説明

紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機

【課題】紙透明化剤を紙に効率よく印刷(転写)することができる紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機を提供する。
【解決手段】紙透明化剤2を枚葉紙1に印刷(転写)して枚葉紙1を透明化させる紙透明化処理ユニット160を備えた片面刷枚葉印刷機100であって、紙透明化処理ユニット160が、紙透明化剤2を温度調整することにより紙透明化剤2の粘度を調整する粘度調整装置165〜169と、アニロックスローラ163を有すると共に粘度調整装置165〜169で粘度調整された紙透明化剤2を枚葉紙1へ印刷(転写)する紙透明化剤転写装置161〜164とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙を透明化させる紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、封筒や薬袋の一部分には、内部にある宛先情報や薬を外部から見ることができるように、透明窓が設けられている。この透明窓は、従来、封筒や薬袋の一部分を切り欠くように取り除いた開口部に透明フィルムを貼り付けることにより作製されていた。しかしながら、このような透明窓は、紙の一部分を打ち抜いて上記開口部を形成した後に、上記透明フィルムを糊付けして作製されることから、非常に手間がかかってしまい、生産性が悪くなってしまっていた。
【0003】
このため、例えば、下記特許文献1等においては、印刷手法により紙の一部分に紙透明化剤を印刷(転写)する、すなわち、紙透明化剤を入れた一対の皿からそれぞれ呼び出しローラ及び付けローラを介して凸版ローラに当該紙透明化剤を各々移し、紙の一方面と他方面との上記部分にそれぞれ印刷(転写)することにより、当該部分を透明化させて、打ち抜き作業やフィルムの貼り付け作業を行うことなく透明窓を形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−065198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1等の提案では、汎用の凸版印刷機を利用していることから、紙の前記部分に紙透明化剤を必要十分な量で印刷(転写)することが難しくなってしまい、数回(3回以上)にわたって重ね印刷を施す必要を生じ、作業効率の低下を招いてしまっていた。
【0006】
このようなことから、本発明は、紙透明化剤を紙に効率よく転写(印刷)することができる紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る紙透明化処理方法は、紙透明化剤を紙に転写して紙を透明化させる紙透明化処理方法において、紙透明化剤の温度を調整することにより紙透明化剤の粘度を調整する粘度調整工程と、前記粘度調整工程で粘度調整された紙透明化剤を、アニロックスローラを有する転写装置によって紙へ転写する転写工程とを行うことを特徴とする。
【0008】
また、前述した課題を解決するための、本発明に係る紙透明化処理装置は、紙透明化剤を紙に転写して紙を透明化させる紙透明化処理装置において、紙透明化剤を温度調整することにより紙透明化剤の粘度を調整する粘度調整装置と、アニロックスローラを有すると共に前記粘度調整装置で粘度調整された紙透明化剤を紙へ転写する紙透明化剤転写装置とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る紙透明化処理装置は、上述した紙透明化処理装置において、ザーンカップNo.4を用いた測定値が5〜30秒となる粘度の紙透明化剤となるように、前記粘度調整装置が紙透明化剤を温度調整するものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る紙透明化処理装置は、上述した紙透明化処理装置において、前記紙透明化剤転写装置の前記アニロックスローラが、150線/インチ以下の線数で15cm3/m2以上のセル容積を有していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る紙透明化処理装置は、上述した紙透明化処理装置において、前記紙透明化剤転写装置が、紙透明化剤を紙の一方面へ転写する一方面用アニロックスローラを有する一方面紙透明化剤転写装置と、紙透明化剤を紙の他方面へ転写する他方面用アニロックスローラを有する他方面紙透明化剤転写装置とを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る印刷機は、上述した紙透明化処理装置と、紙にインキを転写する印刷装置とを備え、前記紙透明化処理装置が、紙の一部分に紙透明化剤を転写して透明化窓を形成するものであり、前記印刷装置が、前記紙透明化処理装置で形成される紙の透明化窓を除いた箇所にインキを転写するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機によれば、紙透明化剤を所定の温度に維持しながらアニロックスローラによって紙に転写(印刷)することから、アニロックスローラによる紙への紙透明化剤の厚盛り転写(印刷)量を最大に維持することができると共に、紙のセルロース繊維の間隙に対する紙透明化剤の供給量(埋め込み量)を最大に維持することができるので、紙透明化剤を紙に効率よく転写(印刷)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る紙透明化処理装置を片面刷枚葉印刷機に利用した場合の実施形態の全体概略構成図である。
【図2】図1の要部の抽出概略構成図である。
【図3】本発明に係る紙透明化処理装置を反転機構付き枚葉印刷機に利用した場合の実施形態の全体概略構成図である。
【図4】本発明に係る紙透明化処理装置を両面刷枚葉印刷機に利用した場合の実施形態の全体概略構成図である。
【図5】本発明に係る紙透明化処理装置を両面刷枚葉印刷機に利用した場合の他の実施形態の全体概略構成図である。
【図6】図5の要部の抽出概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機の実施形態を図面に基づいて以下に説明するが、本発明は図面に基づいて以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
[主要な実施形態:片面刷枚葉印刷機]
本発明に係る紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機の主要な実施形態を図1,2に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、紙積台111上の紙である枚葉紙1(例えば、封筒用として一般的に使用される純白ロール等)を一枚ずつ送給する給紙装置110の当該枚葉紙1の搬送方向下流側には、当該枚葉紙1の一方面にゴム胴122及び版胴123を介して第一色目のインキを印刷する第一印刷ユニット120の圧胴121がフィーダボード101及びスイング装置102を介して連絡している。この第一印刷ユニット120の前記圧胴121の前記枚葉紙1の搬送方向下流側には、当該枚葉紙1の一方面にゴム胴132及び版胴133を介して第二色目のインキを印刷する第二印刷ユニット130の圧胴131が渡胴103を介して連絡している。この第二印刷ユニット130の前記圧胴131の前記枚葉紙1の搬送方向下流側には、当該枚葉紙1の一方面にゴム胴142及び版胴143を介して第三色目のインキを印刷する第三印刷ユニット140の圧胴141が渡胴104を介して連絡している。この第三印刷ユニット140の前記圧胴141の前記枚葉紙1の搬送方向下流側には、当該枚葉紙1の一方面にゴム胴152及び版胴153を介して第四色目のインキを印刷する第四印刷ユニット150の圧胴151が渡胴105を介して連絡している。
【0018】
前記第四印刷ユニット150の前記圧胴151の前記枚葉紙1の搬送方向下流側には、当該枚葉紙1の一方面の一部分に紙透明化剤2を転写(印刷)する透明化処理装置である透明化処理ユニット160の圧胴161が渡胴106を介して連絡しており、当該透明化処理ユニット160は、以下のような構造となっている。
【0019】
前記透明化処理ユニット160の前記圧胴161には、樹脂からなる版(凸版)を周面に取り付けたコータ胴162が対接している。このコータ胴162には、外周面に凹部(セル)を多数形成されたアニロックスローラ163が対接しており、当該アニロックスローラ163は、150線/インチ以下の線数で15cm3/m2以上のセル容積(より好ましくは80線/インチの線数で40cm3/m2のセル容積)を有している。このアニロックスローラ163の外周面には、紙透明化剤2を入れられるチャンバ164が対接している。
【0020】
図2に示すように、前記チャンバ164には、当該チャンバ164内へ前記紙透明化剤2を送給する送給ポンプ165の送出口が連結されている。この送給ポンプ165の受入口は、前記紙透明化剤2を貯留するタンク166に連結している。前記チャンバ164の下方は、前記タンク166に連結している。このタンク166には、内部の温度を調整する温度調整器167が設けられると共に、内部の温度を計測する温度センサ168が設けられている。前記温度センサ168は、制御装置169の入力部に電気的に接続されている。この制御装置169の出力部は、前記温度調整器167に電気的に接続されており、当該制御装置169は、前記温度センサ168の検出出力に基づいて、前記温度調整器167内の紙透明化剤2を所定の温度に維持するように当該温度調整器167を制御することができるようになっている。
【0021】
図1に示すように、前記透明化処理ユニット160の前記圧胴161の前記枚葉紙1の搬送方向下流側には、排紙装置190が排紙胴107を介して連絡している。この排紙胴107には、スプロケット191が同軸をなして設けられている。排紙装置190の排紙台194上の近傍には、スプロケット192が配設されている。これらスプロケット191,192間には、排紙チェーン193が巻き掛けられている。
【0022】
なお、前記紙透明化剤2は、各種のタイプがあるが、例えば、枚葉紙1を構成するセルロース繊維と略同等の光屈折率を有するリサイクル可能な樹脂等の高分子材料を有機溶剤等に溶解したものが挙げられる。
【0023】
このような本実施形態においては、前記印刷ユニット120,130,140,150等により、印刷装置を構成し、前記アニロックスローラ163、前記チャンバ164等により、紙透明化剤供給装置を構成し、当該紙透明化剤供給装置、前記圧胴161、前記コータ胴162等により、紙透明化剤転写装置を構成し、前記送給ポンプ165、前記タンク166等により、紙透明化剤循環装置を構成し、当該紙透明化剤循環装置、前記温度調整器167、前記温度センサ168、前記制御装置169等により、粘度調整装置(温度調整装置)を構成し、上記紙透明化剤転写装置、上記粘度調整装置等により、本発明に係る紙透明化処理装置である透明化処理ユニット160を構成している。
【0024】
このような本実施形態に係る片面刷枚葉印刷機100の作動を次に説明する。この片面刷枚葉印刷機100においては、透明化処理ユニット160により、枚葉紙1の一部分に透明窓を形成し、前記印刷ユニット120,130,140,150により、前記透明窓を除いた部分に印刷を施す。
【0025】
まず、給紙装置110により1枚ずつ供給された紙積台111上の枚葉紙1は、フィーダボード101及びスイング装置102を介して第一印刷ユニット120の圧胴121に受け渡され、当該圧胴121により保持されて搬送される。ゴム胴122には版胴123からインキが転写されており、枚葉紙1が圧胴121とゴム胴122との間を通過するときに当該胴121,122の間で印圧が加えられ、枚葉紙1の一方面にゴム胴122上のインキが転写され、一色目の印刷が施される。
【0026】
一色目の印刷が施された枚葉紙1は、圧胴121から渡胴103を介して第二印刷ユニット130の圧胴131に受け渡され、枚葉紙1の一方面にゴム胴132上のインキが転写され、二色目の印刷が施される。以下、同様にして、第三印刷ユニット140で枚葉紙1の一方面に三色目の印刷が施され、第四印刷ユニット150で枚葉紙1の一方面に四色目の印刷が施される。第四印刷ユニット150の圧胴に保持された枚葉紙1は、渡胴106を介して透明化処理ユニット160の圧胴160に受け渡される。
【0027】
前記透明化処理ユニット160の前記チャンバ164内の前記紙透明化剤2は、前記アニロックスローラ163に供給される。このアニロックスローラ163の前記セルに大量に収容された透明化剤2は、前記コータ胴162の版に転写される。前記圧胴161に保持された枚葉紙1は、当該圧胴161と上記コータ胴162との間を通過するときに当該胴161,162の間で印圧が加えられ、枚葉紙1の一方面に当該コータ胴162の版上の紙透明化剤2が印刷(転写)される。
【0028】
このとき、前記制御装置169は、前記紙透明化剤2が常に規定の温度(例えば、約35〜45℃ぐらい)となるように、すなわち、前記紙透明化剤2が常に所定の粘度(例えば、ザーンカップNo.4を用いた測定値が約5〜30秒ぐらいとなる粘度)となるように、前記温度センサ168の検出出力に基づいて、前記温度調整器167を制御して、当該紙透明化剤2の温度を常に調整する。そして、送給ポンプ165がタンク168とチャンバ164との間で紙透明化剤2を循環させることにより、常に適正な粘度の紙透明化剤2がチャンバ164からアニロックスローラ163に供給される。
【0029】
前記枚葉紙1に厚盛り印刷(転写)された前記紙透明化剤2は、当該枚葉紙1を構成しているセルロース繊維同士の間の微細な空隙内に浸透して入り込み、例えば、前記有機溶剤が揮発して前記高分子材料が当該空隙を埋め込むことにより、当該セルロース繊維と当該空隙との光屈折率差をほとんどなくしてしまう。これにより、枚葉紙1は、上記紙透明化剤2が浸透した内部において、上記セルロース繊維と上記空隙との界面での光屈折率差による乱反射(白色化/不透明)を生じることなく略等しい屈折率で光が進行することができるので、当該紙透明化剤2を印刷(転写)した前記部分が透明化するようになる。
【0030】
そして、前記紙透明化剤2を一方面の前記部分に厚盛り印刷(転写)された前記枚葉紙1は、前記排紙装置190の前記排紙チェーン193に設けられた爪竿のくわえ爪に前記圧胴161から前記排紙胴107を介してくわえ替えされて搬送され、前記排紙台194上に排紙される。
【0031】
このようにして枚葉紙1の一方面にインキ及び紙透明化剤2の印刷(転写)を行ったら、当該枚葉紙1の他方面に対しても上述と同様にしてインキによる印刷を行うと共に、一方面の前記部分に対応する当該他方面の上記部分に紙透明化剤2の印刷(転写)を行う。
【0032】
これにより、枚葉紙1の上記部分には、一方面側及び他方面側の両面側から前記紙透明化剤2が印刷(転写)され、必要十分な透明化度を有する透明窓が形成される。
【0033】
このような本実施形態に係る片面刷枚葉印刷機100の作動においては、給紙装置110等で枚葉紙1を供給することにより給紙工程をなし、前記印刷ユニット120,130,140,150及び透明化処理ユニット160の各圧胴121,131,141,151,161、各渡胴103〜106、排紙胴107等で枚葉紙1を搬送することにより搬送工程をなし、前記印刷ユニット120,130,140,150で枚葉紙1に印刷を行うことにより印刷工程をなし、前記粘度調整装置(温度調整装置)で紙透明化剤2の温度を調整して当該紙透明化剤2の粘度を調整することにより粘度調整工程をなし、透明化処理ユニット10で枚葉紙1に紙透明化剤2を印刷(転写)することにより転写工程をなし、排紙装置190等で枚葉紙1を排紙することにより排紙工程をなしている。
【0034】
つまり、本実施形態においては、前記紙透明化剤2を常に所定の温度(粘度)に維持しながらアニロックスローラ163によって枚葉紙1にコータ胴162を介して印刷(転写)するようにしているのである。
【0035】
このため、前記アニロックスローラ163により大量の紙透明化剤2を前記コータ胴162の版に転写して枚葉紙1へ大量の紙透明化剤2を印刷(転写)することができると共に、適正な粘度に調整された紙透明化剤2によって、枚葉紙1のセルロース繊維同士の間の微細な空隙を満たすことが短時間でできる、すなわち、枚葉紙1内への浸透を迅速にすることができるので、透明窓の形成を効率よく行うことができる。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、枚葉紙1の前記部分に紙透明化剤2を必要十分な量で常に印刷(転写)することが確実にできるので、枚葉紙1に透明窓を少ない回数(表裏両面1回ずつ、又は、一方面のみ2回)で確実に形成することができ、透明窓の形成にかかる作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、枚葉紙1に対する印刷と透明窓の形成とを一回の紙通しで行うことができるので、印刷と透明窓の形成とに見当ずれを生じさせることがないと共に、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0038】
また、前記コータ胴162の前記版を交換することにより、枚葉紙1に対する前記透明窓の位置や形状や大きさや数を変更することが容易にでき、印刷物の変更に容易に対応することができる。
【0039】
また、前記制御装置140が、前記温度センサ168の検出出力に基づいて、前記温度調整器167を制御して、紙透明化剤2の温度を常に調整することにより、紙透明化剤2の粘度を調整するようにした、すなわち、紙透明化剤2の粘度を温度調整で制御するようにしたので、紙透明化剤2の粘度調整機構を透明化処理ユニット160に組み込むことが容易にでき、適正な粘度の紙透明化剤2を印刷(転写)することが容易にできる。
【0040】
なお、前記紙透明化剤2の粘度は、ザーンカップNo.4を用いた測定値が約5〜30秒ぐらいであると好ましい(特に好ましくは、10〜20秒)。なぜなら、前記紙透明化剤2の粘度が30秒を超えると、前記アニロックスローラ163による前記枚葉紙1の前記部分への厚盛り印刷(転写)量の低下及び前記枚葉紙1の前記間隙に対する供給量(埋め込み量)の低下を引き起こすようになってしまう一方、前記紙透明化剤2の粘度が5秒未満となると、前記枚葉紙1の前記間隙中に留まることなく透過する量が多過ぎて、枚葉紙1を積み重ねたときに隣接する枚葉紙1とくっついてしまい、ブロッキングを起こすおそれがあると共に、枚葉紙1の厚さ方向だけでなく天地方向や幅方向(面方向)へ過剰に浸透して、透明窓の周辺に「滲み」を生じてしまうおそれがあるからである。
【0041】
[他の実施形態]
〈反転機構付き枚葉印刷機〉
なお、前述した実施形態では、片面刷枚葉印刷機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他の実施形態として、例えば、図3に示すようにして反転機構付き枚葉印刷機に適用することも可能である。
【0042】
この反転機構付き枚葉印刷機200は、前述した実施形態の場合と同様に、給紙装置110、一方面用の第一〜四印刷ユニット120,130,140,150、一方面用の透明化処理ユニット160、排紙装置190と共に、フィーダボード101やスイング装置102や渡胴103〜106や排紙胴107を備え、さらに、一方面用の前記透明化処理ユニット160と前記排紙胴107との間に、枚葉紙1の一方面と他方面とを反転させる反転装置である反転胴270を設けると共に、上記一方面用と同様にして構成される他方面用の第一〜四印刷ユニット220,230,240,250及び他方面用の透明化処理ユニット260並びに渡胴203〜206を配設するようにしたものである。
【0043】
このような反転機構付き枚葉印刷機200では、一方面用の前記印刷ユニット120,130,140,150等により、一方面用印刷装置を構成し、他方面用の前記印刷ユニット220,230,240,250等により、他方面用印刷装置を構成し、上記一方面用印刷装置及び上記他方面用印刷装置により、印刷装置を構成し、一方面用の前記透明化処理ユニット160の、前記アニロックスローラ163、前記チャンバ164等により、一方面用紙透明化剤供給装置を構成し、一方面用の前記透明化処理ユニット160の、前記圧胴161、前記コータ胴162、上記一方面用紙透明化剤供給装置等により、一方面用紙透明化剤転写装置を構成し、他方面用の前記透明化処理ユニット260の、前記アニロックスローラ263、前記チャンバ264等により、他方面用紙透明化剤供給装置を構成し、他方面用の前記透明化処理ユニット260の、前記圧胴261、前記コータ胴262、上記他方面用紙透明化剤供給装置等により、他方面用紙透明化剤転写装置を構成し、上記一方面用紙透明化剤転写装置及び上記他方面用紙透明化剤転写装置により、紙透明化剤転写装置を構成している。
【0044】
上記反転機構付き枚葉印刷機200によれば、一回の紙通しにより、枚葉紙1の一方面と他方面との両側にインキ及び紙透明化剤2の印刷(転写)を行うことができるので、前述した実施形態に係る片面刷枚葉印刷機100の場合と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、この1回の紙通しによって、枚葉紙1の透明化に必要な紙透明化剤2を印刷(転写)することができ、前述した実施形態に係る片面刷枚葉印刷機100の場合よりも作業効率をさらに向上させることができる。
【0045】
ところで、上記反転機構付き枚葉印刷機200においては、前記反転胴270で枚葉紙1の一方面と他方面とを反転させることなくそのまま受け渡すように当該反転胴270の機能を切り替えることが可能である。
【0046】
このように枚葉紙1を反転させることなくそのまま受け渡すようにした場合には、前記印刷ユニット220,230,240,250及び前記透明化処理ユニット260が、前記印刷ユニット120,130,140,150及び前記透明化処理ユニット160と同様に、枚葉紙1の一方面へインキ及び紙透明化剤2を印刷(転写)するようになる。
【0047】
このような場合には、前記印刷ユニット120,130,140,150と共に前記印刷ユニット220,230,240,250が一方面印刷装置を構成、すなわち、印刷装置を構成し、前記透明化処理ユニット160と共に前記透明化処理ユニット260が一方面紙透明化剤転写装置を構成、すなわち、紙透明化剤転写装置を構成するようになる。
【0048】
このため、上記反転機構付き枚葉印刷機200においては、各種印刷仕様に応じて、前記印刷ユニット220,230,240,250及び前記透明化処理ユニット260を他方面印刷装置及び他方面紙透明化処理装置と一方面印刷装置及び他方面紙透明化処理装置とに切り替えることができるので、多種多様な印刷物を製造することができる。
【0049】
〈両面刷枚葉印刷機〉
また、他の実施形態として、例えば、図4に示すようにして両面刷枚葉印刷機に適用することも可能である。
【0050】
この両面刷枚葉印刷機300は、前述した実施形態の場合と同様に、給紙装置110、一方面用の第一〜四印刷ユニット120,130,140,150、一方面用の透明化処理ユニット160、排紙装置190をフィーダボード101やスイング装置102と共に備え、前記渡胴103〜106及び前記排紙胴107に代えて、上記一方面用と上下方向のレイアウトを反転させるようにして構成される他方面用の第一〜四印刷ユニット320,330,340,350及び他方面用の透明化処理ユニット360を配設すると共に、当該透明化処理ユニット360と前記排紙装置190との間に、一方面側と他方面側との乾燥を行う乾燥ユニット380及び渡胴308を配設するようにしたものである。なお、図4中、309は渡胴、381,383は搬送胴、382,384は乾燥器である。
【0051】
このような両面刷枚葉印刷機300では、一方面用の前記印刷ユニット120,130,140,150等により、一方面用印刷装置を構成し、他方面用の前記印刷ユニット320,330,340,350等により、他方面用印刷装置を構成し、上記一方面用印刷装置及び上記他方面用印刷装置により、印刷手段を構成し、一方面用の前記透明化処理ユニット160の、前記アニロックスローラ163、前記チャンバ164等により、一方面用紙透明化剤供給装置を構成し、一方面用の前記透明化処理ユニット160の、前記圧胴161、前記コータ胴162、上記一方面用紙透明化剤供給装置等により、一方面用紙透明化剤転写装置を構成し、他方面用の前記透明化処理ユニット360の、前記アニロックスローラ363、前記チャンバ364等により、他方面用紙透明化剤供給装置を構成し、他方面用の前記透明化処理ユニット360の、前記圧胴361、前記コータ胴362、上記他方面用紙透明化剤供給装置等により、他方面用紙透明化剤転写装置を構成し、上記一方面用紙透明化剤転写装置及び上記他方面用紙透明化剤転写装置により、紙透明化剤転写装置を構成している。
【0052】
上記両面刷枚葉印刷機300によれば、渡胴103〜107,203〜207や反転胴270を介することなく各印刷ユニット120,130,140,150,320,330,340,350を連絡して枚葉紙1の一方面及び他方面の両面にインキ及び紙透明化剤2の印刷(転写)をすることができるので、前述した実施形態に係る両面刷枚葉印刷機200の場合と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した実施形態に係る両面刷枚葉印刷機200の場合よりも設置スペースを大幅に削減することができる。
【0053】
〈両面刷枚葉印刷機の他の例〉
また、他の実施形態として、例えば、両面刷枚葉印刷機に図5,6に示すようにして適用することも可能である。
【0054】
この両面刷枚葉印刷機400は、前述した実施形態の場合と同様に、給紙装置110、一方面用の第一〜四印刷ユニット120,130,140,150、他方面用の第一〜四印刷ユニット320,330,340,350、排紙装置190と共に、フィーダボード101やスイング装置102を備え、一方面用の前記透明化処理ユニット160及び他方面用の前記透明化処理ユニット360に代えて、両面用の透明化処理ユニット460を配設するようにしたものである。
【0055】
前記透明化処理ユニット460は、他方面用の前記第四印刷ユニット350の圧胴351に対接し、ゴム製のブランケットを外周面に巻き付けられると共に、当該外周面に枚葉紙1を保持するくわえ装置を有するゴム圧胴461と、このゴム圧胴461の前記圧胴351との対接位置よりも枚葉紙1の搬送方向上流側で当該ゴム圧胴461に対接する他方面用のコータ胴162と、この他方面用のコータ胴162に対接する他方面用のアニロックスローラ163と、この他方面用のアニロックスローラ163に対接する他方面用のチャンバ164と、上記ゴム圧胴461の前記圧胴351との対接位置よりも枚葉紙1の搬送方向下流側で当該ゴム圧胴461に対接するゴム胴462と、このゴム胴462に対接する一方面用のコータ胴162と、この一方面用のコータ胴162に対接する一方面用のアニロックスローラ163と、この一方面用のアニロックスローラ163に対接する一方面用のチャンバ164とを備えると共に、前述した実施形態の場合と同様な粘度調整装置(温度調整装置)を備えている(図示省略)。
【0056】
このような両面刷枚葉印刷機400では、一方面用の前記印刷ユニット120,130,140,150等により、一方面用印刷装置を構成し、他方面用の前記印刷ユニット320,330,340,350等により、他方面用印刷装置を構成し、上記一方面用印刷装置及び上記他方面用印刷装置により、印刷手段を構成し、前記アニロックスローラ163、前記チャンバ164等により、一方面用紙透明化剤供給装置を構成し、前記ゴム圧胴461、前記ゴム胴462、前記コータ胴162、上記一方面用紙透明化剤供給装置等により、一方面用紙透明化剤転写装置を構成し、前記アニロックスローラ363、前記チャンバ364等により、他方面用紙透明化剤供給装置を構成し、前記ゴム圧胴461、前記コータ胴362、上記他方面用紙透明化剤供給装置等により、他方面用紙透明化剤転写装置を構成し、上記一方面用紙透明化剤転写装置及び上記他方面用紙透明化剤転写装置により、紙透明化剤転写装置を構成している。
【0057】
つまり、上記両面刷枚葉印刷機400の前記透明化処理ユニット460においては、前記ゴム圧胴461が、外周面のブランケットに他方面用の前記アニロックスローラ163及び他方面用の前記コータ胴12を介して枚葉紙1の他方面の前記部分に印刷(転写)する紙透明化剤2を印刷(転写)されると共に、前記ゴム胴462が、外周面のブランケットに一方面用の前記アニロックスローラ163及び一方面用の前記コータ胴162を介して枚葉紙1の一方面の前記部分に印刷(転写)する紙透明化剤2を印刷(転写)され、枚葉紙1が他方面用の前記第四印刷ユニット350の圧胴351から上記ゴム圧胴461に受け渡されて、当該ゴム圧胴461と上記ゴム胴462とが対接することにより、当該枚葉紙1の一方面と他方面との両面の前記部分に紙透明化剤2を一度に印刷(転写)できるようになっているのである。
【0058】
上記両面刷枚葉印刷機400によれば、枚葉紙1の一方面及び他方面の両面に紙透明化剤2を同時に印刷(転写)することができるので、前述した実施形態に係る両面刷枚葉印刷機300の場合と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した実施形態に係る両面刷枚葉印刷機300の場合よりも処理時間を短縮することができると共に、設置スペースをさらに削減することができる。
【0059】
〈その他〉
なお、前述した実施形態においては、前記制御装置169が、前記温度センサ168の検出出力に基づいて、前記温度調整器167を制御して、当該紙透明化剤2を送給ポンプ165でタンク168とチャンバ164との間に循環させることにより、常に適正な粘度の紙透明化剤2をチャンバ164からアニロックスローラ163に供給するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記温度調整器167及び前記温度センサ168を前記チャンバ164に設けて、前記送給ポンプ165及び前記タンク168を省略することにより、前記制御装置169が、前記温度センサ168の検出出力に基づいて、前記温度調整器167を制御して、前記チャンバ164内の紙透明化剤2を常に適正な粘度となるように調整することも可能である。
【0060】
また、前述した実施形態においては、外周面に凸版を設けたコータ胴162を備えた透明化処理ユニット160,260,360,460により紙透明化剤2を枚葉紙1に印刷(転写)するようにした場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、外周面に凹版を設けた凹版胴を備えた透明化処理ユニットにより、グラビア印刷の場合と同様にして紙透明化剤を紙に印刷(転写)するようにすることも可能である。
【0061】
また、前述した実施形態においては、すべての前記印刷ユニット120,130,140,150,220,230,240,250,320,330,340,350により枚葉紙1にインキを印刷(転写)して、枚葉紙1に紙透明化剤2を印刷(転写)する場合について説明したが、他の実施形態として、前記印刷ユニット120,130,140,150,220,230,240,250,320,330,340,350の一部のみにより枚葉紙1にインキを印刷(転写)して、枚葉紙1に紙透明化剤2を印刷(転写)することや、すべての前記印刷ユニット120,130,140,150,220,230,240,250,320,330,340,350による枚葉紙1への印刷(転写)を施すことなく枚葉紙1に紙透明化剤2のみを印刷(転写)することも可能である。
【0062】
また、前述した実施形態においては、4基の前記印刷ユニット120,130,140,150及び1基の前記透明化処理ユニット160を備えた片面刷枚葉印刷機100や、8基の前記印刷ユニット120,130,140,150,220,230,240,250及び2基の前記透明化処理ユニット160,260を備えた反転機構付き枚葉印刷機200や、8基の前記印刷ユニット120,130,140,150,320,330,340,350及び2基の前記透明化処理ユニット160,360を備えた両面刷枚葉印刷機300や、8基の前記印刷ユニット120,130,140,150,320,330,340,350及び1基の前記透明化処理ユニット460を備えた両面刷枚葉印刷機400の場合について説明したが、他の実施形態として、4基又は8基以外の単数又は複数基の印刷ユニットを備える印刷機に対して、1基又は2基の透明化処理ユニットを備えるようにすることも可能である。
【0063】
また、前述した実施形態においては、紙透明化処理装置を組み込んだ印刷機の場合について説明したが、他の実施形態として、紙透明化処理装置を印刷機に組み込むことなく紙透化処理のみを行う紙透明化処理専用の装置として利用することも可能である。
【0064】
また、前述した実施形態においては、枚葉紙1に対して紙透明化剤2を印刷(転写)する場合について説明したが、他の実施形態として、巻取紙(ウエブ)に対して紙透明化剤2を印刷(転写)する場合に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る紙透明化処理方法及びその装置並びにこれを利用する印刷機は、紙透明化剤を紙に効率よく転写(印刷)することができるので、印刷産業等を始めとした各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 枚葉紙
2 紙透明化剤
100 片面刷枚葉印刷機
101 フィーダボード
102 スイング装置
103〜106 渡胴
107 排紙胴
110 給紙装置
111 紙積台
120 第一印刷ユニット(一方面用)
121 圧胴
122 ゴム胴
123 版胴
130 第二印刷ユニット(一方面用)
131 圧胴
132 ゴム胴
133 版胴
140 第三印刷ユニット(一方面用)
141 圧胴
142 ゴム胴
143 版胴
150 第四印刷ユニット(一方面用)
151 圧胴
152 ゴム胴
153 版胴
160 透明化処理ユニット(一方面用)
161 圧胴
162 コータ胴
163 アニロックスローラ
164 チャンバ
165 送給ポンプ
166 タンク
167 温度調整器
168 温度センサ
169 制御装置
190 排紙装置
191,192 スプロケット
193 排紙チェーン
194 排紙台
200 反転機構付き枚葉印刷機
203〜206 渡胴
220 第一印刷ユニット(他方面用又は一方面用)
230 第二印刷ユニット(他方面用又は一方面用)
240 第三印刷ユニット(他方面用又は一方面用)
250 第四印刷ユニット(他方面用又は一方面用)
260 透明化処理ユニット(他方面用又は一方面用)
270 反転胴
300 両面刷枚葉印刷機
308,309 渡胴
320 第一印刷ユニット(他方面用)
330 第二印刷ユニット(他方面用)
340 第三印刷ユニット(他方面用)
350 第四印刷ユニット(他方面用)
360 透明化処理ユニット(他方面用)
380 乾燥ユニット
381,383 搬送胴
382,384 乾燥器
400 両面刷枚葉印刷機
460 透明化処理ユニット(両面用)
461 ゴム圧胴
462 ゴム胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙透明化剤を紙に転写して紙を透明化させる紙透明化処理方法において、
紙透明化剤の温度を調整することにより紙透明化剤の粘度を調整する粘度調整工程と、
前記粘度調整工程で粘度調整された紙透明化剤を、アニロックスローラを有する転写装置によって紙へ転写する転写工程と
を行うことを特徴とする紙透明化処理方法。
【請求項2】
紙透明化剤を紙に転写して紙を透明化させる紙透明化処理装置において、
紙透明化剤を温度調整することにより紙透明化剤の粘度を調整する粘度調整装置と、
アニロックスローラを有すると共に前記粘度調整装置で粘度調整された紙透明化剤を紙へ転写する紙透明化剤転写装置と
を備えていることを特徴とする紙透明化処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紙透明化処理装置において、
ザーンカップNo.4を用いた測定値が5〜30秒となる粘度の紙透明化剤となるように、前記粘度調整装置が紙透明化剤を温度調整するものである
ことを特徴とする紙透明化処理装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の紙透明化処理装置において、
前記紙透明化剤転写装置の前記アニロックスローラが、150線/インチ以下の線数で15cm3/m2以上のセル容積を有している
ことを特徴とする紙透明化処理装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の紙透明化処理装置において、
前記紙透明化剤転写装置が、
紙透明化剤を紙の一方面へ転写する一方面用アニロックスローラを有する一方面紙透明化剤転写装置と、
紙透明化剤を紙の他方面へ転写する他方面用アニロックスローラを有する他方面紙透明化剤転写装置と
を備えていることを特徴とする紙透明化処理装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の紙透明化処理装置と、
紙にインキを転写する印刷装置と
を備え、
前記紙透明化処理装置が、紙の一部分に紙透明化剤を転写して透明化窓を形成するものであり、
前記印刷装置が、前記紙透明化処理装置で形成される紙の透明化窓を除いた箇所にインキを転写するものである
ことを特徴とする印刷機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−122270(P2011−122270A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281199(P2009−281199)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【出願人】(506099580)東新油脂株式会社 (2)
【Fターム(参考)】