド部11は、縦長のブロック形状であり、その内部には、平面視で略U字状をなす反転路18が形成されている。反転路18は、第1エンド部11において分割レール17Bに対向する面(図1における左面)に、入口19と出口20とを有しており、図1では、平面視で、入口19から右側へ延び、その後、上側へUターンして出口20につながっている。
【0024】
第1エンド部11には、縦に延びる中心軸を有する円筒状または円柱状の支持ローラ21が内蔵されている。支持ローラ21は、その外周面が反転路18の湾曲部分の略全域に露出された状態で回転可能となるように第1エンド部11に支持されている。第1エンド部11が分割レール17Bに対して右側から連結されているので、支持ローラ21は、搬送路レール10の長さ方向Xにおける一端(右端)に設けられている。
【0025】
第2エンド部12は、分割レール17Aに対する分割レール17Bの反対側(図1における分割レール17Aの左側)に配置されていて、図1における左側の妻板2や回収庫8に取り付けられつつ、分割レール17Aに対して左側から着脱可能に連結されている。第2エンド部12は、縦長のブロック形状であり、その内部には、平面視で略U字状をなす反転路22が形成されている。反転路22は、第2エンド部12において分割レール17Aに対向する面(図1における右面)に、入口23と出口24とを有しており、図1では、平面視で、入口23から左側へ延び、その後、下側へUターンして出口24につながっている。さらに、第2エンド部12の内部には、長さ方向Xに沿って平行に延びる2本のスリット25が形成されている。これらのスリット25は、反転路22につながっているとともに、第2エンド部12において入口23および出口24が形成された面とは反対側の面(図1における左面)から露出されている。
【0026】
図1における上側のスリット25Aは、反転路22が入口23から左側へ延びた先にあり、スリット25Aと、反転路22においてスリット25Aにつながった部分から入口23までの間の部分とは、第1中継路26を構成している。図1における下側のスリット25Bは、反転路22が出口24から左側へ延びた先にあり、スリット25Bと、反転路22においてスリット25Bにつながった部分から出口24までの間の部分とは、第2中継路27を構成している。
【0027】
また、第2エンド部12には、縦に延びる中心軸を有する円筒状または円柱状の支持ローラ28が内蔵されている。支持ローラ28は、その外周面が反転路22の湾曲部分の略全域に露出された状態で回転可能となるように第2エンド部12に支持されている。第2エンド部12が分割レール17Aに対して左側から連結されているので、支持ローラ28は、搬送路レール10の長さ方向Xにおける他端(左端)に設けられている。紙幣搬送装置7には、モータ29(駆動手段)が設けられていて、このモータ29が駆動力を発生させると、支持ローラ28が回転する。モータ29は、たとえば、ACモータであって、回収庫8に設けられている。
【0028】
平ベルト13は、無端状の平ベルト(エンドレスベルト)であり、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bに沿った状態で、搬送路レール10に掛け回されている。詳しくは、平ベルト13は、搬送路レール10の右端の第1エンド部11の反転路18内に入り込んで、第1エンド部11の支持ローラ21に掛けられており、さらに、搬送路レール10の左端の第2エンド部12の反転路22内に入り込んで、第2エンド部12の支持ローラ28にも掛けられている。つまり、平ベルト13は、搬送路レール10に掛け回されているとともに、支持ローラ21,28間にも掛け回されている。この状態における平ベルト13には、所定のテンションが付与されていて、平ベルト13は、弛まないように、ある程度張っている。
【0029】
この状態の平ベルト13は、図1に示す平面視において、長さ方向Xに沿って細長い環状をなしていて、その幅(幅方向)が縦向きになるように、配置(縦置)されている(後述する図3および図4参照)。支持ローラ21,28間に掛け回された状態にある平ベルト13は、支持ローラ21,28間で長さ方向Xに沿って平行に延びる1対の直線部分13Aを含んでいる。紙幣搬送装置7では、丸ベルト等に比べて小プーリ径で駆動を伝達し易い平ベルト13を用いることによって、小径の支持ローラ21,28を用いることができる。これにより、紙幣搬送装置7全体の小型化を図ることができる。
【0030】
そして、平面視において、平ベルト13の内側に、搬送路レール10と、調整ユニット16と、第1エンド部11において反転路18より内側の部分と、第2エンド部12において反転路22より内側の部分とが位置している。前述したようにモータ29が駆動力を発生させることで支持ローラ28が回転すると、支持ローラ28が駆動ローラとなって支持ローラ21が従動ローラとなることで、平ベルト13が平面視で環状をなす軌跡で周回移動する。つまり、モータ29は、平ベルト13を周回移動させる。
【0031】
図1を参照して、平ベルト13は、平面視で反時計回りに周回移動する場合、第2エンド部12の出口24を始点とすると、出口24から搬送路レール10の一方側面10Aに沿って長さ方向X(図1では右側)に移動してから、第1エンド部11の入口19を経て反転路18内に進入する。平ベルト13は、反転路18内では支持ローラ21によって移動方向を180°反転され、その後、出口20から他方側面10Bに沿って長さ方向X(図1では左側)に移動して、第2エンド部12の入口23を経て反転路22内に進入する。平ベルト13は、反転路22内では支持ローラ28によって移動方向を180°反転され、その後、出口24に到る。このように長さ方向Xにおける両端の支持ローラ21,28が回転することによって、平ベルト13の移動方向が180°反転することから、平ベルト13を安定した状態で周回移動させることができる。
【0032】
ここで、紙幣搬送装置7には、制御マイコン(図示せず)が内蔵されたコントローラ30(切替手段)が備えられている。コントローラ30は、モータ29に対して電気的に接続されており、モータ29の回転方向を切り替える。コントローラ30には、遊技店の店員等のオペレータが操作できる図示しないスイッチ(たとえば、ディップスイッチ)が設けられており、このスイッチの操作に応じて、コントローラ30が、モータ29の回転方向を切り替える。これに応じて、平ベルト13の周回方向が、平面視で時計回り(図2参照)および反時計回り(図1参照)のいずれかに切り替えられる。
【0033】
図1を参照して、紙幣取込装置14は、台間ユニット3と同じ数だけ設けられている。紙幣取込装置14は、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bに対して、長さ方向Xにおける任意の位置に着脱可能である。搬送路レール10に装着された紙幣取込装置14は、長さ方向Xにおいて台間ユニット3と同じ位置に1つずつ配置されていて、各紙幣取込装置14は、対応する台間ユニット3の背面3Bに連結されている。搬送路レール10に装着された紙幣取込装置14は、平ベルト13の直線部分13Aを、縦方向および長さ方向Xの両方に直交する直交方向における外から部分的に覆っている。
【0034】
各紙幣取込装置14内には、誘導路31が形成されている。誘導路31は、対応する台間ユニット3の受入路5から連続しており、平ベルト13の周回方向における下流側へ湾曲して延びて、平ベルト13の直線部分13Aに臨んでいる。紙幣取込装置14には、ガイドローラ32(押付部材)と、1対の取込ローラ33とが設けられている。ガイドローラ32は、平面視で円形状であって、その外周面の一部が平ベルト13の直線部分13Aに接触するように紙幣取込装置14から部分的に露出されており、この状態で回転自在である。1対の取込ローラ33は、互いに接触した状態で、誘導路31内に臨んでいて、これらの取込ローラ33の接触部分は、誘導路31内に位置している。
【0035】
カバー部材15は、板状であって、複数枚設けられている。各カバー部材15は、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれにおいて紙幣取込装置14が取り付けられていない部分に対して着脱可能である。カバー部材15は、長さ方向Xにおいて隣り合う台間ユニット3の間、または、遊技台1を1台挟んで妻板2に対向する台間ユニット3と妻板2との間に、1枚または複数枚設けられている。搬送路レール10に装着されたカバー部材15は、平ベルト13の直線部分13Aにおいて紙幣取込装置14に覆われていないほぼ全ての部分を直交方向における外から覆っている。この状態で、平ベルト13の直線部分13Aは、搬送路レール10とカバー部材15との間、または、搬送路レール10と紙幣取込装置14との間に配置されている。
【0036】
カバー部材15において平ベルト13の直線部分13Aに対向する面には、複数のガイドローラ39(押付部材)が設けられている。ガイドローラ39は、前述した紙幣取込装置14のガイドローラ32とほぼ同じ形状であり、その外周面の一部が平ベルト13の直線部分13Aに接触するようにカバー部材15から部分的に露出されており、この状態で回転自在である。
【0037】
紙幣取込装置14のガイドローラ32と複数のガイドローラ39とは、長さ方向Xにおいて、所定の間隔を隔てて並んで配置されている。当該所定の間隔は、紙幣Sの長手方向寸法よりも短い間隔である。
そして、このように搬送路レール10に装着された紙幣取込装置14およびカバー部材15と、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれとの間には、長さ方向Xにおける全域に亘って隙間が確保されている。この隙間と、第1エンド部11の反転路18とがつながっていて、これらのまとまりが、紙幣Sの搬送路34を構成している。搬送路34は、平面視で、長さ方向Xにおいて長手のU字状をなしている。具体的に、搬送路34は、搬送路レール10の一方側面10Aに沿って長さ方向Xに延び、第1エンド部11の反転路18でUターンしてから、他方側面10Bに沿って長さ方向Xに延びている。第2エンド部12の反転路22の入口23とU字状の搬送路34の一端(図1における左上端)とがつながっていて、第2エンド部12の反転路22の出口24とU字状の搬送路34の他端(図1における左下端)とがつながっている。これにより、搬送路34と反転路22とのまとまりは、長さ方向Xにおいて長手の環状をなしており、この環状部分に、平ベルト13が配置されている。また、各紙幣取込装置14の誘導路31は、搬送路34につながっている。
【0038】
調整ユニット16は、分割レール17Aと分割レール17Bとの間に配置され、分割レール17に連結されている。この状態で、調整ユニット16全体は、平ベルト13における1対の直線部分13Aの間に配置されている。調整ユニット16は、平ベルト13の直線部分13Aに沿って(換言すれば、長さ方向Xに沿って)伸縮することによって搬送路レール10の長さを調整できる。また、調整ユニット16は、このように伸縮することで支持ローラ21,28間の距離を調整し、これにより、支持ローラ21,28間に掛け回された平ベルト13のテンションを調整することもできる。
【0039】
回収庫8は、長さ方向Xにおける遊技島Aの端(図1では左端)の妻板2に設けられている。回収庫8は、搬送路レール10の端の第2エンド部12に連結されている。回収庫8において第2エンド部12に連結される端面(図1における右端面)には、回収口35が形成されている。回収庫8の内部には、回収室36と、回収路37とが設けられている。回収室36は、多数の紙幣Sを収容し得る広さを有する空間である。回収路37は、回収口35と回収室36とを連通させている。回収庫8の内部において、たとえば回収口35の近傍には、1対の回収ローラ38が互いに接触した状態で配置されている。1対の回収ローラ38のそれぞれは、回収路37内に臨んでいて、これらの回収ローラ38の接触部分は、回収路37内に位置している。
【0040】
図1では、平ベルト13は、平面視で反時計回りに周回移動する。搬送路34内で搬送される紙幣Sの搬送方向は、平ベルト13の周回方向と一致する。この場合、搬送路34では、図1における左下端が、紙幣Sの搬送方向における上流側端であり、図1における左上端が、紙幣Sの搬送方向における下流側端である。図1では、第2エンド部12において、前述した第1中継路26が、前述した搬送路34の下流側端(左上端)につながって、回収庫8まで延びており、回収口35を介して、回収路37および回収室36に連通している。一方、第2エンド部12において、前述した第2中継路27は、前述した搬送路34の上流側端(左下端)につながって、回収庫8まで延びているが、その先は回収庫8の壁面で塞がれており、回収口35、回収路37および回収室36に連通していない。
【0041】
次に、図1において下側で並ぶ台間ユニット3における左から2番目の台間ユニット3と、上側で並ぶ台間ユニット3における右から3番目の台間ユニット3とを参照して、遊技島Aにおける紙幣Sの流れを説明する。図1において、太い実線矢印が、支持ローラ21,28の回転方向および平ベルト13の周回方向を示しており、太い破線矢印が、紙幣Sの流れを示している(図2においても同様)。
【0042】
まず、前述したように遊技客が紙幣Sを台間ユニット3の紙幣投入口4に投入すると、紙幣投入口4に投入された紙幣Sは、1対の受入ローラ6の接触部分に進入し、回転する1対の受入ローラ6によって受入路5内に受け入れられる。受入路5内に受け入れられた紙幣Sの先端は、紙幣取込装置14における1対の取込ローラ33の接触部分に進入する。この状態で、受入ローラ6の回転が停止することで、紙幣Sの搬送が一時停止する。この際、台間ユニット3は、受け入れた紙幣Sの真贋等を識別している。また、台間ユニット3は、紙幣Sの識別終了後においても、搬送路34における紙幣Sの重送を防止する等の目的のために、所定のタイミングになるまで紙幣Sの搬送を一時停止することがある。このように受入ローラ6の回転が停止している間では、1対の取込ローラ33は、回転しているのだが、受入ローラ6による紙幣Sのグリップ力が、取込ローラ33による紙幣Sのグリップ力よりも強いので、各取込ローラ33は空転状態にある。
【0043】
そして、遊技客への遊技媒体の貸し出しが完了したのに応じて、1対の受入ローラ6が回転する。これにより、今まで搬送が一時停止されていた紙幣Sが、回転する受入ローラ6および取込ローラ33によって紙幣取込装置14の誘導路31内に取り込まれる。この紙幣Sは、取込ローラ33によって誘導路31内を搬送されて、搬送路34内へと押し出される。
【0044】
搬送路34内に配置されている平ベルト13は、紙幣Sが搬送路34内に進入するときには、周回移動を開始している。搬送路34内に進入した紙幣Sは、周回移動する平ベルト13の直線部分13Aに引っ張られることで、平ベルト13の周回方向(図1では正面視で反時計回り)に沿って搬送路34内を搬送される。この際、紙幣Sは、周回移動する平ベルト13と、平ベルト13の外周面に対向する各ガイドローラ32,39に挟持された状態で搬送される。なお、平ベルト13は、常に周回移動し続けていてもよい。
【0045】
ここで、図1において下側で並ぶ台間ユニット3における左から2番目の台間ユニット3で受け入られた紙幣Sは、搬送路34内に進入してから、平ベルト13において図1における下側の直線部分13Aによって、長さ方向Xに沿いながら、回収庫8から一旦離れる方向(図1における右側)へ搬送される。
そして、搬送路34の右端まで到達した紙幣Sは、第1エンド部12の入口19から反転路18内に進入する。紙幣Sは、反転路18内を搬送されることでUターンする。そして、この紙幣Sは、反転路18の出口20から出ると、今度は、平ベルト13において図1における上側の直線部分13Aによって、長さ方向Xに沿いながら、回収庫8へ近付く方向(図1における左側)へ搬送される。
【0046】
一方、図1において上側で並ぶ台間ユニット3における右から3番目の台間ユニット3で受け入られた紙幣Sは、搬送路34内に進入してから、図1における上側の直線部分13Aによって、長さ方向Xに沿いながら、回収庫8へ近づく方向へ直ちに搬送される。
なお、台間ユニット3から搬送路34への紙幣Sの取込タイミングに関し、搬送路34内において紙幣Sを重送することに問題がなければ、取込タイミングに特に制限はないが、たとえば、回収庫8側で紙幣Sを1枚ずつ識別する処理等を行う場合には、紙幣Sを重送しないように取込タイミングを制御する必要がある。
【0047】
そして、図1における上側の直線部分13Aによって、搬送路34内を長さ方向Xに沿って搬送された紙幣Sは、搬送路34の下流側端(図1における左上端)において、第2エンド部12の入口23から反転路22内に進入する。つまり、第2エンド部12は、搬送路34で搬送された紙幣Sを受け付けている。第2エンド部12に受け付けられた紙幣Sは、反転路22から第1中継路26を通って、回収庫8の回収口35に進入する。なお、第1中継路26の紙幣Sが反転路22を引き続き流れて出口24から出てくることはない。
【0048】
第1中継路26を通って回収口35に進入した紙幣Sは、1対の回収ローラ38の接触部分に進入し、回転する1対の回収ローラ38によって回収路37内に受け入れられる。回収路37内を通過した紙幣Sは、回収室36内に溜められる。つまり、第2エンド部12に受け付けられた紙幣Sは、最終的には、回収庫8に回収される。
回収室36内に溜められた紙幣Sは、所定のタイミングに遊技店の店員によって取り出されて、遊技店の事務所等に配置された金庫に保管される。
【0049】
このように、この紙幣搬送装置7では、1本の平ベルト13を支持ローラ21,28に掛け回し、平ベルト13とガイドローラ32,39との間で紙幣Sを挟持しながら搬送する。この場合、遊技島Aにおいて紙幣Sを搬送するために必要なベルトは、1本の平ベルト13だけで済み、この平ベルト13を周回移動させるモータ29も1つで済む。そのため、紙幣搬送装置7をシンプルに構成でき、少ない工数で容易に組立および設置することができる。これにより、紙幣搬送装置7にかかるコストの低減を図ることができる。
【0050】
ここで、メンテナンスの際、遊技台1を取り外した後、紙幣取込装置14やカバー部材15を搬送路レール10から取り外せば、平ベルト13が露出される。たとえば、平ベルト13において紙幣Sのジャムが生じれば、このように平ベルト13を露出させることで、ジャム解除が可能になる。ジャム解除後、取り外された紙幣取込装置14やカバー部材15は、搬送路レール10に対して再び装着される。図1に示すように壁面から離れた位置にある遊技島Aでは、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれの側からでも、紙幣取込装置14やカバー部材15を搬送路レール10に対して着脱できる。そのため、一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれの側においてジャムが発生しても、このジャムを容易に解除できる。
【0051】
しかし、図2に示すように遊技店内の壁面に沿って設置されている遊技島Aでは、一方側面10Aおよび他方側面10Bのうち壁面側の側面(図2では他方側面10B)は、壁Wに隣接しているので、この状態で、他方側面10Bに対して紙幣取込装置14やカバー部材15を着脱することは大変困難である。そのため、一方側面10Aおよび他方側面10Bのうち壁面側でジャムが発生しても、このジャムを容易に解除できない。
【0052】
そこで、この紙幣搬送装置7では、前述したように、コントローラ30によって平ベルト13の周回方向を切り替えることができるので、遊技島Aへの紙幣搬送装置7の設置時に、平ベルト13の周回方向を、平面視で反時計回り(図1参照)から時計回り(図2参照)に切り替えておく。
具体的には、平ベルト13が、壁際(壁Wの壁面)に沿って移動してから支持ローラ21で反転し、その後、壁際よりも遊技台1側(壁際から離れた側)で移動しながら台間ユニット3から紙幣Sを受け取って搬送するように、平ベルト13の周回方向を時計回りに切り替えておく。すると、紙幣Sのジャムは、仮に発生したとしても、壁際(搬送路レール10の他方側面10B側)でなく、壁際よりもアクセスしやすい遊技台1側(搬送路レール10の一方側面10A側)で生じるので、一方側面10A側の紙幣取込装置14やカバー部材15を取り外すことで、円滑にジャムを解消できる。つまり、平ベルト13の周回方向を切り替えることによって、壁面側でジャムが発生しないようにすることができる。
【0053】
また、ジャムの発生とは無関係だが、この紙幣搬送装置7では、遊技島Aを構成する遊技台1の種類(パチンコ台かメダル台)に応じて平ベルト13の周回方向を切り替えたい状況が生じても、その状況に応じて平ベルト13の周回方向を適宜切り替えることが可能となる。
このように、周回移動するベルトで紙幣Sを搬送する構成において使い勝手の向上を図ることができる。
【0054】
次に、紙幣搬送装置7の構成部材の詳細について説明する。
図3は、紙幣搬送装置7の模式的な斜視図である。
図3では、搬送路レール10、第1エンド部11、第2エンド部12、平ベルト13、紙幣取込装置14、カバー部材15、モータ29、および、第1エンド部11側の妻板2が図示されているが、調整ユニット16(図1参照)の図示が省略されている。また、前述した長さ方向Xおよび高さ方向(縦方向)の両方に直交する直交方向から見て、搬送路レール10において図3における紙面手前側に露出されている側面を、前述した一方側面10Aとする。図3では、説明の便宜上、一方側面10Aにおいて第2エンド部12側に偏った領域だけに、紙幣取込装置14およびカバー部材15が取り付けられている。
【0055】
以下では、搬送路レール10、紙幣取込装置14、カバー部材15、第1エンド部11および第2エンド部12のそれぞれの詳細について、この順番で個別に説明する。
<搬送路レール>
図4は、紙幣搬送装置7の縦断面図である。
図4を参照して、長さ方向Xに直交する平坦面で切断したときの搬送路レール10の断面は、ハッチングで示すように、略I字形状になっている。なお、以下で、「断面」という場合には、特に断りがある場合を除き、長さ方向Xに直交する平坦面で切断したときの縦断面のことを指す。
【0056】
搬送路レール10は、長さ方向X(図4における紙面に垂直な方向)に長手で高さ方向に細長い中空の板状をなしている(図3参照)。図4では、搬送路レール10の上下方向中央を通って水平に延びる水平基準線Pが図示されているとともに、搬送路レール10の直交方向(図4での左右方向)中央を通って垂直に延びる垂直基準線Qが図示されている。水平基準線Pと垂直基準線Qとの交点が、搬送路レール10の芯Rである。芯Rは、搬送路34全体および紙幣搬送装置7全体のそれぞれについての上下方向および直交方向における中心(「搬送芯」ともいう)でもある。そのため、水平基準線Pは、搬送路34全体および紙幣搬送装置7全体のそれぞれの上下方向中央を通っていて、垂直基準線Qは、搬送路34全体および紙幣搬送装置7全体のそれぞれの直交方向中央を通っている。
【0057】
搬送路レール10の上端部10Cの断面は、高さ方向に扁平な略U字形状をなしていて、搬送路レール10の下端部10Dの断面は、高さ方向に扁平で上下が逆になった略U字形状をなしている。上端部10Cおよび下端部10Dのそれぞれの断面形状はほぼ同じ大きさである。上端部10Cおよび下端部10Dのそれぞれの前記直交方向における一方側(図4における右側)の側面は、一方側面10Aに含まれていて、上端部10Cおよび下端部10Dのそれぞれの前記直交方向における他方側(図4における左側)の側面は、他方側面10Bに含まれている。
【0058】
一方側面10Aおよび他方側面10Bの両方において、上端部10Cの下隣の部分は、上端部10C程ではないものの、前記直交方向(図4における左右方向)における外側へ突出している。当該突出部分10Eの断面は、矩形額縁状である。一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれにおける突出部分10Eにおいて、前記直交方向における最も外側の面には、長さ方向Xに沿って筋状に延びつつ突出部分10Eの内部に連通する挿通溝50が形成されている。
【0059】
一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれにおいて、高さ方向における中央部には、案内路51が形成されている。案内路51は、案内面52、上リブ53および下リブ54(ガイドリブ)を含んでいる。案内面52は、一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれから直交方向における外側へ若干突出していて、高さ方向に沿って延びている。案内面52の高さ方向寸法は、平ベルト13の高さ方向における幅よりも大きい。案内面52には、断面が略三角形状の比較的浅い複数の溝52Aが、長さ方向Xに延びつつ、上下に等間隔で並んで形成されている。上リブ53は、案内面52の上端に設けられていて、直交方向における外側へ案内面52よりも僅かに突出しつつ、長さ方向Xに沿って延びている。下リブ54は、案内面52の下端に対して若干の隙間を隔てた下隣に設けられていて、直交方向における外側へ上リブ53よりも突出しつつ、長さ方向Xに沿って延びている。
【0060】
このような案内路51は、一方側面10Aおよび他方側面10Bの一部をなしている。また、案内路51は、直交方向から見て、上下対称形状になっている。そのため、水平基準線Pから案内面52の上端までの高さ寸法と、水平基準線Pから案内面52の下端までの高さ寸法とが等しく、溝52Aが、水平基準線Pの上下で同じ数だけ設けられている。また、上リブ53および下リブ54は、水平基準線Pを基準として上下対称となる位置にある。
【0061】
一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれにおいて、水平基準線Pを基準として突出部分10Eの下端部と上下対称となる位置には、直交方向外側へ突出しつつ長さ方向Xに延びる横リブ55が一体的に設けられている。横リブ55は、搬送路レール10の下端部10Dに対して、突出部分10Eの高さ方向寸法分だけ上側に位置している。横リブ55の直交方向への突出量は、突出部分10Eの直交方向における突出量とほぼ同じである。
【0062】
搬送路レール10では、一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれにおいて、水平基準線Pを基準として、上端部10Cと下端部10Dとが上下対称形状であり、案内路51が上下対称形状であり、突出部分10Eと横リブ55とが上下対称の位置にある。そのため、一方側面10Aおよび他方側面10Bは、高さ方向に上下対称の形状になっている。
【0063】
これにより、搬送路レール10は、上下を逆にしても用いることができるので、上下の向きを気にせずに搬送路レール10を設置できて使い勝手が良い。
また、一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれにおいて、突出部分10E同士が高さ方向で同じ位置にあり、案内路51同士が高さ方向で同じ位置にあり、横リブ55同士が高さ方向で同じ位置にあるので、一方側面10Aおよび他方側面10Bは、垂直基準線Q(換言すれば、前述した芯R)を基準に直交方向(左右方向)に対称の形状にもなっている。そのため、一方側面10Aおよび他方側面10Bの向きを気にせずに搬送路レール10を設置できて使い勝手が良い。
【0064】
このように一方側面10Aおよび他方側面10Bが上下対称かつ左右対称の形状になるように、搬送路レール10の断面形状全体が上下対称かつ左右対称の形状になっている。
そして、一方側面10Aおよび他方側面10Bのそれぞれでは、周回移動する平ベルト13が案内路51によって案内される。
詳しくは、平ベルト13は、案内路51において、高さ方向における上リブ53と下リブ54との間に配置されている。このとき、直交方向において、上リブ53の先端は、平ベルト13の裏面(一方側面10Aまたは他方側面10Bに対向する内周面)13Cとほぼ同じ位置にあるが、下リブ54は、平ベルト13の表面(外周面)13Dよりも外側へ突出している。そのため、平ベルト13が自重等によって下側へ垂れ下がろうとしても、下リブ54が平ベルト13の下方側縁(下端縁)13Bを下から受け止めるので、平ベルト13が下方へずれて案内路51から外れることが防止されている。よって、一方側面10Aおよび他方側面10Bの両方に設けられた下リブ54によって平ベルト13のずれ落ちが防止されているので、平ベルト13を安定した状態で周回移動させることができる。
特に、平ベルト13が、その表面13Dよりも突出した下リブ54を乗り越えて下方へずれることは困難なので、平ベルト13の下方へのずれを効果的に防止できる。
【0065】
このように、平ベルト13は、下方へずれないように上リブ53と下リブ54との間の定位置に位置決めされつつ、案内面52に接触しながら周回移動する。この際、案内面52に溝52Aが設けられていることから、平ベルト13の裏面13Cと案内面52と間に溝52A分の隙間が確保されているので、平ベルト13は、案内面52に密着することなく、円滑に周回移動することができる。
【0066】
仮に、店員がメンテナンスのために、前述したようにカバー部材15や紙幣取込装置14を取り外した際に平ベルト13に触れることで、平ベルト13の下方側縁13Bが下リブ54を乗り越えて下方へずれることが考えられる。定位置から下方へずれた平ベルト13は、下リブ54に被さった状態になっていて、この状態では、平ベルト13には、下リブ54に接触した部分において、ずれる前の元の定位置へ戻ろうとする張力が作用している。これにより、平ベルト13を引き続き周回移動させれば、平ベルト13のずれを自動的に定位置まで矯正できる。
【0067】
ここで、前述した各カバー部材15のガイドローラ39や各紙幣取込装置14のガイドローラ32(図1参照)が、平ベルト13の表面13Dに対して外側から対向配置されていて、平ベルト13を表面13D側から搬送路レール10へ常に押し付けている。これにより、平ベルト13が上下方向において位置決めされるので、平ベルト13の下方へのずれを一層効果的に防止できる。
【0068】
また、前述したように平ベルト13の下方側縁13Bが下リブ54を乗り越えて下方へずれてしまった場合には、平ベルト13は、ガイドローラ32,39によって下リブ54に強く押し付けられた状態になっている。この状態の平ベルト13には、下リブ54に接触した部分において、元の定位置へ戻ろうとする張力が、ガイドローラ32,39に押し付けられない場合よりも大きく作用している。これにより、平ベルト13が引き続き周回移動するのに伴って、縦置平ベルト13のずれを効率的に定位置まで矯正できる。
【0069】
ここで、ガイドローラ32,39が回転自在なので、縦置平ベルト13の円滑な周回移動や紙幣Sの円滑な搬送がガイドローラ32,39によって阻害されることを防止できる。
たとえば、平ベルト13の幅(高さ方向における寸法)が30mmであって、軸方向(高さ方向)の長さが15mmのガイドローラ32,39が平ベルト13の幅方向中央を押し付けている場合において、平ベルト13のずれを防止したり矯正したりする下リブ54は、直交方向において平ベルト13の表面13Dよりも外側へ0.3mm〜0.5mm程度突出しているのが好ましい。なお、ガイドローラ32,39が軸方向に長過ぎると、ガイドローラ32,39の下端が紙幣Sを下リブ54の根元側へ抑え付けることで紙幣Sに段付きが生じてしまい、この段付きが紙幣搬送の妨げとなるので、この段付きが生じないように、ガイドローラ32,39の軸方向長さが短めに設定される。
【0070】
図5は、支持ローラ21,28の斜視図である。
平ベルト13が掛け回された支持ローラ21,28(図1参照)のそれぞれは、図5に示すように、上下方向に延びる回転軸(1点鎖線で示した部分)を有する円筒状または円柱状であり、その外周面は、回転軸の両端から軸方向(上下方向)中央へ向かうに従って外径が大きくなるクラウン形状になっている。平ベルト13には、支持ローラ21,28におけるクラウン形状の上下方向中央(最も外径が大きい部分)へ平ベルト13を寄せようとする力が作用しているので、平ベルト13において少なくとも支持ローラ21,28に掛かっている部分は、上下にずれることはない。仮に他の部分で平ベルト13が上下のいずれにずれたとしても、平ベルト13が引き続き周回移動するのに伴って、当該部分が支持ローラ21,28を通過するときに、縦置平ベルト13のずれを自動的に定位置まで矯正できる。
<紙幣取込装置>
図6は、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の斜視図である。図7は、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の縦断面図である。図8(a)は、紙幣取込装置14の平断面図であり、図8(b)は、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の斜視図であって、紙幣取込装置14では内部構造だけを抜き出して示している。図9Aは、紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の平断面図である。図9Bは、図9Aとは別の構造の紙幣取込装置14の周辺における紙幣搬送装置7の平断面図である。
【0071】
図6を参照して、紙幣取込装置14は、前記直交方向から見て略矩形状をなしつつ直交方向にやや薄い平板形状である。紙幣取込装置14には、搬送路レール10に装着された状態で直交方向における外側に位置する外側面14Aと、外側面14Aとは反対側であって一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかに対向する対向面14B(図7参照)とが設けられている。
【0072】
外側面14Aにおける上下の両端部には、複数(ここでは2つ)のラッチ60が長さ方向Xに間隔を隔てて設けられている(図7も参照)。ラッチ60は、紙幣取込装置14を貫通して対向面14Bから突出する弾丸形状であり、対向面14B側の先端に鉤状のフック部(図示せず)を有している。
ラッチ60は、対向面14Bから進出したり、外側面14A側へ引っ込んだりできるように進退自在になっている。紙幣取込装置14の対向面14Bを一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかに対向させると、上端側の2つのラッチ60は、一方側面10Aおよび他方側面10B側の突出部分10Eの挿通溝50に対向する。この状態で、図7に示すように、上端側の2つのラッチ60(外側面14Aから露出された部分)を搬送路レール10側へ押し込むと、各ラッチ60のフック部(図示せず)が、この挿通溝50から突出部分10Eの内部に進入して、突出部分10Eにおける挿通溝50の縁に引っ掛かる。
【0073】
これにより、紙幣取込装置14が搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかに対して外れ不能に装着される。このとき、紙幣取込装置14における下端側の2つのラッチ60は、一方側面10Aおよび他方側面10Bにおいて紙幣取込装置14が装着された側の側面における下端部10Dと横リブ55との間のスペースに収容される。また、紙幣取込装置14の下端も、当該スペースに入り込みつつ、下端部10Dに対して上から当接しており、これによって、紙幣取込装置14が下端側において位置決めされている。
【0074】
紙幣取込装置14が搬送路レール10に装着された状態で、上端側の2つのラッチ60を搬送路レール10側へ再び押し込むと、各ラッチ60のフック部(図示せず)が突出部分10Eにおける挿通溝50の縁に引っ掛からなくなる。この状態でラッチ60を押す力を弱めると、フック部(図示せず)が挿通溝50から外れるので、紙幣取込装置14を、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかから離脱させることができる。
【0075】
図6を参照して、紙幣取込装置14の外側面14Aにおいて長さ方向Xにおける一方側(図6では左側)へ偏った位置では、前述した誘導路31の一端が、縦長スリット状の取込口61として露出されている。取込口61から取込ローラ33が露出されている。図8(a)を参照して、紙幣取込装置14の対向面14Bにおいて長さ方向Xにおける他方側(図6では右側)へ偏った位置では、誘導路31の他端が、縦長スリット状の取出口62として露出されている。誘導路31は、取込口61から対向面14B側へ前記直交方向に延びた後、平ベルト13の周回方向(図8(a)では右側)へ湾曲し、対向面14Bに沿ってしばらく延びてから取出口62につながっている。前述したように台間ユニット3に受入れられた紙幣Sは、取込口61から誘導路31内に取り込まれ、回転する1対の取込ローラ33によって誘導路31内を搬送される。そして、この紙幣Sは、誘導路31によって、取出口62側の平ベルト13まで誘導されて、取出口62から平ベルト13に受け渡される。
【0076】
ここで、紙幣取込装置14に内蔵されたガイドローラ32および1対の取込ローラ33について詳説する。
ガイドローラ32は、高さ方向に延びる円筒状の本体63と、高さ方向に延びて本体63の円中心に挿通され、本体63を回転自在に支持する支持軸64とを含んでいる。支持軸64は、本体63から上下にはみ出ている(図8(b)参照)。各取込ローラ33は、高さ方向に延びる円筒状の本体65と、高さ方向に延びて本体65の円中心に挿通され、本体65を回転自在に支持する支持軸66とを含んでいる。支持軸66は、本体65から上下にはみ出ている(図8(b)参照)。
【0077】
ガイドローラ32は、本体63の外周面の一部が対向面14Bから露出されて平ベルト13に接触するように配置されている。1対の取込ローラ33のうち、一方の取込ローラ33Aは、ガイドローラ32に対して外側面14A側から対向した位置に配置されており、この取込ローラ33Aの本体65の外周面が、ガイドローラ32の本体63の外周面に対して外側面14A側から接触している。残りの取込ローラ33Bは、長さ方向Xにおいて取込ローラ33Aに並ぶように配置されており、誘導路31を挟んで取込ローラ33Aに対向している。1対の取込ローラ33では、本体63の外周面同士が取込口61付近における誘導路31内で接触している。この状態におけるガイドローラ32および1対の取込ローラ33は、全体として、平面視でL字状に配置されている。
【0078】
ガイドローラ32の支持軸64は、前述した直交方向(図8(a)における上下方向)にスライド可能となるように紙幣取込装置14に支持されている。取込ローラ33Aの支持軸66も、直交方向にスライド可能となるように紙幣取込装置14に支持されている。一方、取込ローラ33Bの支持軸66は、長さ方向Xにスライド可能となるように紙幣取込装置14に支持されている。図8(a)では、取込ローラ33Bの支持軸66を長さ方向Xに沿ってスライド可能に支持する支持部58が図示されている。支持部58は、長さ方向Xに延びつつ、取込ローラ33A側で湾曲する略U字状であって、内側に取込ローラ33Bの支持軸66を収容してスライド可能に支持している。
【0079】
以上の構成より、ガイドローラ32全体は、平ベルト13に対して直交方向に沿って接離するようにスライド可能であり、取込ローラ33A全体は、ガイドローラ32に対して直交方向に沿って接離するようにスライド可能であり、取込ローラ33B全体は、取込ローラ33Aに対して長さ方向Xに沿って接離するようにスライド可能である。
そして、図8(b)に示すように、紙幣取込装置14には、付勢部材67,68,69が1対ずつ設けられている。付勢部材67,68,69は、たとえば、圧縮されたコイルばねである。
【0080】
付勢部材67は、ガイドローラ32の支持軸64における上下の両端部に1つずつ設けられており、伸びようとすることで、支持軸64を外側面14A側(図8(b)における手前側)から対向面14B側へ付勢している。これにより、ガイドローラ32全体が平ベルト13側へ付勢されており、本体63が平ベルト13に圧接している。
付勢部材68は、取込ローラ33Aの支持軸66における上下の両端部に1つずつ設けられており、伸びようとすることで、この支持軸66を外側面14A側から対向面14B側へ付勢している。これにより、取込ローラ33A全体がガイドローラ32側へ付勢されており、取込ローラ33Aの本体65がガイドローラ32の本体63に圧接するとともに、ガイドローラ32を平ベルト13側へ付勢している。
【0081】
付勢部材69は、取込ローラ33Bの支持軸66における上下の両端部に1つずつ設けられており、伸びようとすることで、この支持軸66を取込ローラ33A側へ付勢している。これにより、取込ローラ33B全体が取込ローラ33A側へ付勢されており、取込ローラ33Bの本体65が取込ローラ33Aの本体65に圧接している。
そのため、図8(a)を参照して、平ベルト13が所定方向(図8(a)では右側であり、1点鎖線の矢印参照)へ周回移動すると、平ベルト13に圧接されているガイドローラ32が回転する(図8(a)での回転方向は時計周りの方向)。これに伴い、ガイドローラ32に圧接されている取込ローラ33Aが回転し(図8(a)での回転方向は反時計周りの方向)、取込ローラ33Aに圧接されている取込ローラ33Bが回転する(図8(a)での回転方向は時計周りの方向)。このとき、取込ローラ33Aおよび33Bは、紙幣Sを取込口61から誘導路31内に取り込む方向へ回転している。なお、図8(a)では、ガイドローラ32および取込ローラ33A,33Bのそれぞれの回転方向を、破線矢印で示している。
【0082】
つまり、ガイドローラ32は、周回移動する平ベルト13から駆動力を受けて回転し、取込ローラ33Aは、回転するガイドローラ32から駆動力を受けて回転し、取込ローラ33Bは、回転する取込ローラ33Aから駆動力を受けて回転する。このように、紙幣取込装置14では、外部から駆動力を受けてガイドローラ32および取込ローラ33A,33Bのそれぞれが回転するように構成されているので、これらのローラを回転させる駆動力を発生する駆動源(モータ等)を紙幣取込装置14に設ける必要がなく、紙幣取込装置14をシンプルに構成できる。また、ガイドローラ32は、平ベルト13との間で紙幣Sを搬送する役割だけでなく、平ベルト13からの駆動力を取込ローラ33Aに伝達する役割も兼ねている。
【0083】
そして、ガイドローラ32および取込ローラ33Aは、別々の付勢部材67,68によって個別に付勢されている(図8(b)参照)。たとえば、前述したように紙幣Sが台間ユニット3に受け入れられると(図1参照)、識別等のために紙幣取込装置14への紙幣Sの搬送が一時停止され、その際、1対の取込ローラ33が、紙幣Sを挟んだまま空転しているのだが、直交方向にスライド可能な取込ローラ33Aが、空転に伴って外側面14A側(取込口61側)へずれようとすることがある。この場合、取込ローラ33Aがガイドローラ32から離れるので、ガイドローラ32が取込ローラ33Aによって平ベルト13側へ押し付けられなくなる。しかし、ガイドローラ32は、取込ローラ33Aから独立していて(取込ローラ33Aと一体でなく)、専用の付勢部材67によって平ベルト13に押し付けられているので(図8(b)参照)、平ベルト13の周回に伴って引き続き回転し、紙幣Sを平ベルト13との間で挟持しながら搬送することができる。
【0084】
なお、取込ローラ33Aがガイドローラ32から離れることで、取込ローラ33A,Bの空転が停止するが、このときは、前述したように台間ユニット3から紙幣取込装置14への紙幣Sの搬送自体が一時停止されているので問題はない。
そして、台間ユニット3から紙幣取込装置14への紙幣Sの搬送が再開されると、取込ローラ33Aが付勢部材68(図8(b)参照)に付勢されることでガイドローラ32に再び接触し、取込ローラ33A,Bが回転するので、紙幣Sは、取込ローラ33A,Bの間を通って誘導路31および搬送路34を順に搬送されるようになる。
【0085】
このような構成とは異なり、たとえば、ガイドローラ32および取込ローラ33Aが一体となった状態で、共通の付勢部材によって平ベルト13側へ付勢される構成が考えられる。この場合、前述したように取込ローラ33Aが空転によって外側面14A側へずれようとすると、ガイドローラ32が取込ローラ33Aに引きずられることで平ベルト13から離れてしまう虞がある。ガイドローラ32が平ベルト13から離れてしまうと、紙幣Sがガイドローラ32と平ベルト13との間で挟持されないので、平ベルト13が周回しているのにもかかわらず、平ベルト13から離れたガイドローラ32の位置で紙幣Sが滞留してしまう。しかし、本発明の構成では、このような紙幣Sの滞留を防止できる。
【0086】
そして、図6を参照して、紙幣取込装置14において、外側面14Aおよび対向面14Bを含む表面の全域に、多数の凹部70や凸部71が形成されている。特に、対向面14Bの凸部71には、高さ方向に所定間隔を隔てて並びつつ長さ方向Xに沿って延びる複数のリブ71Aが含まれており、リブ71Aは、搬送路34内に臨んで、紙幣Sの搬送をガイドする(図7参照)。
【0087】
このような紙幣取込装置14では、ラッチ60、凹部70、凸部71、取込口61、取出口62、誘導路31、ガイドローラ32および取込ローラ33のそれぞれの形状および位置(図8(a)も参照)が、前述した水平基準線P(換言すれば、前述した芯Rであり、図4参照)を基準として上下対称となるように構成されている。つまり、紙幣取込装置14では、その表面および内部の全てが、縦方向に上下対称の形状になっている。
【0088】
そのため、図6における上端の2つのラッチ60を搬送路レール10の挿通溝50から外した後に紙幣取込装置14の上下の向きを逆にすれば、今まで下端にあった2つのラッチ60(図7参照)が上端に位置する。この状態で、新しく上端にきた2つのラッチ60を搬送路レール10の挿通溝50に嵌め込めば、上下が逆になった紙幣取込装置14を搬送路レール10に装着できる。ちなみに、図8(a)は、図6の状態にある紙幣取込装置14の平断面を示しており、この状態から紙幣取込装置14の上下の向きを逆にすると、図9Aに示すように、取込口61および取出口62のそれぞれの長さ方向Xにおける位置が逆になる。また、誘導路31が取込口61から取出口62に向って延びる向きも、紙幣取込装置14の上下の向きを逆にするのに応じて、反転する(図8(a)および図9A参照)。
【0089】
たとえば、図1に示すように、平ベルト13が平面視で反時計回りに周回移動する場合、図1における下側5つの紙幣取込装置14に着目すると、これらの紙幣取込装置14では、誘導路31が、平ベルト13の周回方向に沿って右側へ湾曲して延びている。ここで、平ベルト13の周回方向を逆向きにする場合には、搬送路レール10から各紙幣取込装置14を取り外して上下の向きを逆にし、取り外す前と同じ位置において搬送路レール10に装着する。
【0090】
紙幣取込装置14の上下の向きを逆にした後の状態が図2に示されている。図2における下側5つの紙幣取込装置14のうち、右側4つの紙幣取込装置14では、誘導路31が、図1とは逆向きになった平ベルト13の周回方向に沿って左側へ湾曲して延びている。このように、平ベルト13の周回方向を切り替えても、共通の紙幣取込装置14の上下の向きを変えることで対応できる。つまり、縦方向に上下対称の形状である紙幣取込装置14は、上下を逆にしても用いることができるので、上下の向きを気にせず搬送路レール10に装着できて使い勝手が良い。これにより、紙幣取込装置14は、これから述べる例外の場合を除いて、原則として1種類で済むので、紙幣取込装置14について、生産や在庫の管理が容易になるとともに、製造コストの低減、発注時における発注ミスの防止、設置時における搬送路レール10への組み付けミスの防止等を図ることができる。
【0091】
なお、平ベルト13の搬送方向を変える場合、同じ位置における紙幣取込装置14の上下の向きを変える以外に、図1において平ベルト13を挟んで分かれて配置された紙幣取込装置14の位置を入れ替えることでも対応できる。たとえば、図1において、平ベルト13の上側に図示されている(搬送路レール10の他方側面10B側の)紙幣取込装置14を、上下の向きを変えてから、平ベルト13の下側に図示されている(搬送路レール10の一方側面10A側の)紙幣取込装置14の位置に取り付ける(図2参照)。逆に、図1において、平ベルト13の下側に図示されている紙幣取込装置14を、上下の向きを変えてから、平ベルト13の上側に図示されている紙幣取込装置14の位置に取り付ける(図2参照)。
【0092】
一方、平ベルト13の搬送方向を変えない場合には、図1において平ベルト13に沿って配置されたそれぞれの紙幣取込装置14の位置を、上下の向きを変えることなく、同じ姿勢のまま自由に入れ替えることができる。たとえば、図1において、平ベルト13の上側に図示されている(搬送路レール10の他方側面10B側の)紙幣取込装置14を、平ベルト13に沿って平ベルト13の下側へ平行移動させれば(この作業自体は省略できる)、紙幣取込装置14自身の上下の向きを変えなくても、平ベルト13の下側の位置に配置して、搬送路レール10の一方側面10Aに装着できる。
【0093】
ここで、図2における下側5つの紙幣取込装置14のうち、左端の紙幣取込装置14は、他の紙幣取込装置14と異なる構造を有している。
この左端の紙幣取込装置14は、搬送路34における紙幣Sの搬送方向において最下流側に位置している。この紙幣取込装置14と搬送路レール10との間に配置されている平ベルト13の直線部分13Aは、平ベルト13の周回方向に沿って、左側へ移動している。つまり、搬送路34において、この紙幣取込装置14が位置する部分では、紙幣Sは左側へ搬送される。
【0094】
そして、この紙幣取込装置14では、図9Bに示すように、取込口61が、外側面14Aにおいて、紙幣Sの搬送方向(図2と同様に左向きの方向)における下流側端部(図9Bでは左端部)に形成されており、取出口62が、対向面14Bにおいて、当該搬送方向における上流側端部(図9Bでは右端部)に形成されている。この場合、誘導路31は、取込口61から搬送方向と逆向き(右向き)に延びてから、外側面14Aへ一旦迂回しつつ対向面14B側へUターンした後に、取出口62につながっている。
【0095】
この紙幣取込装置14は、誘導路31のUターン部分に配置される反転ローラ73と、誘導路31における反転ローラ73および1対の取込ローラ33との間の略中央位置に配置される1対の中継ローラ74とをさらに含んでいる。これらのローラは、いずれも縦方向に延びる回転軸を中心に回転可能になっている。
反転ローラ73の外周面では、一部が誘導路31のUターン部分に露出される一方で、他の一部が対向面14Bから露出されて平ベルト13の直線部分13Aに接触している。そのため、平ベルト13が周回移動すると、反転ローラ73が、誘導路31内の紙幣Sを取出口62側へ搬送するように回転する(図9Bでの回転方向は、反時計回り)。
【0096】
1対の中継ローラ74では、一方の中継ローラ74Aが外側面14A側に配置され、他方の中継ローラ74Bが対向面14B側に配置されている。これらの中継ローラ74は互いに接触しており、その接触部分は、誘導路31内に配置されている。中継ローラ74Aは、圧縮ばね等の付勢部材75によって中継ローラ74Bへ向けて付勢されている。中継ローラ74Bおよび反転ローラ73には、図示しないタイミングベルトが掛け回されている。そのため、反転ローラ73が平ベルト13の周回移動に伴って回転すると、タイミングベルトを介して反転ローラ73に連結された中継ローラ74Bも回転し、さらに、中継ローラ74Bに接触している中継ローラ74Aも回転する。1対の中継ローラ74は、1対の取込ローラ33を通過した紙幣Sを取出口62へ搬送する方向へ回転する。なお、1対の中継ローラ74は、取込ローラ33を通過した紙幣Sを確実に受け止めて反転ローラ73へ受け渡すことができるように、誘導路31において、取込ローラ33同士の接触部分と反転ローラ73との間の領域における略中央位置に設けられていることが好ましい。
【0097】
このように、この紙幣取込装置14では、ガイドローラ32および1対の取込ローラ33だけでなく、反転ローラ73および1対の中継ローラ74も、外部の平ベルト13から駆動力を受けて回転する。この紙幣取込装置14において、取込口61から取り込まれた紙幣Sは、回転する取込ローラ33によって誘導路31内へ送り込まれ、途中で中継ローラ74に受け渡された後、反転ローラ73に受け渡されて誘導路31のUターン部分でUターンしながら取出口62から平ベルト13に受け渡される。
【0098】
図9Aを参照して、前述した台間ユニット3の長さ方向Xにおける厚み(幅)は、紙幣取込装置14と同じではなく、実際には、破線で示すように外側面14Aにおける取込口61の周囲を覆う程度であって、比較的小さい。この場合、図9Aに示すように、紙幣Sの搬送方向における最下流側の紙幣取込装置14が、図9Bで説明したものと違う通常タイプであれば、紙幣取込装置14内で取込口61から搬送方向下流側へ紙幣Sを搬送する構成上、紙幣取込装置14において取込口61よりも搬送方向下流側の部分が大きくなってしまう。これにより、取込口61が最寄りの妻板2から離れてしまい、この紙幣取込装置14に連結された台間ユニット3と妻板2との間隔Y(妻板2からの台間ユニット3の設置距離)が比較的大きくなってしまう。間隔Yが大きくなることは、台間ユニット3と妻板2との間のデッドスペースが大きくなることを意味する。
【0099】
しかし、最下流側の紙幣取込装置14を、図9Bに示すタイプのものにすれば、紙幣Sを取込口61から搬送方向上流側へ一旦搬送してからUターンさせるので、その分、紙幣取込装置14において取込口61よりも搬送方向下流側の部分を小さくすることができる。換言すれば、誘導路31が取込口61からそのまま搬送方向下流側へ湾曲して延びる場合(図9A参照)と比べて、この湾曲部分を配置するためのスペースに取込口61を配置できる。
【0100】
これにより、取込口61を搬送方向下流側(つまり、妻板2側)へ極力寄せることができる。これにより、この紙幣取込装置14に連結された台間ユニット3と妻板2との間隔Y(前述したデッドスペース)を小さく抑えることができる。そのため、遊技島Aでは、限られたスペース内において、遊技台1を搬送方向下流側へ極力寄せて配置できるので、できるだけ多くの遊技台1および台間ユニット3を設置することができとともに、遊技島Aをコンパクトに構成できる。
【0101】
なお、この紙幣取込装置14も、前述した通常タイプのものと同様に、縦方向に上下対称の形状になっている。そのため、図2に示す場合だけでなく、図1に示すように平ベルト13の周回方向が逆向き(反時計回り)である場合において搬送方向最下流側の台間ユニット3を妻板2に隣接させる場合(図1では隣接していない)にも、この紙幣取込装置14は、搬送方向最下流側の紙幣取込装置14として、その上下の向きを逆転させることによって共通で適用できる。
<カバー部材>
図10Aは、カバー部材15の斜視図である。図10Bは、図10Aの場合よりも伸びた状態にあるカバー部材15の斜視図である。図11は、カバー部材15の周辺における紙幣搬送装置7の縦断面図である。
【0102】
図10Aおよび図10Bは、1つのカバー部材15を図示している。カバー部材15は、前述したように板状であって、長さ方向Xにおいて長手であり、前述した直交方向に薄くて縦に延びている。カバー部材15には、搬送路レール10に装着された状態で直交方向における外側に位置する外側面15Aと、外側面15Aとは反対側であって一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかに対向する対向面15Bとが設けられている。図10Aおよび図10Bでは、主に対向面15Bが見えている。図10Aおよび図10Bでは、紙幣Sは、対向面15Bに沿って左側へ搬送される。
【0103】
カバー部材15の外側面15Aにおける上下の端部には、複数のラッチ77が設けられている。これらのラッチ77は、カバー部材15の上下の端部において、長さ方向Xにおいて所定の間隔を隔てている。ラッチ77は、前述した紙幣取込装置14のラッチ60(図6参照)と似た構造を有している。ラッチ77は、カバー部材15を貫通して対向面15Bから突出する弾丸形状であり、対向面15B側の先端に鉤状のフック部77Aを有している(図11も参照)。
【0104】
ラッチ77は、ラッチ60と同様に、対向面15Bから進出したり、外側面15A側へ引っ込んだりできるように進退自在になっている。そのため、図11に示すように、カバー部材15の対向面15Bを一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかに対向させると、上端側の各ラッチ77は、一方側面10Aおよび他方側面10B側の突出部分10Eの挿通溝50に対向する。この状態で、上端側の各ラッチ77を外側面15A側から搬送路レール10側へ押し込むと、各ラッチ77のフック部77Aが、この挿通溝50から突出部分10Eの内部に進入して、突出部分10Eにおける挿通溝50の縁に引っ掛かる。これにより、カバー部材15が搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかに対して外れ不能に装着される。このとき、カバー部材15における下端側の各ラッチ77は、一方側面10Aおよび他方側面10Bにおいてカバー部材15が装着された側の側面における下端部10Dと横リブ55との間のスペースに収容される。また、カバー部材15の下端も、当該スペースに入り込みつつ、下端部10Dに対して上から当接しており、これによって、カバー部材15が下端側において位置決めされている。
【0105】
カバー部材15が搬送路レール10に装着された状態で、上端側の各ラッチ77を搬送路レール10側へ再び押し込むと、各ラッチ77のフック部77Aが突出部分10Eにおける挿通溝50の縁に引っ掛からなくなる。この状態でラッチ77を押す力を弱めると、フック部77Aが挿通溝50から外れるので、カバー部材15を搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれかから離脱させることができる。
【0106】
また、図10Aを参照して、カバー部材15の対向面15Bの上下方向中央には、前述したガイドローラ39が、複数(ここでは、5つ)設けられている。隣り合うガイドローラ39は、紙幣Sの長手方向寸法よりも短い間隔で並んでいる。各ガイドローラ39は、カバー部材15に内蔵された圧縮ばね等の付勢部材103(図4参照)によって対向面15Bから突出する方向(平ベルト13に圧接する方向)へ付勢されている。
【0107】
そして、カバー部材15において、外側面15Aおよび対向面15Bを含む表面の全域に、多数の凹部78や凸部79が形成されている。特に、対向面15Bの凸部79には、高さ方向に所定間隔を隔てて並びつつ長さ方向Xに沿って延びるリブ79Aが含まれており、リブ79Aは、搬送路34内に臨んで、紙幣Sの搬送をガイドする(図11参照)。
このようなカバー部材15では、ラッチ77、凹部78、凸部79およびガイドローラ39のそれぞれの形状および位置が、前述した水平基準線P(図4参照)を基準として上下対称となるように構成されている。つまり、カバー部材15では、その表面および内部の全てが、縦方向に上下対称の形状になっている。
【0108】
そのため、図11における上端のラッチ77を搬送路レール10の挿通溝50から外してからカバー部材15の上下の向きを逆にすれば、今まで下端にあったラッチ77が上端に位置する。この状態で、新しく上端にきた各ラッチ77を搬送路レール10の挿通溝50に嵌め込めば、上下が逆になったカバー部材15を搬送路レール10に装着できる。これにより、カバー部材15を、その上下を逆にすることで、搬送路レール10の一方側面10Aおよび他方側面10Bのいずれにも装着できる。つまり、縦方向に上下対称の形状であるカバー部材15は、上下を逆にしても用いることができるので、上下の向きを気にせず搬送路レール10に装着できて使い勝手が良い。また、カバー部材15は、原則として、1種類で済むので、紙幣取込装置14と同様の効果を奏することができる。
【0109】
図10Bを参照して、このカバー部材15は、長さ方向Xにおいて、複数(ここでは2つ)の分割体15C,15Dに分割可能である。図10Bでは、紙面左側に分割体15Cが位置していて、紙面右側に分割体15Dが位置している。分割体15Cにおいて分割体15D側の端部(「連結端部80」という)が、分割体15Dにおける分割体15C側の端部(「収容端部81」という)に収納できるようになっていて、図10Bでは、連結端部80が収容端部81から引っ張り出された状態にあって、カバー部材15が長さ方向Xにおいて伸長した状態になっている。なお、連結端部80および収容端部81は、カバー部材15に含まれる部品なので、縦方向に上下対称の形状になっている。
【0110】
図10Bに示すようにカバー部材15が伸張した状態から、分割体15Cおよび15Bにおける一方を他方へ接近させたり、両方を互いに接近させたりすると、連結端部80が収容端部81に収容され、結果として、図10Aに示すように、カバー部材15が長さ方向Xにおいて収縮する。そして、収縮したカバー部材15において、分割体15Cおよび15Bにおける一方を他方から離間させたり、両方を互いに離間する方向へ引っ張ったりすると、連結端部80が収容端部81から引っ張り出されて、図10Bに示すように、カバー部材15が伸長する。なお、連結端部80は、収容端部81から引っ張り出されても、収容端部81におけるいずれかの部分に係合しているので、伸長したカバー部材15において、分割体15Cと分割体15Dとが不意に分離してしまうことはない。
【0111】
このように、カバー部材15が長さ方向Xにおいて伸縮可能である。この実施形態では、カバー部材15の最大伸縮量は、55mm程度になっている。また、カバー部材15の長さは、カバー部材15が収縮しきったときと伸張しきったときとの間で、任意に調整できる。
図1および図2を参照して、たとえば、下側で長さ方向Xに並ぶ5個の紙幣取込装置14において隣り合うもの同士の間における平ベルト13を、伸張したカバー部材15で覆うことができる。そして、これら5個の紙幣取込装置14における右端のものと最寄りの右側の妻板2との間では、調整ユニット16を避けた領域における平ベルト13を、収縮したカバー部材15で覆うことができる。
【0112】
なお、隣り合う紙幣取込装置14の間(または、端の紙幣取込装置14と妻板2との間)に配置するカバー部材15の数は、任意に設定可能であり、伸張したカバー部材15を1枚配置してもよいし、収縮したカバー部材15を複数枚並べて配置してもよいし、さらには、収縮(伸張)しきったときの長さが異なる複数種類のカバー部材15を用意しておいて、これらのカバー部材15を任意に組み合わせて並べて配置してもよい。
<第1エンド部>
図12(a)は、第1エンド部11の斜視図であり、図12(b)は、第1エンド部11の平断面図である。
【0113】
第1エンド部11は、前述したように縦長のブロック形状であり、具体的には、縦長直方体形状である。第1エンド部11は、縦長直方体形状の本体85と、取付ステー86とを含んでいる。
本体85では、図12(a)における左手前側の側面が、搬送路レール10の分割レール17B(図1参照)に対向する対向面85Aであり、対向面85Aに、前述した入口19および出口20が形成されている。図12は、平面視で反時計回りに平ベルト13が周回移動する場合(図1参照)において搬送路レール10に取り付けられた状態における本体85の姿勢を示している。そのため、図12(a)では、対向面85Aにおいて、右寄りの位置に入口19があって、左寄りの位置に出口20がある。
【0114】
入口19および出口20は、いずれの縦長のスリット形状であり、その上下方向寸法は、紙幣Sの短手方向寸法より大きい。
ただし、入口19の方が、出口20よりも、水平方向(前述した直交方向)において幅広になっている。また、入口19と出口20とをつなぐ反転路18において、入口19側の端部は、入口19から離れるのに従って徐々に幅狭になっている(図12(b)参照)。つまり、入口19付近の反転路18には、テーパー状の誘い込み87が設けられている。そのため、搬送路34を搬送されて入口19に差し掛かった紙幣Sは、間口の広い入口19に円滑に進入でき、さらに、誘い込み87によって反転路18内に円滑に誘導される。
【0115】
また、対向面85Aにおいて、出口20に対する入口19の反対側で出口20を縁取る部分には、出口20に沿いつつ対向面85Aから突出する矯正リブ88が設けられている。矯正リブ88は、その先端縁に複数の凹凸が互い違いになるように上下に並んで形成された櫛状である。図12(b)を参照して、前述したように入口19から反転路18内に進入した紙幣Sは、反転路18において180°反転された後に、出口20から出るのだが、その際、平ベルト13の表面13Dから離れようとすることが想定される。この場合、矯正リブ88が紙幣Sに接触することによって、紙幣Sが平ベルト13の表面13Dから離れないように、その搬送方向が矯正される。
【0116】
本体85には、前述したクラウン形状の支持ローラ21(図5参照)の他に、1対のテンションローラ89が内蔵されている。1対のテンションローラ89のうち、一方のテンションローラ89Aは、入口19付近に設けられていて、他方のテンションローラ89Bは、出口20付近に設けられている。そのため、1対のテンションローラ89は、平面視において、U字状の反転路18を挟むように配置されている。各テンションローラ89の外周面の一部は、反転路18内に露出している。
【0117】
テンションローラ89Aは、入口19付近の平ベルト13をテンションローラ89B側へ押し付けていて、テンションローラ89Bは、出口20付近の平ベルト13をテンションローラ89A側へ押し付けている。これにより、平ベルト13に対して所定のテンションが付与され、平ベルト13において平行に延びる1対の直線部分13Aの間隔が、支持ローラ21の直径よりも狭い状態で維持されている。
【0118】
図12(a)を参照して、取付ステー86は、第1エンド部11において妻板2に直接組み付けられる部分である。取付ステー86は、縦長の長方形状であり、本体85における対向面85Aとは反対側の面に対して当該反対側から対向配置されている。取付ステー86の四隅の近傍には、本体85側へ延びる脚部90が一体的に設けられている。各脚部90には、長さ方向Xに延びつつ、前述した直交方向において脚部90を貫通する調整溝91が形成されている。
【0119】
ここで、本体85の上下の端面のそれぞれにおいて各脚部90に対して直交方向における内側から対向する位置には、矩形の小片状の鍔部92が一体的に設けられている。各脚部90の調整溝91に対して直交方向における外側からねじ93を差し込んで、対応する鍔部92に組み付けることで、取付ステー86は、本体85と一体化されている。各脚部90の調整溝91におけるねじ93の位置を変えることで、取付ステー86(脚部90を除く)と本体85との長さ方向Xにおける間隔を変えることができ、これによって、第1エンド部11全体の長さ方向Xにおける寸法、さらには、第1エンド部11が取り付けられた紙幣搬送装置7全体の長さ方向Xにおける寸法を調整できる。なお、各脚部90において直交方向における外側面には、調整溝91に沿って目盛94が刻まれており、この目盛94を見ることによって、取付ステー86と本体85との長さ方向Xにおける間隔を把握することができる。
【0120】
そして、本体85および取付ステー86の両方を含む第1エンド部11において、対向面85Aを含む表面の全域に、多数の凹部95や凸部96が形成されている。なお、凸部96には、前述したねじ93や、他のねじ96Aの頭部も含まれている。
また、凸部96には、本体85の対向面85Aの上下の両端縁に1対ずつ設けられた固定ステー96Bも含まれている。1対の固定ステー96Bは、水平方向(前述した直交方向)に間隔を隔てつつ、搬送路レール10側(図12(a)における左手前側)へ突出している。対向面85Aの上端における1対の固定ステー96Bが搬送路レール10の上端部10C(図4参照)の内側に挿通されて、対向面85Aの下端における1対の固定ステー96Bが搬送路レール10の下端部10D(図4参照)の内側に挿通される。その後、ねじ(図示せず)によって各固定ステー96Bが搬送路レール10に組み付けられることによって、第1エンド部11が搬送路レール10(厳密には、前述した分割レール17B)に対して右側から固定される。
【0121】
このような第1エンド部11では、凹部95、凸部96、支持ローラ21、各テンションローラ89および反転路18のそれぞれの形状および位置(図12(b)も参照)が、前述した水平基準線P(図4参照)を基準として上下対称となるように構成されている。つまり、第1エンド部11では、その表面および内部の全てが、縦方向に上下対称の形状になっている。また、図12(b)を参照して、前述した垂直基準線Q(図4も参照)は、支持ローラ21の円中心を通っている。そして、反転路18において入口19および出口20を除く部分は、垂直基準線Qを基準に直交方向(長さ方向Xから見たときにおける左右方向)に対称の形状になっている。さらに、1対のテンションローラ89は、垂直基準線Qを基準に直交方向(左右方向)に対称となるように配置されていて、入口19および出口20は、互いの形状が異なるものの、本体85の対向面85Aにおいて、垂直基準線Qを基準に直交方向(左右方向)に対称となる位置に形成されている(図12(a)も参照)。
【0122】
そのため、図12(a)の姿勢における第1エンド部11の上下の向きを逆にしても、本体85の対向面85Aにおいて、向きを逆にする前の入口19の位置に出口20および矯正リブ88が配置されて、向きを逆にする前の出口20の位置に入口19が配置されるものの、それ以外の部分において、第1エンド部11全体では形状的な変化は生じない。
よって、図1および図2を参照して、紙幣搬送装置7の設置時において、平ベルト13の周回方向を変える場合には、第1エンド部11を、その上下の向きを変えてから搬送路レール10に付ければ、第1エンド部11では、変更後の周回方向に沿って搬送される紙幣Sを、周回方向を変更しなかった場合と同様に、入口19で受け入れて反転路18で反転させて出口20から排出することができる。つまり、縦方向に上下対称の形状である第1エンド部11は、上下を逆にしても用いることができるので、平ベルト13の周回方向をいずれの方向にする場合であっても、搬送路レール10に装着できて使い勝手が良い。
<第2エンド部>
図13(a)は、第2エンド部12の斜視図であり、図13(b)は、第2エンド部12の平断面図である。
【0123】
図13(a)を参照して、第2エンド部12は、前述したように縦長のブロック形状であり、具体的には、縦長直方体形状である。第2エンド部12において分割レール17Aに対向する対向面(図13(b)における右面)12Aには、前述した入口23および出口24が形成されている。また、第2エンド部12において対向面12Aとは反対側の反対面(図13(a)における左手前側の面であり、図13(b)における左面)12Bでは、第1第1中継路26および第2中継路27のそれぞれの一端が露出されている。第1中継路26の一端を、第1排出口97といい、第2中継路27の一端を、第2排出口98ということにする。第1排出口97および第2排出口98は、いずれも縦長のスリット状である。また、第1中継路26の他端は、前述した入口23であり、第2中継路27の他端は、前述した出口24である(図13(b)参照)。
【0124】
図13(b)を参照して、第2エンド部12には、前述したクラウン形状の支持ローラ28(図5参照)の他に、1対のテンションローラ99が内蔵されている。1対のテンションローラ99のうち、一方のテンションローラ99Aは、入口23付近に設けられていて、他方のテンションローラ99Bは、出口24付近に設けられている。そのため、1対のテンションローラ99は、平面視において、U字状の反転路22を挟むように配置されている。各テンションローラ99の外周面の一部は、反転路22内に露出している。
【0125】
テンションローラ99Aは、入口23付近の平ベルト13をテンションローラ99B側へ押し付けていて、テンションローラ99Bは、出口24付近の平ベルト13をテンションローラ99A側へ押し付けている。これにより、平ベルト13に対して所定のテンションが付与され、平ベルト13において平行に延びる1対の直線部分13Aの間隔が、支持ローラ28の直径よりも狭い状態で維持されている。なお、1対のテンションローラ99の間隔と、第1エンド部11の1対のテンションローラ89(図12(b)参照)の間隔とは、ほぼ同じになっているので、1対の直線部分13Aの間隔は、支持ローラ21,28の間における全領域においてほぼ一定になっている(図1および図2参照)。
【0126】
図13(a)を参照して、第2エンド部12の上端面には、操作部100が設けられている。操作部100は、上下に延びる中心軸を有する円筒形状であり、支持ローラ28(図13(b)参照)に対して同心状で固定されている。そのため、操作部100を掴んで捻れば、支持ローラ28を手動で回転させることができ、これに応じて、平ベルト13を任意の方向へ手動で周回移動させることができる。
【0127】
そして、第2エンド部12において、対向面12Aおよび反対面12Bを含む表面の全域に、多数の凹部101や凸部102が形成されている。なお、凸部102には、第2エンド部12の上端面に配置されているねじ102Aの頭部や、取付ステー102Bや、固定ステー102Cが含まれている。
取付ステー102Bは、第2エンド部12の上下の両端面において反対面12B側へ偏った位置に1つずつ設けられている。取付ステー102Bは、前述した直交方向に延びる板状である。上下の取付ステー102Bをねじ(図示せず)によって妻板2や回収庫8(図1および図2参照)に組み付けることで、第2エンド部12が妻板2や回収庫8に固定される。
【0128】
固定ステー102Cは、第2エンド部12の対向面12A(図13(b)参照)の上下の両端縁に1対ずつ設けられている。1対の固定ステー102Cは、水平方向(直交方向)に間隔を隔てつつ、搬送路レール10側(図13(b)における右側)へ突出している。対向面12Aの上端における1対の固定ステー102Cが搬送路レール10の上端部10C(図4参照)の内側に挿通されて、対向面12Aの下端における1対の固定ステー102Cが搬送路レール10の下端部10D(図4参照)の内側に挿通される。その後、ねじ(図示せず)によって各固定ステー102Cが搬送路レール10に組み付けられることによって、第2エンド部12が搬送路レール10(厳密には、前述した分割レール17A)に対して左側から固定される。
【0129】
このような第2エンド部12では、凹部101、凸部102、支持ローラ28、各テンションローラ99、第1中継路26、第2中継路27および反転路22のそれぞれの形状および位置(図13(b)も参照)が、前述した水平基準線P(図4参照)を基準として上下対称となるように構成されている。つまり、第2エンド部12では、その表面および内部において操作部100を除く全てが、縦方向に上下対称の形状になっている。
【0130】
また、図13(b)を参照して、前述した垂直基準線Qは、支持ローラ28の円中心を通っていて、反転路22は、垂直基準線Qを基準に直交方向(図10(b)における上下方向)に対称の形状になっている。第1中継路26および第2中継路27は、垂直基準線Qを基準に直交方向に対称となるように配置されている。これに応じて、入口23および出口24は、対向面12Aにおいて、垂直基準線Qを基準に直交方向に対称となる位置に形成され、さらに、第1排出口97および第1排出口98は、反対面12Bにおいて、垂直基準線Qを基準に直交方向に対称となる位置に形成されている。さらに、1対のテンションローラ99は、垂直基準線Qを基準に直交方向に対称となるように配置されている。そのため、第2エンド部12では、その表面および内部の全てが、長さ方向Xから見て、左右対称の形状になっている。
【0131】
図1を参照して、平ベルト13の周回方向が平面視で反時計回りの場合には、平ベルト13は、第2エンド部12において入口23から反転路22内に進入して反転路22で反転した後に、出口24から排出されるようになっている。前述したように第2エンド部12が左右対称の形状になっているので、平ベルト13の周回方向を図2に示すように逆向きにすると、変更後の周回方向に沿って周回移動する平ベルト13は、第2エンド部12において出口24から反転路22内に進入して反転路22で反転した後に、入口23から排出されるようになる。つまり、第2エンド部12では、平ベルト13の周回方向を切り替えることによって、入口23および出口24のそれぞれの役割が逆になるものの、周回移動する平ベルト13を反転路22内で180°反転させることは継続できる。
【0132】
そして、図1では、平面視で反時計回りに周回移動する平ベルト13によって、紙幣Sは、第2エンド部12において入口23から反転路22に進入する。この紙幣Sは、反転路22に進入すると同時に、前述した第1中継路26に進入したことになり、第1中継路26から、その先の回収庫8の回収口35および回収路37をこの順番で通過して、回収庫8の回収室36に溜められる。
【0133】
一方、図2では、平ベルト13の周回方向を逆向きにするのに応じて、平ベルト13は、第2エンド部12において、入口23でなく、出口24から反転路22内に進入するようになる。この場合、紙幣Sも、平ベルト13と同様に出口24から反転路22内に進入する。この紙幣Sは、出口24から反転路22に進入すると同時に、前述した第2中継路27に進入したことになる。そこで、図2に示すように平ベルト13の周回方向を逆向きにする際、回収庫8の回収口35が、第1中継路26でなく、第2中継路27に連通するように、妻板2や第2エンド部12に対する回収庫8の取付位置を予め変えておく。これにより、第2中継路27は、紙幣Sの搬送方向における搬送路34の下流側端につながって回収庫8内まで延びた状態になっているので、第2中継路27に進入した紙幣Sは、第2中継路27から、その先の回収庫8の回収口35および回収路37をこの順番で通過して、回収庫8の回収室36に溜められるようになる。
【0134】
つまり、搬送路レール10の長さ方向Xから見て左右対称の形状である第2エンド部12は、搬送路34の紙幣Sを第1中継路26および第2中継路27のいずれによっても回収庫8へ送り込むことができるので、使い勝手が良い。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 遊技台
7 紙幣搬送装置
10 搬送路レール
13 平ベルト
13B 下方側縁
13D 表面
21 支持ローラ
28 支持ローラ
32 ガイドローラ
39 ガイドローラ
54 下リブ
A 遊技島
S 紙幣
X 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遊技台の配列を有する遊技島に設置され、遊技のために入金された紙幣を搬送する紙幣搬送装置であって、
遊技島の長さ方向に沿って延びる搬送路レールと、
幅方向が上下方向を向くように前記搬送路レールに掛け回された1本の無端状の縦置平ベルトと、
前記搬送路レールに設けられ、前記縦置平ベルトの下方側縁を受けるガイドリブと、
を含むことを特徴とする、紙幣搬送装置。
【請求項2】
前記ガイドリブは、前記縦置平ベルトの表面よりも突出していることを特徴とする、請求項1記載の紙幣搬送装置。
【請求項3】
前記縦置平ベルトの表面に対向配置され、前記縦置平ベルトを表面側から前記搬送路レールへ押し付ける押付部材を含むことを特徴とする、請求項2記載の紙幣搬送装置。
【請求項4】
前記押付部材は、回転自在なガイドローラを含むことを特徴とする、請求項3記載の紙幣搬送装置。
【請求項5】
前記搬送路レールの長さ方向における少なくとも一端側には、前記縦置平ベルトを180°反転させるための支持ローラが備えられていて、
前記支持ローラは、上下方向に延びる回転軸を有し、その回転軸の両端から軸方向中央へと向かうに従って外径が大きくなるクラウン形状を有することを特徴とする、請求項1記載の紙幣搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−254172(P2012−254172A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128568(P2011−128568)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】