説明

紙製ワイパー

【課題】掻き取り性能や低発塵性を損ねずに、柔軟性を向上したワイパーを提供する。
【解決手段】ドライクレープ加工によりクレープを施してなる米坪25〜35g/m2の紙製ワイパーとする。抄紙に際して、NBKPを70〜100重量%配合したパルプ原料を用いるとともに、パルプスラリーのフリーネスを叩解により20〜100cc低下させる。また、パルプスラリーに脂肪酸エステル系柔軟剤を対パルプ重量比で0.05〜0.2%添加する。さらに、クレープ加工に際し、クレープ率を20〜40%とし、クレーピングドクターの接触角を115〜140度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製ワイパー(払拭用紙)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究施設や検査施設、病院等では、試験管やピペット等の試験器具に付着した水滴や検査薬等、微細な汚れの拭き取りのために不織布製のワイパー(例えば特許文献1参照)が汎用されている。ワイパーにおいては、拭き取り性能はもちろんのこと、拭き取り面に紙粉を残さないように極めて低い発塵性が要求される。
しかしながら、従来のワイパーでは、掻き取り性能や低発塵性を重視するあまり、硬すぎて、細かな部分や小さな凹凸を有する部分の拭き取りが困難であった。
【特許文献1】特開2005−143523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、掻き取り性能や低発塵性を損ねずに、柔軟性を向上したワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
ドライクレープ加工によりクレープを施してなる米坪25〜35g/m2の紙製ワイパーであって、
抄紙に際して、NBKPを70〜100重量%配合したパルプ原料を用いるとともに、パルプスラリーのフリーネスを叩解により20〜100cc低下させてなることを特徴とする紙製ワイパー。
【0005】
(作用効果)
本発明では、低米坪のクレープ紙からなる紙製ワイパーとすることにより、汚れ掻き取り性および柔軟性に優れるものとなっている。しかし、それだけでは、紙粉が発生し易くなってしまう。そこで、本発明では、原料パルプのNBKPを高配合にするとともに、パルプスラリーのフリーネスを叩解により20〜100cc低下させることによって、柔軟性を損ねずに紙粉の発生を抑制したものである。
なお、フリーネスとはカナダ標準ろ水度(JIS P 8121)を意味し、フリーネスを低下させるとは、未叩解時のフリーネスを基準として定まるものであり、その低下幅はフリーネスダウン幅ともいわれているものである。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記パルプスラリーに柔軟剤を対パルプ重量比で0.05〜0.2%添加してなる、請求項1記載の紙製ワイパー。
【0007】
(作用効果)
本発明では、単にNBKPを高配合とするだけでなく、フリーネスを低下させる。よって、単に低米坪とした場合と比べると柔軟性は低くならざるを得ない。よって、柔軟性を向上させるために、本項記載のように柔軟剤を添加するのは好ましく、特に本項記載の量で添加すると、柔軟性だけでなく、吸水性も向上するため好ましい。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記クレープ加工に際し、クレープ率を20〜40%とし、クレーピングドクターの接触角を115〜140度としてなる、請求項1または2記載の紙製ワイパー。
【0009】
(作用効果)
前述したように、クレープを施すことにより汚れ掻き取り性が向上する。しかし、本発明では柔軟性が向上するため(特に柔軟剤を用いた場合はなおさらである)、通常用いられているクレープ加工ではクレープが細かくなり、掻き取り性が低下する。また、紙粉が発生し易くなるおそれもある。そこで、本項記載のように、クレープ率を20〜40%とし、クレーピングドクターの接触角を115〜140度とすることで、粗いクレープを施すのは好ましい。この場合、クレープ加工に起因する紙粉の発生も極めて少なくなる利点があある。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、掻き取り性能や低発塵性を損ねずに、柔軟性を向上できる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳説する。
本発明の紙製ワイパーは、原料パルプとしてNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を70〜100重量%配合する。必要に応じて、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を30重量%まで配合することができる。NBKPが70重量%未満では紙粉発生量が多く、精度が要求される用途には不向きとなる。より好ましいNBKPの配合量は80重量%以上である。
【0012】
本発明では、抄紙に際して叩解を行い、パルプスラリーのフリーネスを未叩解時よりも20〜100cc低下させる。フリーネスの低下が20cc未満であると、繊維間の絡み合いが少ないため紙粉が発生し易くなり、100ccを超えると、繊維間隙が小さく、緻密な構造になるため硬くなるととともに吸水性に劣るようになる。より好ましいフリーネスの低下幅は40〜100ccである。
【0013】
柔軟性および吸水性を向上させるために、パルプスラリーには、柔軟剤を対パルプ重量比で0.05〜0.2%添加するのが好ましい。添加量が0.05重量%未満では効果が殆ど発現せず、0.2%を超えると効果が飽和し、費用対効果が低下する。柔軟剤としては、脂肪酸エステル系柔軟剤、ポリリン酸塩柔軟剤、ポリシロキサン、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤等を用いることができるが、特に脂肪酸エステル系柔軟剤を用いることが望ましい。
【0014】
本発明では、抄紙に際してドライクレープ加工によりクレープを施す。クレープは特に限定されるものではないが、クレープ率(=(ドライヤ周速−リール周速)÷ドライヤ周速×100)を20〜40%とし、クレーピングドクターの接触角を115〜140度とすると、嵩高で目が粗く、掻き取り性に優れるクレープとなるため好ましい。クレーピングドクターの接触角が115度未満では掻き取り性に劣るクレープ形状となり、140度を超えるとドライヤから紙を剥ぎ取ることができない。
【0015】
本発明の紙製ワイパーでは、米坪が25〜35g/m2とされる。米坪が25g/m2未満では紙粉が発生し易くなるとともに、厚み不足、強度不足によりワイパーとして用いることが困難になる。また、米坪が35g/m2を超えると硬くなり過ぎ、細かな部分や小さな凹凸を有する部分の拭き取りが困難となる。
また、本発明の紙製ワイパーでは、必要に応じて紙力増強剤(内添・外添)等、公知の添加剤を用いることもできる。
なお、本発明の紙製ワイパーの抄紙方法自体は、上述した特定の条件の組み合わせを除けば、基本的に公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0016】
表1及び表2に示す各種の紙製ワイパーを製造し、紙粉の発生量、掻き取り性、柔軟性、吸水性について評価した。
なお、柔軟剤としては、脂肪酸エステル系柔軟剤を使用した。
また、紙粉の発生量についは、10秒間手で揉んだ時に発生する50μm以上の紙粉の個数を測定し、紙粉が50個以下(とても少ない)を「◎」、51〜100個(少ない)を「○」、100個以上(多い)を「×」として評価した。
また、掻き取り性については、試験管に一定レベルの汚れを付着させ、この汚れを実際に拭き取り、掻き取り性がとてもよいを「◎」、掻き取り性がよいを「○」、掻き取り性が悪いを「×」として評価した。
さらに、柔軟性については、手で揉んだ時の感触を調べ、柔軟性がとてもよいを「◎」、柔軟性がよいを「○」、柔軟性が悪いを「×」として評価した。
さらに、吸水性については、試験管に一定レベルの水滴を付着させ、この水滴を一回拭き取った後の水滴の残り具合を目視確認し、吸水性がとてもよいを「◎」、吸水性がよいを「○」、吸水性が悪いを「×」として評価した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の紙製ワイパーは、研究施設や検査施設、病院等において、試験管やピペット等の試験器具に付着した水滴や検査薬等、微細な汚れの拭き取り等に利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライクレープ加工によりクレープを施してなる米坪25〜35g/m2の紙製ワイパーであって、
抄紙に際して、NBKPを70〜100重量%配合したパルプ原料を用いるとともに、パルプスラリーのフリーネスを叩解により20〜100cc低下させてなることを特徴とする紙製ワイパー。
【請求項2】
前記パルプスラリーに柔軟剤を対パルプ重量比で0.05〜0.2%添加してなる、請求項1記載の紙製ワイパー。
【請求項3】
前記クレープ加工に際し、クレープ率を20〜40%とし、クレーピングドクターの接触角を115〜140度としてなる、請求項1または2記載の紙製ワイパー。

【公開番号】特開2008−75198(P2008−75198A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254994(P2006−254994)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】