説明

紙材の製造のための方法

(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、2.5meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性ポリマである第1ポリマと、第2ポリマと、有機もしくは無機の陰イオン性ポリマである第3ポリマとを添加する段階と、(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、を含む、紙材を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材の製造のための方法に関する。より詳細には本発明は、全ての高剪断箇所の後で水性セルロース系懸濁液に対して第1、第2および第3ポリマを添加する段階と、得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階とを含む、紙材の製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙の分野においては、セルロース系繊維と、選択的な充填剤および添加剤とを含む水性懸濁液であって原料と称される水性懸濁液が、該原料を高剪断力に委ねるポンプ、スクリーンおよびクリーナを通し、該原料を成形用ワイヤ上に放出するヘッドボックス内へと送給される。上記ワイヤ上に湿潤した紙材ウェブが形成される様に上記原料からは上記成形用ワイヤを通して水分が排出されると共に、上記ウェブは製紙機械の乾燥区画において更に脱水かつ乾燥される。微細繊維、充填剤および添加剤の如き微粒子が上記ワイヤ上でセルロース系繊維と共に保持される様に、排出を促進し且つセルロース系繊維上への上記微粒子の吸着を高めるために、原料の流れの種々の箇所に排水および保持用の助剤が常用的に導入される。常用的に使用される排水および保持用の助剤の例としては、有機ポリマ、無機材料、および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0003】
特許文献1は、製紙完成紙料供給物の保持および排水を増進する方法であって、最後の高剪断箇所の後で上記完成紙料に対して100,000〜2,000,000の分子量を有する少なくとも一種類の陽イオン性の高荷電密度ポリマを添加する段階と、2,000,000より大きい分子量を有する少なくとも一種類のポリマを添加する段階と、膨潤可能なベントナイト粘土を添加する段階とを含む方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、セルロース系懸濁液の薄い原料流に対して少なくとも4dl/gの固有粘度を有する実質的に水溶性である陽イオン性合成ポリマを添加することで該セルロース系懸濁液が凝集されるという紙材もしくは板紙の製紙方法を開示しており、凝集された上記セルロース系懸濁液は機械的剪断に委ねられてから、再凝集システムの遠心選別機(centri−screen)に引き続いて、(i)ケイ質材料と、(ii)少なくとも4dl/gの固有粘度を有する実質的に水溶性の陰イオン性ポリマとを添加することで再凝集される。該方法は、保持および排水おける改善を実現すると主張されている。
【0005】
特許文献3は、紙材料を剪断し、上記材料の凝集の前における最後の剪断段階に続いて陽イオン性ポリマと微粒子状の無機成分とから作成された微粒子系を上記紙材料に添加し、シートを形成するために上記紙材料を脱水し、且つ、上記薄寸体を乾燥することにより紙材および板紙を製造する方法を開示している。該方法は、保持および排水における改善を実現すると主張されている。
【0006】
排水、保持および成形が更に改善された製紙方法を提供することができれば好適であろう。
【特許文献1】US6,103,065
【特許文献2】EP 1 238 161 B1
【特許文献3】WO 2004/015200
【発明の開示】
【0007】
本発明は、
(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、
(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、
4.0meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性ポリマである第1ポリマと、
500,000より大きい分子量を有する第2ポリマと、
陰イオン性ポリマである第3ポリマと、
を添加する段階と、
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、
を含む、紙材を製造する方法に関する。
【0008】
本発明はまた、
(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、
(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、
2.5meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第1ポリマと、
500,000より大きい分子量を有するアクリルアミド系ポリマである第2ポリマと、
陰イオン性ポリマである第3ポリマと、
を添加する段階と、
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、
を含む、紙材を製造する方法にも関する。
【0009】
本発明は更に、
(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、
(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、
2.5meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性ポリマである第1ポリマと、
水分散性ポリマである第2ポリマと、
陰イオン性ポリマである第3ポリマと、
を添加する段階と、
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、
を含む、紙材を製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に依れば、全ての高剪断箇所の後でセルロース系懸濁液に対し第1、第2および第3ポリマを含む排水および保持用の助剤を添加する段階と、その後に得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階とを含む方法により、成形に関する何らの著しい障害なしで、または、紙材成形における更なる改善を以て、排水性および保持性が改善されることが見出された。本発明は、全ての種類の原料、特に機械的なもしくはリサイクルされたパルプを含む原料、および、高濃度の塩分(高導電率)およびコロイド物質を有する原料からの紙材の製造において、および、高度の白水密閉、すなわち白水再循環が相当であり且つ清浄水の供給が制限された製紙方法において、排水性および保持性における改善を実現する。故に本発明に依れば、製紙機械の速度を高めると共に、更に少ない適用量のポリマを使用することで対応する排水および/または保持効果が与えられることにより、改善された製紙方法および経済的利点に帰着し得る。
【0011】
本明細書中で用いられる如き“排水および保持用の助剤”という語句は、水性セルロース系懸濁液に対して添加されたときに、当該2種類以上の成分を添加しない場合に得られるよりも更に良好な排水性および保持性を与えるという2種類以上の成分を指している。
【0012】
本発明に係る第1ポリマは、少なくとも2.5meq/g、適切には少なくとも3.0meq/g、好適には少なくとも4.0meq/gの荷電密度を有する陽イオン性ポリマである。適切には上記荷電密度は、2.5〜10.0、好適には3.0〜8.5meq/gの範囲である。
【0013】
上記第1ポリマは、無機および有機の陽イオン性ポリマから選択され得る。好適には、上記第1ポリマは水溶性である。適切な第1ポリマの例としては、たとえば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、塩化物イオンおよび硫酸イオンの両方を含むポリアルミニウム化合物、ポリケイ酸/硫酸アルミニウム、および、それらの混合物などのポリアルミニウム化合物が挙げられる。
【0014】
適切な第1ポリマの更なる例としては、たとえば陽イオン性のアクリルアミド系ポリマなどの陽イオン性有機ポリマ;たとえばポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)などのポリ(ジアリルジアルキル・ハロゲン化アンモニウム);ポリエチレン・イミン;ポリアミドアミン;ポリアミン;および、ビニルアミン系ポリマが挙げられる。適切な陽イオン性有機ポリマの例としては、水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性モノマの重合、または好適には、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性モノマと選択的に他の一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和モノマを含むモノマ混合物の重合により調製されたポリマが挙げられる。また適切な水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性モノマの例としては、たとえば、ジアリルジメチル塩化アンモニウムなどのジアリルジアルキル・ハロゲン化アンモニウム、および、以下の一般構造式(I)により表される陽イオン性モノマが挙げられる:
【0015】
【化1】

【0016】
式中、
は、HまたはCHであり;
およびRは各々、H、または好適には、適切には1〜3個の炭素原子、好適には1〜2個の炭素原子を有するアルキルである炭化水素基であり;
Aは、OまたはNHであり;
Bは、2〜8個の炭素原子、適切には2〜4個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルキレン基、または、ヒドロキシ・プロピレン基であり;
は、Hであるか、または好適には、1〜4個の炭素原子、好適には1〜2個の炭素原子を有する炭化水素基、または、適切にはフェニルもしくは置換フェニル基である芳香基を含む置換基であって通常的には1〜3個の炭素原子、適切には1〜2個の炭素原子を有するアルキレン基により窒素に結合され得るという置換基であり、適切なRはベンジル基(−CH−C)であり;且つ、
は、通常は塩化物などのハロゲン化物である陰イオン性の対イオンである。
【0017】
一般構造式(I)により表される適切なモノマの例としては、たとえばジメチル−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびジメチル−アミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、および、たとえばジメチル−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル−アミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびジエチル−アミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを、塩化メチルまたは塩化ベンジルにより処理することで得られる四級モノマが挙げられる。一般式(I)の好適な陽イオン性モノマとしては、ジメチル−アミノエチルアクリレート塩化メチル四級塩、ジメチル−アミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩、ジメチル−アミノエチルアクリレート塩化ベンジル四級塩、および、ジメチル−アミノエチルメタクリレート塩化ベンジル四級塩が挙げられる。
【0018】
上記モノマ混合物は、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和非イオン性モノマを含み得る。適切である共重合可能な非イオン性モノマの例としては、たとえばメタクリルアミドなどのアクリルアミドおよびアクリルアミド系モノマ、たとえばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、および、N−イソブチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルキル(メタ)アクリルアミド;たとえばN−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;たとえばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;ジアルキルアミンアルキル(メタ)アクリレートなどのアクリレート系モノマ;および、ビニルアミンが挙げられる。上記モノマ混合物はまた、好適には少量にて、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陰イオン性もしくは潜在的に陰イオン性のモノマも含み得る。本明細書中で用いられる如く“潜在的に陰イオン性のモノマ”という語句は、セルロース系懸濁液に対する適用時にポリマ内に含まれたときに陰イオン性となる潜在的にイオン化可能な原子団を担持するモノマを包含することが意味される。適切である共重合可能な陰イオン性および潜在的に陰イオン性のモノマの例としては、たとえば(メタ)アクリル酸およびその塩、適切には(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのエチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、たとえば2−アクリルアミド−2−メチルプロパン・スルフォネート、スルホエチル−(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸およびその塩、スチレンスルフォネート、および、パラビニル・フェノール(ヒドロキシスチレン)およびその塩などのエチレン性不飽和スルホン酸およびその塩が挙げられる。好適な共重合可能モノマの例としてはアクリルアミドおよびメタクリルアミドすなわち(メタ)アクリルアミドが挙げられ、且つ、好適な陽イオン性有機ポリマの例としては、陽イオン性アクリルアミド系ポリマ、すなわち、一種類以上のアクリルアミドおよびアクリルアミド系モノマを含むモノマ混合物から調製された陽イオン性ポリマが挙げられる。
【0019】
陽イオン性有機ポリマの形態の上記第1ポリマは、少なくとも10,000、多くの場合には少なくとも50,000の重量平均分子量を有し得る。更に多くの場合、それは少なくとも100,000、通常は少なくとも500,000、適切には少なくとも約100万および好適には約200万より大きい。上限値は重要ではなく、それは約3,000万、通常は2,000万とされ得る。
【0020】
本発明に係る上記第2ポリマは好適には、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性および両性のポリマから選択され得る有機ポリマである。上記第2ポリマは、水溶性または水分散性とされ得る。適切には上記第2ポリマは、一種類以上のエチレン性不飽和モノマ、好適には一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和モノマの重合により調製される。好適な第2ポリマの例としては、アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0021】
適切な第2ポリマの例としては、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和非イオン性モノマを重合することにより得られる水溶性および水分散性の非イオン性有機ポリマが挙げられる。適切な非イオン性モノマの例としては、アクリルアミド、および、上述の非イオン性のアクリルアミド系およびアクリレート系のモノマおよびビニルアミンが挙げられる。好適な非イオン性モノマの例としては、アクリルアミドおよびメタクリルアミドすなわち(メタ)アクリルアミドが挙げられ、且つ、好適な第2ポリマの例としては非イオン性アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0022】
適切な第2ポリマの更なる例としては、水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性モノマを重合し、または好適には、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性モノマと選択的に一種類以上の他の水溶性のエチレン性不飽和モノマとを含むモノマ混合物を重合して得られる陽イオン性有機ポリマが挙げられる。適切な陽イオン性モノマの例としては、R、R、R、R、A、BおよびXが、上記に定義されたもの、および、たとえばジアリルジメチル塩化アンモニウムなどのジアリルジアルキル・ハロゲン化アンモニウムであるという上述の一般構造式(I)により表されるモノマが挙げられる。上記モノマ混合物は、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和非イオン性モノマを含有し得る。適切である共重合可能な非イオン性モノマの例としては、アクリルアミド、および、上述の非イオン性のアクリルアミド系およびアクリレート系のモノマおよびビニルアミンが挙げられる。上記モノマ混合物はまた、好適には少量にて、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陰イオン性もしくは潜在的に陰イオン性のモノマも含み得る。適切である共重合可能な陰イオン性および潜在的に陰イオン性のモノマの例としては、たとえば上述のモノマの内の任意の一種類のモノマの様に、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、および、エチレン性不飽和スルホン酸およびその塩が挙げられる。好適な共重合可能モノマの例としてはアクリルアミドおよびメタクリルアミドすなわち(メタ)アクリルアミドが挙げられ、且つ、好適な第2ポリマの例としては陽イオン性アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0023】
適切な第2ポリマの更なる例としては、水溶性のエチレン性不飽和陰イオン性もしくは潜在的に陰イオン性のモノマを重合し、または好適には一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陰イオン性もしくは潜在的に陰イオン性のモノマと選択的に一種類以上の他の水溶性のエチレン性不飽和モノマとを含むモノマ混合物を重合させることで得られる陰イオン性有機ポリマが挙げられる。適切な陰イオン性および潜在的に陰イオン性のモノマの例としては、たとえば上述のモノマの内の任意の一種類のモノマの様に、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、および、エチレン性不飽和スルホン酸およびその塩が挙げられる。上記モノマ混合物は、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和非イオン性モノマを含有し得る。適切である共重合可能な非イオン性モノマの例としては、アクリルアミド、および、上述の非イオン性のアクリルアミド系およびアクリレート系モノマ、および、ビニルアミンが挙げられる。上記モノマ混合物はまた、好適には少量にて、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性または潜在的に陽イオン性のモノマも含有し得る。本明細書中で用いられる如く、“潜在的に陽イオン性のモノマ”という語句は、セルロース系懸濁液に対する適用時にポリマ内に含まれたときに陽イオン性となる潜在的にイオン化可能な原子団を担持するモノマを包含することが意味される。適切である共重合可能な陽イオン性または潜在的に陽イオン性のモノマの例としては、上記の一般構造式(I)により表されるモノマ、および、たとえばジアリルジメチル塩化アンモニウムなどのジアリルジアルキル・ハロゲン化アンモニウムが挙げられる。好適な共重合可能モノマの例としては(メタ)アクリルアミドが挙げられ、且つ、好適な第2ポリマの例としては陰イオン性アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0024】
適切な第2ポリマの更なる例としては、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陰イオン性もしくは潜在的に陰イオン性のモノマと、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和陽イオン性または潜在的に陽イオン性のモノマと、選択的に一種類以上の他の水溶性のエチレン性不飽和モノマとを含むモノマ混合物を重合することにより得られる両性有機ポリマが挙げられる。適切な陰イオン性および潜在的に陰イオン性のモノマの例としては、たとえば上述のモノマの内の任意の一種類のモノマなどの、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、および、エチレン性不飽和スルホン酸およびその塩が挙げられる。適切な陽イオン性および潜在的に陽イオン性のモノマの例としては、上記一般構造式(I)により表されるモノマ、および、たとえばジアリルジメチル塩化アンモニウムなどのジアリルジアルキル・ハロゲン化アンモニウムが挙げられる。上記モノマ混合物は、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和非イオン性モノマを含有し得る。適切である共重合可能な非イオン性モノマの例としては、アクリルアミド、および、上述の非イオン性のアクリルアミド系およびアクリレート系モノマ、および、ビニルアミンが挙げられる。好適な共重合可能モノマの例としては(メタ)アクリルアミドが挙げられ、且つ、好適な第2ポリマの例としては両性アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0025】
適切な第2ポリマを調製する上で上記モノマ混合物は、上述の不飽和モノマに加え、一種類以上の多官能性架橋剤も含有し得る。上記モノマ混合物内に多官能性架橋剤が存在すると、水分散性である第2ポリマの調製が可能とされる。上記多官能性架橋剤は、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性または両性とされ得る。適切な多官能性架橋剤の例としては、たとえばN,N−メチレン−bis(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルアンモニウム塩、および、N−メチルアリル(メタ)アクリルアミドなどの、少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物;たとえばグリシジル(メタ)アクリレート、アクロレインおよびメチロール(メタ)アクリルアミドなどの、エチレン性不飽和結合と反応基とを有する化合物;および、たとえばグリオキサールなどのジアルデヒド、ジエポキシ化合物、および、エピクロルヒドリンなどの少なくとも2個の反応基を有する化合物が挙げられる。適切な水分散性の第2ポリマは、上記モノマ混合物内に存在するモノマに基づき、または、上記ポリマ内に存在するモノマ単位に基づき、少なくとも4モルppm、好適には約4〜約6,000モルppm、最も好適には20〜4,000モルppmの多官能性架橋剤を用いて調製され得る。適切な水分散性有機ポリマの例としては、言及したことにより本明細書中に援用される米国特許第5,167,766号に開示されたポリマが挙げられる。適切な第2ポリマの更なる例としては水分散性である陰イオン性、陽イオン性および両性の有機ポリマが挙げられ、且つ、好適な第2ポリマとしては、水分散性の陰イオン性有機ポリマ、好適には水分散性の陰イオン性アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0026】
本発明に係る上記第2ポリマ、好適には水溶性である第2ポリマは、少なくとも約500,000の重量平均分子量を有し得る。通常、上記重量平均分子量は少なくとも約100万、適切には少なくとも約200万、好適には少なくとも約500万である。上限値は重要でなく、それは約5,000万、通常は3,000万とされ得る。
【0027】
本発明に係る上記第2ポリマは、少なくとも約10meq/g未満、適切には約6meq/g未満、好適には約4meq/g未満、更に好適には2meq/g未満の荷電密度を有し得る。適切には上記荷電密度は、0.5〜10.0、好適には1.0〜4.0meq/gの範囲である。適切な第2ポリマとしては、10.0meq/g未満、適切には6.0meq/g未満、好適には4.0meq/g未満の荷電密度を有する陰イオン性有機ポリマが挙げられる。適切な第2ポリマとしては更に、6.0meq/g未満、適切には4.0meq/g、好適には2.0meq/g未満の荷電密度を有する陽イオン性有機ポリマが挙げられる。
【0028】
本発明に係る上記第3ポリマは、無機および有機の陰イオン性ポリマから選択され得る陰イオン性ポリマである。適切な第3ポリマの例としては、水溶性および水分散性の無機および有機の陰イオン性ポリマが挙げられる。
【0029】
適切な第3ポリマの例としては、ケイ酸およびケイ酸塩に基づく無機の陰イオン性ポリマ、すなわち陰イオン性シリカ系ポリマが挙げられる。適切な陰イオン性シリカ系ポリマは、単独重合または共重合され得る例えばケイ酸およびケイ酸塩などのケイ質化合物の縮重合により調製され得る。好適には上記陰イオン性シリカ系ポリマは、粒子サイズのコロイド範囲内である陰イオン性シリカ系粒子から成る。陰イオン性シリカ系粒子は通常は、所謂るゾルという水性コロイド分散液の形態で供給される。上記シリカ系ゾルは、改質され得ると共に、水相内および/またはシリカ系粒子内に存在し得る例えばアルミニウム、ホウ素、窒素、ジルコニウム、ガリウムおよびチタンなどの他の元素を含有し得る。適切な陰イオン性シリカ系粒子の例としては、ポリケイ酸、ポリケイ酸マイクロゲル、ポリケイ酸塩、ポリケイ酸塩マイクロゲル、コロイド状シリカ、コロイド状アルミニウム改質シリカ、ポリアルミノケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩マイクロゲル、ポリホウケイ酸塩などが挙げられる。適切な陰イオン性シリカ系粒子の例としては、言及したことにより本明細書中に援用される米国特許第4,388,150号、第4,927,498号、第4,954,220号、第4,961,825号、第4,980,025号、第5,127,994号、第5,176,891号、第5,368,833号、第5,447,604号、第5,470,435号、第5,543,014号、第5,571,494号、第5,573,674号、第5,584,966号、第5,603,805号、第5,688,482号および第5,707,493号に開示された粒子が挙げられる。
【0030】
適切な陰イオン性シリカ系粒子の例としては、約100nmより小さく、好適には約20nmより小さく、且つ、更に好適には約1〜約10nmの範囲内の平均粒子サイズを有する粒子が挙げられる。シリカ化学において常用的である様に粒子サイズとは、凝集し又は非凝集とされ得る一次粒子の平均サイズを指している。好適には上記陰イオン性シリカ系ポリマは、凝集した陰イオン性シリカ系粒子から成る。上記シリカ系粒子の比表面積は適切には、少なくとも50m/gであり、且つ、好適には少なくとも100m/gである。概略的に上記比表面積は、約1700m/gまで、好適には1000m/gまでとされ得る。比表面積は、サンプル内に存在する一切の化合物であってアルミニウムおよびホウ素種の様に滴定を阻害し得る化合物を適切に除去または調節した後、分析化学28(1956):12、1981〜1983(Analytical Chemistry 28(1956): 12, 1981−1983)においてジー・ダブル・シアーズ(G.W. Sears)により且つ米国特許第5,176,891号に記述された如く、NaOHによる滴定により測定される。故に、与えられた表面積は、粒子の平均比表面積を表す。
【0031】
本発明の好適な実施態様において上記陰イオン性シリカ系粒子は、50〜1000m/g、更に好適には100〜950m/gの範囲の比表面積を有する。好適には上記シリカ系粒子は、上述された如く改質され得るゾルであって、300〜1000m/g、適切には500〜950m/g、好適には750〜950m/gの範囲内の比表面積を有するシリカ系粒子を含むと共に、8〜50%、好適には10〜40%の範囲のS値を有するゾル内に存在する。このS値は、雑誌“物理化学”(J. Phys. Chem.)、60(1956)、955〜957頁におけるイラー・アンド・ダルトン(Iler & Dalton)により記述された如く測定かつ計算される。このS値は凝集またはマイクロゲル形成の程度を表しており、S値が低いほど凝集の程度が高いことを表している。
【0032】
本発明の更に別の好適な実施態様において上記シリカ系粒子は、適切には約1000m/gより大きい高比表面積を有する。上記比表面積は、1000〜1700m/g、好適には1050〜1600m/gの範囲内とされ得る。
【0033】
適切な第3ポリマの更なる例としては、エチレン性不飽和陰イオン性または潜在的に陰イオン性のモノマを重合し、または好適には、一種類以上のエチレン性不飽和陰イオン性または潜在的に陰イオン性のモノマと選択的に他の一種類以上のエチレン性不飽和モノマとから成るモノマ混合物を重合することにより得られる水溶性および水分散性の有機陰イオン性ポリマが挙げられる。好適には、上記エチレン性不飽和モノマは水溶性である。適切な陰イオン性および潜在的に陰イオン性のモノマの例としては、たとえば上述されたモノマの内の任意の一種類のモノマなどの、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、エチレン性不飽和スルホン酸およびその塩が挙げられる。上記モノマ混合物は、一種類以上の水溶性のエチレン性不飽和非イオン性モノマを含有し得る。適切である共重合可能な非イオン性モノマの例としては、アクリルアミド、および、上述の非イオン性のアクリルアミド系およびアクリレート系モノマおよびビニルアミンが挙げられる。上記モノマ混合物はまた、好適には少量にて、一種類以上の水溶性でエチレン性不飽和陽イオン性および潜在的に陽イオン性のモノマも含有し得る。適切である共重合可能な陽イオン性モノマの例としては、上記の一般構造式(I)により表されたモノマ、および、たとえばジアリルジメチル塩化アンモニウムなどのジアリルジアルキル・ハロゲン化アンモニウムが挙げられる。上記モノマ混合物はまた、一種類以上の多官能性架橋剤も含有し得る。上記モノマ混合物内に多官能性架橋剤が存在すると、水分散性である第3ポリマの調製が可能とされる。適切な多官能性架橋剤の例としては、上述の多官能性架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、上述の量にて使用され得る。適切な水分散性の有機陰イオン性ポリマの例としては、言及したことにより本明細書中に援用される米国特許第5,167,766号に開示されたポリマが挙げられる。好適な共重合可能モノマの例としては(メタ)アクリルアミドが挙げられ、且つ、好適な第3ポリマの例としては水溶性および水分散性の陰イオン性アクリルアミド系ポリマが挙げられる。
【0034】
本発明に係る有機陰イオン性ポリマ、好適には水溶性である有機陰イオン性ポリマである上記第3ポリマは、少なくとも約500,000の重量平均分子量を有する。通常、上記重量平均分子量は少なくとも約100万、適切には少なくとも約200万、好適には少なくとも約500万である。上限値は重要ではなく、それは約5,000万、通常は3,000万とされ得る。
【0035】
有機陰イオン性ポリマである上記第3ポリマは、約14meq/g未満、適切には約10meq/g、好適には約4meq/g未満の荷電密度を有し得る。適切には上記荷電密度は、1.0〜14.0、好適には2.0〜10.0meq/gの範囲内である。
【0036】
本発明に係る好適な排水および保持用の助剤の例としては、以下のものが挙げられる:
(i)陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第1ポリマ、陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第2ポリマ、および、陰イオン性シリカ系粒子である第3ポリマ;
(ii)陽イオン性ポリアルミニウム化合物である第1ポリマ、陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第2ポリマ、および、陰イオン性シリカ系粒子である第3ポリマ;
(iii)陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第1ポリマ、水溶性または水分散性の陰イオン性アクリルアミド系ポリマである第2ポリマ、および、陰イオン性シリカ系粒子である第3ポリマ;
(iv)陽イオン性ポリアルミニウム化合物である第1ポリマ、水溶性または水分散性の陰イオン性アクリルアミド系ポリマである第2ポリマ、および、陰イオン性シリカ系粒子である第3ポリマ;
(v)陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第1ポリマ、陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第2ポリマ、および、水溶性または水分散性の陰イオン性アクリルアミド系ポリマである第3ポリマ;および、
(vi)陽イオン性ポリアルミニウム化合物である第1ポリマ、陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第2ポリマ、および、水溶性または水分散性の陰イオン性アクリルアミド系ポリマである第3ポリマ。
【0037】
本発明に依ると、上記第1、第2および第3ポリマは、水性セルロース系懸濁液が全ての機械的高剪断段階を通過した後であり且つ排水に先立ち、該懸濁液に対して添加される。高剪断段階の例としては、ポンプ処理段階およびクリーナ処理段階が挙げられる。たとえば斯かる剪断段階は、セルロース系懸濁液がファン・ポンプ、圧力スクリーンおよび遠心スクリーンを通過せしめられるときに含まれる。適切には最後の高剪断箇所は遠心スクリーンにて行われることから、上記第1、第2および第3ポリマは適切には上記遠心スクリーンに引き続いて添加される。好適には上記第1、第2および第3ポリマの添加の後で、上記セルロース系懸濁液は、排水のための成形用ワイヤ上へと該懸濁液を放出するヘッドボックス内へと送給される。
【0038】
本発明の方法においては、付加的材料を更に含めることが好適であり得る。好適にはこれらの材料は、上記セルロース系懸濁液が最後の高剪断箇所を通過される前に該懸濁液に対して添加される。斯かる付加的材料の例としては、陽イオン性、陰イオン性および両性の澱粉、好適には陽イオン性澱粉である澱粉;たとえば陽イオン性ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリエチレン・イミン、ジシアンジアミド縮重合ポリマ、および、低分子量で高度に陽イオン性であるビニル付加ポリマなどの水溶性の有機ポリマ的凝集剤;および、たとえばアルミニウムおよびポリアルミニウム化合物などのアルミニウム化合物などの無機凝集剤が挙げられる。
【0039】
上記第1、第2および第3ポリマは、上記セルロース系懸濁液に対して別々に添加され得る。適切には上記第1ポリマは、上記第2ポリマおよび第3ポリマを添加する前に上記セルロース系懸濁液に対して添加される。上記第2ポリマは、上記第3ポリマの添加に先立ち、同時に、またはその後に添加され得る。代替的に、上記第1ポリマは適切には上記第2ポリマと同時にセルロース系懸濁液に対して添加されてから、上記第3ポリマが添加される。
【0040】
本発明に係る上記第1、第2および第3ポリマは、広範囲な制限範囲内で変化し得る量にて、脱水されるべきセルロース系懸濁液に対して添加され得る。概略的に上記第1、第2および第3ポリマは、これらのポリマが添加されない場合よりも良好な排水性および保持性を与える量にて添加される。上記第1ポリマは通常、乾燥セルロース系懸濁液の状態における乾燥ポリマに換算して少なくとも約0.001重量%、多くの場合に少なくとも約0.005重量%で添加され、且つ、上限値は通常は約2.0重量%、適切には約1.5重量%である。同様に、上記第2ポリマは通常、乾燥セルロース系懸濁液の状態における乾燥ポリマに換算して少なくとも約0.001重量%、多くの場合には少なくとも約0.005重量%の量で添加され、且つ、上限値は通常は約2.0重量%、適切には約1.5重量%である。同様に上記第3ポリマは通常、乾燥セルロース系懸濁液の状態における乾燥ポリマまたは乾燥SiOに換算して少なくとも約0.001重量%、多くの場合には少なくとも約0.005重量%の量で添加され、且つ、上限値は通常は約2.0重量%、適切には約1.5重量%である。
【0041】
上記方法において澱粉および/または陽イオン性凝集剤を用いるときに斯かる添加剤は、乾燥セルロース系懸濁液の状態における乾燥添加剤に換算して少なくとも約0.001重量%の量で添加され得る。適切には上記量は、約0.05〜約3.0%の範囲内、好適には約0.1〜約2.0%の範囲内である。
【0042】
本発明の上記方法は全ての製紙方法およびセルロース系懸濁液に対して適用可能であり、且つ、高い導電率を有する原料から紙材を製造する場合に特に有用である。斯かる場合、上記ワイヤ上で脱水される原料の導電率は通常、少なくとも約1.5mS/cm、好適には少なくとも3.5mS/cm、更に好適には少なくとも5.0mS/cmである。導電率は、たとえばクリスチャン・バーナ社(Christian Berner)により供給されるWTW LF539機器の如き標準的機器により測定され得る。
【0043】
本発明は更に、たとえば製造される1トンの乾燥紙材当たりで0〜30トンの清浄水、すなわち1トンの紙材当たりで通常は20トン未満、好適には15トン未満、更に好適には10トン未満、特に5トン未満の清浄水が使用される様に、白水が相当に再利用または再循環され、すなわち白水が高度に密閉されるという製紙方法を包含する。上記方法においては任意の段階にて清浄水が導入可能であり、たとえば、セルロース系懸濁液を形成するためにセルロース系繊維に対して清浄水が混合可能であり、且つ、上記第1、第2および第3ポリマが添加されるべき薄いセルロース系懸濁液を形成するように濃いセルロース系懸濁液を希釈すべく該濃いセルロース系懸濁液に対して清浄水が混合され得る。
【0044】
本発明に係る上記方法は、紙材の製造に対して使用される。本明細書中で用いられる如き“紙材”という語句は、紙材およびその製造だけでなく、たとえば板材および板紙およびその製造の如き他の薄寸体状製品も包含する。上記方法は異なる種類のセルロース系繊維の懸濁液からの紙材製造において使用可能であり、且つ、上記懸濁液は乾燥物質に基づいて好適には少なくとも25重量%、更に好適には少なくとも50重量%の斯かる繊維を含むべきである。上記懸濁液は、硫酸塩および亜硫酸塩パルプの如き化学パルプ、熱機械的パルプ、化学−熱機械的パルプ、有機溶媒パルプ、硬質木材および軟質木材の両方からの精砕パルプもしくは粉砕木材パルプからの繊維、または、エレファントグラス、バガス(bagasse)、亜麻、麦藁などの一年植物から導出された繊維に基づき得ると共に、再利用繊維に基づく懸濁液に対しても使用され得る。本発明は好適には、木材含有懸濁液から紙材を作成する方法に対して適用される。
【0045】
上記懸濁液はまた、たとえばカオリン、粘土、二酸化チタン、石膏、タルク、および、たとえばチョーク、粉砕大理石、粉砕炭酸カルシウムおよび沈殿炭酸カルシウムの如き天然および合成の炭酸カルシウムの如き従来タイプの鉱質充填剤も含有する。上記原料は当然乍ら、ロジン、ケテン・ダイマ、ケテン・マルチマ、無水琥珀酸アルケニルなどに基づく如き湿潤強度作用物質、サイジング剤の如き従来タイプの製紙添加剤も含有し得る。
【0046】
好適には本発明は、木材含有紙材およびSC、LWCの如き再利用繊維に基づく紙材および異なる種類の書籍および新聞印刷用紙を製造する製紙機械にて、且つ、上質の印刷および筆記用紙を製造する機械にて適用され、上質とは木材含有繊維が約15%未満であることを意味する。本発明の好適な応用の例としては、少なくとも50重量%の機械的繊維および/または再利用繊維を含有するセルロース系懸濁液から紙材と多層紙材の層とを製造することが挙げられる。好適には本発明は、300〜3000m/分、更に好適には500〜2500m/分の速度で動作する製紙機械に適用される。
【0047】
本発明は以下の実施例において更に例証されるが、これらの実施例は本発明を限定することを意図していない。特に明記しない限り、“部”および“%”は夫々、重量部および重量%を指している。
【0048】
実施例
各実施例においては、以下の添加剤が使用された。
【0049】
C−PAM 1:アクリルアミド(40モル%)およびアクリルオキシエチルトリメチル塩化アンモニウム(60モル%)の重合により調製されると共に、約300万の重量平均分子量および約4.2meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性アクリルアミド系ポリマ。
C−PAM 2:アクリルアミド(60モル%)およびアクリルオキシエチルトリメチル塩化アンモニウム(40モル%)の重合により調製されると共に、約300万の重量平均分子量および約3.3meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性アクリルアミド系ポリマ。
C−PAM 3:アクリルアミド(88モル%)、アクリルオキシエチルトリメチル塩化アンモニウム(10モル%)およびジメチル・アクリルアミド(2モル%)の重合により調製されると共に、約600万の重量平均分子量および約1.2meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性アクリルアミド系ポリマ。
C−PAM 4:アクリルアミド(90モル%)およびアクリルオキシエチルトリメチル塩化アンモニウム(10モル%)の重合により調製されると共に、約600万の重量平均分子量および約1.2meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性アクリルアミド系ポリマ。
PAC:約8.0meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性ポリ塩化アルミニウム。
C−PAI 1:約200,000の重量平均分子量および約7meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性ポリアミン。
C−PAI 2:約400,000の重量平均分子量および約7meq/gの陽イオン性荷電密度を有する陽イオン性ポリアミン。
A−PAM:アクリルアミド(80モル%)およびアクリル酸(20モル%)の重合により調製されると共に約1200万の重量平均分子量および約2.6meq/gの陰イオン性荷電密度を有する陰イオン性アクリルアミド系ポリマ。
A−X−PAM:アクリルアミド(30モル%)およびアクリル酸(70モル%)の重合により調製されると共に約100,000の重量平均分子量および約8.0meq/gの陰イオン性荷電密度を有する陰イオン性架橋アクリルアミド系ポリマ。
シリカ:ケイ酸の陰イオン性無機縮重合ポリマであって、約21のS値を有するコロイド状アルミニウム改質シリカゾルであって約800m/gの比表面積を備えたシリカ系粒子を含むというシリカゾルの形態のポリマ。
ベントナイト:ベントナイト。
【0050】
実施例1
プラグを取り外すと共に、原料が存在する側とは逆の側にてワイヤに対して真空を付与したときに該ワイヤを通して所定体積の原料の排水を行うための時間を測定するというスウェーデンのアクリビ社(Akribi)から入手可能な動的排水分析器(DDA)により、排水(脱水)性能が評価された。
【0051】
これらの試験において使用された原料は、新聞紙工場からの75%TMPおよび25%DIP繊維材料および沈降白水に基づいていた。原料濃度は0.78%であった。上記原料の導電率は1.5mS/cmであり且つpHは6.8であった。
【0052】
全ての高剪断箇所の後における添加をシミュレートするために、上記原料はバフル式ジャー内で異なる攪拌器速度にて攪拌された。攪拌および添加は以下の内容に従い行われた:
(i)1000rpmにて20秒間だけ攪拌;
(ii)2000rpmにて10秒間だけ攪拌;
(iii)添加を行い乍ら1000rpmにて15秒間だけ攪拌;および、
(iv)脱水時間を自動的に記録し乍ら上記原料を脱水。
【0053】
上記原料に対する添加は以下の如く行われた:第1の添加(5kg/tの添加レベル)は脱水の15秒前に行われ、第2の添加(0.8kg/tの添加レベル)は脱水の10秒前に行われ、且つ、第3の添加(0.5kg/tの添加レベル)は脱水の5秒前に行われた。
【0054】
表1は、異なる添加の様式に依る脱水時間を示している。前記ポリマおよびベントナイトの添加レベルは乾燥原料系に対する乾燥生成物として換算され、且つ、シリカ系粒子のゾルは乾燥原料系に基づきSiOとして換算された。
【0055】
試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2〜4は比較のために使用された方法を示し、且つ、試験番号5〜7は本発明に係る方法を示している。
【0056】
【表1】

【0057】
表1は、本発明に係る方法が優れた脱水作用に帰着したことを示している。
【0058】
実施例2
実施例1に係るDDAを用いて、排水性能が評価された。
【0059】
この試験において使用された原料は製紙工場からの75%TMPおよび25%DIP繊維材料および漂白水に基づいていた。原料濃度は0.77%であった。この原料の導電率は1.6mS/cmであり且つpHは7.2であった。
【0060】
全ての高剪断箇所の前および後における添加をシミュレートするために、上記原料はバフル式ジャー内で異なる攪拌器速度にて攪拌された。攪拌および添加は以下の内容に従い行われた:
(i)0〜2回の添加を行い乍ら1000rpmにて25秒間だけ攪拌;
(ii)2000rpmにて10秒間だけ攪拌;
(iii)0〜3回の添加を行い乍ら1000rpmにて15秒間だけ攪拌;および、
(iv)脱水時間を自動的に記録し乍ら上記原料を脱水。
【0061】
上記原料に対する添加は以下の如く行われた:行われるなら、第1の添加は脱水の45もしくは15秒前に行われ、行われるなら、第2の添加は脱水の25もしくは10秒前に行われ、且つ、行われるなら、第3の添加は脱水の5秒前に行われた。
【0062】
表2は、異なる添加の様式に依る脱水時間を示している。添加時間は脱水に先立ち秒単位で与えられ、且つ、添加レベルは第1、第2および第3添加(第1/第2/第3)に対して夫々、kg/t単位で与えられる。これらのポリマ添加レベルは乾燥原料系に対して乾燥生成物として換算され、且つ、シリカ系粒子は乾燥原料系に基づきSiOとして換算された。
【0063】
試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2〜7は比較のために使用された方法を示し、且つ、試験番号8〜10は本発明に係る方法を示している。
【0064】
【表2】

【0065】
表2からは、本発明に係る方法が優れた脱水作用に帰着したことが明らかである。
【0066】
実施例3
実施例2の手順に従い、排水性能が評価された。
【0067】
保持性能は、スイスのノヴァシナ社(Novasina)から入手可能である比濁計により、上記原料を排水して得られた濾過物すなわち白水の濁度を測定することにより評価された。この濁度はNTU(比濁計濁度単位)で測定された。
【0068】
この実施例においては、実施例2において使用された原料および攪拌および添加の様式が同様に使用された。
【0069】
表3は、異なる様式の添加による脱水効果を示している。試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2および3は比較のために使用された方法を示し、且つ、試験番号4は本発明に係る方法を示している。
【0070】
【表3】

【0071】
表3は、本発明に係る方法が優れた排水性能に帰着したことを示している。
【0072】
実施例4
実施例3の手順に従い、排水および保持性能が評価された。この実施例においては、実施例2において使用された原料および攪拌および添加の様式が同様に使用された。
【0073】
表4は、異なる様式の添加による脱水効果を示している。試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2〜7は比較のために使用された方法を示し、且つ、試験番号8〜9は本発明に係る方法を示している。
【0074】
【表4】

【0075】
表4は、本発明に係る方法が優れた排水(脱水)および保持性能に帰着したことを示している。
【0076】
実施例5
実施例3の手順に従い、排水および保持性能が評価された。この実施例においては、実施例2において使用された攪拌および添加の様式が同様に使用された。
【0077】
この試験において使用された原料は製紙工場からの75%TMPおよび25%DIP繊維材料および漂白水に基づいていた。原料濃度は0.82%であった。原料の導電率は1.7mS/cmであり且つpHは7.2であった。
【0078】
表5は、異なる様式の添加による脱水効果を示している。試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2〜8は比較のために使用された方法を示し、且つ、試験番号9は本発明に係る方法を示している。
【0079】
【表5】

【0080】
表5は、本発明に係る方法が優れた排水(脱水)および保持性能に帰着したことを示している。
【0081】
実施例6
実施例2の手順に従い、排水性能が評価された。この実施例においては、実施例5において使用された原料および攪拌および添加の様式が同様に使用された。
【0082】
表6は、異なる様式の添加による脱水効果を示している。試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2〜6は比較(参照)のために使用された添加剤を採用した方法を示し、且つ、試験番号7は本発明に係る方法を示している。
【0083】
【表6】

【0084】
表6は、本発明に係る方法が優れた脱水性能に帰着したことを示している。
【0085】
実施例7
実施例2の手順に従い、排水性能が評価された。この実施例においては、実施例5において使用された原料および攪拌および添加の様式が同様に使用された。
【0086】
表7は、異なる様式の添加による脱水効果を示している。試験番号1は、一切の添加剤なしの結果を示している。試験番号2〜7は比較のために使用された方法を示し、且つ、試験番号8は本発明に係る方法を示している。
【0087】
【表7】

【0088】
表7は、本発明に係る方法が優れた脱水性能に帰着したことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、
(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、
4.0meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性ポリマである第1ポリマと、
500,000より大きい分子量を有する第2ポリマと、
陰イオン性ポリマである第3ポリマと、
を添加する段階と、
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、
を含む、紙材を製造する方法。
【請求項2】
(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、
(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、
2.5meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性アクリルアミド系ポリマである第1ポリマと、
500,000より大きい分子量を有するアクリルアミド系ポリマである第2ポリマと、
陰イオン性ポリマである第3ポリマと、
を添加する段階と、
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、
を含む、紙材を製造する方法。
【請求項3】
(i)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を配備する段階と、
(ii)全ての高剪断箇所の後で上記懸濁液に対し、
2.5meq/gより高い荷電密度を有する陽イオン性ポリマである第1ポリマと、
水分散性ポリマである第2ポリマと、
陰イオン性ポリマである第3ポリマと、
を添加する段階と、
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙材を形成する段階と、
を含む、紙材を製造する方法。
【請求項4】
前記第1ポリマは有機ポリマである、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1ポリマは陽イオン性アクリルアミド系ポリマである、請求項1、3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ポリマは少なくとも500,000の分子量を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1ポリマは無機ポリマである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第1ポリマはポリ塩化アルミニウムである、請求項1、2または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2ポリマは1,000,000より大きい分子量を有する。請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記第2ポリマは陽イオン性である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2ポリマは陰イオン性である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3ポリマは無機ポリマである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3ポリマはケイ酸またはケイ酸塩系のポリマである、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第3ポリマはコロイド状シリカ系粒子を含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第3ポリマは有機ポリマである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第3ポリマはアクリルアミド系ポリマである、請求項1乃至10および14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−525654(P2008−525654A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548139(P2007−548139)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001847
【国際公開番号】WO2006/068576
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】