説明

紡糸口金および極細繊維の製造方法

【課題】極細繊維を安定して製造することができる紡糸口金。
【解決手段】下記特性を有する紡糸口金(1)口金外径が75〜125mm、(2)ポリマー導入孔が円周状に2〜6列配列、(3)口金中心とポリマー導入孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD2(mm)と口金の外径D1(mm)との関係が、 0.6×D1≦D2≦0.85×D1(4)前記ポリマー導入孔の列間隔L(mm)と導入孔径D3(mm)との関係が、 1.3×D3≦L≦6×D3(5)1つのポリマー導入孔に対して吐出孔が2〜8孔(6)1つのポリマー導入孔に穿孔された吐出孔を1つの群として、ポリマー導入孔の中心と吐出孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD4(mm)とポリマー導入孔径D3(mm)との比、 D4/D3=0.5〜0.9(7)吐出孔総数120〜600孔(8)1つの群内の吐出孔が口金半径方向に並ばない

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来より優れた品質を有する極細繊維を製造するのに好適な口金およびこれを用いた合成繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細繊維は、その細さ、柔らかさから衣料用途において広く使用されており、また近年ではカーシートなどの車輌内装材等の産業資材用途にも用いられつつある。
【0003】
中でもポリエチレンテレフタレ―トに代表されるポリエステル極細繊維は高強度、高ヤング率、熱寸法安定性に優れた繊維であり、上記用途の中でもとりわけて需要が高い。
【0004】
しかしながら、極細繊維はその製造工程の難しさから、生産性、品質上の課題が残されているのも事実である。
【0005】
一般的に溶融紡糸により製造されるポリエステル、ポリアミド等において、極細繊維を得るためには一定の面積の紡糸口金から多数の糸条を吐出する必要があるため、そのフィラメントの数には限りがあった。また、多数のフィラメントを吐出後に冷却風にて冷却する工程においても、フィラメント数が多いため冷却風が通りにくく、均一な冷却が困難であるため、ウースター斑が悪化し、このような極細繊維を用いた布帛の品位が低下するという問題を有する。
【0006】
かかる問題を解決するために、紡糸口金から吐出した糸条を糸条に対して直角方向から冷却風を吹き付け冷却固化した後、環状の保護筒に通すことにより外乱を防止することでウースター斑を低減する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では糸条が冷却される部分については考慮されておらず、このためウースター斑の改善は不十分である。
【0007】
また、紡糸口金と冷却風による冷却域との間に仕切板を設け、口金の冷えを抑制しつつ口金下の冷却風の流れを安定化することでウースター斑を低減する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法によっても、仕切板と糸条の近接する部分での冷却風の乱流化により糸揺れが誘発されるため、ウースター斑の改善は不十分なものにとどまっている。
【0008】
一方、ポリマーのパック内、および口金部分での異常滞留を防止することによりウースター斑、糸切れを改善する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法は異常滞留の減少によるポリマーのクリーン化については言及されているものの、吐出後の糸条の冷却を考慮したものではなく、均一冷却によるウースター斑の改善は図れていないのが実状である。
【特許文献1】特開昭62−243824号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平09−137317号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平07−300716号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来より優れたウースター斑を有する極細繊維を高生産性の下に安定して製造することができる紡糸口金およびこれを用いた極細繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
[1]下記(1)〜(8)
(1)外径D1が75〜125mmである円形の口金を有し、
(2)前記口金には、ポリマー導入孔が円周状に2〜6列配列され、
(3)前記口金中心とポリマー導入孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD2(mm)と口金の外径D1(mm)との関係が、
0.6×D1≦D2≦0.85×D1
を満足し、
(4)前記ポリマー導入孔の列間隔L(mm)と導入孔径D3(mm)との関係が、
1.3×D3≦L≦6×D3
を満足し、
(5)前記1つのポリマー導入孔に対して吐出孔が2〜8孔穿孔され、
(6)前記1つのポリマー導入孔に穿孔された吐出孔を1つの群として、ポリマー導入孔の中心と吐出孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD4(mm)とポリマー導入孔径D3(mm)との比、
D4/D3=0.5〜0.9
を満足し、
(7)さらに、吐出孔の総数が120〜600孔であるとともに、
(8)1つの群内の吐出孔が口金中心に対して半径方向に並ばないように配列されている、
の要件を具備することを特徴とする紡糸口金。
【0011】
[2]1つの群内の吐出孔が同心円状に穿孔されていることを特徴とする前記[1]に記載の紡糸口金
[3]2山用の分離帯が設けられていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の紡糸口金。
【0012】
[4]分離帯幅W(mm)=12〜24であることを特徴とする前記[3]に記載の紡糸口金。
【0013】
[5]請求項1〜4のいずれか1項に記載の口金を用い、かつ環状冷却装置を用いて紡糸することを特徴とする極細繊維の製造方法。
【0014】
[6]合成繊維が、フィラメント数が60〜600、単糸繊度が0.2〜1.0dtexの極細繊維であることを特徴とする前記[5]に記載の極細繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紡糸口金によれば、ウースター斑が改善されるとともに、製造する際の糸切れも減少し、高生産性の下に安定に極細繊維を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の紡糸口金は、図1に示すように、円形の口金であり、かつその外径D1が75〜125mmのものである。円形でない場合は口金を装着するパックの取り扱いが煩雑になり、かつ環状冷却に適さなくなる。また、外径D1が75mm未満の場合はその口金に穿孔可能な吐出孔の数が制限されるため、極細繊維を製造する際に同時に要求される多フィラメント化が不十分となる。また、外径D1が125mmを越える場合は、以下に記す要件を満たさなくても多数の吐出孔を穿孔できるため、本発明の効果が小さくなる。
【0017】
本発明の紡糸口金は、その導入孔を円周状に2〜6列とするものである。円周状としない場合には、吐出後の環状冷却によって均一冷却することによる、得られる極細繊維の均一性が損なわれる。また、列数を7列以上とすると、環状に配列しているにも関わらず、ポリマーを吐出孔より吐出した後冷却風によって冷却する工程において、冷却風が糸条の間を通りにくくなるため、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。
【0018】
本発明の紡糸口金は、その口金中心とポリマー導入孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD2(mm)を0.6×口金外径D1(mm)以上0.85×口金外径D1(mm)とするものである。D2が0.6×D1より小さいと、ポリマーを吐出孔より吐出した後冷却風によって冷却する工程において、冷却風が糸条の間を通りにくくなるため、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。またD2が0.85×D1より大きい場合には、糸条が揺れた際に環状冷却装置との接触等を起こし、糸切れを発生する場合がある。
【0019】
また、本発明の紡糸口金は、ポリマー導入孔の列間隔をL(mm)、導入孔径をD3(mm)としたとき、1.3×D3≦L≦6×D3とするものである。Lが1.3×D3より小さい場合には、2つの導入孔から吐出される2つのそれぞれの糸条群の間隔が小さすぎるため、ポリマーを吐出孔より吐出した後冷却風によって冷却する工程において、冷却風が通りにくくなり、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。またLが6×D3より大きい場合には、列間隔が大きすぎるため吐出孔を多数穿孔することができず、目的とする多フィラメント糸を得ることができない。
【0020】
また、本発明の紡糸口金は、1つの導入孔に対して吐出孔が2〜8孔穿孔されているものである。1つの導入孔に対する吐出孔が1孔では、極細繊維を製造する際に同時に要求される多フィラメント化が不十分となる。また9孔以上では、1つの導入孔から吐出される各フィラメントの間隔が小さすぎるため、ポリマーを吐出孔より吐出した後冷却風によって冷却する工程において、冷却風が通りにくくなり、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。
【0021】
また、本発明の紡糸口金は、1つの導入孔に対して穿孔された吐出孔を1つの群とし、その吐出孔群のPCDをD4(mm)としたとき、ポリマー導入孔径D3(mm)に対して、D4/D3を0.5〜0.9とするものである(図3参照)。
【0022】
なお、吐出孔群のPCDとは、図3に示すように、ポリマー導入孔の中心と吐出孔の中心とを結ぶ線を半径としてその最大値の2倍で定義される。すなわちポリマー導入孔の中心から最も遠い吐出孔の中心を通る、ポリマー導入孔の中心を中心とする円の直径を指す。
【0023】
D4/D3を0.5未満とした場合は各フィラメントの間隔が小さすぎるため、ポリマーを吐出孔より吐出した後冷却風によって冷却する工程において、糸条の間を冷却風が通りにくくなり、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。また、導入孔底部でのポリマーの異常滞留が懸念される場合がある。また0.9を越えると、吐出孔を穿孔する際の加工が難しくなる。
【0024】
また、導入孔底部の形状については特に制限されないが、穿孔加工の容易性およびコストの点から底部は水平であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の紡糸口金は、吐出孔の総数が120〜600孔であるものである。120孔未満であると、極細繊維を製造する際に同時に要求される多フィラメント化が不十分となる。600より多い場合には、冷却風によって冷却する工程において、冷却風が通りにくくなり、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。
【0026】
また、本発明の紡糸口金は、1つの群内の吐出孔が半径方向に並ばないように配列されているものである。1つの群内の吐出孔が半径方向に並んだ場合、半径方向から吹き付ける環状冷却において、外側の糸条によって内側の糸条の冷却が妨げられるため、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。1つの群内の吐出孔は、各吐出孔と口金中心を結んだ線同士のなす角度θが0.3°以上5°以下であることが好ましく、0.6°以上であることがさらに好ましい。0.3°未満である場合には冷却風によって冷却する工程において、冷却風が通りにくくなり、目的とする均一冷却の効果が損なわれる。また5°より大きい場合には極細繊維を製造する際に同時に要求される多フィラメント化が不十分となる。
【0027】
本発明の紡糸口金は1つの導入孔に穿孔される吐出孔が同心円状に穿孔されていることが好ましい。このことにより1つの導入孔から吐出孔を経て吐出される各フィラメントの熱履歴がほぼ同等となるため、得られる極細繊維の均一性が向上する。
【0028】
本発明の紡糸口金は、その目的である極細繊維をより多フィラメントで効率良く得るために、2山としてもよい。この際、2山とするための山間の分離帯を設けてもよい。また、この分離帯の幅Wは12〜24mmとすることが好ましい。この分離帯の幅Wを12mm未満とすると、山間の距離が小さいため、得られる2つの糸条群を分離することが難しくなる、あるいは片方の糸条群のフィラメントが他方の糸条群に混入するといった課題が発生する場合があるため好ましくない。また24mmより大きくすると上記課題は解決されるものの、穿孔可能な孔の数が制限されるため、極細繊維を製造する際に同時に要求される多フィラメント化が不十分となる。
【0029】
本発明の紡糸口金を用いて極細繊維を製造する場合は、熱可塑性ポリマーを紡糸口金から溶融吐出、引き取った後一旦巻き取り、ついで延伸または延伸仮撚してもよく、また延伸せずに巻き取ってもよい。
【0030】
本発明の紡糸口金を用いた極細繊維の製造に使用する熱可塑性ポリマーとして具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン等が挙げられる。
【0031】
なかでもポリエステルについては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体およびジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであり、繊維、フィルム、ボトル等の成形品として用いることができるものが好ましい。
【0032】
このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0033】
また、これらのポリエステルには、本発明の目的、効果を損なわない範囲で各種のエステル形成性誘導体が共重合されていてもよい。
【0034】
また、これらのポリエステルには、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、二酸化チタン等の艶消し剤、酸化ケイ素、カオリン等の各種機能性粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を含有してもよい。
【0035】
次に本発明の極細繊維の製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートを用いた極細繊維の例を記載するがこれに限定されるものではない。
【0036】
ポリエステル繊維は通常、(1)ポリエステルを溶融し、計量し、濾過した後に吐出するプロセス、(2)吐出されたポリエステルフィラメントを冷却風により冷却した後引き取るプロセス、(3)引き取られたポリエステルフィラメントを巻き取るプロセス、(4)場合によって得られたポリエステル繊維を延伸または延伸仮撚するプロセスにより得られる。
【0037】
本発明の紡糸口金を用いて極細繊維を得る際は、上記プロセスのうち(1)については常法によって行う。(2)については、本発明の紡糸口金は冷却風の通り抜けが良いため、一方向から冷却風を吹き付ける方法でもよいが、環状冷却装置を用い、冷却風を糸条を囲む全円周方向から中心に向かって吹き付ける方法が好ましい。以下(3)および(4)のプロセスは常法に従って行えばよい。
【0038】
本発明の紡糸口金を用いて極細繊維を得る場合、その極細繊維はフィラメント数が60以上、単糸繊度が1.0dtex以下であることが好ましい。フィラメント数が60未満あるいは単糸繊度が1.0dtexより大きい場合は、極細繊維のウースター斑は常法においても悪くないため、本発明の紡糸口金によるウースター斑改善の効果が小さいものとなる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)ウースター斑
zellweger社製USTER TESTER UT−4を用い、糸速度100m/分、撚り数8000T/mで5分間測定する間の平均値を算出しウースター斑(H%)とした。
(3)糸切れ判定
32錘で同時に紡糸を行い、120時間紡糸する間の糸切れ回数を測定し、1回以下なら◎、2〜3回なら○、4〜5回なら△、6回以上なら×とした。
【0040】
実施例1
ポリマーの固有粘度IVが0.66のポリエチレンテレフタレートのホモポリマーペレットを乾燥し、水分率を70ppm以下とする。この乾燥ペレットを溶融し、口金外径D1=110mm、紡糸口金最外周径D2=88mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.0mm、ポリマー導入孔の列間隔L=7mm、3列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数288、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=16mmである口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、144フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。紡糸の際の糸切れおよび得られた極細繊維のウースター斑は表1に示すとおり良好な結果が得られた。
【0041】
実施例2
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=75mm、紡糸口金最外周径D2=60mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.5mm、L=6mm、2列環状配列、1導入孔あたり8吐出孔、総吐出孔数192、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=12mmである口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、96フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。紡糸の際の糸切れおよび得られた極細繊維のウースター斑は表1に示すとおり良好な結果が得られた。
【0042】
実施例3
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=125mm、紡糸口金最外周径D2=100mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.0mm、ポリマー導入孔の列間隔L=6mm、6列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数384、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=24mmである口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、192フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。紡糸の際の糸切れおよび得られた極細繊維のウースター斑は表1に示すとおり良好な結果が得られた。
【0043】
実施例4
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、図4に示す紡糸口金を用い、口金外径D1=125mm、紡糸口金最外周径D2=100mm、ポリマー導入孔径D3=6.0mm、吐出孔群のPCDD4=5.0mm、ポリマー導入孔の列間隔L=8mm、2列環状配列、1導入孔あたり5吐出孔、総吐出孔数300で、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、1山である口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより167dtex、300フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。紡糸の際の糸切れおよび得られた極細繊維のウースター斑は表1に示すとおり良好な結果が得られた。
【0044】
比較例1
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=65mm、紡糸口金最外周径D2=45mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.0mm、ポリマー導入孔の列間隔L=5mm、3列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数192で、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、1山である口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、192フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。表2に示すとおり、紡糸の際の糸切れが多く、また得られた極細繊維のウースター斑も悪化した。
【0045】
比較例2
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=75mm、紡糸口金最外周径D2=60mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.0mm、1列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数192、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=10mmであるで口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、96フィラメントのポリエステル極細繊維を得ようと試みたが、2山の糸条群を分割することが非常に困難であり巻き取り不可能であった。
【0046】
比較例3
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=110mm、紡糸口金最外周径D2=88mm、ポリマー導入孔径D3=3.0mm、吐出孔群のPCDD4=2.4mm、ポリマー導入孔の列間隔L=5mm、8列環状配列、1導入孔あたり3吐出孔、総吐出孔数384、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=14mmであるで口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、192フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。表2に示すとおり、紡糸の際の糸切れが多く、得られた極細繊維のウースター斑も悪化した。
【0047】
比較例4
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=110mm、紡糸口金最外周径D2=88mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.8mm、ポリマー導入孔の列間隔L=6mm、5列環状配列、1導入孔あたり6吐出孔、総吐出孔数384、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=14mmであるで口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、192フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。表2に示すとおり、紡糸の際の糸切れが多く、得られた極細繊維のウースター斑も悪化した。
【0048】
比較例5
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=110mm、紡糸口金最外周径D2=88mm、ポリマー導入孔径D3=5.0mm、吐出孔群のPCDD4=2.2mm、ポリマー導入孔の列間隔L=6mm、5列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数384、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=14mmであるで口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、192フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。表2に示すとおり、紡糸の際の糸切れが多く、得られた極細繊維のウースター斑も悪化した。
【0049】
比較例6
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=110mm、紡糸口金最外周径D2=60mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.0mm、ポリマー導入孔の列間隔L=7mm、2列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数144、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいない、2山で分離帯幅W=12(mm)であるで口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより60dtex、72フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。表2に示すとおり、紡糸の際の糸切れが多く、得られた極細繊維のウースター斑も悪化した。
【0050】
比較例7
実施例1と同様のポリエステルペレットを実施例1と同様に乾燥、溶融し、口金外径D1=110mm、紡糸口金最外周径D2=88mm、ポリマー導入孔径D3=4.0mm、吐出孔群のPCDD4=3.0mm、ポリマー導入孔の列間隔L=7mm、3列環状配列、1導入孔あたり4吐出孔、総吐出孔数288、1導入孔に穿孔された吐出孔が半径方向に並んでいる、2山で分離帯幅W=16mmであるで口金からポリマー温度292℃で吐出した後、環状冷却装置にて冷却し、油剤付与後4020m/分の速度で引き取り、続いて4000m/分で巻き取ることにより80dtex、144フィラメントのポリエステル極細繊維を得た。表2に示すとおり、紡糸の際の糸切れが多く、得られた極細繊維のウースター斑も悪化した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の紡糸口金の一例を示す図である。
【図2】本発明の紡糸口金の他の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例4の紡糸口金の導入孔部分の拡大の一例を示す図である。
【図4】従来の紡糸口金の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1:導入孔
2:吐出孔
3:分離帯
D1:口金外径
D2:紡糸口金最外周径
D3:ポリマー導入孔径
D4:吐出孔群のPCD
L:ポリマー導入孔の列間隔
θ:1つの群内の吐出孔同士において、各吐出孔と口金中心を結んだ線同士のなす角度
W:分離帯の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(8)
(1)外径D1が75〜125mmである円形の口金であって、
(2)前記口金には、ポリマー導入孔が円周状に2〜6列配列され、
(3)前記口金中心とポリマー導入孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD2(mm)と口金の外径D1(mm)との関係が、
0.6×D1≦D2≦0.85×D1
を満足し、
(4)前記ポリマー導入孔の列間隔L(mm)と導入孔径D3(mm)との関係が、
1.3×D3≦L≦6×D3
を満足し、
(5)前記1つのポリマー導入孔に対して吐出孔が2〜8孔穿孔され、
(6)前記1つのポリマー導入孔に穿孔された吐出孔を1つの群として、ポリマー導入孔の中心と吐出孔の中心とを結ぶ線を半径として、その最大値の2倍で定義されるD4(mm)とポリマー導入孔径D3(mm)との比、
D4/D3=0.5〜0.9
を満足し、
(7)さらに、吐出孔の総数が120〜600孔であるとともに、
(8)1つの群内の吐出孔が口金中心に対して半径方向に並ばないように配列されている、
の要件を具備することを特徴とする紡糸口金。
【請求項2】
1つの群内の吐出孔が同心円状に穿孔されていることを特徴とする請求項1に記載の紡糸口金
【請求項3】
2山用の分離帯が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の紡糸口金。
【請求項4】
分離帯幅W(mm)=12〜24であることを特徴とする請求項3に記載の紡糸口金。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の口金を用い、かつ環状冷却装置を用いて紡糸することを特徴とする極細繊維の製造方法。
【請求項6】
合成繊維が、フィラメント数が60〜600、単糸繊度が0.2〜1.0dtexの極細繊維であることを特徴とする請求項5に記載の極細繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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