説明

紙用柔軟剤

【課題】良好な柔らかさ、滑らかさ、しっとり感を有する紙が得られ、かつ紙力の低下が小さい紙用柔軟剤を提供すること。
【解決手段】 グリセリン(A)、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)、およびジグリセリン(C)からなり、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)のオキシアルキレン基の炭素数が2〜3、アルキレンオキシドの平均付加モル数が5〜30であり、グリセリン(A)とポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)との質量比が75/25〜98/2、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)とジグリセリン(C)との質量比が40/60〜90/10である紙用柔軟剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用柔軟剤に関する。より詳細には、柔らかさ、滑らかさ、しっとり感を向上することができ、かつ紙力低下が小さい紙用柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生紙、特にティシューペーパー、トイレットペーパーは使用時に皮膚に直接触れるため肌触りが良い、すなわち柔らかく、表面が滑らかである紙が求められている。柔らかさおよびしっとり感を向上した紙を得る方法として、特許文献1には、吸湿性を有する塩類、多価アルコール、糖類等のうち少なくとも1種を含有する紙が開示されている。このように、吸湿性を有する多価アルコール等を塗布したティシューはローションティシューとしてティシューの使用頻度が高い花粉症患者を中心に市場が拡大している。市場が拡大していく中で、ローションティシューには柔らかさに加えて、より滑らかな肌触りが求められるようになっている。紙の柔らかさと滑らかさを向上させる方法として特許文献2には多価アルコールと炭素数8〜24のアルキル基を有する4級アンモニウム塩を含有する紙が開示されている。しかしながら、これらの方法では柔らかさと滑らかさの向上は得られるが、長鎖アルキル基を有する化合物を用いているために紙力が低下する場合がある。一方、紙力を低下させずに柔らかさを向上させる方法として、特許文献3には、多価アルコールのアルキレンオキシド付加体を含有する処理剤が開示されている。しかし、この方法では紙力低下の抑制と柔らかさの向上は得られるが、しっとり感の向上については十分でない。このように、柔らかさ、滑らかさ、しっとり感の向上と紙力低下の抑制を両立させることは困難であるのが現状である。
【特許文献1】特開平5−156596号公報
【特許文献2】特開平7−109693号公報
【特許文献3】特開2004−84116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、良好な柔らかさ、滑らかさ、しっとり感を有する紙が得られ、かつ紙力の低下が小さい紙用柔軟剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意検討した結果、グリセリンにポリオキシアルキレンメチルグルコシドおよびジグリセリンを組み合わせた紙用柔軟剤が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、
グリセリン(A)、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)、およびジグリセリン(C)からなり、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)のオキシアルキレン基の炭素数が2〜3、アルキレンオキシドの平均付加モル数が5〜30であり、グリセリン(A)とポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)との質量比が75/25〜98/2、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)とジグリセリン(C)との質量比が40/60〜90/10である紙用柔軟剤、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紙用柔軟剤は、良好な柔らかさ、滑らかさ、しっとり感と十分な紙力を紙に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の紙用柔軟剤は、グリセリン(A)、およびポリオキシアルキレメチルグルコシド(B)、ジグリセリン(C)からなる。
【0008】
以下、各成分について説明する。
(A)グリセリン
本発明に用いるグリセリンは基材であり、紙に対して、柔らかさおよびしっとり感の向上を付与することに寄与する。
(B)ポリオキシアルキレンメチルグルコシド
本発明に用いるポリオキシアルキレンメチルグルコシドは、紙に対して、紙力維持および滑らかさの向上を付与することに寄与する。本発明のポリオキシアルキレンメチルグルコシドとグリセリンとを組み合わせることにより、紙の紙力低下を抑えて、しっとり感、柔らかさと滑らかさを同時に向上させることができる。ポリオキシアルキレンメチルグルコシドのオキシアルキレン基の炭素数は2〜3であり、具体的にはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基である。好ましくはオキシエチレン基である。オキシアルキレン基の平均付加モル数は5〜30であり、好ましくは7〜20である。平均付加モル数が5未満の場合には滑らかさの向上が不十分となり、30モルを超える場合には柔らかさの向上が不十分となる場合がある。
(C)ジグリセリン
本発明に用いるジグリセリンは、紙に対して、しっとり感の向上を付与することに寄与する。ジグリセリンを、グリセリンおよびポリオキシアルキレンメチルグルコシドと組み合わせることにより、より良好なしっとり感が得られる。
(D)紙用柔軟剤
本発明の紙用柔軟剤は、A成分であるグリセリン(A)およびB成分ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)、C成分であるジグリセリン(C)からなる。
【0009】
本発明の紙用柔軟剤において、A成分とB成分との質量比は75/25〜98/2である。好ましくは80/20〜95/5である。98/2を超える場合には滑らかさの向上が不十分であり、紙力の低下が大きい場合がある。75/25未満の場合には十分なしっとり感が得られない場合がある。
【0010】
本発明の紙用柔軟剤において、B成分とC成分との質量比は40/60〜90/10である。好ましくは50/50〜80/20である。90/10を超える場合には十分なしっとり感が得られない場合があり、40/60未満の場合には滑らかさの向上が不十分である。
【0011】
本発明の紙用柔軟剤は、取扱い性を良くするために溶媒を用いて粘度を低減させて使用することができる。
【0012】
本発明の紙用柔軟剤の具体的な塗布方法としては、転写印刷方式、コーター、スプレーなどが挙げられる。好ましくは転写印刷方式である。本発明の紙用柔軟剤を衛生紙原紙に塗布してから2枚重ねの加工を行ってもよく、2枚重ねの加工を行った後に塗布を行ってもよい。
【実施例】
【0013】
本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
(紙用柔軟剤調製例1)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた500mLの4つ口フラスコにグリセリン324g、ポリオキシエチレン(10モル)メチルグルコシド28g、ジグリセリン8g、イオン交換水40gを仕込み50℃で30分撹拌し、柔軟剤組成物1を得た。
(柔軟剤組成物調製例2〜11)
表1および表2に示す化合物を表1および表2に示す割合で用いて柔軟剤組成物調製例1と同様の操作を行い、柔軟剤組成物2〜11を得た。
【0014】
(柔軟紙の調製)
イオン交換水を用いて柔軟剤組成物1を2倍に希釈し、ハンドスプレーを用いてティシューペーパー1枚(市販されている2枚1組を1枚とする)に噴霧した。噴霧前後のティシューペーパーの重量差からA成分、B成分、C成分の合計が20.2質量%塗布されていた。柔軟剤組成物1塗布ティシューペーパーを室温23℃、湿度50%の恒温恒湿室で48時間保管した後に以下の評価を行った。
【0015】
(柔軟性および保湿感の評価)
ティシューペーパー1枚を女性評価者が片手で握り、柔らかさ、滑らかさおよびしっとり感について、グリセリンを塗布した比較例1と比較してそれぞれ以下の評価基準に従い評価を行った。評価者10人の平均値を評価値とした。それぞれ評価値が2.5以上のものを柔らかさ、滑らかさ、しっとり感に優れると評価した。結果を表1〜2に示す。
<柔軟性の評価基準>
4点:非常に柔らかい。
3点:柔らかい。
2点:比較例1と同じ。
1点:硬い。
<滑らかさの評価基準>
4点:非常に滑らかである。
3点:滑らかである。
2点:比較例1と同じ。
1点:滑らかでない。
<しっとり感の評価基準>
4点:非常にしっとりしている。
3点:しっとりしている。
2点:比較例1と同じ。
1点:しっとりしていない。
【0016】
(紙力の評価)
調湿したティシューペーパーを120×15mmに切り、引張圧縮試験機(株式会社今田製作所製SV−201−0−SH)を用いて紙の引張り強度を測定し、紙力の評価とした。引張り強度が、1.3N以上のものを紙力が良好とした。結果を表1〜2に示す。
<引張り強度評価基準>
1.3N以上:引張り強度良好
1.3N未満:引張り強度不十分
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表1に示すように実施例1〜5の紙用柔軟剤はいずれも良好な紙力および柔らかさ、滑らかさ、しっとり感を有する紙を得ることができる。
これに対して比較例1は、グリセリンのみを塗布しているので、柔らかさ、滑らかさ、しっとり感の向上が不十分であり、紙力の低下も大きい。比較例2は、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドのみ塗付しているので、しっとり感の向上が不十分である。比較例3は、グリセリンとポリオキシアルキレンメチルグルコシドの質量比が本発明の範囲を外れているので、しっとり感の向上が不十分である。比較例4は、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドとジグリセリンの質量比が本発明の範囲を外れているので、滑らかさの向上が不十分である。比較例5は、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドではなく4級アンモニウム塩を用いているので、紙力の低下が大きい。比較例6は、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドではなくポリエチレングリコールを用いているので、滑らかさとしっとり感の向上が不十分であり、紙力の低下も大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン(A)、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)、およびジグリセリン(C)からなり、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)のオキシアルキレン基の炭素数が2〜3、アルキレンオキシドの平均付加モル数が5〜30であり、グリセリン(A)とポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)との質量比が75/25〜98/2、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド(B)とジグリセリン(C)との質量比が40/60〜90/10である紙用柔軟剤。

【公開番号】特開2010−24559(P2010−24559A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184627(P2008−184627)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】