紙葉類処理装置及び紙葉類処理プログラム
【課題】紙幣を確実に識別することができる紙葉類処理装置及び紙葉類処理プログラムを提供する。
【解決手段】本発明の自動預入支払機2は、紙葉類(紙幣31)に表記された2つの記番号32A・32Bの文字列と色を認識し、2つの記番号の情報が一致するかを判定する。そして、2つの記番号が一致すれば、この認識した記番号の情報に応じた識別基準を決定する。そして、決定した識別基準に基づいて紙葉の真偽を判別する。また、外部記憶部15が記憶する偽造券や盗難紙幣の記番号の情報を参照して、紙幣31の真偽を判定する。これにより、紙葉類を確実に識別することができる。
【解決手段】本発明の自動預入支払機2は、紙葉類(紙幣31)に表記された2つの記番号32A・32Bの文字列と色を認識し、2つの記番号の情報が一致するかを判定する。そして、2つの記番号が一致すれば、この認識した記番号の情報に応じた識別基準を決定する。そして、決定した識別基準に基づいて紙葉の真偽を判別する。また、外部記憶部15が記憶する偽造券や盗難紙幣の記番号の情報を参照して、紙幣31の真偽を判定する。これにより、紙葉類を確実に識別することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類に表記された記番号を用いて、紙葉類を識別する紙葉類処理装置及び紙葉類処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙葉類処理装置には、紙葉類に表記されている複数の記番号を認識して、この記番号の同一性を判定することで、異番券(2つの異なる固有の文字列を有する紙葉類)を判別するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−175797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紙葉類には、記番号の文字列は同じであっても、記番号の色が異なる場合があった。例えば、紙葉類の一例である日本の紙幣には、金種によっては、同じ記番号でも4色(黒、青、褐、暗緑)の異なる紙幣が存在するものがある。また、外国の紙幣には、金種によっては同じ記番号でも2色の異なる紙幣が存在するものがある。
【0004】
また、同じ金種の紙幣では、記番号の色が異なると、紙幣を識別するための特徴部分が異なっている場合がある。そのため、紙幣を識別する際に、記番号の文字列の情報だけでは、紙幣を正しく識別できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、紙幣を確実に識別することができる紙葉類処理装置及び紙葉類処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、撮像手段で、紙葉類のカラー画像を撮像し、このカラー画像を処理して、紙葉類に表記されている2つの記番号の文字列を認識する。また、2つの記番号の色を認識する。さらに、認識した記番号の文字列と色の情報に基づいて2つの記番号が一致しているかを判定し、2つの記番号が一致していれば、この記番号の色に基づいて前記紙葉類を識別するための識別基準を決定する。そして、前記識別基準を用いて紙葉類を識別する。したがって、紙葉類の特徴に応じて確実に識別することができる。
【0007】
また、本発明では、1つの記番号を文字認識し、前記識別基準決定手段は、前記文字認識手段が認識した一方の記番号の文字列と、他方の記番号の文字列と、のパターンマッチングにより比較して2つの記番号の文字列が一致しているかを判定する。そのため、文字認識処理の負荷を軽減できる。
【0008】
また、本発明では、紙葉類毎の特徴を表す複数のテンプレートを識別基準として識別基準記憶手段で記憶している。そして、識別手段は、記番号の文字列の情報と記番号の色の情報に基づいて識別基準記憶手段からテンプレートを選択し、この選択したテンプレートを用いて紙葉類を識別する。紙葉類では、記番号の色によって、その特徴を変えていることがある。例えば、記番号の色により、磁気インキを使用した部分を変えていることがある。このように、紙葉類の特徴が違う場合でも、記番号の色に応じたテンプレートを選択できるので、紙葉類の特徴を把握して、識別することができる。
【0009】
また、本発明では、記番号の色に基づいて前記識別基準の許容範囲を変更する。紙葉類は発行されてからの期間が長いと、使用期間が長いものは劣化が激しく、ほとんど使用されていないものはほとんど劣化していない。そのため、紙葉類は発行されてからの期間が長いほど、識別するための特性のばらつきが大きくなる。本発明では、記番号の色に基づいて紙葉類は発行されてからの期間を考慮して、識別基準の許容範囲を変更する。そのため、劣化が激しいものでも、確実に識別することができる。
【0010】
また、本発明では、予め定めた属性に属する紙葉類の記番号の情報を記憶している。予め定めた属性とは、例えば、偽造されたもの、盗難されたもの、紙葉類処理装置が入出金するもの等の属性のことである。これら紙葉類の記番号の文字列や色の情報に基づいて、偽造券や盗難券(盗難紙幣)や新たに作成された偽造券を識別できるので、紙葉類が真券であるかを確実に識別できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙葉類に表記された2つの記番号の文字列と色の情報に基づいて、紙葉類を識別するための識別基準を決定するので、紙葉類を確実に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、紙葉類管理システムの構成の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る紙葉類管理システムの概略構成図である。以下の説明では、紙葉類処理装置の一例として、紙幣の処理を行う自動預入支払機について説明する。
【0013】
紙葉類管理システム1では、自動預入支払機2が、通信ネットワーク3を介してホストコンピュータ4と接続されている。ホストコンピュータ4には、データベース5が接続されている。また、通信ネットワーク3には、両替機6や自動販売機7が接続されている。データベース5には、予め偽造券の記番号の文字列情報や色情報、盗難紙幣の記番号の文字列情報や色情報が記録されている。また、自動預入支払機2のスタッカ23a〜23c・両替機6・自動販売機7内に格納されている全ての紙幣における記番号の文字列情報や色情報が記録されている。データベース5は、通信ネットワーク3を介して自動預入支払機2・両替機6・自動販売機7と通信して、これらの機器に格納されている紙幣の記番号情報を取得する。また、自動預入支払機2・両替機6・自動販売機7は、紙幣を入出金する際に、紙幣の記番号情報(記番号の文字列と色の情報のことである。以下、同様。)を読み取ることで、格納されている紙幣の記番号情報を記憶する。
【0014】
次に、自動預入支払機2を制御するための構成(制御系統)について説明する。図2は、自動預入支払機の制御ブロック図である。
【0015】
自動預入支払機2は、制御部10、通信部11、搬送部12、ROM13、RAM14、外部記憶部15、防犯カメラ16、警報部17、操作部18、入出金部19、及び識別部20を備えている。
【0016】
制御部10は、自動預入支払機2の各部を制御する。また、制御部10は、文字認識手段、色認識手段、識別基準決定手段、及び識別手段に相当し、以下の処理を行う。
【0017】
1.金種判定:撮像部20Aが撮像した画像を使って、紙幣の金種(種別)を判定する。
2.文字認識:金種判定した金種情報に基づいて記番号領域を切り出し、記番号の文字列を認識する。
3.色判定(色認識):記番号の文字列自体の色を判定する。この判定内容の詳細は後で説明する。
4.整合判定:記番号の整合性を判定する。一つの記番号の整合性と、複数の記番号について相互の整合性と、の2種類の判定を行う。
5.センサ判定:光学センサ20B・磁気センサ20Cのセンサデータを使った紙幣の真偽判定や、厚みセンサ20Dのセンサデータを使って厚み判定を行う。
6.総合判定:整合判定の判定結果やセンサ判定の判定結果に基づいて、紙幣を受け付けるべきか(真券であるか)リジェクトすべきか(真券でないか)を総合的に判定する。
【0018】
通信部11は、ホストコンピュータ4と通信ネットワーク3を介して通信する。
【0019】
搬送部12は、入出金部19や識別部20や一時保留部21などの間を接続して、紙幣を搬送する。なお、搬送部12は、後述するように、搬送路12H、不図示の搬送ローラ及びモータを含む構成である。
【0020】
ROM13は、記憶手段に相当し、制御部10が実行する制御プログラムや固定データを格納している不揮発性メモリである。固定データには、金種毎の記番号の位置情報、各種センサの波形の許容範囲情報、紙葉類の特徴を表すテンプレート、紙幣を識別するための識別基準などを含む。また、ROM13は、識別基準を紙幣の紙葉類の種別毎(金種毎)及び記番号の色毎に記憶している。
【0021】
RAM14は、撮像されたカラー画像や切り出された記番号領域のカラー画像や、制御に使われる各種変数を格納している揮発性メモリである。
【0022】
外部記憶部15は、記番号記憶手段に相当し、例えばハードディスクや光ディスクなどの記憶手段であり、偽造券・盗難紙幣(盗難券)・自動預入支払機2内に格納されている全紙幣等の記番号の文字列情報や色情報が記録されている。
【0023】
防犯カメラ16は、記番号に問題のある紙幣と判定された時に利用者の肖像を撮影するものである。
【0024】
警報部17は、記番号に問題のある紙幣と判定された時に警報を発するものである。
【0025】
操作部18は、ユーザの各種操作を受け付ける。
【0026】
入出金部19は、紙幣の入出金や不図示のシャッタの開閉などを行う。
【0027】
識別部20は、撮像部20A、光学センサ20B、磁気センサ20C、及び厚みセンサ20Dを備えている。識別部20は、これらを用いて、処理対象の紙葉類毎(紙幣毎)にその特徴量を抽出して、紙幣の金種、真偽、向き、損傷の程度を判別する。
【0028】
撮像部20Aは、後述するランプ28A・28Bやカラーラインセンサ29A・29Bを含む構成であり、紙幣のカラー画像を撮像する。
【0029】
光学センサ20Bは、特定の波長の光で紙幣の特徴を捉えたセンサデータを得るためのものである。
【0030】
磁気センサ20Cは、紙幣の磁気分布を得るためのものである。
【0031】
厚みセンサ20Dは、紙幣の厚み分布を得るためのものである。
【0032】
次に、紙幣を搬送する搬送路と搬送先(搬送系統)について説明する。図3は、自動預入支払機の搬送系統を示す構成図である。自動預入支払機2は、紙幣を入出金したり収納したりするために、入金口19A、出金口19B、返却口19C、一時保留部21、収納部(スタッカ)23a〜23c、回収部24、及びカセット25を備えている。また、これら各部は搬送路12Hにより接続されている。また、搬送路12Hの途中には、識別部20が設けられている。また、搬送路12Hには、紙幣の通過を検知する通過センサ、紙幣の搬送方向を切り替えるゲート、紙幣を搬送する搬送ローラ、及び搬送ローラを駆動するモータがそれぞれ複数個設けられている。また、入金口19A、出金口19B、及び返却口19Cには、紙幣が搬送されたことを検出するための紙幣検出センサが設けられている。
【0033】
一時保留部21は、計数した紙幣を一時的に集積する。収納部(スタッカ)23a〜23dは紙幣を種類別に集積する。回収部24は、出金処理時に、識別部20によってリジェクトされた紙幣を収納する。カセット25は、脱着可能であり、紙幣の補充や精査に使用される。
【0034】
次に、自動預入支払機が取り扱う紙幣について説明する。図4は、紙幣の表面のイメージ図である。紙幣31には、複数箇所に記番号が表記されている。例えば、図4に示す紙幣31には、その左上の端部付近と右下の端部付近に、2つの記番号32A・32Bがそれぞれ表記(印刷)されている。記番号32Aと記番号32Bは、同じ文字列(番号)であり、かつ同じ色である。また、紙幣31には、右上部に肖像画34が印刷され、左下部に模様36が印刷されている。
【0035】
なお、記番号32A・32Bを含む領域(図において、点線で囲んだ部分)を領域33A・33B、肖像画34を含む領域を領域35、及び模様36を含む領域を領域37とする。これらの領域については後述する。
【0036】
次に、自動預入支払機2の紙幣の撮像動作について説明する。図5は、紙幣の撮像時の動作を示す概念図である。紙幣31は、搬送部12により矢印27が示す方向に搬送されている。撮像部20Aのランプ28Aは、紙幣31の上面全体を照射し、紙幣31から反射された光をカラーラインセンサ29Aが受光する。カラーラインセンサ11Aから読み出したカラー画像データは1ライン分であるが、紙幣31が搬送されるにつれて順次撮像するので、結果として2次元のカラー画像を得ることができる。また、紙幣31の下面に関しても、ランプ28Bとカラーラインセンサ29Bにより、上面と同じように2次元のカラー画像を得ることができる。
【0037】
日本の紙幣は、2面のうち一方の面のみに記番号が印刷されており、他方の面には記番号は印刷されていない。また、自動預入支払機2では、識別部20に搬送される紙幣31がどちらの面を上になって搬送されてくるか決まっていない。そのため識別部20には、紙幣31の両面を撮像できるように撮像部20Aのランプ28とカラーラインセンサ29を配している。しかし、自動預入支払機2で、両面に2つずつ記番号が印刷されている紙葉類を扱う場合には、紙幣の片面だけを撮像できるように撮像部20Aを構成すると良い。また、日本の紙幣のように一方の面だけに記番号が印刷されている紙葉類を扱う場合でも、自動預入支払機2が、紙葉類の面が常に同じ側を向くようにする機構を備えている場合には、記番号が印刷された面の側だけに撮像部20Aを配置すれば良い。
【0038】
また、撮像部20Aでは、上記のカラーラインセンサ29(29A・29B)に替えて、2次元イメージセンサを使用しても良い。また、カラーラインセンサとして、紙幣全体を撮像する低解像度のセンサと、記番号領域の近辺だけを撮像する高解像度のセンサと、を使用するようにしても良い。
【0039】
次に、自動預入支払機2の動作を説明する。図6は、自動預入支払機の識別処理の動作を説明するためのフローチャートである。制御部10は、ROM13から読み出した紙葉類処理プログラムに基づいて、以下の処理を実行する。
【0040】
入金処理時には、自動預入支払機2の制御部10は、入金口19Aに挿入された紙幣を、搬送路12Hを介して識別部20まで搬送させる。そして、以下の処理を行う。
【0041】
ステップS10では、制御部10は、識別部20の撮像部20Aにより紙幣31全体のカラー画像を撮像する。
【0042】
ステップS11では、制御部10は、撮像部20Aが出力したカラー画像を使って金種を判定し、金種を確定する。
【0043】
ステップS12では、制御部10は、確定した金種情報に基づき、ROM13を参照して、金種の記番号領域情報(開始X座標・開始Y座標・X方向サイズ・Y方向サイズ)を読み出す。そして、カラー画像の中から記番号領域33A・33Bを切り出す。
【0044】
ステップS13では、制御部10は、記番号領域33A・33Bから記番号の文字列を切り出す。この切り出し方法は、文字認識などでは一般的な手法であり、ここでは詳細の説明は省略する。
【0045】
ステップS14では、制御部10は、2つの記番号の文字列における個々の文字に対して、どの文字に対応するのか文字認識する。この文字認識の方法はテンプレートマッチングなど一般的な手法であり、ここでは詳細の説明は省略する。
【0046】
ステップS14では、2つの記番号の文字認識方法として以下のように処理を行っても良い。まず、2つの記番号の一方については、周知の文字認識方法により文字を認識する。続いて、2つの記番号の他方については、先に文字認識した一方の記番号の文字列と、他方の記番号の文字列と、のパターンマッチングにより比較して2つの記番号の文字列が一致しているかを判定する。つまり、1つの記番号についてのみ文字認識を行い、2つの記番号が同じ形状であるかを確認する。これにより、文字認識処理の負荷を軽減でき、処理時間を短くすることができる。なお、紙幣に記番号が複数(3以上)印刷されている場合には、1つの記番号についてのみ文字認識を行い、この認識した記番号と他の記番号とが同じ形状であるかを確認すれば良い。
【0047】
ステップS15では、制御部10は、文字認識した記番号の文字自体の色が何色であるのかを判定する。色判定の詳細については、図7を用いて説明する。
【0048】
図7は、切り出した文字の一例である。制御部10は、エッジ抽出により、文字「1」の輪郭41を抽出する。そして、この輪郭41を細線化することにより、芯線42を求める。さらに、この芯線42上の各画素に対して、画素情報(R・G・B)から色相(H)と彩度(S)を求める。この変換は、一般的な手法であり、詳細の説明は省略する。制御部10は、次に芯線42上の全ての画素に対する色相の平均値と彩度の平均値を求める。ROM13から予め設定されている色毎の色相の許容範囲と彩度の許容範囲を読み出し、色相平均と彩度平均の両方とも許容範囲に入っている色があれば、その色であると判定する。許容範囲の設定されている色の種類は、例えば日本の紙幣を扱う場合は4色とする。
【0049】
芯線42に対して色判定をしているのは、色が不安定な文字の境界線付近の部分を避け、色が安定した文字の中央部分で色を判別するためである。また、別の色判定方法として、文字の線が充分太い場合には、文字の境界内の全画素に対して色相と彩度を求めて、それらのヒストグラムを取り、最頻値を使用する方法もある。この方法では、芯線42に対して色判定する場合よりも処理時間が少なくすることができる。
【0050】
制御部10は、ステップS15の処理に続いて以下の処理を行う。
【0051】
図6に示したように、ステップS16では、制御部10は、記番号の整合性を判定する。制御部10は、まず、記番号単体の整合性を判定する(S16A)。例えば、日本の紙幣の場合、D券の千円券は黒・青・褐・暗緑の4色発行されているが、E券の千円券・五千円券・一万円券は現在(平成20年10月の時点)黒の記番号のみ発行されている。制御部10は、金種判定(S11)でE券(千円券)と判定した紙幣において、記番号の色を暗緑と判定した場合には、未発行の色(本来存在しない色)なので、後述する総合判定(S18)において、偽装券または不明券と判定する。
【0052】
次に、制御部10は、2つの記番号について相互の整合性を判定する(S16B)。この処理の詳細に関しては、図8に示すフローチャートを用いて説明する。図8は、2つの記番号について相互の整合性の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【0053】
制御部10は、記番号の文字列について、相互の文字数が一致するかを確認する(S161)。不一致なら(S162:N)、異常と判定する(S170)。一方、相互の文字数が一致したなら(S162:Y)、1つの文字の文字コードが一致するかを確認する(S163)。制御部10は、不一致なら(S164:N)、異常と判定する(S170)。一方、文字コードが一致したなら(S164:Y)、記番号の文字列の先頭から順に、1つの文字の色情報が一致するか確認する(S165)。制御部10は、不一致なら(S166:N)、異常と判定する(S170)。一方、文字の色情報が一致なら(S166:Y)、最後の文字の判定が済んだのかを確認する(S167)。制御部10は、まだ最後の文字でないのなら(S168:N)、1文字ずらしてから(S169)、ステップS163以降の処理を行う。一方、最後の文字であるならば(S168:Y)、正常終了とする。
【0054】
この判定処理では、例えば、2つの記番号の文字列(文字コード)は同じであるが、記番号の色が異なる紙幣を判定した場合には、ステップS166の色の一致チェックで不一致となる。そのため、異常と判定される。
【0055】
制御部10は、2つの記番号における相互の整合性の判定処理(S16B)が完了すると、続いて、センサ判定(S17)を行う。図6に示したように、ステップS17では、制御部10は、識別部20の各センサ、つまり光学センサ20B・磁気センサ20C・厚みセンサ20Dのセンサ情報を用いて、紙幣31の真偽判定及び厚み判定を行う。
【0056】
センサ判定処理の詳細については、図9を用いて説明する。図9は、センサ判定の処理を説明するためのフローチャートである。
【0057】
制御部10は、厚みセンサ20Dが測定した紙幣31Aまたは紙幣31Bの厚みのセンサデータを収集する(S171)。
【0058】
続いて、制御部10は、記番号の色を確認し(S172)、その色に応じた識別基準(紙葉類を識別するための基準)を決定する(S173)。
【0059】
これは、前記のように、同じ金種の紙幣では、記番号の色が異なると、紙幣を識別するための特徴部分が異なっているからである。図10は、光学センサの出力と許容範囲を示す図である。
【0060】
例えば、図4に示したある金種の紙幣31では、記番号の色が色Aの紙幣31Aと、記番号の色が色Bの紙幣31Bの2種類が存在する場合を説明する。
【0061】
紙幣31Aでは領域35の肖像画34には磁気インクが使用され、領域37の模様36には磁気インクは使用されていない。一方、紙幣31Bでは領域35の肖像画34には磁気インクは使用されていないが、領域37の模様36には磁気インクが使用されている。このように、紙幣によっては、記番号の色に応じて紙幣の特徴(本例では磁気インクの使用位置)が異なる場合がある。そこで、自動預入支払機2では、ROM(識別基準記憶手段)13に紙葉類毎の特徴を表すテンプレートを複数記憶させている。そして、制御部(識別基準決定手段に相当)10は、(識別手段が用いる)識別基準として、記番号の色の情報に応じたテンプレートをROM13から読み出す(選択する)。
【0062】
また、本発明では、制御部(識別基準決定手段に相当)10は、紙幣31の記番号の色に基づいて、識別基準の許容範囲を変更する。すなわち、記番号の色によって、発行されてからの期間がわかるので、その期間に応じて、識別基準の許容範囲を変更する。
【0063】
例えば、記番号の色が色Aである紙幣31Aは、発行直後の新しい紙幣である。そのため、この紙幣31Aを読み取った際の光学センサの出力は全体的に高く、その平均波形は図10(A)に示す波形46のような特性である。また、新しい紙幣であるため、劣化が無く、光学特性のばらつきが小さい。
【0064】
一方、記番号の色が色Bである紙幣31Bは、数年前に発行が停止された古い紙幣である。そのため、この紙幣31Bを読み取った際の光学センサの出力は全体的に低く、その平均波形は図10(B)に示す波形48のような特性である。また、発行されて長期間が経過した古い紙幣で劣化の激しいものとほとんど劣化していないものがあるため、光学特性のばらつきが大きい。
【0065】
上記のように、紙幣が発行されてからの期間に応じて、紙幣の劣化により光学特性や磁気インクなどの状態のばらつきが変化する(大きくなる)。そのため、自動預入支払機2では、このばらつきを考慮して、センサ判定を行うようにすると良い。すなわち、制御部10は、紙幣の記番号の色に基づき識別の処理内容(識別基準)を決定して、ROM13から識別基準を読み出す際に、記番号の色の情報に基づいて、発行されてからの期間を確認(算出)し、その期間に応じて、識別基準の許容範囲を変更すると良い。例えば、紙幣31Aのように発行されてからの期間が短い場合には、図10(A)に示したように、識別基準の許容範囲を範囲45に設定する。また、紙幣31Bのように発行されてからの期間が長い場合には、図10(B)に示したように、識別基準の許容範囲を範囲45よりも大きい範囲47に設定する。
【0066】
なお、識別基準の許容範囲は、実際の紙幣の劣化状態を考慮して、式を設定し、計算により求めるようにするか、または予めテーブルを作成しておき、このテーブルを参照するようにすると良い。
【0067】
制御部10は、図9に示すように記番号の色が色Aの場合(S172:Y)、紙幣31A用の識別基準(テンプレート)を読み出す(S173)。また、制御部10は、記番号の色が色Aの紙幣31が発行された時期を確認して経過年月を算出し、計算式またはテーブルに基づいて識別基準(テンプレート)の許容範囲を決定する(S174)。そして、制御部10は、磁気センサ20Cで領域35の磁気量を確認する(S175)。また、制御部10は、光学センサ20Bで、紙幣31A全体の光学特性を確認する(S176)。そして、制御部10は、紙幣31Aの厚み、領域35の磁気量、及び紙幣31A全体の光学特性が識別基準の許容範囲内であるかの判定を行う(S177)。そして、いずれかが範囲外であればNG信号を出力し(S178)、全て範囲内であればOK信号を出力する(S179)。
【0068】
一方、制御部10は、記番号の色が色Bの場合(S172:N)、紙幣31B用の識別基準(テンプレート)を読み出す(S180)。また、制御部10は、記番号の色が色Bの紙幣31が発行された時期を確認して経過年月を算出し、計算式またはテーブルに基づいて識別基準(テンプレート)の許容範囲を決定する(S181)。そして、制御部10は、磁気センサ20Cで領域37の磁気量を確認する(S182)。また、制御部10は、光学センサ20Bで、紙幣31B全体の光学特性を確認する(S183)。そして、制御部10は、ステップS177以降の処理を行う。
【0069】
なお、ステップS172の判定では、記番号の色情報だけで判定しているが、記番号の色情報と文字列情報を組み合わせて判定しても良い。
【0070】
このように記番号の色情報及び文字列情報で識別の処理内容を切り替えると、同じ金種の中でもいくつか種類のある金種においても適切な識別が行えるようになる。
【0071】
制御部(識別手段に相当)10は、図6に示すように、ステップS18では、ステップS16A・S16Bでの記番号の整合性判定の結果やステップS17でのセンサ判定の結果を用いて、紙幣が真券であるか否かを総合的に判定(識別)する。そして、制御部10は、入金された紙幣31が真券と判定(識別)した場合には、紙幣の種類に応じてスタッカ23a〜23cのいずれかに搬送する。一方、偽造券または不明券(変造券を含む)と判定(識別)した場合には、紙幣を返却口に搬送するか、または回収部24に回収する。
【0072】
また、制御部10は、ステップS18では、紙幣の記番号の情報(記番号の文字列と記番号の色の情報)をRAM14で記憶する。
【0073】
このように記番号の文字列情報に加えて、記番号の色情報も合わせて整合性の判定を行うので、その紙幣に応じた識別基準に基づいて紙幣の真偽を正確に判定(識別)できる。
【0074】
なお、自動預入支払機2では、上記のように、スタッカ23a〜23cに集積される(入出金される)紙幣を識別部20に搬送した際に認識した紙幣の記番号情報をRAM14で記憶する。また、自動預入支払機2では、出金口19Bまたは返却口19Cから紙幣を出金若しくは返却する際に、識別部20で撮像した画像を用いて認識した記番号情報を、RAM14から削除する。これにより、新たに作成された偽造券が入金された場合に、その紙幣を偽装券と判別することができる。例えば、全て同じ記番号の新たな偽造券が複数入金された場合に、入金された紙幣の記番号を順次記憶して、この記番号と後から入金される記番号とを比較することで、続けて入金された紙幣が偽造券であると判定(識別)できる。
【0075】
次に、本発明の別の実施例を説明する。自動預入支払機2では、図6に基づいて説明した手順にしたがって紙幣31の真偽を判定するが、さらに、外部記憶部15が記憶する偽造券や盗難紙幣や自動預入支払機2のスタッカ23a〜23cに収納された紙幣等の記番号の情報を用いて真偽を判定することができる。以下に、その場合の処理を説明する。
【0076】
なお、自動預入支払機2では、前記のようにスタッカ23a〜23cに集積する紙葉類の記番号の情報を識別すると、外部記憶部15に送信し、外部記憶部15は、この記番号の情報を記憶する。また、自動預入支払機2が紙幣を出金または返却した際には、その紙幣の記番号情報を外部記憶部15に送信し、外部記憶部15は、その情報を消去する。
【0077】
図11は、自動預入支払機の処理を説明するためのフローチャートである。
【0078】
制御部10は、紙幣31が入金口19Aから投入されたことを不図示のセンサで検出すると(S201)、入金口19Aから識別部20へ搬送部12により紙幣31を搬送させる(S202)。
【0079】
制御部10は、図6に基づいて説明した識別処理を行う(S203)。
【0080】
続いて、制御部10は、外部記憶部15に記録された偽造券や盗難紙幣、スタッカ23a〜23cに集積された紙幣等、予め定めた属性に属する紙幣の記番号の情報(記番号の文字列と色の情報)を参照する(S204)。
【0081】
そして、制御部10は、入金された紙幣31の記番号の文字列情報や色情報と、外部記憶部15に記録されている偽造券・盗難紙幣・自動預入支払機2のスタッカ23a〜23cに集積される紙幣の、各記番号の文字列情報や色情報とを比較し、一致するものがあるか確認する(S205)。
【0082】
制御部10は、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが無ければ(S206:N)、真券と判断(識別)する。そして、正常処理として、入金された紙幣を一時保留部21経由でスタッカ23a〜23cに格納する(S207)。一方、制御部10は、記番号の記番号の文字列情報及び色情報が一致するものがあれば、偽造券または不明券と判断(識別)する。そして、異常処理として、警報部17により警報を発したり、防犯カメラ16により利用者を撮影したり、紙幣31を回収部24に回収したりする(S208)。
【0083】
そして、制御部10は、入金された紙幣31の記番号の文字列情報や色情報を外部記憶部15に追加する(S209)。
【0084】
なお、上記の説明では、入金取引について説明したが、カセット25からの補充などの処理でも同様の処理が行うことができる。
【0085】
また、ステップS208の異常処理では、偽造券と盗難紙幣と自動預入支払機内の紙幣との一致で、全て同じ扱いにしているが、各々の重要性に鑑みて別々の処理内容としても良い。
【0086】
このように記番号の文字列情報に加えて、記番号の色情報も合わせて比較するので、全ての紙幣を区別できるようになり、盗難紙幣でもないのに盗難紙幣と間違えるような問題は起こらなくなる。
【0087】
次に、さらに別の実施例として、紙葉類管理システムの実施例を説明する。紙葉類管理システム1では、偽造券や盗難紙幣などの記番号情報や、自動預入支払機2のスタッカ23a〜23c・両替機6・自動販売機7に収納された紙幣の記番号をデータベース5に蓄積している。また、自動預入支払機2が認識した記番号情報をホストコンピュータ4に送信し、ホストコンピュータ4がデータベース5に記録された記番号の情報を参照して、真券か否かを判定する。なお、両替機6及び自動販売機7は入出金される紙幣の記番号情報を認識する不図示の認識部を備えており、紙幣が入金される際に、紙幣の記番号情報を取得し、不図示の記憶部で記憶する。また、所定のタイミングで、自動預入支払機2・両替機6・自動販売機7は、通信ネットワーク3を介してデータベース5と通信して、紙幣の記番号情報を送受信して、記番号情報を更新する。
【0088】
以下、その詳細を説明する。図12は、紙葉類管理システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【0089】
制御部10は、紙幣31が入金口19Aから投入されたことをセンサで検出すると(S211)、入金口19Aから識別部20へ搬送部12により紙幣31を搬送させる(S212)。
【0090】
制御部10は、図6に基づいて説明した識別処理を行う(S213)。
【0091】
続いて、制御部10は、紙幣31の記番号情報(文字列の情報及び色情報)を読み出して(S214)、紙幣31の記番号情報(文字列の情報及び色情報)をホストコンピュータ4に送信する(S215)。そして、制御部10は、ホストコンピュータ4からの情報を受信するまで待機する(S216:N)。
【0092】
ホストコンピュータ4は、自動預入支払機2からの情報を受信するまで待機している(S221:N)。ホストコンピュータ4は、自動預入支払機2からの情報を受信すると(S221:Y)、データベース5を参照し(S222)、受信した紙幣の記番号の文字列情報や色情報と、データベース5に記録されている偽造券・盗難紙幣・各装置内に収納された紙幣の記番号情報(文字列情報及び色情報)と、を比較し、一致するものがあるか確認する(S223)。
【0093】
ホストコンピュータ4は、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが無ければ(S224:N)、その旨を自動預入支払機2に送信する(S225)。一方、ホストコンピュータ4は、記番号の記番号の文字列情報及び色情報が一致するものがあれば、その旨を自動預入支払機2に送信する(S226)。
【0094】
そして、ホストコンピュータ4は、受信した紙幣31の記番号の文字列情報や色情報をデータベース5に追加する(S227)。
【0095】
自動預入支払機2の制御部10は、ホストコンピュータ4から記番号の文字列情報と色情報に関する判定結果の情報を受信すると(S216:Y)、この情報をチェックし、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが無ければ(S217:Y)、真券と識別(判断)する。そして、正常処理として、入金された紙幣を一時保留部21経由でスタッカ23a〜23cに格納する(S218)。一方、制御部10は、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが有れば(S217:N)、偽造券または不明券と識別(判断)する。そして、異常処理として、警報部17により警報を発したり、防犯カメラ16により利用者を撮影したり、紙幣を回収部24に回収したりする(S219)。そして処理を終了する。
【0096】
このように記番号の文字列情報に加えて、記番号の色情報も合わせて比較するので、全ての紙幣を区別できるようになり、盗難紙幣でもないのに盗難紙幣と間違えるような問題は起こらなくなる。
【0097】
なお、以上の説明では、紙幣の2箇所に記番号が表記された場合を記載したが、本発明はこれに限るものではなく、紙幣にさらに複数の記番号が表記された場合にも適応できる。また、このように紙幣に3つ以上の記番号が表記されている場合には、少なくとも2つの記番号について、文字列や色の整合性を判定すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係る紙葉類管理システムの概略構成図である。
【図2】自動預入支払機の制御ブロック図である。
【図3】自動預入支払機の搬送系統を示す構成図である。
【図4】紙幣の表面のイメージ図である。
【図5】紙幣の撮像時の動作を示す概念図である。
【図6】自動預入支払機の識別処理の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】切り出した文字の一例である。
【図8】2つの記番号について相互の整合性の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】センサ判定の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】光学センサの出力と許容範囲を示す図である。
【図11】自動預入支払機の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】紙葉類管理システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1…紙葉類管理システム 2…自動預入支払機 3…通信ネットワーク
4…ホストコンピュータ 5…データベース 10…制御部 11…通信部 12…搬送部 13…ROM 14…RAM 15…外部記憶部 19…入出金部 20…識別部
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類に表記された記番号を用いて、紙葉類を識別する紙葉類処理装置及び紙葉類処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙葉類処理装置には、紙葉類に表記されている複数の記番号を認識して、この記番号の同一性を判定することで、異番券(2つの異なる固有の文字列を有する紙葉類)を判別するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−175797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紙葉類には、記番号の文字列は同じであっても、記番号の色が異なる場合があった。例えば、紙葉類の一例である日本の紙幣には、金種によっては、同じ記番号でも4色(黒、青、褐、暗緑)の異なる紙幣が存在するものがある。また、外国の紙幣には、金種によっては同じ記番号でも2色の異なる紙幣が存在するものがある。
【0004】
また、同じ金種の紙幣では、記番号の色が異なると、紙幣を識別するための特徴部分が異なっている場合がある。そのため、紙幣を識別する際に、記番号の文字列の情報だけでは、紙幣を正しく識別できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、紙幣を確実に識別することができる紙葉類処理装置及び紙葉類処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、撮像手段で、紙葉類のカラー画像を撮像し、このカラー画像を処理して、紙葉類に表記されている2つの記番号の文字列を認識する。また、2つの記番号の色を認識する。さらに、認識した記番号の文字列と色の情報に基づいて2つの記番号が一致しているかを判定し、2つの記番号が一致していれば、この記番号の色に基づいて前記紙葉類を識別するための識別基準を決定する。そして、前記識別基準を用いて紙葉類を識別する。したがって、紙葉類の特徴に応じて確実に識別することができる。
【0007】
また、本発明では、1つの記番号を文字認識し、前記識別基準決定手段は、前記文字認識手段が認識した一方の記番号の文字列と、他方の記番号の文字列と、のパターンマッチングにより比較して2つの記番号の文字列が一致しているかを判定する。そのため、文字認識処理の負荷を軽減できる。
【0008】
また、本発明では、紙葉類毎の特徴を表す複数のテンプレートを識別基準として識別基準記憶手段で記憶している。そして、識別手段は、記番号の文字列の情報と記番号の色の情報に基づいて識別基準記憶手段からテンプレートを選択し、この選択したテンプレートを用いて紙葉類を識別する。紙葉類では、記番号の色によって、その特徴を変えていることがある。例えば、記番号の色により、磁気インキを使用した部分を変えていることがある。このように、紙葉類の特徴が違う場合でも、記番号の色に応じたテンプレートを選択できるので、紙葉類の特徴を把握して、識別することができる。
【0009】
また、本発明では、記番号の色に基づいて前記識別基準の許容範囲を変更する。紙葉類は発行されてからの期間が長いと、使用期間が長いものは劣化が激しく、ほとんど使用されていないものはほとんど劣化していない。そのため、紙葉類は発行されてからの期間が長いほど、識別するための特性のばらつきが大きくなる。本発明では、記番号の色に基づいて紙葉類は発行されてからの期間を考慮して、識別基準の許容範囲を変更する。そのため、劣化が激しいものでも、確実に識別することができる。
【0010】
また、本発明では、予め定めた属性に属する紙葉類の記番号の情報を記憶している。予め定めた属性とは、例えば、偽造されたもの、盗難されたもの、紙葉類処理装置が入出金するもの等の属性のことである。これら紙葉類の記番号の文字列や色の情報に基づいて、偽造券や盗難券(盗難紙幣)や新たに作成された偽造券を識別できるので、紙葉類が真券であるかを確実に識別できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙葉類に表記された2つの記番号の文字列と色の情報に基づいて、紙葉類を識別するための識別基準を決定するので、紙葉類を確実に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、紙葉類管理システムの構成の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る紙葉類管理システムの概略構成図である。以下の説明では、紙葉類処理装置の一例として、紙幣の処理を行う自動預入支払機について説明する。
【0013】
紙葉類管理システム1では、自動預入支払機2が、通信ネットワーク3を介してホストコンピュータ4と接続されている。ホストコンピュータ4には、データベース5が接続されている。また、通信ネットワーク3には、両替機6や自動販売機7が接続されている。データベース5には、予め偽造券の記番号の文字列情報や色情報、盗難紙幣の記番号の文字列情報や色情報が記録されている。また、自動預入支払機2のスタッカ23a〜23c・両替機6・自動販売機7内に格納されている全ての紙幣における記番号の文字列情報や色情報が記録されている。データベース5は、通信ネットワーク3を介して自動預入支払機2・両替機6・自動販売機7と通信して、これらの機器に格納されている紙幣の記番号情報を取得する。また、自動預入支払機2・両替機6・自動販売機7は、紙幣を入出金する際に、紙幣の記番号情報(記番号の文字列と色の情報のことである。以下、同様。)を読み取ることで、格納されている紙幣の記番号情報を記憶する。
【0014】
次に、自動預入支払機2を制御するための構成(制御系統)について説明する。図2は、自動預入支払機の制御ブロック図である。
【0015】
自動預入支払機2は、制御部10、通信部11、搬送部12、ROM13、RAM14、外部記憶部15、防犯カメラ16、警報部17、操作部18、入出金部19、及び識別部20を備えている。
【0016】
制御部10は、自動預入支払機2の各部を制御する。また、制御部10は、文字認識手段、色認識手段、識別基準決定手段、及び識別手段に相当し、以下の処理を行う。
【0017】
1.金種判定:撮像部20Aが撮像した画像を使って、紙幣の金種(種別)を判定する。
2.文字認識:金種判定した金種情報に基づいて記番号領域を切り出し、記番号の文字列を認識する。
3.色判定(色認識):記番号の文字列自体の色を判定する。この判定内容の詳細は後で説明する。
4.整合判定:記番号の整合性を判定する。一つの記番号の整合性と、複数の記番号について相互の整合性と、の2種類の判定を行う。
5.センサ判定:光学センサ20B・磁気センサ20Cのセンサデータを使った紙幣の真偽判定や、厚みセンサ20Dのセンサデータを使って厚み判定を行う。
6.総合判定:整合判定の判定結果やセンサ判定の判定結果に基づいて、紙幣を受け付けるべきか(真券であるか)リジェクトすべきか(真券でないか)を総合的に判定する。
【0018】
通信部11は、ホストコンピュータ4と通信ネットワーク3を介して通信する。
【0019】
搬送部12は、入出金部19や識別部20や一時保留部21などの間を接続して、紙幣を搬送する。なお、搬送部12は、後述するように、搬送路12H、不図示の搬送ローラ及びモータを含む構成である。
【0020】
ROM13は、記憶手段に相当し、制御部10が実行する制御プログラムや固定データを格納している不揮発性メモリである。固定データには、金種毎の記番号の位置情報、各種センサの波形の許容範囲情報、紙葉類の特徴を表すテンプレート、紙幣を識別するための識別基準などを含む。また、ROM13は、識別基準を紙幣の紙葉類の種別毎(金種毎)及び記番号の色毎に記憶している。
【0021】
RAM14は、撮像されたカラー画像や切り出された記番号領域のカラー画像や、制御に使われる各種変数を格納している揮発性メモリである。
【0022】
外部記憶部15は、記番号記憶手段に相当し、例えばハードディスクや光ディスクなどの記憶手段であり、偽造券・盗難紙幣(盗難券)・自動預入支払機2内に格納されている全紙幣等の記番号の文字列情報や色情報が記録されている。
【0023】
防犯カメラ16は、記番号に問題のある紙幣と判定された時に利用者の肖像を撮影するものである。
【0024】
警報部17は、記番号に問題のある紙幣と判定された時に警報を発するものである。
【0025】
操作部18は、ユーザの各種操作を受け付ける。
【0026】
入出金部19は、紙幣の入出金や不図示のシャッタの開閉などを行う。
【0027】
識別部20は、撮像部20A、光学センサ20B、磁気センサ20C、及び厚みセンサ20Dを備えている。識別部20は、これらを用いて、処理対象の紙葉類毎(紙幣毎)にその特徴量を抽出して、紙幣の金種、真偽、向き、損傷の程度を判別する。
【0028】
撮像部20Aは、後述するランプ28A・28Bやカラーラインセンサ29A・29Bを含む構成であり、紙幣のカラー画像を撮像する。
【0029】
光学センサ20Bは、特定の波長の光で紙幣の特徴を捉えたセンサデータを得るためのものである。
【0030】
磁気センサ20Cは、紙幣の磁気分布を得るためのものである。
【0031】
厚みセンサ20Dは、紙幣の厚み分布を得るためのものである。
【0032】
次に、紙幣を搬送する搬送路と搬送先(搬送系統)について説明する。図3は、自動預入支払機の搬送系統を示す構成図である。自動預入支払機2は、紙幣を入出金したり収納したりするために、入金口19A、出金口19B、返却口19C、一時保留部21、収納部(スタッカ)23a〜23c、回収部24、及びカセット25を備えている。また、これら各部は搬送路12Hにより接続されている。また、搬送路12Hの途中には、識別部20が設けられている。また、搬送路12Hには、紙幣の通過を検知する通過センサ、紙幣の搬送方向を切り替えるゲート、紙幣を搬送する搬送ローラ、及び搬送ローラを駆動するモータがそれぞれ複数個設けられている。また、入金口19A、出金口19B、及び返却口19Cには、紙幣が搬送されたことを検出するための紙幣検出センサが設けられている。
【0033】
一時保留部21は、計数した紙幣を一時的に集積する。収納部(スタッカ)23a〜23dは紙幣を種類別に集積する。回収部24は、出金処理時に、識別部20によってリジェクトされた紙幣を収納する。カセット25は、脱着可能であり、紙幣の補充や精査に使用される。
【0034】
次に、自動預入支払機が取り扱う紙幣について説明する。図4は、紙幣の表面のイメージ図である。紙幣31には、複数箇所に記番号が表記されている。例えば、図4に示す紙幣31には、その左上の端部付近と右下の端部付近に、2つの記番号32A・32Bがそれぞれ表記(印刷)されている。記番号32Aと記番号32Bは、同じ文字列(番号)であり、かつ同じ色である。また、紙幣31には、右上部に肖像画34が印刷され、左下部に模様36が印刷されている。
【0035】
なお、記番号32A・32Bを含む領域(図において、点線で囲んだ部分)を領域33A・33B、肖像画34を含む領域を領域35、及び模様36を含む領域を領域37とする。これらの領域については後述する。
【0036】
次に、自動預入支払機2の紙幣の撮像動作について説明する。図5は、紙幣の撮像時の動作を示す概念図である。紙幣31は、搬送部12により矢印27が示す方向に搬送されている。撮像部20Aのランプ28Aは、紙幣31の上面全体を照射し、紙幣31から反射された光をカラーラインセンサ29Aが受光する。カラーラインセンサ11Aから読み出したカラー画像データは1ライン分であるが、紙幣31が搬送されるにつれて順次撮像するので、結果として2次元のカラー画像を得ることができる。また、紙幣31の下面に関しても、ランプ28Bとカラーラインセンサ29Bにより、上面と同じように2次元のカラー画像を得ることができる。
【0037】
日本の紙幣は、2面のうち一方の面のみに記番号が印刷されており、他方の面には記番号は印刷されていない。また、自動預入支払機2では、識別部20に搬送される紙幣31がどちらの面を上になって搬送されてくるか決まっていない。そのため識別部20には、紙幣31の両面を撮像できるように撮像部20Aのランプ28とカラーラインセンサ29を配している。しかし、自動預入支払機2で、両面に2つずつ記番号が印刷されている紙葉類を扱う場合には、紙幣の片面だけを撮像できるように撮像部20Aを構成すると良い。また、日本の紙幣のように一方の面だけに記番号が印刷されている紙葉類を扱う場合でも、自動預入支払機2が、紙葉類の面が常に同じ側を向くようにする機構を備えている場合には、記番号が印刷された面の側だけに撮像部20Aを配置すれば良い。
【0038】
また、撮像部20Aでは、上記のカラーラインセンサ29(29A・29B)に替えて、2次元イメージセンサを使用しても良い。また、カラーラインセンサとして、紙幣全体を撮像する低解像度のセンサと、記番号領域の近辺だけを撮像する高解像度のセンサと、を使用するようにしても良い。
【0039】
次に、自動預入支払機2の動作を説明する。図6は、自動預入支払機の識別処理の動作を説明するためのフローチャートである。制御部10は、ROM13から読み出した紙葉類処理プログラムに基づいて、以下の処理を実行する。
【0040】
入金処理時には、自動預入支払機2の制御部10は、入金口19Aに挿入された紙幣を、搬送路12Hを介して識別部20まで搬送させる。そして、以下の処理を行う。
【0041】
ステップS10では、制御部10は、識別部20の撮像部20Aにより紙幣31全体のカラー画像を撮像する。
【0042】
ステップS11では、制御部10は、撮像部20Aが出力したカラー画像を使って金種を判定し、金種を確定する。
【0043】
ステップS12では、制御部10は、確定した金種情報に基づき、ROM13を参照して、金種の記番号領域情報(開始X座標・開始Y座標・X方向サイズ・Y方向サイズ)を読み出す。そして、カラー画像の中から記番号領域33A・33Bを切り出す。
【0044】
ステップS13では、制御部10は、記番号領域33A・33Bから記番号の文字列を切り出す。この切り出し方法は、文字認識などでは一般的な手法であり、ここでは詳細の説明は省略する。
【0045】
ステップS14では、制御部10は、2つの記番号の文字列における個々の文字に対して、どの文字に対応するのか文字認識する。この文字認識の方法はテンプレートマッチングなど一般的な手法であり、ここでは詳細の説明は省略する。
【0046】
ステップS14では、2つの記番号の文字認識方法として以下のように処理を行っても良い。まず、2つの記番号の一方については、周知の文字認識方法により文字を認識する。続いて、2つの記番号の他方については、先に文字認識した一方の記番号の文字列と、他方の記番号の文字列と、のパターンマッチングにより比較して2つの記番号の文字列が一致しているかを判定する。つまり、1つの記番号についてのみ文字認識を行い、2つの記番号が同じ形状であるかを確認する。これにより、文字認識処理の負荷を軽減でき、処理時間を短くすることができる。なお、紙幣に記番号が複数(3以上)印刷されている場合には、1つの記番号についてのみ文字認識を行い、この認識した記番号と他の記番号とが同じ形状であるかを確認すれば良い。
【0047】
ステップS15では、制御部10は、文字認識した記番号の文字自体の色が何色であるのかを判定する。色判定の詳細については、図7を用いて説明する。
【0048】
図7は、切り出した文字の一例である。制御部10は、エッジ抽出により、文字「1」の輪郭41を抽出する。そして、この輪郭41を細線化することにより、芯線42を求める。さらに、この芯線42上の各画素に対して、画素情報(R・G・B)から色相(H)と彩度(S)を求める。この変換は、一般的な手法であり、詳細の説明は省略する。制御部10は、次に芯線42上の全ての画素に対する色相の平均値と彩度の平均値を求める。ROM13から予め設定されている色毎の色相の許容範囲と彩度の許容範囲を読み出し、色相平均と彩度平均の両方とも許容範囲に入っている色があれば、その色であると判定する。許容範囲の設定されている色の種類は、例えば日本の紙幣を扱う場合は4色とする。
【0049】
芯線42に対して色判定をしているのは、色が不安定な文字の境界線付近の部分を避け、色が安定した文字の中央部分で色を判別するためである。また、別の色判定方法として、文字の線が充分太い場合には、文字の境界内の全画素に対して色相と彩度を求めて、それらのヒストグラムを取り、最頻値を使用する方法もある。この方法では、芯線42に対して色判定する場合よりも処理時間が少なくすることができる。
【0050】
制御部10は、ステップS15の処理に続いて以下の処理を行う。
【0051】
図6に示したように、ステップS16では、制御部10は、記番号の整合性を判定する。制御部10は、まず、記番号単体の整合性を判定する(S16A)。例えば、日本の紙幣の場合、D券の千円券は黒・青・褐・暗緑の4色発行されているが、E券の千円券・五千円券・一万円券は現在(平成20年10月の時点)黒の記番号のみ発行されている。制御部10は、金種判定(S11)でE券(千円券)と判定した紙幣において、記番号の色を暗緑と判定した場合には、未発行の色(本来存在しない色)なので、後述する総合判定(S18)において、偽装券または不明券と判定する。
【0052】
次に、制御部10は、2つの記番号について相互の整合性を判定する(S16B)。この処理の詳細に関しては、図8に示すフローチャートを用いて説明する。図8は、2つの記番号について相互の整合性の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【0053】
制御部10は、記番号の文字列について、相互の文字数が一致するかを確認する(S161)。不一致なら(S162:N)、異常と判定する(S170)。一方、相互の文字数が一致したなら(S162:Y)、1つの文字の文字コードが一致するかを確認する(S163)。制御部10は、不一致なら(S164:N)、異常と判定する(S170)。一方、文字コードが一致したなら(S164:Y)、記番号の文字列の先頭から順に、1つの文字の色情報が一致するか確認する(S165)。制御部10は、不一致なら(S166:N)、異常と判定する(S170)。一方、文字の色情報が一致なら(S166:Y)、最後の文字の判定が済んだのかを確認する(S167)。制御部10は、まだ最後の文字でないのなら(S168:N)、1文字ずらしてから(S169)、ステップS163以降の処理を行う。一方、最後の文字であるならば(S168:Y)、正常終了とする。
【0054】
この判定処理では、例えば、2つの記番号の文字列(文字コード)は同じであるが、記番号の色が異なる紙幣を判定した場合には、ステップS166の色の一致チェックで不一致となる。そのため、異常と判定される。
【0055】
制御部10は、2つの記番号における相互の整合性の判定処理(S16B)が完了すると、続いて、センサ判定(S17)を行う。図6に示したように、ステップS17では、制御部10は、識別部20の各センサ、つまり光学センサ20B・磁気センサ20C・厚みセンサ20Dのセンサ情報を用いて、紙幣31の真偽判定及び厚み判定を行う。
【0056】
センサ判定処理の詳細については、図9を用いて説明する。図9は、センサ判定の処理を説明するためのフローチャートである。
【0057】
制御部10は、厚みセンサ20Dが測定した紙幣31Aまたは紙幣31Bの厚みのセンサデータを収集する(S171)。
【0058】
続いて、制御部10は、記番号の色を確認し(S172)、その色に応じた識別基準(紙葉類を識別するための基準)を決定する(S173)。
【0059】
これは、前記のように、同じ金種の紙幣では、記番号の色が異なると、紙幣を識別するための特徴部分が異なっているからである。図10は、光学センサの出力と許容範囲を示す図である。
【0060】
例えば、図4に示したある金種の紙幣31では、記番号の色が色Aの紙幣31Aと、記番号の色が色Bの紙幣31Bの2種類が存在する場合を説明する。
【0061】
紙幣31Aでは領域35の肖像画34には磁気インクが使用され、領域37の模様36には磁気インクは使用されていない。一方、紙幣31Bでは領域35の肖像画34には磁気インクは使用されていないが、領域37の模様36には磁気インクが使用されている。このように、紙幣によっては、記番号の色に応じて紙幣の特徴(本例では磁気インクの使用位置)が異なる場合がある。そこで、自動預入支払機2では、ROM(識別基準記憶手段)13に紙葉類毎の特徴を表すテンプレートを複数記憶させている。そして、制御部(識別基準決定手段に相当)10は、(識別手段が用いる)識別基準として、記番号の色の情報に応じたテンプレートをROM13から読み出す(選択する)。
【0062】
また、本発明では、制御部(識別基準決定手段に相当)10は、紙幣31の記番号の色に基づいて、識別基準の許容範囲を変更する。すなわち、記番号の色によって、発行されてからの期間がわかるので、その期間に応じて、識別基準の許容範囲を変更する。
【0063】
例えば、記番号の色が色Aである紙幣31Aは、発行直後の新しい紙幣である。そのため、この紙幣31Aを読み取った際の光学センサの出力は全体的に高く、その平均波形は図10(A)に示す波形46のような特性である。また、新しい紙幣であるため、劣化が無く、光学特性のばらつきが小さい。
【0064】
一方、記番号の色が色Bである紙幣31Bは、数年前に発行が停止された古い紙幣である。そのため、この紙幣31Bを読み取った際の光学センサの出力は全体的に低く、その平均波形は図10(B)に示す波形48のような特性である。また、発行されて長期間が経過した古い紙幣で劣化の激しいものとほとんど劣化していないものがあるため、光学特性のばらつきが大きい。
【0065】
上記のように、紙幣が発行されてからの期間に応じて、紙幣の劣化により光学特性や磁気インクなどの状態のばらつきが変化する(大きくなる)。そのため、自動預入支払機2では、このばらつきを考慮して、センサ判定を行うようにすると良い。すなわち、制御部10は、紙幣の記番号の色に基づき識別の処理内容(識別基準)を決定して、ROM13から識別基準を読み出す際に、記番号の色の情報に基づいて、発行されてからの期間を確認(算出)し、その期間に応じて、識別基準の許容範囲を変更すると良い。例えば、紙幣31Aのように発行されてからの期間が短い場合には、図10(A)に示したように、識別基準の許容範囲を範囲45に設定する。また、紙幣31Bのように発行されてからの期間が長い場合には、図10(B)に示したように、識別基準の許容範囲を範囲45よりも大きい範囲47に設定する。
【0066】
なお、識別基準の許容範囲は、実際の紙幣の劣化状態を考慮して、式を設定し、計算により求めるようにするか、または予めテーブルを作成しておき、このテーブルを参照するようにすると良い。
【0067】
制御部10は、図9に示すように記番号の色が色Aの場合(S172:Y)、紙幣31A用の識別基準(テンプレート)を読み出す(S173)。また、制御部10は、記番号の色が色Aの紙幣31が発行された時期を確認して経過年月を算出し、計算式またはテーブルに基づいて識別基準(テンプレート)の許容範囲を決定する(S174)。そして、制御部10は、磁気センサ20Cで領域35の磁気量を確認する(S175)。また、制御部10は、光学センサ20Bで、紙幣31A全体の光学特性を確認する(S176)。そして、制御部10は、紙幣31Aの厚み、領域35の磁気量、及び紙幣31A全体の光学特性が識別基準の許容範囲内であるかの判定を行う(S177)。そして、いずれかが範囲外であればNG信号を出力し(S178)、全て範囲内であればOK信号を出力する(S179)。
【0068】
一方、制御部10は、記番号の色が色Bの場合(S172:N)、紙幣31B用の識別基準(テンプレート)を読み出す(S180)。また、制御部10は、記番号の色が色Bの紙幣31が発行された時期を確認して経過年月を算出し、計算式またはテーブルに基づいて識別基準(テンプレート)の許容範囲を決定する(S181)。そして、制御部10は、磁気センサ20Cで領域37の磁気量を確認する(S182)。また、制御部10は、光学センサ20Bで、紙幣31B全体の光学特性を確認する(S183)。そして、制御部10は、ステップS177以降の処理を行う。
【0069】
なお、ステップS172の判定では、記番号の色情報だけで判定しているが、記番号の色情報と文字列情報を組み合わせて判定しても良い。
【0070】
このように記番号の色情報及び文字列情報で識別の処理内容を切り替えると、同じ金種の中でもいくつか種類のある金種においても適切な識別が行えるようになる。
【0071】
制御部(識別手段に相当)10は、図6に示すように、ステップS18では、ステップS16A・S16Bでの記番号の整合性判定の結果やステップS17でのセンサ判定の結果を用いて、紙幣が真券であるか否かを総合的に判定(識別)する。そして、制御部10は、入金された紙幣31が真券と判定(識別)した場合には、紙幣の種類に応じてスタッカ23a〜23cのいずれかに搬送する。一方、偽造券または不明券(変造券を含む)と判定(識別)した場合には、紙幣を返却口に搬送するか、または回収部24に回収する。
【0072】
また、制御部10は、ステップS18では、紙幣の記番号の情報(記番号の文字列と記番号の色の情報)をRAM14で記憶する。
【0073】
このように記番号の文字列情報に加えて、記番号の色情報も合わせて整合性の判定を行うので、その紙幣に応じた識別基準に基づいて紙幣の真偽を正確に判定(識別)できる。
【0074】
なお、自動預入支払機2では、上記のように、スタッカ23a〜23cに集積される(入出金される)紙幣を識別部20に搬送した際に認識した紙幣の記番号情報をRAM14で記憶する。また、自動預入支払機2では、出金口19Bまたは返却口19Cから紙幣を出金若しくは返却する際に、識別部20で撮像した画像を用いて認識した記番号情報を、RAM14から削除する。これにより、新たに作成された偽造券が入金された場合に、その紙幣を偽装券と判別することができる。例えば、全て同じ記番号の新たな偽造券が複数入金された場合に、入金された紙幣の記番号を順次記憶して、この記番号と後から入金される記番号とを比較することで、続けて入金された紙幣が偽造券であると判定(識別)できる。
【0075】
次に、本発明の別の実施例を説明する。自動預入支払機2では、図6に基づいて説明した手順にしたがって紙幣31の真偽を判定するが、さらに、外部記憶部15が記憶する偽造券や盗難紙幣や自動預入支払機2のスタッカ23a〜23cに収納された紙幣等の記番号の情報を用いて真偽を判定することができる。以下に、その場合の処理を説明する。
【0076】
なお、自動預入支払機2では、前記のようにスタッカ23a〜23cに集積する紙葉類の記番号の情報を識別すると、外部記憶部15に送信し、外部記憶部15は、この記番号の情報を記憶する。また、自動預入支払機2が紙幣を出金または返却した際には、その紙幣の記番号情報を外部記憶部15に送信し、外部記憶部15は、その情報を消去する。
【0077】
図11は、自動預入支払機の処理を説明するためのフローチャートである。
【0078】
制御部10は、紙幣31が入金口19Aから投入されたことを不図示のセンサで検出すると(S201)、入金口19Aから識別部20へ搬送部12により紙幣31を搬送させる(S202)。
【0079】
制御部10は、図6に基づいて説明した識別処理を行う(S203)。
【0080】
続いて、制御部10は、外部記憶部15に記録された偽造券や盗難紙幣、スタッカ23a〜23cに集積された紙幣等、予め定めた属性に属する紙幣の記番号の情報(記番号の文字列と色の情報)を参照する(S204)。
【0081】
そして、制御部10は、入金された紙幣31の記番号の文字列情報や色情報と、外部記憶部15に記録されている偽造券・盗難紙幣・自動預入支払機2のスタッカ23a〜23cに集積される紙幣の、各記番号の文字列情報や色情報とを比較し、一致するものがあるか確認する(S205)。
【0082】
制御部10は、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが無ければ(S206:N)、真券と判断(識別)する。そして、正常処理として、入金された紙幣を一時保留部21経由でスタッカ23a〜23cに格納する(S207)。一方、制御部10は、記番号の記番号の文字列情報及び色情報が一致するものがあれば、偽造券または不明券と判断(識別)する。そして、異常処理として、警報部17により警報を発したり、防犯カメラ16により利用者を撮影したり、紙幣31を回収部24に回収したりする(S208)。
【0083】
そして、制御部10は、入金された紙幣31の記番号の文字列情報や色情報を外部記憶部15に追加する(S209)。
【0084】
なお、上記の説明では、入金取引について説明したが、カセット25からの補充などの処理でも同様の処理が行うことができる。
【0085】
また、ステップS208の異常処理では、偽造券と盗難紙幣と自動預入支払機内の紙幣との一致で、全て同じ扱いにしているが、各々の重要性に鑑みて別々の処理内容としても良い。
【0086】
このように記番号の文字列情報に加えて、記番号の色情報も合わせて比較するので、全ての紙幣を区別できるようになり、盗難紙幣でもないのに盗難紙幣と間違えるような問題は起こらなくなる。
【0087】
次に、さらに別の実施例として、紙葉類管理システムの実施例を説明する。紙葉類管理システム1では、偽造券や盗難紙幣などの記番号情報や、自動預入支払機2のスタッカ23a〜23c・両替機6・自動販売機7に収納された紙幣の記番号をデータベース5に蓄積している。また、自動預入支払機2が認識した記番号情報をホストコンピュータ4に送信し、ホストコンピュータ4がデータベース5に記録された記番号の情報を参照して、真券か否かを判定する。なお、両替機6及び自動販売機7は入出金される紙幣の記番号情報を認識する不図示の認識部を備えており、紙幣が入金される際に、紙幣の記番号情報を取得し、不図示の記憶部で記憶する。また、所定のタイミングで、自動預入支払機2・両替機6・自動販売機7は、通信ネットワーク3を介してデータベース5と通信して、紙幣の記番号情報を送受信して、記番号情報を更新する。
【0088】
以下、その詳細を説明する。図12は、紙葉類管理システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【0089】
制御部10は、紙幣31が入金口19Aから投入されたことをセンサで検出すると(S211)、入金口19Aから識別部20へ搬送部12により紙幣31を搬送させる(S212)。
【0090】
制御部10は、図6に基づいて説明した識別処理を行う(S213)。
【0091】
続いて、制御部10は、紙幣31の記番号情報(文字列の情報及び色情報)を読み出して(S214)、紙幣31の記番号情報(文字列の情報及び色情報)をホストコンピュータ4に送信する(S215)。そして、制御部10は、ホストコンピュータ4からの情報を受信するまで待機する(S216:N)。
【0092】
ホストコンピュータ4は、自動預入支払機2からの情報を受信するまで待機している(S221:N)。ホストコンピュータ4は、自動預入支払機2からの情報を受信すると(S221:Y)、データベース5を参照し(S222)、受信した紙幣の記番号の文字列情報や色情報と、データベース5に記録されている偽造券・盗難紙幣・各装置内に収納された紙幣の記番号情報(文字列情報及び色情報)と、を比較し、一致するものがあるか確認する(S223)。
【0093】
ホストコンピュータ4は、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが無ければ(S224:N)、その旨を自動預入支払機2に送信する(S225)。一方、ホストコンピュータ4は、記番号の記番号の文字列情報及び色情報が一致するものがあれば、その旨を自動預入支払機2に送信する(S226)。
【0094】
そして、ホストコンピュータ4は、受信した紙幣31の記番号の文字列情報や色情報をデータベース5に追加する(S227)。
【0095】
自動預入支払機2の制御部10は、ホストコンピュータ4から記番号の文字列情報と色情報に関する判定結果の情報を受信すると(S216:Y)、この情報をチェックし、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが無ければ(S217:Y)、真券と識別(判断)する。そして、正常処理として、入金された紙幣を一時保留部21経由でスタッカ23a〜23cに格納する(S218)。一方、制御部10は、記番号の文字列情報及び色情報が一致するものが有れば(S217:N)、偽造券または不明券と識別(判断)する。そして、異常処理として、警報部17により警報を発したり、防犯カメラ16により利用者を撮影したり、紙幣を回収部24に回収したりする(S219)。そして処理を終了する。
【0096】
このように記番号の文字列情報に加えて、記番号の色情報も合わせて比較するので、全ての紙幣を区別できるようになり、盗難紙幣でもないのに盗難紙幣と間違えるような問題は起こらなくなる。
【0097】
なお、以上の説明では、紙幣の2箇所に記番号が表記された場合を記載したが、本発明はこれに限るものではなく、紙幣にさらに複数の記番号が表記された場合にも適応できる。また、このように紙幣に3つ以上の記番号が表記されている場合には、少なくとも2つの記番号について、文字列や色の整合性を判定すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係る紙葉類管理システムの概略構成図である。
【図2】自動預入支払機の制御ブロック図である。
【図3】自動預入支払機の搬送系統を示す構成図である。
【図4】紙幣の表面のイメージ図である。
【図5】紙幣の撮像時の動作を示す概念図である。
【図6】自動預入支払機の識別処理の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】切り出した文字の一例である。
【図8】2つの記番号について相互の整合性の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】センサ判定の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】光学センサの出力と許容範囲を示す図である。
【図11】自動預入支払機の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】紙葉類管理システムの処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1…紙葉類管理システム 2…自動預入支払機 3…通信ネットワーク
4…ホストコンピュータ 5…データベース 10…制御部 11…通信部 12…搬送部 13…ROM 14…RAM 15…外部記憶部 19…入出金部 20…識別部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記番号が複数箇所に表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像を処理し、前記紙葉類に表記されている記番号の文字列を認識する文字認識手段と、
前記紙葉類に表記されている記番号の色を認識する色認識手段と、
前記文字認識手段が認識した2つの記番号の文字列、及び前記色認識手段が認識した該2つの記番号の色が一致しているかを判定し、これらが一致していれば、該記番号の色に基づいて前記紙葉類を識別するための識別基準を決定する識別基準決定手段と、
前記識別基準を用いて紙葉類を識別する識別手段と、
を備えた紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記文字認識手段は、1つの記番号の文字列を文字認識し、
前記識別基準決定手段は、前記文字認識手段が認識した一方の記番号の文字列と、他方の記番号の文字列と、のパターンマッチングにより比較して2つの記番号の文字列が一致しているかを判定する請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記識別基準として、前記紙葉類毎の特徴を表すテンプレートを複数記憶する識別基準記憶手段を備え、
前記識別基準決定手段は、前記識別手段が用いる識別基準として、前記記番号の色に応じたテンプレートを前記識別基準記憶手段から選択する請求項1または2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記識別基準決定手段は、前記記番号の色に基づいて前記識別基準の許容範囲を変更する請求項1乃至3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
予め定めた属性に属する紙葉類の記番号情報を記憶する記番号記憶手段を備え、
前記識別手段は、前記記番号情報を用いて紙葉類を識別する請求項1乃至4のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
記番号が複数箇所に表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段を備えた紙葉類処理装置を制御するコンピュータを、
前記撮像手段が撮像したカラー画像を処理し、前記紙葉類に表記されている記番号の文字列を認識する文字認識手段、
前記紙葉類に表記されている記番号の色を認識する色認識手段、
前記文字認識手段が認識した2つの記番号の文字列、及び前記色認識手段が認識した該2つの記番号の色に基づいて、前記紙葉類に表記された2つの記番号が一致しているかを判定し、これらが一致していれば、該記番号の色に基づいて前記紙葉類を識別するための識別基準を決定する識別基準決定手段、
前記識別基準を用いて紙葉類を識別する識別手段と、
として機能させるための紙葉類処理プログラム。
【請求項1】
記番号が複数箇所に表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像を処理し、前記紙葉類に表記されている記番号の文字列を認識する文字認識手段と、
前記紙葉類に表記されている記番号の色を認識する色認識手段と、
前記文字認識手段が認識した2つの記番号の文字列、及び前記色認識手段が認識した該2つの記番号の色が一致しているかを判定し、これらが一致していれば、該記番号の色に基づいて前記紙葉類を識別するための識別基準を決定する識別基準決定手段と、
前記識別基準を用いて紙葉類を識別する識別手段と、
を備えた紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記文字認識手段は、1つの記番号の文字列を文字認識し、
前記識別基準決定手段は、前記文字認識手段が認識した一方の記番号の文字列と、他方の記番号の文字列と、のパターンマッチングにより比較して2つの記番号の文字列が一致しているかを判定する請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記識別基準として、前記紙葉類毎の特徴を表すテンプレートを複数記憶する識別基準記憶手段を備え、
前記識別基準決定手段は、前記識別手段が用いる識別基準として、前記記番号の色に応じたテンプレートを前記識別基準記憶手段から選択する請求項1または2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記識別基準決定手段は、前記記番号の色に基づいて前記識別基準の許容範囲を変更する請求項1乃至3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
予め定めた属性に属する紙葉類の記番号情報を記憶する記番号記憶手段を備え、
前記識別手段は、前記記番号情報を用いて紙葉類を識別する請求項1乃至4のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
記番号が複数箇所に表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段を備えた紙葉類処理装置を制御するコンピュータを、
前記撮像手段が撮像したカラー画像を処理し、前記紙葉類に表記されている記番号の文字列を認識する文字認識手段、
前記紙葉類に表記されている記番号の色を認識する色認識手段、
前記文字認識手段が認識した2つの記番号の文字列、及び前記色認識手段が認識した該2つの記番号の色に基づいて、前記紙葉類に表記された2つの記番号が一致しているかを判定し、これらが一致していれば、該記番号の色に基づいて前記紙葉類を識別するための識別基準を決定する識別基準決定手段、
前記識別基準を用いて紙葉類を識別する識別手段と、
として機能させるための紙葉類処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−117803(P2010−117803A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289322(P2008−289322)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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