説明

素子の試験装置

【課題】リップル電流を用いるキャパシタ等の素子の試験に関し、各キャパシタ等の素子のリップル電流を等しくすること、交流電源の電流を必要最小限にすること、バイアス電圧を必要最小限にすること、素子に印加されるバイアス電圧を等しくすること、電圧バランス抵抗を除去することから選択された1又は2以上の課題を解決する。
【解決手段】素子(例えば、キャパシタC1〜C6)にリップル電流を付与する第1の電源(交流電源6)と、前記素子にバイアス電圧を付与する第2の電源(直流バイアス電源8)と、直流電流を通過させ交流電流を阻止するバイアス素子とを備え、前記第1の電源に対して前記素子を直列に接続し、前記第2の電源に前記バイアス素子を介して前記素子を並列に接続した構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ等の素子の寿命、信頼性、経年変化、故障モード等の評価に用いられる、キャパシタ等の素子の試験装置に係り、特に、リップル電流等を用いるキャパシタ等の素子の試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リップルを含む電圧の平滑には主としてキャパシタが用いられる。例えば、スイッチング電源の平滑回路に使用するキャパシタには、スイッチング周波数を基本波成分とするリップル電流が流れる。このリップル電流は、キャパシタの発熱等の原因となり、キャパシタの寿命に悪影響を及ぼす。
【0003】
このため、キャパシタに対するリップル試験を行い、キャパシタの評価が必要となる。ここで、リップル試験とは、被試験素子であるキャパシタに規定電圧のバイアス電圧を所定時間印加しながら、規定の周波数及び大きさのリップル電流を流し続け、キャパシタの寿命、信頼性、経年変化、故障モード等を評価するための試験である。
【0004】
キャパシタ等の素子の試験に関し、リップル成分やバイアス電圧を付与するもの(特許文献1、2)等がある。
【特許文献1】特開2003−264000号公報
【特許文献2】特開2001−16798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなリップル試験は、一度の試験に長期間を要する場合があるので、試験を効率化するには多数のキャパシタに同時に試験を実施することが望まれる。リップル試験中は、キャパシタに加わるリップル電流及びバイアス電圧を規定値に維持、管理する必要がある。リップル試験を簡便に行うには、キャパシタに対する給電を抑え、複数のキャパシタを同時に試験することが要請され、同時に試験するには、複数のキャパシタを直列接続や並列接続する構成が取られる。
【0006】
図30は、キャパシタが直並列に接続された従来の試験装置を示している。この試験装置100では、被試験素子としてキャパシタC1、C2・・・C8、トランス102、チョークコイル104、交流電源106、直流バイアス電源108、電圧バランス抵抗R1、R2、R3、R4、接続ケーブル110等を備え、キャパシタC1、C2・・・C8は2並列2直列の2系統で構成されている。キャパシタC1、C5の並列回路、キャパシタC3、C7の並列回路の直列接続されている回路部分が1系統目の回路であり、キャパシタC2、C6の並列回路、キャパシタC4、C8の並列回路の直列接続されている回路部分が2系統目の回路である。
【0007】
このような試験装置100において、キャパシタC1、C2・・・C8に加わる各リップル電流及び各バイアス電圧ついて、キャパシタC1、C2・・・C8が同一種類、同一容量であれば、それぞれのリップル電流、バイアス電圧も等しく設定する必要がある。各キャパシタC1、C2・・・C8には、交流電源106からトランス102を通してリップル電流が付与されるとともに、直流バイアス電源108からバイアス電圧が加えられる。キャパシタC1、C2・・・C8のインピーダンスが等しくない場合、リップル電流が流れることを阻止するためのチョークコイル104が設置されている。この場合、1系統目及び2系統目の各キャパシタには、トランス102の二次側に対しては直列接続になっているので、二つの系統には同一のリップル電流が流れることになる。
【0008】
ところで、1系統目と2系統目は、直流バイアス電源108に対してトランス102の二次巻線を介して並列に接続されている。キャパシタのリーク電流や後述の電圧バランス抵抗に流れる直流電流と、トランス102の二次巻線側の巻線抵抗による電圧降下は、通常、バイアス電圧に対して十分に小さく、さらに電圧降下のばらつきはさらに小さい。このため、1系統目及び2系統目の各回路には、同一のバイアス電圧が印加されていると見做すことができる。
【0009】
キャパシタを直列接続する場合、リーク電流が等しくないときには、各キャパシタにかかるバイアス電圧が異なった電圧になる。これを補正するため、電圧バランス抵抗R1〜R4が接続されており、各キャパシタC1、C2・・・C8に印加されるバイアス電圧がほぼ等しくなるように設定されている。
【0010】
並列接続されているキャパシタC1とキャパシタC5、キャパシタC2とキャパシタC6、キャパシタC3とキャパシタC7、キャパシタC4とキャパシタC8にインピーダンス差があった場合にはその差に応じてリップル電流に差が生じる。このため、キャパシタC1、C2・・・C8のリップル試験では、各キャパシタC1、C2・・・C8について、事前にインピーダンスとリーク電流値の選別をする必要があり、手間がかかる。また、経時変化によりキャパシタC1、C2・・・C8のインピーダンスとリーク電流が変化すると、試験条件が変わってしまい、正確な試験結果が得られないという不都合がある。
【0011】
キャパシタのリップル試験に関し、同一容量、同一種類の複数のキャパシタを同時に同一条件で試験する場合には各キャパシタに加わるリップル電流及びバイアス電圧を等しくする必要がある。以下、その必要条件や課題を列挙すれば次の通りである。
【0012】
(1) キャパシタが並列接続されているとき、キャパシタのインピーダンス、又は配線インピーダンスにばらつきがあると、各キャパシタのリップル電流にばらつきが生じるため、各キャパシタに対して同一条件で試験ができないという問題がある。この問題を解決するために、事前にキャパシタをインピーダンスで選別する方法もあるが、選別に手間がかかり、インピーダンスの経時変化が生じると、再現性の高いデータが得られない。
【0013】
(2) キャパシタが並列接続されているときは、並列個数分のリップル電流を供給する必要があり、交流電源電流を大きくしなければならない。交流電源の電流を大きくすると、接続ケーブル110のインピーダンスによる電圧降下が増大する。特に、交流電源106の周波数が高い場合は、接続ケーブル110のインダクタンスによる電圧降下が大きくなる。電圧降下が大きい場合は、これを補正するために、交流電源106の電圧も高くしなければならないので、大電力の交流電源が必要になり、交流電源106が大型化し、高価になる。また、試験中は、交流電源106の出力配線から交流電源106の周波数の電波や磁束が放射され、交流電源106の電流が大きい程、他の電子機器に対する妨害が大きくなるおそれがある。キャパシタは、電源の平滑用として使用されるので、リップル電流の周波数におけるインピーダンスは低いことが要求される。このため、リップル試験においては交流電源電圧は低く、電圧は一般的に問題にはならない。
【0014】
(3) キャパシタが直列接続されている場合は、直流バイアス電源電圧を高くしなければならない。10直列の場合には、10倍の直流電圧が必要であるから、直列数に比例して直流バイアス電源が高価になる。また、高電圧を扱うことになるので、安全上の問題もある。キャパシタに流れる直流電流、即ち、リーク電流は小さく、直流バイアス電源108の電流は問題にはならない。
【0015】
(4) キャパシタが直列接続されている場合、リーク電流のばらつきにより、キャパシタのバイアス電圧にばらつきを生じ、同一条件での試験ができないという問題がある。
【0016】
(5) (4) を回避するには、キャパシタに並列に電圧バランス抵抗を設ければよい。この電圧バランス抵抗の抵抗値が高い場合には、バイアス電圧のばらつきを補正できないおそれがある。この電圧バランス抵抗を低くすると、直流バイアス電源108の電流容量を大きくしなければならないので、直流バイアス電源108が大型化し、高価になる。また、電圧バランス抵抗R1、R2、R3、R4での消費電力も無視できない。この消費電力が大きくなると、電圧バランス抵抗R1、R2、R3、R4の発熱がキャパシタの温度を上昇させ、キャパシタの寿命や性能に悪影響を与える場合がある。従って、電圧バランス抵抗を使用しないで、バイアス電圧のばらつきを抑制することが望まれる。
【0017】
斯かる課題を要約して列挙すれば、
a キャパシタ等の素子のリップル電流を等しくすること、
b 交流電源の電流を必要最小限にすること、
c バイアス電源の電圧を必要最小限にすること、
d キャパシタ等の素子に印加されるバイアス電圧を等しくすること、
e 電圧バランス抵抗を除去すること、
等である。
【0018】
そこで、本発明の目的は、リップル電流を用いるキャパシタ等の素子の試験に関し、上記課題から選択される1つの課題又は2以上の課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決した本発明のキャパシタ等の素子の試験装置の構成は、以下の通りである。
【0020】
本発明の第1の側面は、被試験素子にリップル電流を流す素子の試験装置であって、前記素子にリップル電流を付与する第1の電源と、前記素子にバイアス電圧を付与する第2の電源と、直流電流を通過させ交流電流を阻止するバイアス素子とを備え、前記第1の電源に対して前記素子を直列に接続し、前記第2の電源に前記バイアス素子を介して前記素子を並列に接続した構成である。
【0021】
被試験素子は単一又は複数であってもよく、この素子に対し、第1の電源よりリップル電流が付与されるとともに、第2の電源よりバイアス電圧が付与される。素子と第2の電源との間に介在させたバイアス素子により、直流電流を通過させ交流電流が阻止される。
【0022】
本発明の第2の側面は、被試験素子にリップル電流を流す素子の試験装置であって、前記素子にリップル電流を付与する第1の電源と、直流電圧を発生する第2の電源と、前記第2の電源と前記素子との間に設けられて前記直流電圧を通過させ且つ前記リップル電流を阻止するバイアス素子とを含み、前記素子に、前記第1の電源から前記リップル電流を付与するとともに、前記第2の電源から前記直流電圧を付与する構成である。斯かる構成によれば、素子にリップル電流を付与するとともに直流電圧を付与し、素子の試験を効率的に行うことができる。
【0023】
本発明の第3の側面は、被試験素子のキャパシタにリップル電流を流すキャパシタの試験装置であって、前記キャパシタにリップル電流を付与するとともに直流バイアス電圧を付与し、前記キャパシタに前記直流バイアス電圧を通過させ且つ前記リップル電流を阻止するバイアス素子を接続した構成である。
【0024】
本発明の第4の側面は、被試験素子のキャパシタにリップル電流を流すキャパシタの試験装置であって、前記キャパシタにリップル電流を付与する第1の電源と、直流電圧を発生する第2の電源と、前記第2の電源と前記キャパシタとの間に設けられて前記直流電圧を通過させ且つ前記リップル電流を阻止するバイアス素子とを含み、前記キャパシタに、前記第1の電源から前記リップル電流を付与するとともに、前記第2の電源から前記直流電圧を付与する構成である。
【0025】
本発明の第5の側面は、被試験素子のキャパシタにリップル電流を流すキャパシタの試験装置であって、複数のキャパシタからなるキャパシタ回路と、前記キャパシタ回路又は前記キャパシタにリップル電流を付与する第1の電源と、前記キャパシタ回路又は前記キャパシタに付与すべき直流電圧を発生する第2の電源と、この第2の電源と前記キャパシタ回路又は前記キャパシタとの間に介在し、前記第2の電源の前記直流電圧を通過させて前記キャパシタ回路又は前記キャパシタに付与するとともに、前記第1の電源の前記リップル電流を阻止するバイアス素子とを備え、前記バイアス素子が巻線を備えるインダクタで構成され、該インダクタが前記キャパシタに対して同一値となる電流成分に対してはインダクタンスを小さく、前記キャパシタに対して異なる値となる電流成分に対してはインダクタンスを大きく設定するように前記キャパシタに接続された構成である。
【0026】
上記試験装置において、前記バイアス素子は、前記素子のインピーダンス値以上のインピーダンスを持つ構成としてもよい。
【0027】
上記試験装置において、前記バイアス素子がダイオードである構成としてもよい。
【0028】
上記試験装置において、前記バイアス素子に発生する直流電圧、又は前記バイアス素子に接続された抵抗に発生する直流電圧から前記素子のリーク電流を検出する構成としてもよい。
【0029】
上記試験装置において、前記バイアス素子に発生する交流電圧、又は前記バイアス素子に接続された抵抗に発生する交流電圧から前記素子のリップル電流を検出する構成としてもよい。
【0030】
上記試験装置において、前記バイアス素子がトランスである構成としてもよい。
【0031】
上記試験装置において、前記バイアス素子は、前記第1の電源の周波数に共振する共振回路又は共振素子である構成としてもよい。
【0032】
上記構成において、第1の電源に対してキャパシタ等の素子を直列に接続した構成とすれば、素子には同一のリップル電流が流れることになる。斯かる構成によれば、キャパシタ等の素子のリップル電流を等しくでき、第1の電源の電流を必要最小限にできる。また、第2の電源に対してバイアス素子を介してキャパシタ等の素子を接続すれば、素子に加えられる直流電圧を必要最小限にでき、素子に印加される直流電圧も等しくできる。また、電圧バランス抵抗を省略できる。
【0033】
バイアス素子にトランス等のインダクタを用いれば、その特性を活用でき、キャパシタ等の素子のリップル電流を等しくでき、第1の電源の電流を必要最小限にできる。また、第2の電源に対してキャパシタ等の素子を並列に接続する構成とすれば、素子に加えられる直流電圧を必要最小限にでき、素子に印加される直流電圧も等しくできる。また、電圧バランス抵抗を省略できる。
【0034】
バイアス素子にインピーダンスの大なる素子を用いれば、キャパシタ等の素子に流れるリップル電流を等しくできるので、第1の電源の電流を必要最小限にできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、次の1又は2以上の効果が得られる。
【0036】
(1) キャパシタ等の被試験素子のリップル電流を等しくすることができる。
【0037】
(2) キャパシタ等の被試験素子にリップル電流を付与する第1の電源の電流を必要最小限にできる。
【0038】
(3) キャパシタ等の被試験素子にバイアス電圧を付与する第2の電源の直流電圧を必要最小限にできる。
【0039】
(4) キャパシタ等の被試験素子にバイアス電圧として付与する直流電圧を等しくすることができる。
【0040】
(5) 電圧バランス抵抗を除くことができ、回路構成の簡略化とともに、電圧バランス抵抗に発熱を生じさせることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
〔第1の実施の形態〕
【0042】
本発明の素子の試験装置の第1の実施の形態について、図1〜図10を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るキャパシタのリップル試験装置又はリップル試験方法に用いる回路の一例を示す回路図、図2は、その一例を示す回路図、図3はそのシミュレーション結果を示す図、図4は第1の実施の形態における試験装置の他の構成例を示す回路図、図5はそのシミュレーション結果を示す図、図6はバイアス素子の構成例を示す回路図、図7〜図10は第1の実施の形態における変形例を示す回路図である。各図において、共通部分には同一符号を付してある。
【0043】
このリップル試験装置2には、単一又は複数の被試験素子として例えば、キャパシタC1、C2、C3、C4が接続されており、これらキャパシタC1〜C4は直列に接続され、キャパシタ回路4を構成している。このキャパシタ回路4において、この実施の形態では、キャパシタC1は接続点a側をマイナス端子、キャパシタC1、C2は接続点b側をプラス端子、キャパシタC2、C3は接続点c側をマイナス端子、キャパシタC3、C4は接続点d側をプラス端子、キャパシタC4は接続点e側をマイナス端子に設定されている。この場合、キャパシタC1〜C4は有極性素子であるか否かを問わないが、素子単体で有極性を持たない場合には電源が持つ極性に依存する。
【0044】
このリップル試験装置2には、第1の電源として例えば、交流電源6、第2の電源として例えば、直流バイアス電源8が設置されている。交流電源6は、キャパシタ回路4又は各キャパシタC1〜C4に付与すべきリップル電流i又はリップル電圧を発生する。その構成は電流源又は電圧源の何れであってもよく、V1は交流電源6の電圧である。ここで、リップル電流iは、周波数及び特定のレベルを備えている。また、直流バイアス電源8は、各キャパシタC1〜C4に直流バイアス電圧を付与する直流電源であり、V2はその直流電圧である。
【0045】
交流電源6には各キャパシタC1〜C4が直列に接続され、交流電源6からリップル電流iが付与される。また、キャパシタ回路4の接続点a、b、c、d、eのそれぞれにはバイアス素子Z1、Z2、Z3、Z4、Z5を介して直流バイアス電源8が接続され、直流バイアス電圧が印加されている。各バイアス素子Z1〜Z5には、直流を通過させるとともに交流を阻止する特性を備えた素子又は回路が用いられる。
【0046】
このように直流通過・交流遮断性を備えたバイアス素子Z1〜Z5を設置したことにより、このリップル試験装置2では、各バイアス素子Z1〜Z5がリップル電流iを遮断する構成とすれば、各キャパシタC1〜C4に流れるリップル電流iは等しくなる。
【0047】
ところで、バイアス素子Z1〜Z5がリップル電流iを通過させると仮定すると、交流電源6には、キャパシタC1〜C4とともにバイアス素子Z1〜Z5が負荷として接続されている。バイアス素子Z1、Z5の直列回路は、交流電源6に直接接続され、バイアス素子Z2、Z4の直列回路は、キャパシタC2、C3の直列回路に並列に接続されている。バイアス素子Z2、Z4にリップル電流が流れると仮定すると、キャパシタC1、C4に流れるリップル電流は、キャパシタC2、C3に流れるリップル電流よりも多くなってしまう。このようなリップル電流のばらつきはバイアス素子Z1〜Z5がリップル電流を阻止する機能を備えていれば容易に解消されることである。即ち、各バイアス素子Z1〜Z5が交流電源6の周波数fにより高インピーダンスを呈する特性を備えた素子であればよい。
【0048】
そして、キャパシタC1〜C4のリーク電流は相対的に小さく、直流バイアス電源8の電圧V2は殆どそのまま、バイアス素子Z1〜Z5を通して各キャパシタC1〜C4に印加される。しかしながら、各キャパシタC1〜C4のリーク電流は皆無ではないので、バイアス素子Z1〜Z5は直流電流を流す素子又は回路で構成すればよい。
【0049】
キャパシタC1〜C4のリーク電流にばらつきがある場合には、そのリーク電流によってバイアス素子Z1〜Z5に直流電圧が発生し、この電圧に起因して各キャパシタC1〜C4に加わる直流電圧にばらつきが生じることになる。これを避けるには、リーク電流によってバイアス素子Z1〜Z5に生じる電圧を無視できるレベルにすればよく、そのためには例えば、バイアス素子Z1〜Z5に直流抵抗の低いものを使用すればよい。
【0050】
各キャパシタC1〜C4に加わる直流電圧がキャパシタC1〜C4の寿命に影響を及ぼすことが知られているが、これはリップル試験においても直流電圧値を正確に管理することが要請されている。斯かる要請に対しては、バイアス素子Z1〜Z5の直流抵抗を低くすればよい。
【0051】
第1の実施の形態において、バイアス素子Z1〜Z5に抵抗を用いてもよい。抵抗の場合、直流抵抗と交流電源6の周波数におけるインピーダンスは同一であり、斯かる試験条件を設定すれば、バイアス素子Z1〜Z5に抵抗を利用することができる。
【0052】
第1の実施の形態において、バイアス素子Z1〜Z5にインダクタを用いてもよい。即ち、交流電源6の周波数により大きいインピーダンス値を持つインダクタを使用すれば、バイアス素子Z1〜Z5にリップル電流が流れ難くなる。50〔Hz〕/120〔Hz〕程度の低周波数では、インダクタは大きく、高価となり、巻線数が多いために直流抵抗も大きくなりがちであるが、一般のスイッチング電源用キャパシタの試験では、数十kHz以上の周波数が用いられるので、低周波数における不都合はない。
【0053】
キュリー点以下の温度環境であれば、バイアス素子Z1〜Z5としてコア付きインダクタを用いることができる。コア付きインダクタは、空芯インダクタと比較すると、交流に対してより高インピーダンスになり、直流に対してより低抵抗にできることから、バイアス素子として有利な性質を持っている。
【0054】
また、バイアス素子Z1〜Z5に抵抗を用いた場合には、コア付きインダクタよりも温度の影響が小さく、周囲温度の自由度が拡大する。
【0055】
この第1の実施の形態において、バイアス素子Z1〜Z5には図2に示すように、ダイオードを用いることができる。図2は、ダイオードD1〜D5を用いたリップル試験装置2を示す回路図(シミュレーション回路)である。
【0056】
この場合、交流電源6及び直流バイアス電源8を0〔V〕にし、直流バイアス電源8の電圧を0〔V〕からV2〔V〕に上昇させると、各キャパシタC1〜C4は電圧{V2−(2×Vf)}に充電される。但し、Vfはダイオードの順電圧である。
【0057】
交流電源6の起動から数サイクル間では、ダイオードD1〜D5はリップル電流に対して整流作用を持ち、その後は、キャパシタC1、C4の充電が完了する。この場合、交流電源6を働かせ、瞬時電圧がピークに達し、キャパシタC1側が+、キャパシタC4側が−となったときには、交流電源6→D1→直流バイアス電源8→D4の経路によりキャパシタC4が充電される。また、キャパシタC1側が−、キャパシタC4側が+となったときには、交流電源6→D5→直流バイアス電源8→D2の経路によりキャパシタC1が充電される。
【0058】
このようにダイオードD1〜D5を用いたシミュレーション回路では、キャパシタC1〜C4=1〔μF〕、直流バイアス電圧V2=100〔V〕、交流電源6の周波数f=100〔kHz〕、電圧V1=10〔Vp−p〕とすると、リップル電流i=1.6〔Ap−p〕となる。
【0059】
斯かるシミュレーションの結果は図3に示す通りである。図3(A)は、キャパシタC1〜C4の電圧、図3(B)及び図3(C)は、ダイオードD1〜D5の電流であり、横軸は時間である。
【0060】
給電開始から5〔μs〕区間でダイオードD1、D4に電流が流れ、その電流によりキャパシタC4が充電されている。次の5〔μs〕区間でダイオードD2、D5に電流が流れ、その電流によりキャパシタC1が充電されている。この場合、キャパシタC2、C3の直流電圧の平均値が100〔V〕であるのに対し、キャパシタC1、C4の直流電圧の平均値が102〔V〕となり、2〔%〕だけ当初電圧より高くなっている。
【0061】
このシミュレーションにより明らかなように、より低いバイアス電圧で試験する場合にはこの電圧の違いが顕著となるが、上記のシミュレーション条件であれば実用上無視できるレベルである。
【0062】
キャパシタC1〜C4のリップル電圧がダイオードD1〜D5の順電圧Vfより小さい場合には整流作用は生じない。しかしながら、ダイオードD1〜D5の順電圧VfやキャパシタC1〜C4のバイアス電圧のばらつきはキャパシタC1〜C4のリーク電流に依存し、バイアス電圧が低い場合にはバイアス電圧のばらつきが無視できなくなる。
【0063】
斯かる現象は、図4に示すシミュレーション回路を以て検証することができる。キャパシタC1〜C4=1000〔μF〕、直流バイアス電圧V2=100〔V〕、交流電源6の周波数f=100〔kHz〕、電圧V1=100〔mVp−p〕とすると、リップル電流i=16〔Ap−p〕となる。キャパシタC1のリーク電流を100〔μA〕に模擬するため、抵抗R1が付加されている。
【0064】
斯かるシミュレーション結果を図5に示す。図5において、(A)は、キャパシタC1〜C4の瞬時電圧、(B)及び(C)は、ダイオードD1〜D5の瞬時電流であり、横軸は時間である。
【0065】
この場合、リップル電圧の発生は確認できない程度であり、直流電圧では、キャパシタC1は99〔V〕、キャパシタC2、C4は99.5〔V〕、キャパシタC3は100〔V〕となり、±0.5〔V〕(±0.5〔%〕)のばらつきが生じている。このシミュレーション結果から明らかなように、上記条件であれば無視できるレベルである。
【0066】
第1の実施の形態において、バイアス素子Z1〜Z5にインダクタとキャパシタを並列にしたものを用いてもよい。図6は、インダクタL及びキャパシタCのLC並列回路からなるバイアス素子Z1〜Z5の構成例を示す回路図である。斯かる構成において、LC並列回路の並列共振周波数をリップル周波数に一致させれば、その周波数においてインピーダンスが高くなるので、バイアス素子Z1〜Z5にはリップル電流は殆ど流れなくなる。しかも、直流抵抗は無視できる程度(殆どゼロ)であるから、直流バイアス電圧には殆ど影響しないという利点もある。
【0067】
被試験素子であるキャパシタの個数は、1個以上のいくつでもよいが、奇数個の場合、交流電源6が直流バイアス電源8の直流バイアス電圧とほぼ等しい直流電圧の上にリップル電流を重畳することが必要になるので、偶数個が望ましい。
【0068】
単一のキャパシタC1を用いた場合には、図7に示すように構成することができる。図7は、単一のキャパシタC1を用いた場合の構成例を示している。交流電源6は、リップル電流に加えて、キャパシタC1に直流バイアス電源8から与えられている直流バイアス電圧V2に相当する直流電圧(≒V2)を発生させる必要がある。斯かる構成においても、キャパシタC1のリップル試験を行うことができる。
【0069】
また、交流電源6に既述の直流電圧(≒V2)を発生させない場合には、図8に示すように、キャパシタC5を追加すればよい。
【0070】
被試験素子として2つのキャパシタC1、C2を用いた場合には、図9に示す回路構成とすればよい。このように、キャパシタが偶数の場合、交流電源6には既述の直流電圧を発生させる必要はない。図1に示した回路でも同様である。
【0071】
第1の実施の形態において、キャパシタC1〜C4に交流電源6が直接に加えられているが、図10に示すように、キャパシタ回路4に対し、トランス10を介して交流電源6を接続する構成としてもよい。キャパシタ回路4に接続される交流電源6には、比較的低電圧で大電流を取り出すことができる交流電源が必要となる。その場合、ステップダウントランスを用いることが可能であり、ステップダウントランスを用いれば、交流電源6の出力電流をより小さくできる。この結果、交流電源6とトランス10の間の接続ケーブル11を長くしても、電波の放射、磁束の漏洩や電圧降下を小さくすることができる。さらに、トランス10を用いた構成とすれば、安全性を高めたり、キャパシタ回路4と直流バイアス電源8の接地電位の相違による影響の低減や回避の効果も期待できる。
【0072】
以上述べた第1の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0073】
(1) 交流電源6にキャパシタC1〜C4が直列に接続された構成では、キャパシタC1〜C4のインピーダンスや配線インピーダンスに不揃い(ばらつき)があった場合でも、同一のリップル電流をキャパシタC1〜C4に与えることができる。また、複数のキャパシタC1〜C4を同時に試験する場合であっても、交流電源6からキャパシタC1〜C4に供給する電流はキャパシタC1〜C4を並列に接続したときよりも小さくてよく、配線による電圧降下も抑制できる。また、トランス10のようにステップダウントランスを併用してもよく、ステップダウントランスを併用すれば、交流電源6の出力電流をより小さくすることができる。
【0074】
(2) 直流バイアス電源8に対してキャパシタC1〜C4が並列に接続された構成では、キャパシタC1〜C4は、直流バイアス電源8の電圧V2を低くできるとともに、直流バイアス電圧V2を等しくすることができる。仮に、各キャパシタC1〜C4のリーク電流にばらつきがあっても、直流バイアス電圧V2を等しくすることができ、各キャパシタC1〜C4に並列に電圧バランス抵抗を接続して電圧バランスを取る必要もない。
【0075】
〔第2の実施の形態〕
【0076】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、第2の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図、図12は、トランスの等価回路を示す図である。
【0077】
この実施の形態では、複数の被試験素子として6組のキャパシタC1〜C6が用いられ、これらキャパシタC1〜C6を二分してキャパシタC1、C2、C5の並列化とともに、キャパシタC3、C4、C6を並列化し、これらを直列化してキャパシタ回路4が構成され、トランス12、14によってキャパシタC1、C2、C5に対するリップル電流を均一化し、同様に、トランス16、18によってキャパシタC3、C4、C6に対するリップル電流の均一化が図られている。なお、トランス12、14、16、18は、図12に示すように、例えば、巻線L201、L202で構成することができる。
【0078】
トランス12、14、16、18には例えば、単巻きトランスが用いられ、交流電源6からのリップル電流を各トランス12、14、16、18の中間タップから注入し、中間タップを中心にした巻線の巻数比によってキャパシタC1〜C6に対するリップル電流を均一化している。キャパシタC1、C2に接続されたトランス12は中間タップを中心に同一の巻数比(1:1)である。キャパシタC3、C4に接続されたトランス16も同様である。また、トランス12の中間タップとキャパシタC5に接続されたトランス14は、中間タップを中心に巻数比(m:n)が設定されている。この場合、キャパシタC1、C2、C5の各リップル電流をiとすると、トランス14の巻数比は、トランス12側に2i、キャパシタC5側にiを供給する編成とすれば、巻数比(m:n)について、mはn側の巻線の先に並列につながるキャパシタの数、nはm側の巻線の先に並列につながるキャパシタ数とすればよい。即ち、トランス14において、m:nは例えば、1:2にすればよい。斯かる構成は、トランス18においても同様である。各キャパシタC1〜C6に流すリップル電流をiとすれば、トランス14、18の中間タップに接続された交流電源6から注入されるリップル電流は3iとなる。
【0079】
そして、バイアス素子としてインダクタLBが用いられ、直流バイアス電源8は、このインダクタLBを通してキャパシタ回路4のキャパシタC1、C2、C5及びキャパシタC3、C4、C6に直流バイアス電圧V2を付与している。
【0080】
ここで、トランス12の巻線L1及びキャパシタC1、C2の閉回路に流れる電流に注目すると、キャパシタC1、C2に等しく流れる電流icと、キャパシタC1、C2に逆向きに流れる電流inが存在しており、この閉回路の電流は、重ね合わせの理によりこれらの電流の和として考えられる。キャパシタC1に流れる電流は電流icと電流inとの和(ic+in)、キャパシタC2に流れる電流は電流icと電流inとの差(=ic−in)となり、各キャパシタC1、C2に流れる電流は(2×in)={(ic+in)−(ic−in)}だけ電流差が生じ、不均一になる。
【0081】
巻線L1に電流が流れ、トランス12の磁気回路内に磁束が発生すると、巻線L1の自己インダクタンスにより、巻線L1には磁束を打ち消す方向の逆起電力を生じる。巻線L1における電流icの影響を考えると、キャパシタC1に向かって流れる電流による磁束と、キャパシタC2に向かって流れる電流による磁束の向きは逆であって、その大きさが同じであるから、各磁束は打ち消されることになる。この結果、電流icは巻線L1内に磁束を生じないため、巻線L1には逆起電力が生じない。従って、この電流成分が流れても、巻線L1による電圧降下は生じない。
【0082】
しかしながら、キャパシタC1、C2のインピーダンスが異なっていると、電流icが流れたときにキャパシタC1、C2に生じる電圧降下は異なる値(差電圧)となる。キャパシタC1、C2に逆向きに流れる電流inは、巻線L1に加わる既述の差電圧に依存する。巻線L1における電流inの影響を考えると、電流inは巻線L1内に磁束を生じさせ、逆起電力を生じる。従って、巻線L1は電流inに対する抑圧効果を生じ、巻線L1のインダクタンスが十分大きければ、各キャパシタC1、C2の電流をほぼ同値にすることができる。
【0083】
このように、トランス12の中間タップにリップル電流を注入すると、両端からほぼ等しいリップル電流に応じた電流を得ることができるので、トランス12の両端に新たなトランスの中間タップを繋ぐことを複数段繰り返せば、ほぼ等しい2のn乗個のリップル電流が得られることになる。
【0084】
また、トランス14の巻線L2のようにm:nの巻線比を用いれば、m:nに分流できるので、キャパシタの個数は2のn乗個に限定されず自由に選択することができる。
【0085】
次に、トランス14の巻線L2に流れるリップル電流に注目すると、その中間タップからトランス12の巻線L1側に流れる電流をIl、中間タップからキャパシタC5側に流れる電流をIrとする。
【0086】
このとき、トランス14の巻線L2の巻数をm、nとすると、巻数m及び巻数n側の電流がm×Il=n×Irに設定すれば、巻線L2内の磁束は打ち消され、巻線L2には電圧降下は生じない。しかし、m×Il≠n×Irになると、巻線L2内には電流差に比例した磁束が発生することになるので、巻線L2にはそれに応じた電圧降下を生じ、この結果、IlとIrが調整され、m×Il≒n×Irとなる。なお、巻線L1〜L4には大きなリップル電流を流すため、巻線L1〜L4の直流抵抗値は低抵抗となる。
【0087】
なお、交流電源6にステップダウントランスの二次側を使用すれば、その直流抵抗は低抵抗となる。
【0088】
いずれの直流抵抗も低抵抗であるため、キャパシタC1〜C6のリーク電流がばらついたとしても、全てのキャパシタC1〜C6のバイアス電圧はほぼ等しくなる。そこで、直流バイアス電源8に流れ込むリップル電流を小さくするために、バイアス素子としてインダクタLBを例示している。バイアス素子としてLC並列共振回路を使用し、共振周波数をリップル電流周波数と一致させれば、直流バイアス電源8に流れるリップル電流を小さくすることができる。
【0089】
以上述べた第2の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0090】
(1) キャパシタC1〜C6のインピーダンス、又は配線インピーダンスにばらつきがあっても、同一のリップル電流を各キャパシタC1〜C6に与えることができる。
【0091】
(2) キャパシタC1〜C6は、直流バイアス電源8に対しては並列に接続されているので、バイアス電圧V2を高くする必要がない。また、各キャパシタC1〜C6のリーク電流にばらつきがあっても、バイアス電圧を等しくすることができる。このため、キャパシタC1〜C6に電圧バランス抵抗を付加する必要がない。
【0092】
〔第3の実施の形態〕
【0093】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図13を参照して説明する。図13は、第3の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【0094】
この実施の形態では、トランス20、30が各々4巻線のトランスで構成される。トランス20、30に付した黒丸は巻線方向を示している。4つの巻線L201、L202、L203、L204、又は、巻線L301、L302、L303、L304の巻線比は例えば、1:1:1:1に設定されている。
【0095】
交流電源6から供給されるリップル電流は、トランス20、30を通り、キャパシタC1〜C4に注入される。キャパシタC1、C2の間にはダンピング抵抗を構成する抵抗R1、キャパシタC3、C4の間には同様にダンピング抵抗を構成する抵抗R2が接続されている。直流バイアス電源8はバイアス素子であるインダクタLBを通して全てのキャパシタC1〜C4にバイアス電圧を供給する。インダクタLBは例えば、チョークコイルで構成される。
【0096】
キャパシタC1、C2、C3、C4に上向きに流れるリップル電流をi1、i2、i3、i4とすると、インダクタLB、抵抗R1、R2に流れる電流を無視した場合、キャパシタC1、C2とキャパシタC3、C4とは直列に接続されているので、
i1+i2=i3+i4 ・・・(1)
の関係が成り立つ。
【0097】
ところで、トランス20においては、図11に示したトランス12と同等の働きにより、黒丸側から流れ込む全ての電流の総和が0であれば逆起電力は生じない。電流の総和が0でないならば、それを打ち消す方向に逆起電力が発生し、即ち、インダクタンスが発生して電流の総和が0になる方向に働く。従って、トランス20は、
i1+i3=i2+i4 ・・・(2)
に近くなるように働く。同様に、トランス30は
i1+i4=i2+i3 ・・・(3)
に近くなるように働く。これらの結果、
(1) と(2) から、i1=i4
(1) と(3) から、i1=i3
(2) と(3) から、i1=i2
となるように動作する。つまり、斯かる接続とすることにより、トランス20、30はi1=i2=i3=i4に近くなるように働く。
【0098】
このような電流バランス作用を得るには、交流電源6の周波数fをトランス20、30のインダクタンスとキャパシタC1〜C4との共振周波数と比べて十分に高く設定すればよい。キャパシタC1〜C4の静電容量が小さく、交流電源6の周波数が共振周波数に近い場合には、共振により電流バランスの悪化が予想されるが、これを防止するには、抵抗R1、R2を追加すればよい。交流電源6の周波数がトランス20、30のインダクタンスとキャパシタC1〜C4との共振周波数と比べて高い場合には、斯かる抵抗R1、R2は不要である。
【0099】
この実施の形態では、2個のトランス20、30を用いてキャパシタC1〜C4の交流電流をバランスさせる構成としたが、同様により、n個のトランスを用いて、2×n個のキャパシタのリップル電流をバランスさせることが可能である。そして、この実施の形態によっても、第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0100】
〔第4の実施の形態〕
【0101】
次に、本発明の第4の実施の形態について、図14、図15及び図16を参照して説明する。図14は、第4の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図、図15はインピーダンス素子の構成例を示す図、図16はリーク電流やリップル電流の検出抵抗を付加した試験装置の構成例を示す回路図である。
【0102】
この実施の形態では、被試験素子であるキャパシタC1、C2、C3が用いられ、これらキャパシタC1〜C3のそれぞれに大きいインピーダンスZrを持つバイアス素子Z1、Z2、Z3が直列に接続され、キャパシタC1〜C3のリップル電流を均一化している。即ち、キャパシタC1〜C3のそれぞれに、インピーダンスが等しく、キャパシタC1〜C3の持つインピーダンスZよりも十分にインピーダンスZrが高いバイアス素子Z1、Z2、Z3が直列に接続され、これらを並列に接続している。交流電源6及び直流バイアス電源8は直列に接続されている。バイアス素子Z1〜Z3は例えば、図15に示すようにインダクタL又は抵抗Rで構成することができる。
【0103】
斯かる構成によれば、直流バイアス電源8には交流電源6が直列に接続されているので、直流バイアス電源8にはリップル電流を流すことのできる直流電源が必要となる。その場合、直流バイアス電源8に並列に例えば、キャパシタを付加すればよい。
【0104】
キャパシタC1、C2、C3に流れるリップル電流をそれぞれi1、i2、i3とすると、キャパシタCn(n=1、2、3)に流れるリップル電流inは、
in=V1÷{Zr−j/(ωCn)} ・・・(4)
となる。|Zr|≫|j/(ωCn)|となるようにZrの値を選べば、
in≒V1÷Zr ・・・(5)
となり、各バイアス素子Z1〜Z3のインピーダンスZrは等しいので、i1≒i2≒i3となる。
【0105】
ここで、バイアス素子Z1〜Z3に抵抗を用いる場合を想定する。既述のように、|Zr|≫|j/(ωCn)|となるように設定すると、バイアス素子Z1〜Z3の各インピーダンスZrは比較的高抵抗となる。ところが、バイアス素子Z1〜Z3には大きなリップル電流が流れ、高抵抗のバイアス素子Z1〜Z3の電力損失が大きくなる。また、キャパシタC1〜C3のリーク電流にばらつきがある場合には、高抵抗のバイアス素子Z1〜Z3ではキャパシタC1〜C3にかかる直流バイアス電圧もそのばらつきに依存することになる。
【0106】
そこで、バイアス素子Z1〜Z3にインダクタを用いれば、電力損失を低減できる。インダクタでは直流抵抗が小さいので、キャパシタC1〜C3のリーク電流にばらつきが生じても、キャパシタC1〜C3のバイアス電圧は等しくなる。交流電源6の周波数が高い場合には、キャパシタC1〜C3までの配線インピーダンスがキャパシタC1〜C3のインピーダンスより高い場合がある。斯かる場合には、配線インピーダンスが均一になるようにすれば、配線自体をバイアス素子Z1〜Z3として使用し又はバイアス素子Z1〜Z3の一部として使用することも可能であり、キャパシタC1〜C3の簡便且つ安価なリップル試験を実現できる。
【0107】
各バイアス素子Z1〜Z3のインピーダンスのばらつきが小さければ、キャパシタC1〜C3のインピーダンスがばらついていても、キャパシタC1〜C3に流れるリップル電流のばらつきを抑圧することができる。
【0108】
また、図16に示すように、各バイアス素子Z1〜Z3に対して直列に抵抗R1、R2、R3を接続すれば、各抵抗R1、R2、R3に発生した直流電圧とその抵抗値Rから、各キャパシタC1〜C3のリーク電流を個別に知ることができる。また、バイアス素子Z1〜Z3の抵抗値が既知であれば、このような抵抗R1〜R3を挿入することなく、バイアス素子Z1〜Z3に発生した直流電圧とその抵抗値から、同様に各キャパシタC1〜C3のリーク電流を検出することもできる。
【0109】
同様に、各抵抗R1〜R3に発生した交流電圧とその抵抗値Rから、各キャパシタC1〜C3に流れているリップル電流を個別に知ることができる。また、バイアス素子Z1〜Z3の抵抗値が既知であれば、このような抵抗R1〜R3を挿入することなく、バイアス素子Z1〜Z3に発生した交流電圧とその抵抗値から、同様に、各キャパシタC1〜C3に流れているリップル電流を検出することもできる。
【0110】
以上述べた第4の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0111】
(1) キャパシタC1〜C3のインピーダンスにばらつきがあった場合でも、同一のリップル電流を各キャパシタC1〜C3に与えることができる。
【0112】
(2) バイアス素子Z1〜Z3を配線インピーダンスよりも高インピーダンスの素子で実現した場合、配線インピーダンスにばらつきがあっても、同一のリップル電流を各キャパシタC1〜C3に与えることができる。
【0113】
(3) 交流電源6の周波数が高い場合、各キャパシタC1〜C3に接続される配線が持つ配線インピーダンスを均一にすれば、その配線インピーダンスをバイアス素子Z1〜Z3として使用でき、試験装置を簡便且つ安価にすることができる。
【0114】
(4) キャパシタC1〜C3は、直流バイアス電源8に並列に接続した構成によれば、直流バイアス電圧を高くする必要がなく、また、各キャパシタC1〜C3のリーク電流にばらつきがあっても、直流バイアス電圧を等しくすることができる。このため、キャパシタC1〜C3に並列に電圧バランス抵抗を設ける必要もない。
【0115】
〔第5の実施の形態〕
【0116】
次に、本発明の第5の実施の形態について、図17〜図21を参照して説明する。図17は、第5の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図、図18はそのシミュレーション回路を示す回路図、図19〜図21はそのシミュレーション結果を示す図である。
【0117】
この実施の形態では、バイアス素子としてキャパシタCr1、Cr2、Cr3及びインダクタL1、L2、L3を用いている。即ち、キャパシタC1には、キャパシタCr1を介して交流電源6が接続されているとともに、インダクタL1を介して直流バイアス電源8が接続され、キャパシタC2には、キャパシタCr2を介して交流電源6が接続されているとともに、インダクタL2を介して直流バイアス電源8が接続され、また、キャパシタC3には、キャパシタCr3を介して交流電源6が接続されているとともに、インダクタL3を介して直流バイアス電源8が接続されている。
【0118】
バイアス素子(インピーダンス素子)をキャパシタCr1、Cr2、Cr3のみで構成すると、これらキャパシタCr1、Cr2、Cr3が直流を遮断するので、インダクタL1〜L3を介在させることによって直流バイアス電圧V2がキャパシタC1〜C3に印加されるように構成されている。交流電源6の周波数に対し、高いインピーダンスになるインダクタL1〜L3を用いれば、直流バイアス電源8側へのリップル電流の流入を阻止できる。
【0119】
インダクタL1〜L3及びキャパシタCr1〜Cr3がLC共振回路40を構成するので、その共振周波数と交流電源6の周波数を一致させて共振させれば、キャパシタC1〜C3からLC共振回路40を見たインピーダンスZoがキャパシタCr1〜Cr3のインピーダンスより高くなる。これは、第4の実施の形態(図14)のバイアス素子Z1〜Z3のインピーダンスZrが高くなった場合に相当し、キャパシタC1〜C3に対し均一なリップル電流を流すことができる。
【0120】
そこで、この実施の形態についてのシミュレーションについて、図18、図19、図20及び図21を参照して説明する。図18は、そのシミュレーション回路を示す回路図、図19〜図21は、共振結果を示す図である。図18において、図17と同一部分には同一符号を付すとともに、シミュレーションに用いた各数値を付記している。
【0121】
図18に示すシミュレーション回路において、キャパシタCr1〜Cr3の静電容量は1〔μF〕(中心値)、インダクタL1〜L3は1〔μH〕(中心値)とした。従って、キャパシタCr1〜Cr3及びインダクタL1〜L3の共振周波数は、約159〔kHz〕となる。抵抗R1、R2、R3はインダクタL1〜L3の直流抵抗であり、その抵抗値を10〔mΩ〕とした。インダクタL4、L5、L6はキャパシタC1〜C3とキャパシタCr1〜Cr3との間の配線インダクタンスであり、その中心値を1〔μH〕とした。
【0122】
図19〜図21において、横軸は、交流電源6の周波数f=50〔kHz〕〜800〔kHz〕を対数で表示し、縦軸は、キャパシタC1〜C3のいずれかのリップル電流値であり、同じく対数表示としている。
【0123】
図19は、図18のシミュレーション結果である。キャパシタCr1〜Cr3及びインダクタL1〜L3の共振周波数、約159〔kHz〕において、パラメータの変化に関係なく、リップル電流値が一定値になっていることが判る。即ち、交流電源6の周波数が約159〔kHz〕のときには、リップル電流を一定にできる。
【0124】
また、図20は、キャパシタC1〜C3の容量の中心値を図18の100倍にした場合のシミュレーション結果である。図19に示すシミュレーション結果と同様に、キャパシタCr1〜Cr3とインダクタL1〜L3の共振周波数、約159〔kHz〕において、パラメータの変化に関係なく、リップル電流値が一定値になっていることが判る。
【0125】
また、図21は、キャパシタC1〜C3の容量の中心値を図18の100倍にし、インダクタL1〜L3を図18の1000倍にしたときのシミュレーション結果である。キャパシタCr1〜Cr3及びインダクタL1〜L3の共振周波数は表示外にある。この結果から明らかなように、共振を使わない場合には、リップル電流値が一定値にならないことがある。
【0126】
以上述べた第5の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0127】
(1) キャパシタCr1〜Cr3及びインダクタL1〜L3の共振点を交流電源6の周波数と一致させれば、配線インダクタンスやキャパシタC1〜C3の容量にばらつきがあっても、各キャパシタC1〜C3に一定のリップル電流を供給することができる。
【0128】
(2) キャパシタC1〜C3を直流バイアス電源8に並列に接続しているので、直流バイアス電圧V2を高くする必要はない。また、各キャパシタC1〜C3のリーク電流にばらつきがあっても、キャパシタに印加される直流バイアス電圧を等しくすることができる。このため、キャパシタC1〜C3に並列に電圧バランス抵抗を設ける必要はない。
【0129】
〔第6の実施の形態〕
【0130】
次に、本発明の第6の実施の形態について、図22を参照して説明する。図22は、第6の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【0131】
この実施の形態は、複数個の第2の電源として3つの直流バイアス電源81、82、83を用いてバイアス電圧を均一化したものである。被試験素子としてキャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6は、交流電源6に対して直列に接続され、直流バイアス電源81、82、83は直列に接続され、また、直流バイアス電圧V2〜V4がバイアス素子Z1、Z2、Z3、Z4、Z5を介してキャパシタC1〜C6に加えられている。この場合、バイアス素子Z1、Z2、Z3、Z4、Z5には、図23(A)に示す抵抗R、図23(B)に示すインダクタL、又は図23(C)に示すLC並列共振回路等で構成する。これらバイアス素子Z1〜Z5の直流抵抗値は、キャパシタC1〜C6のリーク電流が流れた際のバイアス素子Z1〜Z5の電圧降下がキャパシタC1〜C6の直流バイアス電圧に対して無視できる程度になる低抵抗値とする。このような場合、バイアス素子Z2、Z3のような接続方法であっても、バイアス素子Z4、Z5のような接続方法であっても、ほぼ同様の効果が得られる。また、交流電源6の周波数fにおけるバイアス素子Z1〜Z5のインピーダンスは、交流電源6の周波数によるキャパシタC1〜C6のインピーダンスが無視できる程度の高インピーダンスとする。
【0132】
斯かる構成とすれば、交流電源6に対してはキャパシタC1〜C6が直列に接続されているので、各キャパシタC1〜C6に流れるリップル電流が均一になる。直流的には、キャパシタC5及びキャパシタC6は直流バイアス電源81、キャパシタC3及びキャパシタC4は直流バイアス電源82、キャパシタC1及びキャパシタC2は直流バイアス電源83に並列に接続されている。よって、各直流バイアス電圧がV2=V3=V4とすれば、各キャパシタC1〜C6の直流バイアス電圧が均一になる。
【0133】
以上述べた第6の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0134】
(1) 2n個のキャパシタに対し、n個の直流バイアス電源で構成できる。
【0135】
(2) キャパシタC1〜C6のインピーダンス、又は配線インピーダンスにばらつきがあった場合でも、同一のリップル電流をキャパシタC1〜C6に与えることができる。
【0136】
(3) キャパシタC1〜C6は、交流電源6に対して直列に接続されているので、複数のキャパシタC1〜C6を同時に試験する場合でも交流電源6の電流を大きくする必要がない。従って、配線による電圧降下も増大しない。
【0137】
(4) 直流バイアス電源1つに対してキャパシタが2つずつ並列に接続されているので、キャパシタC1〜C6のリーク電流にばらつきがあっても、直流バイアス電圧を等しくすることができる。このため、キャパシタC1〜C6に電圧バランス抵抗を接続する必要がない。
【0138】
〔第7の実施の形態〕
【0139】
次に、本発明の第7の実施の形態について、図24を参照して説明する。図24は、第7の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【0140】
この実施の形態は、第1の実施の形態(図1)と第2の実施の形態(図11)とを組み合わせた構成である。被試験素子であるキャパシタC1〜C4は直列に接続され、同様に被試験素子であるキャパシタC5〜C8も直列に接続され、それぞれキャパシタ回路401、402を構成している。交流電源6は、トランス50の中間タップを通して、これら2組のキャパシタ回路401、402に並列に接続されている。従って、各キャパシタC1〜C8は、バイアス素子Z1〜Z6及び交流電源6、トランス50の巻線を通じて、直流バイアス電源8に並列に接続されている。
【0141】
バイアス素子Z1〜Z6及び交流電源6の直流抵抗値は、キャパシタC1〜C8のリーク電流が流れた場合の電圧降下がキャパシタC1〜C8の直流バイアス電圧に対して無視できる程度の低抵抗値に設定する。また、交流電源6の周波数におけるバイアス素子Z1〜Z6のインピーダンスは、キャパシタC1〜C8のインピーダンスが無視できる程度の大きな値となるように設定する。
【0142】
キャパシタC1〜C4は、交流電源6に対して直列に接続されているので、これらに流れるリップル電流は同一になり、同様に、キャパシタC5〜C8に流れるリップル電流も同一となる。これら二系統のリップル電流は、第2の実施の形態(図11)と同等の働きによって各々均一となる。この結果、キャパシタC1〜C8のリップル電流が等しくなる。また、キャパシタC1〜C8は、直流的には並列に接続されているので、全てのキャパシタC1〜C8の直流バイアス電圧も等しくなる。
【0143】
以上述べた第7の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0144】
(1) キャパシタC1〜C8のインピーダンス又は配線インピーダンスにばらつきがあった場合でも、同一のリップル電流を各キャパシタC1〜C8に与えることができる。キャパシタC1〜C4及びキャパシタC5〜C8は、交流電源6に対して直列に接続されているので、複数のキャパシタを同時に試験する場合でも交流電源6の電流を大きくする必要がない。従って配線による電圧降下を抑制できる。
【0145】
(2) キャパシタC1〜C8は、直流的には並列に直流バイアス電源8に接続されているので、各キャパシタC1〜C8のリーク電流にばらつきがあっても、直流バイアス電圧を等しくすることができる。このため、キャパシタC1〜C8に並列に電圧バランス抵抗を設ける必要もない。
【0146】
〔第8の実施の形態〕
【0147】
次に、本発明の第8の実施の形態について、図25及び図26を参照して説明する。図25は、第8の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図、図26はその具体例を示す回路図である。
【0148】
この実施の形態は、試験素子Z11〜Z14を直列に接続して素子回路400が構成されている。第1の電源として電流源60が接続され、この電流源60は交流、直流の何れでもよい。第2の電源として電圧源80が接続され、この電圧源80も交流、直流の何れでもよい。これら電流源60及び電圧源80を交流電源で構成した場合、その電圧V1、V2の周波数を異ならせればよい。
【0149】
バイアス素子Za、Zb、Zc、Zd、Zeは周波数によってインピーダンスが変化し、又は直流と交流でインピーダンスが変化する素子であって、電圧源80の電圧V2が持つ周波数(又は直流)に対して、試験素子Z11〜Z14より低インピーダンス、電流源60が持つ周波数(又は直流)に対して、試験素子Z11〜Z14より高インピーダンスとなる素子を選択する。
【0150】
斯かる構成によれば、試験素子Z11〜Z14に電流源60から等しい電流を流すことができ、電圧源80から電圧V2を加えることができる。
【0151】
この場合、試験素子Z11〜Z14又はバイアス素子Za〜Zeのそれぞれは、単一の素子でもよく、複数の素子からなる回路でもよい。
【0152】
そして、この第8の実施の形態における変形例として、図26に示すように、試験素子Z11〜Z14をインダクタL11〜L14、バイアス素子Za〜ZeはキャパシタCa〜Ceで構成することができる。この場合、素子回路400は、インダクタ回路を構成する。
【0153】
斯かる構成によれば、少ない電源で複数の被試験素子としてのコイル(インダクタ)に同一のバイアス電流を流し、同一の電圧波形を加える通電試験を行うことができる。
【0154】
〔第9の実施の形態〕
【0155】
次に、本発明の第9の実施の形態について、図27を参照して説明する。図27は、第9の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【0156】
この実施の形態では、試験素子Z21、Z22、Z23のそれぞれにインピーダンス素子からなるバイアス素子Zr1、Zr2、Zr3を直列に接続し、電源600より流れる電流を試験素子Z21、Z22、Z23に等しく流し、電源800による電圧V2を印加する構成である。この場合、電圧V1、V2は交流でも直流でも構わないが異なる周波数とすればよい。
【0157】
試験素子Z21、Z22、Z23に直列に接続されたバイアス素子Zr1、Zr2、Zr3は、電源600の電圧V1の周波数(又は直流)において、試験素子Z21、Z22、Z23のインピーダンスより高いインピーダンスを選び、バイアス素子Zr1、Zr2、Zr3を構成するインピーダンス素子同士のばらつきを小さく抑える。また、バイアス素子Zr1、Zr2、Zr3は、電源800の電圧V2の周波数(又は直流)において、試験素子Z21、Z22、Z23よりも低いインピーダンスを設定する。
【0158】
この場合、電源600、800は直列に接続され、これら電源600、800の直列回路に試験素子Z21、Z22、Z23がそれぞれバイアス素子Zr1、Zr2、Zr3を直列に介して並列回路を構成する。斯かる構成によれば、電源800にも電源600の電流が流れ、電源600には電源800から電流が流れる。
【0159】
電源600が試験素子Z21、Z22、Z23に流す電流をそれぞれi21、i22、i23とすると、電源600が試験素子Z2n(n=1、2、3)に流す電流i2nは、
i2n=V1÷(Zr+Z2n) ・・・(6)
となる。Zr≫Z2nとなるようにバイアス素子Zr1、Zr2、Zr3のインピーダンスを選べば、
i2n≒V1÷Zr ・・・(7)
となり、バイアス素子Zr1、Zr2、Zr3のインピーダンスZrは等しいので、i21≒i22≒i23となる。
【0160】
また、電源800の電圧V2の周波数においては、Zr≪Z2nなので、バイアス素子Zr1、Zr2、Zr3を短絡した場合とほぼ等しい。従って、試験素子Z21〜Z23には電源800の電圧V2が等しく印加されることになる。
【0161】
〔第10の実施の形態〕
【0162】
次に、本発明の第10の実施の形態について、図28及び図29を参照して説明する。図28は、第10の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図、図29はその等価回路を示す回路図である。
【0163】
この実施の形態は、第5の実施の形態(図17)において、キャパシタC1〜C3を他の素子Z1〜Z3からなる素子回路400で構成し、キャパシタCr1〜Cr3を他の素子Za1〜Za3に置き換え、インダクタL1〜L3を他の素子Zb1、Zb2、Zb3に置き換え、電源600、800で構成したものである。即ち、電源600及び素子Za1、Za2、Za3、電源800及び素子Zb1、Zb2、Zb3の並列回路は、図29に示す等価回路に置換できるので、インピーダンスZoでバイアス素子が構成されることになり、試験素子Z1〜Z3から見れば、図28の回路が図17の回路と同等であることが判る。
【0164】
〔その他の実施の1態〕
【0165】
次に、他の実施の形態を列挙すれば、次の通りである。
【0166】
(1) 第2の実施の形態(図11)において、キャパシタC1〜C6は任意の被試験素子として例えば、キャパシタ以外の素子Z1〜Z6に置き換えてもよい。
【0167】
(2) 第3の実施の形態(図13)において、各キャパシタC1〜C4は任意の素子に変更して構成してもよい。
【0168】
(3) 第6の実施の形態(図22)において、キャパシタC1〜C6を任意の素子、電源6、81〜83のそれぞれを交流電源又は直流電源に置換してもよい。
【0169】
(4) 上記実施の形態(図16)において、リーク電流の取出しに抵抗R1〜R3に生じた直流電圧を用いることを例示したが、抵抗に生じた交流電圧によってリップル電流を取り出すこともできる。また、各実施の形態において、リップル電流の取出しには、トランス等の出力回路を設置してもよい。
【0170】
(5) 上記リップル試験装置2から取り出されたリーク電流やリップル電流は、図示しない演算装置等に加えて被試験素子であるキャパシタ等の素子の特性や劣化状態等の試験に用いることができる。
【0171】
(6) その他、本発明は、電源の波形を変えたり、被試験素子をキャパシタの他、任意の抵抗やコイルに置換してもよく、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明によれば、キャパシタ等の各種素子の試験に用いることができ、素子の特性や耐久性等を知ることができ、素子の信頼性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】第1の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【図2】試験装置の一例を示す回路図である。
【図3】シミュレーション結果を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における試験装置の他の構成例を示す回路図である。
【図5】シミュレーション結果を示す図である。
【図6】バイアス素子の構成例を示す回路図である。
【図7】第1の実施の形態における変形例を示す回路図である。
【図8】第1の実施の形態における変形例を示す回路図である。
【図9】第1の実施の形態における変形例を示す回路図である。
【図10】第1の実施の形態における変形例を示す回路図である。
【図11】第2の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【図12】トランスの等価回路を示す図である。
【図13】第3の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【図14】第4の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【図15】インピーダンス素子の構成例を示す図である。
【図16】リーク電流の検出抵抗を付加した試験装置の構成例を示す回路図である。
【図17】第5の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【図18】シミュレーション回路を示す回路図である。
【図19】シミュレーション結果を示す図である。
【図20】シミュレーション結果を示す図である。
【図21】シミュレーション結果を示す図である。
【図22】第6の実施の形態に係るリップル試験装置の一例を示す回路図である。
【図23】バイアス素子の構成例を示す図である。
【図24】第7の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【図25】第8の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【図26】試験装置の具体例を示す回路図である。
【図27】第9の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【図28】第10の実施の形態に係るリップル試験装置を示す回路図である。
【図29】試験装置の等価回路を示す回路図である。
【図30】従来のリップル試験装置を示す回路図である。
【符号の説明】
【0174】
2 リップル試験装置
4 キャパシタ回路
C1、C2、C3、C4、C5、C6 キャパシタ(被試験素子)
6 交流電源(第1の電源)
8 直流バイアス電源(第2の電源)
Z1、Z2、Z3、Z4、Z5 バイアス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験素子にリップル電流を流す素子の試験装置であって、
前記素子にリップル電流を付与する第1の電源と、
前記素子にバイアス電圧を付与する第2の電源と、
直流電流を通過させ交流電流を阻止するバイアス素子と、
を備え、前記第1の電源に対して前記素子を直列に接続し、前記第2の電源に前記バイアス素子を介して前記素子を並列に接続したことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
被試験素子にリップル電流を流す素子の試験装置であって、
前記素子にリップル電流を付与する第1の電源と、
直流電圧を発生する第2の電源と、
前記第2の電源と前記素子との間に設けられて前記直流電圧を通過させ且つ前記リップル電流を阻止するバイアス素子と、
を含み、前記素子に、前記第1の電源から前記リップル電流を付与するとともに、前記第2の電源から前記直流電圧を付与することを特徴とする試験装置。
【請求項3】
被試験素子のキャパシタにリップル電流を流すキャパシタの試験装置であって、
前記キャパシタにリップル電流を付与するとともに直流バイアス電圧を付与し、前記キャパシタに前記直流バイアス電圧を通過させ且つ前記リップル電流を阻止するバイアス素子を接続したことを特徴とする試験装置。
【請求項4】
被試験素子のキャパシタにリップル電流を流すキャパシタの試験装置であって、
前記キャパシタにリップル電流を付与する第1の電源と、
直流電圧を発生する第2の電源と、
前記第2の電源と前記キャパシタとの間に設けられて前記直流電圧を通過させ且つ前記リップル電流を阻止するバイアス素子と、
を含み、前記キャパシタに、前記第1の電源から前記リップル電流を付与するとともに、前記第2の電源から前記直流電圧を付与することを特徴とする試験装置。
【請求項5】
被試験素子のキャパシタにリップル電流を流すキャパシタの試験装置であって、
複数のキャパシタからなるキャパシタ回路と、
前記キャパシタ回路又は前記キャパシタにリップル電流を付与する第1の電源と、
前記キャパシタ回路又は前記キャパシタに付与すべき直流電圧を発生する第2の電源と、
この第2の電源と前記キャパシタ回路又は前記キャパシタとの間に介在し、前記第2の電源の前記直流電圧を通過させて前記キャパシタ回路又は前記キャパシタに付与するとともに、前記第1の電源の前記リップル電流を阻止するバイアス素子と、
を備え、前記バイアス素子が巻線を備えるインダクタで構成され、該インダクタが前記キャパシタに対して同一値となる電流成分に対してはインダクタンスを小さく、前記キャパシタに対して異なる値となる電流成分に対してはインダクタンスを大きく設定するように前記キャパシタに接続されたことを特徴とする試験装置。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の試験装置において、
前記バイアス素子は、前記素子のインピーダンス値以上のインピーダンスを持つことを特徴とする試験装置。
【請求項7】
請求項1、2、3又は4記載の試験装置において、
前記バイアス素子がダイオードであることを特徴とする試験装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4又は5記載の試験装置において、
前記バイアス素子に発生する直流電圧、又は前記バイアス素子に接続された抵抗に発生する直流電圧から前記素子のリーク電流を検出することを特徴とする試験装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4又は5記載の試験装置において、
前記バイアス素子に発生する交流電圧、又は前記バイアス素子に接続された抵抗に発生する交流電圧から前記素子のリップル電流を検出することを特徴とする試験装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4又は5記載の試験装置において、
前記バイアス素子がトランスであることを特徴とする試験装置。
【請求項11】
請求項1、2、3、4又は5記載の試験装置において、
前記バイアス素子は、前記第1の電源の周波数に共振する共振回路又は共振素子であることを特徴とする試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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