説明

紫外線重合性粘着剤組成物、紫外線重合性粘着剤組成物を用いた感圧性接着剤及びこの感圧性接着剤を用いた接着シ―ト

【課題】紫外線硬化より高粘着力と高凝集力を得ることができる紫外線重合性アクリル系粘着剤組成物、紫外線重合性アクリル系粘着剤組成物を使用したアクリル系粘着剤、粘着テープ又は粘着シートの提供。
【解決手段】アクリル酸とアルキルエステル又はメタクリル酸とアルキルエステル単量体70〜97重量%、不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物(計100重量部)、粘着付与剤2〜30重量部、光重合開始剤0.1〜5重量部及び架橋剤0.01〜5重量部からなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線重合性粘着剤組成物、紫外線重合性粘着剤組成物を用いた紫外線重合性感圧接着剤及びこの紫外線重合性感圧接着剤を用いた接着シ―トに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着剤には、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが使用されてきた。中でも、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤は、耐候性や酸化劣化に優れているという理由で様々な分野で使用されている。
(メタ)アクリルポリマーはそれ自体に粘着性がある。低表面エネルギー材料に対する粘着特性は十分でないという理由で、(メタ)アクリル系ポリマーに粘着付与樹脂を添加したアクリル系粘着剤が利用されている。粘着付与樹脂には、ロジンやテルペン樹脂などの天然樹脂系粘着付与樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂系粘着付与樹脂が知られている。しながら、これらの粘着付与樹脂は粘着力は増加させるものの、凝集力を減少させることも知られており、これらを総合的に判断して検討されている。
【0003】
一般に、アクリル系の感圧性接着剤は、アルキルアクリレ―ト単量体を主成分とした単量体を溶液重合することにより調製されてきたが、有機溶剤の安全性や環境衛生上の制約から、最近では、エマルジヨン重合や光重合が多く用いられつつある。中でも、光重合した感圧性接着剤は、その製造工程で溶剤を全く使用しないため、安全性と環境改善の面で、特に有利である。
光重合の例として、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーに光重合開始剤を添加した液状物を、基材に塗布又は含浸し、強度1〜300W/mの紫外線を照射して少なくとも90重量%を重合反応させ、次にその強度以上の紫外線を照射して重合反応を完結させるアクリル系粘着テープの製造方法が開発されている(特許文献2特開平2−60981号公報)。
特許文献3特許第2922036号公報には、特定の単量体混合物と光重合開始剤を含む組成物に特定の強度の紫外線を照射した後、加熱乾燥を行う感圧接着剤の製造方法が開示されている。
一方、粘着剤はその利便性から現在ラベル、シート、テープ等多くの粘着製品をはじめ、各種被着体の貼り合せ等に利用されている。この様に粘着剤の用途が拡大するにつれて、粘着剤に求められる性能もより広範になっている。かかる要求性能として、基材及び被着材の多様化により各種プラスチック材料などに対する接着性が重視されている。
アクリル系粘着剤のプラスチック材料に対する接着性等の改善のため、粘着付与樹脂を配合することが一般的である。
一般に粘着付与樹脂として好適に用いられる粘着付与樹脂は、ラジカル重合反応の連鎖移動・停止剤として作用するため、重合が阻害されるので十分な凝集力の接着性能を有する粘着剤層を形成できない。
【0004】
かかる問題を解決する手段として、特許文献1特開平4−320471号公報(特許3154739号)は、光重合させるべき接着剤組成物として、アクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル単量体(以下、単にアルキルアクリレ―ト単量体と総称する)を主成分とする主単量体70〜99重量%)中に、極性基含有の共重合性単量体((メタ)アクリル酸、イタコン酸、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸などの不飽和酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ―ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ―トなどの水酸基含有単量体)30〜1重量%を含む単量体混合物100重量部に対して、特定の粘着付与剤である(フエノ―ル変性ロジン系粘着付与剤)2〜40重量部及び(c)光重合開始剤0.1〜5重量部、d)多官能アクリレ―ト単量体0.2〜5重量部を含む光重合性接着剤組成物である。このフエノ―ル変性ロジン系粘着付与剤であれば重合阻害が少なく、高い粘着力と充分な凝集力を得られると提案されている。しかしながら、両面テープのように粘着剤の厚さが0.1mmを超えるような場合には、重合率も低く、粘着力も低くなってしまう。
【0005】
また、特許文献4特開平2−18485号公報には、水素化ロジンエステル系粘着付与剤を、それぞれ用いることが提案されているが、水素化ロジンエステル系粘着付与剤でもラジカル重合の連鎖移動剤としての効果はなくなってはおらず、モノマー転化率は非水素化ロジンエステル系粘着付与剤よりも向上するが、生成するアクリルポリマーは低分子量化され、十分な凝集力を得ることはできない。
【0006】
以上のことから、十分な接着性、及び凝集力、具体的には、保持力、定荷重剥離性、ウレタンフォーム耐反発性、曲面接着性を有している紫外線重合性粘着剤組成物、紫外線重合性粘着剤組成物を用いた感圧性接着剤及びこの感圧性接着剤を用いた接着シ―トが求められている。
【特許文献1】特開平4−320471号公報(特許3154739号)
【特許文献2】特開平2−60981号公報
【特許文献3】特許第2922036号公報
【特許文献4】特開平2−18485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、十分な接着性、及び凝集力、具体的には、保持力、定荷重剥離性、ウレタンフォーム耐反発性及び曲面接着性を有している新規なアクリル系粘着剤を含む紫外線重合性接着剤組成物を提供することである。
【0008】
又、これを用いた紫外線重合性感圧性接着剤及びこれを用いた接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、本発明の課題について鋭意研究し、以下の点を新たに見出して、前記課題を解決した。
1. 本発明者は、樹脂成分として従来から用いられてきた単量体成分に着目し、特定割合で含有する(a)、(b)及び(c)成分に分けて、特定量とし、これに(e)及び(f)組み合わせた紫外線重合性接着剤組成物を有効であるとするものである。具体的には(c)成分について注目して独立した成分として含有量も多くしている。従来から水酸基含有モノマーは架橋剤(特にイソシアネート系架橋剤)との反応部位や、若干のTg調整剤として、アクリル系粘着剤ポリマーには0.1〜1%程度含有されることが周知の事実であるが、本発明では水酸基自身の効果を見出し、従来とは全くことなる量を含有させることにより、効果とをもたらすことを発見した。
下記(a)、(b)、(c)、(e)、(f)の5成分、
(a)アクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル単量体を主成分とする主単量体70〜97重量%、
(b)不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物((a)+(b)+(c)100重量部)、
(e)光重合開始剤0.1〜5重量部及び
(f)架橋剤0.01〜5重量部
を含むことを特徴とする紫外線重合性接着剤組成物。
2. 本発明者は、樹脂成分として従来から用いられてきた、樹脂成分として従来から用いられてきた単量体成分に着目し、特定割合で含有する(a)、(b)及び(c)成分に分けて、特定量とし、これに(e)及び(f)組み合わせた紫外線重合性接着剤組成物を有効であるとするものである。具体的には(c)成分について注目して独立した成分として含有量も多くしている。このことにより(d)成分を添加しても、従来の発明より優れた粘着物性と凝集力とのバランスを保つことが可能となり、多種の部材への粘着性が求められる各種基材の両面テープとして用いるときなどに有用である。
(a)アクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル単量体を主成分とする主単量体70〜97重量%、
(b)不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物((a)+(b)+(c)100重量部)、
(d)粘着付与剤2〜30重量部、(e)光重合開始剤0.1〜5重量部及び(f)架橋剤0.01〜5重量部からなる紫外線重合性接着剤組成物とし、これを紫外線重合して得られる紫外線重合性接着剤組成物は、従来の同種の従来知られている紫外線重合性接着剤組成物と比較して、粘着性を有していることを見出した。
3. 前記2の(d)の粘着付与剤として水添ロジン系粘着付与剤及びこの混合物、テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤及びこの混合物、水添テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤、及びこの混合物若しくはこれらの混合物を用いると、他のロジン系粘着付与剤を用いる場合と比較して凝集力の点でも良好な結果を得ることができることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られる、紫外線重合性接着剤組成物は、従来の同種の従来知られている紫外線重合性接着剤組成物と比較して、粘着性を有しており、その際に用いる粘着付与剤として水添ロジン系粘着付与剤及びこの混合物、テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤、水添テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤、及びこの混合物、若しくはこれらの混合物を用いると、他のロジン系粘着付与剤を用いる場合と比較して凝集力の点でも良好な結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
樹脂成分として従来から用いられてきた単量体成分に着目し、特定割合で含有する(a)、(b)及び(c)成分に分けて、特定量とし、これに(e)及び(f)組み合わせた紫外線重合性接着剤組成物を有効であるとするものである。具体的には(c)成分について注目して独立した成分として含有量も多くしている。
下記(a)、(b)、(c)、(e)、(f)の5成分、
(a)アクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル単量体を主成分とする主単量体70〜97重量%、
(b)不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物((a)+(b)+(c)100重量部)
(e)光重合開始剤0.1〜5重量部及び
(f)架橋剤0.01〜5重量部
を含むことを特徴とする紫外線重合性接着剤組成物。
【0012】
本発明者は、樹脂成分として従来から用いられてきた、樹脂成分として従来から用いられてきた単量体成分に着目し、特定割合で含有する(a)、(b)及び(c)成分に分けて、特定量とし、これに(e)及び(f)組み合わせた紫外線重合性接着剤組成物を有効であるとするものである。具体的には(c)成分について注目して独立した成分として含有量も多くしている。
紫外線重合性接着剤組成物及び紫外線重合性感圧性接着剤として用いるときに有用である。
本発明は、下記(a)〜(f)の6成分からなる光重合性接着剤組成物である。具体的には以下の通りである。
下記(a)〜(f)の6成分、
(a)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有するアルキルアクリレ―トまたはアルキルメタクリレ―ト単量体を主成分とする主単量体70〜97重量%、
(b)不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物((a)+(b)+(c)100重量部)、
(d)粘着付与剤2〜30重量部、
(e)光重合開始剤0.1〜5重量部及び
(f)架橋剤0.01〜5重量部
含む紫外線重合性接着剤組成物。
【0013】
以下に前記の二つの場合の(a)から(f)の各成分について説明する。
【0014】
(a)アクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル単量体は以下の通りである。
具体的には以下の通りである。
アクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソドデシルを挙げることができる。
メタクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル単量体は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸イソヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸イソオクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸イソノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸イソデシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸イソドデシル等を挙げることができる。
これらのほかに、窒素含有ビニル単量体、たとえば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等を用いることもできる。
【0015】
(b)不飽和カルボン酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシ-1-ブテン、2-カルボキシ-1-ペンテン、2-カルボキシ-1-ヘキセン、2-カルボキシ-1-ヘプテンを挙げることができる。
【0016】
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体はビニルアルコール、アリルアルコール、3-メチルアリルアルコール、2-ブテン-1-オール、2−ブテン-1,4-ジオール、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸又はメタクリル酸と多価アルコールのモノエステルなどをあげることができる。
アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキヘキシル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキヘキシルを挙げることができる。
アクリル酸又はメタクリル酸と多価アルコールのモノエステルは、アクリル酸又はメタクリル酸とポリエチレングリジコール又はポリプロピレングリコールとのモノエステルを挙げることができる。
中でも、2-ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ならびに2−ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートを用いることが望ましい。
【0017】
(d)の成分の粘着付与剤は、ロジン、水添ロジン、テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合体系樹脂、又は水添テルペンフェノール共重合体系樹脂をあげることができる。
水添ロジン及びテルペンフェノール共重合体系樹脂、水添テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤、を用いる場合が好ましい結果を得ることができる。
水添ロジン系粘着付与剤とは、ロジンの分子骨格内に存在する脂肪族性の二重結合を水素添加により減少させたものや、その誘導体(エステル化、グリシジルエステル化など)を示し、色相、加熱安定性、耐候性に優れたものである。
本発明で使用される水添ロジン系粘着付与剤は、市販されている水素化されたロジン、またはその誘導体を使用することができる。たとえばパインクリスタルKE-100、311、359、604(何れも荒川化学社製)、リカタックF-85、105(理化ファインテク社製)などを挙げることができる。
テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤は、モノテルペン(α-ピネン、β-ピネン、リモネン)とフェノールとの共重合体を指し、そのフェノール含有量や分子量を変化させ、SP値や軟化点を調整することができる。水添テルペンフェノール系粘着付与剤は、上記のテルペンフェノール共重合体中のモノテルペンに由来する不飽和結合を水素添加で減少させることにより、色相、耐熱性、耐薬品性を改良したものである。
本発明で使用されるテルペンフェノール共重合体系粘着付与剤は、市販されているテルペンフェノール共重合体系粘着付与剤、またはその誘導体を使用することができる。例えばYSポリスターTシリーズ、「THシリーズ」→削除、Sシリーズ、Nシリーズ、マイティーエースGシリーズ、Kシリーズ(何れもヤスハラケミカル社製)などがあげられる。
本発明で使用される水添テルペンフェノール系粘着付与剤は、市販されている水添テルペンフェノール系粘着付与剤、またはその誘導体を使用することができる。例えばYSポリスター THシリーズ、UHシリーズ(何れもヤスハラケミカル社製)などがあげられる。
【0018】
(e)成分の光重合開始剤は以下の通りである。
光重合開始剤は以下の通りである。
光開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系、フォスフィンオキシド系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ハロゲン化ケトン系、アシルフォスフォナート系など、従来公知のものが使用できる。
【0019】
(e)の架橋剤は以下の通りである。
本発明のUV硬化型アクリル系粘着剤組成物を使用したアクリル系粘着剤や、これを使用した粘着テープ又は粘着シートの耐熱性や凝集性を向上させたい場合には、UV硬化型アクリル系粘着剤組成物中に共重合可能なビニル基を一分子中に2個以上有する化合物を配合してもよい。また、UV硬化型粘着剤組成物中にヒドロキシル基やカルボキシル基などを有するモノマーを含有する場合は、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物等の、従来公知の熱活性型架橋剤を使用してもよい。
【0020】
この紫外線重合性接着剤組成物には、前記6成分のほかに、任意成分として、難燃剤、発泡剤、熱伝導性フィラ−、導電性フィラ−、中空フィラ−などの各種フィラ−や顔料、染料などの従来公知の各種の添加剤がある。紫外重合反応を阻害しない範囲内でこれらの任意成分を適宜配合、使用することができる。
【0021】
本発明においては、このような紫外線重合性接着剤組成物を、被着体上に直接塗工するか、または一旦剥離紙上に塗工したうえで、紫外線を照射して、光重合させることにより、それ自体感圧接着性を有する、粘着化されたアクリル系感圧性接着剤とすることができる。
UV光の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線などがある。UV光の照射強度は、終始一定の強度でも行って良いし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
【0022】
粘着テープ及び粘着シート
本発明のUV硬化型アクリル系粘着剤組成物を使用したアクリル系粘着剤は、粘着テープ又は粘着シートとして用いる。粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましくは10μm〜3mmである。
【0023】
支持体としては、不織布、化学繊維などの布類、和紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙等の紙類、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルム類、銅箔、アルミ箔、鉄箔等の金属箔類、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、アクリルフォーム等の発泡体類など、一般に粘着テープの基材として使用されている全ての基材が用いることができる。
【0024】
粘着剤組成物のテープ又はシート状への加工は、通常ロールツーロール等の流れ作業で行われるため、短い時間での十分な硬化が必要とされる。この観点から要求されるUV硬化時間は、15分以内である。好ましくは10分以内である。
【0025】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物を基材や剥離紙に塗布又は含浸後にUV硬化する際は、空気中の酸素で硬化が阻害されるため、これを防止する手段を実施しなければならない。例えば、UV硬化型アクリル系粘着剤組成物を塗工後、ポリエチレンテレフタレート製フィルムなどのUV光の透過性が高いフィルムで覆い酸素を遮蔽する方法や、窒素や炭酸ガス、ヘリウムガスのような不活性なガスを用いて酸素濃度0.1質量%以下、好ましくは0.03質量%以下の雰囲気中で硬化させる方法がある。
【0026】
本発明で得られる結果の評価試験方法は以下の通りである。
【0027】
180°粘着力評価試験方法
JIS-Z-1528に準じ、被着体としてSUS304(表面BA処理)板、ABS板およびポリプロピレン板を用いて、粘着力(N/10mm幅)を測定した。
【0028】
保持力評価試験方法
JIS-Z-1528に準じ、280番耐水研磨紙で研磨したステンレス板を被着体とし、貼り付け面積を20mm×20mmとし、70℃雰囲気で4.9Nの荷重を垂直にかけ1時間放置後の落下の有無、ズレ距離を測定した。
【0029】
定荷重剥離性評価試験方法
280番耐水研磨紙で研磨したステンレス板に、厚さ25μmのポリエステルフィルムで裏打ちした20mm幅×50mm長の両面粘着テープ試料を、2.0kgローラ1往復で加圧貼付し、30分間常温で放置後、70℃雰囲気で2.9N、2.0Nの荷重をかけて90度方向に剥離させ、1時間放置後の落下の有無、剥がれた距離を測定した。
【0030】
ウレタンフォーム耐反発性評価試験方法
厚さ10mm、20mm×70mmのウレタンフォームの片面に両面テープを全面に貼り付け、厚さ2mmのステンレス板の端に20mm×20mmを貼り、残りのウレタンフォームをステンレス板の反対側に折り返して貼り付けた。2.0kgローラ1往復で加圧貼付し、常温30分放置後、70℃雰囲気に72時間放置し、剥がれた距離を測定した。
評価基準 〇:剥がれなし ×:全面剥がれ
【0031】
曲面接着性評価試験方法
厚さ、0.5mm、幅30mm、長さ180mmのアルミ板に両面テープを20mm×180mm貼り付け、厚さ2mm、長さ200mmのABS板に貼り、5.0kgローラ1往復で加圧貼付し、30分間常温で放置した。
その200mm長のABS板を70℃雰囲気で190mmになるように湾曲させ72間放置後剥がれた距離を測定した。両端から剥がれが生じている場合には剥れた距離が大きいほうを評価結果とした。
評価基準 〇:剥がれなし ×:全面剥がれ
【実施例1】
【0032】
アクリルシロップ1の調製について
攪拌機、還流冷却器、温度計、UVランプ及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート89部、アクリル酸6部、2-ヒドロキシ-3-フェニルプロピルアクリレート(新中村化学工業社製:NKエステル702A)5部、光重合開始剤としてダロキュア1173(チバスペシャリティーケミカル社製)0.01部、n-ドデシルメルカプタン0.001部を添加し、窒素雰囲気下でUV光を照射してアクリルシロップを調製した。
【0033】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物1の調製について
上記アクリルシロップ100部に対して、水添ロジン系粘着付与樹脂パインクリスタルKE-100を10部(荒川化学社製)、架橋剤としてヘキサンジオールジアクリレート (新中村化学工業社製:NKエステルA-HD-N)0.06部、追加の光重合開始剤ダロキュア1173(チバスペシャリティーケミカル社製)0.3部を添加して均一に撹拌した。撹拌混合時に混入した空気泡を脱泡操作により除去して、UV硬化型アクリル系粘着剤組成物1を調製した。
【0034】
粘着シート1の調製について
上記UV硬化型アクリル系粘着剤組成物1を、表面を離型剤処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にレーヨン紙14g/m(MR原紙:三木特殊製紙社製)を基材とし、その両面に硬化後の厚さが0.15mmになるように塗工し、その上に厚さ50μmのPETフィルムで被覆した後、紫外線を照射して粘着シート1を得た。
【実施例2】
【0035】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物2の調製について
粘着剤組成物1の水添ロジン系粘着付与樹脂の変わりにテルペンフェノール系粘着付与樹脂マイティーエースG125(ヤスハラケミカル社製)を用い、架橋剤としてのヘキサンジオールジアクリレート (新中村化学工業社製:NKエステルA-HD-N)を0.04部とした。
【0036】
粘着シート2の調製について
粘着剤組成物2を用い粘着シート1と同様の操作で粘着シートを得た。
【実施例3】
【0037】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物3の調製について
粘着剤組成物1の水添ロジン系粘着付与樹脂の変わりに水添テルペンフェノール系粘着付与樹脂YSポリスターUH115(ヤスハラケミカル社製)を15部添加、架橋剤としてのヘキサンジオールジアクリレート (新中村化学工業社製:NKエステルA-HD-N)を0.02部とした。
【0038】
粘着シート3の調製について
粘着剤組成物2を用い粘着シート1と同様の操作で粘着シートを得た。
【実施例4】
【0039】
アクリルシロップ2の調製について
アクリルシロップ1の2-ヒドロキシ-3-フェニルプロピルアクリレートの変わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート2.7部添加した。
【0040】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物4の調製について
アクリルシロップ2において粘着剤組成物1と同様に調整した。
【0041】
粘着シート4の調製について
粘着剤組成物4を用い粘着シート1と同様の操作で粘着シートを得た。
【0042】
比較例1
アクリルシロップ3の調製について
攪拌機、還流冷却器、温度計、UVランプ及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート93.8部、アクリル酸6部、2-ヒドロキシアクリレート0.2部、光重合開始剤としてダロキュア1173(チバスペシャリティーケミカル社製)0.01部、n-ドデシルメルカプタン0.001部を添加し、窒素雰囲気下でUV光を照射してアクリルシロップを調製した。
【0043】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物5の調製について
上記アクリルシロップ100部に対して、水添ロジン系粘着付与樹脂パインクリスタルKE-100を10部(荒川化学社製)、ヘキサンジオールジアクリレート (新中村化学工業社製:NKエステルA-HD-N)0.06部、追加の光重合開始剤ダロキュア1173(チバスペシャリティーケミカル社製)0.3部を添加して均一に撹拌した。撹拌混合時に混入した空気泡を脱泡操作により除去して、UV硬化型アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0044】
粘着シート5の調製について
上記組成物を用い粘着シート1と同様の操作で粘着シートを得た。
比較例2
【0045】
UV硬化型アクリル系粘着剤組成物6の調製について
粘着剤組成物1の水添ロジン系粘着付与樹脂の変わりにフェノール変性ロジンエステル樹脂タマノル803L(荒川化学社製)を用い、架橋剤としてのヘキサンジオールジアクリレート (新中村化学工業社製:NKエステルA-HD-N)を0.5部とした。
粘着シート6の調製について
粘着剤組成物6を用い粘着シート5と同様の操作で粘着シート6を得た。
【0046】
実施例1から4及び比較例1から2について前記の試験方法を行って評価を行った。用いた原料を表1に示した。
評価結果について表2に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
結果について
実施例1では粘着付与剤を添加しても保持力、定荷重剥離性が良好で、尚且つ、ウレタンフォーム耐反発性、曲面接着性も良好な結果を示している。
実施例2においてはテルペンフェノール共重合体系粘着付与剤を添加しているが、保持力、定荷重剥離性が良好で、尚且つ、ウレタンフォーム耐反発性、曲面接着性も良好な結果を示している。
実施例3においては水添テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤を添加しているが、保持力、定荷重剥離性が良好で、尚且つ、ウレタンフォーム耐反発性、曲面接着性も良好な結果を示している。
実施例4では水酸基含有モノマーを変更しているが保持力、定荷重剥離性が良好で、尚且つ、ウレタンフォーム耐反発性、曲面接着性も良好な結果を示している。
比較例1のように粘着剤組成物の水酸基含有共重合性単量体含有量が少ない場合には、粘着力は得られているものの充分な凝集力が得られず、保持力、定荷重剥離性で粘着剤の凝集破壊により落下が生じている。
比較例2では水酸基含有モノマーを多く含むが、粘着付与樹脂にフェノール変性ロジンエステル樹脂を用いたもので、この粘着付与樹脂では重合率も低く、粘着力も低い。さらには定荷重剥離性でも落下が生じ、耐反発性や曲面接着性も得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)、(c)、(e)、(f)の5成分、
(a)アクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数1〜14のアルキルエステル単量体、少なくとも1つを主成分とする主単量体70〜97重量%、
(b)不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物((a)+(b)+(c)100重量部)、
(e)光重合開始剤0.1〜5重量部及び
(f)架橋剤0.01〜5重量部
を含むことを特徴とする紫外線重合性接着剤組成物。
【請求項2】
下記(a)〜(f)の6成分、
(a)アクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル又はメタクリル酸と炭素数1〜14のアルキルエステル単量体を主成分とする主単量体70〜97重量%、
(b)不飽和カルボン酸単量体15〜1重量%、
(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%からなる構成される単量体混合物((a)+(b)+(c)100重量部)、
(d)粘着付与剤2〜30重量部、
(e)光重合開始剤0.1〜5重量部及び
(f)架橋剤0.01〜5重量部
含むことを特徴とする紫外線重合性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(c)水酸基を少なくとも1つ含有する共重合性単量体15〜1重量%がアクリル酸又はメタクリル酸の脂肪族、芳香族ヒドロキシエステル、アクリル酸又はメタクリル酸とグリシジルエーテルのモノエステル単量体、アクリル酸又はメタクリル酸と多価アルコールのモノエステル単量体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線重合性接着剤組成物。
【請求項4】
前記(d)成分の粘着付与剤が水添ロジン系粘着付与剤、テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤、水添テルペンフェノール共重合体系粘着付与剤又はこれらの混合物から選ばれる、少なくとも一つである請求項1又は2に記載の紫外線重合性接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の紫外線重合性接着剤組成物を紫外線重合させることにより得られることを特徴とする紫外線重合性感圧性接着剤。
【請求項6】
基材の片面又は両面に請求項2から4いずれか記載の紫外線重合性接着剤組成物の層を設けて、紫外線重合させて紫外線重合感圧性接着剤の層を形成したことを特徴とする接着シ―ト。
【請求項7】
剥離シート上に請求項5記載の紫外線重合性感圧接着剤による層を設けたことを特徴とする接着シート。
【請求項8】
基材の片面又は両面に請求項2から4いずれか記載の紫外線重合性接着剤組成物の層を設けて、紫外線重合させて紫外線重合感圧性接着剤の層を形成したことを特徴とする粘着テープ。

【公開番号】特開2010−116474(P2010−116474A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290264(P2008−290264)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000145079)株式会社寺岡製作所 (23)
【Fターム(参考)】