説明

紡機におけるセパレータの支持構造

【課題】糸継ぎ作業時等にセパレータに衝撃荷重が作用しても、セパレータやセパレータの固定に関係している部品の変形、破損を防止する。
【解決手段】セパレータ20は、リングプレート11上に固定されたセパレータバー支持部材19に支持されるセパレータバー18に複数錘分ずつ固定されている。セパレータバー支持部材19は第1突起19cと第2突起19dとを備え、第1突起19cに設けられた当接部19eがセパレータバー18の前面上部に当接し、第2突起19dに設けられた当接部19fがセパレータバー18の後面に当接してセパレータバー18を後傾可能に支持する。セパレータバー18は外力が作用しない状態ではセパレータ20の自重により前面が当接部19eに当接し、後面が当接部19fに当接する正規の位置に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング精紡機、リング撚糸機等の紡機におけるセパレータの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リング精紡機、リング撚糸機等の紡機においては、フロントローラから送り出される糸は、ラペットに取り付けられたスネルワイヤにガイドされるとともに、スネルワイヤの導糸孔をバルーニング(バルーン)の中心として旋回しながらボビンに巻き取られる。そして、紡機には各錘毎に糸のバルーンを規制するバルーンコントロールリング(アンチノードリング)が設けられるとともに、糸切れ時に糸切れが他の錘に波及するのを防止するため各錘間にセパレータが設けられている。
【0003】
セパレータの固定方法としては、複数のセパレータが所定間隔でねじにより締め付け固定されたセパレータバーを、セパレータバーブラケットを介してリングプレートに固定する方法と、図8(a)に示すように、リングプレート51にセパレータ52の固定部52aをねじ(図示せず)で締め付け固定する方法とがある(例えば、特許文献1参照)。なお、セパレータバーを使用してセパレータを固定する方法をセパレータバー方式と称す。リングプレート51にはリング53を取り付ける平板状のプレート部51aと、セパレータ52やアンチノードリング54を取り付けるためプレート部51aと直角に上方に延びる垂直部51bとを備えている。
【0004】
従来のセパレータバー方式で使用されるセパレータバーブラケットは、図8(b)に示すように、セパレータバーブラケット55の上部に一対の嵌合溝56を有する。そして、セパレータバー57(二点鎖線で図示)を嵌合溝56に嵌合してセパレータバー57をセパレータバーブラケット55に固定する。なお、セパレータバーブラケット55をリングプレート(リングレール)に固定せずに、リングプレートを昇降させるリフティングブラケットに固定する場合もある。
【特許文献1】実公平7−45574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、セパレータバー方式の固定方法では、セパレータの固定状態がリジッドであるため、糸継ぎ作業時あるいはボビンを手作業でスピンドルから抜く作業を行う際等にセパレータに衝撃荷重が作用した場合、セパレータ、セパレータバー、セパレータバーブラケットが変形、破損する可能性がある。また、セパレータバーブラケットが金属製の場合は、リングプレートが変形、破損する可能性がある。
【0006】
一方、セパレータを直接リングプレートに固定する方法でも、セパレータの固定状態がリジッドであるため、セパレータに前記のような衝撃荷重が作用した場合に、セパレータが破損する可能性がある。
【0007】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、糸継ぎ作業時等にセパレータに衝撃荷重が作用しても、セパレータやセパレータの固定に関係している部品の変形、破損を防止することができる紡機におけるセパレータの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、リングプレートと同期して昇降可能に設けられた紡機におけるセパレータの支持構造である。そして、前記セパレータは外力により正規の位置から後傾可能に設けられ、前記セパレータの後方に前記セパレータの後傾を前記セパレータの重心位置が後傾の支点よりも前側になる範囲で規制する規制部材が設けられている。
【0009】
この発明では、セパレータに衝撃荷重が外力として作用すると、セパレータが正規の位置から後傾することにより衝撃が緩和され、従来技術と異なりセパレータやセパレータの固定に関係している部品の変形、破損を防止することができる。また、規制部材と当接することで後傾が前記セパレータの重心位置が後傾の支点よりも前側になる範囲に規制され、外力の作用が解除されると自重によりセパレータは正規の位置に復帰する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記セパレータは、リングプレート又はリングプレートと同期して昇降可能なリフティングブラケットに固定されたセパレータバー支持部材に支持されてリングプレートの長手方向に沿って延びるセパレータバーに複数錘分ずつ固定され、前記セパレータバーと共に後傾可能に設けられている。この発明では、リングプレートにセパレータを直接固定する構成に比較して、セパレータの構成が簡単になるとともに、組み付け作業が容易になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記セパレータバーは、板状に形成されるとともに少なくとも幅方向の下端が前記セパレータバー支持部材に当接する状態でセパレータバー支持部材に支持されている。前記セパレータバー支持部材は、前記セパレータバーの厚さ方向前面に当接可能でセパレータバーの厚さ方向に突設された当接部を有する第1突起と、前記セパレータバーの厚さ方向後面に当接する当接部を有する第2突起とを備え、前記第1突起は前記第2突起より長く、かつ前記第1突起の当接部は前記第2突起の当接部より高い位置に設けられている。前記セパレータバーは、外力が作用しない状態では該セパレータバーに固定されたセパレータの自重により前面が第1突起の当接部に当接し、後面が第2突起の当接部に当接する正規の位置に保持されている。
【0012】
この発明では、セパレータバーは、セパレータの自重により前側に回動付勢されるモーメントが生じた状態でセパレータバー支持部材に支持されており、セパレータに外力が作用しない状態では、第1突起の当接部と第2突起の当接部とに当接することで正規の位置に保持されている。セパレータに前記回動付勢のモーメントに打ち勝つ外力が作用すると、セパレータバーが規制部材と当接する位置まで第2突起の当接部を支点として、セパレータと共に後傾される。そして、セパレータに外力が作用しなくなると、セパレータの自重によりセパレータがセパレータバーと共に正規の位置に復帰する。また、セパレータバー支持部材の第2突起が第1突起より短く形成されているため、セパレータバーをセパレータバー支持部材に取り付ける作業が、従来技術の嵌合溝への装着作業より簡単になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記セパレータバー支持部材は、前記第1突起が前側に2個、後側に1個設けられている。この発明では、2個の第1突起をセパレータバーの左右方向の位置決め部として利用することができる。例えば、セパレータのセパレータバーへの固定部を両第1突起の間に遊嵌されるように形成すれば、専用の位置決め用部材を設けずに、セパレータバーの左右方向の位置決めを簡単に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記セパレータバーは、複数の前記セパレータバー支持部材に支持されている。この発明では、セパレータバーを1個のセパレータバー支持部材で支持する構成に比較してセパレータバー支持部材の固定位置やセパレータバーのセパレータバー支持部材に対する支持位置の自由度が高くなる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記規制部材は、リングプレートより後ろ側に存在する紡機の構造部材である。この発明では、セパレータが外力の作用により後傾した際、紡機の構造部材であるバルーンコントロールリング取り付け用のアングル材やラペットアングル等により後傾が規制されるため、後傾を規制するための専用の規制部材を取り付ける必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、糸継ぎ作業時等にセパレータに衝撃荷重が作用しても、セパレータやセパレータの固定に関係している部品の変形、破損を防止することができる紡機におけるセパレータの支持構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、セパレータバー方式でセパレータを支持するリング精紡機に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、リング精紡機を構成するリングプレート(リングレール)11は、リフティング機構(図示せず)により昇降されるピラー12の上部にブラケット13を介して固定されている。トラベラ14を案内するリング15は、スピンドルレール16に支持された各スピンドル17のピッチと同じピッチでリングプレート11に形成された嵌合孔に固定されている。
【0018】
図1及び図2(a)に示すように、リングプレート11上の後寄りには、リングプレート11の長手方向に沿って延びるセパレータバー18を支持するセパレータバー支持部材19がねじにより固定されている。図2(a)に示すように、セパレータバー18には複数のセパレータ20が隣り合うリング15の間に位置する状態で、固定部20aがセパレータバー18の上部を挟持した状態でねじ21(図2(b),(c)に図示)により固定されている。即ち、セパレータ20はリングプレート11と同期して昇降可能に設けられている。セパレータバー18は、例えば、12個又は24個のセパレータ20が固定される長さの板状に形成されるとともに、複数のセパレータバー支持部材19で支持されるようになっている。セパレータバー18は、例えば、12個のセパレータ20が固定される長さの場合には2個のセパレータバー支持部材19で支持され、24個のセパレータ20が固定される長さの場合には3個のセパレータバー支持部材19で支持される。
【0019】
図3に示すように、セパレータバー支持部材19は、支柱部19aと、支柱部19aの上端に設けられた支持部19bと、支持部19bの前側(スピンドル17側、図3の手前側)に設けられた第1突起19cと、支持部19bの後側(反スピンドル17側、図3の奥側)に設けられた第2突起19dとを備えている。第1突起19cは、セパレータ20のセパレータバー18への固定部20aと遊嵌可能な間隔で2個設けられている。ここで、「遊嵌可能」とは、セパレータバー18が、その長手方向への移動は公差内で可能で、前後方向へは傾動可能な状態を意味する。また、2個の第1突起19cは、図2(b)及び図3に示すように、対向する面の間隔が中間部から下部に向かうに従って狭くなるように形成されている。また、図2(b)に示すように、固定部20aの第1突起19cに遊嵌する部分の正面形状が、下部両側に下端に向かって互いに近づくように形成された斜面を有する形状である。第2突起19dは、2個の第1突起19cの間と対応する位置に1個設けられている。セパレータバー支持部材19は全体が樹脂(例えば、ポリアセタール)で形成されている。
【0020】
図4(a),(b)に示すように、セパレータバー18は断面矩形状に形成され、第1突起19cは、セパレータバー18の厚さ方向前面(図4の左側面)に当接可能でセパレータバー18の厚さ方向(図4の左右方向)に突設された当接部19eを有する。第2突起19dは、セパレータバー18の厚さ方向後面に当接する当接部19fを有する。第1突起19cは第2突起19dより長く形成され、かつ第1突起19cの当接部19eは第2突起19dの当接部19fより高い位置に設けられている。そして、セパレータ20が正規の位置に配置された状態では、セパレータバー18は、図4(a)に実線で示すように、厚さ方向前面が第1突起19cの当接部19eに当接し、かつ厚さ方向後面が第2突起19dの当接部19fに当接する状態に保持される。この状態において、セパレータバー18の当接部19eと当接する位置より下方におけるセパレータバー18の前側には空間Sが存在し、かつ第1突起19cの当接部19eとは反対側においてはセパレータバー18を規制する部材が存在しないため、セパレータバー18は後傾が可能となっている。即ち、セパレータ20に対してセパレータ20を後傾させる力が作用すると、セパレータ20はセパレータバー18と共に円滑に後傾可能となる。
【0021】
図1に示すように、セパレータバー18には複数のセパレータ20が、本体部20bがセパレータバー18の前方に突出するように、かつセパレータ20が正規の位置から後傾するとともにアングル材24に当接して後傾が規制された状態で、セパレータ20の重心位置G(図4(a)に図示)が後傾の際の支点(この実施形態では第2突起19dの上部前端部)より前側に位置するように固定されている。アングル材24によりセパレータ20の後傾範囲が規制される。そのため、セパレータ20に外力が作用していない状態では、セパレータ20の自重により、セパレータバー18がセパレータ20と共に図4(a)の反時計回り方向へ回動付勢された状態に保持されている。そして、図4(a)に実線で示すように、セパレータバー18の厚さ方向前面上側が当接部19eに当接し、厚さ方向後面下側が当接部19fに当接し、幅方向の下端が支持部19bに当接する正規の位置に保持されている。
【0022】
図1に示すように、リングプレート11の上方には、各リング15に対応してバルーンコントロールリング22がリングプレート11と同期して昇降可能に設けられている。バルーンコントロールリング22は、リングプレート11が支持されたピラー12と独立して、かつ同期して昇降されるピラー23に固定されたアングル材24に支持されている。アングル材24は、セパレータ20に外力が作用して、セパレータ20が正規の位置から後傾した際に、セパレータ20と係合してその後傾を規制する規制部材の役割を果たす。
【0023】
図1に示すように、バルーンコントロールリング22の上方には、各リング15に対応してスネルワイヤ25がリングプレート11と同期して昇降可能に設けられている。スネルワイヤ25は、ラペット26に固定され、ラペット26は前記ピラー12,23と独立して、かつ同期して昇降されるピラー27に固定されたラペットアングル28に支持されている。
【0024】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
リング精紡機の運転が開始されると、スピンドル17とともにボビンBが回転される。また、リングプレート11、バルーンコントロールリング22及びスネルワイヤ25はリフティング装置の作用により、互いに独立して、かつ同期した状態で昇降を繰り返しながら次第に巻き終わり位置まで上昇される。そして、図示しないドラフトパートから送り出された糸Yはスネルワイヤ25及びトラベラ14を経てボビンBに巻き取られて管糸が形成される。
【0025】
セパレータ20は、糸切れ時に糸切れが他の錘に波及するのを防止する。セパレータ20は、セパレータバー18を介してセパレータバー支持部材19に支持されており、外力が作用しない状態では、図4(a)に実線で示すように、セパレータバー18がセパレータバー支持部材19の第1突起19c及び第2突起19dと当接してセパレータ20が上下方向に延びる正規の位置に保持されている。
【0026】
リング精紡機の運転中、糸切れが発生すると、作業者により糸継ぎ作業が行われる。その際、作業者の不注意によりセパレータ20に作業者の手や糸継ぎ作業用具が衝突し、セパレータ20に後方あるいは斜め後方へ向かう衝撃荷重が作用する場合がある。また、糸の巻き取りが進んで満管になると玉揚げが行われるが、玉揚げ作業を手作業で行う場合も、作業者の不注意によりセパレータ20に作業者の手が衝突し、セパレータ20に後方あるいは斜め後方へ向かう衝撃荷重が作用する場合がある。
【0027】
セパレータ20に前記の衝撃荷重が作用すると、セパレータ20を介してセパレータバー18に図4(a)における時計回り方向の力が加わる。その力がセパレータ20の自重による反時計回り方向への付勢力より大きいと、セパレータバー18がセパレータ20と共に第2突起19dの上部を支点として後方へ傾動する。そして、図4(a)に鎖線で示すように、セパレータ20がバルーンコントロールリング22(図4では図示略)のアングル材24に当接した時点で、後傾が規制される。そして、セパレータ20に作用する外力が無くなると、セパレータ20の自重により、セパレータバー18は図4(a)の反時計回り方向へセパレータ20と共に回動して、第1突起19c及び第2突起19dと当接する正規の位置に復帰する。
【0028】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)リングプレート11と同期して昇降可能に設けられたセパレータ20は、外力により正規の位置から後傾可能に設けられ、セパレータ20の後方に設けられた規制部材(アングル材24)により後傾がセパレータ20の重心位置Gが後傾の支点よりも前側になる範囲に規制され、外力の作用が無くなると自重でセパレータ20が元の位置(正規の位置)に復帰可能に構成されている。したがって、セパレータ20に衝撃荷重が外力として作用すると、セパレータ20が後傾することにより衝撃が緩和され、従来技術と異なりセパレータ20やセパレータ20の固定に関係している部品(セパレータバー18、セパレータバー支持部材19)の変形、破損を防止することができる。また、規制部材(アングル材24)と当接することで後傾がセパレータ20の重心位置Gが後傾の支点よりも前側になる範囲に規制され、外力の作用が解除されると自重によりセパレータ20は元の位置に復帰するため、後傾したセパレータ20を正規の位置に移動させる別の手段を設ける必要がない。
【0029】
(2)セパレータ20は、リングプレート11に固定されたセパレータバー支持部材19に支持されてリングプレート11の長手方向に沿って延びるセパレータバー18に複数錘分ずつ固定され、セパレータバー18と共に後傾可能に設けられている。したがって、リングプレート11にセパレータ20を一つずつ後傾可能、かつ正規の位置に復帰可能に固定する構成に比較して、セパレータ20の構成が簡単になるとともに、組み付け作業が容易になる。
【0030】
(3)セパレータバー18は、板状に形成されるとともに少なくとも幅方向の下端がセパレータバー支持部材19に当接する状態でセパレータバー支持部材19に支持されている。セパレータバー支持部材19は、セパレータバー18の厚さ方向前面に当接可能でセパレータバー18の厚さ方向に突設された当接部19eを有する第1突起19cと、セパレータバー18の厚さ方向後面に当接する当接部19fを有する第2突起19dとを備えている。第1突起19cは第2突起19dより長く、かつ第1突起19cの当接部19eは第2突起19dの当接部19fより高い位置に設けられている。セパレータバー18は、外力が作用しない状態ではセパレータバー18に固定されたセパレータ20の自重により前面が第1突起19cの当接部19eに当接し、後面が第2突起19dの当接部19fに当接する正規の位置に保持されている。したがって、セパレータバー18をセパレータバー支持部材19に取り付ける作業が、従来技術のような嵌合溝への装着作業より簡単になる。
【0031】
(4)セパレータバー支持部材19は、第1突起19cが前側に2個、第2突起19dが後側に1個設けられている。したがって、2個の第1突起19cをセパレータバー18の左右方向の位置決め部として利用することができる。そして、セパレータ20のセパレータバー18への固定部20aが両第1突起19cの間に遊嵌されるように形成されているため、専用の位置決め用部材を設けずに、セパレータバー18の左右方向の位置決めを簡単に行うことができる。
【0032】
(5)固定部20aの第1突起19cに遊嵌する部分の正面形状が、下部両側に下端に向かって互いに近づくように形成された斜面を有する形状である。したがって、固定部20aが両第1突起19cに係合することで所定位置に遊嵌される。セパレータ20の位置は、バルーンコントロールリング22やスネルワイヤ25の位置の精度に比較してラフでよいため、固定部20aがセパレータバー18の長手方向に沿って両第1突起19cの間でがたついても支障はない。
【0033】
(6)セパレータバー18は、複数のセパレータバー支持部材19に支持されている。したがって、セパレータバー18を1個のセパレータバー支持部材19で支持する構成に比較してセパレータバー支持部材19の固定位置やセパレータバー18のセパレータバー支持部材19に対する支持位置の自由度が高くなる。
【0034】
(7)リングプレート11より後ろ側に存在する紡機の構造部材であるバルーンコントロールリング取り付け用のアングル材24が、セパレータ20が所定位置より後側へ後傾するのを規制する規制部材として機能する。したがって、セパレータ20が外力の作用により後傾した際、後傾を規制するための専用の規制部材を取り付ける必要がない。
【0035】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ セパレータバー支持部材19は、第1突起19cが2個で、第2突起19dが1個の構成に限らない。例えば、第1突起19c及び第2突起19dを共に2個設けたり、第1突起19c及び第2突起19dを共に1個設けたりしてもよい。また、第1突起19c及び第2突起19dを3個以上設けてもよい。第1突起19cを1個設ける場合、図5に示すように、2個のセパレータバー支持部材19として、一方のセパレータバー支持部材19は、前記2個の第1突起19c有するセパレータバー支持部材19から正面視右側の第1突起19cを省略し、他方のセパレータバー支持部材19は、正面視左側の第1突起19cを省略した形状とする。この場合も、前記実施形態と同じ構造のセパレータ20を使用して、セパレータバー支持部材19の第1突起19cをセパレータバー18の位置決め用に使用することができる。
【0036】
○ セパレータ20をセパレータバー18の長手方向の位置決めに利用する場合、固定部20aを利用する代わりに本体部20bを利用するようにしてもよい。1個のセパレータバー支持部材19で位置決めを行う場合には、2個の第1突起19cの間隔を本体部20bの厚さに対応した間隔にする。
【0037】
○ セパレータバー18の長手方向の位置決めは、セパレータ20を利用する方法に限らず、例えば、セパレータバー18にセパレータバー支持部材19と係合可能な位置決め部を設けたり、セパレータバー18に設けた位置決め部と係合する位置決め部材を設けたりしてもよい。
【0038】
○ セパレータバーを後傾可能に支持する構成は、第1突起19c及び第2突起19dを備えるとともに、第2突起19dに設けられた当接部19fを支点としてセパレータバー18が傾動するセパレータバー支持部材19を使用する構成に限らない。例えば、図6(a)に示すように、セパレータバー18を従来技術と同様に嵌合溝30を有するセパレータバー支持部材31で支持し、セパレータバー支持部材31の支柱31aを上下に分割して支軸32により傾動可能な構造とする。また、セパレータ20には正規の位置に配置された状態で下部にリングプレート11の上面と当接する当接部20cを設ける。この場合、セパレータ20に外力が作用しない状態では、セパレータ20は自重により当接部20cがリングプレート11の上面に当接した正規の位置に保持される。そして、セパレータ20の自重による付勢力より大きな外力が付勢力に抗するように作用すると、セパレータバー支持部材31が支軸32を中心に回動されて、セパレータ20がセパレータバー18と共にアングル材24と当接する位置まで後傾する。外力が解除されると、セパレータ20はセパレータバー18と共に自重の作用で正規の位置に復帰する。
【0039】
○ 図6(b)に示すように、嵌合溝30を有するセパレータバー支持部材31において、支柱31aを2分割して支軸32で回動可能に連結する構成に代えて、支柱31aの一部を板ばね(弾性部材)33で形成してもよい。この場合、セパレータ20に前方から外力が作用すると、その力がセパレータバー18を介してセパレータバー支持部材31の支柱31aに作用し、板ばね33の部分が後方に撓み、セパレータ20の後部がアングル材24に当接する位置までセパレータ20が後傾する。そして、外力の作用が解除されると、セパレータ20は自重によりセパレータバー18と共に正規の位置に復帰する。なお、支柱31a全体を板ばね33で形成してもよい。
【0040】
○ セパレータバー方式において、セパレータバー支持部材19,31をリングプレート11上に固定する代わりに、リングプレート11と同期して昇降可能なリフティングブラケットに固定してもよい。リフティングブラケットとしてはリングプレート11を支持するリフティングブラケットを共用してもよい。
【0041】
○ セパレータバー方式において、1個(1本)のセパレータバー18を支持するセパレータバー支持部材19,31の数は複数に限らず1個でもよい。しかし、1個の場合はセパレータバー18をセパレータバー支持部材19,31に対してバランス良く支持させる必要がある。したがって、セパレータバー支持部材19,31の数を複数にした方が、セパレータバー支持部材19,31の配置位置の自由度が高くなる。
【0042】
○ セパレータバー18は、断面矩形状の帯状の平板に限らず、他の断面形状(例えば扁平な楕円形状や略半円状)の帯状の平板を使用したり、アングル材を使用したりしてもよい。
【0043】
○ 第1突起19cの当接部19e及び第2突起19dの当接部19fは、セパレータバー18が正規の位置に配置された状態でセパレータバー18に面接触する形状に限らない。例えば、当接部19e,19fを、セパレータバー18が正規の位置に配置された状態と対向する側に凸となる円弧面がセパレータバー18に沿って延びる形状に形成したり、セパレータバー18に沿って延びる三角柱状に形成したりしてもよい。また、第1突起19cの当接部19eより下側の形状は、セパレータバー18が当接部19eと当接する状態において、セパレータバー18の下部前側にセパレータバー18の後傾を許容する凹部が存在すれば自由である。
【0044】
○ セパレータ20は外力により後傾可能に設けられ、セパレータ20の後方にセパレータ20の後傾を規制する規制部材が設けられ、規制部材により後傾が規制された状態で外力の作用が無くなると自重で元の位置に復帰可能に構成されていればよく、セパレータ20の支持方法は、セパレータバー方式に限らない。例えば、図7に示すように、クランク曲げ型のリングプレート11を使用し、リングプレート11の後部側が上方へ直角に折り曲げられて形成された垂直部11aにセパレータ20を固定する構成としてもよい。セパレータ20は垂直部11aへの固定部20aと本体部20bとが板ばね33で連結されている。セパレータ20は当接部20cを備え、正規の位置では当接部20cがリングプレート11の上面に当接する構成が好ましい。この場合、セパレータ20に前方から外力が作用すると、板ばね33が後方に撓み、セパレータ20(本体部20b)の後部がアングル材24に当接する位置までセパレータ20が後傾する。そして、外力の作用が解除されると、セパレータ20は自重により正規の位置に復帰する。しかし、リングプレート11として、後部側が上方へ直角に折り曲げられて形成された垂直部11aを備えている場合は、リングプレート11上の垂直部11aの基端と対応する箇所に風綿が溜まり易くなるため、セパレータバー方式の方が好ましい。
【0045】
○ リングプレート11の後傾を規制する規制部材は、バルーンコントロールリング22用のアングル材24に限らず、リングプレート11より後ろ側に存在する他の構造部材、例えばラペットアングル28を用いてもよい。ラペットアングル28を規制部材に用いる場合は、セパレータ20の全体の長さを長くするか、後部にラペットアングル28と当接可能な部分を突設する。
【0046】
○ リングプレート11の後傾を規制する規制部材としてリングプレート11より後ろ側に存在する紡機の構造部材を利用せずに、専用の規制部材を設けてもよい。例えば、ラペットアングル28用のピラー27に跨るように規制部材としてバーあるいはアングル材を設ける。この場合、規制部材の固定位置によってはセパレータ20を長くせずに、セパレータ20の後傾を規制するように規制部材を設けることができる。
【0047】
○ セパレータバー支持部材19,31は樹脂製に限らず、金属製あるいはセラミック製としてもよい。しかし、樹脂製の方が軽量化に寄与する。
○ バルーンコントロールリング22のアングル材24をリングプレート11と独立させずに、同期して昇降させる構成としてもよい。例えば、ピラー12の上部を二股に分岐させて、分岐部の一方でブラケット13を支持し、他方でアングル材24を支持する構成としてもよい。
【0048】
○ リング精紡機に限らずリング撚糸機に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態のセパレータを備えたリング精紡機の要部概略断面図。
【図2】(a)はセパレータ、セパレータバー等の支持状態を示す要部概略斜視図、(b)はセパレータのセパレータバー支持部材への支持状態を示す正面図、(c)その平面図。
【図3】セパレータバー支持部材の斜視図。
【図4】(a)は作用を示す模式側面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【図5】別の実施形態のセパレータバーの支持状態を示す模式斜視図。
【図6】(a),(b)は別の実施形態の模式側面図。
【図7】別の実施形態のセパレータの模式側面図。
【図8】(a)は従来技術の概略斜視図、(b)はセパレータバー方式の従来技術の概略斜視図。
【符号の説明】
【0050】
G…重心位置、11…リングプレート、18…セパレータバー、19,31…セパレータバー支持部材、19c…第1突起、19d…第2突起、19e,19f…当接部、20…セパレータ、24…規制部材として機能するアングル材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングプレートと同期して昇降可能に設けられたセパレータを備えた紡機におけるセパレータの支持構造であって、前記セパレータは外力により正規の位置から後傾可能に設けられ、前記セパレータの後方に前記セパレータの後傾を前記セパレータの重心位置が後傾の支点よりも前側になる範囲で規制する規制部材が設けられていることを特徴とする紡機におけるセパレータの支持構造。
【請求項2】
前記セパレータは、リングプレート又はリングプレートと同期して昇降可能なリフティングブラケットに固定されたセパレータバー支持部材に支持されてリングプレートの長手方向に沿って延びるセパレータバーに複数錘分ずつ固定され、前記セパレータバーと共に後傾可能に設けられている請求項1に記載の紡機におけるセパレータの支持構造。
【請求項3】
前記セパレータバーは、板状に形成されるとともに少なくとも幅方向の下端が前記セパレータバー支持部材に当接する状態でセパレータバー支持部材に支持され、前記セパレータバー支持部材は、前記セパレータバーの厚さ方向前面に当接可能でセパレータバーの厚さ方向に突設された当接部を有する第1突起と、前記セパレータバーの厚さ方向後面に当接する当接部を有する第2突起とを備え、前記第1突起は前記第2突起より長く、かつ前記第1突起の当接部は前記第2突起の当接部より高い位置に設けられており、前記セパレータバーは、外力が作用しない状態では該セパレータバーに固定されたセパレータの自重により前面が前記第1突起の当接部に当接し、後面が前記第2突起の当接部に当接する正規の位置に保持されている請求項2に記載の紡機におけるセパレータの支持構造。
【請求項4】
前記セパレータバー支持部材は、前記第1突起が前側に2個、前記第2突起が後側に1個設けられている請求項3に記載の紡機におけるセパレータの支持構造。
【請求項5】
前記セパレータバーは、複数の前記セパレータバー支持部材に支持されている請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の紡機におけるセパレータの支持構造。
【請求項6】
前記規制部材は、リングプレートより後ろ側に存在する紡機の構造部材である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の紡機におけるセパレータの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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