説明

紡機におけるドラフト装置

【課題】案内機構と下流側のドラフトローラ対との間における繊維束からの繊維の離脱及び離脱した繊維の案内機構への堆積を抑制することが可能な紡機におけるドラフト装置の提供にある。
【解決手段】3組のドラフトローラ対を有し、フロントローラ対とミドルローラ対との間に、繊維束Fの移送方向を変化させる案内機構が設けられた紡機におけるドラフト装置において、案内機構が、フロントトップローラ14に対向して配置されたエプロン案内部材27と、エプロン案内部材27とフロントトップローラ14間に巻き掛けられたエプロン29とを有し、エプロン29が、エプロン案内部材27と下流側のフロントローラ対の把持点(導入点)Q1との間で繊維束Fに接触し、移送経路の一部を形成するように配置されている。すなわち、エプロン案内部材27の周面の一部及び接触開始点R1が、送出点S1と把持点Q1とを結ぶ直線L1より下方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紡機におけるドラフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡機におけるドラフト装置の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された圧縮装置を有する紡績機が存在する。
特許文献1では、紡績機におけるドラフト機構が開示されており、ドラフト機構は、下流側の走出シリンダと上ローラと、走出シリンダおよび上ローラに対して上流側に設けられた一対のベルトとを備えている。そして、走出シリンダと両ベルト間における走出シリンダに近接した位置に棒状の案内エレメントが配置されている。
案内エレメントによって、両ベルト間から送出される繊維束がわずかに変向(移送方向が変化)し、これによって繊維束の繊維に張力が生じた状態で、繊維束の案内が行われ、特に短い繊維が繊維束から遊離することが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−505703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示された紡績機では、案内機構としての案内エレメントとフロントローラ対(走出シリンダおよび上ローラ)との間に隙間があるため、この隙間において繊維の離脱が発生する恐れがある。また。棒状の案内エレメントに繊維の付着、堆積が発生し、糸むら及び糸切れが発生する問題がある。さらに、特許文献1で開示された紡績機では、繊維種類、温度や湿度の調整によっては、繊維の案内エレメントへの乗り上げ、繊維詰まりが発生し、案内エレメントを微調整する必要が生じる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、案内機構と下流側のドラフトローラ対との間における繊維束からの繊維の離脱及び離脱した繊維の案内機構への堆積を抑制することが可能な紡機におけるドラフト装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ボトムローラとトップローラで対をなす2組のドラフトローラ対が繊維束の移送経路にて上流側から下流側へ順にそれぞれ配置され、上流側の前記ドラフトローラ対と下流側の前記ドラフトローラ対との間に、上流側の前記ドラフトローラ対から送出される前記繊維束と接触して移送方向を変化させる案内機構が設けられた紡機におけるドラフト装置において、前記案内機構は、前記下流側のドラフトローラ対に対向して横架されたエプロン案内部材と、前記下流側のドラフトローラ対におけるボトムローラとトップローラのいずれか一方と前記エプロン案内部材とに巻き掛けられて前記繊維束と接触するエプロンとを有し、前記エプロンが、前記繊維束との接触を開始する接触開始点と前記下流側のドラフトローラ対の把持点との間で前記繊維束に接触し、前記移送経路の一部を形成することを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、案内機構が下流側のドラフトローラ対に対向して横架されたエプロン案内部材と、下流側のドラフトローラ対におけるボトムローラとトップローラのいずれか一方とエプロン案内部材に巻き掛けられたエプロンとを有しているので、エプロン案内部材及びエプロンによって、繊維束の移送方向が変化される。また、エプロンが、繊維束との接触を開始する接触開始点と下流側のドラフトローラ対の把持点との間で繊維束に接触し、移送経路の一部を形成するので、上記移送方向が変化された繊維束は、接触開始点と下流側のドラフトローラ対の把持点との間でエプロンと接触しつつ下流側のドラフトローラ対側に移送される。この間繊維束にはエプロン側から圧縮力が加わり、繊維束からの繊維の離脱を抑制することが可能である。また、エプロンは下流側のドラフトローラ対のいずれか一方と共に走行するため、エプロン又はエプロン案内部材への離脱した繊維の付着及び堆積を抑制することが可能である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の紡機におけるドラフト装置において、前記エプロンは、前記下流側のドラフトローラ対の前記トップローラに巻き掛けられ、前記エプロンの接触開始点が、前記下流側のドラフトローラ対の導入点と前記上流側のドラフトローラ対の送出点とを結ぶ直線より下方に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、上流側のドラフトローラ対の送出点から下流側のドラフトローラ対の導入点の間を移送される繊維束は、エプロン案内部材に巻き掛けられたエプロンにより移送方向が変化し下方に屈曲しつつエプロンに接触した状態で移送される。なお、本明細書において、ドラフトローラ対の送出点とは、ドラフトローラ対による繊維束把持が解放される点を指し、ドラフトローラ対がエプロンローラ対である場合にはエプロン対による繊維束把持部分の最後端が送出点となる。ドラフトローラ対の導入点とは、ドラフトローラ対による繊維束把持が開始される点を指し、ドラフトローラ対がエプロンローラ対である場合にはエプロン対による繊維束把持部分の最前端が送出点となる。ドラフトローラ対がエプロンローラ対でない場合は、ドラフトローラ対の把持点が導入点と送出点とを兼ねる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の紡機におけるドラフト装置において、前記エプロンは、前記下流側のドラフトローラ対の前記ボトムローラに巻き掛けられ、前記エプロンの接触開始点が、前記下流側のドラフトローラ対の導入点と前記上流側のドラフトローラ対の送出点とを結ぶ直線より上方に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、上流側のドラフトローラ対の送出点から下流側のドラフトローラ対の導入点の間を移送される繊維束は、エプロン案内部材に巻き掛けられたエプロンにより移送方向が変化し上方に屈曲しつつエプロンに接触した状態で移送される。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置において、前記下流側のドラフトローラ対を前記移送経路の最も下流側に配置されたフロントローラ対とすることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、フロントローラ対とその上流側のミドルローラ対間の繊維束に対して繊維束からの繊維の離脱を防止することが可能である。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置において、前記下流側のドラフトローラ対を前記移送経路の最も下流側に配置されたフロントローラ対と前記移送経路の最も上流側に配置されたバックローラ対との間に配置されたミドルローラ対とすることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、ミドルローラ対とその上流側のバックローラ対間の繊維束に対して請求項1と同等の作用効果を及ぼすことが可能である。また、ミドルローラ対にエプロンが巻き掛けられている構成のものにおいては、既存のエプロンを利用可能なので部品点数の増加を抑制することが可能である。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置において、前記エプロン案内部材と前記エプロンを挟んで対向する位置にガイドを設け、前記エプロンと前記ガイド間で前記繊維束を把持することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、エプロン案内部材とエプロンを挟んで対向する位置にガイドを設け、エプロンとガイド間で繊維束を把持するので、繊維束からの繊維の離脱を一層防止することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エプロン案内部材と下流側のドラフトローラ対のいずれか一方に繊維束と接触するエプロンが巻き掛けられているので、案内機構と下流側のドラフトローラ対との間における繊維束からの繊維の離脱及び離脱した繊維の案内機構への堆積を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の部分側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の部分平面図である。
【図3】第1の実施形態におけるエプロン案内部材、エプロン及び繊維束の位置関係を説明するための要部拡大側面図である。
【図4】第2の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の部分側面図である。
【図5】第2の実施形態におけるエプロン案内部材、エプロン及び繊維束の位置関係を説明するための要部拡大側面図である。
【図6】第3の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の部分側面図である。
【図7】第3の実施形態におけるエプロン案内部材、エプロン及び繊維束の位置関係を説明するための要部拡大側面図である。
【図8】その他の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置(以下「ドラフト装置」と表記する)を図1〜図3に基づいて説明する。第1の実施形態は、本発明を精紡機の2錘一体型のドラフト装置に具体化したものである。
図1に示すように、ドラフト装置10は、複数のドラフトローラ対を有し、精紡機の正面側(図1では左側)から、フロントローラ対11、ミドルローラ対12及び図示しないバックローラ対の順に配設された3線式の構成となっている。なお、図1において、図面の左右方向が機台の前後方向に相当し、左方が前方向、右方が後方向である。各ドラフトローラ対は上下一対のローラを有し、下側のローラがボトムローラ、上側のローラがトップローラである。すなわち、フロントローラ対11はフロントボトムローラ13とフロントトップローラ14を有し、ミドルローラ対12はミドルボトムローラ15とミドルトップローラ16を有し、バックローラ対はバックボトムローラとバックトップローラを有している。なお、本実施形態では、フロントローラ対11が2組のドラフトローラ対における下流側のドラフトローラ対に相当し、ミドルローラ対12が2組のドラフトローラ対における上流側のドラフトローラ対に相当する。また、ミドルローラ対12は後述するエプロン19,26が巻き掛けられたエプロンローラ対として構成されている。
【0021】
図1に示すように、フロントボトムローラ13は機台を構成するローラスタンド17に回転自在に支持され、ミドルボトムローラ15はローラスタンド17に取り付けられた支持ブラケット18を介して回転自在に支持されている。フロントボトムローラ13及びミドルボトムローラ15は複数錘共通となる軸方向の長さを有し、フロントボトムローラ13及びミドルボトムローラ15の軸心は互いに平行であり、これらの軸心は機台の長手方向にそれぞれ沿っている。なお、図2において、図面の左右方向が機台の長手方向に相当し、これと直角な図面の上下方向が機台の前後方向(下方が前方向、上方が後方向)に相当する。
ミドルボトムローラ15には、エプロン19が巻き掛けられ、エプロン19はミドルボトムローラ15と、第1のボトムテンサーバー20と、第2のボトムテンサーバー21とに巻き掛けられている。ボトムテンサーバー20、21は、複数錘共通となる長さを有し、機台の長手方向と平行に配設されている。
【0022】
ボトムローラの上方にはウェイティングアーム22が設けられ、ウェイティングアーム22は、本体フレーム22Bとレバー22Aとを備えている。本体フレーム22Bには、支持アーム23、24が下方に突出して設けられている。支持アーム23、24の先端にはU字型の溝がそれぞれ形成されている。支持アーム23の溝にフロントトップローラ14の支軸14Aの中央が回転自在に支持され、支軸14Aの両端にはフロントトップローラ14のローラ部分が一体回転可能に支持されている。
支持アーム24の溝にミドルトップローラ16の支軸16Aの中央が回転自在に支持され、支軸16Aの両端にはミドルトップローラ16のローラ部分が一体回転可能に支持されている。なお、図2に示すように、フロントトップローラ14及びミドルトップローラ16は、2錘毎に1個の割合で設けられている。
【0023】
ウェイティングアーム22のレバー22Aは、加圧位置と解放位置とに回動可能に配設されている。レバー22Aがウェイティングアーム22の本体フレーム22Bと当接する加圧位置に配置された状態(図1で示す状態)では、ウェイティングアーム22に支持された各トップローラ14、16をそれぞれ対応するボトムローラ13、15側に押圧する加圧位置(紡出位置)にロック状態で保持される。また、レバー22Aが図1で示す状態から図示しない上方の解放位置に回動された状態では、前記ロック状態が解除されるようになっている。
【0024】
支軸16Aにはエプロンクレードル25が支承され、ミドルトップローラ16とエプロンクレードル25とに長手方向に間隔をあけて配置された一対のエプロン26が巻き掛けられている。エプロンクレードル25は、クレードル本体25Aと、円弧部25Bと、板バネ25Cと、エプロンガイド25Dとを備えている。クレードル本体25Aは略T字状に形成されており、円弧部25Bはクレードル本体25Aの基端寄りに形成され、支軸16Aの外周面に当接する。板バネ25Cはクレードル本体25Aの中央部に固定され、円弧部25Bと反対側で支軸16Aに当接する。エプロンガイド25Dはクレードル本体25Aと別体に形成されてクレードル本体25Aの先端側に取り付けられている。エプロン26は、下方のエプロン19側に付勢されている。
【0025】
図1に示すように、フロントトップローラ14とミドルトップローラ16間には棒状のエプロン案内部材27が配置されている。エプロン案内部材27は、フロントトップローラ14に対向して横架され、エプロン案内部材27の長手方向とフロントトップローラ14の軸心方向とは互いに平行である。エプロン案内部材27は、エプロンガイド25D及びボトムテンサーバー20に近接する位置に配置されている。また、エプロン案内部材27は、巻き掛けられる後述のエプロン29によりミドルローラ対12とフロントローラ対11間の繊維束Fの移送方向を変化させることが可能な位置に配置されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、エプロン案内部材27は、略円形の断面を有する丸棒が用いられ、エプロン案内部材27の長手方向における中央には、エプロン案内部材27を回転自在に支持する軸受ホルダー28が設けられ、軸受ホルダー28は支持アーム23に固定されている。軸受ホルダー28には図示しない軸受が取り付けられ、軸受を介してエプロン案内部材27は軸受ホルダー28に支持されている。なお、エプロン案内部材27の長手方向の長さは、フロントトップローラ14の長手方向の長さと同等に形成されている。
【0027】
フロントトップローラ14とエプロン案内部材27には一対のエプロン29が巻き掛けられ、ドラフト装置10の正面側には、エプロン29を張設するためのテンションローラ30が設けられている。テンションローラ30の長手方向における中央には、テンションローラ30を回転自在に支持する軸受ホルダー31が設けられ、軸受ホルダー31は支持アーム23に固定された支持体32にボルト33で締め付け固定されている。軸受ホルダー31には図示しない軸受が取り付けられ、軸受を介してテンションローラ30は軸受ホルダー31に支持されている。図2に示すように、軸受ホルダー31には長孔31Aが貫通形成されており、長孔31Aに挿通されたボルト33に対し軸受ホルダー31を前後方向(図2で上下方向)に移動させ位置調整を行うことにより、エプロン29を機能を果たすための適正な張力に設定可能となっている。なお、テンションローラ30の長手方向の長さは、フロントトップローラ14の長手方向の長さと同等に形成されている。
なお、本実施形態では、エプロン案内部材27及びエプロン29が案内機構に相当し、エプロン案内部材27及びエプロン29により繊維束Fの移送方向が変化されると共に、エプロン29が後述する接触開始点R1とフロントローラ対11の導入点としての把持点Q1との間で繊維束Fに接触するように配置されている。
【0028】
フロントボトムローラ13及びミドルボトムローラ15は図示しない駆動手段により駆動される。フロントボトムローラ13の回転がエプロン29に伝わり、ミドルボトムローラ15の回転がエプロン19、26に伝わる。フロントボトムローラ13及びミドルボトムローラ15が駆動される状態では、繊維束Fがミドルローラ対12側よりフロントローラ対11側へ移送されるが、ミドルボトムローラ15の回転速度に比してフロントボトムローラ13の回転速度は大きく設定されている。
【0029】
図3は、エプロン案内部材27、エプロン29及び繊維束Fとの位置関係を拡大して示したものである。図3においては、フロントトップローラ14の軸心P1とフロントボトムローラ13の軸心P2とを結ぶ線を中心線K1とし、この中心線K1とエプロン29の外周面及びフロントボトムローラ13の周面との交点をQ1とすると、交点Q1がフロントローラ対11の把持点(ニップ点)に相当する。なお、把持点とは、ドラフトローラ対が圧接されて繊維束Fがドラフトローラ対間に把持されるポイントのことを指す。また、エプロン案内部材27に巻き掛けられたエプロン29の外周面と繊維束Fとが接触を開始する点を接触開始点R1とし、エプロン19、26間に把持され移送してきた繊維束Fがエプロン案内部材27側へ送出される点を送出点S1とすると、接触開始点R1は繊維束Fとエプロン29が接触する接触域の最も上流側の点を指し、送出点S1はエプロン19、26の接触域の最下流側の点を指している。また、送出点S1及び接触開始点R1は繊維束Fの移送方向を変化させる点である。送出点S1と把持点(導入点)Q1を結ぶ直線をL1とすれば、エプロン案内部材27の周面の一部が、この直線L1より下方に配置されていると共に、エプロン29の接触開始点R1が直線L1より下方に配置されている。すなわち、接触開始点R1はエプロン29の最下位置に相当し、この接触開始点R1が直線L1より下方に配置されている。このため、エプロン19、26間にて把持され移送してきた繊維束Fは、エプロン29によって移送方向が変化し下方に屈曲しつつ移送されると共に、接触開始点R1〜把持点Q1間において、エプロン29の外周面と接触しつつフロントローラ対11側に移送される。
【0030】
次に、上記構成を有するドラフト装置10につき作用説明を行う。
ドラフト装置10は、レバー22Aが加圧位置に配置されると、各トップローラ14、16がそれぞれ対応するボトムローラ13、15側に押圧される状態に保持され、ミドルローラ対12側のエプロン26がエプロン19と当接すると共に、フロントローラ対11側のエプロン29はフロントボトムローラ13と当接する。
【0031】
その状態でドラフト装置10が駆動されると、ミドルボトムローラ15の回転によりエプロン19が回動される。エプロン26とエプロン19とは押接状態にあるのでミドルトップローラ16が回転されるとともにエプロン26はエプロン19と同期して回動される。ドラフト装置10の駆動により繊維束Fは移送経路の上流側から下流側へ移送されるが、繊維束Fははじめにバックローラ対を通り、次にミドルローラ対12を通過する。両エプロン19、26間に挟持された繊維束Fはミドルローラ対12側よりフロントローラ対11側へと移送される。
また、フロントボトムローラ13の回転によりエプロン29が回動され、エプロン29と同期してフロントトップローラ14及びエプロン案内部材27は回動される。なお、ミドルローラ対12側の回転速度に比してフロントローラ対11側の回転速度は大きく設定されているので、この間で繊維束Fは引き伸ばされる。
【0032】
ところで、図3に示すように、エプロン案内部材27はフロントトップローラ14に対向して配置されると共に、エプロン案内部材27の周面の一部及び接触開始点R1が、送出点S1と把持点Q1とを結ぶ直線L1より下方に配置されている。このためエプロン19、26間にて把持され移送された繊維束Fの移送方向は、送出点S1において下向きに変化し、接触開始点R1において下向きから上向きへ変化する。接触開始点R1〜把持点Q1間においては、繊維束Fはエプロン29の外周面と接触しつつフロントローラ対11側に移送され、エプロン29は繊維束Fの移送経路の一部を形成する。このように、繊維束Fは、下方に屈曲しつつ移送されることに加え、接触開始点R1〜把持点Q1間においては、繊維束Fにはエプロン29側から下方に押圧する押圧力(圧縮力)が作用する。このため、接触開始点R1〜把持点Q1間では、繊維束Fがエプロン29により押し付けられて高密度化され、繊維束Fからの繊維の離脱を抑制することが可能である。
また、エプロン29はフロントトップローラ14と共に走行するため、エプロン案内部材27及びエプロン29の表面への繊維の付着及び堆積が抑制される。
【0033】
この第1の実施形態に係るドラフト装置10によれば以下の効果を奏する。
(1)案内機構が、フロントトップローラ14に対向して配置されたエプロン案内部材27と、エプロン案内部材27とフロントトップローラ14間に巻き掛けられたエプロン29とで構成され、エプロン案内部材27の周面の一部及び接触開始点R1が、送出点S1と把持点Q1とを結ぶ直線L1より下方に配置されていることにより、エプロン19、26間に把持され移送してきた繊維束Fは、送出点S1において下向きに変化し、接触開始点R1において下向きから上向きへ変化する。また、接触開始点R1〜把持点Q1間においては、エプロン29の外周面と接触しつつフロントローラ対11側に移送される。従って、接触開始点R1〜把持点Q1間においては、繊維束Fには下方に押圧する押圧力(圧縮力)が作用し、繊維束Fからの繊維の離脱を抑制することが可能である。
(2)エプロン案内部材27及びフロントトップローラ14に巻き掛けられたエプロン29は、フロントトップローラ14と共に走行するため、接触開始点R1〜把持点Q1間において繊維束Fより離脱した繊維があったとしても、エプロン案内部材27及びエプロン29への繊維の付着又は堆積を抑制することが可能であり、装置の信頼性の向上を図れる。
(3)エプロン案内部材27は軸受ホルダー28に回転自在に支持されているので、エプロン案内部材27は巻き掛けられたエプロン29と同期して回転する。従って、エプロン案内部材27が固定されている場合と比較して、エプロン29の摺動摩耗を抑制することが可能であり、エプロン29の耐久性を向上可能である。
(4)テンションローラ30が軸受ホルダー31に回転自在に支持されると共に、軸受ホルダー31には長孔31Aが貫通形成されているので、長孔31Aに挿通されたボルト33に対し軸受ホルダー31を前後方向に移動させ位置調整を行うことにより、エプロン29を適正な張力に設定可能であり、エプロン29をフロントトップローラ14に同期して確実に回転させることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るドラフト装置40を図4及び図5に基づいて説明する。
この実施形態は、第1の実施形態におけるフロントトップローラ14に代えてミドルトップローラ16に対向してエプロン案内部材を配置しエプロン案内部材とミドルトップローラ16間にエプロン48を巻き掛けたものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0035】
図4に示すように、ミドルローラ対12の上流側には、バックローラ対41が配設され、バックローラ対41はバックボトムローラ42とバックトップローラ43を有している。バックボトムローラ42はローラスタンド17に取り付けられた支持ブラケット44を介して支持されている。ウェイティングアーム22の本体フレーム22Bには、支持アーム45が下方に突出して設けられている。支持アーム45の先端にはU字型の溝が形成されており、この溝にバックトップローラ43の支軸43Aの中央が回転自在に支持され、支軸43Aの両端にはバックトップローラ43のローラ部分が一体回転可能に支持されている。なお、バックトップローラ43はフロントトップローラ14及びミドルトップローラ16と同様に2錘毎に1個の割合で設けられている。なお、ミドルローラ対12が2組のドラフトローラ対における下流側のドラフトローラ対に相当し、バックローラ対41が2組のドラフトローラ対における上流側のドラフトローラ対に相当する。
【0036】
ミドルボトムローラ15には、エプロン19が巻き掛けられているがミドルボトムローラ15の構成は第1の実施形態と同様である。
図4に示すように、ミドルトップローラ16とバックトップローラ43間には棒状のエプロン案内部材46が配置されている。エプロン案内部材46はミドルトップローラ16に対向して横架され、エプロン案内部材46の長手方向とミドルトップローラ16の軸心方向とは互いに平行である。エプロン案内部材46は、エプロン48によりバックローラ対41とミドルローラ対12間の繊維束Fの移送方向を変化させることが可能な位置に配置されている。
【0037】
エプロン案内部材46は、第1の実施形態と同様に略円形の断面を有する丸棒が用いられ、エプロン案内部材46の長手方向における中央には、エプロン案内部材46を回転自在に支持する軸受ホルダー47が設けられ、軸受ホルダー47は支持アーム24に固定されている。軸受ホルダー47には図示しない軸受が取り付けられ、軸受を介してエプロン案内部材46は軸受ホルダー47に支持されている。なお、エプロン案内部材46の長手方向の長さは、ミドルトップローラ16の長手方向の長さと同等に形成されている。
【0038】
エプロン案内部材46にはミドルトップローラ16に巻き掛けられたエプロン48が巻き掛けられている。エプロン48は、第1の実施形態と同様にミドルトップローラ16の支軸16Aに支承されているエプロンクレードル25によって、所定の張力を維持しつつ下方のエプロン19側に付勢されている。
なお、本実施形態では、エプロン案内部材46及びエプロン48が案内機構に相当し、エプロン案内部材46及びエプロン48により繊維束Fの移送方向が変化されると共に、エプロン48が接触開始点R2とミドルローラ対12の把持点(導入点)Q2との間で繊維束Fに接触するように配置されている。
【0039】
図5は、エプロン案内部材46、エプロン48及び繊維束Fとの位置関係を拡大して示したものである。図5においては、ミドルトップローラ16の軸心P3とミドルボトムローラ15の軸心P4とを結ぶ線を中心線K2とし、この中心線K2とエプロン48の外周面及びミドルボトムローラ15に巻き掛けられたエプロン19の外周面との交点をQ2とすると、交点Q2がミドルローラ対12の把持点(ニップ点)に相当するが、交点Q2はエプロン19、48の接触域(把持点)の最も上流側の導入点を指している。また、エプロン案内部材46に巻き掛けられたエプロン48の外周面と繊維束Fとが接触を開始する点を接触開始点R2とし、バックローラ対41の把持点(ニップ点)をS2とする。接触開始点R2は繊維束Fとエプロン48が接触する接触域の最も上流側の点を指し、把持点S2はバックトップローラ43の軸心とバックボトムローラ42の軸心とを結ぶ中心線K3と、バックトップローラ43及びバックボトムローラ42の周面との交点を指すと共に、バックローラ対41からの送出点に相当する。また、把持点S2及び接触開始点R2は繊維束Fの移送方向を変化させる点である。把持点(送出点)S2と把持点(導入点)Q2を結ぶ直線をL2とすれば、エプロン案内部材46の周面の一部が、この直線L2より下方に配置されていると共に、エプロン48の接触開始点R2が直線L2より下方に配置されている。すなわち、接触開始点R2はエプロン48の最下位置に相当し、この接触開始点R2が直線L2より下方に配置されている。このため、バックローラ対41間にて把持され移送してきた繊維束Fは、エプロン48によって移送方向が変化し下方に屈曲しつつ移送されると共に、接触開始点R2〜把持点(導入点)Q2間において、エプロン48の外周面と接触しつつミドルローラ対12側に移送される。
【0040】
次に、上記構成を有するドラフト装置40につき作用説明を行う。
図5に示すように、エプロン案内部材46はミドルトップローラ16に対向して配置されると共に、エプロン案内部材46の周面の一部及び接触開始点R2が、把持点(送出点)S2と把持点(導入点)Q2とを結ぶ直線L2より下方に配置されている。このためバックローラ対41間に把持され移送された繊維束Fの移送方向は、把持点S2において下向きに変化し、接触開始点R2において下向きから上向きへ変化する。接触開始点R2〜把持点Q2間においては、繊維束Fはエプロン48の外周面と接触しつつミドルローラ対12側に移送され、エプロン48は繊維束Fの移送経路の一部を形成する。このように、繊維束Fは、下方に屈曲しつつ移送されることに加え、接触開始点R2〜把持点Q2間においては、繊維束Fにはエプロン48側から下方に押圧する押圧力(圧縮力)が作用する。このため、接触開始点R2〜把持点Q2間では、繊維束Fがエプロン48により押し付けられて高密度化され、繊維束Fからの繊維の離脱を抑制することが可能である。
また、エプロン48はミドルトップローラ16と共に走行するため、エプロン案内部材46及びエプロン48への繊維の付着及び堆積を抑制することが可能である。
【0041】
この第2の実施形態に係るドラフト装置40によれば、第1の実施形態における(1)〜(3)と同等の効果を得ることができること以外に、以下の効果を奏する。
(5)エプロン案内部材46及びミドルトップローラ16に巻き掛けられたエプロン48としては、元々ミドルトップローラ16に巻き掛け使用されている既存のエプロンを共通して使用することができるので、部品点数の増加を抑制することが可能である。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るドラフト装置50を図6及び図7に基づいて説明する。
この実施形態は、第1の実施形態におけるフロントトップローラ14に代えてフロントボトムローラ13に対向してエプロン案内部材を配置しエプロン案内部材とフロントボトムローラ13間にエプロンを巻き掛けたものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0043】
図6に示すように、フロントボトムローラ13とミドルボトムローラ15間には棒状のエプロン案内部材51が配置されている。エプロン案内部材51はフロントボトムローラ13に対向して横架され、エプロン案内部材51の長手方向とフロントボトムローラ13の軸心方向とは互いに平行である。エプロン案内部材51は、エプロンガイド25D及びボトムテンサーバー20に近接する位置に配置されている。また、エプロン案内部材51は、エプロン53によりミドルローラ対12とフロントローラ対11間の繊維束Fの移送方向を変化させることが可能な位置に配置されている。
【0044】
エプロン案内部材51は、略円形の断面を有する丸棒が用いられ、エプロン案内部材51の長手方向における中央には、エプロン案内部材51を回転自在に支持する軸受ホルダー52が設けられ、軸受ホルダー52はボトムテンサーバー20に固定されている。軸受ホルダー52には図示しない軸受が取り付けられ、軸受を介してエプロン案内部材51は軸受ホルダー52に支持されている。なお、エプロン案内部材51の長手方向の長さは、フロントトップローラ14の長手方向の長さと同等に形成されている。
【0045】
フロントボトムローラ13とエプロン案内部材51間には一対のエプロン53が巻き掛けられ、ドラフト装置50の正面側には、エプロン53を張設するためのテンションローラ54が設けられている。テンションローラ54の長手方向における中央には、テンションローラ54を回転自在に支持する軸受ホルダー55が設けられ、軸受ホルダー55はローラスタンド17に固定された支持体56にボルト57で締め付け固定されている。軸受ホルダー55には図示しない軸受が取り付けられ、軸受を介してテンションローラ54は軸受ホルダー55に支持されている。軸受ホルダー55には長孔55Aが貫通形成されており、長孔55Aに挿通されたボルト57に対して軸受ホルダー55を前後方向(図6で左右方向)に移動させ位置調整を行うことにより、エプロン53を機能を果たすための適正な張力に設定可能となっている。なお、テンションローラ54の長手方向の長さは、フロントトップローラ14の長手方向の長さと同等に形成されている。
なお、本実施形態では、エプロン案内部材51及びエプロン53が案内機構に相当し、エプロン案内部材51及びエプロン53により繊維束Fの移送方向が変化されると共に、エプロン53がエプロン案内部材51とフロントローラ対11の把持点との間で繊維束Fに接触するように配置されている。
【0046】
図7は、エプロン案内部材51、エプロン53及び繊維束Fとの位置関係を拡大して示したものである。図7においては、フロントトップローラ14の軸心P1とフロントボトムローラ13の軸心P2とを結ぶ線を中心線K1とし、この中心線K1とエプロン53の外周面及びフロントトップローラ14の周面との交点をQ3とすると、交点Q3がフロントローラ対11の把持点(ニップ点)に相当する。また、エプロン案内部材51に巻き掛けられたエプロン53の外周面と繊維束Fとが接触を開始する点を接触開始点R3とし、エプロン19、26間に把持され移送してきた繊維束Fがエプロン案内部材51側へ送出される点を送出点S3とすると、接触開始点R3は繊維束Fとエプロン53が接触する接触域の最も上流側の点を指し、送出点S3はエプロン19、26の接触域の最下流側の点を指している。また、送出点S3及び接触開始点R3は繊維束Fの移送方向を変化させる点である。送出点S3と把持点(導入点)Q3を結ぶ直線をL3とすれば、エプロン案内部材51の周面の一部が、この直線L3より上方に配置されていると共に、エプロン53の接触開始点R3が直線L3より上方に配置されている。すなわち、接触開始点R3はエプロン53の最上位置に相当し、この接触開始点R3が直線L3より上方に配置されている。このため、エプロン19、26間にて把持され移送してきた繊維束Fは、エプロン53によって移送方向が変化し上方に屈曲しつつ移送されると共に、接触開始点R3〜把持点(導入点)Q3間において、エプロン53の外周面と接触しつつフロントローラ対11側に移送される。
【0047】
次に、上記構成を有するドラフト装置50につき作用説明を行う。
図7に示すように、エプロン案内部材51はフロントボトムローラ13に対向して配置されると共に、エプロン案内部材51の周面の一部及び接触開始点R3が、送出点S3と把持点(導入点)Q3とを結ぶ直線L3より上方に配置されている。このためエプロン19、26間に把持され移送された繊維束Fの移送方向は、送出点S3において上向きに変化し、接触開始点R3において上向きから下向きへ変化する。接触開始点R3〜把持点(導入点)Q3間においては、繊維束Fはエプロン53の外周面と接触しつつフロントローラ対11側に移送され、エプロン53は繊維束Fの移送経路の一部を形成する。このように、繊維束Fは、上方に屈曲しつつ移送されることに加え、接触開始点R3〜把持点(導入点)Q3間においては、繊維束Fにはエプロン53側から上方に押圧する押圧力(圧縮力)が作用する。このため、接触開始点R3〜把持点(導入点)Q3間では、繊維束Fがエプロン53により押し付けられて高密度化され、繊維束Fからの繊維の離脱を抑制することが可能である。
また、エプロン53はフロントボトムローラ13と共に走行するため、エプロン案内部材51及びエプロン53への繊維の付着及び堆積を抑制することが可能である。
【0048】
この第3の実施形態に係るドラフト装置50によれば、第1の実施形態における(2)〜(4)と同等の効果を得ることができること以外に、以下の効果を奏する。
(6)案内機構が、フロントボトムローラ13に対向して配置されたエプロン案内部材51と、エプロン案内部材51とフロントボトムローラ13間に巻き掛けられたエプロン53とで構成され、エプロン案内部材51の周面の一部及び接触開始点R3が、送出点S3と把持点(導入点)Q3とを結ぶ直線L3より上方に配置されていることにより、エプロン19、26間に把持され移送してきた繊維束Fは、送出点S3において上向きに変化し、接触開始点R3において上向きから下向きへ変化する。また、接触開始点R3〜把持点(導入点)Q3間においては、エプロン53の外周面と接触しつつフロントローラ対11側に移送される。従って、接触開始点R3〜把持点(導入点)Q3間においては、繊維束Fには上方に押圧する押圧力(圧縮力)が作用し、繊維束Fからの繊維の離脱を抑制することが可能である。
【0049】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 図8に示すように、エプロン案内部材27とエプロン29を挟んで対向する下方位置にガイド60を設け、エプロン29とガイド60間で繊維束Fを把持しても良い。この場合には、繊維束Fは、上方のエプロン29側から押圧力(圧縮力)を受けつつ下方のガイド60によっても支えられているので、繊維束Fは上からだけでなく下からも押圧力(圧縮力)を受けつつ移送可能であり、繊維束Fからの繊維の離脱を一層抑制することが可能である。
○ 第1〜第3の実施形態では、エプロン案内部材はトップローラ又はボトムローラと同期して回転するとして説明したが、エプロン案内部材が回転せず固定された構成であっても良い。この場合、第1〜第3の実施形態では、エプロン案内部材は円形断面を有する丸棒として説明したが、非円形断面を有する固定タイプのエプロン案内部材としても良い。この場合、エプロンとの接触面積が拡大された形状を有するエプロン案内部材を用いて、エプロン案内部材と下流側のドラフトローラ対の把持点(導入点)間の繊維束Fに対し、エプロンを介しできるだけ長く押圧力(圧縮力)が作用するようにしても良い。
○ 第1の実施形態では、エプロン案内部材27の周面の一部及び接触開始点R1が、送出点S1と把持点(導入点)Q1とを結ぶ直線L1より下方に配置されているとして説明し、第2の実施形態では、エプロン案内部材46の周面の一部及び接触開始点R2が、把持点(送出点)S2と把持点(導入点)Q2とを結ぶ直線L2より下方に配置されているとして説明したが、少なくとも接触開始点R1、R2が直線L1、L2より下方に配置してあれば良い。
○ 第3の実施形態では、エプロン案内部材51の周面の一部及び接触開始点R3が、送出点S3と把持点(導入点)Q3とを結ぶ直線L3より上方に配置されているとして説明したが、少なくとも接触開始点R3が直線L3より上方に配置してあれば良い。
○ 第1〜第3の実施形態では、ドラフトローラ対が3組の3線式として説明したが、ドラフトローラ対が4組の4線式であっても良い。
○ 第1〜第3の実施形態では、精紡機に用いるとして説明したが、粗紡機、連条機などに使用しても良い。
【符号の説明】
【0050】
10 ドラフト装置
11 フロントローラ対
12 ミドルローラ対
13 フロントボトムローラ
14 フロントトップローラ
16 ミドルトップローラ
19、26、29、48、53 エプロン
27、46、51 エプロン案内部材
41 バックローラ対
60 ガイド
F 繊維束
Q1、Q2、Q3 把持点(導入点)
R1、R2、R3 接触開始点
S1、S2、S3 送出点
L1、L2、L3 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムローラとトップローラで対をなす2組のドラフトローラ対が繊維束の移送経路にて上流側から下流側へ順にそれぞれ配置され、上流側の前記ドラフトローラ対と下流側の前記ドラフトローラ対との間に、上流側の前記ドラフトローラ対から送出される前記繊維束と接触して移送方向を変化させる案内機構が設けられた紡機におけるドラフト装置において、
前記案内機構は、前記下流側のドラフトローラ対に対向して横架されたエプロン案内部材と、前記下流側のドラフトローラ対におけるボトムローラとトップローラのいずれか一方と前記エプロン案内部材とに巻き掛けられて前記繊維束と接触するエプロンとを有し、
前記エプロンが、前記繊維束との接触を開始する接触開始点と前記下流側のドラフトローラ対の把持点との間で前記繊維束に接触し、前記移送経路の一部を形成することを特徴とする紡機におけるドラフト装置。
【請求項2】
前記エプロンは、前記下流側のドラフトローラ対の前記トップローラに巻き掛けられ、前記エプロンの前記接触開始点が、前記下流側のドラフトローラ対の導入点と前記上流側のドラフトローラ対の送出点とを結ぶ直線より下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項3】
前記エプロンは、前記下流側のドラフトローラ対の前記ボトムローラに巻き掛けられ、前記エプロンの前記接触開始点が、前記下流側のドラフトローラ対の導入点と前記上流側のドラフトローラ対の送出点とを結ぶ直線より上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項4】
前記下流側のドラフトローラ対を前記移送経路の最も下流側に配置されたフロントローラ対とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項5】
前記下流側のドラフトローラ対を前記移送経路の最も下流側に配置されたフロントローラ対と前記移送経路の最も上流側に配置されたバックローラ対との間に配置されたミドルローラ対とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項6】
前記エプロン案内部材と前記エプロンを挟んで対向する位置にガイドを設け、前記エプロンと前記ガイド間で前記繊維束を把持することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132105(P2012−132105A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282699(P2010−282699)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】