説明

紡糸巻取機

【課題】ゴデットローラに掛けられた複数の糸を、簡単な構成によって、対応する分配ガイドへそれぞれ運ぶことができる。
【解決手段】紡糸巻取機は、紡糸機から供給された複数の糸10を引き取る2つのゴデットローラ11、12と、ボビンホルダに沿った左右方向に並べられ、下流側のゴデットローラ12に巻き掛けられた複数の糸10をボビンホルダに装着されたボビンにそれぞれ分配する複数の支点ガイド13a〜13dと、複数の支点ガイド13a〜13dとボビンホルダとの間を、複数の糸10を保持して複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に移動可能な糸掛けガイド20などを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸部から送出された複数の糸を巻取軸に装着された複数のボビンにそれぞれ巻き取る紡糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の紡糸巻取機では、紡糸部から送出された複数の糸が、ゴデットローラの軸芯に沿って並んで巻き掛けられた後、ゴデットローラの軸芯と直交する方向に延在する巻取軸に直列に装着された複数のボビンにそれぞれ巻き取られている。また、ゴデットローラから送られた複数の糸を複数のボビンに案内するために、複数のボビンの糸走行方向の上流側には、巻取軸に沿って複数の分配ガイドが並んで配置されている。
【0003】
そして、最終のゴデットローラが複数の分配ガイドに対して相対移動可能となっており、この動きを利用して、複数の分配ガイドに複数の糸が振り分けられている。具体的には、特許文献1のFig.6、Fig.7に示すように、ゴデットローラが、糸巻き取り時に位置する糸巻取位置(実線で示す位置)と、この糸巻取位置から離れ、糸巻き取り時の紡糸巻取機の外側に突出した位置(破線で示す位置:以下、糸掛け開始位置と称する)とにわたって複数の分配ガイドの配列方向(巻取軸の軸方向)に移動可能となっている。そして、複数の糸が巻き掛けられたゴデットローラを配列方向に移動させて、複数の糸のそれぞれを対応する分配ガイドの位置まで移動させて糸掛けを行っている。
【0004】
また、特許文献1のFig.1、Fig.3に示すように、ゴデットローラは固定的に配置されて、複数の分配ガイドが、糸巻き取り時に位置する糸巻取位置(実線で示す位置)と、この糸巻取位置から離れ、糸巻き取り時の紡糸巻取機の外側に突出した位置(破線で示す位置:以下、糸掛け開始位置と称する)とにわたって巻取軸の軸方向に移動可能となっており、複数の糸のそれぞれを対応する分配ガイドの位置まで移動させて糸掛けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/138827号(Fig.1、3、6、7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の紡糸巻取機では、複数の糸を対応する分配ガイドに移動させるために、ゴデットローラまたは複数の分配ガイドを移動可能としており、糸巻き取り時の紡糸巻取機の外側に確保したゴデットローラの移動領域も含めると、非常に大きな設置領域が必要となり、設置自由度が低くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ゴデットローラに掛けられた複数の糸を、簡単な構成によって、対応する分配ガイドへそれぞれ運ぶことができる紡糸巻取機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紡糸巻取機は、紡糸部から送出された複数の糸が軸芯に沿って並んで巻き掛けられるゴデットローラと、複数のボビンが軸芯に沿って直列に装着されており、前記ゴデットローラから送られた前記複数の糸を前記複数のボビンにそれぞれ巻き取る巻取軸と、前記巻取軸に沿った所定の配列方向に並べられており、前記ゴデットローラから送られた前記複数の糸を前記巻取軸に装着された前記複数のボビンにそれぞれ分配する複数の分配ガイドと、前記複数の糸を保持して前記複数の分配ガイドの前記配列方向に移動可能な糸保持部材と、を備えている。
【0009】
本発明の紡糸巻取機によると、ゴデットローラや複数の分配ガイドを移動させずに、複数の糸を保持した、小型且つ軽量な糸保持部材を追加して、この糸保持部材を複数の分配ガイドに沿って配列方向に移動させる。こうすることで、簡単な構成で、複数の糸を対応する分配ガイドにそれぞれ運ぶことができる。
【0010】
また、各分配ガイドは、前記配列方向の一方側から糸掛け可能な糸掛け部を有しており、前記糸保持部材は、前記配列方向及び前記配列方向と直交する方向の間の傾斜方向に移動可能であり、前記複数の糸を前記配列方向と直交する方向に並んで保持した状態で、前記複数の分配ガイドよりも前記一方側から他方側まで前記傾斜方向に移動することが好ましい。
【0011】
これによると、糸保持部材に保持された複数の糸は、複数の分配ガイドの配列方向と直交して並んでおり、分配ガイドの糸掛け部が配列方向の一方側から糸掛け可能なので、複数の糸が保持された糸保持部材を配列方向の一方側から他方側に傾斜方向に移動させることで、糸保持部材に保持された複数の糸を複数の分配ガイドに配列方向の一方側から順に振り分けながら糸掛けすることができる。
【0012】
このとき、前記ゴデットローラの軸芯は、前記配列方向と交差しており、前記糸保持部材は、前記複数の分配ガイドよりも前記他方側から前記一方側に前記配列方向に移動した後、前記複数の分配ガイドよりも前記一方側から前記他方側に前記傾斜方向に移動することが好ましい。
【0013】
これによると、糸保持部材を配列方向に移動させて、糸保持部材に保持された複数の糸を複数の分配ガイドよりも一方側に寄せた後、糸保持部材を傾斜方向に移動させて、複数の分配ガイドに配列方向の一方側から順に糸掛けすることができる。
【0014】
また、このとき、前記糸保持部材は、前記配列方向と交差する方向に延在した棒部材であり、前記棒部材の外周面には、少なくとも前記配列方向の一方側に溝が形成されており、前記溝は、前記棒部材の軸方向に沿って間隔をあけて、前記複数の糸に対応して複数形成されていることが好ましい。
【0015】
これによると、糸保持部材を複数の分配ガイドよりも他方側から一方側に配列方向に移動させて、複数の糸を複数の分配ガイドよりも一方側に寄せたときに、複数の糸は糸保持部材の複数の溝の配列方向の一方側に入り込んで保持されている。そして、この複数の糸が保持された糸保持部材を複数の分配ガイドよりも一方側から他方側に傾斜方向に移動させると、糸保持部材の溝と分配ガイドの糸掛け部の糸が掛かる方向が同じなので、糸保持部材の溝に入り込んだ糸を分配ガイドの糸掛け部に受け渡すことができる。
【0016】
また、前記糸保持部材は、所定の退避位置で前記複数の糸が掛けられており、前記ゴデットローラは、前記巻取軸への糸巻き取り時に位置する糸巻取位置と、前記糸巻取位置よりも前記退避位置にある前記糸保持部材に近接した糸掛け位置とにわたって移動可能であり、前記糸保持部材への糸掛け時には、前記ゴデットローラを前記糸掛け位置に移動させることことが好ましい。
【0017】
これによると、ゴデットローラに近い位置で複数の糸を糸保持部材に糸掛けすることで、走行する糸の姿勢が、ゴデットローラから遠い位置に比べて安定しており、糸掛けが容易となる。
【発明の効果】
【0018】
ゴデットローラや複数の分配ガイドを移動させずに、複数の糸を保持した、小型且つ軽量な糸保持部材を追加して、この糸保持部材を複数の分配ガイドに沿って配列方向に移動させる。こうすることで、簡単な構成で、複数の糸を対応する分配ガイドにそれぞれ運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡糸巻取機の正面図である。
【図2】ゴデットローラ及び支点ガイドの斜視図である。
【図3】支点ガイドの拡大斜視図である。
【図4】支点ガイドへの糸掛け時における糸掛けガイドの移動軌跡について説明する図である。
【図5】糸掛けガイドによる支点ガイドへの糸掛け動作の前半工程について説明する図である。
【図6】糸掛けガイドによる支点ガイドへの糸掛け動作の後半工程について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、紡糸巻取機の正面図である。なお、以下の説明においては、図1に示すように、後述するボビンホルダ7の先端側を作業者が紡糸巻取機を操作する側である前方として説明を行う。図1に示すように、紡糸巻取機1は、上方にある紡糸機2から図1の紙面直交方向(前方から見た左右方向)に配列されて連続的に紡糸されて供給される複数の糸10を、2つのゴデットローラ11、12で下方の巻取ユニット3に送り、この巻取ユニット3で巻き取っている。
【0021】
まず、巻取ユニット3について説明する。巻取ユニット3は、紡糸機2の下方に配置されており、2つのゴデットローラ11、12を介して紡糸機2から供給された複数の糸10を、複数のボビンBにそれぞれ巻き取って複数のパッケージPを形成する。
【0022】
この巻取ユニット3は、本体フレーム5と、本体フレーム5に回転可能に設けられた円板状のターレット6と、ターレット6に一端が支持され、複数のボビンBが軸芯7aに沿って直列に装着される2本のボビンホルダ7(巻取軸)と、ボビンホルダ7に装着された複数のボビンBの上方にそれぞれ配置され、ボビンBに巻き取られる糸10を綾振る複数のトラバースガイド8と、本体フレーム5に対して上下方向に移動可能であり、ボビンホルダ7に装着されたボビンBに対して離接するコンタクトローラ9などを有している。
【0023】
巻取ユニット3は、ボビンホルダ7が図示しない駆動モータの駆動により回転することで、このボビンホルダ7に装着された複数のボビンBを回転させ、回転する複数のボビンBにそれぞれ糸10を巻き取る。このとき、ボビンBに巻き取られる糸10は、その直前にボビンBの軸方向に往復移動可能なトラバースガイド8によって、後述する支点ガイド13を支点としてボビンBの軸方向に綾振りされ、パッケージPを形成する。また、コンタクトローラ9は、ボビンBへの糸巻き取り時に、パッケージPに所定の接圧を付与しながら回転して、パッケージPの形状を整える。
【0024】
図2は、ゴデットローラ及び支点ガイドの斜視図である。図1に示すように、紡糸巻取機1は、巻取ユニット3よりも図1における紙面奥方向に配置された枠状のフレーム14と、紡糸機2から供給された複数の糸10を引き取る2つのゴデットローラ11、12と、下流側のゴデットローラ12に巻き掛けられた複数の糸10を巻取ユニット3のボビンホルダ7に装着された複数のボビンBにそれぞれ分配し、且つ、トラバースガイド8による綾振り時に支点となる複数の支点ガイド13a〜13d(分配ガイド)と、ゴデットローラ12から送られた複数の糸10を複数の支点ガイド13a〜13dに糸掛けするための糸掛けガイド20(糸保持部材)などを有している。
【0025】
図1及び図2に示すように、2つのゴデットローラ11、12は、巻取ユニット3の本体フレーム5の上方において、その軸芯11a、12aがボビンホルダ7の軸芯7aと直交して、フレーム14に回転可能に支持されており、図示しない駆動モータによって駆動される駆動ローラである。ゴデットローラ11は紡糸機2の直下に配置され、ゴデットローラ12はゴデットローラ11よりも後方の上方に配置されている。
【0026】
そして、ゴデットローラ12は、例えばリニアモータなどの昇降機構16(図1参照)により、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向の略中央の上方に位置する糸巻取位置(図1、2の実線で示す位置)と、糸巻取位置よりも下方であり、複数の支点ガイド13よりも端に位置する糸掛けガイド20に近接した糸掛け位置(図1、2の2点鎖線で示す位置)とにわたって移動可能となっている。
【0027】
複数の支点ガイド13a〜13dは、糸巻取位置にある下流側のゴデットローラ12よりも下方であって、複数のトラバースガイド8の上方において、複数のトラバースガイド8及びボビンホルダ7に装着された複数のボビンBの真上に、ボビンホルダ7の軸芯7aに沿って複数のボビンホルダ7の間隔と同じ間隔で並んで配置されている。
【0028】
そして、図3に示すように、支点ガイド13は、フレーム14に設置された支持板15に固定的に支持され、挿入用スリット40とガイド孔41が形成されている。支点ガイド13は、図示しないサクションパイプで吸引した糸10を後方から挿入用スリット40を通してガイド孔41に掛けることができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、紡糸機2から供給された複数の糸10は、下方に搬出され、まず、ゴデットローラ11の軸芯11aに沿って並んで巻き掛けられる。その後、ゴデットローラ11に巻き掛けられた複数の糸10は、斜め上に平行に走行しながら糸巻取位置にあるゴデットローラ12に架け渡される。そして、ゴデットローラ12に巻き掛けられた複数の糸10は、複数の支点ガイド13a〜13dにそれぞれ糸掛けされて、下方の巻取ユニット3に搬送される。なお、ゴデットローラ12が複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向の側方ではなく、上方に配置されていることで、支点ガイド13における糸10の屈曲角が小さくなり、糸10の走行速度を増大させることが可能となる。
【0030】
糸掛けガイド20は、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向と直交する方向に延在した円柱状であり、その周面には、複数の支点ガイド13a〜13dの数に対応して、延在した方向に等間隔に並び、全周にわたって形成された複数の溝20aが設けられている。また、糸掛けガイド20は、バー23と連結されている。バー23は、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向にスライド移動可能なスライド部材21に対して複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向と直交する方向に進退可能となっており、バー23の移動にともない、糸掛けガイド20も複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向と直交する方向に移動するようになっている。
【0031】
糸掛けガイド20の進退機構の一例を図4に示す。バー23は、スプリング32により付勢されており、カム溝30を移動可能なカムフォロア31に基端側が接続されている。カム溝30は、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に沿った直線部分とこの直線部分に対して傾斜した傾斜部分によって閉ループ状に形成されている。そして、図示しないモータによってカムフォロア31がカム溝30に沿って案内されることで、糸掛けガイド20は、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向、及び、支持板15と平行に複数の支点ガイド13a〜13dを横切って斜め方向に移動する。
【0032】
ここで、複数の支点ガイド13a〜13dへの糸掛け動作について説明する。図4は、糸掛け時における糸掛けガイドの移動軌跡について説明する図であり、上方から見たときの糸掛けガイド及び支点ガイドの概略平面図である。図5、図6は、糸掛けガイドによる糸掛け動作について説明する図である。なお、図4においては、糸掛けガイド20、スライド部材21及びバー23は(1)〜(6)の順に移動しており、その移動軌跡を所定時間おきに図示しており、原点位置である(1)の位置では実線で示し、その後の(2)〜(6)の順に移動した位置では1点鎖線で示している。
【0033】
ゴデットローラ12に巻き掛けられた複数の糸10は複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向と直交する方向に並んでいるため、複数の支点ガイド13へゴデットローラ12に巻き掛けられた複数の糸10を糸掛けする際には、複数の糸10の間隔や複数の糸10の並ぶ方向を変える必要がある。
【0034】
まず、図5(a)に示すように、糸掛けガイド20を最前端の支点ガイド13dよりも前方の原点位置(図4の(1)の位置)にし、ゴデットローラ12を糸掛け位置に移動させる。その上で、ゴデットローラ12から送られた複数の糸10をサクションパイプ25で吸引捕捉する。
【0035】
そして、図5(b)に示すように、糸掛けガイド20を原点位置のままにして、サクションパイプ25を操作して、作業者が糸掛けガイド20の各溝20aに複数の糸10を分離して掛ける。このとき、ゴデットローラ12を糸巻き取り位置よりも糸掛けガイド20に近い糸掛け位置に移動させることで、ゴデットローラ12に近い位置で複数の糸10を糸掛けガイド20に糸掛けすることができ、走行する糸10の姿勢が、ゴデットローラ12から遠い位置に比べて安定しており、糸掛けが容易となる。
【0036】
その後、図5(c)に示すように、糸掛けガイド20を原点位置のままにして、ゴデットローラ12を糸掛け位置から糸巻取位置に移動させる。そして、図5(d)に示すように、糸掛けガイド20をガイドレール22に沿って最後端の支点ガイド13aよりもさらに後方の最後方位置(図4の(2)の位置)までA方向(図4参照)に移動させる。すると、糸掛けガイド20に掛けられた複数の糸10は、最後端の支点ガイド13aよりもさらに後方に寄せられる。
【0037】
そして、糸掛けガイド20を、バー23を後退させつつ複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に沿って移動させて、複数の支点ガイド13a〜13dに糸10を掛けていくが、このとき、図4に示すように、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に対して角度θだけ傾けた傾斜方向に沿って支点ガイド13aより後方から支点ガイド13dよりも前方に糸掛けガイド20を移動させる。この角度θは、複数の支点ガイド13a〜13dの間隔l1と、糸掛けガイド20の複数の溝20aの間隔l2とから決定される。
【0038】
図5(a)に示すように、糸掛けガイド20を図4の(2)の最後方位置にして、複数の糸10を最後端の支点ガイド13aよりもさらに後方に寄せた状態で、糸掛けガイド20を上記傾斜方向(図4のB方向)に沿って移動させる。
【0039】
すると、まず、図4の(3)の位置に糸掛けガイド20が移動したときに、最も後方にある支点ガイド13aと最も糸掛けガイド20の基端側にある糸10aが交差して、図6(b)に示すように、この糸10aが支点ガイド13aに掛けられる。そして、さらに、糸掛けガイド20を上記傾斜方向に沿って移動させ続けると、糸掛けガイド20が図4の(3)→(4)→(5)の順に移動して、図6(c)に示すように、糸掛けガイド20に掛けられた基端側の糸10aから順に支点ガイド13a〜13dに掛けられる。
【0040】
その後、図6(d)に示すように、糸掛けガイド20を最前端の支点ガイド13dよりも前方まで移動させると、糸掛けガイド20に掛けられていた全ての糸10a〜10dが順に全ての支点ガイド13a〜13dに掛けられる。そして、全ての支点ガイド13a〜13dへの糸掛けが完了した糸掛けガイド20は、糸巻き取り時における複数の糸10の走行を阻害しない、複数の支点ガイド13a〜13dよりも前方の原点位置において退避している。
【0041】
本実施形態における紡糸巻取機1によると、ゴデットローラ12や複数の支点ガイド13a〜13dを移動させずに、複数の糸10を保持した糸掛けガイド20を、複数の支点ガイド13a〜13dとボビンホルダ7との間を複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に移動させることで、複数の糸10を対応する支点ガイド13にそれぞれ運ぶことができる。
【0042】
そして、糸掛けガイド20に保持された複数の糸10の並び方向と、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向が直交しており、各支点ガイド13が後方から糸掛け可能であり、糸掛けガイド20の溝20aには糸10が支点ガイド13の糸掛けと同じ方向から入り込んでいるので、糸掛けガイド20を後方から前方へ上記傾斜方向に移動させることで、糸掛けガイド20に保持された複数の糸10を、支持板15に干渉することなく、複数の支点ガイド13にその一方側から順に受け渡して糸掛けすることができる。
【0043】
このように、糸掛けガイド20は、複数の糸10を保持して移動するだけなので小型にすることができ、糸掛けガイド20やその移動機構なども含めた装置の構造を簡単化することができ、故障を低減し、製造コストを減らすことができる。また、糸掛けガイド20は、ボビンBへの糸巻き取り時には利用しないので退避させておくが、その大きさは小型なので退避領域を小さくすることでき、さらに、複数の支点ガイド13a〜13dとボビンホルダ7との間を移動するだけなので、新たに糸掛けガイド20の移動領域を確保する必要がなく、設置自由度を高くすることができる。
【0044】
次に、上述した実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0045】
本実施形態においては、糸掛けガイド20は、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に沿ったA方向に移動して、複数の糸10を最後端の支点ガイド13aよりも後方に寄せた後、上記傾斜方向(B方向)に移動して、複数の支点ガイド13a〜13dに糸掛けしていたが、糸掛けガイド20は、傾斜方向に移動せずに、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向に移動するだけの構成であってもよい。これでも、糸掛けガイド20を移動させることで、糸掛けガイド20に保持された複数の糸10を、複数の支点ガイド13a〜13dの対応する位置にそれぞれ運ぶことができる。糸10を対応する支点ガイド13の位置に運ぶことができれば、作業者による糸掛けは非常に容易なものとなる。
【0046】
また、本実施形態においては、ゴデットローラ12は、糸巻取位置では複数の支点ガイド13a〜13dの上方に配置されていたが、複数の支点ガイド13a〜13dの並び方向のより前方もしくは後方に配置されていてもよい。
【0047】
さらに、本実施形態においては、ゴデットローラ12の軸芯12aは、ボビンホルダ7の軸芯7aに対して直交していたが、直交しておらず、交差していてもよいし、平行であってもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、支点ガイド13は、トラバース時の綾振りの支点となるガイドとしての機能に加えて、複数の糸10を複数のボビンBに分配する分配ガイドとして機能していたが、綾振りの支点ガイドと分配ガイドを別個に設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 紡糸巻取機
3 巻取ユニット
7 ボビンホルダ
10 糸
11、12 ゴデットローラ
13a〜13d 支点ガイド
20 糸掛けガイド
B ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸部から送出された複数の糸が軸芯に沿って並んで巻き掛けられるゴデットローラと、
複数のボビンが軸芯に沿って直列に装着されており、前記ゴデットローラから送られた前記複数の糸を前記複数のボビンにそれぞれ巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸に沿った所定の配列方向に並べられており、前記ゴデットローラから送られた前記複数の糸を前記巻取軸に装着された前記複数のボビンにそれぞれ分配する複数の分配ガイドと、
前記複数の糸を保持して前記複数の分配ガイドの前記配列方向に移動可能な糸保持部材と、を備えていることを特徴とする紡糸巻取機。
【請求項2】
各分配ガイドは、前記配列方向の一方側から糸掛け可能な糸掛け部を有しており、
前記糸保持部材は、
前記配列方向及び前記配列方向と直交する方向の間の傾斜方向に移動可能であり、
前記複数の糸を前記配列方向と直交する方向に並んで保持した状態で、前記複数の分配ガイドよりも前記一方側から他方側まで前記傾斜方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の紡糸巻取機。
【請求項3】
前記ゴデットローラの軸芯は、前記配列方向と交差しており、
前記糸保持部材は、前記複数の分配ガイドよりも前記他方側から前記一方側に前記配列方向に移動した後、前記複数の分配ガイドよりも前記一方側から前記他方側に前記傾斜方向に移動することを特徴とする請求項2に記載の紡糸巻取機。
【請求項4】
前記糸保持部材は、前記配列方向と交差する方向に延在した棒部材であり、
前記棒部材の外周面には、少なくとも前記配列方向の一方側に溝が形成されており、前記溝は、前記棒部材の軸方向に沿って間隔をあけて、前記複数の糸に対応して複数形成されていることを特徴とする請求項3に記載の紡糸巻取機。
【請求項5】
前記糸保持部材は、所定の退避位置で前記複数の糸が掛けられており、
前記ゴデットローラは、前記巻取軸への糸巻き取り時に位置する糸巻取位置と、前記糸巻取位置よりも前記退避位置にある前記糸保持部材に近接した糸掛け位置とにわたって移動可能であり、
前記糸保持部材への糸掛け時には、前記ゴデットローラを前記糸掛け位置に移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紡糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188784(P2012−188784A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54215(P2011−54215)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】