説明

細断野菜の殺菌処理装置

【課題】細断した野菜を必要以上に細かく破砕することなく、野菜全体を過不足なく均一に殺菌処理できる取扱い容易で安価な細断野菜の殺菌処理装置を提供する。
【解決手段】殺菌水5の循環を可能とした水槽2と、該水槽2の幅方向に軸架されると共にその軸胴部に沿って板材4,4を羽翼状に添設してある複数回転軸3,3・・・と、該回転軸3,3・・・の駆動手段9とを備え、前記回転軸3,3・・・を交互に回転させることにより、前記板材4,4を回転させて前記水槽2の一側に投入された細断野菜Aを殺菌水5中で順次反転させながら水槽2の他側へ押送可能としてあることを特徴とする細断野菜の殺菌処理装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細断野菜の殺菌処理装置に関し、詳しくは、葉菜や根菜等を刻んだ細断物を殺菌槽中でちぎれ等の損傷を無くして、均等に殺菌処理できる細断野菜の殺菌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の食生活の多様化とヘルシー志向を反映し、生野菜をそのまま野菜サラダとした加工品の需要が急増している。これに伴い野菜を繊切り状態に細断したものも市場へ大量に提供されるようになってきている。また、これらの細断野菜を洗浄し衛生的に処理するために種々の装置が提案されている。
【0003】
例えば、洗浄液を貯留した水槽の中に内部を空胴とした羽根付ドラムを配設し、水槽内で、野菜等の洗浄対象物から分離した浮遊異物を捕捉しながら野菜を洗浄する装置が特許文献1に記載されている。この装置は洗浄液を殺菌水に変更することで殺菌処理装置として転用して使用されている。
【0004】
また、他の洗浄装置として水を貯留した貯留槽に複数の透孔を底部と側壁に形成したバケットを反転可能にして複数個配列し、バケットを反転させることでバケット内に収納した被洗浄物(食材)を隣接するバケットへ順次受渡していくことにより被洗浄物を洗浄する装置が特許文献2に記載されている。この装置もまた、水を殺菌水に代えることにより、殺菌装置として使用され得るものである。それ故に加工場ではしばしば殺菌用として用いられている。
【特許文献1】特開2003−9833号公報
【特許文献2】特許2622094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の装置は、例えば細断(繊切り)野菜の殺菌装置として使用すると、回転する羽根付ドラム部や水槽内のいたる処にすり切れた野菜のコビリつきが発生し、そのものが殺菌不足や過剰殺菌物となって混入するため野菜全体を均等な殺菌品として得ることは困難であった。また、羽根の回転によって野菜に必要以上の物理的ダメージ(損傷)を与え製品価値を落とすものであった。
【0006】
また、特許文献2に記載されている装置は野菜の殺菌用として使用すると、殆んどの野菜は殺菌処理されるが、バケット内で殺菌水に浮かぶ野菜の表面が殺菌水から突出し、この部分が殺菌時間の不足品となるため、野菜全体としては殺菌不足品が混入したものとなる。これを避けるため殺菌時間を長くすると、野菜の一部に過剰な殺菌品が生じ、このことにより、保存期間中に変色等の傷みが生じ易くなるという別の問題が生ずることになる。
【0007】
また、上記文献1及び2記載の装置はいずれも大がかりであり、殺菌処理後の装置の洗浄作業等に人手がかかり煩わしいものであり、装置のコストも高価になるという欠点を有する。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、細断した野菜に必要以上のダメージを与えることなく、野菜全体を過不足なく均等に殺菌処理できる取り扱い容易で安価な細断野菜の殺菌処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の細断野菜の殺菌処理装置は、殺菌水の循環を可能とした水槽と、該水槽の幅方向に軸架してありその軸胴部に沿って板材を羽翼状に添設してある複数の回転軸と、該回転軸の駆動手段とを備え、前記回転軸を交互に回転させることにより前記板材を回転させて前記水槽の一側に投入された細断野菜を殺菌水中で順次反転させながら水槽の他側へ押送可能としてあることを特徴とする。
【0010】
このような構造の殺菌処理装置とすることで、水槽の一側に投入された細断野菜は上下を逆転されながら殺菌水に浸されて押送されるので、全体を万遍なく均等に殺菌できる。
【0011】
また、殺菌水中での押送であるので細断野菜に過度な摩擦や物理的衝撃力が加わることもないので、千切れて屑状の断片が発生することもなくなる。従って殺菌前と殆ど変らない状態の殺菌細断野菜として得ることができる。屑片の発生は殺菌過多となり易く、保管中の変色要因となるのでこの憂慮すべき点も解消できるのでよい。
【0012】
この際、本発明における前記水槽の内底面を前記回転軸の下方を前記板材の外縁回転軌道に整合する半円弧状の曲底面とすると共に、該曲底面の上縁で連結した連続起状の形状としてあることで水槽の一側に投入された細断野菜は前記板材の回転によって曲底面の内壁に沿って掻き取られながら押動され隣接する曲底面へ反転して送りこまれる。このことで水槽内で野菜の上下が繰り返し逆転されることになり、殺菌水の表面に浮かんで露出していた断面野菜も殺菌水中に取りこまれ殺菌作用を受けるので殺菌製品中に殺菌不足品として混入することを免がれる。
【0013】
また、本発明において、前記回転軸に添設してある板材の断面を波形の形状(図3参照)にしておくことで、薄い材質であっても押動に堪え得る強固なものとなるので耐久年数に優れた細断野菜の殺菌処理装置にできるのでよい。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明の細断野菜の殺菌処理装置は、殺菌水の循環を可能とした水槽内の細断野菜を回転羽翼板によって反転させながら押送できる構造としてあるので、水面に浮かんだ野菜も万遍なく殺菌水中に沈めて、野菜全体を過不足なく均等に殺菌することができる。また、野菜を水中で押送する構造としてあるので殺菌処理後の野菜はダメージのない見栄えのするものとして得ることができる。
【0015】
さらに、回転羽翼板の下方の水槽底面を曲底面としてあるので、野菜は全てカスリ取られて押送されることになり、水槽中に野菜断片が漂い殺菌過剰品として発生することも無くすことができる。
【0016】
従って、本発明によって、均等に殺菌され保管中の変色も少ない、見栄えのする商品価値の高い細断野菜の殺菌品を従来より一層底価格で提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明細断野菜の殺菌処理装置を図面に示す実施の形態を参照して説明する。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
図1は、本発明細断野菜の殺菌処理装置の一実施例の概要を示す斜視図である。図2は、本発明細断野菜の殺菌処理装置の構成の一実施例を示す正面説明図である。
また、図3は本発明に係る羽翼状板材の形状の一実施例を示す斜視説明図である。
【0019】
図1において、細断野菜の殺菌処理装置1は殺菌水5の循環を可能とした水槽2と、該水槽2の幅方向に軸架してあり、その軸胴部に沿って板材4,4を羽翼状に添設してある複数の回転軸3,3・・・と、該回転軸3,3・・・の駆動手段9とを備え、前記回転軸3,3・・・を交互に回転させることにより前記板材4,4を回転させて前記水槽2の一側に投入された細断野菜A(以下、単に「野菜」ともいう)を殺菌水5中で順次反転させながら水槽2の他側へ押送可能とした構造にしてある。
【0020】
前記水槽2の内底面は図2に示すように前期回転軸3,3・・・の下方を前記板材4,4・・・の外縁の回転軌道に整合する半円形状の曲底面6,6・・・とすると共に該曲底面6,6・・・の上縁で連結した連続起伏形状にしてある。また、前記板材4,4・・・は単なる平板ではなく図3に示すようにいわゆるトタン板状の波形板とされ野菜Aを押送する際の負荷圧に十分耐え得る屈曲し難い構造としてある。
【0021】
なお、本実施例においては殺菌水5として次亜塩素酸の濃度を70〜200ppmのものを使用するが、その際の殺菌水の循環は配管途中にポンプPと濃度調整手段Tを備えた公知の技法を採用する(図1参照)。
【0022】
次に本発明の作用を実施例1に基づき説明する。
【0023】
本実施例の細断野菜の殺菌装置1は上記の構造としてあるので、野菜Aを水槽2の殺菌水5に投入する際には、まず技材4を垂直姿勢として水槽5の投入側の最初の曲底面6を2分割し、その片半部に投入し浸漬する。殺菌水5中に野菜Aを浸漬後板材4を矢印方向へ半回転させることで、野菜Aは殺菌水5中を残りの片半部側へ上下を逆にされながら、押送される。これにより最初に野菜Aを投入された片半部は空になり、その空の片半部へ新たに野菜Aが投入される。
【0024】
所定時間浸漬後最初の回転軸3を回転させることで板材4,4によって始めに投入された片半部の野菜Aは曲底面の上縁連結部を超えて隣接する曲底面6へ反転移送されると共に後から投入された野菜Aは、始めに投入された野菜Aが浸されていた(空になった)曲底面へ反転押送される。
【0025】
なお、このように最初の野菜Aを隣接する曲底面6へ移送する際には隣接する曲底面6側の板材4,4を垂直姿勢とし野菜Aを曲底面6の片半部へ受容できるようにあらかじめ空のスペースとしておくことは云うまでもない。本実施例においては野菜Aを曲底面6から隣接する曲底面6へ移送乃至押送する際は、板材4の外縁の回転軌道が曲底面6と整合するようにしてあるため、野菜Aは刮げ落とされるようにして残すところなく確実に押送される。
【0026】
また、このように水槽2に投入された野菜Aは最初に殺菌水5中に沈まずに表面に浮かぶ部分が発生しても、板材4の回転によって野菜Aの表面から殺菌水5中に押し沈められ順次押送されるので、所定の時間(本実施例では10分間)浸漬後の野菜Aは全体に万遍なく均等に殺菌されたものとして得ることができる。以下同様の作用を繰り返す。
【0027】
なお、本実施例においては、回転軸3,3・・・を水槽2に4本軸架し曲底面6,6を4ヵ所配設した構造の殺菌処理装置を使用し、70ppm次亜塩素酸水に10分間野菜を浸漬するように調整しているが、これらは、野菜の殺菌処理後の状態を見定めて適宜設定すればよく、本実施例に制限されるものではない。
【0028】
また、本実施例では殺菌終了後の野菜Aは水槽2から野菜取出コンベア8等の
取得手段により取り出すようにしているが、これに限らず適宜手段を使用することができることも云うまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明細断野菜の殺菌処理装置の一実施例の概要を示す斜視図。
【図2】本発明細断野菜の殺菌処理装置の構成の一実施例を示す正面説明図。
【図3】本発明に係る羽翼状板材の一実施例を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 細断野菜の殺菌処理装置
2 水槽
3 回転軸
4 板材
5 殺菌水
6 曲底面
7 野菜の投入部
8 野菜取出コンベア
9 駆動手段(モーター)
10 循環用配管
A 野菜
P ポンプ
T 濃度調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌水の循環を可能とした水槽と、該水槽の幅方向に軸架されると共にその軸胴部に沿って板材を羽翼状に添設してある複数の回転軸と、該回転軸の駆動手段とを備え、前記回転軸を交互に回転させることにより前記板材を回転させて前記水槽の一側に投入された細断野菜を殺菌水中で順次反転させながら水槽の他側へ押送可能としてあることを特徴とする細断野菜の殺菌処理装置。
【請求項2】
前記水槽の内底面は前記回転軸の下方を前記板材の外縁の回転軌道に整合する半円形状の曲底面とすると共に該曲底面の上縁を連結した連続起伏形状にしてある請求項1記載の細断野菜の殺菌処理装置。
【請求項3】
前記板材はその断面を波形の形状としてある請求項1及び2記載の細断野菜の殺菌処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−131874(P2008−131874A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319433(P2006−319433)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】