説明

紫外線硬化型樹脂組成物およびこれを用いた光情報記録媒体

【課題】フィルタ層の形成時における高温、高真空、長時間という厳しい条件下でも、成分の揮発、溶出がなく、その成分によって反射膜が腐食するのを防止した第1ギャップ層を形成することができる紫外線硬化型樹脂組成物、および、この紫外線硬化型樹脂組成物を用いて形成した第1ギャップ層を備え、デジタルボリュームホログラフィに好適な光情報記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体において前記第1ギャップ層の形成に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物であって、ラジカル重合性化合物と、分子量300以上の光重合開始剤とを含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報をホログラムにより記録する光情報記録媒体に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物と、その硬化物からなる皮膜層を有する光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラフィーの原理を用いて、情報をホログラムにより記録するホログラフィック光記録媒体の開発が進められてきた。このホログラフィック光記録媒体では、情報の記録時には、情報を含んだ情報光と参照光とを感光性組成物からなる記録層中で重ね合わせ、そのときにできる干渉縞を記録層に書き込むことによって情報を記録する。一方、情報の再生時には、情報が記録された記録層に所定の角度で参照光を入射させ、記録されている干渉縞による参照光の光回折を生じさせて、元の情報光を再生させる。
【0003】
近年、超高密度光記録を実現するために、ボリュームホログラフィ、特にデジタルボリュームホログラフィが実用化されつつあり、注目を集めている。ボリュームホログラフィとは、光記録媒体の厚み方向も積極的に活用して、三次元的に干渉縞を書き込む方式であり、厚みを増すことで回折効率を高めるとともに多重記録により記録容量の増大を図ることができる方式である。一方、デジタルボリュームホログラフィとは、ボリュームホログラフィと同様の記録媒体と記録方式を使用して、記録する情報を2値化したデジタルパターンとし、コンピュータなどを指向した記録方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなホログラフィック光記録媒体には、図1や図2に示すように第1ギャップ層やフィルタ層が設けられている。第1ギャップ層は、フィルタ層と反射膜との間に設けられ、下側基板のサーボピットパターン上に設けられた反射膜の上面の平滑化、および、記録層内に形成されるホログラムの大きさの調整を目的として設けられている。ホログラフィック光記録媒体では、記録層には、記録用参照光および情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要がある。そのためには、記録層とサーボピットパターン上に設けられた反射膜との間に所定の間隔を設ける必要がある。第1ギャップ層は、記録層と反射膜との間に所定の間隔を設けるために、その間隔に相当する厚みで設けられている。
【0005】
第1ギャップ層は、反射膜上に、スピンコートなどにより紫外線硬化型樹脂を塗布した後、この紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することによって形成される(例えば、特許文献2参照)が、未だ実用可能な性能を有するものが得られていなかった。
ホログラフィック光記録媒体には、第1ギャップ層上に、特定の波長の光のみを透過し、この特定の波長とは異なる波長の光を反射する波長選択反射機能を有するフィルタ層が設けられる。このフィルタ層は、光の入射角が変化しても選択波長にずれが生じることを防止するとともに、情報光および参照光による反射膜からの乱反射を防止し、さらに、ノイズの発生を防止する機能を有する。このフィルタ層により、ホログラフィック光記録媒体に高解像度、回折効率の優れた光記録が可能となる。
【特許文献1】特開平11−311936号公報
【特許文献2】特開2007−83461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィルタ層は、ダイクロイックミラー層または誘電体蒸着層で形成される高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層蒸着膜からなることが多く、その形成は、真空蒸着装置中で、高温、高真空、長時間という厳しい条件下(例えば、80℃、10−5Torr、4時間)でなされる。そのため、フィルタ層の形成に伴って、第1ギャップ層からその成分が揮発、溶出し、真空蒸着装置内および基板蒸着面が汚染されるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光情報記録媒体のフィルタ層の形成時における高温、高真空、長時間という厳しい条件下においても、成分の揮発、溶出がなく、その成分によって反射膜が腐食するのを防止した第1ギャップ層を形成できる紫外線硬化型樹脂組成物、および、この紫外線硬化型樹脂組成物を用いて形成した第1ギャップ層を備え、デジタルボリュームホログラフィに好適な光情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の光重合開始剤を含有する紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物は、光情報記録媒体のフィルタ層の形成時における高温、高真空、長時間の条件においても揮発成分がなく、アルミニウム、アルミニウム合金、銀または銀合金などからなる反射膜を有する光情報記録媒体において優れた耐久性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体において前記第1ギャップ層の形成に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物であって、ラジカル重合性化合物と、分子量300以上の光重合開始剤とを含有してなることを特徴とする。
【0010】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物において、前記光重合開始剤を0.1〜20重量%含有してなることが好ましい。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物において、前記光重合開始剤は、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の光情報記録媒体は、第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体であって、前記第1ギャップ層は、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化皮膜層からなることを特徴とする。
【0012】
本発明の光情報記録媒体において、前記フィルタ層と前記記録層との間に、第2ギャップ層が設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物によれば、第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体において前記第1ギャップ層の形成に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物であって、ラジカル重合性化合物と、分子量300以上の光重合開始剤とを含有してなるので、真空蒸着による光情報記録媒体のフィルタ層の形成時における高温、高真空、長時間という厳しい条件下においても、成分の揮発、溶出がない第1ギャップ層を提供することができるとともに、光情報記録媒体の反射膜を腐食から保護することができる。また、フィルタ層を形成するために使用する真空蒸着装置内および基板面を汚染することもない。したがって、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を用いて作製した光情報記録媒体は、特にデジタルボリュームホログラフィに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
(紫外線硬化型樹脂組成物)
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体において前記第1ギャップ層の形成に用いられ、ラジカル重合性化合物と、分子量300以上の光重合開始剤とを含有してなる組成物である。
【0016】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤としては、分子量300以上のものであり、紫外線などの活性エネルギー線の照射によりラジカルを生成する化合物であれば特に限定されない。また、この光重合開始剤の分子量の上限は特に限定されないが、10000以下が好ましい。
【0017】
このような光重合開始剤としては、例えば、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](商品名:KIP−150、ESACURE−ONE、LAMBERTI社製、分子量:204.7×n(2≦n≦5))、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン(商品名:ESACURE−1001M、LAMBERTI社製、分子量:514)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名:イルガキュアー819、チバスペシャリティーケミカルズ社製、分子量:418.5)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(商品名:イルガキュアー369、チバスペシャリティーケミカルズ社製、分子量:366.5)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名:イルガキュアーTPO、チバスペシャリティーケミカルズ社製、分子量:348.0)などが挙げられる。
【0018】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物では、これらの光重合開始剤の群から選択される1種または2種以上が用いられる。
また、これらの光重合開始剤の中でも、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オンが特に好ましい。
【0019】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物における、上記の光重合開始剤の含有量は、0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15重量%である。
光重合開始剤の含有量が0.1重量%未満では、紫外線硬化型樹脂組成物は十分な硬化速度が得られない。一方、光重合開始剤の含有量が20重量%を超えても、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化速度の向上、および、反射膜を形成する金属の防腐食性の向上が見られず、経済的にも不利になる。
【0020】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、フィルタ層に影響を与えない範囲で、必要に応じて、上記の光重合開始剤と、その他の光重合開始剤とを併用することもできる。
【0021】
その他の光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0022】
また、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、フィルタ層に影響を与えない範囲で、必要に応じて、光重合開始助剤となるアミン類などを使用することもできる。
このアミン類などとしては、安息香酸2−ジメチルアミノエチルエステル、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどが挙げられる。
【0023】
さらに、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、フィルタ層に影響を与えない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、有機溶剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、蛍光増白剤、ヒンダードアミン化合物などの光安定剤、充填剤などの添加剤を加えることもできる。
【0024】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物に含まれるラジカル重合性化合物としては、特に限定されないが、(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。
(メタ)アクリレート化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物、二官能(メタ)アクリレート化合物、三官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物などのモノマー類やオリゴマー類が挙げられる。
【0025】
単官能(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
二官能(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキルエーテルジ(メタ)アクリレート類、ノルボルナンジメタノールジアクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド2モルが付加したジオールのジ(メタ)アクリレート、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−β,β−ジメチル−1−1,3−ジオキサン−2−エタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを2モル付加したジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド2モル付加したジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド2モル付加したジオールのジ(メタ)アクリレートなどの脂環式構造を有するジオールジ(メタ)アクリレート類、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0027】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートのモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
その他、(メタ)アクリレート化合物としては、エチレンオキシド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレートなどを用いてもよい。
【0029】
単官能(メタ)アクリレート化合物、二官能(メタ)アクリレート化合物、三官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物などのオリゴマーとしては、例えば、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレートのポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエーテル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0030】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキシド付加ジグリシジルエーテル化合物、ビスフェノールFあるいはそのアルキレンオキシド付加ジグリシジルエーテル化合物、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキシド付加ジグリシジルエーテル化合物、水素添加ビスフェノールFあるいはそのアルキレンオキシド付加ジグリシジルエーテル化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリレート化合物以外に、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマーなども使用することができる。
【0032】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、上記のラジカル重合性化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を使用することができる。
【0033】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、上記の各成分を、常温〜80℃にて、混合、溶解することにより調製される。また、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の調製時には、必要に応じて、濾過などの操作により、夾雑物を取り除いてもよい。
また、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、塗布性を考慮して、25℃における粘度が100mPa・s〜5000mPa・sの範囲となるように、各成分の配合比を適宜調節することが好ましい。本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の粘度の調節には、必要に応じて溶媒を使用してもよいが、光情報記録媒体の製造工程において、この組成物から揮発した溶媒が真空蒸着装置内および基板蒸着面を汚染するのを防止するために、溶媒を用いないことが好ましい。
【0034】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、レーザー光により記録層に情報をホログラムとして記録する光情報記録媒体を構成する第1ギャップ層を形成するための紫外線硬化型樹脂として用いられるものである。
すなわち、光情報記録媒体の第1ギャップ層を形成するためには、スピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法などの方法により、基板上に設けられた反射膜上に、膜厚が1μm〜300μmとなるように、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を塗工する。その後、基板の一方の面側あるいは両面側から、この組成物に対して紫外〜近紫外(波長250〜450nm付近)の活性エネルギー線を照射して、この組成物を硬化させ、この組成物の硬化皮膜層を形成する。
【0035】
活性エネルギー線の照射量は、50mJ/cm〜10000mJ/cmであることが好ましく、より好ましくは200mJ/cm〜5000mJ/cmである。
活性エネルギー線の光源としては、紫外〜近紫外(波長250〜450nm付近)の活性エネルギー線を照射することができるものであれば特に限定されないが、例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、無電極ランプなどが用いられる。
【0036】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、第1ギャップ層、若しくは、第1ギャップ層および第2ギャップ層と、フィルタ層と、記録層とを備え、レーザー光により記録層に情報をホログラムとして記録する光情報記録媒体に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物であって、第1ギャップ層の形成に用いられ、ラジカル重合性化合物と、分子量300以上の光重合開始剤とを含有してなるので、真空蒸着による光情報記録媒体のフィルタ層の形成時における高温、高真空、長時間という厳しい条件下においても、成分の揮発、溶出がない第1ギャップ層を提供することができるとともに、基板と第1ギャップ層との間に設けられた反射膜を腐食から保護することができる。したがって、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を用いて作製した光情報記録媒体は、特にデジタルボリュームホログラフィに好適である。
【0037】
(光情報記録媒体)
本発明には、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し、この組成物を硬化させて得られる硬化皮膜層からなる第1ギャップ層を有する光情報記録媒体、特に、ボリュームホログラフィに使用される光情報記録媒体も含まれる。
以下、図面を参照して、本発明の光情報記録媒体とその構成要素について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明の光情報記録媒体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の光情報記録媒体10は、第1基板11と、第1基板11上に設けられた反射膜12と、反射膜12に接するように設けられた第1ギャップ層13と、第1ギャップ層13上に順に積層されたフィルタ層14、記録層15および第2基板16とから概略構成されている。
また、第1基板11の一方の面11aの全面には、第1基板11の厚み方向の断面形状が凹凸形状をなすサーボピットパターン17が形成されている。そして、このサーボピットパターン17上に、反射膜12が設けられている。
【0039】
光情報記録媒体10の外形形状は、ディスク形状でもカード形状であってもよく、ディスク形状が好ましい。なお、光情報記録媒体10の形状がカード形状の場合には、上記のサーボピットパターンが設けられていなくてもよい。
また、この光情報記録媒体10では、例えば、第1基板11の厚みが0.6mm、第1ギャップ層13の厚みが100μm、フィルタ層14の厚みが2μm〜3μm、記録層15の厚みが0.6mm、第2基板16の厚みが0.6mmである。この場合、光情報記録媒体10全体の厚みは、約1.9mmである。
【0040】
光情報記録媒体10の各構成部分について説明する。
第1基板11は、その形状、構造、大きさなどについては特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。
第1基板11の形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられる。
【0041】
第1基板11の材料としては、光情報記録媒体10の機械的強度を確保できるものが用いられるとともに、記録および再生に用いられる光が第1基板11を通して入射する場合、その光の波長領域において十分に透明なものが用いられる。
このような第1基板11の材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂などが挙げられるが、成形性や製造コストの点から、ガラスおよび樹脂が特に好適である。樹脂としては、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂が特に好ましい。
【0042】
第1基板11の一方の面11aには、その半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域として、アドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられている。そして、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の領域が、データエリアになっている。また、アドレス−サーボエリアには、予め第1基板11の厚み方向の断面形状が凹凸形状をなすサーボピットパターン17が形成されている。このサーボピットパターン17の高さ(凸部に対する凹部の深さ)は、通常175nmであり、第1基板11を始めとして他の層の厚みに比べて充分に小さい。
【0043】
第1基板11の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、0.1mm〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.3mm〜2mmである。
第1基板11の厚みが0.1mm未満では、光情報記録媒体10を保管する際、その形状の歪みが抑えられないおそれがある。一方、第1基板11の厚みが5mmを超えると、光情報記録媒体10全体の重量が大きくなり、光情報記録媒体の情報読取/書込装置のドライブモーターに過剰な負荷をかけるおそれがある。
【0044】
反射膜12は、第1基板11の一方の面11aに形成されたサーボピットパターン17上に設けられ、レーザー光を反射するための膜である。
反射膜12の材料としては、情報光や参照光、サーボ用光に対して高い反射率を有する材料が用いられる。使用する光の波長が400〜780nmである場合、反射膜12の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、金、白金、銅合金などが用いられる。
反射膜12の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、50nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上である。
【0045】
第1ギャップ層13は、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物から形成され、光情報記録媒体10の入出射面10a(第2基板16の最表面)から入射した位置決めのためのサーボ用光である赤色(レーザー)光30、並びに、情報光、記録光および参照光である緑色(レーザー)光または青色(レーザー)光31の波長域において十分に透明な層であり、反射膜12とフィルタ層14との間に設けられ、第1基板11の一方の面11aを平滑化する目的で設けられる層である。また、第1ギャップ層13は、記録層15内に形成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効に作用する。
第1ギャップ層13の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、1μm〜200μmであることが好ましい。
【0046】
フィルタ層14は、第1ギャップ層13上に設けられ、複数種の光線の中から特定の波長の光を透過し、この特定の波長とは異なる波長の光のみを反射する波長選択反射機能を有する層である。詳細には、フィルタ層14は、位置決めのためのサーボ用光である赤色レーザー光30のみを透過し、情報光、記録光および参照光である緑色または青色レーザー光31を反射する機能を有する層である。これにより、光情報記録媒体10の入出射面10aから入射した情報光、記録光および参照光は、フィルタ層14を透過して反射膜12まで達することがなく、戻り光となって、入出射面10aから出射する。
【0047】
このようなフィルタ層14としては、高温、高真空、長時間という厳しい条件下で形成される、例えば、ダイクロイックミラー層や誘電体蒸着層で形成される高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層蒸着膜などが挙げられる。
フィルタ層14の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、2μm〜3μmであることが好ましい。
【0048】
また、フィルタ層14は光情報記録媒体10に対する光の入射角が変化しても、選択反射波長にずれを生じることを防止するとともに、情報光および参照光による反射膜12における乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する。ゆえに、第1ギャップ層13上にフィルタ層14を積層することにより、記録層15に対して高解像度かつ回折効率に優れたホログラムを形成することができる。
【0049】
記録層15の材料としては、記録層15に、情報光や参照光であるレーザー光が所定時間照射された場合、レーザー光の強度に応じて照射箇所の光学特性(屈折率、吸収率、透過度、蛍光発光性、反射率など)が変化する材料が用いられる。
このような材料としては、例えば、レーザー光に感光して重合する光重合性有機物からなる感光材が用いられる。この光重合性有機物としては、例えば、DuPont社製のフォトポリマHRF−600(製品名)が挙げられる。
【0050】
記録層15の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、4μm〜1000μmが好ましく、より好ましくは100μm〜700μmである。記録層15の厚みがこの範囲内であれば、記録層15に対して、10〜300多重のシフト多重記録を行っても十分なS/N比(信号対雑音比)が得られる。
【0051】
第2基板16は、構造、大きさなどについては特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。また、第2基板16の形状は、第1基板11の形状に応じて適宜選択される。
第2基板16の材料としては、第1基板11の材料と同様のものが用いられる。
【0052】
第2基板16の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、0.1mm〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.3mm〜2mmである。
第2基板16の厚みが0.1mm未満では、光情報記録媒体10を保管する際、その形状の歪みが抑えられないおそれがある。一方、第2基板16の厚みが5mmを超えると、光情報記録媒体10全体の重量が大きくなり、光情報記録媒体の情報読取/書込装置のドライブモーターに過剰な負荷をかけるおそれがある。
【0053】
次に、この実施形態の光情報記録媒体10の製造方法について説明する。
まず、気相成長法により、第1基板11の一方の面11aに形成されたサーボピットパターン17上に、反射膜12を形成する。
気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの気相成長法の中でも、量産性、膜質などの点から、スパッタリング法が好適である。
【0054】
次いで、スピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法などの方法により、反射膜12上に、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を塗工する。
【0055】
次いで、第1基板11の一方の面11a側、あるいは、一方の面11a側および他方の面11b側から、反射膜12上の紫外線硬化型樹脂組成物に対して紫外〜近紫外(波長250〜450nm付近)の活性エネルギー線を照射して、この組成物を硬化させ、この組成物の硬化皮膜層からなる第1ギャップ層13を形成する。
ここで、活性エネルギー線の照射量は、50mJ/cm〜10000mJ/cmが好ましく、より好ましくは200mJ/cm〜5000mJ/cmである。
【0056】
次いで、真空蒸着により、第1ギャップ層13上に、多層蒸着膜などからなるフィルタ層14を直接形成する。
【0057】
次いで、スピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法などの方法により、フィルタ層14上に、上記の光重合性有機物などの感光材を塗工し、この感光材からなる記録層15を形成する。
【0058】
次いで、記録層15上に、第2基材16を貼り合せて、光情報記録媒体10を得る。
【0059】
(2)第二の実施形態
図2は、本発明の光情報記録媒体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
図2において、図1に示した光情報記録媒体の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の光情報記録媒体20と、上記の光情報記録媒体10とが異なる点は、光情報記録媒体20には、フィルタ層14と記録層15との間に、第2ギャップ層18が設けられている点である。
【0060】
この実施形態の光情報記録媒体20では、例えば、第1基板11の厚みが1.0mm、第1ギャップ層13の厚みが100μm、フィルタ層14の厚みが3μm〜5μm、第2ギャップ層18の厚みが70μm、記録層15の厚みが0.6mm、第2基板16の厚みが0.4mmである。この場合、光情報記録媒体10全体の厚みは、約2.2mmである。
【0061】
第2ギャップ層18は、必要に応じて、フィルタ層14と記録層15との間に設けられる。
第2ギャップ層18の材料としては、光情報記録媒体10の入出射面10aから入射した位置決めのための赤色レーザー光30、並びに、情報光、記録光および参照光である緑色または青色レーザー光31の波長域において十分に透明な層を形成することができる材料であれば特に限定されない。
【0062】
第2ギャップ層18の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート;PMMA)などの透明樹脂フィルム、または、商品名ARTONフィルム(JSR社製)や商品名ゼオノア(日本ゼオン社製)などのノルボルネン系樹脂フィルムなどが挙げられる。これらの材料の中でも、等方性の高いものが好ましい。
また、第2ギャップ層18の材料としては、例えば、紫外線硬化型樹脂組成物が好ましく使用可能であり、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を使用することもできる。
第2ギャップ層18の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜調整されるが、1μm〜200μmであることが好ましい。
【0063】
また、この第2ギャップ層18には、情報光および再生光をフォーカシングするポイントが存在するため、この領域に記録層15を形成するフォトポリマを設けてしまうと、このフォトポリマの過剰露光によるモノマーの過剰消費が起こり、その結果、記録層15における多重記録能が低下するおそれがある。このような不具合を防ぐためには、情報光および再生光に対して無反応で、かつ、透明な第2ギャップ層18を設けることが有効となる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を表す。
【0065】
「実施例1」
ビスフェノールA型エポキシアクリレート15部と、ウレタンアクリレート75部と、光重合開始剤10部とを配合し、60℃にて1時間、加熱、混合して溶解し、淡黄色透明の紫外線硬化型組成物を調製した。
ビスフェノールA型エポキシアクリレートとしては、EPA−37(日本化薬社製)を用いた。
ウレタンアクリレートとしては、UX−389(日本化薬社製)20部、R−604(日本化薬社製)15部、R−684(日本化薬社製)10部、および、HDDA(日本化薬社製)30部を用いた。
光重合開始剤としては、KIP−150(LAMBERTI社製)を用いた。
【0066】
「実施例2〜4、比較例1〜3」
実施例1と同様にして、表1に示す組成からなる実施例2〜4、および、比較例1〜3の紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
なお、表1中に略称で示した各成分は下記の通りである。
EPA−37:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、日本化薬社製
UX−389:ウレタンアクリレート、日本化薬社製
R−604:5−エチル−5−ヒドロキシメチル−β、β−ジメチル−1−1,3−ジオキサン−2−エタノールジアクリレート、日本化薬社製
R−684:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、日本化薬社製
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、日本化薬社製
【0069】
KIP−150:オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]LAMBERTI社製
ESACURE−1001M:1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン LAMBERTI社製
イルガキュアー819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
イルガキュアーTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
イルガキュアー907:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
イルガキュアー651:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
【0070】
実施例1〜4、および、比較例1〜3で調製した紫外線硬化型樹脂組成物について、試験例1および試験例2に示した試験方法により評価した。
【0071】
「試験例1」<ダイクロイック膜(ダイクロイックミラー層)形成後の外観評価>
下記の(1)〜(3)の手順により、第1ギャップ層を備えた積層基板を作製した。
【0072】
(1)サーボピットパターンが形成された直径120mm、厚み1.2mmのガラス基板を用意し、スパッタリングにより、このガラス基板のサーボピットパターン上に、平均膜厚が200nmのアルミニウム反射膜を形成した。
(2)アルミニウム反射膜上に、実施例1〜4、および、比較例1〜3で調製した紫外線硬化型樹脂組成物2.5gを円状に供給し、1000rpmの速度にて5秒間、スピンコートし、紫外線硬化型樹脂組成物の膜厚が100μm(面内分布±2μm)になるように塗工した。スピンコート装置としては、グローバルマシーナリー社製のものを使用した。
(3)フュージョン社製UVランプ(Dバルブ)を用いて、紫外線硬化型樹脂組成物の塗工面側から照射量2000mJ/cmにて、紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて第1ギャップ層を形成し、ガラス基板、アルミニウム反射膜および第1ギャップ層とからなる積層基板を得た。
【0073】
上記の(1)〜(3)の手順により作製した積層基板上に、真空蒸着により、フィルタ層としてダイクロイック膜を形成した後、この積層基板の外観評価を行った。
なお、ダイクロイック膜は高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層蒸着膜であり、下記の成膜条件により形成した。
真空蒸着装置として昭和真空社製のものを用いて、真空度を10−5Torr、釜内温度を80〜90℃、蒸着時間を4時間〜5時間とし、層数が30層〜40層の多層蒸着膜を形成した。
【0074】
ダイクロイック膜形成後の外観評価の基準を以下の通りとした。
ダイクロイック膜表面あるいは内部に、固体状、液体状の異物が観察されなかった場合を「○」、ダイクロイック膜表面あるいは内部に、固体状、液体状の異物が観察された場合を「×」と評価した。
評価結果を表1に示す。
【0075】
「試験例2」<金属反射膜の防腐食性評価>
下記の(1)〜(3)の手順により、金属反射膜上に第1ギャップ層を備えた積層基板を作製した。
【0076】
(1)直径120mm、厚み1.2mmのポリカーボネート基板を用意し、スパッタリングにより、このポリカーボネート基板上に、平均膜厚が100nmのアルミニウム反射膜を形成した。なお、ポリカーボネートはガラスよりも透湿度が高く、ガラス基板上に金属反射膜を形成した場合よりも、ポリカーボネート基板上に金属反射膜を形成した場合の方が、金属反射膜の劣化が進行しやすい。そのため、金属反射膜の防腐食性能を評価するためには、ガラス基板よりもポリカーボネート基板の方が好適である。
(2)アルミニウム反射膜上に、実施例1〜4、および、比較例1〜3で調製した紫外線硬化型樹脂組成物2.5gを円状に供給し、1000rpmの速度にて5秒間、スピンコートし、紫外線硬化型樹脂組成物の膜厚が100μm(面内分布±2μm)になるように塗工した。スピンコート装置としては、グローバルマシーナリー社製のものを使用した。
(3)フュージョン社製UVランプ(Dバルブ)を用いて、紫外線硬化型樹脂組成物の塗工面側から照射量2000mJ/cmにて、紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて第1ギャップ層を形成し、ポリカーボネート基板、アルミニウム反射膜および第1ギャップ層とからなる積層基板を得た。
【0077】
また、上記の(1)〜(3)の手順と同様にして、ポリカーボネート基板上に、銀または銀合金(商品名:GB−100、コベルコ社製)からなる反射膜を設けた積層基板を作製した。
【0078】
得られた積層基板を、恒温恒湿機によって設定した、80℃、湿度85%の環境下に、240時間、放置した。
恒温恒湿機としては、エスペック社製のものを使用した。
その後、常温にて48時間、積層基板を乾燥させた後、目視および顕微鏡により、金属反射膜の外観評価を行った。
【0079】
金属反射膜の外観評価の基準を以下の通りとした。
試験前と比較し、恒温恒湿試験後の評価において反射膜の状態に変化が見られなかった場合を「○」、試験前と比較し、恒温恒湿試験後の評価において反射膜に変色、欠損が見られた場合を「×」と評価した。
評価結果を表1に示す。
【0080】
表1の結果から、実施例1〜4の紫外線硬化型樹脂組成物は、いずれの試験においても良好な外観が得られることが分かった。
一方、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を構成する光重合開始剤を含まない比較例1〜3の紫外線硬化型樹脂組成物は、ダイクロイック膜に固体状および液体状の異物が観察され、明らかな外観不良を生じることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の光情報記録媒体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光情報記録媒体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 光情報記録媒体
11 第1基板
12 反射膜
13 第1ギャップ層
14 フィルタ層
15 記録層
16 第2基板
17 サーボピットパターン
18 第2ギャップ層
20 光情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体において前記第1ギャップ層の形成に用いられる紫外線硬化型樹脂組成物であって、
ラジカル重合性化合物と、分子量300以上の光重合開始剤とを含有してなることを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記光重合開始剤を0.1〜20重量%含有してなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤は、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
第1ギャップ層と、フィルタ層と、レーザー光により情報をホログラムとして記録する記録層とをこの順に備えた光情報記録媒体であって、
前記第1ギャップ層は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化皮膜層からなることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項5】
前記フィルタ層と前記記録層との間に、第2ギャップ層が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の光情報記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−294400(P2009−294400A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147272(P2008−147272)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(595047020)メモリーテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】