説明

紙葉類処理装置

【課題】紙葉類を常時付勢するバックアップ部のロックの解除条件を適正化して、製品品質や安全性を向上させた紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】紙葉類の補給又は回収を行うためにバックアップ部4を繰り出し機構3から離間させた場合に、バックアップ部4の一部と係合してバックアップ部4が所定位置から繰り出し機構側(X2方向)へ移動することを規制するとともに、操作手段50への解除操作S1を解除条件の一つとし、解除条件の成立によりバックアップ部4の移動規制を解除するロック機構5とを有している。ロック機構5は、バックアップ部4を付勢力F1に抗して反繰り出し機構側(X1方向)に移動させる押圧操作と操作手段50への解除操作S1とが同時になされている状態から解除操作S1を維持しつつバックアップ部4を繰り出し機構側(X1方向)に移動させた場合にのみ、解除条件が成立するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納室に集積状態で収納される紙葉類を付勢するバックアップ部の移動をロックするロック機構を備えた紙葉類処理装置に係り、特にロック機構によるバックアップ部のロックを解除する機能を適正化した紙葉類処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣やカード等の紙葉類を繰り出す紙葉類処理装置は、例えば特許文献1等に示されるように、紙葉類を集積状態で収納する収納室と、収納室内部に臨む位置に配置され収納室にある紙葉類を収納室外部に排出する繰り出し機構と、紙葉類の集積方向に沿って収納室内部を移動可能に構成され紙葉類を繰り出し機構に向けて付勢するバックアップ部とを有し、繰り出し機構によって適切に紙葉類が繰り出されるようにバックアップ部により紙葉類に付勢力を付与するいわゆるバックアップ方式で紙葉類を繰り出す装置が開示されている。この種の装置では、収納室にある紙葉類を回収又は補給する際に、手作業でバックアップ部を繰り出し機構から離間させてバックアップ部と繰り出し機構との間に紙葉類を補給又は回収するための作業空間を形成した状態で補給等の作業を行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−240257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の紙葉類処理装置では、紙葉類の補給又は回収の作業中に、バックアップ部を繰り出し機構から離間させた位置に付勢力に抗して常に手で保持し続けなければならないので、片手がふさがれて作業性を損なう不具合がある。
【0005】
このような不具合を解決するために、紙葉類の補給又は回収を行うためにバックアップ部を繰り出し機構から離間させた場合に、バックアップ部の一部と係合してバックアップ部が所定位置から繰り出し機構側へ移動することを規制(ロック)するとともに、操作手段に解除操作がなされることによりバックアップ部の移動規制を解除するロック機構を設けることが一つの有効な手段として挙げられる。
【0006】
しかしながら、操作手段に不意に触れる等、操作手段への解除操作がなされると、バックアップ部のロックが解除されて付勢力により急激にバックアップ部が繰り出し機構側に戻ってしまい、この場合、紙葉類が意図しない姿勢で挟まれて、シワが付いたり破損したりして搬送詰まりや作動不良、故障の要因となり製品品質を低下させてしまう。また、バックアップ部のロック解除時に片方の手が遊んでいると安全性の観点からも好ましいものではない。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、紙葉類を常時付勢するバックアップ部のロックの解除条件を適正化して、製品品質や安全性を向上させた紙葉類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の紙葉類処理装置は、紙葉類を集積状態で収納する収納室と、収納室内部に臨む位置に配置され収納室にある紙葉類を収納室外部に排出する繰り出し機構と、紙葉類の集積方向に沿って収納室内部を移動可能に構成され紙葉類を前記繰り出し機構に向けて付勢するバックアップ部と、紙葉類の補給又は回収を行うためにバックアップ部を前記繰り出し機構から離間させた場合に、バックアップ部の一部と係合してバックアップ部が所定位置から繰り出し機構側へ移動することを規制するとともに、操作手段への解除操作を解除条件の一つとし、解除条件の成立により当該バックアップ部の移動規制を解除するロック機構とを具備してなり、前記ロック機構は、前記バックアップ部を付勢力に抗して反繰り出し機構側に移動させる押圧操作と前記操作手段への解除操作とが同時になされている状態から前記解除操作を維持しつつ前記バックアップ部を繰り出し機構側に移動させた場合にのみ、前記解除条件が成立するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
所定位置は、バックアップ部と繰り出し機構との間に紙葉類の補給又は回収作業のための作業空間が形成されれば、任意の位置に設定可能である。
【0011】
このように、紙葉類の補給又は回収を行うためにバックアップ部を繰り出し機構から離間させて、ロック機構によりバックアップ部が所定位置から繰り出し機構側へ移動することが規制されたロック状態において、バックアップ部を付勢力に抗して反繰り出し機構側に移動させる押圧操作と操作手段への解除操作とが同時になされている状態から操作手段への解除操作を維持しつつバックアップ部を繰り出し機構側に移動させることをロック機構の解除条件としているので、バックアップ部の解除時に両手がふさがる状態となり、安全性を向上させることが可能となる。しかも、バックアップ部を付勢力に抗して移動させる押圧操作を行わなければロックが解除されないので、バックアップ部に触れていない状態でバックアップ部が繰り出し機構側に戻って紙葉類が意図しない姿勢で挟まれることを防止し、搬送詰まりや作動不良、故障を低減して製品品質を向上させることが可能となる。
【0012】
ロック機構のロックを解除するための操作を両手で行わせて安全性を向上させるためには、前記バックアップ部に対する押圧操作と前記操作手段への解除操作とは、互いに操作方向が異なることが好ましい。
【0013】
ロック機構のロックを解除するための操作を両手で行わせて安全性を向上させるためには、前記バックアップ部に対する押圧操作と前記操作手段への解除操作とは、一方が直線動作であり、他方が回転動作であることが望ましい。
【0014】
ロック機構のロックを解除するための操作が複数からなることをユーザに気付かせるためには、前記ロック機構は、前記バックアップ部への押圧操作がなされている状態でのみ、前記操作手段への解除操作が入力可能となるように構成されていることが効果的である。
【0015】
ロック機構によるバックアップ部の移動規制の解除忘れを報知して適切な運用を実現するためには、前記収納室の開口を塞ぐ閉止位置又は閉止位置から退避して収納室を開放する開放位置に移動可能に構成されるドアを有し、前記ロック機構は、バックアップ部の規制状態では前記ドアと接触することで前記ドアが開放位置から閉止位置に移動することを禁止するとともに、前記バックアップ部の規制解除状態では前記ドアとの接触を回避してドアの移動禁止を解除するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明したように、紙葉類の補給又は回収を行うためにバックアップ部を繰り出し機構から離間させて、ロック機構によりバックアップ部がロックされた状態において、バックアップ部を付勢力に抗して移動させる押圧操作と操作手段への解除操作とが同時になされている状態から操作手段への解除操作を維持しつつバックアップ部を繰り出し機構側に移動させることをロック機構の解除条件としているので、バックアップ部の解除時に両手がふさがる状態となり、安全性を向上させることが可能となる。しかも、バックアップ部を付勢力に抗して移動させる押圧操作を行わなければロックが解除されないので、バックアップ部に触れていない状態でバックアップ部が繰り出し機構側に戻って紙葉類が意図しない姿勢で挟まれることを防止し、搬送詰まりや作動不良、故障を低減して製品品質を向上させることが可能となる。したがって、安全性及び製品品質を向上させた紙葉類処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置の概略的な全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態の構成および機能の概要を示すブロック図。
【図4】同実施形態における収納室及び繰り出し機構の周辺構成を模式的に示す側面図。
【図5】同実施形態において収納室から紙葉類を排出する動作を模式的に示す側面図。
【図6】バックアップ部及びロック機構並びに制限手段の構成を模式的に示す図。
【図7】ロック機構がバックアップ部の移動を規制する状態を模式的に示す説明図。
【図8】ロック機構のロックを解除する動作を模式的に示す説明図。
【図9】ロック機構のロックを解除する動作を模式的に示す説明図。
【図10】ロック機構のロックを解除する動作を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての紙葉類処理装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示す本実施形態の紙葉類処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う券売機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、これにセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを具備する。
【0020】
紙幣ブロック1は、利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、例えば図3に示すように出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の混合金庫Dを内設し、係員が操作を行う側方に三つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、搬送経路21上の紙幣を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部F、読み取り不能、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部G等も設けられている。カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して引き出すことが可能とされた着脱可能な金庫である。
【0021】
識別部22は、図1及び図3に示すように、紙幣の金種判定を主として行うもので、挿入口11から投入される紙幣の金種のみ識別する。これに対して、各金庫A〜Dに紙幣が補給される場合や、各金庫A〜Dから紙幣が回収される場合等には、図1及び図3に示す補給回収用の簡易型の識別部20(以下、簡易識別部と称する)で金種識別を行う。ここに言う簡易型とは、金種識別のみを行い、紙幣の真性(偽造か否か)までは識別しないものを言う。
【0022】
搬送手段2は、図3に示すように、周知の紙幣処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される前記搬送経路21と、搬送される紙幣の金種を識別する前記識別部22および簡易識別部20と、この識別部22或いは簡易識別部20の識別結果等に基づいて前記搬送経路21を制御する制御部23(図3参照)とから構成される。制御部23は、CPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータにより構成され、この制御部23が、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部a〜gで必要に応じて紙幣を方向変換して、金庫A〜D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、一次保留部a1〜c1、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である払出口12や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な制御を行うように構成されている。
【0023】
各金庫A(B,C)には、図4に示すように、紙幣等の紙葉類Paを集積状態で収納する収納室a2(b2,c2)と、収納室a2内部に臨む位置に配置され収納室a2にある紙葉類Paを収納室a2外部の搬送経路21に排出する繰り出し機構3と、紙葉類の集積方向(X方向)に沿って収納室a2内部を移動可能に構成され紙葉類Paを繰り出し機構3に向けて付勢するバックアップ部4と、バックアップ部4の移動を規制するとともに操作手段50への解除操作S1を解除条件の一つとし、解除条件の成立によりバックアップ部4の移動規制を解除するロック機構5とを有している。
【0024】
収納室a2(b2,c2)は、図4に示すように、天壁wl1、底壁wl2、側壁wl3及びドアdoで包囲された略長方形状の集積空間SPを形成するもので、この集積空間SPに紙葉類Paを収納する。ドアdoは、紙葉類Paの補給又は回収を行う場合に開けられるもので、収納室a2内部を金庫Aの側方に開口する開口端を塞ぐ閉止位置t1又は閉止位置t1から退避して収納室a2を開放する開放位置t2に移動可能(開閉可能)に構成されている。
【0025】
繰り出し機構3は、図4及び図5に示すように、収納室a2内の紙葉類Paを一枚ずつ分離して搬送経路21に向けて排出するもので、紙葉類Paの厚み方向(X方向)両側に配置される駆動力を備えた対をなすフィードローラ30及びゲートローラ31と、ピックアップローラ32とを備え、バックアップ部4で付勢される紙葉類Paのうちピックアップローラ32側にある単一又は複数の紙葉類Paをピックアップローラ32で排出方向に移動させ、紙葉類Paを排出する方向にフィードローラ30を回転させるとともに、ゲートローラ31を停止又は紙葉類Paを投入する方向に回転させることで紙葉類Paを一枚ずつ分離して収納室a2外部の搬送経路21に繰り出す。
【0026】
バックアップ部4は、図4に示すように、収納室a2にある紙葉類Paを載置する土台となる略板状をなすもので、集積方向(X方向)に沿って収納室a2内部を移動可能に構成され、図示しないバネ等の弾性部材により繰り出し機構3を構成するピックアップローラ32に紙葉類Paを付勢している。バックアップ部4には、図4及び図6に示すように、バックアップ部4を付勢力F1に抗して反繰り出し機構側(X1方向)に押圧するための把手部40が設けられている。
【0027】
ロック機構5は、図4に示すように、バックアップ部4とピックアップローラ32(繰り出し機構3)との間に紙葉類の補給又は回収作業のための作業空間SP1が形成されるようにバックアップ部4を繰り出し機構3から離間させた場合に、バックアップ部4の一部と係合してバックアップ部4が所定位置po1から繰り出し機構側(X2方向)に移動することを規制するとともに、操作手段50への解除操作S1を解除条件の一つとし、解除条件の成立によりバックアップ部4の移動規制を解除するように構成されている。なお、所定位置po1は、バックアップ部4とピックアップローラ32(繰り出し機構3)との間に紙葉類の補給又は回収作業のための作業空間SP1が形成されれば、任意の位置に設定可能である。
【0028】
具体的に、ロック機構5は、図6に示すように、バックアップ部4の移動に連動する棒状の連動部材41との係合により連動部材41の繰り出し機構側(X2方向)へ向かう連動動作U1を規制する規制位置r1又は規制位置r1から退避した非規制位置r2に回転動作で移動可能に構成される規制部材51と、回転による姿勢変更可能に構成され外部から解除操作S1を回転動作として規制部材51に入力する操作手段50とを有している。
【0029】
連動部材41は、バックアップ部4の移動方向(X方向)に直交する方向に向けてバックアップ部4から突出するように設けられている。
【0030】
規制部材51は、基端部51aが軸心Cn1回りに回転可能に支持され先端部51bが連動部材41の移動方向(X方向)に直交する方向に向かって屈曲する鉤状をなし、基端部51aを基点として先端部51bが繰り出し機構側(X2方向)を向くように配置されており、鉤状の先端部51bが連動部材41の連動動作U1に干渉する位置を規制位置r1とし、先端部51bが連動部材の連動動作U1との干渉を回避した位置を非規制位置r2としている。規制部材51は、スプリング52により非規制位置r2から規制位置r1に向かう方向(Y1方向)に付勢されている。規制部材51の先端部51bのうち繰り出し機構側(X2方向)には、繰り出し機構側(X2方向)から反繰り出し機構側(X1方向)に移動する連動部材41から受圧することで規制部材51を規制位置r1から非規制位置r2に変位させる案内面51cが形成されている。一方、規制部材51の先端部51bのうち反繰り出し機構側(X1方向)には、連動部材41と係合して連動部材41の繰り出し機構側(X2方向)へ向かう連動動作U1を規制する規制面51dが形成されている。
【0031】
操作手段50は、図4及び図6に示すように、一部が外部から視認可能な位置に設けられ、規制部材51の回転軸心Cn1と平行な軸Cn2回りに回転可能に構成された偏心カム状をなし、軸心Cn2から変位した一端部50aが外部から手で接触可能なように外部に向けて突出しており、一端部50aとは異なる方向に軸心Cn2から変位した他端部50bが上記規制部材51と接触して操作手段50及び規制部材51が連動して動作するように構成されている。操作手段50は、規制部材51が規制位置r1にある場合には、開放位置t2から閉止位置t1に移動しようとするドアdoに接触する干渉姿勢q1となり、規制部材51が非規制位置r2にある場合には、閉止位置t1にあるドアdoとの干渉が回避される非干渉姿勢q2となるように、ドアdoとの位置関係が規定されている。
【0032】
ここで従来であれば、操作手段50を金庫A内部に向かう方向に回転させながら内部に押し込む解除操作S1を行うと解除条件が成立して、操作手段50の他端部50bが規制部材51を押圧して規制部材51を規制位置r1から非規制位置r2に回転移動させ、連動部材41すなわちバックアップ部4の移動規制が解除されることになる。
【0033】
しかしながら、操作手段50に不意に触れる等、操作手段50への解除操作S1がなされると、バックアップ部4のロックが解除されて付勢力F1により急激にバックアップ部4が繰り出し機構側(X2方向)に戻ってしまい、紙葉類Paが意図しない姿勢で挟まれてシワが付いたり破損したりして搬送詰まりや作動不良、故障の要因となり製品品質を低下させてしまう。また、バックアップ部4のロック解除時に片方の手が遊んでいると安全性の観点からも好ましいものではない。
【0034】
そこで、本実施形態では、図6に示すように、ロック機構5を、バックアップ部4を付勢力F1に抗して反繰り出し機構側(X1方向)に移動させる押圧操作S2と解除操作S1とが同時になされている状態から解除操作S1を維持しつつバックアップ部4を繰り出し機構側(X2方向)に移動させた場合にのみ、解除条件が成立するように構成している。
【0035】
具体的には、図6(b)及び図7(a)に示すように、規制部材51の一部(先端部51b)に禁止面51eを形成し、図7(a)に示すように、バックアップ部4への押圧操作S2がなされずに規制部材51の規制面51dと連動部材41とが係合状態にある場合に規制部材51の移動方向(Y2方向)において連動部材41と禁止面51eとが干渉する位置関係となる一方、図6(b)に示すように、バックアップ部4への押圧操作S2がなされて規制部材51の規制面51dと連動部材41とが非係合状態になる場合には規制部材51の移動方向(Y2方向)において連動部材41と禁止面51eとの干渉が回避される位置関係に設定している。すなわち、バックアップ部の動作とロック機構の解除動作とが互いに干渉しあう構成にしている。本実施形態では、規制部材51の先端部51bを連動部材41の移動方向(X方向)に直交する方向(Y2方向)に向かって屈曲する鉤状とし、さらにその鉤状の先端を反繰り出し機構側(X1方向)に向かって屈折させ、この屈折部位に禁止面51eを形成している。
【0036】
図7(b)に示すように、収納室a2に対する紙葉類Paの補給又は回収を行うために、ドアdoを閉止位置t1から開放位置t2に移動させ、バックアップ部4を反繰り出し機構側(X1方向)に移動させるだけで、規制部材51の案内面51cが連動部材41から受圧することで規制部材51が規制位置r1から非規制位置r2に一旦退避し、図7(a)に示すように、連動部材41が規制部材51の先端部51bよりも基端側(X1方向)に移動すると、規制部材51が再び規制位置r1に戻る。この場合、バックアップ部4が付勢力F1で繰り出し機構側(X2方向)に戻ろうとすると、規制面51dと連動部材41とが係合してバックアップ部4が所定位置po1から繰り出し機構側(X2方向)に移動することが規制された規制状態となる。
【0037】
このバックアップ部4の移動規制状態(ロック機構5によるロック状態)では、図7(a)に示すように、規制部材51の禁止面51eと連動部材41とが規制部材51の移動方向(Y2方向)において干渉する位置関係となるので、規制部材51が規制位置r1から非規制位置r2に移動することが禁止され、ロック機構5の規制解除機能に対して制限が課せられた状態となる。この場合、図7(a)に示すように、規制部材51と連動する操作手段50もその姿勢変更動作が行えず、操作手段50への解除操作S1が入力不可能となる。さらに、操作手段50は、規制部材51が規制位置r1にある場合には、開放位置t2から閉止位置t1に移動しようとするドアdoに接触する干渉姿勢q1となるように構成されているので、ドアdoが閉止位置t1に移動することが禁止されてドアdoを閉めることができなくなる。
【0038】
図7に示すバックアップ部4の移動規制状態(ロック機構5によるロック状態)において、図8(a)に示すように、バックアップ部4の把手部40を手で押さえてバックアップ部4を付勢力F1に抗して反繰り出し機構側(X1方向)に移動させる押圧操作S2がなされると、図8(b)に示すように、規制部材51の規制面51dと連動部材41とが非係合状態になり、規制部材51の移動方向(Y2方向)において連動部材41と禁止面51eとの干渉が回避される位置関係となるので、規制部材51が規制位置r1から非規制位置r2へ移動することが許容される。図9(b)に示すように、バックアップ部4への押圧操作S2を維持した状態で操作手段50への解除操作S1を行うと、図9(a)に示すように、規制部材51が規制位置r1から非規制位置r2に移動する。バックアップ部4への押圧操作S2は、金庫Aの下方に向けてなされる直線動作であり、一方で操作手段50への解除操作S1は、金庫Aの側方から金庫内部に向けてなされる回転動作である。ここで、操作手段50への解除操作S1をやめると、スプリング52の付勢力により規制部材51が非規制位置r2から規制位置r1に戻ってしまう。
【0039】
図9に示すバックアップ部4への押圧操作S2と操作手段50への解除操作S1とが同士になされている状態から、図10(b)に示すように解除操作S1を維持しつつバックアップ部4を繰り出し機構側(X2方向)に移動させて、連動部材41を規制部材51の先端部51bよりも繰り出し機構側(X2方向)に移動させると、ロック機構5の規制を解除する解除条件が成立し、操作手段50への解除操作S1を解除してもバックアップ部4の移動規制が解除された状態となる。バックアップ部4の移動規制が解除された状態では、規制部材51が規制位置r1から非規制位置r2に移動することが許容されるので、操作手段50がドアに押されて姿勢変更し、ドアdoが閉止位置t1に移動してドアを閉めることが可能となる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る紙葉類処理装置は、紙葉類Paを集積状態で収納する収納室a2と、収納室a2内部に臨む位置に配置され収納室a2にある紙葉類Paを収納室a2外部に排出する繰り出し機構3と、紙葉類Paの集積方向(X1方向)に沿って収納室a2内部を移動可能に構成され紙葉類Paを繰り出し機構3に向けて付勢するバックアップ部4と、紙葉類Paの補給又は回収を行うためにバックアップ部4を繰り出し機構3から離間させた場合に、バックアップ部4の一部である連動部材41と係合してバックアップ部4が所定位置po1から繰り出し機構側(X2方向)へ移動することを規制するとともに、操作手段50への解除操作S1を解除条件の一つとし、解除条件の成立によりバックアップ部4の移動規制を解除するロック機構5とを具備してなり、ロック機構5は、バックアップ部4を付勢力F1に抗して反繰り出し機構側(X1方向)に移動させる押圧操作S2と操作手段50への解除操作S1とが同時になされている状態から解除操作S1を維持しつつバックアップ部4を繰り出し機構側(X2方向)に移動させた場合にのみ、解除条件が成立するように構成されている。
【0041】
このように、紙葉類Paの補給又は回収を行うためにバックアップ部4を繰り出し機構3から離間させて、ロック機構5によりバックアップ部4が所定位置po1から繰り出し機構側(X2方向)へ移動することが規制されたロック状態において、バックアップ部4を付勢力F1に抗して反繰り出し機構側(X1方向)に移動させる押圧操作S2と操作手段50への解除操作S1とが同時になされている状態から操作手段50への解除操作S1を維持しつつバックアップ部4を繰り出し機構側(X2方向)に移動させることをロック機構5の解除条件としているので、バックアップ部4の解除時に両手がふさがる状態となり、安全性を向上させることが可能となる。しかも、バックアップ部4を付勢力F1に抗して移動させる押圧操作S2を行わなければロックが解除されないので、バックアップ部4に触れていない状態でバックアップ部4が繰り出し機構側に戻って紙葉類Paが意図しない姿勢で挟まれることを防止し、搬送詰まりや作動不良、故障を低減して製品品質を向上させることが可能となる。
【0042】
特に、本実施形態では、バックアップ部4に対する押圧操作S2と操作手段50への解除操作S1とは、互いに操作方向が異なり、両操作を片手で行うことが難しいので、ロック機構5のロックを解除するための操作を適切に両手で行わせて安全性を向上させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、バックアップ部4に対する押圧操作S2と操作手段50への解除操作S1とは、一方の押圧操作S2が直線動作であり、他方の解除操作S1が回転動作であり、両操作を片手で行うことが難しいので、上記同様にロック機構5のロックを解除するための操作を適切に両手で行わせて安全性を向上させることが可能となる。
【0044】
加えて、本実施形態では、ロック機構5は、バックアップ部4への押圧操作S2がなされている状態でのみ、操作手段50への解除操作S1が入力可能となるように構成されているので、本実施形態のようにロック機構5のロックを解除するための操作が複数からなる場合であっても特別な表記を要することなく複数操作が必要であることをユーザに気づかせることが可能となる。
【0045】
その他、本実施形態では、収納室a2の開口端を塞ぐ閉止位置t1又は閉止位置t1から退避して収納室a2を開放する開放位置t2に移動可能に構成されるドアdoを有し、ロック機構5は、バックアップ部4の規制状態ではドアdoと操作手段50とを接触させることでドアdoが開放位置t2から閉止位置t1に移動することを禁止するとともに、バックアップ部4の規制解除状態ではドアdoの移動禁止を解除するように構成されているので、ドアdoが閉まらないことでバックアップ部4の規制解除忘れを報知することができ、バックアップ部4の規制を解除し忘れて紙葉類Paを適切に繰り出せない状態になることを防止して適切な運用を実現することが可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
例えば、本実施形態では、紙葉類を紙幣Paとしているが、乗車券やカード、精算切符等のその他の紙葉類に適用してもよい。
【0048】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
3…繰り出し機構
4…バックアップ部
5…ロック機構
50…操作手段
po1…所定位置
Pa…紙葉類
a2…収納室
X方向…集積方向
X2方向…繰り出し機構側
X1方向…反繰り出し機構側
S1…解除操作
S2…押圧操作
do…ドア
t1…閉止位置
t2…開放位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を集積状態で収納する収納室と、
収納室内部に臨む位置に配置され収納室にある紙葉類を収納室外部に排出する繰り出し機構と、
紙葉類の集積方向に沿って収納室内部を移動可能に構成され紙葉類を前記繰り出し機構に向けて付勢するバックアップ部と、
紙葉類の補給又は回収を行うためにバックアップ部を前記繰り出し機構から離間させた場合に、バックアップ部の一部と係合してバックアップ部が所定位置から繰り出し機構側へ移動することを規制するとともに、操作手段への解除操作を解除条件の一つとし、解除条件の成立により当該バックアップ部の移動規制を解除するロック機構とを具備してなり、
前記ロック機構は、前記バックアップ部を付勢力に抗して反繰り出し機構側に移動させる押圧操作と前記操作手段への解除操作とが同時になされている状態から前記解除操作を維持しつつ前記バックアップ部を繰り出し機構側に移動させた場合にのみ、前記解除条件が成立するように構成されていることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記バックアップ部に対する押圧操作と前記操作手段への解除操作とは、互いに操作方向が異なる請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記バックアップ部に対する押圧操作と前記操作手段への解除操作とは、一方が直線動作であり、他方が回転動作である請求項1又は2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記バックアップ部への押圧操作がなされている状態でのみ、前記操作手段への解除操作が入力可能となるように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記収納室の開口端を塞ぐ閉止位置又は閉止位置から退避して収納室を開放する開放位置に移動可能に構成されるドアを有し、
前記ロック機構は、前記バックアップ部の規制状態では前記ドアと接触することで前記ドアが開放位置から閉止位置に移動することを禁止するとともに、前記バックアップ部の規制解除状態では前記ドアの移動禁止を解除するように構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の紙葉類処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56760(P2012−56760A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204431(P2010−204431)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】