説明

紡績機のための二つのドラフト装置を含むツインユニット

【課題】
紡績機の縦方向の空間必要量が減少され、従ってより小さなゲージを可能とする紡績装置を提供する。
【解決手段】
繊維ストランドをドラフトするための二つのドラフト装置を含みかつ紡績機に適用可能なツインユニットであって、ドラフト装置が多数の駆動可能な下部ローラーを含みかつ互いに対して本質的に鏡像対称的に配置されており、各下部ローラーが繊維ストランドをドラフトする領域を含むものにおいて、各下部ローラーが二つの軸受点を持ち、各軸受点が繊維ストランドをドラフトする領域の各側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紡績機のための繊維ストランドをドラフトするための二つのドラフト装置を含むツインユニットに関し、それは両方のドラフト装置のために一つのハウジングを含み、このハウジングが機械フレームに取り外し可能な方式で取り付けられており、このドラフト装置のそれぞれが別個に駆動されることができ、更にドラフト装置が互いに対して本質的に鏡像対称的に配置されており、かつ多数の駆動可能な下部ローラーを含み、更に各下部ローラーが繊維ストランドをドラフトする領域を含む。
【背景技術】
【0002】
モジュラー設計で構築された紡績機はヨーロッパ公開特許出願1422323で既知である。機械フレームに取り付けられた多数の自立紡績ユニットが機械の縦方向に設けられており、これらのユニットは糸の製造の役目をする。各紡績ユニットはモジュールとして簡単に置換されることができる。エアジェット紡績機の場合、これらの紡績ユニットは少なくとも一つのドラフト装置、駆動体及びエアジェット集合体を含む。各個別の紡績位置のドラフト装置は別個に駆動されることができる。
【0003】
別個に駆動されるこの形式のドラフト装置の場合、下部ローラーを張り出した位置に支持するのが標準的な慣行である。下部ローラーはこの結果ハウジングに対面するそれらの端部でのみ支持され、一方繊維ストランドをドラフトする下部ローラーの領域はフレームから上向きに突出し、そこには更なる軸受点を持たない。
【0004】
空間の効率的使用の理由のため、紡績機において、可能な最小ゲージ(それは各紡績位置間の可能な最小距離である)が実現されることが意図されている。それぞれ個別のドラフト装置及びその中の張り出して支持された下部ローラーのための完全なハウジングを持つ紡績装置はそれらがゲージの減少を制限するという不利を持つ。
【0005】
張り出して支持された装置はそれらが大きな寸法の非常に複雑な軸受を必要とするという不利を持つ。軸受が短く設計される程、軸受力は高くなる。
【0006】
ドイツ公開特許出願3904348から、張り出して支持された下部ローラーを持つかかるドラフト装置がツインユニットとして設計され、そこでは二つのドラフト装置が共通ハウジング内に配置されていることが既知である。両方のドラフト装置は本質的に鏡像対称的に互いに配置され、別個に駆動される。ツインユニットとしての鏡像対称的組み立てのため、空間の少しの節約が達成されることができるが、張り出して支持された下部ローラーのため、かなり大きな設置空間がなお必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は紡績機の縦方向の空間必要量が減少され、従ってより小さなゲージを可能とする紡績ユニットを創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は各下部ローラーが二つの軸受点を含み、各軸受点が繊維ストランドをドラフトする領域の各側に配置されることにより達成される。
【0009】
二つの軸受点を本質的に下部ローラーの両端に置くため、軸受力は減少され、軸受点はより小さな寸法のものであることができる。繊維ストランドをドラフトする領域の両側での下部ローラーの支持は主として割り当てられた上部ローラーの圧力のために発生する力の増加を避ける。かかる力の増加は張り出し支持の場合に発生する。荷重はむしろ両軸受点間で殆ど均一に分割される。
【0010】
鏡像対称配置のため、ツインユニットの対称面のいずれかの側に互いに対向して位置する両方の下部ローラーは一つの下部ローラー対として構成されることができる。ツインユニットの両方のドラフト装置のこれらの下部ローラー対は繊維ストランド輸送方向に沿ってそれらの位置を連帯的にのみ調整されることが多い。その場合、対称面に面する軸受点が共通軸受把持具を含むとき有利である。設計及び調整性はこれにより単純化され、更に設置空間がそれに応じて軸受点を置くことにより節約されることができる。
【0011】
たわみ可能に押圧される上部ローラーはドラフト装置の下部ローラーに対して配置される。上部ローラーは種々の方式で支持されかつ押圧されることができる。もし個々の上部ローラーが別個に上昇されることが必要なら、そのときはこれらの上部ローラーは有利には個々に支持されかつ押圧される。更に空間必要量を減少するために、できるだけ多くの上部ローラーをいわゆるツイン加圧ローラーとして設計することが有利でありうる。いわゆる下部ローラー対の二つの上部ローラーはこれにより共有静止軸上に回転可能に支持され、共有荷重集合体により押圧される。
【0012】
さらに、ツインユニットのハウジング内にも配置されている少なくとも一つの別個の駆動モーターを各ドラフト装置に割り当てることが有利である。このようにして、各ドラフト装置は個々に制御され、かつまた簡単な方式で停止させることができる。
【0013】
図面の簡略説明
本発明のこれらの及び更なる目的、特徴及び利点は添付図面に関してなされるそれらの以下の詳細な説明からより容易に明らかとなるであろう。図面において:
図1は二つのドラフト装置を含むツインユニットの平面図を示し、そこでは明確化の理由のため多数の上部ローラーは省かれており、
図2は面II−IIに沿ったツインユニットの断面図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び2によるツインユニット1は共通ハウジング3内の二つのドラフト装置2を含む。ドラフト装置2は紡績機の二つの隣接紡績位置S及びSに対して配置されており、既知の方式で繊維ストランド4及び5を希望の繊度にドラフトする役目をする。
【0015】
ツインユニット1のハウジング3は機械の縦方向に延びる機械フレーム6に取り外し可能に取り付けられている。紡績機に沿って多数の紡績位置Sを持つ多数のツインユニット1は機械フレーム6上に配置されている。次の紡績位置Sの隣接ツインユニット1′は図1中に示されている。紡績位置S,S,S……間の距離は同一であり、紡績機のゲージと呼ばれる。
【0016】
ドラフトされた繊維ストランド4,5に与えられる紡績撚りは種々の既知の方式で、例えばエアジェット集合体7により行われることができる。エアジェット集合体7はドラフト装置2並びにツインユニット1のハウジング3内の引き出しローラー対8と一緒に配置されることができる。ツインユニット1は有利な方式で完全な紡績ユニットを形成することができ、それは小型モジュールとして紡績機中に簡単な方式で設置されかつ分解されることができる。
【0017】
示されたドラフト装置2は四シリンダードラフト装置として設計されているが、これに代えて三シリンダードラフト装置として同様に設計されることができる。
【0018】
ドラフト装置2はそれぞれ四つの下部ローラー9,10,11,12及び13,14,15,16を含み、それらは繊維輸送方向Aに前後して配置されており、それらは増大する速度で駆動可能である。上部ローラー17,18,19,20,21,22は下部ローラー9〜16にそれぞれ配置されている。明確化の理由のため、下部ローラー11,12,15,16に属する上部ローラー19,20は図1には示されていない。
【0019】
上部ローラー17〜22は下部ローラー9〜16に対してたわみ可能に押圧され、従って同伴される。ドラフトされた繊維ストランド4,5の品質を改善するために、案内ベルト23,24は既知の方式で下部ローラー11,15及び上部ローラー19にループ掛けされることができる。
【0020】
繊維ストランド4,5はドラフト装置2の前方ローラー対25の下流で撚り装置に供給され、この撚り装置は示された実施例ではエアジェット集合体7として設計されている。形成糸26,27は引き出しローラー対8により引き出し方向Bに紡績機の巻き取り装置(図示せず)に供給される。引き出しローラー対8はまた、駆動下部ローラー28,29、及び下部ローラー28,29に対してたわみ可能に押圧されている上部ローラー30を含み、そこでは下部ローラー28,29に属する上部ローラー30は再度図1には示されていない。
【0021】
紡績位置Sの下部ローラー9〜12及び28は一点鎖線により示された方式でモーター31,32により駆動され、それらはまた、有利にはハウジング3に適用されている。ツインユニット1の第二紡績位置Sの下部ローラー13〜16及び29は同じ方式で二つのモーター(図示せず)により駆動される。動力伝達は歯付きベルトプーリーの形の駆動ギヤー33を介して行うことができる。
【0022】
本発明の目的は下部ローラー9〜16及び28,29を、上述の従来技術に比較して、必要な空間量の減少が達成されるような方式で支持することにある。紡績機のゲージは、同じ数の紡績位置S,S……を持つ紡績機がより短い全体長を持ち、かつ同じ全体長により、より大きな数の紡績位置S,S……が設置されることができるように、減少されるべきである。
【0023】
各下部ローラー9〜16及び28,29は二つの軸受点34及び35を含み、それらの一方が繊維ストランド4,5を案内する領域のいずれかの側に配置されるので、軸受力の減少が達成され、それが軸受点34のかなりの減少を可能とする。軸受点35のための追加の必要な設置空間にもかかわらず、従来技術と対照的に、設置空間は全体として減少されることができる。何故なら、張り出し軸受装置に存在する軸受点34は単独で、寸法の小さくなった軸受点34と軸受点35を一緒にした合計よりいかなる場合でもより大きな設置空間を必要とするからである。
【0024】
軸受点34及び35は有利にはローラー軸受として設計されることができ、軸受把持具36,37,38内に把持され、固定手段39、例えばねじによりハウジング3に固定される。軸受把持具36,37,38は繊維輸送方向Aに調整可能であることが規定されることができ、従って下部ローラー9〜12と13〜16の間の距離は調整されることができる。
【0025】
ツインユニット1の両方の紡績位置S及びSのドラフト装置2を互いに対して本質的に鏡像対称的に設計することが有利である。対称面は図1に一点鎖線40により示されている。ドラフト装置2の要素の鏡像対称配置は更なる設置空間の減少、従ってゲージの減少も可能とする。
【0026】
本発明の一実施態様では同一材料から作られた繊維ストランド4及び5が隣接紡績位置S及びSで処理されることを規定することができる。下部ローラー8〜12、及び13〜16は、対称面40のいずれかの側に互いに対向して位置する二つの下部ローラー9〜16、例えば下部ローラー11及び15の軸が互いに正確に整合するように調整される。下部ローラー11及び15は従って一直線の下部ローラー対を形成する。この場合ツインユニット1の対称面40に対面する軸受点35を共有軸受把持具38に把持することが有利である。これは下部ローラー対を形成するそれぞれの下部ローラー9〜16が連帯的に調整されかつ互いに正確に整合して配置されることを確実とする。もし全ての軸受点35が共有軸受把持具38により把持されるなら、なおいっそう設置空間が軸受把持具38の熟練した設計により節約されることができる。
【0027】
対称面40で互いに対向して配置された下部ローラー9〜16及び28,29は共有軸受把持具38の内側で互いに決して連結されるべきではない。何故なら、もし連結されると糸切れの場合に紡績位置S,Sのどれも独立的に駆動されるかまたは個々に停止されることができないからである。
【0028】
もし下部ローラー9〜16及び28,29の個々の下部ローラー対が共有軸受把持具38により把持されるなら、それぞれの上部ローラー17〜22及び30がツイン加圧ローラー41として設計されるとき有利でありうる。共有軸42,43,44はそのとき対称面40で互いに対向して配置された二つの上部ローラー17〜22及び30に対してそれぞれ割り当てられ、それらの軸42,43,44はまた、共有荷重集合体45により支持されることができる。
【0029】
例えば、下部ローラー10及び14は共有軸受把持具38と一緒にいわゆる下部ローラー対を形成することができ、それに対しツイン加圧ローラー41の形の上部ローラー18及び22が割り当てられる。上部ローラー18及び22は共有静止軸43上に回転可能に支持され、それにより軸43は荷重集合体45により保持される。
【0030】
特別な工程段階のために、特に中断後の一時的に停止した紡績位置Sの再スタートの場合に、例えば前方ローラー対25及び引き出しローラー対8の上部ローラー20及び30がそれぞれ個々に開かれねばならないことが必要かもしれない。かかる場合、これらの上部ローラー20,30を個々に支持すること及びそれらを別個の荷重装置46,47により押圧することが有利である。このようにして、もし紡績ステーションSの上部ローラー20,30が開かれねばならないなら、隣接した紡績位置Sでの紡績工程の中断が避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】二つのドラフト装置を含むツインユニットの平面図を示す。
【図2】面II−IIに沿ったツインユニットの断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機のための繊維ストランド(4;5)をドラフトするための二つのドラフト装置(2)を含むツインユニット(1)であって、それが両方のドラフト装置(2)のために一つのハウジング(3)を含み、このハウジング(3)が機械フレーム(6)に取り外し可能な方式で取り付けられ、このドラフト装置(2)のそれぞれが別個に駆動されることができ、更にドラフト装置(2)が互いに対して本質的に鏡像対称的に配置されており、かつ多数の駆動可能な下部ローラー(9〜16)を含み、かつ更に各下部ローラー(9〜16)が繊維ストランド(4;5)をドラフトする領域を含むものにおいて、各下部ローラー(9〜16)が二つの軸受点(34;35)を持ち、各軸受点(34;35)が繊維ストランド(4;5)をドラフトする領域の各側に配置されていることを特徴とするツインユニット。
【請求項2】
ツインユニット(1)の対称面(40)で互いに対向して配置された少なくとも二つの下部ローラー(9〜16)が下部ローラー対を形成し、そこで対称面(40)に面する軸受点(35)が共有軸受把持具(38)を持つことを特徴とする請求項1に記載のツインユニット。
【請求項3】
ツイン加圧ローラー(41)の形の上部ローラー(17〜22)が少なくとも一つの下部ローラー対に割り当てられることを特徴とする請求項2に記載のツインユニット。
【請求項4】
少なくとも一つの別個の駆動モーター(31;32)が一つのドラフト装置(2)に属する下部ローラー(9〜12;13〜16)に割り当てられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のツインユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−342482(P2006−342482A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155714(P2006−155714)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】