説明

紫外線硬化型トップコート剤組成物

【課題】金属に対する接着性、意匠性に優れる紫外線硬化型トップコート剤組成物の提供。
【解決手段】全固形分100質量部中、メチルメタクリレート重合体(A)を10〜50質量部と、1分子中に、1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)を1〜20質量部と、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)を10〜70質量部と、光重合開始剤(D)を2〜10質量部とを含有する紫外線硬化型トップコート剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型トップコート剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂のようなプラスチックは、軽量で耐衝撃性、成形加工性に優れ安価であることから、種々の分野で使用されている。
そして、プラスチックの成形品は、その表面を損傷から保護すること等を目的として、塗膜で被覆されているのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、長期、屋外での使用においても成形品自体の劣化を十分に防止できるとともに、耐傷付き性、塗膜の密着性、耐クラック性等に優れた紫外線照射により硬化可能な被覆用樹脂組成物の提供を目的として、「(a)1分子中にエーテル結合および1〜2個のアクリロイルオキシ基を有し、分子量が130〜700の1〜2官能性単量体10〜70重量%、(b)脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー5〜60重量%、(c)分子量10000〜200000のメチルメタクリレート重合体10〜30重量%、からなる塗膜形成成分を少なくとも含有し、かつ該塗膜成分100重量部に対し、(e)光重合開始剤2〜10重量部、および、(f)紫外線吸収剤2〜20重量部、を必須成分とする紫外線硬化性被覆用樹脂組成物。」が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリオレフィンの表面に耐摩擦性及び密着性に優れた硬化塗膜を形成せしめるのに用いられるポリオレフィン表面改質用の光硬化性樹脂組成物を目的として、(A)成分:メタクリル酸メチルホモ共重合体、メタクリル酸メチル含有量80重量%以上のメタクリル酸メチル系共重合体、及びメタクリル酸メチル含有量80重量%以上のメタクリル酸メチル系共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した変成物より選ばれた少なくとも1種の重合体、(B)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを50重量%以上含有する多官能アクリレート、(C)成分:溶剤、及び(D)成分:光重合開始剤を含有してなり、かつ(A)成分/(B)成分の重量比が0.1〜10の範囲内にあることを特徴とするポリオレフィン表面改質用の光硬化性樹脂組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる成形品の表面に、密着性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性、外観等に優れたハードコート層を設けた成形品、及びその製造方法を提供することを目的として、「(A)1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性単量体(a−1)20〜100重量%と、1分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1〜2官能性単量体(a−2)80〜0重量%とからなる単量体混合物10〜90重量部、(B)(メタ)アクリル酸エステル類より選ばれた少なくとも1種の単量体を10重量%以上含有するビニル系単量体の単独重合体または共重合体からなる塗料用樹脂5〜80重量部、及び(C)光重合開始剤0.1〜15重量部からなる紫外線硬化性組成物を硬化させたハードコート層を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂成形品。」が記載されている。
【0006】
特許文献4には、酸性高温エッチング溶液中でもエステル結合が加水分解し難い光重合性化合物を含有し、高品質のシャドウマスクやリードフレームのように、金属板を腐食してエッチングパターンを形成するものに使用される硬化膜として好適に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物を提供することを目的として、化学式1[CH2=CR′COO(CH2CHR″COO)nH]で表される光重合性化合物と、多官能モノマーと、重合開始剤とを少なくとも含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物(化学式1において、nは0〜3、R′、R″はHまたはメチル基である。)が記載されている。
【0007】
特許文献5には、従来の水溶性樹脂型、または紫外線硬化型の防食裏止め剤よりも、酸エッチング液に対して、優れた耐食性があり、塗布ムラのない均一な塗膜形成性を有し、塗膜構成材料の一部がエッチング液中に溶出せず、高微細加工精度があり、アルカリ液にて容易に剥離可能である金属エッチング防食用の紫外線硬化性組成物の提供を目的として、末端に少なくとも1個のカルボキシル基および少なくとも一個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A成分)と、A成分以外の多官能(メタ)アクリレートおよび/または単官能(メタ)アクリレート(B成分)と、特定の構造を有する化合物を含有する光重合開始剤(C成分)とを含有することを特徴とする耐酸性およびアルカリ可溶性である金属エッチング防食用の紫外線硬化性組成物が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−281935号公報
【特許文献2】特公平7−91489号公報
【特許文献3】特許第3377301号公報
【特許文献4】特開2001−354730号公報
【特許文献5】特開2002−20411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者は、特許文献1〜3に記載されている組成物は金属との接着性に劣ることを見出した。
特許文献4または5に記載されているような、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体を含有する組成物について、金属層の面を傾斜させてまたは垂直として置き、角度を有する金属層の面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体を含有する組成物をスプレーで塗布して積層体とする場合、このような組成物は金属層に対する成膜性が悪く金属層の表面に凹凸ができてしまい、その結果得られる積層体が意匠性に劣ることを見出した。これは、成膜性に優れる成分であるポリメチルメタクリレート等が入っておらず、塗膜が成膜し難いために、組成物がタレることによって意匠性の悪化が発生すると本願発明者は考えた。
そこで、本発明は、金属に対する接着性、意匠性に優れる紫外線硬化型トップコート剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、メチルメタクリレート重合体と、特定の単量体とを特定の量比で含有する組成物が、金属に対する接着性、意匠性に優れる紫外線硬化型トップコート剤組成物となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)を提供する。
(1)全固形分100質量部中、
メチルメタクリレート重合体(A)を10〜50質量部と、
1分子中に、1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)を1〜20質量部と、
1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)を10〜70質量部と、
光重合開始剤(D)を2〜10質量部とを含有する紫外線硬化型トップコート剤組成物。
(2)前記メチルメタクリレート重合体(A)の分子量が、10,000〜300,000である上記(1)に記載の紫外線硬化型トップコート剤組成物。
(3)前記単量体(B)が、下記式(1)で表される上記(1)または(2)に記載の紫外線硬化型トップコート剤組成物。
【0012】
【化2】


(式中、nは、0〜1の整数である。)
【0013】
(4)さらに、紫外線吸収剤(E)を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の紫外線硬化型トップコート剤組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紫外線硬化型トップコート剤組成物は、金属に対する接着性、意匠性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の紫外線硬化型トップコート剤組成物は、
全固形分100質量部中、
メチルメタクリレート重合体(A)を10〜50質量部と、
1分子中に、1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)を1〜20質量部と、
1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)を10〜70質量部と、
光重合開始剤(D)を2〜10質量部とを含有する組成物である。
【0016】
メチルメタクリレート重合体(A)について以下に説明する。
本発明の組成物は、全固形分100質量部中、メチルメタクリレート重合体(A)を10〜50質量部含有する。
本発明の組成物に含有されるメチルメタクリレート重合体(A)は、特に制限されない。
本発明において、メチルメタクリレート重合体(A)は造膜性成分として含有される。
【0017】
なかでも、造膜性に優れ、塗布した際に垂れにくい組成物となりうるという観点から、メチルメタクリレート重合体(A)の分子量は、10,000以上であるのが好ましい。
また、得られる組成物がスプレーで塗布しやすく、意匠性により優れるという観点から、メチルメタクリレート重合体(A)の分子量は、300,000以下であるのが好ましい。
また、造膜性に優れ、塗布した際に垂れにくくスプレーで塗布しやすい組成物となり、意匠性により優れるという観点から、メチルメタクリレート重合体(A)の分子量は、10,000〜300,000であるのが好ましく、50,000〜150,000であるのがより好ましい。
【0018】
メチルメタクリレート重合体(A)は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
また、メチルメタクリレート重合体(A)は、市販品を使用することができる。メチルメタクリレート重合体(A)の市販品としては、例えば、商品名デルペット60N、デルペット80N(どちらも旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。
本願発明においては、メチルメタクリレート重合体(A)として市販品を使用することができるのでメチルメタクリレート重合体を重合する必要がなく、組成物の製造を簡便に行うことができる。
【0019】
本発明の組成物は、接着性、意匠性により優れ、粘度が低くスプレー塗布性に優れ、塗料がタレにくいという観点から、全固形分100質量部中、メチルメタクリレート重合体(A)を10〜30質量部含有するのが好ましい。
【0020】
単量体(B)について以下に説明する。
本発明の組成物は、全固形分100質量部中、1分子中に、1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)を1〜20質量部含有する。
【0021】
単量体(B)は、1分子中に、1個以上のカルボキシ基(−COOH)と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CR−COO−、R:Hまたは−CH3)とを有するものであれば特に制限されない。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であることを意味する。1分子中に含まれる(メタ)アクリロイルオキシ基が2個以上である場合、(メタ)アクリロイルオキシ基は同じでもよく異なっていてもよい。
また、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートであることを意味する。
本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸であることを意味する。
【0022】
単量体(B)は、末端にカルボキシ基を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
カルボキシ基の数は、接着性により優れ、樹脂との相溶性に優れるという観点から、単量体(B)中、1〜3個であるのが好ましい。
単量体(B)1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、接着性、意匠性により優れるという観点から、単量体(B)1分子中1〜3個であるのが好ましい。
【0023】
単量体(B)としては、例えば、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸および/またはその酸無水物との反応生成物、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマーが挙げられる。
【0024】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸および/またはその酸無水物との反応は、特に制限されず、例えば、従来公知の方法が挙げられる。
ヒドロキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸および/またはその酸無水物との反応の際に使用される多塩基酸およびその無水物としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、スベリン酸、マロン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸および/またはその酸無水物との反応の際に使用されるヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
多塩基酸および/またはその酸無水物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる単量体(B)としては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと無水テトラヒドロフタル酸より合成した2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルモノテトラヒドロフタレートなどが挙げられる。
【0027】
単量体(B)としてのω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートは、市販品として入手することができる。このような市販品としては、例えば、東亞合成社製のM−5400が挙げられる。
【0028】
また、単量体(B)としては、例えば、下記式(1)〜式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0029】
【化3】

【0030】
式(1)中、nは、0〜10の整数である。
このような範囲の場合、カルボン酸価が大きくなるため、接着性により優れる。
nは、接着性にさらに優れるという観点から、0〜1であるのが好ましい。
なお、式(1)中のnが0の場合、式(1)で表される化合物は、アクリル酸である。アクリル酸は1分子中に1個のカルボキシ基と1個のアクリロイルオキシ基を有するので、本明細書において、アクリル酸は、式(1)で表される化合物に含まれるものとする。
【0031】
単量体(B)は、接着性、原料の調達の容易さの観点から、式(1)、式(2)で表される化合物であるのが好ましく、式(1)で表される化合物であるのがより好ましい。
また、単量体(B)は、接着性、樹脂との相溶性、原料調達の容易さの観点から、式(3)で表される化合物、およびその水素添加物であるのが好ましい。
【0032】
式(1)で表されnが0である化合物(アクリル酸)と式(1)で表されnが1である化合物との混合物は、市販品として入手することができる。このような市販品としては、例えば、東亞合成社製のM−5600が挙げられる。
式(2)で表される化合物は、市販品として入手することができる。このような市販品としては、例えば、東亞合成社製のM−5400、共栄社化学社製のHOA−MPLが挙げられる。
【0033】
式(3)で表される化合物は市販品を使用することができる。式(3)で表される化合物の市販品としては、例えば、商品名:NKエステルCBX−1(新中村化学工業社製)が挙げられる。
単量体(B)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
2種以上の単量体(B)の組合せとしては、例えば、アクリル酸と式(1)で表されnが1である場合の化合物との組合せが挙げられる。
2種以上の単量体(B)の組合せは、接着性、原料調達の容易さの観点から、式(1)で表されnが0である化合物(アクリル酸)と式(1)で表されnが1である化合物との組合せが好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、接着性、意匠性により優れるという観点から、全固形分100質量部中、1分子中に、1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)を、5〜10質量部含有するのが好ましい。
【0036】
単量体(C)について以下に説明する。
本発明の組成物は、全固形分100質量部中、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)を10〜70質量部含有する。
【0037】
単量体(C)は、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものであれば特に制限されない。
【0038】
1分子中に4個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C−1)としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
1分子中に5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C−2)としては、例えば、下記式(5)で表される化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、速硬化性、塗膜の硬度、耐水性、耐溶媒性、耐薬品性の観点から、下記式(4)で表されるペンタエリスリトールテトラアクリレート、下記式(5)で表される化合物、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
【化4】

【0042】
式(4)で表されるペンタエリスリトールテトラアクリレートとしては、例えば、M−450(東亞合成社製)、ライトアクリレートPE−4A(共栄社化学社製)、Ebecryl PETAK(ダイセルサイテック社製)、NKエステル ATMMT(新中村化学工業社製)が挙げられる。
式(5)で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含む市販品としては、例えば、M−402(東亞合成社製)、ライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、Ebecryl DDHA(ダイセルサイテック社製)、NKエステル A−PPH(新中村化学工業社製)が挙げられる。
単量体(C)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明の組成物は、硬化性、塗膜の硬さ、耐水性、耐溶媒性、耐薬品性の観点から、全固形分100質量部中、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)を20〜60質量部含有するのが好ましい。
【0044】
光重合開始剤(D)について以下に説明する。
本発明の組成物は、全固形分100質量部中、光重合開始剤(D)を2〜10質量部含有する。
本発明の組成物においては、上記の単量体を硬化させるための光重合開始剤(D)が用いられる。
【0045】
光重合開始剤(D)は、紫外線硬化型トップコート剤組成物に使用することができるものであれば特に制限されない。
例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物のようなカルボニル化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられる。
具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、下記式(6)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロ等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。
【0046】
【化5】

【0047】
なかでも、光安定性、光開裂の高効率性、表面硬化性、樹脂との相溶性、低揮発、低臭気という観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンが好ましい。
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの市販品としては、例えば、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)が挙げられる。
光重合開始剤(D)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明の組成物は、全固形分100質量部中、光重合開始剤(D)を2〜10質量部含有し、硬化速度、塗膜の硬度の観点から、3〜7質量部含有するのが好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、得られる硬化物の、黄変、劣化、機械的物性の低下を防ぎうるという観点から、さらに、紫外線吸収剤(E)を含有するのが好ましい。
紫外線吸収剤(E)は、紫外線硬化型トップコート剤組成物において使用できるものであれば、特に制限されない。
例えば、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p−tert.−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、下記式(7)で表される化合物などが挙げられる。
【0050】
【化6】

【0051】
式(7)で表される化合物の市販品としては、例えば、チバスペシャリティケミカルズ社製のチヌビンPが挙げられる。
紫外線吸収剤(E)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
紫外線吸収剤(E)の量は、塗膜の耐候性、塗膜またはプラスチック基材の劣化を防止し、塗膜の黄変を防止し、機械的特性の低下を防止し、塗膜の耐候性に優れるという観点から、全固形分100質量部中、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのがより好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、さらに、1分子中に1〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(F)を含有することができる。
【0054】
単量体(F)について以下に説明する。
単量体(F)は、1分子中に1〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であれば特に制限されない。
1〜2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、その水素添加物、イソボニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等の1官能性の(メタ)アクリレートモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブチン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジ(メタ)アクリレート、その水素添加物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロキシ(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)フタレート等の2官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0055】
低粘性、硬化性の観点から、長鎖脂肪族1〜2官能モノマー、脂環式1〜2官能モノマーが好ましい。
長鎖脂肪族1官能モノマーとしては、例えば、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
長鎖脂肪族2官能モノマーとしては、例えば、下記式(9)で表される1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
脂環式1官能モノマーとしては、例えば、トリシクロデカニルアクリレート、その水素添加物、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0057】
脂環式2官能モノマーとしては、例えば、トリシクロデカニルジアクリレート、その水素添加物、下記式(8)で表されるジシクロペンタニルジアクリレート、イソボルニルジアクリレート、水素化ビスフェノールAジアクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジアクリレートが挙げられる。
【0058】
【化7】

【0059】
また、低粘度、基材との接着性、耐溶媒性の観点から、式(8)で表されるジシクロペンタニルジアクリレート、式(9)で表される1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく、式(8)で表されるジシクロペンタニルジアクリレートがより好ましい。
【0060】
式(8)で表される化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製のNKエステルA−DCP、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学社製)、Ebecryl IRR214−K(ダイセルサイテック社製)が挙げられる。
式(9)で表される化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製のNKエステルA−HD−N、ライトアクリレート1.6HX−A(共栄社化学社製)、Ebecryl HDODA(ダイセルサイテック社製)が挙げられる。
【0061】
1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体は、樹脂との相溶性の観点から、下記式(10)で表されるトリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。
【0062】
【化8】

【0063】
式(10)で表されるトリメチロールプロパントリアクリレートの市販品としては、例えば、M−309(東亞合成社製)、ライトアクリレートTMP−A(共栄社化学社製)、Ebecryl TEMPT(ダイセルサイテック社製)、NKエステル A−TMPT(新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0064】
単量体(F)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物は、意匠性、スプレー塗布性、塗膜の硬さ、耐水性、耐溶媒性、耐薬品性の観点から、全固形分100質量部中、1分子中に1個〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(F)を2〜30質量部含有するのが好ましく、5〜20質量部含有するのがより好ましい。
【0065】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の成分のほかに、必要に応じ種々の添加剤、例えば、充填剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、艶消し剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系化合物等)、染料、顔料、溶剤を含有することができる。
【0066】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0067】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0068】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物は、塗布作業性および塗布塗膜のより優れる意匠性(平滑性、均一性)並びに硬化塗膜の基材に体する接着性により優れることなどから、溶剤を用いて組成物の粘度を調製することができる。
溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
【0070】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、メチルメタクリレート重合体(A)と、1分子中に1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)と、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)と、必要に応じて使用することができる、紫外線吸収剤(E)、単量体(F)、添加剤とを、均一となるように混合し、ここに光重合開始剤(D)を加え、さらに攪拌混合等により均一化することによって製造することができる。
【0071】
本発明の組成物を使用する方法としては、例えば、本発明の組成物を金属層に塗布する塗布工程と、金属層に塗布された本発明の組成物を紫外線によって硬化させてトップコートとする硬化工程とを具備するものが挙げられる。
【0072】
まず、塗布工程において、本発明の組成物を金属層に塗布する。
金属層は、特に制限されず、例えば、基材の上に金属蒸着または金属を含有する塗料の塗布を行うことによって得られるものが挙げられる。
【0073】
金属層を形成するために金属蒸着において使用される金属は、特に制限されない。例えば、Snが挙げられる。
金属蒸着の方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
金属層を形成するために使用される塗料は、金属を含有するものであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。また、金属を含有しない塗料を使用することもできる。
【0074】
金属層を形成するために使用される基材は、特に制限されず、プラスチックが好ましい態様の1つとして挙げられる。
金属層を形成するために使用される基材としてのプラスチックは、特に制限されない。熱可塑性、熱硬化性を問わず種々のプラスチックを使用することができる。具体的には例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物を金属層の上に塗布する方法としては、特に限定がなく、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコートなど、公知の塗布方法が採用できる。
本発明の組成物は造膜性に優れるので、本発明の組成物を傾斜させてまたは垂直に置かれた金属層の表面にスプレーで塗布することができる。
【0076】
本発明の組成物の金属層への塗布量としては、硬化後のトップコートの膜厚が1〜30μmとなるようにするのが好ましい。硬化塗膜の膜厚が1μm以上の場合、特に基材である金属層の表面劣化の防止効果に優れ、30μm以下の場合、基材との接着性により優れ、クラックの発生を防ぎ、耐傷性、耐水性、耐汗性に優れる。
【0077】
塗布工程後、硬化工程において、金属層に塗布された本発明の組成物を紫外線によって硬化させ、本発明の組成物を金属層上に接着させ、トップコートとする。
本発明の組成物を硬化させる際に使用する紫外線の照射量としては、速硬化性、作業性の観点から、500〜3000mJ/cm2が好ましい。
紫外線を照射するために使用する装置は特に制限されない。例えば、日本電池社製のGS UV SYSTEMが挙げられる。
本発明の組成物を紫外線照射により硬化させる際の温度は、20〜80℃であるのが好ましい。
また、紫外線照射による硬化の前に、30〜80℃の条件下で金属層に塗布された本発明の組成物を予め熱風乾燥させるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
熱風乾燥は、50℃の条件下で3分間程度行うのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
硬化工程後、基材の上に金属層を有し、金属層の上にトップコートを有する積層体を得ることができる。
【0078】
金属層の上にトップコートを有する積層体は、例えば、各種の電気・電子機器、通信機器(例えば、携帯電話)等の外枠、電磁波シールドとして使用することができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価方法
組成物の接着性および意匠性は以下の方法で評価した。結果を第1表に示す。
(1)接着性
接着性の評価は、碁盤目テープはく離試験によって行った。
具体的には、まず、得られた各組成物を、Sn蒸着表面を有するABS樹脂(サイコラック、UMG ABS社製。以下同様。)に塗布し、50℃の条件下で3分間熱風乾燥させた後、組成物を塗布したABS樹脂に日本電池社製のGS UV SYSTEMで積算光量が1200mJとなるように紫外線を照射して組成物を硬化させ、接着性を評価する試験体とした。
次に、得られた試験体に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をABS樹脂に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の数を調べた。
接着性の評価基準としては、完全に剥がれないで残った基盤目数が100、即ち、全く剥がれなかったものが最も好ましく、90以上であれば実用レベルである。
【0080】
(2)意匠性
意匠性の評価は、塗布面を垂直にした状態の、Sn蒸着表面を有するABS樹脂に対して、得られた各組成物をスプレーで塗布して、サンプルを得た。
スプレー塗布後、得られたサンプルの塗布面を水平にして、サンプルの塗布面に対して斜め45°の角度からサンプルを肉眼で観察した。
意匠性の評価基準は、塗布面が平滑であるものを「○」とし、わずかに凹凸が見られるものを「△」とし、凹凸が目立つものを「×」とした。
【0081】
2.組成物の調製
(実施例1〜10、比較例1〜4)
第1表に示す成分を第1表に示す成分比(質量部)で配合し、各組成物を調製した。
実施例1〜10の組成物の成膜性は、いずれも良好であった。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・重合体A1:メチルメタクリレート重合体、商品名デルペット60N、旭化成ケミカルズ社製
・重合体A2:メチルメタクリレート重合体、商品名デルペット80N、旭化成ケミカルズ社製
・単量体B1:カルボキシ基含有アクリレート単量体、商品名M−5600、東亞合成社製
・単量体B2:カルボキシ基含有アクリレート単量体、商品名M−5400、東亞合成社製
・単量体B3:カルボキシ基含有アクリレート単量体、商品名NKエステルCBX−1、新中村化学工業社製
・単量体C1:4官能アクリレート、商品名M−450、東亞合成社製
・単量体C2:5〜6官能アクリレート、商品名M−402、東亞合成社製
・光重合開始剤D:イルガキュア184、チバスペシャリティケミカルズ社製
・レベリング剤:ポリフロー450、共栄社化学社製
・紫外線吸収剤E:チヌビンP、チバスペシャリティケミカルズ社製
・溶媒:酢酸ブチル
【0085】
第1表に示す結果から明らかなように、単量体(B)を含有しない比較例1は金属層に対する接着性に劣った。
メチルメタクリレート重合体(A)を50質量部より多く含有する比較例2は、意匠性が劣った。
単量体(C)を70質量部より多く含有する比較例3は、金属層に対する接着性に劣った。
光重合開始剤(D)を含有しない比較例5は、金属層に対する接着性に劣った。
これに対して、実施例1〜10の組成物は、金属層に対する接着性に優れ、金属層の表面の凹凸を埋めて平滑な状態とすることができ、意匠性に優れる積層体となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固形分100質量部中、
メチルメタクリレート重合体(A)を10〜50質量部と、
1分子中に、1個以上のカルボキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体(B)を1〜20質量部と、
1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体(C)を10〜70質量部と、
光重合開始剤(D)を2〜10質量部とを含有する紫外線硬化型トップコート剤組成物。
【請求項2】
前記メチルメタクリレート重合体(A)の分子量が、10,000〜300,000である請求項1に記載の紫外線硬化型トップコート剤組成物。
【請求項3】
前記単量体(B)が、下記式(1)で表される請求項1または2に記載の紫外線硬化型トップコート剤組成物。
【化1】


(式中、nは、0〜1の整数である。)
【請求項4】
さらに、紫外線吸収剤(E)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化型トップコート剤組成物。

【公開番号】特開2007−314677(P2007−314677A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146491(P2006−146491)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】