説明

紫外線照射装置

【課題】 被処理対象物の光照射面における紫外線照度の面内均一性が高く、しかも、被処理対象物の温度上昇が少なく、被処理対象物の光照射面における温度の面内均一性の高い紫外線照射処理を行うことのできる紫外線照射装置を提供すること。
【解決手段】 この紫外線照射装置は、光反応性物質を含む液晶パネルの製造工程において用いられるものにおいて、各々、波長300nm〜400nmに発光ピークを有する光を放射する長尺状のランプおよび当該ランプが内部に挿通された状態で設けられた、光透過性を有する長尺状の外套管により構成された複数の光源エレメントが被処理対象物である液晶パネル材と対向して並列に配列されてなる光源ユニットと、前記光源エレメントの各々における外套管の内部に冷却風を供給する冷却機構とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶パネルの製造工程において用いられる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル70は、図8に示すように、2枚のガラス板の間に液晶を封入した構造とされており、例えば、一面に、多数のアクティブ素子(例えば薄膜トランジスタ:TFT)72および液晶駆動用電極(透明電極:ITO)73が形成され、さらにその上に配向膜74が形成された第1のガラス板71と、一面に、カラーフィルター76、透明電極77および配向膜78が形成された第2のガラス板75とがスペーサ部材79を介して一面同士が互いに対向するよう配置され、第1のガラス板71および第2のガラス板75の間に液晶層80が形成されて、構成されている。
このような液晶パネル70の製造工程において、紫外線に反応して重合する光反応性物質(モノマー)が含有された液晶を備えた液晶パネル材に対して紫外線を照射することにより、液晶パネル材の反応処理(プレチルト角発現処理,PSVA)を行う技術が知られている(特許文献1参照)。この技術においては、電圧を印加しながら、紫外線を液晶パネル材に照射することで、液晶を特定方向に配向させた状態で光反応性物質を重合させることができ、これにより、液晶にいわゆるプレチルト角を付与することができる、とされている。
【0003】
このような紫外線を利用した液晶パネル材の反応処理(PSVA)においては、液晶における光反応性物質に対して、紫外線を高照度で照射することが必要とされる一方で、液晶における光反応性物質が高い温度に晒されることのないことが求められている。
光反応性物質の反応速度は温度依存性が高く、照射中の温度が高いと重合が進みすぎてポリマー粒の成長が大きくなりすぎる。すると均一なプレチルト角がつかないためにコントラストが悪くなったり、光漏れするようになってしまう。
さらに、液晶パネル材における光照射面において温度不均一が生じてしまうと、光反応性物質の反応に差(バラツキ)が生じ、液晶の傾き(プレチルト角)にムラを発生させてしまうこととなり、この液晶の傾きのムラは製品時に濃淡ムラとなって現れてしまう。
以上のように、液晶パネルの製造工程において、紫外線を利用した液晶パネル材の反応処理を行うに際しては、(イ)波長300〜350nmの紫外線が液晶パネル材に照射されること、(ロ)液晶パネル材の光照射面における紫外線照度の面内均一性が高いこと、(ハ)液晶パネル材の温度上昇が少なく、液晶パネル材の光照射面における温度の面内均一性が高いこと、が要求されるが、光反応性物質に悪影響を与えることなく、所望の液晶パネル材の反応処理を行うことのできる紫外線照射装置は知られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−177408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであって、被処理対象物の光照射面における紫外線照度の面内均一性が高く、しかも、被処理対象物の温度上昇が少なく、被処理対象物の光照射面における温度の面内均一性の高い紫外線照射処理を行うことのできる紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紫外線照射装置は、光反応性物質を含む液晶パネルの製造工程において用いられる紫外線照射装置において、
各々、波長300nm〜400nmに発光ピークを有する光を放射する長尺状のランプおよび当該ランプが内部に挿通された状態で設けられた、光透過性を有する長尺状の外套管により構成された複数の光源エレメントが被処理対象物である液晶パネル材と対向して並列に配列されてなる光源ユニットと、
前記光源エレメントの各々における外套管の内部に冷却風を供給する冷却機構と
を備えてなることを特徴とする。
【0007】
本発明の紫外線照射装置においては、前記光源ユニットと被処理対象物との間に、内周面が反射面により形成された空間よりなるライトガイド部を具備した構成とされていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の紫外線照射装置においては、前記ランプとしてエキシマランプが用いられた構成とされていることが好ましい。
【0009】
さらにまた、本発明の紫外線照射装置においては、前記冷却機構は、放熱用の熱交換器を具備した構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紫外線照射装置によれば、基本的には、複数の光源エレメントが並列に配置されて光源ユニットが構成されていることにより、被処理対象物に対して均一な照度分布で特定の波長域の紫外線を照射することができる。
しかも、各々の光源エレメントにおいては、外套管がその内部にランプが挿通された状態で設けられていることにより、外套管による冷却風導風機能によって、ランプの発光管を直接的に冷却することができるので、複数のランプがランプ毎に均一に冷却されてランプ自体からの被処理対象物に対する放射熱のバラツキを小さく抑制することができると共に熱線が被処理対象物に対して照射されることを抑制することができ、また、外套管それ自体も冷却風により冷却されるので被処理対象物に対する放射熱を抑制することができるので、被処理対象物の温度上昇を少なくすることができると共に被処理対象物の面内における温度不均一性を抑制することができ、例えば、液晶パネルの製造工程における液晶パネル材の反応処理(プレチルト角発現処理)において用いられる紫外線照射装置として好適なものとなる。
【0011】
また、内周面が反射面により形成された空間よりなるライドガイド部をさらに具備した構成とされていることにより、被処理対象物に対する紫外線照射量は十分に確保しながら、光源ユニットと被処理対象物との間の離間距離を大きくすることができるので、光源ユニットの放射熱による影響を一層確実に抑制することができて、被処理対象物の温度上昇を少なくすることができると共に被処理対象物の面内における温度不均一性を抑制することができる。
【0012】
さらに、エキシマランプが用いられた構成とされていることにより、余分な光成分が放射されることがないので、被処理対象物の温度上昇の程度を確実に小さくすることができる。
【0013】
さらにまた、冷却機構が熱交換器を具備した構成とされていることにより、密閉系の冷却風循環供給路を形成することができ、紫外線照射装置を例えばクリーンルーム内で使用する場合であっても、ダクトなどを用意する必要がなく、コンパクトにランプを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の紫外線照射装置の一構成例における内部構造の概略を示す、正面方向から見た説明図である。
【図2】図1に示す紫外線照射装置の内部構造の概略を示す、一側面方向から見た説明図である。
【図3】本発明に係る光源ユニットにおける光源エレメントの配置例を概略的に示す説明図である。
【図4】本発明の紫外線照射装置において用いられるランプに係るエキシマランプの一構成例を示す、(A)斜視図、(B)ランプの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【図5】ライトガイド部を構成するライトガイド部材の一構成例を示す、(A)斜視図,(B)ライトガイド部材の側壁の端面図である。
【図6】比較実験例1において作製した比較用の紫外線照射装置における内部構造の概略を示す、一側面方向から見た説明図である。
【図7】比較実験例2において作製した比較用の紫外線照射装置における内部構造の概略を示す、一側面方向から見た説明図である。
【図8】液晶パネルの構造の概略を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の紫外線照射装置の一構成例における内部構造の概略を示す、正面方向から見た説明図、図2は、図1に示す紫外線照射装置の内部構造の概略を示す、一側面方向から見た説明図である。
この紫外線照射装置は、大別して、光源部10、冷却部40、ライトガイド部50および電源部60により構成されている。
【0016】
光源部10は、下方に開口する光照射用開口12を有する全体が箱型形状の光源部ケーシング部材11を備えており、この光源部ケーシング部材11は、その内部空間が上下方向に区画されて下方側空間部が光源ユニット20が配置される光源ユニット配置空間部15とされていると共に上方側空間部が光源ユニット20に対応した例えばトランス35などの電装体が配置された電装体配置空間部16とされている。
また、光源部ケーシング部材11内における光源ユニット20を構成するランプ25の長手方向の一端側領域に、電装体配置空間部16を構成する一端側隔壁13と光源部ケーシング部材11の一端壁11Aとにより区画されて形成された、電装体配置空間部16および光源ユニット配置空間部15のそれぞれに冷却風を導入するための共通の導風用空間部18を有すると共に、光源部ケーシング部材11内におけるランプの長手方向の他端側領域に、電装体配置空間部16を構成する他端側隔壁14と光源部ケーシング部材11の他端壁11Bとにより区画されて形成された共通の排風用空間部19を有している。
電装体配置空間部16を形成する一端側隔壁13には、冷却風を電装体配置空間部16に導入するための導風用通風口13Aが形成されており、電装体配置空間部16を形成する他端側隔壁14には、冷却風を電装体配置空間部16から排出するための排風用通風口14Aが形成されている。
【0017】
光源ユニット20は、図3に示すように、各々、波長300nm〜400nmに発光ピークを有する光を放射する長尺状のランプ25およびこのランプ25が内部に挿通された状態でランプ25に沿って伸びるよう設けられた長尺状の外套管(筒状ジャケット)24により構成された光源エレメント21の複数が、例えば、各々のランプ25の軸中心が同一平面内に位置されると共に互いに平行に伸びる状態で、等間隔毎に並列に配置されて構成されている。
各々の光源エレメント21を構成するランプ25は、ランプホルダー22を介して光源部ケーシング部材11に保持固定されており、また、外套管24は、その一端開口が導風用空間部18に位置された状態で、図示しない保持部材を介して、光源部ケーシング部材11に固定保持されている。
光源ユニット20を構成する光源エレメント21の数は、例えば32個であり、隣り合う光源エレメント21の離間距離pは、例えば90mmである。
【0018】
光源ユニット20を構成するランプ25は、例えば、エキシマランプにより構成されており、例えば、液晶パネル材における液晶に含まれる光反応性物質(モノマー)を重合するのに適した波長である300nm〜400nmの紫外光が放射される。
図4は、本発明の紫外線照射装置において用いられるランプに係るエキシマランプの一構成例を示す、(A)斜視図、(B)ランプの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
このエキシマランプ25は、内部に放電空間Sが形成された断面矩形状の中空長尺状の放電容器26を備えており、この放電容器26の内部には、放電用ガスとして、例えばキセノンガスが封入されている。ここに、放電容器26は、例えば石英ガラスよりなる。
放電容器26における上壁26Aおよび下壁26Bの各々の外表面には、一対のメッシュ状の電極、すなわち、高電圧給電電極として機能する一方の電極27Aおよび接地電極として機能する他方の電極27Bが長手方向に伸びるよう互いに対向して配置されている。
また、放電容器26の下壁26Bを除く壁の内表面には、外面側から順に、反射材層30、ガラス粉末層31および蛍光体層32が積層された状態で、設けられており、光出射部を形成する放電容器26の下壁26Bの内表面には、ガラス粉末層31および蛍光体層32が積層された状態で、設けられている。
【0019】
反射材層30は、例えば、シリカとアルミナの混合物により構成されている。
また、ガラス粉末層31を構成するガラスとしては、例えば、ホウケイ酸ガラス(Si−B−O系ガラス)およびアルミノケイ酸ガラス(Si−Al−O系ガラス)、バリウムケイ酸ガラス、または、これらいずれかの組成を元にアルカリ土類酸化物やアルカリ酸化物、金属酸化物を添加したガラスなどを例示することができる。
また、蛍光体層32を構成する蛍光体としては、例えばユーロピウム付活ホウ酸ストロンチウム(Sr−B−O:Eu(以下「SBE」と称する。)、中心波長368nm)蛍光体、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al−O:Ce(以下、「LAM」と称する。)、中心波長338nm(ただし、broad))蛍光体、ガドリニウム、プラセオジム付活リン酸ランタン(La−P−O:Gd,Pr(以下、「LAP:Pr,Gd」と称する。)、中心波長311nm)蛍光体などを例示することができる。
【0020】
外套管24は、例えば300nm〜400nmの波長域の光を透過する光透過性材料、例えば石英ガラスよりなる円筒状のものであって、ランプ25とほぼ同じ長さを有する。 また、外套管24の内面とランプ25の外面との間に形成される冷却風流通路24Aを構成する空隙の最小間隔部分の大きさは、例えば16〜30mmである。
【0021】
冷却部40は、例えば、光源部ケーシング部材11の上部における、光源エレメント21の配列方向中央位置に設置された箱型形状の冷却部ケーシング部材41を備えており、この冷却部ケーシング部材41の内部には、例えば軸流ファンなどの冷却ファン42と、当該冷却ファン42の上流側において、例えば水冷ラジエータなどの放熱用の熱交換器43とが配置されている。
この冷却部ケーシング部材41の内部空間は、冷却部ケーシング部材41の両側の各々に設けられた通風ダクト45を介して光源部10における導風用空間部18および排風用空間部19と連通しており、これにより、冷却ファン42より供給される冷却風が光源部10における導風用空間部18を介して電装体配置空間部16内に導入されると共に各々の光源エレメント21における外套管24内に導入され、排風用空間部19を介して冷却部40における放熱用の熱交換器43に導入される、閉鎖された循環冷却風流通経路を形成する冷却機構が構成されている。
【0022】
ライトガイド部50は、被処理対象物Wに対する紫外線照射量を十分に確保しながら、光源ユニット20と被処理対象物Wとの間に十分な大きさの離間距離を確保するためのいわばスペーサとしての機能も有しており、光源部ケーシング部材11における光照射用開口12に対応した大きさを有し、内周面が反射面により形成された、例えば処理空間を区画する矩形枠状のライトガイド部材51が光源部10の下面から下方に伸びるように取り付けられて構成されている。
ライトガイド部材51は、図5に示すように、4枚の板状部材52A〜52Dが組み合わせられて構成されており、板状部材52A〜52Dの各々は、例えばアルミニウムからなるベース部材53と、例えば高輝アルミからなる光反射性部材54とにより構成されている。
ライドガイド部材51における一方の壁(一の板状部材52A)には、被処理対象物Wである例えば液晶パネル材をライトガイド部50の下側レベルに位置される、載置面が水平とされたステージ58に搬入、搬出する搬送ロボット(図示せず)の進入、退避のための開閉扉55が形成されており、この開閉扉55の開閉により、ライトガイド部50内に溜まる熱を外部に解放することができる。図1および図2における符号59はステージ架台である。
【0023】
電源部60は、各々のランプ25を点灯制御するものであり、重量の点およびメンテナンス時の配慮から、通常、光源部10と分離して配置される。ただし、トランス35は高電圧を発生することから光源部ケーシング部材11の内部に配置される。
【0024】
上記の紫外線照射装置の動作について説明する。
この紫外線照射装置においては、平板状の被処理対象物W(例えば液晶パネル部材)が搬送ロボットによってライトガイド部材51における開閉扉55を介して搬入されてステージ58上に載置された状態において、エキシマランプ25における一方の電極27Aに、電源部60より高周波電圧が電装体配置空間部16に設けられたトランス35によって昇圧されて供給されると、放電容器26を構成する誘電体材料を介して放電空間S内で誘電体バリア放電が生じ、誘電体バリア放電によってエキシマ分子が形成され、エキシマ分子から放射される光(キセノンガスの場合175nmの真空紫外光)によって蛍光体層32を構成する蛍光体が励起されて300nm〜400nmの紫外線が放電容器26の下壁26Bを透過すると共に他方の電極27Bの開口を通過して放射される。
一方、冷却ファン42が駆動されることより供給される冷却風が光源部10における導風用空間部18を介してその一部が電装体配置空間部16内に導入されると共に他の全部が各々の光源エレメント21における外套管24内、具体的には、外套管24の内面とエキシマランプ25の外面との間に形成される冷却風流通路24A内に導入され、これにより、エキシマランプ25および外套管24が冷却され、その後、排風用空間部19を介して熱交換器43に導入されて冷却され、装置外部に排気されることなく、再び、冷却ファン42により冷却風が供給される。
【0025】
而して、上記構成の紫外線照射装置によれば、複数の光源エレメント21が、各々のエキシマランプ25の軸中心が同一の水平面内に位置されると共に互いに平行に伸びる状態で、並列に配置されて光源ユニット20が構成されていることにより、基本的には、被処理対象物Wに対して均一な照度分布で300nm〜400nmの波長域の紫外線を照射することができ、しかも、被処理対象物Wの温度上昇を少なくすることができると共に被処理対象物Wの面内における温度不均一性を抑制することができる。すなわち、各々の光源エレメント21においては、外套管24がその内部にエキシマランプ25が挿通された状態で設けられていることにより、外套管24による冷却風導風機能(整風作用)によって、エキシマランプ25の放電容器26を直接的に冷却することができるので、複数のエキシマランプ25が各ランプ毎に均一に冷却されてエキシマランプ25自体による被処理対象物Wに対する放射熱のバラツキを小さく抑制することができると共に熱線が被処理対象物Wに対して照射されることを抑制することができ、しかも、外套管24それ自体も冷却風により冷却されるので被処理対象物Wに対する放射熱を抑制することができ、これにより、被処理対象物Wの温度上昇を少なくすることができると共に被処理対象物Wの面内における高い温度均一性を得ることができる。
従って、例えば、液晶パネルの製造工程における液晶パネル材の反応処理(プレチルト角発現処理)において用いられる紫外線照射装置として好適なものとなる。
【0026】
また、内周面が反射面により形成された空間よりなるライドガイド部50を具備していることにより、被処理対象物Wに対する紫外線照射量は十分に確保しながら、光源ユニット20と被処理対象物Wとの間の離間距離が大きくすることができるので、光源ユニット20の放射熱による影響を一層確実に抑制することができ、被処理対象物Wの温度上昇を少なくすることができると共に被処理対象物Wの面内における高い温度均一性を得ることができる。
【0027】
さらに、エキシマランプ25が用いられ、このエキシマランプ25の放電空間Sにおいて生ずる所定の波長域の紫外線(真空紫外線)が放電容器26の内表面に設けられた蛍光体層32の作用によって300〜400nmの紫外線として放射される構成とされていることにより、余分な光成分が被処理対象物Wに放射されることがないので、被処理対象物Wの温度上昇を確実に少なくすることができる。
【0028】
さらにまた、放熱用の熱交換器43を具備した構成とされていることにより、閉鎖された(密閉系の)冷却風循環経路を形成することができ、紫外線照射装置を例えばクリーンルーム内で使用する場合であっても、装置の外部より冷却風を取り入れること、および、装置外部に冷却風を排気する必要がなくなるので、ダクトなどを接続する必要がなく、冷却機構をコンパクトに構成することができる。
また、空冷式であることにより、水冷式のものであれば生ずるおそれのある水漏れ等の問題が生ずることない。
【0029】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0030】
<実験例1>
図1および図2に示す構成に従って、以下の構成を有する本発明に係る紫外線照射装置を作製した。
光源ユニット(20)は、光源エレメント(21)の数が32本、隣り合う光源エレメントの離間距離(ランプの軸中心間距離p)が90mmである。
各光源エレメント(21)を構成するランプ(25)は、全長が2800mm、縦横の寸法が43mm×15mm、ランプ出力が2kW、放電容器(26)の材質が石英ガラス、蛍光体層(32)を構成する蛍光体がSBE、放電用ガスとしてキセノンガスが封入されたエキシマランプであり、外套管(24)の材質が石英ガラス、全長が2500mm、内径が76mm、肉厚が2.5mmである円筒状のものである。
冷却ファン(42)は、1つの光源エレメント(21)に対して例えば4m3 /minの送風量(光源ユニット全体では128m3 /min)の冷却風を供給することのできる送風能力を有する軸流ファンである。導風用空間部(18)における圧力は、500〜1000Pa,冷却風の温度が30℃,排風用空間部(19)における風の温度が60℃程度である。
ライトガイド部材(51)の高さは300mmである。
被処理対象物(W)は、縦横の寸法が2200mm×2500mmである試験用液晶パネル材であり、光源ユニット(20)と被処理対象物(W)との離間距離は400mmである。
【0031】
この紫外線照射装置を用いて、各光源エレメント(21)におけるランプ(25)をすべて同一の点灯条件で点灯させて紫外線を被処理対象物(W)である試験用液晶パネル材に照射し、試験用液晶パネル材の光照射面上における任意の複数の測定箇所における照度および温度を測定し、試験用液晶パネル材の光照射面における照度均一性を求めたところ、照度均一度は±8.9%の範囲内にあることが確認された。
また、試験用液晶パネル材の光照射面における温度は、紫外線が照射され始めてから120秒間の時間が経過した時点で30℃±2℃に達すること(温度上昇の程度)が確認された。ここに、紫外線を照射する前の試験用液晶パネル材の表面温度は25℃である。
【0032】
<照度均一性>
『照度均一度』は、試験用液晶パネル材の光照射面における複数の測定箇所において測定された照度の平均値をEa、複数の測定箇所の各々における照度測定値をEbとしたとき、
(式) (Ea−Eb)/Ea 〔%〕
により定義される。実験例1においては、試験用液晶パネル材の光照射面における平均照度(Ea)は、約19mW/cm2 であった。
【0033】
さらにまた、カロリーメータにより、200nm〜20000nmの波長域の光の総放射熱量を測定したところ、試験用液晶パネル材に対する総放射熱量は57mW/cm2 であり、このうち、300nm〜400nmの波長域の紫外線以外の光(液晶パネル材における光化学反応に寄与しない光)による放射熱量は38mW/cm2 であった。ここに、ランプの表面温度は250℃、外套管の表面温度は約60℃であった。
【0034】
<比較実験例1>
図6に示す構成に従って、比較用の紫外線照射装置を作製した。この紫外線照射装置は、冷却機構を備えていないものであって、上記実験例1において作製した紫外線照射装置の光源ユニットにおいて、外套管を有さないことの他は同一の構成を有する光源ユニット20Aを有する。図6において、符号51Aは補助反射板、50Aは内部に処理空間を区画するケーシングであり、上記図1および図2に示すものと同一の構成部材については同一の符号が付してある。
この紫外線照射装置を用いて、光源ユニット(20A)における各ランプ(25)をすべて同一の点灯条件で点灯させて紫外線を試験用液晶パネル材に照射し、実験例1と同様に、試験用液晶パネル材の光照射面上における任意の複数の測定箇所における照度および温度を測定し、試験用液晶パネル材の光照射面における照度均一性を求めたところ、照度均一度が±10.8%の範囲内にあることが確認された。なお、試験用液晶パネル材の光照射面における平均照度(Ea)は、約25mW/cm2 であった。
また、試験用液晶パネル材の光照射面における温度は、紫外線が照射され始めてから120秒間の時間が経過した時点で60℃±12℃に達すること(温度上昇の程度)が確認された。
【0035】
さらにまた、カロリーメータにより、200nm〜20000nmの波長域の光の総放射熱量を測定したところ、試験用液晶パネル材に対する総放射熱量は173mW/cm2 であり、このうち、300nm〜400nmの波長域の紫外線以外の光(液晶パネル材における光化学反応に寄与しない光)による放射熱量は148mW/cm2 であった。ここに、ランプの表面温度は約300℃であった。
【0036】
<比較実験例2>
図7に示す構成に従って、比較用の紫外線照射装置を作製した。この紫外線照射装置は、上記実験例1において作製した紫外線照射装置において、光源ユニットが外套管を有さない構成とされており、また、ライトガイド部に代えて、光照射用開口(12)の開口縁部に補助反射板(51A)が設けられると共に光照射用開口(12)に光透過窓(12A)が設けられた構成とされていることの他は、上記実験例1において作製した紫外線照射装置と同一の構成を有しており、同一の構成部材については、便宜上、同一の符号が付してある。図7において、符号50Aは内部に処理空間を区画するケーシングである。
この紫外線照射装置を用いて、光源ユニット(20A)における各ランプ(25)をすべて同一の点灯条件で点灯させて紫外線を試験用液晶パネル材に照射し、実験例1と同様に、試験用液晶パネル材の光照射面上における任意の複数の測定箇所における照度および温度を測定し、試験用液晶パネル材の光照射面における照度均一性を求めたところ、照度均一度が±11.2%の範囲内にあることが確認された。なお、試験用液晶パネル材の光照射面における平均照度(Ea)は、約21mW/cm2 であった。
また、試験用液晶パネル材の光照射面における温度は、紫外線が照射され始めてから120秒間の時間が経過した時点で45℃±20℃に達すること(温度上昇の程度)が確認された。
【0037】
さらにまた、カロリーメータにより、200nm〜20000nmの波長域の光の総放射熱量を測定したところ、試験用液晶パネル材に対する総放射熱量は110mW/cm2 であり、このうち、300nm〜400nmの波長域の紫外線以外の光(液晶パネル材における光化学反応に寄与しない光)による放射熱量は89mW/cm2 であった。ここに、ランプの表面温度は約280℃、光透過窓の表面温度は147℃であった。
【0038】
以上のように、本発明に係る紫外線照射装置によれば、被処理対象物の光照射面において、紫外線照度および温度について高い面内均一性を得ることができることが確認された。
また、紫外線照射による被処理対象物の温度上昇の程度を小さくすることができることが確認された。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の紫外線照射装置においては、光源ユニットを構成する光源エレメントの個数および配列方法は、上記実施例のものに限定されず、目的に応じて適宜に設計変更することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 光源部
11 光源部ケーシング部材
11A 一端壁
11B 他端壁
12 光照射用開口
12A 光透過窓
13 一端側隔壁
13A 導風用通風口
14 他端側隔壁
14A 排風用通風口
15 光源ユニット配置空間部
16 電装体配置空間部
18 導風用空間部
19 排風用空間部
20,20A 光源ユニット
21 光源エレメント
22 ランプホルダー
24 外套管(筒状ジャケット)
24A 冷却風流通路
25 エキシマ放電ランプ(ランプ)
26 放電容器
26A 上壁
26B 下壁
27A 一方の電極
27B 他方の電極
30 反射材層
31 ガラス粉末層
32 蛍光体層
35 トランス
S 放電空間
40 冷却部
41 冷却部ケーシング部材
42 冷却ファン
43 熱交換器
45 通風ダクト
50 ライトガイド部
50A ケーシング
51 ライトガイド部材
51A 補助反射板
52A〜52D 板状部材
53 ベース部材
54 光反射性部材
55 開閉扉
58 ステージ
59 ステージ架台
60 電源部
W 被処理対象物
70 液晶パネル
71 第1のガラス板
72 アクティブ素子
73 液晶駆動用電極
74 配向膜
75 第2のガラス板
76 カラーフィルター
77 透明電極
78 配向膜
79 スペーサ部材
80 液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反応性物質を含む液晶パネルの製造工程において用いられる紫外線照射装置において、
各々、波長300nm〜400nmに発光ピークを有する光を放射する長尺状のランプおよび当該ランプが内部に挿通された状態で設けられた、光透過性を有する長尺状の外套管により構成された複数の光源エレメントが被処理対象物である液晶パネル材と対向して並列に配列されてなる光源ユニットと、
前記光源エレメントの各々における外套管の内部に冷却風を供給する冷却機構と
を備えてなることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記光源ユニットと被処理対象物との間に、内周面が反射面により形成された空間よりなるライトガイド部を具備することを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記ランプは、エキシマランプであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記冷却機構は、放熱用の熱交換器を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−215463(P2011−215463A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85005(P2010−85005)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】