説明

細径ケーブル

【課題】止水部における防水性を確実に維持することができる細径ケーブルを提供する。
【解決手段】細径ケーブル11は、中心導体12と、中心導体12を覆う絶縁体13と、絶縁体13の外周に設けられた外部導体15と、外被18を備え、外径が0.4mm以下である。外被18は、押し出し成型されたフッ素樹脂からなる内層16と、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及びフッ化ビニリデンの三元重合体ポリマーからなる最外層17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気通信機器、情報機器の配線等に用いられる細径ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器内または機器間の配線や、高速信号の伝送に細径の同軸ケーブルが用いられる。この同軸ケーブルは、通常、中心導体を絶縁体で被覆し、絶縁体の外周を外部導体で覆い、その外側を外被で覆った構造のものである。機器の筐体同士がスライドあるいは回動する可動部を通して配線される細径の同軸ケーブルでは、生産性や耐熱性の観点から、その外被をフッ素樹脂とすることが知られている。
【0003】
例えば、内部導体の外周に絶縁層を設け、その外周に金属導体の素線を複数本横巻きに巻き付けることにより外部導体層を設け、さらにその周囲にプラスチックテープのシース層と、PFA樹脂等のジャケット層を設けた極細同軸ケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−358842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細径ケーブルを機器の可動部に配線する際には、筐体の挿入口における防水性を確保するために、細径ケーブルの周囲に接着剤を充填してシール部を形成し、挿入口を止水することが求められる。しかし、細径ケーブルの外被がフッ素樹脂であると、シール部の接着剤との接着性が低い。そのため、筐体同士のスライドまたは回動が繰り返され、細径ケーブルに引っ張り力や曲げ力が加わって変位すると、細径ケーブルとシール部との間に微小な隙間が生じてしまい、防水性が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、止水部における防水性を確実に維持することができる細径ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の細径ケーブルは、中心導体と外被を備えた外径0.4mm以下の細径ケーブルであって、
前記外被は、押し出し成型されたフッ素樹脂からなる内層と、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及びフッ化ビニリデンの三元重合体ポリマーからなる最外層とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の細径ケーブルにおいて、前記最外層の厚さは、前記外被の厚さの1/2以上2/3以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の細径ケーブルにおいて、前記中心導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の外周であって前記外被の内周に設けられた外部導体と、を備え、
前記絶縁体はフッ素樹脂であり、
前記外被の厚さは、当該細径ケーブルの外径の5%以上20%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外被の最外層を四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及びフッ化ビニリデンの三元重合体ポリマーからなるものとしたので、配線時に他の部材に接着剤で接着した場合の接着力が強く、接着後に細径ケーブルに引っ張り力や曲げ力が加わっても、接着剤と外被との間に隙間を生じさせることがなく、例えばシール部においては安定した防水性が得られる等、配線の自由度が増し、配線用途が広くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す細径ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る細径ケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る細径ケーブル11は、中心に位置する信号線である中心導体12を絶縁体13で覆い、絶縁体13の外周にシールド層となる外部導体15を配し、その外側を外被18で覆って保護した同軸ケーブルの構成を有する。
【0013】
細径ケーブル11は、AWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG38よりも細いことが好ましい。これにより、細径ケーブル11は、曲がり易く、配線した筐体同士が互いにスライドあるいは回動するとき等の抵抗を小さくすることができる。また、複数本の細径ケーブル11を束ねたときに、束の部分の厚さを薄くすることができ、限られた配線スペースでの高密度配線を可能とする。
【0014】
中心導体12は、銀メッキもしくは錫メッキ軟銅線ないしは銅合金線からなる単線または撚り線で形成される。撚り線の場合は、例えば、素線導体径が0.016mmから0.04mmのものを7本撚ったものが用いられる。
【0015】
絶縁体13には、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)からなるフッ素樹脂が用いられ、絶縁体13は、このフッ素樹脂を中心導体12の外周に押出成形することにより形成される。PFAは絶縁樹脂の中でも誘電率が低い(1MHzでの比誘電率が約2.1)ので、他の樹脂を使用する場合に比べて静電容量を同じとしながら絶縁体を薄くすることができる。絶縁体13の外径は0.1mmから0.2mm程度である。
【0016】
外部導体15は、中心導体12に用いた素線導体と同程度の太さの裸銅線(軟銅線または銅合金線)または銀メッキもしくは錫メッキ軟銅線ないしは銅合金線を、絶縁体13の外周に横巻きまたは編組構造で配して形成される。さらに、シールド機能を向上させるために、外部導体15のすぐ外周に金属箔テープを併設する構造としてもよい。
【0017】
外被18は、最外層17と、この最外層17の内周側に設けられた内層16との異なる組成の二層を有する。この外被18の外径である細径ケーブル11の外径D1は、0.4mm以下である。
【0018】
外被18の最外層17は、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及びフッ化ビニリデンの三元重合体ポリマー(THV)の樹脂から形成されている。好ましくは、最外層17は1MHzでの比誘電率が4.6以上の樹脂から形成されている。このように、比誘電率が4.6以上の樹脂によって外被18の最外層17を形成すれば、最外層17の極性が大きいことより、配線箇所に用いられる接着剤との接着力を大幅に高めることができる。比誘電率が5.7以上の樹脂を使用すると一層好ましい。
【0019】
また、外被18の内層16は、フッ素樹脂から形成されている。この内層16のフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキル(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)あるいはフッ化エチレンプロピレン(FEP)などの融点が高く耐熱性を有するものが使用される。このような耐熱性を有するフッ素樹脂から内層16を形成すれば、細径ケーブル11の端部に半田付けを行う際に、熱による細径ケーブル11の損傷を防止することができる。
これに対して、外被が一層のTHVからなる細径ケーブルは外部導体や中心導体の半田付けのときに外被が熱で損傷してしまう。
【0020】
外被18の最外層17の樹脂をTHVとすることで、細径ケーブル11の配線時に他の部材に接着剤で接着することが可能である。また、最外層17の厚さT2を外被18の厚さT1の1/2以上2/3以下とすることで、接着強度を強くすることができ、内層16の厚さT3を外被18の厚さT1の1/3以上1/2以下とすることで、十分な耐熱性を確保することができる。そして、細径ケーブル11が上記のように同軸ケーブルの構造である場合には、外被18の厚さT1が細径ケーブル11の外径D1の5%以上20%以下であると、外被18の接着性と耐熱性を十分なものとすることができる。
外被18の内層16と最外層17とはいずれも樹脂を押出被覆して形成することができる。
【0021】
本発明に係る細径ケーブルの構造例を、表1に示す。
【表1】

【0022】
上記のAWG38,42,46の何れの例においても、ケーブル外径が0.4mm以下であり、最外層の厚さが外被(内層+最外層)の厚さの1/2以上2/3以下であり、なおかつ外被(内層+最外層)の厚さが細径ケーブルの外径(最外層の外径)の5%以上20%以下である。
【0023】
なお、細径ケーブル11を筐体の挿入口やシール部材に接着する接着剤としては、高い接着力を有するものが好ましいが、細径ケーブル11を配線する際に細径ケーブル11に引っ張り力や曲げ力が加わって変位しても、細径ケーブル11の変位に追従して伸び縮みする程度の柔軟性を有するのが好ましい。接着剤としては、硬化後における硬度がショアA34以上となるものを用いれば、柔軟性を十分に確保して細径ケーブル11の配線の容易化を図ることができ、しかも、柔らかすぎることによって細径ケーブル11の変位で接着剤が押されて隙間が形成されるような不具合もなくすことができる。
【0024】
接着剤としてアクリル変成シリコーン樹脂を用いれば、THVからなる最外層17との接着力も十分に得ることができ、しかも、適度な柔軟性も得ることができる。また、アクリル変成シリコーン樹脂は湿度硬化型の接着剤であるので、内部にわたって容易に硬化させることができる。
【0025】
接着剤が紫外線硬化型の接着剤である場合、接着剤を硬化するときに紫外線が当たらない部分ができると未硬化部となる。接着剤に紫外線硬化型接着剤を使用する場合は、紫外線硬化性に、湿気硬化、加熱硬化等の機能を付与したものを使用するとよい。
【符号の説明】
【0026】
11:細径ケーブル(同軸ケーブル)、12:中心導体、13:絶縁体、15:外部導体、16:内層、17:最外層、18:外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と外被を備えた外径0.4mm以下の細径ケーブルであって、
前記外被は、押し出し成型されたフッ素樹脂からなる内層と、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及びフッ化ビニリデンの三元重合体ポリマーからなる最外層とを有することを特徴とする細径ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の細径ケーブルであって、
前記最外層の厚さは、前記外被の厚さの1/2以上2/3以下であることを特徴とする細径ケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細径ケーブルであって、
前記中心導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の外周であって前記外被の内周に設けられた外部導体と、を備え、
前記絶縁体はフッ素樹脂であり、
前記外被の厚さは、当該細径ケーブルの外径の5%以上20%以下であることを特徴とする細径ケーブル。

【図1】
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