説明

素地調整工法

【課題】建築鋼構造物等に対して、旧塗膜の剥離、酸化被膜の除去の後に再塗装を行うために、自然環境に優しく、また粉塵の発生や騒音も少ない作業環境を改善した素地調整工法を提供すること。
【解決手段】金属基材上の酸化皮膜及び有機被膜や無機被膜の旧塗膜を除去するための素地調整工法において、
該旧塗膜上に塗膜浸透軟化剤を塗布する工程、
該塗膜浸透軟化剤と共に該旧塗膜を剥離・除去する工程、
該旧塗膜が除去された金属基材上に黒皮除去剤を塗布する工程、
該黒皮除去剤と共に酸化被膜を除去する工程、
を有するブラスト処理を必要としないことを特徴とする素地調整工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁、歩道橋、港湾クレーン等の土木鋼構造物、一般建築物、プラント設備、機械式駐車設備等の建築鋼構造物に対して、再塗装を行うため黒皮や旧塗膜等を除去するための素地調整工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁、歩道橋、港湾クレーン等の土木鋼構造物、一般建築物、プラント設備、機械式駐車設備等の建築鋼構造物に対しては、ライフサイクルコストの考え方に基づく、社会資本の寿命延長が求められ、そのメンテナンスのため旧塗膜の剥離、酸化被膜の除去の後に再塗装されることが一般的に行われる。再塗装の前準備のための旧塗膜の剥離、酸化皮膜の除去には、剥離・除去作業に伴う時間や多くの労力が必要であった。
【0003】
近年はまた、鉛、クロム、PCB等の有害な成分が含まれている塗膜も多数の構造物に存在する。旧塗膜の剥離方法は、ケレンやブラスト等の物理的な除去が行われるが、その作業には粉塵の発生や騒音等の問題が伴い、作業環境の悪化をもたらしていた。
【0004】
近年では旧塗膜を化学的に除去しようと、塗膜の剥離剤を用いる等、剥離剤等の検討もされている。例えば、塩化メチレンを主成分とする剥離剤が検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、塩化メチレンの使用は、環境上好ましいものではない。また、塩化メチレン以外に特殊な化合物や溶媒等が用いられた剥離剤等も検討されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【特許文献1】特開昭61−98776号公報
【特許文献2】特開平8−48920号公報
【特許文献3】特開2001−98191号公報
【特許文献4】特開2004−168788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、主に建築鋼構造物等に対して、旧塗膜の剥離、酸化被膜の除去の後に再塗装を行うために、自然環境に優しく、また粉塵の発生や騒音も少ない作業環境を改善した素地調整工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、金属基材上の酸化皮膜及び有機被膜や無機被膜の旧塗膜を除去するための素地調整工法において、
該旧塗膜上に塗膜浸透軟化剤を塗布する工程、
該塗膜浸透軟化剤と共に該旧塗膜を剥離・除去する工程、
該旧塗膜が除去された金属基材上に黒皮除去剤を塗布する工程、
該黒皮除去剤と共に酸化被膜を除去する工程、
を有するブラスト処理を必要としないことを特徴とする素地調整工法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の素地調整工法によれば、ケレンやブラスト等による旧塗膜の物理的除去が必要なく騒音、粉塵等の発生が少なく、作業環境に優れる。また、剥離・除去した被膜も回収することができるため、有害物の排出も少ない。
【0008】
更にブラスト処理を行わないため、金属基材を傷付けることがない。また、金属基材表面の酸化皮膜(黒皮、ミルスケール)も黒皮除去剤により除去することができるため、再塗装後の塗膜の密着性や防食性能の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の素地調整工法について、更に詳細に説明する。
【0010】
本発明は、金属基材上の酸化皮膜(黒皮、ミルスケール)や、旧塗膜の有機被膜や無機被膜を除去するために、塗膜浸透軟化剤及び黒皮除去剤を使用する。
【0011】
塗膜浸透軟化剤は、旧塗膜の有機被膜や無機被膜中に浸透して旧塗膜を膨潤・軟化させる働きをすることにより剥離・除去が容易になる。その組成は、芳香族アルコール類、グリコール類、アルコール類、シリカ及び水を含む液状のものである。
【0012】
芳香族アルコール類としては、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェネチルアルコール、ヒドロキシベンジルアルコール、ヒドロキシフェネチルアルコール等が挙げられ、旧塗膜を膨潤・軟化させる観点から好ましくは、ベンジルアルコールである。
【0013】
グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられるが、好ましくは、ジエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0014】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられ、好ましくはメタノールである。
【0015】
シリカは塗膜浸透軟化剤の粘性を持たせ、垂直面等に塗った場合に液が流下してしまうのを防ぐために添加される。シリカの種類は、気相シリカやコロイダルシリカ等、特に制限無く使用できる。
【0016】
水は、水道水、蒸留水、イオン交換水等、特に制限無く使用できる。
【0017】
塗膜浸透軟化剤の組成は、芳香族アルコール類50〜60wt%、グリコール類10〜20wt%、メタノール0.1〜10wt%、シリカ0.1〜10wt%、水10〜40wt%のものが好ましい。これ以外にも少量ながら添加剤的なものを含むことができる。
【0018】
塗膜浸透軟化剤のpHは、6.5〜7.5であることが好ましい。
【0019】
黒皮除去剤は、金属基材上の黒皮、ミルスケール等の酸化皮膜を溶解・除去するものであり、これにより再塗装後の塗膜の密着性や防食性能の向上に寄与することができる。その組成は、無機酸、有機酸、界面活性剤、増粘剤及び水を含む粘性の液状である。
【0020】
無機酸は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、のうち、少なくとも一つ含むものであるが、中でも酸化皮膜を溶解・除去する観点からはリン酸を含むことが特に好ましい。
【0021】
有機酸としては、カルボン酸が主なものであり、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、吉草酸、アクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、酪酸、イソ酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、メトキシ酢酸、安息香酸、テレフタル酸、トリメリット酸、グリシン、グルタミン酸、ピログルタミン酸等が挙げられるが、この中でもクエン酸、リンゴ酸、乳酸、吉草酸、酢酸、蟻酸、ピログルタミン酸、プロピオン酸、酪酸のうち、少なくとも一つ含むことが好ましい。更に好ましくは、蟻酸、又は乳酸を含むことが好ましい。
【0022】
界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、のうち少なくとも一つ含むことが好ましい。
【0023】
陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0024】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩・アミン塩等が挙げられる。
【0025】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0026】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0027】
本発明で使用する界面活性剤としては、両性界面活性剤が特に好ましい。
【0028】
増粘剤は黒皮除去剤の粘性を持たせ、垂直面等に塗った場合に液が流下してしまうのを防ぐために添加され、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フュームドシリカ、アルミナゾル、ケルザン(キサンタンガム)、等が挙げられるが、中でも、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0029】
黒皮除去剤の組成は、無機酸0.1〜25wt%、有機酸0.1〜25wt%、界面活性剤0.1〜5wt%、増粘剤10〜20wt%、水50〜70wt%であることが好ましい。
【0030】
黒皮除去剤のpHは、4.0以下であることが黒皮、ミルスケール等の酸化皮膜の除去の観点から好ましい。
【0031】
本発明の素地調整工法は、金属基材上の旧塗膜に塗膜浸透軟化剤を塗布し、膨潤した該被膜を除去する方法として、200〜1500Kg/cmの高圧水洗浄により剥離・除去し、更にその剥離・除去した被膜や洗浄水を回収することが好ましい。
【0032】
塗膜浸透軟化剤の塗布は、刷毛やローラーを用い、300〜800g/mになるように塗布し、1〜7日間養生する。その間、塗膜浸透軟化剤の乾燥や雨水等の浸入を防ぐため、塗布した表面をフィルム等でラッピングしておくことが好ましい。塗膜浸透軟化剤を塗布し膨潤・軟化した被膜は、スクレーバー等で掻き取って剥離・除去することができるが、面積が広い場合等は高圧水洗浄により剥離・除去することが作業性から好ましい。
【0033】
高圧水洗浄による被膜の除去は、超高圧洗浄機を使用して行い、200〜1500Kg/cmの高圧水、更に好ましくは、多頭口回転ノズル式及び/又はバキュウム式(洗浄同時回収機能付き)の超高圧洗浄機を使用して行い、500〜1000Kg/cmの高圧水にて洗浄作業を行う。
【0034】
旧塗膜の剥離は通常サンドブラスト等のブラスト処理によるが、ブラスト作業は、作業環境の設置(防塵設備、足場等)に多額の費用がかかるが、本発明の素地調整工法によれば、粉塵等が発生しないためそのような設備の設置は必要なく、費用も最小限で済む。
【0035】
剥離・除去した旧塗膜の被膜は、飛散しないためほぼ100%回収される。また、高圧水洗浄に使用された洗浄水は、タンク等に回収され、再利用されるか又は排水処理される。
【0036】
旧塗膜の有機被膜としては、塩化ゴム系塗膜、アルキド樹脂系塗膜、不飽和ポリエステル樹脂系塗膜、エポキシ樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、ウレタン樹脂系塗膜、フッ素樹脂系塗膜等が挙げられる。
【0037】
旧塗膜の無機被膜としては、シリコン樹脂系塗膜、アクリルシリコン樹脂系塗膜等が挙げられる。
【0038】
黒皮除去剤は、旧塗膜の有機被膜や無機被膜に塗膜浸透軟化剤を塗布し、膨潤した該被膜を剥離・除去した後の乾燥した金属基材上に塗布される。
【0039】
黒皮除去剤の塗布は、金属基材上に刷毛やローラーを用い、100〜500g/mになるように塗布し、数時間〜1日養生する。多少の旧塗膜が残存していても問題ない。
【0040】
その後、金属基材上の黒皮・ミルスケール等の酸化皮膜は、黒皮除去剤と共にウエス等により拭き取るか、高圧水洗浄等により洗い流すことにより除去することができる。
【0041】
本発明の素地調整工法においては、金属基材が、鉄系金属基材、アルミニウム系金属基材、アルミニウム合金基材のうちのいずれかであることが好ましい。
【0042】
本発明の素地調整工法が適用できる場所は、橋梁、歩道橋、港湾クレーン等の土木鋼構造物、外壁、階段等の一般建築物、タンク、ボイラー、配管等のプラント設備、機械式駐車設備等の建築鋼構造物、大型車輌等、金属基材上に有機被膜や無機被膜の塗膜を有するものであれば制限無く適用できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:鉄構造物(球形ガスフォルダー)
旧塗膜:塩化ゴム系塗膜(膜厚400μm)
<塗膜浸透軟化剤>
芳香族アルコール類(ベンジルアルコール):60wt%
グリコール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル):10wt%
メタノール:2.5wt%
シリカ:3.0wt%
水:24.5wt%
<黒皮除去剤>
無機酸(リン酸):10.0wt%
有機酸(蟻酸):10.0wt%
界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキレンエーテル):1.5wt%
増粘剤(ポリビニルピロリドン):10.0wt%
水:68.5wt%
pH:0.5
【0045】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜浸透軟化剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、3日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をスクレーバーにて剥離し、黒皮除去剤をローラーを用いて300g/m塗布した。8時間後バキュウム式ウォータージェット(1000kg/cm・100MPa)にて洗浄・回収作業を行った。
【0046】
乾燥後、基材表面の状態を目視により観察し、旧塗膜や黒皮の残存状態を評価した。その評価結果は、表1に記載した。
【0047】
(実施例2)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:鉄構造物(鉄骨階段)
旧塗膜:アルキド樹脂系塗膜(膜厚350μm)
<塗膜浸透軟化剤>
芳香族アルコール類(β−フェニルエタノール):50wt%
グリコール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル):20wt%
メタノール:2.5wt%
シリカ:3.0wt%
水:24.5wt%
<黒皮除去剤>
無機酸(フッ酸):8.0wt%
有機酸(乳酸):20.0wt%
界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキレンエーテル):1.5wt%
増粘剤(ポリビニルピロリドン):10.0wt%
水:60.5wt%
pH:0.5
【0048】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜浸透軟化剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、2日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をウォータージェット(600kg/cm)にて剥離し、黒皮除去剤をローラーを用いて300g/m塗布した。8時間後ウォータージェット(600kg/cm)にて洗浄した。乾燥後、実施例1と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0049】
(実施例3)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:鉄構造物(タンク)
旧塗膜:アクリルシリコン樹脂系塗膜(膜厚300μm)
<塗膜浸透軟化剤>
芳香族アルコール類(ベンジルアルコール):50wt%
グリコール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル):10wt%
グリコール類(ジエチレングリコールジメチルエーテル):10wt%
メタノール:5.0wt%
シリカ:3.0wt%
水:22.0wt%
<黒皮除去剤>
無機酸(リン酸):10.0wt%
有機酸(クエン酸):10.0wt%
界面活性剤(アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム):2.5wt%
増粘剤(ポリビニルピロリドン):10.0wt%
水:67.5wt%
pH:0.6
【0050】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜浸透軟化剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、3日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をウォータージェット(500kg/cm)にて剥離し、黒皮除去剤をローラーを用いて300g/m塗布した。8時間後ウォータージェット(500kg/cm)にて洗浄した。乾燥後、実施例1と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0051】
(実施例4)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:アルミニウム(外壁パネル)
旧塗膜:フッ素樹脂系塗膜(膜厚300μm)
<塗膜浸透軟化剤>
芳香族アルコール類(ベンジルアルコール):40wt%
芳香族アルコール類(フェノキシエタノール):20wt%
グリコール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル):10wt%
メタノール:2.5wt%
シリカ:2.5wt%
水:25.0wt%
<黒皮除去剤>
無機酸(フッ酸):8.0wt%
有機酸(蟻酸):10.0wt%
界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム):2.5wt%
増粘剤(ポリビニルピロリドン):10.0wt%
水:69.5wt%
pH:0.5
【0052】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜浸透軟化剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、3日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をバキュウム式ウォータージェット(800kg/cm)にて剥離・回収し、黒皮除去剤をローラーを用いて300g/m塗布した。8時間後ウォータージェット(800kg/cm)にて洗浄した。乾燥後、実施例1と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0053】
(比較例1)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:鉄構造物(球形ガスフォルダー)
旧塗膜:塩化ゴム系塗膜(膜厚400μm)
<塗膜浸透軟化剤>
上記実施例1と同じもの。
【0054】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜浸透軟化剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、3日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をスクレーバーにて剥離し、バキュウム式ウォータージェット(1000kg/cm・100MPa)にて洗浄した。乾燥後、実施例1と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0055】
(比較例2)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:鉄構造物(鉄骨階段)
旧塗膜:アルキド樹脂系塗膜(膜厚350μm)
<塗膜剥離剤>
グリコール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル):20.0wt%
メタノール:3.0wt%
シリカ:5.0wt%
水:72.0wt%
<黒皮除去剤>
上記実施例2と同じもの。
【0056】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜剥離剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、2日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をウォータージェット(400kg/cm)にて剥離し、黒皮除去剤をローラーを用いて300g/m塗布した。8時間後ウォータージェット(400kg/cm)にて洗浄した。乾燥後、実施例1と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0057】
(比較例3)
<基材及び旧塗膜>
金属基材:鉄構造物(鉄骨階段)
旧塗膜:アルキド樹脂系塗膜(膜厚350μm)
<塗膜剥離剤>
グリコール類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル):10.0wt%
メタノール:60.0wt%
シリカ:5.0wt%
水:25.0wt%
<皮膜除去剤>
無機酸(リン酸):15.0wt%
界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキレンエーテル):2.5wt%
増粘剤(ポリビニルピロリドン):10.0wt%
水:72.5wt%
pH:0.5
【0058】
<方法及び評価>
上記旧塗膜上に、上記組成の塗膜剥離剤をローラーを用いて400g/m塗布し、浸透促進と乾燥を防ぐため、2日間ラッピング養生を行った。その後、旧塗膜をウォータージェット(500kg/cm)にて剥離し、皮膜除去剤をローラーを用いて300g/m塗布した。8時間後ウォータージェット(500kg/cm)にて洗浄した。乾燥後、実施例1と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材上の酸化皮膜及び有機被膜や無機被膜の旧塗膜を除去するための素地調整工法において、
該旧塗膜上に塗膜浸透軟化剤を塗布する工程、
該塗膜浸透軟化剤と共に該旧塗膜を剥離・除去する工程、
該旧塗膜が除去された金属基材上に黒皮除去剤を塗布する工程、
該黒皮除去剤と共に酸化被膜を除去する工程、
を有するブラスト処理を必要としないことを特徴とする素地調整工法。
【請求項2】
前記塗膜浸透軟化剤が、芳香族アルコール類、グリコール類、アルコール類、シリカ及び水を含む請求項1に記載の素地調整工法。
【請求項3】
前記黒皮除去剤が、無機酸、有機酸、界面活性剤、増粘剤及び水を含む請求項1又は2に記載の素地調整工法。
【請求項4】
前記無機酸が、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、フッ酸のうち、少なくとも一つ含む請求項3に記載の素地調整工法。
【請求項5】
前記有機酸として、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、吉草酸、酢酸、蟻酸、ピログルタミン酸、プロピオン酸、酪酸のうち、少なくとも一つ含む請求項3に記載の素地調整工法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、のうち少なくとも一つ含む請求項3に記載の素地調整工法。
【請求項7】
前記陰イオン界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩のうち、少なくとも一つ含む請求項6に記載の素地調整工法。
【請求項8】
前記陽イオン界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩・アミン塩のうち、少なくとも一つ含む請求項6に記載の素地調整工法。
【請求項9】
前記両性界面活性剤として、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドのうち、少なくとも一つ含む請求項6に記載の素地調整工法。
【請求項10】
前記非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドのうち、少なくとも一つ含む請求項6に記載の素地調整工法。
【請求項11】
前記塗膜浸透軟化剤と共に該旧塗膜を剥離・除去する工程が、200〜1500Kg/cmの高圧水洗浄により剥離・除去する工程であり、更にその剥離・除去した被膜や洗浄水を回収する工程を有する請求項1〜10のいずれかに記載の素地調整工法。
【請求項12】
前記金属基材が、鉄系金属基材、アルミニウム系金属基材、アルミニウム合金基材のうちのいずれかである請求項1〜11のいずれかに記載の素地調整工法。
【請求項13】
前記旧塗膜の有機被膜が、塩化ゴム系塗膜、アルキド樹脂系塗膜、不飽和ポリエステル樹脂系塗膜、エポキシ樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、ウレタン樹脂系塗膜、フッ素樹脂系塗膜のうちのいずれかである請求項1〜12のいずれかに記載の素地調整工法。
【請求項14】
前記旧塗膜の無機被膜が、シリコン樹脂系塗膜、アクリルシリコン樹脂系塗膜のうちのいずれかである請求項1〜12のいずれかに記載の素地調整工法。

【公開番号】特開2009−179860(P2009−179860A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20934(P2008−20934)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(508033199)磯部塗装株式会社 (1)
【出願人】(597161609)ミリオン化学株式会社 (9)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】