説明

紙材製造のための改良された組成物及びプロセス

製紙プロセスの様々なステップ間に適用されたときに、パルプ又は紙材の白色度を維持し、増進すると共に、色を向上させる組成物及びプロセスが特定されている。蛍光増白剤、及び/又はキレート化剤と組み合わせて使用されたときに、上記作用物質は、紙材プロセスにおいてこれまでに見出されていない相乗効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ及び紙材製造において、白色度及び蛍光特性を向上させて白色度の喪失を防止し、熱による黄変に対する耐性を増進する組成物及びプロセスに関する。より具体的には、本発明は、単独で、又は、蛍光増白物質の存在下で、紙材製品の白色度及び蛍光特性を効果的に増進すると共にその熱的安定性を高める組成物に関する。
【0002】
発明の背景
機械的又は化学的なパルプ化法により作製されたパルプは、使用される木材の種類及び繊維解離プロセスに依存して暗褐色から乳白色の範囲であり得る色を保有する。パルプは漂白されることで、多数の用途に対する白紙製品を生成する。
【0003】
漂白は、非漂白パルプに見られる光吸収物質の除去若しくは変質である。機械パルプの漂白における目的は、リグニンを可溶化させずにパルプを脱色することである。通常は、(例えば次亜硫酸ナトリウム等の)還元性又は(例えば過酸化水素等の)酸化性の漂白剤のいずれかが使用される。漂白は多くの場合、多ステッププロセスである。化学パルプの漂白は、蒸解ステップで開始する脱リグニンの延長である。漂白は多くの場合に多ステッププロセスであり、各ステップは、二酸化塩素漂白、酸素/アルカリ脱リグニン、及び過酸化物漂白を含むことができる。
【0004】
主として熱劣化に起因する変色は、漂白済パルプを採用する製紙プロセスの様々なステップにおいて、結果的な紙材製品において黄変と白色度喪失とに帰着する。当業界においては、完成した紙材又は紙材製品の蛍光特性を向上させる漂白剤及び蛍光増白剤のような化学物質に対して相当に精力が注がれている。しかし今日まで、結果は満足するにはほど遠く、変色及び黄変に起因する経済的損失は、現在においても当業界における相当の問題である。従って、依然として、パルプ及び紙材の白色度の喪失及び不都合な黄変に対する好適で実用的な解決策に対する要望が在る。
【0005】
発明の要約
本発明は、製紙プロセスにおいて白色度を向上させ、安定化すると共に、黄変に対する耐性を増進する組成物及び方法を提供する。
【0006】
1つの態様において、本発明は:(1)漂白済パルプ材料を準備するステップと;(2)上記漂白済パルプ材料を有効量の一種類又はそれ以上の還元剤に対して接触させるステップと;を具える増進された白色度と熱による黄変に対して増進された耐性とを有する漂白済パルプ材料を調製する方法である。
【0007】
別の態様において、本発明は:(1)漂白済パルプを準備するステップと;(2)上記漂白済パルプを含む原料懸濁水溶液を形成するステップと;(3)上記原料懸濁液を排水してシートを形成するステップと;(4)上記シートを乾燥させるステップと;を具え、上記漂白済パルプ若しくは上記原料懸濁液に対し、又は、上記シート上に有効量の一種類又はそれ以上の還元剤が添加される増進された白色度と熱による黄変に対して増進された耐性とを有する紙材製品を製造する方法である。
【0008】
別の態様において、本発明は、保存中に漂白済パルプ材料の白色度喪失及び黄変を防止する方法であって、有効量の一種類又はそれ以上の還元剤、及び選択的に、一種類又はそれ以上のキレート化剤、又は一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩を漂白済パルプ材料に対して添加するステップを具える方法である。
【0009】
別の態様において、本発明は、漂白済パルプと有効量の還元剤との混合生成物を具える漂白済パルプ材料であって、該漂白済パルプ材料は、上記還元剤により処理されない類似パルプ材料と、比較されたときに更に大きな白色度と黄変に対して増進された耐性とを有する漂白済パルプ材料である。
【0010】
出願人はまた、キレート化剤と組み合わされた還元剤は紙材製品の白色度を効果的に増進すること、更には、蛍光増白剤と組み合わせて使用される還元剤は該蛍光増白剤の効果を増進すると共に色体系を向上させることも見出した。従って、付加的な態様において、本発明は、キレート化剤及び/又は蛍光増白剤と組み合わせて還元剤を使用することで、更に大きな白色度と、熱による黄変に対して増進された耐性と、向上された色体系とを有する漂白済パルプ材料を調製する方法である。
【0011】
上記還元剤、蛍光増白剤及びキレート化剤は、単独で、又は、公知の添加物と組み合わせて使用されることで、所望の紙材製品の品質を増進し得る。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、高い蛍光白色度を呈する紙材及び紙材製品を製造する改良されたプロセスを提供する。本明細書において定義された一種類又はそれ以上の還元剤を製紙プロセスの任意の箇所においてパルプ、紙材、板紙又は薄紙に対して添加することにより、漂白済パルプ、及び、漂白済パルプから調製された紙材製品の熱による黄変に対する白色度安定化、色の向上及び白色度の増進が達成され得る。
【0013】
白色度は、青色光(457nm)に対する紙材からの反射による0%(絶対黒色)から(約96%の絶対白色度を有するMgO基準に対する)100%に渡る尺度でパルプ又は紙材の白さを記述するために使用される用語である。「熱による白色度喪失」は、時間、温度及び湿気の影響下における紙材及びパルプの白色度喪失である(非光化学的な白色度喪失)。「保存中の白色度喪失」は、保存状態下における経時的な熱による白色度喪失である。
【0014】
漂白済パルプ材料の黄変(白色度反転)は、漂白済パルプ、及び、漂白済パルプから調製された紙材、板紙、薄紙及び関連材料の経時的な白色度の喪失である。
【0015】
本明細書中に記述される還元剤は、製紙プロセスにおいて使用される任意の漂白済パルプ材料、及び、漂白済パルプから調製された任意の紙材製品に使用されるのに好適である。本明細書中で用いられるとき、「漂白済パルプ材料」は、漂白済パルプ、及び、漂白済パルプから調製された紙材、板紙、薄紙等の紙材製品を意味する。
【0016】
本発明に係る還元剤としては、漂白済パルプにおける官能基を高酸化種から低酸化種へと変換し得る化学物質が挙げられる。この変換による利点としては、製紙機械における白色度安定性、及び、蛍光増白剤の性能増進が挙げられる。
【0017】
一実施例において、上記還元剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩(ピロ亜硫酸塩)、スルホキシル酸塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩(ハイドロサルファイト)、ポリチオン酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸及びこれらの塩及び誘導体、ホルムアルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物及び他のアルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物、スルフィンアミド及びスルフィン酸のエーテル、スルフェンアミド及びスルフェン酸のエーテル、スルファミド、ホスフィン、ホスホニウム塩、亜リン酸塩、及び、チオ亜リン酸塩から成る群より選択される。
【0018】
本明細書中で用いられるとき、「亜硫酸塩」とは、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸カルシウム(CaSO)等の二塩基アルカリ及びアルカリ土類金属塩等の、亜硫酸HSOの二塩基金属塩を意味する。
【0019】
「亜硫酸水素塩」は、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、亜硫酸水素マグネシウム(Mg(HSO)のようなアルカリ及びアルカリ土類金属の一塩基塩等の、亜硫酸HSOの一塩基金属塩を意味する。
【0020】
「スルホキシル酸塩」は、スルホキシル酸亜鉛(ZnSO)等のスルホキシル酸HSOの塩を意味する。
【0021】
「メタ重亜硫酸塩(ピロ亜硫酸塩)」は、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)等のピロ亜硫酸Hの塩を意味する。
【0022】
「チオ硫酸塩」は、チオ硫酸カリウム(Na)等のチオ亜硫酸Hの塩を意味する。
【0023】
「ポリチオン酸塩」は、トリチオン酸ナトリウム(Na)、及び、ジチオン酸ナトリウムNa等のジチオン酸Hの塩等の、ポリチオン酸H(n=2〜6)の塩を意味する。
【0024】
「亜ジチオン酸塩(ハイドロサルファイト)」は、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイト)(Na)、亜ジチオン酸マグネシウム(MgS)等の、亜ジチオン酸(ヒドロ亜硫酸、次亜硫酸)Hの塩を意味する。
【0025】
「ホルムアミジンスルフィン酸(FAS)」は、式HNC(=NH)SOHの化合物、及び、ナトリウム塩HNC(=NH)SONa等の該化合物の塩及び誘導体を意味する。
【0026】
「アルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物」は、Rがアルキル、アルケニル、アリール及びアリールアルキルから選択されるとして、式RCH(OH)SOHの化合物及びその金属塩を意味する。代表的なアルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物としては、ホルムアルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物HOCHSONa等が挙げられる。
【0027】
「スルフィンアミド及びスルフィン酸のエーテル」は式R−S(=O)−Rの化合物を意味し、式中、Rは本明細書において定義され、RはOR及びNRから選択され、式中、R〜Rは独立してアルキル、アルケニル、アリール及びアリールアルキルから選択される。代表的なスルフィンアミドとしては、エチルスルフィン・ジメチルアミド(CHCHS(=O)N(CH)等が挙げられる。
【0028】
「スルフェンアミド及びスルフェン酸のエーテル」は式R−S−Rの化合物を意味し、式中、R及びRは上記で定義されている。代表的なスルフェンアミドとしては、エチルスルフェン・ジメチルアミド(CHCHSN(CH)等が挙げられる。
【0029】
「スルファミド」は式R−C(=S)−NRの化合物を意味し、式中、R、R及びRは上記で定義されている。代表的なスルファミドとしては、CHCHC(=S)N(CH等が挙げられる。
【0030】
「ホスフィン」は、式RPの通常の有機置換ホスフィンであるホスフィンPHの誘導体を意味し、式中、R〜Rは独立して、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル及びNRから選択され、式中、R及びRは上記で定義されている。代表的なホスフィンとしては、(HOCHP(THP)等が挙げられる。
【0031】
「亜リン酸塩」は、式(RO)(RO)(RO)Pの有機置換亜リン酸塩等の亜リン酸P(OH)の誘導体であり、式中、R〜Rは上記で定義されている。代表的な亜リン酸塩としては、(CHCHO)Pが挙げられる。
【0032】
「チオ亜リン酸塩」は、式(RO)(RO)(RS)Pの有機置換チオ亜リン酸塩等のホスホロチオ酸HSP(OH)の誘導体を意味し、式中、R〜Rは上記で定義されている。代表的なチオ亜リン酸塩としては、(CHCHO)(CHCHS)P等が挙げられる。
【0033】
「ホスホニウム塩」は、式Rの有機置換ホスフィンを意味し、式中、R及びR〜Rは上記で定義され、Xは任意の有機若しくは無機陰イオンである。代表的なホスホニウム塩としては、(HOCCHCHHCl(THP)、[(HOCH(SO2−(BTHP)等が挙げられる。
【0034】
「アルケニル」は、単一の水素原子の除去により少なくとも一個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖又は分枝炭化水素から誘導された一価基を意味する。アルケニルは、非置換であるか、又は、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシ及びハロゲンから選択された一個又はそれ以上の基により置換され得る。
【0035】
「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に付着したアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。メトキシ及びエトキシが好適である。
【0036】
「アルキル」は、単一の水素原子の除去により直鎖又は分枝の飽和炭化水素から誘導された一価基を意味する。アルキルは、非置換であるか、又は、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシ及びハロゲンから選択された一個又はそれ以上の基により置換され得る。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−及びiso−プロピル、n−、sec−、iso−及びtert−ブチル等が挙げられる。
【0037】
「アルキレン」は、2個の水素原子の除去による直鎖又は分枝の飽和炭化水素から誘導された二価基を意味し、例えば、1,2−エチレン、1,1−エチレン、1,3−プロピレン、2,2−ジメチルプロピレン等である。
【0038】
「アミノ」は式−NYの基を意味し、式中、Y及びYは独立してH、アルキル、アルケニル、アリール及びアリールアルキルから選択される。代表的なアミノ基としては、アミノ(−NH)、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジエチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。
【0039】
「アリール」は、約5から約14個の環原子を有する芳香族炭素環ラジカル及び複素環ラジカルを意味する。アリールは、非置換であるか、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシ及びハロゲンから選択された一個又はそれ以上の基で置換され得る。代表的なアリールとしては、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ピリジル、フリル、ピロリル、キノリル、チエニル、チアゾリル、ピリミジル、インドリル等が挙げられる。
【0040】
「アリールアルキル」は、アルキレン基を介して親分子部分に付着したアリール基を意味する。代表的なアリールアルキル基としては、ベンジル、2−フェニルエチル等が挙げられる。
【0041】
「ハロ」及び「ハロゲン」は、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0042】
「塩」は、無機若しくは有機の陰イオン性の対イオンの、金属、アンモニウム、置換アンモニウム若しくはホスホニウム塩を意味する。代表的な金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。代表的な陰イオン性の対イオンとしては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルホキシル酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ポリチオン酸塩、ハイドロサルファイト、ホルムアミジンスルフィン酸塩が挙げられる。
【0043】
一実施例において、上記還元剤は、置換されたホスフィン、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸塩から成る群より選択される。
【0044】
一実施例において、上記還元剤は亜硫酸水素ナトリウムである。
【0045】
本発明のプロセスは従来の製紙設備で実施され得る。製紙設備は動作及び機械的設計態様が多様であるが、様々な設備で紙材が製造されるプロセスは共通のステップを含む。製紙は典型的に、パルプ化ステップ、漂白ステップ、原料調製ステップ、ウェットエンドステップ及びドライエンドステップを含む。
【0046】
パルプ化ステップにおいては、機械的若しくは化学的な作用、又は両方により、セルロースの供給源から個々のセルロース繊維が遊離される。代表的なセルロースの供給源としては、限定はされないが、木材及び同様の「木質」植物、大豆、稲、綿、麦藁、亜麻、マニラ麻、麻、バガス、リグニン含有植物等、並びに、原紙及び再利用紙、薄紙及び板紙が挙げられる。斯かるパルプとしては、限定はされないが、砕木パルプ(GWD)、漂白済み砕木パルプ、熱機械パルプ(TMP)、漂白済み熱機械パルプ、化学熱機械パルプ(CTMP)、漂白済み化学熱機械パルプ、脱墨パルプ、クラフトパルプ、漂白済みクラフトパルプ、亜硫酸パルプ、及び、漂白済み亜硫酸パルプが挙げられる。再利用パルプは再利用ステップにおいては漂白されてもされなくても良いが、これらは本来的には漂白されると仮定される。予め漂白に委ねられていない上述のパルプの内の任意のパルプは、本明細書に記述されているように漂白されることで漂白済パルプ材料を提供し得る。
【0047】
一実施例において、漂白済パルプ材料は、バージンパルプ、再利用パルプ、クラフト、亜硫酸パルプ、機械パルプ、斯かるパルプの任意の組合せ、再利用紙、薄紙、及び、列挙された斯かるパルプから製造された任意の紙材、又は、これらの組み合わせから成る群より選択される。
【0048】
本発明の更なる利点は、本発明によれば、印刷等級のクラフト機械紙において、高価格のクラフトに対して低価格の機械パルプを代用し得ることである。本明細書中に記述された化学作用及び方法を使用すると、白色度と黄変に対する安定性とが高められて更に多量の機械パルプの使用が許容されることから、結果的な紙材製品の品質を損なわずに、対応してコストが削減される。
【0049】
パルプは、原料調製ステップにおいて水中に懸濁される。このステップにおいて、原料に対しては、増白剤、染料、顔料、填料、抗菌剤、消泡剤、pH制御剤、及び、排水助剤も添加され得る。本開示において使用される語句として、「原料調製」とは、ウェブの形成に先立ち行われ得る原料懸濁液の希釈、スクリーニング及び洗浄のような操作を含む。
【0050】
製紙プロセスの湿式終了ステップは、製紙機械の金網又はメッシュ上に原料懸濁液、即ちパルプ・スラリを析出させて繊維の連続的ウェブを形成すると共に、ウェブの排水及びウェブのコンソリゼーションを行い、シート(sheet)を形成するステップを具える。当技術分野で知られている任意の製紙機械が、本発明のプロセスと共に使用されるに好適である。斯かる機械としては、円網抄紙機、長網抄紙機、ツインワイヤ成形機、ティッシュ抄紙機等、及び、これらの改良例が挙げられる。
【0051】
製紙プロセスのドライエンドステップにおいて、ウェブは乾燥され、サイズプレス、カレンダ加工、表面改質剤によるスプレー塗付、印刷、切断、波形成形等の付加的処理に委ねられ得る。サイズプレス及びカレンダ加工用水箱に加え、乾燥された紙材は、スプレーブームを使用してスプレー塗付され得る。
【0052】
出願人はまた、以下に記述されるようにキレート化剤と組み合わされた還元剤は、パルプの熱的安定性を高め且つパルプにおける発色構造を還元することで紙材製品の白色度を効果的に増進することを見出した。
【0053】
一実施例においては、漂白済パルプ又は紙材製品に対して一種類又はそれ以上のキレート化剤が添加される。この実施例に係る適切なキレート化剤としては、パルプ構成成分と共に着色生成物を形成する遷移金属をキレート化すると共に、漂白済パルプ又は紙材製品における色生成反応に対して触媒作用を及ぼす化合物が挙げられる。
【0054】
一実施例において、上記キレート化剤は、有機ホスホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸、ジチオカルバミン酸塩、先の員の任意の塩、及び、これらの任意の組み合わせから成る群より選択された化合物である。
【0055】
「有機ホスホン酸塩」は、HEDP(CHC(OH)(P(O)(OH))、1−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイルビス−ホスホン酸((HO)P(O)CH(OH)CHCHP(O)(OH)))のような単一のC−P結合を含むホスホン酸HP(O)(OH)であって、好ましくは、DTMPA((HO)P(O)CHN[CHCHN(CHP(O)(OH))、AMP(N(CHP(O)(OH))、PAPEMP((HO)P(O)CHNCH(CH)CH(OCHCH(CH))N(CHN(CHP(O)(OH))、HMDTMP((HO)P(O)CHN(CHN(CHP(O)(OH))、HEBMP(N(CHP(O)(OH)CHCHOH)等のようにC−P結合に隣接して(近傍に)単一のC−N結合を含むホスホン酸HP(O)(OH)の有機誘導体を意味する。
【0056】
「有機リン酸塩」は、トリエタノールアミントリ(リン酸エステル)(N(CHCHOP(O)(OH))等の単一のC−P結合を含むホスホン酸P(O)(OH)の有機誘導体を意味する。
【0057】
「カルボン酸」は、一個又はそれ以上のカルボキシ基−C(O)OHを含む有機化合物、好ましくは、EDTA((HOCCHNCHCHN(CHCOH))、DTPA((HOCCHNCHCHN(CHCOH)CHCHN(CHCOH))等、及び、これらのアルカリ及びアルカリ土類金属塩等の、C−COH結合に隣接して(近傍に)単一のC−N結合を含むアミノカルボン酸を意味する。
【0058】
「ジチオカルバミン酸塩」としては、モノマ性ジチオカルバミン酸塩、ポリマ性ジチオカルバミン酸塩、ポリジアリルアミン・ジチオカルバミン酸塩、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレンビスジチオカルバミン酸二ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0059】
一実施例において、上記キレート化剤はホスホン酸塩である。
【0060】
一実施例において、上記ホスホン酸塩は、ジエチレン−トリアミン−ペンタメチレンホスホン酸(DTMPA)及びその塩である。
【0061】
一実施例において、上記キレート化剤はカルボン酸である。
【0062】
一実施例において、上記カルボン酸塩は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びその塩、及び、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩から選択される。
【0063】
出願人はまた、蛍光増白剤(「OBA」)と組み合わせて還元剤を使用すると、蛍光増白剤(OBA)の効果が増進されることを見出した。上記還元剤はまた、色体系も改善する。これにより、匹敵する白色度及び色を達成するために必要なOBA及び青色染料のような増白剤の量が減少され得る。OBA及び染料の幾分かを還元剤で置き換えると、パルプ及び紙材の製造者は、紙材製品における容認可能なレベルの白色度を維持し且つ目標色を達成し乍ら、製造コストを減少し得ると共に存在するOBA及び染料の全体量を減少し得る。一定の場合には、染料を完全に排除して色を維持することも可能であり得る。
【0064】
従って、別の実施例において、漂白済パルプ又は紙材製品に対して一種類又はそれ以上の蛍光増白剤(「OBA」)が添加される。
【0065】
「蛍光増白剤」は蛍光染料又は顔料であって、原料紙料に対して添加されたときに紫外線を吸収して可視スペクトルにおける高周波(青色)で、それを再放出することで白色に輝く外観を紙材シートにもたらす蛍光染料又は顔料である。代表的な蛍光増白剤としては、限定はされないが、アゾール、ビフェニル、クマリン;フラン;イースタンカラー・アンド・ケミカルズ社(ロードアイランド州)から入手可能なEccobrite(登録商標)及びEccowhite(登録商標)化合物のような陰イオン性、陽イオン性、及び、陰イオン性(中性)化合物等のイオン性増白剤;ナフチルイミド;ピラジン;クラリアント社(スイス、ムッテンツ)から入手可能なLeucophor(登録商標)等級の蛍光増白剤、及び、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(スイス、バーゼル)からのTinopal(登録商標)のような(例えばスルホン酸化された)置換スチルベン;限定はされないが、斯かる増白剤のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、有機塩及びアンモニウム塩等の斯かる化合物の塩;及び、一種類又はそれ以上の上記物質の組み合わせが挙げられる。
【0066】
一実施例において、上記蛍光増白剤は、ジスルホン酸化、テトラスルホン酸化及びヘキサスルホン酸化されたTinopal(登録商標)OBAの群から選択される。
【0067】
還元剤、キレート化剤及び/又は蛍光増白剤の添加量は、漂白済パルプ又は該漂白済パルプから調製される紙材製品の所望の白色度と黄変に対する耐性とを達成するに必要な量であり、且つ、当業者でよれば、キレート化剤若しくは蛍光増白剤の特性、処理されつつあるパルプ又は紙材、及び、適用方法に基づき容易に決定され得る。
【0068】
漂白済パルプ又は紙材製品に対して添加される還元剤の有効量は、還元剤により処理されないパルプ又は紙材と比較して、パルプ又は紙材の白色度と熱による黄変に対する耐性とを増進する還元剤の量である。白色度と熱による黄変に対する耐性とを決定する方法は、本明細書中に記述される。
【0069】
典型的には、漂白済パルプ又は紙材製品に対しては、加熱炉乾燥されたパルプに基づいて約0.005〜約2重量%、好適には約0.05〜約0.25重量%の還元剤が添加される。
【0070】
典型的な用途においては、漂白済パルプ又は紙材製品に対し、加熱炉乾燥されたパルプに基づいて、約0.001〜約1重量%、好適には約0.01〜約0.1重量%のホスホン酸塩、リン酸塩又はカルボン酸キレート化剤、及び/又は約0.002〜約0.02重量%のジチオカルバミン酸塩キレート化剤が添加される。
【0071】
蛍光増白剤は典型的には、加熱炉乾燥されたパルプに基づき、約0.005〜約2重量%、好ましくは0.05〜約1重量%の量の蛍光増白剤で添加される。
【0072】
上記還元剤、キレート化剤、及び/又は蛍光増白剤は、漂白済パルプ又は紙材に対し、製紙又は薄紙製造プロセスの任意の箇所で添加され得る。代表的な添加箇所しては、限定はされないが、以下の箇所が挙げられる:(a)待機収納器において、パルプ・スラリに対して;(b)保存、配合又は移送収納器において漂白ステップの後でパルプに対して;(c)シリンダ又は気流乾燥が追随するという漂白、洗浄及び脱水の後においてパルプに対して;(d)クリーナの前又は後に;(e)製紙機械ヘッドボックスに対するファンポンプの前又は後;(f)製紙機械の白水に対して;(g)サイロ又は零れ受けに対して;(h)例えばサイズプレス、塗付器又は噴霧バーを用いてプレス区画において;(i)例えばサイズプレス、塗付器又は噴霧バーを用いて乾燥区画において;(j)ウェハ収納器を用いてカレンダ上で;及び/又は、(k)オフマシンの塗付器又はサイズプレスにおいて紙材上に;及び/又は、(l)湾曲制御ユニットにおいて。
【0073】
還元剤、キレート化剤及び/又は蛍光増白剤が添加されるべき厳密な箇所は、関与する特定の設備、使用されつつある厳密なプロセス条件等に依存する。一定の場合、還元剤、キレート化剤、及び/又は蛍光増白剤は、最適な実効性のために1つ又はそれ以上の箇所で添加されても良い。
【0074】
適用は「分割供給」による等の製紙プロセスにおいて従来から使用されている任意の手段とされ得るが、斯かる供給によれば、還元剤、キレート化剤、及び/又は蛍光増白剤の一部は、例えば(乾燥器の前における)パルプ若しくは湿潤シート上等の製紙プロセスにおける1つの箇所で適用され、残存部分は、例えばサイズプレス等の後続的箇所で添加される。
【0075】
キレート化剤、及び/又は蛍光増白剤は、還元剤の前に、後に、又は、それと同時に、漂白済パルプ又は紙材製品に対して添加され得る。蛍光増白剤、及び/又はキレート化剤はまた、還元剤と共に調製されても良い。
【0076】
一実施例においては、一種類又はそれ以上の還元剤、及び一種類又はそれ以上の蛍光増白剤が表面サイズ溶液と混合され、サイズプレスにおいて適用される。
【0077】
一実施例において還元剤は、漂白ステップの後で漂白済パルプに対して、保存、配合又は移送収納器で添加される。
【0078】
これらの様々な箇所にて還元剤、キレート化剤、及び/又は蛍光増白剤はまた、歩留り改良剤、サイジング助剤及び溶液、澱粉、沈殿炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、又は、他のクレイ若しくは填料、及び、増白添加物のような製紙において典型的に使用される担体又は添加物と共に添加され得る。
【0079】
一実施例において還元剤、キレート化剤及び/又は蛍光増白剤は、一種類又はそれ以上の部分的に中和されたポリカルボン酸、好ましくは、nを約10〜約50,000としたポリアクリル酸(CHCH(COH)[CHCH(COH)]CHCHCOHのようなポリカルボン酸と組み合わせて使用される。このポリカルボン酸は、水酸化ナトリウムのようなアルカリにより(以下で論じられるように典型的には5〜6である)目標pHへと中和され得る。
【0080】
一実施例において、本発明は、一種類又はそれ以上のキレート化剤、一種類又はそれ以上の還元剤及び一種類又はそれ以上のポリカルボン酸を具える調製物である。この調製物は、好ましくは約4〜7、更に好ましくは約5〜6のpHを有する。
【0081】
一実施例において、本発明は、一種類又はそれ以上の還元剤及び一種類又はそれ以上の蛍光増白剤、及び、選択的に一種類又はそれ以上のキレート化剤、又は一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩を具える調製物である。この実施例に係る調製物は、好ましくは約7〜11、更に好ましくは約9〜10のpHを有する。
【0082】
上記還元剤、キレート化剤及び蛍光増白剤及びポリカルボン酸塩は、製紙において従来から使用されている他の添加物に加えて使用されることで、完成紙材製品の一種類又はそれ以上の特性を向上させ、紙材自体の製造プロセスを助力し、又は、その両方を行い得る。これらの添加物は概略的に、機能性添加物又は制御添加物のいずれかとして特徴付けられる。
【0083】
機能性添加物は典型的には、完成紙材製品に対する一定の特に所望される特性を向上若しくは付与するために使用される添加物であり、限定はされないが、増白剤、染料、填料、サイズ剤、澱粉及び接着剤等が挙げられる。
【0084】
一方、制御添加物は、紙材の物理的特性に対してそれほど影響せずに全体的プロセスを改善するために紙材を製造するプロセスの間に取入れられる添加物である。制御添加物としては、殺生物剤、歩留り改良剤、消泡剤、pH制御剤、ピッチ制御剤、及び、排水助剤が挙げられる。本発明のプロセスを用いて製造された紙材及び紙材製品は、一種類又はそれ以上の機能性添加物及び/又は制御添加物を含有し得る。
【0085】
顔料及び染料は紙材に対して色を付与する。染料としては、共役二重結合系を有する有機化合物;アゾ化合物;金属アゾ化合物;アントラキノン類;トリアリールメタンのようなトリアリール化合物;キノリン及び関連化合物;酸性染料(ミョウバンのような有機陽イオンと共に使用されるスルホン酸基を含有する陰イオン性有機染料);塩基性染料(アミン官能基を含有する陽イオン性有機染料);及び、直接染料(高分子量であると共に、セルロースに対する特定の直接的親和力を有する酸形式の染料);並びに、上記に列挙された好適な染料化合物の組み合わせ;が挙げられる。顔料は、白色又は着色のいずれかとされ得る微細に分割された無機化合物である。製紙業界において最も一般的に使用される顔料は、クレイ、炭酸カルシウム及び二酸化チタンである。
【0086】
填料は紙材に対して添加されることで、乳白度及び白色度を高める。填料としては、限定はされないが、炭酸カルシウム(方解石);沈殿炭酸カルシウム(PCC);硫酸カルシウム(様々な水和形態を含む);アルミン酸カルシウム;酸化亜鉛;タルクのようなケイ酸マグネシウム;鋭錐石又は金紅石のような二酸化チタン(TiO);水和されたSiO及びAlから成るクレイ又はカオリン;合成クレイ;雲母;蛭石;無機凝集体;真珠岩;砂;砂利;砂岩;ガラスビーズ;エーロゲル;キセロゲル;シーゲル(seagel);フライアッシュ;アルミナ;ミクロスフェア;中空ガラス球;孔性セラミック球;コルク;シーズ;軽量ポリマ;ゾノトライト(結晶質のケイ酸カルシウムゲル);軽石;剥離岩;廃棄コンクリート製品;部分的に水和され又は水和されない水硬性セメント粒子;及び、珪藻土、並びに、斯かる化合物の組み合わせが挙げられる。
【0087】
サイズ剤は製造プロセスの間において紙材に添加されることで、紙材に浸透する液体に対する耐性進展を助力する。サイズ剤は、内部サイズ剤又は外部(表面)サイズ剤とされ得ると共に、硬質サイジング若しくは弛緩サイジング又は両方のサイジング方法に対して使用され得る。更に具体的にはサイズ剤としては、ロジン;ミョウバン(Al(SO)と共に沈殿されたロジン;アビエチン酸、及び、ネオアビエチン酸及びレボピマール酸のようなアビエチン酸同族体;ステアリン酸及びステアリン酸誘導体;炭酸ジルコニウムアンモニウム;GE−OSIから入手可能なRE−29及びダウコーニング社(ミシガン州、ミッドランド)から入手可能なSM−8715のようなシリコーン及びシリコーン含有化合物;Gortexのような、Rを陰イオン性、陽イオン性又は別の官能基として一般式CF(CFRのフッ素化合物;全てがハーキュリーズ社(Hercules)(デラウェア州、ウィルミントン)から市販されているAquapel 364、Aquapel (I 752、Hercon) 70、Hercon 79、Precise 787、Precise 2000及びPrecise 3000のようなアルキルケテン・ダイマ(AKD);及び、アルキル琥珀酸無水物(ASA);ASA又はAKDと陽イオン性澱粉との乳濁液;ミョウバンを取入れたASA;澱粉;ヒドロキシメチル澱粉;カルボキシメチル・セルロース(CMC);ポリビニル・アルコール;メチルセルロース;アルギン酸塩;蝋状物質;蝋状物質乳濁液;及び、斯かるサイズ剤の組み合わせが挙げられる。
【0088】
澱粉は製紙において多くの用途を有する。例えばそれは、保持剤、乾燥強度剤及び表面サイズ剤として機能する。澱粉としては、限定はされないが、アミロース;アミロペクチン;25%のアミロース及び75%のアミロペクチン(コーンスターチ)及び20%のアミロース及び80%のアミロペクチン(馬鈴薯澱粉)のような、アミロース及びアミロペクチンを様々な量で含有する澱粉;加水分解された澱粉;当業界においては「ペースト化澱粉」としても知られる加熱済澱粉;第三級アミンと澱粉との反応から帰着して四級アンモニウム塩を形成するような陽イオン性澱粉;陰イオン性澱粉;(陽イオン性及び陰イオン性の両方の機能性を含む)両性澱粉;セルロース及びセルロース誘導化合物;及び、これらの化合物の組み合わせが挙げられる。
【0089】
本発明の方法は、白色表面を有する紙材製品を産出する。更に、上記の新規な組成物は、通常的な使用中の長期的な変色から紙材を保護する。
【0090】
上記内容は、例示目的で呈示される以下の各例であって本発明の有効範囲の制限を意図しないという各例を参照することで、更によく理解され得る。
【0091】


【0092】
実験例
【0093】
これらの実験例においては、十分な50%水酸化ナトリウム水溶液が添加されることで、試験される作用物質又は組成物に対する適切なpHが達成された。これらの実験例における全ての百分率は、乾燥パルプに基づく重量%で与えられる。
【0094】
これらの実験例において、以下の語句は表された意味を有するものとする。
Brは、ISO白色度R457(TAPPI525);
Yeは、E313黄色度;
ImBrは、適用後のR457白色度;
TABrは、熱劣化後のR457白色度;
TA喪失は、熱劣化後の白色度の喪失;
Inh.は、白色度喪失の%抑制;
%Inh.=100−100×(ImBr−TABr)/(ImBr−TABr)対照
WIは、E313白度;
TMPは、熱機械パルプ;
CTMPは、化学熱機械パルプ;
RMPは、精砕機械パルプ;
OBAは、蛍光増白剤;
FASは、ホルムアミジンスルフィン酸;
TCPは、(HOCHCHPHCl、即ちtris−カルボキシエチルホスホニウム塩化水素;
BTHPは、[(HOCHP](SO)、即ち硫酸テトラヒドロキシメチルホスホニウム;
THPは、(HOCHP、即ちtris−ヒドロキシメチルホスフィン;
EDTAは、(HOCCHNCHCHN(CHCOH)、即ちエチレンジアミン四酢酸;
DTPAは、(HOCCHNCHCHN(CHCOH)CHCHN(CHCOH)、即ちジエチレントリアミン五酢酸;
DTMPAは、HPCHN[CHCHN(CHPO、即ちジエチレン−トリアミン−ペンタメチレンホスホン酸;及び、
DTCは、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム。
【0095】
処理
漂白済パルプから手漉き紙が製造されてから実験において使用され、その場合に還元剤はドラム乾燥の前又はドラム乾燥の後で(プレスの前又は後で)湿潤シート上に適用された(ドラム乾燥の間の温度:100℃)。第3の選択肢は、分割供給適用であった。ドラム乾燥器上にて、一回又はそれ以上の表面サイズ剤適用をした。
【0096】
試験された作用物質又は組成物の溶液の装填量は、パルプ・サンプルの乾燥重量に基づいて決定された。上記作用物質又は組成物の溶液はロッドを用いて水溶液として、可及的に均一に適用された。各試験シートは実験室のドラム乾燥器を用いて均一条件下で乾燥され(一回)、その後、白色度の測定後に、以下に記述されるような老化促進試験に委ねられた。
【0097】
白色度反転実験(熱劣化、紙材):
切り離された試験シートの3×9cmサンプルが70℃、100%湿度で約3日に渡り水浴内に維持された。各サンプルは、白色度の測定前に恒湿室で平衡化された。
【0098】
白色度反転実験(熱劣化、パルプ):
パルプ・サンプル(一日一回として10%稠度、5gのパルプ)がプラスチック袋内にシールされ、水浴において70℃で3〜6時間維持された。手漉き紙が調製され、白色度を測定する前に恒湿室内で平衡化された。
【0099】
試験機器:
実験室ドラム乾燥器。
“Elrepho 3000”、“Technidyne Color Touch 2(型式ISO)”、又は、白色度測定のための別の機器。
日立F−4500蛍光分光計、又は、相対的蛍光強度測定のための別の機器。
微量ピペット。
表面サイズ剤適用キット(パッド、サイズ剤、3本の適用ロッド)。
恒湿室(23℃、50%湿度)。
浸漬方法に対する紙材サンプル100mL適用キュベットを具えた浮遊プラスチックボックスを収容する水浴/サーモスタット。
【0100】
乾燥表面適用手順(表面サイジング):
1.標準的手順に従い8×8インチの手漉き紙を調製する。目標乾燥重量は2.5gである。湿潤した手漉き紙をドラム乾燥器上に1サイクル通過させる。
2.上記シートを4個の更に小寸の矩形へと切断する(各々が約0.625gの重量)。
3.上記シートの側部よりも長いスコッチテープを用いて、上記小寸矩形(試験シート)の一側をガラスパッドに対してテープ止めする。
4.適用ロッドはスコッチテープ上に載置され、微量ピペットを用いて0.2mlの体積の混合物が、ロッドに当接させてテープ上に適用される。
5.作用物質溶液は、それがテープ上に均一に分散されて試験シート全体を覆うような様式で適用される。
6.還元剤化合物溶液がシート全体上に均一に適用される様に、上記ロッドを用いて上記テープから溶液を迅速にシートに被せる。
7.試験シートをドラム乾燥し、室温で平衡化させる。
8.白色度及び黄色度を測定する。
【0101】
乾燥表面適用手順(表面サイジング、浸漬方法):
1.標準的手順に従い8×8インチの手漉き紙を調製する。目標乾燥重量は2.5gである。湿潤した手漉き紙をドラム乾燥器上に1サイクル通過させる。
2.シートの1/8の細片を切断する(0.31g)。
3.50mlの試験管内に、所定のピックアップ割合及び目標添加量に基づき、(必要であれば)事前蒸解された澱粉及び還元剤組成物溶液の溶液を調製する。
4.紙材細片を上記溶液に10秒浸漬し、35秒滴下させてからそれをプレスに通す。
5.試験シートをドラム乾燥し、室温で平衡化させる。
6.白色度及び黄色度を測定する。
【0102】
ウェットエンド適用手順:
1.8×8インチのシートが製造され、底部における2枚の吸取紙及び頂部における1枚の吸取紙と共に、プレスを用いて脱水される。プレスされたシートの稠度は約40%である。
2.頂部の吸取紙及び最底部の吸取紙をプレス後にシートから除去する。
3.底部の1枚の吸取紙と共にシートを等しい寸法の更に小寸の4枚の試験シートへと切断する(シートの概略的乾燥重量は0.625gである)。
4.「乾燥表面適用手順」において記述されたように、試験シートを吸取紙と共にガラスパッドに対してテープ止めする。
5.乾燥表面適用手順に記述されたように、溶液1を適用する。
6.適用後、湿潤した吸取紙と共に試験シートをガラスパッドから取り外し、テープを除去して、吸取紙を試験シートから分離する。吸取紙は廃棄される。
7.試験シートは次にドラム乾燥され、室温で平衡化される。
【0103】
分割供給適用手順:
1.標準的手順に従い、8×8インチのシートが製造される。
2.スクリーン上に形成された上記シートに対しては4枚の吸取紙が当てられる。
3.次に吸取紙と共に上記シートは高重量の金属ローラを用いて加圧される。このプロセスはシートから過剰水分を除去して、シートの稠度を約20%まで高める。
4.3枚の頂部吸取紙がシートから除去される。
5.次に、シート及び1枚の吸取紙をスクリーンから取り外し、「ウェットエンド適用手順」に記述されたように4枚の更に小寸片に切断する。
6.次に、シート及び吸取紙を「ウェットエンド適用手順」に記述されたようにガラスパッドに対してテープ止めする。
7.「ウェットエンド適用手順」に記述されたように、溶液2を適用する。
8.次に、試験シートを各側上の2枚の吸取紙と共にプレスする。
9.プレスの後、全ての吸取紙を取り外し、シートをドラム乾燥する。次に、シートに対して溶液2を適用し、「乾燥表面適用手順」のステップ3から8に記述されたように、測定する。
【0104】
パルプ適用手順:
各化学物質を直接的にパルプ(希薄原料又は濃い原料)に対して添加し、シール袋内でパルプと混合した。OBA増進のためのパルプ適用手順において、各化学物質を20%稠度における漂白済クラフトパルプに対して直接的に添加し、シール袋内でパルプと混合し、45〜80℃で30分維持した。パルプを5%稠度まで希釈し、OBAを添加し、パルプと混合し、スラリを50℃で20分維持した。次に、上記スラリを更に希釈し、標準的手順に従って手漉き紙を調製した。
【0105】
試験結果。
【0106】
1.粉砕機試行
試行データをサザンクラフトミルで収集した。以下の表はサンプルデータを与える。幾つかの試験において、5ポンド/トン、及び更なる添加量で、サイジング溶液中のOBAと共にサイズプレスにおいて生成物(組成物A)を適用すると、(DE値の減少に反映された)紙材シートの改良された色を伴いながら1.5ポイントの白色度増大が一貫して実現された。標準的な粉砕機条件(浸透組成物の適用なし)に戻ると、白色度はバックグラウンドレベルまで減少する結果となった。この実験は3回再現された。
【0107】


【0108】
幾つかの組成物を試験し、PM用途の実験室シミュレーションにおける良好な結果を与えた。表1に列挙されない各化学物質(組成物)は40%溶液として適用された。
【0109】
2.還元剤:メタ重亜硫酸ナトリウム(30%溶液)
【0110】


【0111】


【0112】


【0113】


【0114】


【0115】


【0116】
表3〜表8は紙材白色度に関する還元剤である(メタ重亜硫酸)亜硫酸水素ナトリウム及び白色度増進組成物の効果を例証しており;上記還元剤は乾燥器における白色度喪失を部分的に補償し(表8)、白色度を改善している(表3から表8)。上記化学作用は、OBAの存在下で白色度を更に向上させる(表5)。
【0117】
3.メタ重亜硫酸ナトリウム以外の還元剤
澱粉によるモデル表面サイズ溶液における適用
【0118】


【0119】


【0120】


【0121】
表9から表11は、メタ重亜硫酸ナトリウム以外のFAS及びリン(III)化合物のような還元化学物質の効果を例証している。
【0122】
4.キレート化剤−メタ重亜硫酸塩組成物
【0123】


【0124】


【0125】


【0126】


【0127】


【0128】


【0129】


【0130】


【0131】


【0132】


【0133】


【0134】


【0135】


【0136】


【0137】


【0138】


【0139】
表12から表27は、還元剤が単一種類若しくは複数種類のキレート化剤と組み合わされた場合における組成物の適用を例証している。異なる組み合わせが比較され得る(全てが有効)。各調製物構成は、熱劣化に対する紙材の長期の白色度安定性を向上させる(表24から表27)。この一群のデータは、各組成物によるOBA活性化も例証している(表12から表14、表25)。上記調製物構成を適用すると、蛍光増白剤の添加量が減少され得る。表16及び表17は、蛍光に対する上記調製物構成の効果を例証している。
【0140】
5.ウェットエンド適用:後時に適用されるOBAの性能向上につながるパルプにおける組成物の別体的な適用
後続的なOBA増進に対するパルプ適用手順(80℃)
【0141】


【0142】


【0143】


【0144】
表28〜表30は、組成物の先行適用を介したOBAの活性化を例証している。
【0145】
6.ウェットエンド適用:組成物中への低添加量のジチオカルバミン酸塩の導入
【0146】


【0147】


【0148】


【0149】
上記データ(表31から表33)は、提案された調製物の適用時における白色度の回復及び長期安定化を例証している。
【0150】
上記において、本発明は、代表的又は例示的な実施例に関して記述されたが、これらの実施例は本発明を網羅又は限定することを意図していない。寧ろ本発明は、添付の各請求項により定義された本発明の精神及び有効範囲内に含まれる全ての代替物、改良物及び均等物を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増進された白色度と熱による黄変に対する増進された耐性とを有する漂白済パルプ材料を調製する方法において:
i) 漂白済パルプ材料を準備するステップと;
ii)上記漂白済パルプ材料を有効量の一種類又はそれ以上の還元剤に対して接触させるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法が、前記漂白済パルプ材料を一種類又はそれ以上の蛍光増白剤と接触させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法が、前記漂白済パルプ材料を一種類又はそれ以上のキレート化剤と接触させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記漂白済パルプ材料が、バージンパルプ、再利用パルプ、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、機械パルプ、このようなパルプの任意の組合せ、再利用紙、薄紙、及び、このようなパルプから製造された任意の紙材若しくは紙材製品、又は、これらの組み合わせから成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記還元剤が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩(ピロ亜硫酸塩)、スルホキシル酸塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩(ハイドロサルファイト)、ポリチオン酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸、及びこれらの塩及び誘導体、ホルムアルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物及び他のアルデヒド亜硫酸水素塩付加生成物、スルフィンアミド及びスルフィン酸のエーテル、スルフェンアミド及びスルフェン酸のエーテル、スルファミド、ホスフィン、ホスホニウム塩、亜リン酸塩、及び、チオ亜リン酸塩から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記還元剤が、置換されたホスフィン、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸塩から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記還元剤が、亜硫酸水素ナトリウムであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項3記載の方法において、前記キレート化剤が、有機ホスホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸、ジチオカルバミン酸塩、先の員の任意の塩、及び、これらの任意の組み合わせから成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記キレート化剤が、ジエチレン−トリアミン−ペンタメチレンホスホン酸(DTMPA)及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びその塩、及び、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2記載の方法において、前記蛍光増白剤が、ジスルホン酸化、テトラスルホン酸化又はヘキサスルホン酸化されたスチルベン誘導体から選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法が、前記漂白済パルプ材料を一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩と接触させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記ポリカルボン酸塩が、部分的に中和されたポリアクリル酸であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法が、前記漂白済パルプ材料を一種類又はそれ以上の蛍光増白剤、一種類又はそれ以上のキレート化剤、及び一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩と接触させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項2記載の方法において、前記還元剤及び前記蛍光増白剤が表面サイズ溶液と混合され、サイズプレスにおいて前記漂白済パルプ材料に対して適用されることを特徴とする方法。
【請求項15】
保存の間において漂白済パルプ材料の白色度喪失及び黄変を防止する方法において、有効量の一種類又はそれ以上の還元剤、及び選択的に、一種類又はそれ以上のキレート化剤、一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩、又は、これらの組み合わせを漂白済パルプ材料に添加するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記還元剤及び選択的なキレート化剤及びポリカルボン酸塩が、漂白ステップの後で、保存、混合又は移送収納器内で漂白済パルプに添加されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法に従って調製され、増進された白色度と熱による黄変に対する増進された耐性とを有する漂白済パルプ材料。
【請求項18】
増進された白色度と熱による黄変に対する増進された耐性とを有する紙材製品を製造する方法において:
i) 漂白済パルプを準備するステップと;
ii) 上記漂白済パルプを具える原料懸濁水溶液を形成するステップと;
iii)上記原料懸濁液を排水してシートを形成するステップと;
iv) 上記シートを乾燥させるステップと;
を具え、前記漂白済パルプ若しくは前記原料懸濁液に対し、又は、前記シート上に有効量の一種類又はそれ以上の還元剤が添加されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法が、前記漂白済パルプ若しくは前記原料懸濁液に対し、又は、前記シート上に、一種類又はそれ以上のキレート化剤、一種類又はそれ以上の蛍光増白物質、若しくは、一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩、又は、これらの組み合わせを添加するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18記載の方法に従って調製された紙材製品。
【請求項21】
漂白済パルプと有効量の還元剤との混合生成物を具える漂白済パルプ材料において、該漂白済パルプ材料が、上記還元剤を有さない類似パルプ材料と比較されたときに更に大きな白色度と黄変に対して増進された耐性とを有する漂白済パルプ材料。
【請求項22】
請求項21記載の漂白済パルプ材料が、有効量の一種類又はそれ以上のキレート化剤、蛍光増白物質若しくはポリカルボン酸塩又はこれらの組み合わせを更に具えることを特徴とする漂白済パルプ材料。
【請求項23】
調製物において、一種類又はそれ以上の還元剤、一種類又はそれ以上のキレート化剤、及び、一種類又はそれ以上のポリカルボン酸を具えることを特徴とする調製物。
【請求項24】
調製物において、一種類又はそれ以上の還元剤、及び一種類又はそれ以上の蛍光増白剤、及び選択的に、一種類又はそれ以上のキレート化剤、一種類又はそれ以上のポリカルボン酸塩、又は、これらの組み合わせを具えることを特徴とする調製物。

【公表番号】特表2008−536020(P2008−536020A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505649(P2008−505649)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/013479
【国際公開番号】WO2006/110751
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】