説明

紫外線を発光する応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用

【課題】本発明は、従来の応力発光材料よりも低い焼成温度での製造が可能で、優れた発光特性を示す応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用を提供する。さらに、350nmよりも短波長の高輝度発光特性を示す応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用を提供する。
【解決手段】一般式MN(PO(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)で表される構造を母体構造とし、上記一般式中のMまたはNの一部を、希土類イオンまたはIII族金属イオンの少なくとも一方によって置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用に関するものであって、特に、従来の応力発光材料よりも低い焼成温度での製造が可能で、優れた発光特性を示す応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部から様々な刺激(外部刺激)を受けることによって、可視光を発光する現象(いわゆる蛍光現象)が知られている。このような蛍光現象を示す物質は、蛍光体と呼ばれ、ランプや照明灯、ブラウン管やプラズマディスプレイパネル等の各種ディスプレイ、および顔料等の様々な分野で用いられている。
【0003】
また、外部刺激として、紫外線、電子線、X線、放射線、電界、または化学反応によって発光現象を示す物質(発光体)は、数多く知られている。また、近年、本発明者らは、摩擦、剪断力、衝撃力、振動等の機械的な外力を加えることによって生じた歪みにより発光する応力発光材料を見出しており、その評価方法および利用方法を開発している。
【0004】
具体的には、本発明者らは、(1)スピネル構造、コランダム構造、またはβアルミナ構造を有する応力発光体(特許文献1を参照)、(2)ケイ酸塩の応力発光体(特許文献2および3を参照)、(3)欠陥制御型アルミン酸塩の高輝度応力発光体(特許文献4を参照)、(4)エポキシ樹脂を含む複合材料および当該複合材料の塗布膜により作製した試験片に、圧縮、引張、摩擦、およびねじり等の機械的な力を加えることによって、応力分布を可視化評価する方法(特許文献4および5を参照)、(5)ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有し、酸化物、硫化物、セレン化物、およびテルル化物を主成分として構成される高輝度メカノルミネッセンス材料(特許文献6を参照)等を開発している。さらに、最近、本発明者らは、アルミナケイ酸塩の高輝度応力発光体、およびアルミナケイ酸塩の高輝度応力紫外線発光体を開発した(特許文献7を参照)。
【0005】
特許文献1〜4、6、および7に開示される応力発光体は、いずれも、肉眼でも確認できる程の輝度で、半永久的に繰り返し発光することが可能である。また、これらの応力発光体は、応力発光体を含む構造体における応力分布を測定するために用いることができる。上記応力分布の測定方法としては、例えば、(1)応力発光体を用いた、応力または応力分布の測定方法、(2)応力分布の測定システム(特許文献8を参照)、(3)機械的な外力を直接光信号に変換して伝達する発光ヘッド、(4)上記発光ヘッドを用いた遠隔スイッチシステム(特許文献9参照)等が挙げられる。
【特許文献1】特開2000−119647公報(平成12年(2000)4月25日公開)
【特許文献2】特開2000−313878公報(平成12年(2000)11月14日公開)
【特許文献3】特開2003−165973公報(平成15年(2003)6月10日公開)
【特許文献4】特開2001−49251公報(平成13年(2001)2月20日公開)
【特許文献5】特開2003−292949公報(平成15年(2003)10月15日公開)
【特許文献6】特開2004−43656公報(平成16年(2004)2月12日公開)
【特許文献7】国際公開WO2006/109704 A1(2006年10月19日公開)
【特許文献8】特開2001−215157公報(平成13年(2001)8月10日公開)
【特許文献9】特開2004−77396公報(平成16年(2004)3月11日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4、6、および7に開示されるように、数多くの応力発光材料が開発されているが、応力発光材料の発光色は、産業上利用される波長域を全て網羅するには至っていない。例えば、特許文献7には、波長350〜400nmの紫外線を発光する応力発光材料が開示されているものの、350nmよりも短波長の紫外線を発光する応力発光材料はこれまで見出されていない。また、応力発光材料は、原料を混合し、焼成することにより得られるが、その焼成温度は1000℃以上の高温であるため、製造に多くのエネルギーが必要である。したがって、従来にない波長域の発光を呈する応力発光材料や、従来の応力発光材料よりも低い焼成温度で製造できる応力発光材料の開発が求められている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、従来の応力発光材料よりも低い焼成温度での製造が可能で、優れた発光特性を示す応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用を提供することにある。また、第2の目的は、従来の応力発光材料よりも低い焼成温度での製造が可能であることに加えて、350nmよりも短波長の紫外線を発光する応力発光材料およびその製造方法、並びにその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、一般式MN(PO(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)で表される構造を母体構造とし、上記一般式中のMまたはNの一部を希土類イオンまたはIII族金属イオンに置換することにより、従来よりも低い焼成温度で、高輝度発光特性を示す応力発光材料を製造できることを独自に見出した。さらに、上記希土類イオンまたはIII族金属イオンとして、特定の金属イオンを用いることにより、350nmよりも短波長の紫外線を発光することを見出した。本発明者らは、これら独自に見出した知見に基づき、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、産業上有用な以下の発明を包含する。
【0009】
(1)下記一般式(a)
MN(PO・・・(a)
(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)
で表される構造を母体構造とし、上記一般式(a)中のMまたはNの一部が、希土類イオンまたはIII族金属イオンの少なくとも一方によって置換されていることを特徴とする応力発光材料。
【0010】
(2)上記一般式(a)中のMはアルカリ金属イオンであり、Nは希土類イオン、Laイオン、またはYイオンであることを特徴とする(1)に記載の応力発光材料。
【0011】
(3)上記一般式(a)中のMはNaイオン、Kイオン、Rbイオン、またはCsイオンであり、NはCeイオン、Prイオン、Ndイオン、Pmイオン、Smイオン、Euイオン、Gdイオン、Tbイオン、Dyイオン、Hoイオン、Erイオン、Tmイオン、Ybイオンであることを特徴とする(1)に記載の応力発光材料。
【0012】
(4)上記一般式(a)中のMはNaイオンであり、NはLaイオンであることを特徴とする(1)に記載の応力発光材料。
【0013】
(5)上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンは、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される希土類のイオンであり、上記一般式(a)中、MまたはNの一部と置換されるIII族金属イオンは、Tlイオンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の応力発光材料。
【0014】
(6)上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンは、Eu、Dy、Ce、およびTbからなる群より選択される希土類のイオンであり、上記一般式(a)中、MまたはNの一部と置換されるIII族金属イオンは、Tlイオンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の応力発光材料。
【0015】
(7)上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンはCeイオンであり、上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換されるIII族金属イオンはTlイオンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の応力発光材料。
【0016】
(8)上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンおよびIII族金属イオンの含有量が、0.1〜20mol%であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の応力発光材料。
【0017】
(9)紫外線を発光することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の応力発光材料。
【0018】
(10)波長が350nmよりも短い紫外線を発光することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の応力発光材料。
【0019】
(11)組成式が、下記一般式(b)
Na1−xLa(PO・・・(b)
(式中、QはCeイオンまたはTlイオンであり、xは0.01≦x≦0.2を満たす数である。)
で表されることを特徴とする(1)に記載の応力発光材料。
【0020】
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の応力発光材料を製造するための製造方法であって、原料を混合し、大気中、200〜350℃で、1〜4時間焼成し、さらに、大気中、400〜600℃で、10〜40時間焼成することを特徴とする応力発光材料の製造方法。
【0021】
(13)(1)〜(11)のいずれかに記載の応力発光材料を成形してなる応力発光体。
【0022】
(14)(1)〜(11)のいずれかに記載の応力発光材料と高分子材料とを混合してなる応力発光体。
【0023】
(15)1次元分散させて用いることを特徴とする(13)または(14)に記載の応力発光体。
【0024】
(16)上記応力発光材料が、2次元的に分布していることを特徴とする(13)または(14)に記載の応力発光体。
【0025】
(17)上記応力発光材料が、3次元的に分布していることを特徴とする(13)または(14)に記載の応力発光体。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる応力発光材料は、以上のように、一般式MN(PO(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)で表される構造を母体構造とし、上記一般式中のMまたはNの一部が希土類イオンまたはIII族金属イオンの少なくとも一方に置換されている。上記母体構造は、歪が生じやすい結晶構造である。それゆえ、機械的な外力の負荷により、上記母体構造が歪み、高輝度な発光を示すことができるという効果を奏する。また、本発明にかかる応力発光材料は、1000℃よりも低い温度での焼成により製造できるため、製造時の消費エネルギーを低減できるというという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明にかかる一実施形態について、図1〜図3に基づいて説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
<I.応力発光材料>
本発明にかかる応力発光材料は、一般式(a)
MN(PO・・・(a)
(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)
で表される構造を母体構造として、該一般式(a)中のMまたはNの一部が希土類イオンまたはIII族金属イオンの少なくとも一方に置換された構造を有する。上記母体構造は、その3次元結晶構造が機械的な外力の負荷により歪みやすい。そのため、上記構成によれば、機械的な外力の負荷により、母体構造の3次元結晶構造(空間)に歪みが生じ、強い発光を示す。なお、本明細書において、「応力発光」とは、摩擦力、せん断力、圧力、および張力等の機械的な外力による変形によって発光することが意図される。
【0029】
さらに、本発明にかかる応力発光材料は、従来の応力発光材料よりも低い焼成温度、具体的には1000℃よりも低い焼成温度で製造することができる。それゆえ、少ないエネルギーで製造することができる。なお、本発明にかかる応力発光材料を製造する方法については後述するので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
また、本発明にかかる応力発光材料の母体構造の結晶構造は、機械的な外力以外によっても、歪ませることができる。具体的には、上記母体構造は、電場等、種々のエネルギーによって歪ませることができる。したがって、本発明にかかる応力発光材料は、応力発光以外の発光様式で、発光させることができる。つまり、本発明にかかる応力発光材料は、少なくとも応力発光を示せばよく、応力発光に加えて、その他の発光様式による発光を示すものであってもよい。
【0031】
本発明にかかる応力発光材料において、希土類イオンおよびIII金属イオンは発光中心として機能するものである。発光材料では、発光中心の種類によって、発光材料の発光色が変化する。言い換えれば、本発明にかかる応力発光材料おいて、上記希土類イオンおよびIII族金属イオンの種類を変更することによって、発光色を変化させることができる。上記希土類イオンおよびIII族金属イオンは、発光中心となるものであればよいが、具体的には、例えば、希土類イオンとして、ユウロピウム(Eu)、ジプシロシウム(Dy)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、テルビウム(Tb)、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、スカンジウム(Sc)、プロメチウム(Pm)、ホルミウム(Ho)、およびルテチウム(Lu)等の希土類のイオンを挙げることができる。
【0032】
また、III族金属イオンとして、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびタリウム(Tl)等のIII族金属のイオンを挙げることができる。
【0033】
本発明にかかる応力発光材料においては、上記例示した希土類イオンおよびIII族金属イオンを単独で含んでいてもよいし、複数を組み合わせて含んでしてもよい。また、上記例示したもののうち、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される希土類のイオンおよび/またはTlイオンを含むことが好ましく、Eu2+、Tb3+、Dy3+、Ce3+、およびTlからなる群より選択される希土類イオンまたはIII族金属イオンを含むことがより好ましい。これらの希土類イオンまたはIII族金属イオンを含むことにより、高輝度の応力発光材料とすることができる。
【0034】
さらに、上記例示した希土類イオンおよびIII族金属イオンのうち、Ce3+またはTlを含むことが好ましい。上記特許文献1〜4、6、および7に開示されるように、従来、350nm以上の波長領域(青色〜赤色の波長域)で強い発光を呈する応力発光材料は知られているが、それより短い発光波長域、すなわち、350nmよりも短波長の紫外線を発光する応力発光材料は得られていなかった。しかし、本発明にかかる応力発光材料において、例えば、Ce3+またはTlを発光中心金属イオンとして選択すれば、波長が350nmよりも短波長の紫外線を発光する高輝度応力発光材料を実現することができる。つまり、本発明によれば、上記母体構造の一部を、特定の希土類イオンまたはIII族金属イオンによって置換することにより、紫外線、好ましくは、350nmより短波長の紫外線を発光する応力発光材料を実現することができる。なお、本明細書において、「紫外線」とは、波長200〜400nmの領域、好ましくは波長200〜350nmの領域の放射が意図される。
【0035】
また、上記希土類イオンおよびIII族金属イオンの含有量は、その具体的な数値については特に限定されるものではないが、該含有量は、一般的に発光材料の発光特性に影響を与える。したがって、上記含有量は、所望の発光特性が得られる範囲で設定されればよい。具体的には、上記母体構造の3次元構造が維持される範囲内で、上記希土類イオンおよびIII族金属イオンの含有量を設定することが好ましい。より具体的には、上記含有量は、0.1〜20mol%であることが好ましく、1〜15mol%であることがより好ましく、1〜10mol%であることが特に好ましい。なお、上記含有量が、0.1mol%未満の場合、効率的な発光が得られず、20mol%を越えると母体構造が乱れ、発光効率が低下する傾向がある。
【0036】
すなわち、本発明にかかる応力発光材料は、具体的には、例えば、組成式が下記一般式(b)〜(e)
1−xN(PO・・・(b)
1−x−yN(PO・・・(c)
MQ1−x(PO・・・(d)
MQ1−x−y(PO・・・(e)
(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンであり、QおよびRはそれぞれ独立して希土類イオンまたはIII族金属イオンであり、xは0.01≦x≦0.20を満たす数であり、yは0.01≦y≦0.20を満たす数である。)
のいずれかで表されうる。
【0037】
上記一般式(a)〜(e)において、Mは1価の金属イオンであればよいが、具体的には、例えば、アルカリ金属イオンを挙げることができる。中でも、Naイオン、Kイオン、Rbイオン、またはCsイオンであることが好ましい。また、上記一般式(a)〜(e)中、Nは3価の金属イオンであればよいが、具体的には、例えば、希土類イオンを挙げることができる。中でも、Ceイオン、Prイオン、Ndイオン、Pmイオン、Smイオン、Euイオン、Gdイオン、Tbイオン、Dyイオン、Hoイオン、Erイオン、Tmイオン、Ybイオン、Laイオン、またはYイオンであることが好ましい。(M,N)の好ましい組み合わせとして、より具体的には、(Na,La)、(K,Yb)、(K,Ce)、(K,Gd)、(K,Bi)、(Na,Er)、(Na,Nd)、(Na,Bi)、(Na,Gd)、(Cs,Nd)、(Cs,Er)、(Cs,Gd)、(Cs,Er)、(Rb,Nd)、(Rb,Ho)、(Rb,Tm)、(Ag,Nd)、および(Ag,La)を挙げることができる。上記構成によれば、本発明にかかる応力発光材料の母体構造を応力により歪みやすい構造とすることができる。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態として、(M,N)=(Na,La)、すなわち、NaLa(POを母体構造とする応力発光材料を挙げることができる。以下、本発明にかかる応力発光材料の一実施形態として、NaLa(POを母体構造とする応力発光材料について、より詳細に説明する。
【0039】
NaLa(POの結晶構造は、空間群P2/nをとる(J. Zhu, W.-D. Cheng, D.-S. Wu, J. Solide State Sci., 6 (2006) 597を参照)。より詳しくは、図1に示すように、La−O−PによってLaO多面体と[(PO4−が結合している3次元フレームネットワーク構造で形成されている。このフレームワークの隙間にNaが位置している。NaはNa−O結合距離が2.416〜2.756Åである酸素原子6個に配位されている。一方、図3に示すように、La3+は8個の酸素原子によって囲まれており、La−O結合距離は2.441〜2.558Åである。つまり、NaLa(POでは、Laサイトよりも、Naサイトのほうが大きい。
【0040】
また、[(PO4−の波状結合は、図2に示すように、a軸に沿ってPO四面体の頂点共有によって形成される(POにより構成されている。PO四面体において、P−Oの距離は1.475〜1.692Åの範囲で変動し、最も近い距離ではP−Oの結合は分断されているのに対して、最も長い距離では、P−Oは結合している。O−P−Oの角度は99.4〜119.6°であり、[(PO4−のP−O−Pの角度は131.5〜139.4°である。
【0041】
NaLa(POにおいては、上述したように、Laサイトよりも、Naサイトのほうが大きい。そのため、本実施形態にかかる応力発光材料では、母体構造であるNaLa(POのNaの一部が希土類イオンまたはIII族金属イオンに置換されていることが好ましい。ただし、Laの一部が希土類イオンまたはIII族金属イオンに置換されているものであってもよい。上記希土類イオンまたはIII族金属イオン、およびその含有量については、上述した通りである。
【0042】
本発明にかかる応力発光材料は、以上説示した構成を備えるため、機械的な外力の負荷により、高輝度な発光を呈することができる。また、本発明にかかる応力発光材料は、従来の応力発光材料よりも低温での焼成で製造することができる。したがって、製造に要する消費エネルギーを低減することができる。さらに、本発明にかかる応力発光材料は、上記母体構造を有するため、発光中心として特定の金属イオンを選択することにより、300〜600nm波長領域の応力発光材料を提供することができる。つまり、従来にはない350nmよりも短波長の紫外線を発光する応力発光材料を提供することができる。そのため、本発明にかかる応力発光材料は、発光体材料として幅広く用いることができる。特に、紫外線を発光する応力発光材料は、その発光色(青)を利用するだけではなく、例えば、紫外線エネルギーを励起エネルギーとして用いることも可能である。そのため、特定の発光色を呈する発光材料として用いることに加えて、より幅の広い用途に用いることができる。さらに、本発明にかかる応力発光材料の母体構造はリン酸塩であるため、環境汚染の要因となりにくい。そのため、例えば、自然環境中で用いる用途にも、好適に用いることができる。
【0043】
<II.応力発光材料の製造方法>
本発明にかかる応力発光材料の製造方法(以下、単に「本発明にかかる製造方法」ともいう)は、上述の本発明にかかる応力発光材料を製造するための製造方法である。具体的には、本発明にかかる応力発光材料を固相反応法により製造する方法であって、より具体的には、目的とする応力発光材料の組成となるように、原料を秤量し、焼成することにより、応力発光材料を製造する方法である。一般的に、応力発光材料製造において、焼成条件は得られる応力発光材料の物性に大きな影響を与える因子である。より詳しく説明すると、原料が焼成時に非晶質化(ガラス化)すると、所望の母体構造が形成されない。換言すると、機械的な外力により歪みが生じにくい結晶構造となる。このような構造となると、同じ組成であっても、機械的な外力により、結晶構造に歪みが生じないため、応力発光性を示さなくなる。つまり、得られる材料が応力発光性を示すためには、焼成により、機械的な外力により歪みが生じやすい結晶構造を有する母体構造が形成されることが前提となる。したがって、本発明にかかる製造方法においては、機械的な外力により歪みが生じやすい結晶構造を有する母体構造が形成される条件で、焼成を行う必要がある。例えば、焼成時に、急速な昇温または降温を行うと、所望の結晶性が得られにくくなる傾向がある。そのため、本発明にかかる応力発光材料の製造方法では、焼成時に、ゆっくり(段階的に)昇温および降温することが好ましい。より具体的には、焼成温度の昇温および降温は、1〜10℃/minの速度で、段階的に行うことが好ましい。
【0044】
焼成温度もまた、応力発光材料の物性に大きく影響を与える。したがって、上記焼成温度は、所望の結晶構造を有する母体構造が形成されるように、応力発光材料の組成に応じて設定することが好ましい。具体的には、400〜600℃とすることが好ましく、450〜600℃とすることがより好ましく、600℃とすることがさらに好ましい。上記焼成温度によれば、機械的な外力により歪みが生じやすい結晶構造を有する母体構造を形成することができる。それゆえ、高輝度の応力発光材料を製造することができる。また、従来の応力発光材料の焼成温度は、1000℃以上の高温であるが、本発明にかかる製造方法では、より低い焼成温度で応力発光材料を製造できる。そのため、製造設備コストや、製造に要する消費エネルギーを低減することができる。なお、焼成は、大気中で行うことが好ましい。
【0045】
また、焼成時間は、応力発光材料の組成および焼成温度に応じて、適宜変更されるものであり、特に限定されるものではないが、一般的には、10〜40時間の範囲で設定すればよい。
【0046】
さらに、本発明にかかる製造方法では、上記焼成温度で焼成する前に、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成温度は、150〜400℃とすることが好ましく、200〜350℃することが好ましい。さらに、仮焼成時間は、1〜4時間とすることが好ましい。このような仮焼成を行うことにより、得られる応力発光材料の収量を増加させることができる。つまり、応力発光材料の製造効率を向上させることができる。なお、仮焼成もまた、大気中で行うことが好ましい。
【0047】
本発明にかかる製造方法において、上記原料、すなわち、本発明にかかる応力発光材料の原料は、焼成によって本発明にかかる応力発光材料となるものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、本発明にかかる応力発光材料の組成に応じて、アルカリ金属塩、希土類塩、リン酸塩、および発光中心となる金属の塩を原料として用いればよい。上記アルカリ金属塩、希土類塩、リン酸塩、および発光中心となる金属の塩は、いずれも、無機塩であっても、有機塩であってもよい。上記無機塩としては、酸化物、ハロゲン化物(例えば塩化物)、水酸化物、アンモニウム塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、および硝酸塩等を挙げることができる。また、上記有機塩としては、酢酸塩、およびアルコラート等を挙げることができる。上記原料の量は、製造する応力発光材料の組成に応じて、構成原子比に相当する割合の量を用いればよいが、上記母体構造を容易に歪ませるために、アルカリ金属イオンの格子欠陥を形成させることが有利である。そのため、母体構造の化学組成量論よりもアルカリ金属の組成は0.1〜20モル%の範囲内で減らすことが好ましい。また、上記原料には、ホウ酸、または塩化アンモニウム等のフラックス剤を含有させてもよい。
【0048】
本発明にかかる製造方法において、上記原料は、所望量を秤量した後、エタノール等を用いて、湿式混合することが好ましい。その後、上述した条件で、仮焼成および焼成を行うことが好ましい。
【0049】
<III.応力発光体>
本発明にかかる応力発光材料は、高輝度の発光を示す。また、その一実施形態として、従来得られなかった350nmよりも短波長の紫外線の強い発光を示す。したがって、本発明にかかる応力発光材料は、このような発光特性を利用して、様々な産業分野に用いることができる。本発明にかかる応力発光材料の利用形態は特に限定されるものではないが、例えば、上記応力発光材料を成形してなる応力発光体として用いることができる。また、本発明にかかる応力発光材料と高分子材料とを混合してなる応力発光体として用いることができる。したがって、本発明には、このような応力発光体が含まれる。以下、本発明にかかる応力発光体について説明する。
【0050】
本発明にかかる応力発光体は、本発明にかかる応力発光材料を含有していればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、他の無機材料または有機材料と混合し、複合材料からなる応力発光体とすることができる。より具体的には、例えば、応力発光材料と高分子材料とを混合して平板状に成形した構成とすることができる。応力発光材料と混合する高分子材料は特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂を挙げることができる。上記高分子材料の混合量は特に限定されるものではなく、例えば、応力発光材料を平板状に形成してその形状を維持できる程度の量を混合すればよい。また、上記高分子材料の混合条件も特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。このような構成によれば、上記複合材料は、本発明にかかる応力発光材料を含んでいるので、機械的な外力によって、この複合材料に歪を与えると、複合材料中の応力発光材料に歪が生じる。そして、この歪が励起エネルギーとなり、複合材料は発光する。
【0051】
本発明にかかる応力発光体は、一実施形態として、上記応力発光材料を微粒子に成形してなる応力発光体でありうる。上記応力発光材料を微粒子に成形する方法は、特に限定されるものではない。例えば、粉末状の応力発光材料を従来公知の方法を用いて、微粒子に成形すればよい。もちろん、この際、微粒子を形成するために必要な添加剤を、適宜加えてもよい。また、上記微粒子の粒径は特に限定されないが、100μm以下とすることが好ましく、1nm〜100μmとすることがより好ましい。本実施形態にかかる応力発光体は、該応力発光体の微粒子を、対象系に1次元分散させて、機械的な外力によって発光させ、その発光を利用する用途に用いることができる。なお、本明細書において、「1次元分散」とは、微粒子状のある物質が、他の均一な物質の中に散在する現象をいい、「1次元分散させる」とは、微粒子状のある物質(本発明における例としては、粒径が数nm〜100μmの応力発光微粒子)を、他の均一な物質の中に散在させることが意図される。また、本実施形態にかかる応力発光体は、応力発光材料が2次元的、または3次元的に分布した応力発光体(詳細は後述する)を製造するための材料として用いることもできる。
【0052】
本発明にかかる応力発光体は、一実施形態として、上記応力発光材料が2次元的に分散している応力発光体でありうる。本実施形態にかかる応力発光体としては、例えば、基板等の平面状の対象物に本発明にかかる応力発光材料をコーティングし、平面膜状に成形した実施形態を挙げることができる。本実施形態にかかる応力発光体を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、粉末状の応力発光材料や微粒子状の応力発光材料(応力発光体)を、基板等の平面状の対象物の表面に、従来公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。なお、成形時、製膜するために必要な添加剤を適宜加えてもよい。
【0053】
また、本実施形態にかかる応力発光体は、本発明にかかる応力発光材料の母体構造を形成しうる化合物、例えば硝酸塩やハロゲン化物やアルコキシ化合物等と、発光中心となる金属を含有する化合物とを溶剤に溶解して調製した塗布液を、耐熱性基材の表面に塗布したのち、焼成することにより製造することもできる。上記耐熱性基材は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、石英、シリコン、グラファイト、石英ガラスやバイコールガラス等の耐熱ガラス、アルミナや窒化ケイ素や炭化ケイ素やケイ化モリブデン等のセラミックス、ステンレス鋼のような耐熱鋼やニッケル、クロム、チタン、モリブデン等の耐熱性金属または耐熱性合金、サーメット、セメント、コンクリート等を挙げることができる。
【0054】
本実施形態にかかる応力発光体は、例えば、応力発光材料を含有する膜(フィルム)に対して、機械的な外力を負荷することにより発光させ、該発光を利用する用途に用いることができる。また、このように、本発明にかかる応力発光材料を膜状に成形して用いることにより、少量の応力発光材料で大面積の発光を実現することができる。
【0055】
また、本発明にかかる応力発光体は、一実施形態として、本発明にかかる応力発光材料が3次元的に分布している応力発光体でありうる。本実施形態にかかる応力発光体としては、例えば、本発明にかかる応力発光材料を3次元のネットワーク構造(例えば、立体的な構造物)にコーティングして立体膜状に成形した実施形態や、本発明にかかる応力発光材料を立体成形して立体構造物とした実施形態等を挙げることができる。本実施形態にかかる応力発光体を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、めっきや鋳型等の従来公知の技術を用いて、本発明にかかる応力発光材料を3次元的に立体成形することにより、製造することができる。
【0056】
以上説示した実施形態にかかる応力発光体において、応力発光材料として、紫外線発光特性を示す応力発光材料を用いれば、機械的な外力によって発生した紫外線を応力発光体に接触または近接する対象物に対して、物理的および/または化学的に作用させることができる。具体的には、紫外線は、短波長であるためエネルギーが高い。このため、応力紫外線発光材料の発光により得られる紫外線は、励起光として用いることができる。例えば、赤・黄・緑等の青とは異なる色の光を発光する発光材料であって、紫外線の光で発光し、かつ、応力で発光しない発光材料を、紫外線を発光する本発明の応力発光材料と混合して複合材料(発光体)とする。この複合材料に、応力を加えると、本発明にかかる応力発光材料のみが発光し、紫外線を放射する。そして、この放射された紫外線により、上記青とは異なる色の光を発光する発光材料を励起することができる。このような構成によれば、青から赤までの全ての色の発光体を発光させることができる。その結果、あらゆる発光色の応力発光体を実現することができる。
【0057】
さらに、紫外線は、エネルギーが高いため、検出器による検出が容易である。このため、紫外線を発光する応力発光材料および応力発光体の発光強度を容易に検出することができる。さらに、紫外線は、蛍光灯等の照明器具から放出が少なく、その発光を計測する時に照明環境下でも干渉が少ない利点がある。
【0058】
また、本発明にかかる応力発光体は、機械的な外力、例えば摩擦力、せん断力、衝撃力、振動、風力、超音波等を加えることによって発光する。この発光強度は、励起源となる機械的な外力の性質に依存するが、一般的には加えた機械的な作用力が大きいほど高くなる傾向がある。したがって、本発明にかかる応力発光体の発光強度を測定することによって、該応力発光体に加えられている機械的な外力を、無接触で測定することができる。つまり、本発明にかかる応力発光体によれば、応力状態を可視化することができる。このため、本発明の発光体は、応力検出器等、応力を検出するあらゆる分野に応用することができる。また、本発明にかかる応力発光体は、蓄光体、または、蛍光体としても利用できる。
【0059】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0060】
本発明について、実施例および図4〜図15に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0061】
〔製造例1:NaLa(POの製造〕
NaLa(POの粉末試料合成には固相反応法を用いた。NaCl(99.5%)、La、および(NHHPO(98.5%)を秤量し、エタノールを用いて湿式混合した。得られた混合粉末を、大気中で、室温から900℃まで昇温速度10℃/minで加熱した。TG−DTAの測定の結果、400℃付近から結晶化されることがわかった(図示せず)。しかし、測定後、試料は非常に少なくなることがわかったため、本焼成の前に仮焼成を行うことにした。具体的には、大気中、350℃で4時間仮焼成後、700℃で10時間焼成し、NaLa(POの粉末試料を製造した。なお、昇温速度は、10℃/minとした。
【0062】
得られたNaLa(POの粉末試料について、上述の方法で結晶構造解析を行った。結晶構造解析は、CuKα線を用いた粉末X線回折(XRD)測定により得られたXRDパターンを用いて行った。その結果、図4(a)に示すように、単斜晶(空間群:P2/n)に帰属されており、目的のフレームネットワーク構造が形成されていることが確認された。
【0063】
さらに、得られたNaLa(POの粉末試料を用いて、NaLa(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。励起スペクトルおよび発光スペクトルは、分光蛍光光度計(JASCO FP−6600)を用い、室温にて測定した。その結果、図5(a)に示すように、NaLa(POの発光スペクトルにおいて、450nm、590nm付近に発光ピークがみられた。この結果は、J.Zhuら(J. Zhu, W.-D. Cheng, D.-S. Wu, J. Solide State Sci., 6 (2006) 597を参照)が報告しているNaLa(POの発光スペクトルとピーク位置が一致していた。このことから、目的の構造のNaLa(POが製造できたことを確認できた。
【0064】
〔実施例1:Na0.950.05La(PO(Q=Eu3+,Tb3+)の製造〕
応力発光材料である粉末試料合成には固相反応法を用いた。NaCl(99.5%)、La、(NHHPO(98.5%)、Eu(99.9%)、およびTb(99.9%)を組成比がNa0.950.05La(PO(Q=Eu,Tb)となるように秤量し、エタノールを用いて湿式混合した。得られた混合粉末を、空気中、350℃で4時間仮焼成後、700℃で10時間焼成し、Na0.95Eu0.05La(POおよびNa0.95Tb0.05La(POの粉末試料を製造した。
【0065】
得られたNa0.95Eu0.05La(POおよびNa0.95Tb0.05La(POの粉末試料について、製造例1に記載の方法で、結晶構造解析を行った。その結果、図4(b)および(c)に示すように、いずれも単斜晶(空間群:P2/n)に帰属されており、目的のフレームネットワーク構造が形成されていることが確認された。なお、図4(b)は、Na0.95Eu0.05La(POのXRDパターンを示す図であり、図4(c)は、Na0.95Tb0.05La(POのXRDパターンを示す。
【0066】
次に、得られたNa0.95Eu0.05La(POおよびNa0.95Tb0.05La(POの粉末試料を用いて、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果、図5(b)に示すように、Na0.95Eu0.05La(POの発光スペクトルでは、線状発光スペクトルを590nm、630nmの位置に確認できた。この発光は、Eu3+J’遷移による発光と考えられる。また、上記発光波長から分かるように、Na0.95Eu0.05La(POは、赤色の発光を呈した。Eu3+はf電子配置のf−f遷移であり、f電子による発光であるため、発光色は母体構造には影響されない。そのため、Na0.95Eu0.05La(POの発光色は赤色となったものと考えられる。
【0067】
一方、図5(c)に示すように、Na0.95Tb0.05La(POの発光スペクトルにおいても、Tb3+特有の線状発光スペクトルがみられた。Tb3+もf電子による発光であるため、発光色は母体構造に影響されない。そのため、母体構造をNaLa(POとするNa0.95Tb0.05La(POにおいても、550nmに最も強い発光バンドを持つの発光を呈したものと考えられる。なお、これは、の遷移確率が、電気双極子遷移と磁気双極子遷移との双方で最も大きいためと考えられている。
【0068】
〔実施例2:Na0.950.05La(PO(Q=Ce3+,Tl,Dy3+)の製造〕
実施例1と同様に、応力発光材料である粉末試料合成には固相反応法を用いた。NaCl(99.5%)、La、(NHHPO(98.5%)、CeO(99.9%)、TlNO(99.9%)、およびDy(99.9%)を組成比がNa0.950.05La(PO(Q=Ce,Tl,Dy)となるように秤量し、エタノールを用いて湿式混合した。得られた混合粉末を、大気中、350℃で4時間仮焼後、大気中、700℃で10時間焼成した。しかし、この条件では、焼成中に溶けてしまい、生成物が硬くなって、膨張し、試料の回収が困難となった。そこで、焼成条件を変更し、上記混合粉末を、大気中、200℃で4時間仮焼後、大気中、600℃で40時間焼成して、Na0.95Ce0.05La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、およびNa0.95Dy0.05La(POの粉末試料を製造した。
【0069】
得られたNa0.95Ce0.05La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、およびNa0.95Dy0.05La(POの粉末試料について、製造例1に記載の方法で、結晶構造解析を行った。図6(a)〜(c)に示すように、いずれも、グラフ下段に示すNaLa(POと回折ピークが一致していた。これにより、目的であるフレームワーク構造が形成されていることが確認できた。なお、図6(a)〜(c)は、それぞれ、Na0.95Ce0.05La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、およびNa0.95Dy0.05La(POのXRDパターンを示す。
【0070】
次に、得られたNa0.95Ce0.05La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、およびNa0.95Dy0.05La(POの粉末試料を用いて、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。
【0071】
その結果、図7(a)に示すように、Na0.95Ce0.05La(POの発光スペクトルにおいて、308nmおよび327nmの2つのピークがみられた。また、励起スペクトルも294nm、252nm、および223nmに3つのピークがあり、分離していた。Ce3+の5d準位は3価希土類イオンの中で最も低い。しかし、4f励起準位(7/2 ,〜2000cm−1)との間隔が大きいので、一般に発光効率が高く、母体構造に依存して近紫外部から近赤外部まで、多彩な発光を示す。発光波長の母体構造に対する依存性は、Ce3+の5d準位の結晶場による分裂に起因するものである。Ce3+の5d励起状態のエネルギーレベルは大きく、5dと5dEに分裂する。そして、スピン軌道相互作用により5dはさらに分離する。また、4fの基底状態も5/2軌道と7/2軌道とに分離する。したがって、図7(a)に示す発光スペクトルは、5dに最低励起軌道から2つに分離した基底状態(5/27/2)へそれぞれ緩和するため、2つのピークからなる発光スペクトルとなったものと考えられる。
【0072】
また、Na0.95Tl0.05La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルは、幅の広いブロードなスペクトルであった。発光ピークは360nmであり、短波長発光を示すことがわかった。
【0073】
さらに、Na0.95Dy0.05La(POの発光スペクトルは、477nm、486nm、および573nmにピークをもつ線状発光スペクトルを示した。これは、9/2から15/2への遷移、15/2から15/2から11/2への遷移による発光であると考えられる。また、470〜500nmと、570〜600nmとにピークをもっているため、Na0.95Dy0.05La(POの発光は、白色に近い発光色に見えることがわかった。
【0074】
〔実施例3:NaLa(PO:Ce3+の製造〕
実施例1と同様に、応力発光材料である粉末試料合成には固相反応法を用いた。NaCl(99.5%)、La、(NHHPO(98.5%)、およびCeO(99.9%)を組成比がNa1−xCeLa(PO(0.01≦x≦0.20)となるように秤量し、エタノールを用いて湿式混合した。得られた混合粉末を、大気中、200℃で4時間仮焼後、大気中、150〜1000℃の範囲で10時間焼成して、Na1−xCeLa(PO(0.01≦x≦0.20)の粉末試料を製造した。
【0075】
その結果、Na0.90Ce0.10La(POにおいて、焼成温度を1000℃とすると、試料がるつぼに吸着する上、さらに蒸発する量が多く、試料の回収が困難となった。そこで、400℃、600℃、および900℃で10時間焼成して得たNa0.90Ce0.10La(POの粉末試料について、それぞれ、製造例1に記載の方法で結晶構造解析を行った。その結果得られた粉末X線回折パターンを図8(a)に示す。焼成温度が400℃および600℃の場合、NaLa(POの回折ピークと一致し、単一相が形成された。一方、焼成温度が900℃の場合には、NaLa(POの回折ピークとは一致しなかった。さらに詳細に解析した結果、焼成温度が900℃の場合、LaPの不純物相が形成されていることがわかった。つまり、900℃で10時間焼成すると、高温過ぎるため、目的の結晶構造が得られないことがわかった。
【0076】
次に、上記各焼成温度で得られたNa0.90Ce0.10La(POの粉末試料を用いて、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果、図8(b)に示すように、400℃および600℃の焼成温度で得られた試料では、励起スペクトルにおいて3つの励起帯がはっきりと観測された。一方、900℃の焼成温度で得られた試料では、励起スペクトルの明確な分裂は見えなかった。また、600℃の焼成温度で得られた試料が、最大の発光強度を示し、一方、900℃の焼成温度で得られた試料は、発光強度は非常に低くかった。さらに、400℃および600℃の焼成温度で得られた試料では、発光ピークが327nmであったのに対し、900℃の焼成温度で得られた試料では、発光ピークは322nmであり、短波長側へシフトしていた。
【0077】
また、焼成温度を600℃、焼成時間を10時間として得られた試料は、発光強度が高いことに加えて、試料の回収が容易であった。そのため、次に、焼成温度を600℃、焼成時間を10時間として、発光強度のCe3+添加量に対する依存性を検討した。
【0078】
Ce3+添加量を0.01at%、0.05at%、0.10at%、0.15at%、および0.20at%として、各Ce3+添加量の粉末試料を製造した。得られた粉末試料について、製造例1に記載の方法で結晶構造解析を行った。その結果、図9(a)に示すように、すべての試料において、不純物を含まないNaLa(POの単一相が形成された。
【0079】
次に、得られた粉末試料を用いて、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果、図9(b)に示すように、5at%のCe3+を添加した試料において、最も強い発光を示した。また、Ce3+の添加量が5at%よりも増加すると、発光強度が減少した。さらに、Ce3+の添加量による励起スペクトルの形状の変化は見られず、3つの励起帯を持ち、294nmに最大励起波長を示した。さらに、発光スペクトルにおいても、Ce3+の添加量の変化によるシフトは見られず、発光ピークは327nmであった。
【0080】
以上の結果を踏まえて、焼成条件について、さらに検討を行った。具体的には、焼成時間を10時間とし、焼成温度を450℃、500℃、550℃、または600℃として、検討した。その結果、空気中、焼成時間10時間、焼成温度550℃で焼成した15at%Ce3+添加の試料において、PL強度(発光強度)の最大値を示すことがわかった。そこで、Na0.85Ce0.15La(POについて、製造例1に記載の方法で、結晶構造解析、並びに、励起スペクトルおよび発光スペクトル測定を行った。その結果、図10(a)に示すように、すべての回折ピークは単斜晶(空間群:P2/n)に帰属でき、不純物を含まない目的物質の単一相が形成されていることが確認できた。また、図10(b)に示すように、最大励起波長は294nmであった。さらに、327nmに強い発光ピークを持つ発光スペクトルが観測された。
【0081】
このような発光特性をもつNa0.85Ce0.15La(POについて、応力発光評価を行った。評価試料として、Na0.85Ce0.15La(POの粉末試料0.5gとエポキシ樹脂4.5gとを混合し、サイズφ25×9mmに成形された円板状の複合ペレットを用いた。応力発光は、材料試験機を用いた応力発光測定装置を用いて評価した。試料への一軸圧縮は、荷重ゲージが備わった一般的な材料試験機を用いて評価した。応力発光の発光強度測定は、光電子倍増管(PHOTOMULTIPLIER TUBE)を通してフォトカウンターを用いて測定した。光電子倍増管は、Hamamatsu製のR585を主として用い、長波長側の測定の際には、Hamamatsu製のR649を用いた。評価方法としては、図10(b)の励起スペクトルに基づき、波長254nmの紫外線を照射することにし、波長254nmの紫外線を1分間照射後、1分間保持した試料に対して、一軸圧縮力を材料試験機により加え、その際の発光を光ファイバーにて測定した。圧縮応力は1000Nとし、三角波形の圧縮応力を印加した。また、光ファイバーと試料面との距離は通常の40mmよりも近くし、試料面から5mmの位置にセットした。応力発光評価結果を、図11に示す。図11において、左軸はフォトンカウンターが検出したカウント数を、右軸は圧縮応力の大きさを表す。図11に示すように、Na0.85Ce0.15La(POは、圧縮応力の増加とともに、発光強度が増加することが確認できた。
【0082】
〔実施例4:NaLa(PO:Tlの製造〕
実施例1と同様に、応力発光材料である粉末試料合成には固相反応法を用いた。NaCl(99.5%)、La、(NHHPO(98.5%)、およびTlNO(99.9%)を組成比がNa1−xTlLa(PO(0.01≦x≦0.20)となるように秤量し、エタノールを用いて湿式混合した。得られた混合粉末を、大気中、200℃で4時間仮焼後、大気中、150〜1000℃の範囲で10時間焼成して、Na1−xCeLa(PO(0.01≦x≦0.20)を製造した。
【0083】
その結果、Tlの添加量を増やすほど、過度に反応が進み、溶けやすくなる傾向を示した。Na0.90La0.10La(POにおいて、焼成温度を1000℃とすると、試料の回収ができなかった。そこで、400℃、600℃、および900℃で10時間焼成して得た粉末試料について、製造例1に記載の方法で結晶構造解析を行った。
【0084】
その結果、図12(a)に示すように、焼成温度が400℃および600℃の場合には、NaLa(POの回折ピークと一致し、目的であるNaLa(POの単一相が形成された。一方、焼成温度が900℃の場合には、NaLa(POの回折ピークとは一致せず、実施例3と同様に、LaPの不純物相が形成されていることが確認できた。
【0085】
次に、得られた粉末試料について、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果、図12(b)に示すように、焼成温度の違いによる発光強度の変化はあまりなく、350nm付近に発光ピークを示した。また、発光スペクトルは幅の広いブロードなスペクトルを示した。中でも、焼成温度が600℃、焼成時間が10時間で得られた試料は、結晶性がよく、焼成後の回収率が高かった。
【0086】
次に、1at%のTlを添加した試料を用いて、焼成温度を50℃ずつ下げて、具体的には、600℃、550℃、500℃、および450℃として、発光強度の焼成温度に対する依存性を検討した。その結果、図13(a)に示すように、いずれの焼成温度でも、全ての回折ピークがグラフ下部に示したNaLa(POの回折ピークと一致し、NaLa(PO:Tlの単一相が形成されたことが確認できた。
【0087】
さらに、各焼成温度で得られた粉末試料について、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果、図13(b)に示すように、500℃の焼成温度で得られた試料のみ、発光ピークの分裂がみられた。また、500℃の焼成温度で得られた試料の発光ピークは367nmであったが、その他の焼成温度で得られた試料の発光ピークは347nmであり、シフトはほとんどみられなかった。さらに、発光強度は、600℃の焼成温度で得られた試料で、最も高かった。
【0088】
次に、焼成温度を600℃、焼成時間を10時間としたときの発光強度のTl添加量に対する依存性を検討した。
【0089】
Tl添加量を0.01at%、0.05at%、0.10at%、0.15at%、および0.20at%として、粉末試料を製造した。得られた粉末試料について、製造例1の方法で結晶構造解析を行った。その結果、図14(a)に示すように、いずれの組成においても、全ての回折ピークがNaLa(POの回折ピークと一致し、NaLa(PO:Tlの単一相が形成されることが確認できた。
【0090】
次に、各Tl添加量で得られた粉末試料を用いて、製造例1に記載の方法で、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果、図14(b)に示すように、発光ピークはTl添加量の増加とともに長波長側にシフトした。また、発光強度は、1at%のTlを添加した試料が最も強い発光を示した。さらに、最大励起波長は228.2nmであり、発光ピークは347.6nmであった。
【0091】
焼成温度を600℃、焼成時間を10時間として、大気中で焼成したNa0.99Tl0.01La(POについて、応力発光評価を行った。評価試料として、Na0.99Tl0.01La(PO粉末試料0.5gとエポキシ樹脂4.5gを混合し、サイズφ25×9mmに成形された円板状の複合ペレットを用いた。応力発光は、材料試験機を用いた応力発光測定装置を用いて評価した。試料への一軸圧縮は、荷重ゲージが備わった一般的な材料試験機を用いて評価した。応力発光の発光強度測定は、光電子倍増管(PHOTOMULTIPLIER TUBE)を通してフォトカウンターを用いて測定した。光電子倍増管は、Hamamatsu製のR585を主として用い、長波長側の測定の際には、Hamamatsu製のR649を用いた。応力発光評価方法として、図14(b)の励起スペクトルに基づき、365nmではなく、254nmの紫外線を照射することにした。紫外線を1分間照射後、1分間保持した試料に対して、一軸圧縮応力を材料試験機により加え、その際の発光を光ファイバーにて測定した。圧縮応力は1000Nとし、三角波形の圧縮応力を印加した。また、光ファイバーと試料面の距離は試料面から5mmの位置にセットした。その結果、図示しないが、Na0.99Tl0.01La(POは、圧縮応力の増加とともに発光強度が増加することが確認できた。
【0092】
以上の実施例1〜4の結果から、NaLa(POを母体構造とする応力発光材料が製造できることが明らかとなった。NaLa(POを母体構造とする応力発光材料は、従来知られていないものである。また、400〜600℃という低い焼成温度で、応力発光材料を製造できることが明らかとなった。このような低い焼成温度で製造できる応力発光材料は、従来にはないものである。さらに、350nmよりも低波長の紫外線を発光する応力発光材料を製造できることが明らかとなった。このような低波長の紫外線を発光する応力発光材料は、従来知られていないものである。
【0093】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明は、NaLa(POを母体構造とするため、低い焼成温度で、高輝度発光特性を有する応力発光材料を提供することができる。さらに、発光中心の選択により、従来にない350nmよりも低波長の紫外線を発光する応力発光材料を提供することができる。したがって、本発明は、応力発光体として用いることができるだけではなく、応力発光材料や応力発光体を用いる産業分野、例えば、電子工学や、医療、化学、農業等の産業分野に幅広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、NaLa(POの結晶構造を示す図である。
【図2】図2は、NaLa(POの結晶構造において、[(PO4−の結合のモデルを示す図である。
【図3】図3は、NaLa(POの結晶構造において、La3+の配位結合の構造モデルを示す図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、それぞれ、NaLa(PO、Na0.95Eu0.05La(PO、およびNa0.95Tb0.05La(POのXRDパターンを示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、それぞれ、NaLa(PO、Na0.95Eu0.05La(PO、およびNa0.95Tb0.05La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、それぞれ、Na0.95Ce0.05La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、およびNa0.95Dy0.05La(POのXRDパターンを示す図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、それぞれ、Na0.95Ce0.05La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、およびNa0.95Dy0.05La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図8】図8(a)は、400℃、600℃、および900℃で焼成したNa0.90Ce0.10La(POのXRDパターンを示す図であり、図8(b)は、400℃、600℃、および900℃で焼成したNa0.90Ce0.10La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図9】図9(a)は、600℃で焼成したNa0.99Ce0.01La(PO、Na0.95Ce0.05La(PO、Na0.90Ce0.10La(PO、Na0.85Ce0.15La(PO、およびNa0.80Ce0.20La(POのXRDパターンを示す図であり、図9(b)は、600℃で焼成したNa0.99Ce0.01La(PO、Na0.95Ce0.05La(PO、Na0.90Ce0.10La(PO、Na0.85Ce0.15La(PO、およびNa0.80Ce0.20La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図10】図10(a)は、550℃で焼成したNa0.85Ce0.15La(POのXRDパターンを示す図であり、図10(b)は、550℃で焼成したNa0.85Ce0.15La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図11】図11は、550℃で焼成したNa0.85Ce0.15La(POの応力発光応答曲線を示す図である。
【図12】図12(a)は、400℃、600℃、および900℃で焼成したNa0.90Tl0.10La(POのXRDパターンを示す図であり、図12(b)は、400℃、600℃、および900℃で焼成したNa0.90Tl0.10La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図13】図13(a)は、450℃、500℃、550℃、および600℃で焼成したNa0.99Tl0.01La(POのXRDパターンを示す図であり、図13(b)は、450℃、500℃、550℃、および600℃で焼成したNa0.99Tl0.01La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【図14】図14(a)は、600℃で焼成したNa0.99Tl0.01La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、Na0.90Tl0.10La(PO、Na0.85Tl0.15La(PO、およびNa0.80Tl0.20La(POのXRDパターンを示す図であり、図14(b)は、600℃で焼成したNa0.99Tl0.01La(PO、Na0.95Tl0.05La(PO、Na0.90Tl0.10La(PO、Na0.85Tl0.15La(PO、およびNa0.80Tl0.20La(POの励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)
MN(PO・・・(a)
(式中、Mは1価の金属イオンであり、Nは3価の金属イオンである。)
で表される構造を母体構造とし、
上記一般式(a)中のMまたはNの一部が、希土類イオンまたはIII族金属イオンの少なくとも一方によって置換されていることを特徴とする応力発光材料。
【請求項2】
上記一般式(a)中のMはアルカリ金属イオンであり、Nは希土類イオンであることを特徴とする請求項1に記載の応力発光材料。
【請求項3】
上記一般式(a)中のMはNaイオン、Kイオン、Rbイオン、またはCsイオンであり、NはCeイオン、Prイオン、Ndイオン、Pmイオン、Smイオン、Euイオン、Gdイオン、Tbイオン、Dyイオン、Hoイオン、Erイオン、Tmイオン、Ybイオン、Laイオン、またはYイオンであることを特徴とする請求項1に記載の応力発光材料。
【請求項4】
上記一般式(a)中のMはNaイオンであり、NはLaイオンであることを特徴とする請求項1に記載の応力発光材料。
【請求項5】
上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンは、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群より選択される希土類のイオンであり、
上記一般式(a)中、MまたはNの一部と置換されるIII族金属イオンは、Tlイオンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項6】
上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンは、Eu、Dy、Ce、およびTbからなる群より選択される希土類のイオンであり、
上記一般式(a)中、MまたはNの一部と置換されるIII族金属イオンは、Tlイオンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項7】
上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンはCeイオンであり、上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換されるIII族金属イオンはTlイオンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項8】
上記一般式(a)中のMまたはNの一部と置換される希土類イオンおよびIII族金属イオンの含有量が、0.1〜20mol%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項9】
紫外線を発光することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項10】
波長が350nmよりも短い紫外線を発光することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項11】
組成式が、下記一般式(b)
Na1−xLa(PO・・・(b)
(式中、QはCeイオンまたはTlイオンであり、xは0.01≦x≦0.2を満たす数である。)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の応力発光材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の応力発光材料を製造するための製造方法であって、
原料を混合し、大気中、200〜350℃で、1〜4時間焼成し、
さらに、大気中、400〜600℃で、10〜40時間焼成することを特徴とする応力発光材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の応力発光材料を成形してなる応力発光体。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の応力発光材料と高分子材料とを混合してなる応力発光体。
【請求項15】
1次元分散させて用いることを特徴とする請求項13または14に記載の応力発光体。
【請求項16】
上記応力発光材料が、2次元的に分布していることを特徴とする請求項13または14に記載の応力発光体。
【請求項17】
上記応力発光材料が、3次元的に分布していることを特徴とする請求項13または14に記載の応力発光体。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−248052(P2008−248052A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90240(P2007−90240)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】