説明

紫外線反射塗料

【課題】紫外線を使用するものの例として誘虫装置がある。これは、紫外線で虫を誘引して、粘着具や電気によって捕殺する装置である。このような装置では、紫外線ランプからの紫外線は、装置から外部に出る方向(開放された方向)へ向かうものだけが有効で、開放部でなく装置の他の部分に照射される分は虫を誘引しないばかりか装置に悪影響を与える。即ち、プラスチック部等は紫外線によって分解されるのである。よって、紫外線が照射されるような部分は金属製にしたり、そのような方向には紫外線が照射されないように金属で紫外線ランプをカバーすること等が行なわれている。そこで簡単に塗布するだけで保護や誘引ができる塗料を提供する。
【解決手段】紫外線をよく透過する樹脂をビヒクルとし、紫外線を反射する粒子を顔料とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線反射塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線を使用するものの例として誘虫装置がある。これは、紫外線で虫を誘引して、粘着具や電気によって捕殺する装置である。このような装置では、紫外線ランプからの紫外線は、装置から外部に出る方向(開放された方向)へ向かうものだけが有効で、開放部でなく装置の他の部分に照射される分は虫を誘引しないばかりか装置に悪影響を与える。即ち、プラスチック部等は紫外線によって分解されるのである。
【0003】
よって、紫外線が照射されるような部分は金属製にしたり、そのような方向には紫外線が照射されないように金属で紫外線ランプをカバーすること等が行なわれている。
【0004】
また、紫外線ランプも電気を消費するものであるため、できるだけ効率よく照射することが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、紫外線を反射する塗料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明紫外線反射塗料を完成したものであり、その特徴とするところは、紫外線をよく透過する樹脂をビヒクルとし、紫外線を反射する粒子を顔料とする点にある。
【0007】
本発明でいう塗料はインクも含めた概念として使用する。印刷用インク等である。要するに、ビヒクルと顔料が混合され、塗布できるものであればよい。
【0008】
ビヒクルとは、顔料以外の塗膜となる成分をいい、展色剤とも呼ばれる。通常は樹脂であり、それに種々のものが混合されている場合もある。
【0009】
紫外線をよく透過する樹脂は、紫外線の影響をあまり受けずに透過させるため紫外線によって分解されにくいということである。通常の樹脂は紫外線を吸収するため、その影響で分解するのである。
紫外線をよく透過する樹脂としては、フッ素系樹脂とケイ素樹脂がよく知られている。
【0010】
フッ素系樹脂とは、ポリエチレンの水素原子を漸次フッ素原子で置換した各種のハイドロフルオロカーボンポリマーである。ポリテトラフルオロエチレン(モノマーはCF2=CF2)、ポリクロロトリフルオロエチレン(モノマーはCF2=CClF)、ポリビニリデンフルオライド(モノマーはCH2=CF2)、ポリビニルフルオライド(モノマーはCH2=CHF)等がある。
ケイ素系樹脂とは、シロキサン結合(Si−O−Si)を基本構造とした有機ケイ素ポリマーであり、シリコーンともいう。
以上の樹脂が本発明には好適に使用できた。
【0011】
紫外線を反射する粒子とは、通常の顔料より、紫外線反射率が大きいものをいい、具体的には、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化セリウム、マイカ等である。これらの粒子は、通常の顔料より紫外線の反射率が高いものである。
一般的な塗料は、紫外線による影響をできるだけ小さくするため、また反射して他のものにも影響を与えないように紫外線吸収剤等を混合し、紫外線を吸収するよう考えられている。また、通常使用される、酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)は、高い可視光線反射率を示すが、紫外線は吸収する。
従来、本発明のように紫外線を積極的に反射する目的の塗料はない。
【0012】
本出願の塗料は、種々の用途に使用できるが、その中で誘虫装置に使用する場合には、広い範囲の波長の紫外線を反射するよりも、虫が誘引される範囲の紫外線をより強く反射するほうが好ましい。
虫が認識できる電磁波の波長域は、300〜600nmと言われている。この中で特に紫外線領域である、300〜400nm付近の電磁波に強く誘引されると考えられている。
【0013】
そこで、本発明の紫外線反射粒子もこの300〜400nmの電磁波を強く反射するものが好ましいということである。更に、それ以外の紫外線は強く反射する必要はない。かえって300nm以下の紫外線の反射は少ない方がよいことが実験でわかった。
【0014】
この紫外線を反射する粒子のより具体的な反射率としては、
350〜400nmの波長域を平均的に60%以上、
300〜350nmの波長域を平均的に50%以上、
250〜300nmの波長域を平均的に20〜50%、
200〜250nmの波長域を平均的に20〜50%が好適である。
【0015】
以上の中でも、200〜300nmのものを20〜30%、300〜400nmのものを50%以上反射するものが好適である。このようなものは、300〜400nmの紫外線に誘引される虫にとって、300〜400nmの紫外線がより明確に認識できるためである。
【0016】
このような紫外線反射顔料以外に、可視光線を反射する顔料、中でも、黄色系又は黄緑系、即ち波長500〜600nm付近の可視光線をよく反射する(即ち、他の波長の光をよく吸収する)ものを混合してもよい。
これは、虫によっては、紫外線だけでなく、この波長の可視光線を認識できるものがあり、紫外線とともに照射されているとよく認識されて誘引作用が大きくなる。
【0017】
更に、本発明の目的を逸脱しない限り、上記以外の顔料を混合してもよい。
ビヒクルと顔料の混合比率は通常の塗料と同様でよいし、またどちらかを通常以上に多くしてもかまわない。
【0018】
この塗料の使用方法について説明する。
この塗料は一般の紫外線を吸収する塗料と異なり、紫外線を積極的に反射するものであるため、そのような場所に使用するのが好ましい。例えば、紫外線照射装置の紫外線が照射される部分等である。
紫外線照射装置とは、誘虫装置のように紫外線を装置外に照射するもので、その中に蛍光灯のような紫外線ランプが設けられている。誘虫装置は、この紫外線ランプからの紫外線に虫が誘引され、その装置に近づき、そこに設けられた粘着具や電気殺虫機等で捕殺するものである。よって、虫をよりよく誘引するためには、紫外線は強いほどよい(程度はあるが)。また、装置から出る紫外線は強い方がよいが、装置自体の内壁等にはできるだけ照射されないほうがよい。
【0019】
このような目的で、本発明塗料を紫外線が照射される部分に塗布すると、そこに照射された紫外線の多くは反射され、他の部分または装置外に放出される。これによって、通常ならば吸収される紫外線も無駄なく機外に照射される。また、塗料のビヒクル自体も紫外線によって分解されないものを用いているため、塗料自体は分解されにくい。更に、プラスチック等の基材の分解や劣化も非常に少なくなる。
【0020】
更に、本発明塗料のビヒクルは紫外線をよく透過するため、塗料内の紫外線反射粒子に当たらず、透過した紫外線はその塗料が塗布された金属等(基材)で反射され、再度その塗料を透過して外部に照射される。よって、紫外線反射粒子で反射されるものが全てではなく、ビヒクルが紫外線透過性がよいために基材での反射紫外線も利用できる。
【0021】
勿論、本発明塗料は誘虫装置以外でも使用でき、どのような場所、どのような器具に塗布してもよい。
また、シートやフィルム、更にはプレート等に塗布してそれらを必要なところに貼付したり取り付けたりしてもよい。
【0022】
更に、本発明紫外線反射塗料と通常の可視光線反射塗料(通常の着色塗料)を特定のエリアに塗り分け塗布してもよい。例えば、通常の黄色の塗料と、本発明紫外線反射塗料を1cm程度の縞模様に交互に塗布する等である。このようにすれば、紫外線と可視光線がはっきりと分かれて照射(反射)されるため、上記した顔料を混合するタイプのものより、誘虫効果が大きいと考えられる。
【0023】
塗り分けの方法は、縞模様に限らず、水玉模様、同心円状、まったくのランダム形状等自由である。塗料を混合しなければよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明紫外線反射塗料には次のような大きな利点がある。
(1) 紫外線を反射するため紫外線の照射が多くなり、紫外線を利用する装置やその近傍に塗布することによって紫外線が有効利用できる。
(2) 紫外線反射粒子だけでなく、可視光線を反射する顔料、特に黄色系のものを合わせて混合すると、紫外線及び黄色に誘引される虫を誘引するのに非常に有効である。
(3) ビヒクルとして紫外線をよく透過する樹脂、特にフッ素系樹脂やケイ素樹脂を使用しているため、上記説明した通り、基材で反射された紫外線も利用できる。
(4) ビヒクルとして紫外線によって分解されにくい樹脂、特にフッ素系樹脂やケイ素樹脂を使用しているため、通常の塗料とは比較にならない程度長寿命となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下実施の形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
フッ素系樹脂100重量部に対して、硫酸バリウムの粉体を250重量部、水酸化アルミニウムの粉体を250重量部、更に黄色の顔料を3重量部(顔料の粉体重量として)、緑色の顔料を0.054重量部(顔料の粉体重量として)混合した。全体として黄緑色の塗料となった。この塗料の波長別の反射としては、300〜400nmと、500〜600nmに反射のピークがあり、その他は反射が少なかった。
【0026】
この実施例1の塗料を誘虫装置の内部の壁面(ABS樹脂製で、色は薄いグレー)に塗布した。それを図1に示す。図1は、誘虫装置1の断面図である。中心部分に紫外線ランプ2があり、そこから図でいう右側の開放部(窓3)から外部に照射される。この紫外線に誘引されて虫がこの装置の内部に入ってくる。
【0027】
この装置の中で紫外線のあたる部分4に本発明の実施例1の塗料を塗布した。この状態でランプを点灯すると、ランプからこの部分4に照射された紫外線が反射(波長によるが、大きいところで約30〜50%)されて、いずれ右の窓から外部に出る。
【0028】
よって、部分4に通常の塗料を塗布したものと比較して、窓から出る紫外線量は増える。
通常は部分4にはその基材を保護するため、塗料には紫外線吸収剤が混合されている。よって、紫外線の反射はほとんどない(例えば、10%以下)。
【0029】
更に、実施例1の塗料は黄色の顔料も混合されているため、この塗料の部分に可視光線があたると、黄色に見える。よって、昼間や、暗くなってもある程度可視光線があたると黄色の光が反射されて、その黄色に誘引される虫が引き寄せられる。
【0030】
よって、本発明塗料を装置の内面に塗布するだけで、紫外線効率が向上し、可視光線に引かれる虫も捕虫できる。
【0031】
次に紫外線反射粒子の特性について説明する。
図2は、ABS樹脂製の薄いグレーの板に電磁波を照射し、各波長域の反射率を測定したグラフである。この図で分かるように、300〜400nm程度の波長域では、ほとんど反射がなく10〜20%程度である。
【0032】
図3は、図2で用いた板に酸化チタンを顔料とする塗料を塗布したものを同様に測定したものである。この例でも図2同様300〜400nmでは反射がすくないことがわかる。
【0033】
図4は、図3で用いた塗料の顔料を硫酸バリウムに変えたもので、その混合量や塗布量は同じである。この図から、硫酸バリウムでは300〜400nm域で大きく反射していることがわかる。
【0034】
図5、図6は、図4と同様であるが、顔料が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムにした例である。これらも大きく反射していることが分かる。
【0035】
従来、紫外線の反射量を、特に波長の分析をして、検討した上で塗料にしたり、特定の用途に使用するということはなかったのである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を使用した誘虫装置の部分断面図である。
【図2】プラスチック板の反射率を測定したグラフである。
【図3】酸化チタンの反射率を測定したグラフである。
【図4】硫酸バリウム反射率を測定したグラフである。
【図5】酸化アルミニウムの反射率を測定したグラフである。
【図6】水酸化アルミニウムの反射率を測定したグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 誘虫装置
2 紫外線ランプ
3 窓
4 塗料を塗布した部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線をよく透過する樹脂をビヒクルとし、紫外線を反射する粒子を顔料とすることを特徴とする紫外線反射塗料。
【請求項2】
該紫外線をよく透過する樹脂とは、フッ素系樹脂又はケイ素系樹脂である請求項1記載の紫外線反射塗料。
【請求項3】
該紫外線を反射する粒子は、
350〜400nmの波長域を平均的に60%以上、
300〜350nmの波長域を平均的に50%以上、
250〜300nmの波長域を平均的に20〜50%、
200〜250nmの波長域を平均的に20〜50%
反射するものである請求項1又は2記載の紫外線反射塗料。
【請求項4】
該紫外線を反射する粒子とは、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化セリウム、マイカのうちの1つ又は任意の複数である請求項3記載の紫外線反射塗料。
【請求項5】
更に、可視光線反射粒子も混合したものである請求項1〜4記載の紫外線反射塗料。
【請求項6】
該可視光線反射粒子は、黄色系又は黄緑色系である請求項5記載の紫外線反射塗料。
【請求項7】
該可視光線反射粒子は、複数種である請求項5又は6記載の紫外線反射塗料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−173723(P2009−173723A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12216(P2008−12216)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(502440894)
【Fターム(参考)】