説明

細胞、核酸構築物、前記構築物を含む細胞、及び疾患の治療において前記細胞を利用する方法

本発明は、IDOを発現することができる細胞、IDOの発現のための核酸構築物、前記構築物を含む細胞、及び疾患の治療において前記細胞を利用する方法に関する。特に、本発明は、IFN-γに対する曝露の非存在下でIDOを発現する細胞に、及び抗原に特異的な免疫調節性細胞の製造及び/又は産生におけるこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDOを発現することができる細胞、IDOの発現のための核酸構築物、前記構築物を含む細胞、及び疾患の治療において前記細胞を利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
高等な脊椎動物における免疫系は、多様な疾患の原因因子である細菌、真菌、及びウイルスなどの微生物を含む脊椎動物の体に入ることができる種々の抗原に対する防御の最初のラインである。その上、免疫系は、また、自己免疫、又は免疫病理疾患、免疫不全症候群、アテローム硬化症、及び種々の新生物疾患を含むその他の多様な疾患、又は障害にも関与している。これらの疾患を治療するための方法が利用できるが、多くの現在の療法は、十分な結果を提供するものではなく、また有意な副作用のリスクを有する。新たに現れる治療的ストラテジーの中で、細胞療法に基づいたものは、多数の疾患を治療するための潜在的に有用なツールとなると思われる。従って、前記目的を達成するために、研究者により、多大な努力が現在なされている。
【0003】
自己免疫疾患
自己免疫疾患は、体を細菌、ウイルス、及び任意のその他の外来産物から守ることを意味する体の免疫系が、機能不全を起こして、健康な組織、細胞、及び器官に対して病理学的反応を生じるときに、生じる。
【0004】
T細胞、及びマクロファージは、有益な保護を提供するが、また、有害、又は致命的な免疫学的応答も生じ得る。自己免疫疾患は、器官特異的、又は全身性であり得るし、異なる病原性機構によって引き起こされる。全身性自己免疫疾患は、ポリクローナルB細胞活性化、並びに免疫調節性T細胞、T細胞受容体、及びMHC遺伝子の異常を含む。器官特異的な自己免疫疾患の例は、糖尿病、甲状腺機能亢進症、自己免疫副腎機能不全、真正赤血球性貧血、多発性硬化症、及びリウマチ性心臓炎である。代表的な全身性自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、慢性炎、シェーグレン症候群、多発筋炎、皮膚筋炎、及び強皮症を含む。
【0005】
自己免疫疾患の現在の治療は、コルチゾン、アスピリン誘導体、ヒドロキシクロロキン、メトトレキセート、アザチオプリン、及びシクロホスファミド、又はこれらの組み合わせなどの免疫抑制剤を投与することを含む。しかし、免疫抑制剤を投与するときに直面するジレンマは、より効率的に自己免疫疾患が治療されるほど、患者は、感染による攻撃により無防備のままになり、更には発達中の腫瘍に対してより感受性になる。従って、自己免疫疾患の治療のための新たな療法に対して多大な需要がある。
【0006】
炎症性障害
炎症は、体の白血球、及び分泌された因子が細菌、及びウイルスなどの外来物質による感染から我々の体を保護するプロセスであり、自己免疫疾患においても共通のプロセスである。サイトカイン、及びプロスタグランジンとして知られている分泌因子は、このプロセスを制御し、血液、又は患部組織への規律正しく、かつ自己制御式のカスケードで放出される。一般に、慢性炎症性障害のための現在の治療は、非常に限られた効率を有し、これらの多くは、副作用が高発病率であるか、又は疾患進行を完全に予防することができない。今まで、治療は、理想的ではなく、これらのタイプの病状について治癒されていない。従って、炎症性障害の治療のための新たな療法に対する多大な需要がある。
【0007】
T細胞応答の阻害
全ての免疫応答は、T細胞によって制御される。自己免疫応答を誘発する可能性のある自己反応性細胞は、正常なT細胞レパートリーの一部からなるが、健康な状態において、これらの活性化は、サプレッサー細胞によって防止される。サプレッサーT細胞は、元来は1970年代において記述されたが、T細胞サブセットの特徴づけの有意な進歩がごく最近になされ、そのとき、これらは調節性T細胞として名前を変えられた。
【0008】
異なるCD4+、CD8+、ナチュラルキラー細胞、並びに調節(抑制)活性を有するγ、及びδT細胞のサブセットがある。調節性T細胞の2つの主要なタイプは、CD4+集団、すなわち天然に存在する、胸腺で発生した調節性T細胞、及び末梢で誘導された、IL-1O、又はTGF-βを分泌する調節性T細胞(TrI細胞)に特徴づけられた。胸腺において発生したCD4+CD25+、Foxp3を発現し、天然に存在する調節性T細胞は、移動し、末梢において維持される。
【0009】
細胞療法
間葉系幹細胞(MSC)は、多能性成人幹細胞であり、間葉系タイプの細胞(脂肪細胞、骨芽細胞、及び軟骨細胞)だけでなく、筋細胞、神経細胞、内皮細胞、アストロサイト、及び上皮細胞へも分化できる。正常な成人骨髄(BM-MSC)において最初に報告されたが、MSCは、また、臍帯血、末梢血、及び脂肪組織などのその他の供与源から得ることができる。分化の潜在性の他に、BM-MSCは、十分に免疫原性でなく、免疫応答を調節するというユニークな特色を有する。従って、BM-MSCは、低レベルのHLA-Iを発現するが、HLA-II、CD40、CD80、又はCD86を発現せず、BM-MSCが免疫監視機構を逃れることを可能とする。更にまた、エキソビボで増殖したBM-MSCは、T細胞、B細胞、NK細胞、及び抗原提示細胞を含む免疫細胞の活性化、増殖、並びに機能を阻害すると報告されていた。近年の十分な研究にもかかわらず、BM-MSCの免疫調節活性に関与する具体的な分子、及び細胞の機構には、議論の余地が残されている。BM-MSCは、T細胞の表現型を調節し、調節活性を有する細胞の産生を生じ得ることが示された。対照的に、肝細胞増殖因子(HGF)、プロスタグランジンE2(PGE2)、トランスフォーミング成長因子(TGF)-1、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、一酸化窒素、及びIL-1Oなどの可溶性因子が関係した。更にまた、いくつかの報告は、また、TNFα、及びIFNγなどの炎症性のサイトカインがMSCによって媒介される免疫抑制を調節し得ることを示した。
【0010】
脂肪組織は、ヒト脂肪由来の間葉系幹細胞(hASC)と称されるMSCの供与源であり、それは、脂肪吸引した脂肪組織から単離することができ、培養において長時間増殖することができる。hASCは、髄におけるそれらのカウンターパートと、これらの分化潜在性、低免疫原性、及び免疫応答を抑制する能力などの、いくつかの特色を共有する。両方の細胞タイプを比較する最近の研究は、転写、及びタンパク質のレベルでの相違を報告し、hASC、及びBM-MSCは、類似性を共有する一方で、実際は全く異なることを示唆している。hASCが媒介する免疫抑制の基礎をなす特異的な機構は、今までに十分に研究されなかった。最近では、hASCが、少なくとも部分的にはPGE2の放出を必要とする機構によってリンパ球の増殖を阻害し得ることが報告された。しかし、これらの研究は、(i)免疫抑制機構に関与するその他の細胞、若しくは可溶性因子、(ii)単離されたT細胞サブセットに対する免疫抑制効果、又は(iii)共培養における、hASC、及びPBMCの両方の表現型変化に関する情報を提供しなかった。
【0011】
これらの生物学的能力は、hASCを含むMSC、すなわち細胞の療法、及び再生のための興味深いツールとなる。これは、BM-MSCが同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主病、実験的な自己免疫脳脊髄炎、コラーゲンが誘導する関節炎、及び自己免疫心筋炎を軽減することを示した研究によって更に支持される。その上、マウスASC(mASC)が、インビボのマウスモデルにおいて、同種異系移植後の移植片対宿主病から保護することにおいて非常に効率的だったことが、最近報告された。更に、MSCは、これらの免疫調節性の能力に焦点を合わせたいくつかの臨床試験において使用されている。
【0012】
トリプトファンを分解する酵素であるIDOの発現は、T細胞増殖の抑制に関与することが知られている。その上、IDO発現は、炎症性メディエーターによって調節されるようである。専門の抗原提示細胞、及びBM-MSCによる免疫抑制機構におけるIDOの関与が、最近証明された。
【発明の概要】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、IFN-γの非存在下でIDOを発現することができる細胞、及び/又は、構成的にIDOを発現し得る細胞に関する。本発明は、更に、酵素インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸構築物、及び前記構築物を含み、それにより前記酵素の構成的発現を生じる細胞に関する。本発明は、更に、免疫調節特性を有する細胞の調製、及び/又は産生において、前記細胞を利用する方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、本発明の細胞で構成される医薬、及びキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】X軸上の時間での時間におけるY軸上のmMで測定した、ASCにおけるキヌレニン産生のレベル(Y軸)を示す。白三角形は、hASC-空、黒三角形は、IFN-γで刺激したhASC-空を指す。白正方形はhASC-IDO+、黒正方形は、IFN-γで刺激したhASC-IDO+を指す。白丸は、hASC-IDOsi、黒四角は、IFN-γで刺激したhASC-IDOsiを指す。
【図2】2つのバーチャートを提供する。左手のバー上にhASC-空、及び右手のバー上にhASC-IDO+により、Y軸上にPBMC阻害の%をそれぞれ示している。左のバーチャートは、1:50のhASC:PBMCの比でのPBMC増殖の量を示し、右のバーチャートは、1:25のhASC:PBMCの比での増殖を示す。
【図3】hASC-空(白、及び黒の左手のバー)、及びhASC-IDO+(白、及び黒の右手のバー)によるY軸上のPBMC阻害の%を示す。黒いバーは無刺激の細胞を示し、白いバーは、IFN-γで前刺激したASCを示す。
【図4】種々の脂肪由来の幹細胞タイプを使用して産生されるCD4細胞の集団におけるCD25ポジティブ細胞の%を示すバーチャートを提供する。左の第1の細胞集団は、ASC無しで産生され、左から2番目は、hASC-空によって産生され、中間の集団は、hASC-IDOsiを使用して産生され、左からの4番目は、hASC-IDO+により、最も右の集団は、正常なASCによる。
【図5】実験2の第2パートにおいて解析した条件のうちの3つの代表的なドットプロットを提供する。左のプロットは、構成的遺伝子をもつASCとのPBMCの共培養のFACS解析(CD4/CD25/FOXP3)を提供し、中央のプロットは、サイレンス遺伝子が存在するASCのウェルのFACS結果を提供し、右のプロットは、空のベクターを有する対照を提供する。
【図6】それぞれの共培養における調節性T細胞の平均パーセンテージを示す。
【0015】
定義
本記述の理解を容易にするために、本発明の状況におけるいくつかの用語、及び表現の意味が以下で説明されるだろう。さらなる定義が、必要に応じて記述に沿って含まれるだろう。
【0016】
「IDO」という用語は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(INDO;EC 1.13.11.42)であるポリペプチドを、又は実質的に同様の活性を有するポリペプチド、すなわち、必須アミノ酸L-トリプトファンのN-ホルミルキヌレニンへの分解を触媒することができるポリペプチドを指す。
【0017】
本明細書に使用される「同種異系である」という用語は、同じ種の異なる個体からのものを意味するように採用されるものとする。2つ以上の個体は、1つ以上の座位での遺伝子が同一でないときに、互いに同種異系であると言われる。
【0018】
本明細書に使用される「自己由来である」という用語は、同じ個体からのものを意味するために採用されるものとする。
【0019】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)と複合体形成した表面外来抗原を提示する細胞集団をいう。体のほぼ全ての細胞は、T細胞に抗原を提示することができるが、「抗原提示細胞」(APC)という用語は、表面MHC II(HLA DP、DQ、DR)、及び/又はMHC Iを発現する分化した細胞に、本明細書では限定され、この発現が誘導されるもの(例えば、限定されないが、骨髄性リンパ細胞、及びCD4 PHA芽球)、及び単球-マクロファージ系統に由来するもの(例えば、限定されないが、樹状細胞)の両方を含む。
【0020】
「自己免疫疾患」という用語は、それ自体の細胞、組織、及び/又は器官への対象の免疫反応によって生じる細胞、組織、及び/又は器官の傷害によって特徴づけられる対象の状態をいう。本発明の免疫調節性細胞で治療することができる、例示的な自己免疫疾患の非限定的な例は、円形脱毛、脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎、及び精巣炎、自己免疫血小板減少、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー-皮膚炎、慢性疲労免疫性機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素疾患、円板状狼蒼、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-繊維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少紫斑(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、メニエール病、混合型結合組織病、多発性硬化症、1型又は免疫介在性真性糖尿病、重症筋無力症、尋常天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多筋痛、多発筋炎、及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイナルド現象、ライター症候群、サルコイドーシス、強皮症、進行性全身性硬化、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、全身強直性症候群、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼蒼、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎血管炎などの脈管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質症候群、神経系の自己免疫疾患、家族性地中海熱、ランバート-イートン筋無力症症候群、交感神経性眼炎、多腺性内分泌障害、乾癬、その他を含む。
【0021】
「炎症性疾患」という用語は、炎症、例えば、例示的な慢性炎によって特徴づけられる対象における状態をいい、炎症性障害の非限定的な例は、セリアック病、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、脳炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性骨溶解、アレルギー障害、敗血症性ショック、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、炎症性バキュルチディス(vacultides)(例えば、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎、及びリンパ腫性肉芽腫)、外傷後の血管形成術(例えば、血管形成術後の再狭窄)、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、慢性肝炎、及び慢性ウイルス、又は細菌感染により生じる慢性炎を含むが、限定されない。
【0022】
細胞集団に適用される「単離された」という用語は、インビボ、又はインビトロで前記細胞集団と関連する1つ以上の細胞集団が実質的にない、ヒト、又は動物体から単離された細胞集団をいう。
【0023】
「MHC」(主要組織適合遺伝子複合体)という用語は、細胞表面抗原提示タンパク質をコードする遺伝子のサブセットをいう。ヒトにおいて、これらの遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子といわれる。本明細書では、略語MHC、又はHLAは、同義的に使用される。
【0024】
「対象」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ネズミ、又はマウス)、及び霊長類(例えば、サル、又はヒト)を含む哺乳類をいう。好ましい実施態様において、対象は、ヒトである。
【0025】
「免疫調節性」という用語は、免疫系の1つ以上の生物学的活性の阻害、又は減少をいう。「抗原特異的な免疫調節性」という用語は、アロ抗原、及び自己抗原を含む特異的抗原、又は抗原群と関連する免疫系の1つ以上の生物学的活性の阻害、又は減少をいう。「免疫調節性」という用語は、「抗原特異的な免疫調節性」を含むように採用されるものとする。
【0026】
本明細書に使用される「免疫調節性薬剤」、「免疫調節性細胞集団」、「免疫調節性細胞」、又は「免疫調節性細胞群」という用語は、1つ以上の免疫細胞(例えば、限定されないが、T細胞)の1つ以上の生物学的活性(例えば、限定されないが、増殖、分化、プライミング、エフェクター機能、サイトカインの産生、又は抗原の発現)を阻害する、若しくは減少させる薬剤、細胞、又はその集団を意味するために採用されるものとする。
【0027】
「T細胞」という用語は、T細胞受容体(TCR)を発現するリンパ球のサブセットである免疫系の細胞をいう。「調節性T細胞」(本明細書において、T-調節細胞とも称される)という用語は、活発に免疫系の活性化を抑制し、病理学的な自己反応性、すなわち自己免疫疾患を予防するT細胞サブセットをいう。「調節性T細胞」、又は「T-調節細胞」という用語は、FoxP3分子を発現しない天然に存在するT細胞(CD4+CD25+FoxP3+ T-調節細胞としても知られる)、及び適応T細胞(Tr1細胞、又はTh3細胞としても知られる)を含むために採用されるものとする。
【0028】
本方法の特に好ましい実施態様において、前記免疫調節性薬剤、細胞、又はその集団は、調節性T細胞であるが、本方法の代わりの実施態様において、これらは、これらが調節性T細胞の免疫抑制機能を行うことができるように修飾されたその他の表現型の細胞でもよい。例えば、その他の表現型の細胞は、前記修飾より前に次の能力の1つ以上を欠いていてもよい:混合リンパ球反応の抑制;細胞障害性T細胞反応の抑制;DC成熟の阻害;炎症性サイトカインのT細胞産生の阻害。
【0029】
本明細書に使用されるように、細胞表面マーカーに関して使用される「ネガティブ」、又は「-」は、細胞集団において、前記マーカーを発現する細胞が20%未満、10%以下、好ましくは9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、又は存在しないことを意味するために採用されるものとする。細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来法、及び装置(例えば、市販の抗体、及び当該技術分野において公知の標準的なプロトコルで使用されるBecton Dickinson FACS Caliburシステム)を使用して、特異的な細胞表面マーカーについて、フローサイトメトリーの手段によって決定してもよい。
【0030】
本明細書に使用される、間葉系幹細胞(本明細書において、また「MSC」とも称される)という用語は、元来は間葉織に由来する多分化能細胞型を意味するために採用されるものとする。「幹細胞」という用語は、連続分裂によって、専門細胞(specialized cell)を生じさせることができる細胞を意味するために採用されるものとする。多分化能幹細胞は、専門細胞の複数のタイプを生じさせることができる。
【0031】
本明細書に使用される、細胞表面マーカーに関して使用される「有意な発現」、又はその同等用語である「ポジティブ」、及び「+」は、細胞集団において、細胞の20%超、好ましくは、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は全てが、前記マーカーを発現することを意味するために採用されるものとする。
【0032】
細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来法、及び装置(例えば、市販の抗体、及び当該技術分野において公知の標準的なプロトコルで使用されるBecton Dickinson FACS Caliburシステム)を使用して特異的な細胞表面マーカーについてフローサイトメトリーの手段で決定してもよく、それは、従来法、及び装置(例えば、市販の抗体、及び当該技術分野において公知の標準的なプロトコルで使用されるBecton Dickinson FACS Caliburシステム)を使用して、バックグラウンドシグナル以上の、フローサイトメトリーにおける特異的な細胞表面マーカーのシグナルを示す。バックグラウンドシグナルは、従来のFACS解析において、それぞれの表面マーカーを検出するために使用される特異的抗体と同じアイソタイプの非特異的抗体によってもたらされるシグナル強度として定義される。ポジティブとみなされるマーカーについては、観察される特異的なシグナルは、従来法、及び装置(例えば、市販の抗体、及び当該技術分野において公知の標準的なプロトコルで使用されるBecton Dickinson FACS Caliburシステム)を使用するバックグラウンドシグナル強度より、20%より強力で、好ましくは30%より強力であり、40%より強力であり、50%より強力であり、60%より強力であり、70%より強力であり、80%より強力であり、90%より強力であり、500%より強力であり、1000%より強力であり、5000%より強力であり、10000%より強力であり、又はそれ以上である。
【0033】
更にまた、細胞表面、及び/又は細胞内マーカー(例えば、細胞受容体、及び膜貫通タンパク質)に対する市販の、及び公知のモノクローナル抗体を、関連した細胞を同定するために使用することができる。
【0034】
「結合組織」という用語は、間葉織から由来する組織をいい、これらの細胞が細胞外マトリックスの中に含まれるという点で特徴づけられるいくつかの組織を含む。結合組織の例は脂肪、及び軟骨組織を含むが、限定されない。
【0035】
本明細書に使用される「線維芽細胞」という用語は、滑膜細胞のような線維芽細胞を含むように採用されるものとする。
【0036】
「グルテン」という用語は、グリアジン、及びグルテニン成分を含むタンパク質を意味するために採用されるものとする。
【0037】
「ベクター」、又は「核酸ベクター」という用語は、宿主、又はレシピエント細胞に外来DNA断片を運ぶことができる薬剤(主にDNA分子)を意味するために採用されるものとする。
【0038】
「クローニングベクター」という用語は、外来DNAを宿主細胞に運び、前記細胞を複製し、それ自体の多くのコピー、及び外来DNAを産生するベクターを意味するために採用されるものとする。
【0039】
「発現ベクター」という用語は、宿主、又はレシピエント細胞に外来DNA断片の発現を可能にするベクターを意味するために採用されるものとする。
【0040】
本明細書に使用される、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、患者、又は対象に関して直接使用される場合に、炎症性障害、自己免疫疾患、又は移植臓器、及び組織の拒絶を含む免疫学的に媒介される疾患を含むが、限定されない障害と関連する1つ以上の症候の寛解であって、前記寛解は、本発明の免疫調節性細胞、又はこれを含む医薬組成物を、前記治療を必要とする対象に対して投与することにより生じる、前記寛解を意味するために採用されたものとする。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
本発明は、IFN-γの非存在下でIDOを発現することができる細胞、及びIDOを構成的に発現し得る細胞に関する。これらの細胞は、IFN-γなどの誘導因子の非存在下で初めてIDOの発現を可能にする。理論によって拘束されないが、本発明は、従って、炎症性メディエーターが最初に関与することなく、細胞療法の免疫抑制におけるIDOの使用を可能にする。
【0042】
本発明は、更に、酵素インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸構築物、及び前記構築物を含みこれにより前記酵素の構成的発現を生じる細胞に関する。本発明は、更に、免疫調節性特性を有する細胞の調製、及び/又は産生において、前記細胞を利用する方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、本発明の細胞で構成される医薬、及びキットを提供する。
【0043】
本発明の核酸構築物
第1の態様において、本発明は、i)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその機能性を保持するタンパク質断片をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む核酸発現構築物を提供する。さらなる実施態様において、前記ポリヌクレオチドは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその機能性を保持するタンパク質断片をコードする多数のセグメントであって、前記セグメントは、連続的に配置されるが、前記セグメントのそれぞれは、1つ、又は複数のヌクレオチドによって次から分離されてもよいセグメントで構成されてもよい。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、長さが少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1100、又は少なくとも1200ヌクレオチドの長さである。
【0044】
一つの実施態様において、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその断片をコードする前記核ポリヌクレオチドは、配列番号:5にて開示したとおりのIDOタンパク質配列をコードするポリヌクレオチド、又はそれに対して少なくとも、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の相同性を有するタンパク質で構成される。配列番号:5は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼアミノ酸配列を開示する。
【0045】
一つの実施態様において、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその断片をコードする前記核ポリヌクレオチドは、配列番号:1、又は配列番号:6の少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1100、又は少なくとも1200ヌクレオチドからなる。遺伝子暗号の重複性を考慮するために、これは、前記核酸の機能的に等価な断片、変異体、及び類似体を含むために採用されるものとする。従って、これは、配列番号:1、又は配列番号:6と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の相同性を有する配列を含むために採用されるものとする。配列番号:1、及び配列番号:6は、それぞれ、機能的なインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのアミノ酸配列をコードするcDNA配列を開示する。
【0046】
さらなる態様において、前記核酸発現構築物は、更に、前記第1のポリヌクレオチドの発現を指揮するためのプロモーターをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドを含む。前記プロモーターが構成的プロモーターであることは、特に好ましい。前記プロモーターがウイルス、又は真核生物のプロモーターであることが好ましい。特に好ましくは、真核生物プロモーターである。さらなる実施態様において、前記プロモーターは、CMVプロモーター、HSVプロモーター、ウイルスのLTR、HIVプロモーター、ニワトリアクチンプロモーターからなる群から選択されてもよい。
【0047】
前記核酸発現構築物は、以下に、本発明の核酸構築物といわれるだろう。本発明の核酸構築物の製造のための方法は、当該技術分野において公知である。
【0048】
本発明の核酸構築物は、レシピエント細胞への挿入によって酵素インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの産生に使用するために適切であり、これにより、前記レシピエント細胞が前記酵素、又はその機能的に等価な断片、変異体、若しくは類似体を構成的に産生することが可能になる。従って、一つの実施態様において、本発明は、本発明の外来性核酸構築物を含む細胞を提供する。本発明の核酸構築物は、本発明のさらなる態様において、適切な核酸ベクター(以下「ベクター」という)に挿入され、単離、増幅、及び/又は宿主若しくはレシピエント細胞、若しくはそのゲノムへの挿入を可能にする。このようなベクターは、限定されないがプラスミド、ハイブリッドプラスミド、コスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、細菌人工染色体、及び酵母人工染色体などの、発現ベクター、及びクローニングベクターを含むが、限定されない。その技術における当業者は、核酸構築物のサイズ、及びレシピエント細胞のタイプを含む因子を考慮して、適切なベクターを選択することができる。
【0049】
さらなる態様に従って、本発明は、本発明の核酸構築物を含むベクターを提供する。前記ベクターは、プラスミド、ハイブリッドプラスミド、コスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、細菌人工染色体、及び酵母人工染色体からなる群から選択されることが好ましい。最も好ましくは、前記ベクターは、プラスミド、コスミド、又はウイルスベクターである。
【0050】
一つの実施態様において、ベクターに挿入される本発明の前記組換え核酸発現構築物は、配列番号:2で構成され、又は本質的に構成される。
【0051】
核酸を含むベクターは、宿主、又はレシピエント細胞への本発明の核酸構築物の挿入のために使用してもよい。ベクターがクローニングベクターである場合、前記宿主、又はレシピエント細胞は、単細胞生物(例えば、限定されないが細菌、又は酵母細胞)、又は外来DNAをクローン化するのに使用するための適切なその他の微生物であることが特に好ましい。
【0052】
ベクターが発現ベクターである場合、前記宿主、又はレシピエント細胞は、動物細胞であり、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはヒト細胞であることが特に好ましい。前記レシピエント細胞は、間葉系幹細胞、線維芽細胞、又は線維芽細胞様の滑液細胞であることが特に好ましい。前記レシピエント細胞は、出産後起源であり、従って、任意の適切な組織、例えば、限定されないが骨髄、結合組織、脂肪、臍帯、臍帯血、及び胎盤から単離し得ることが、更に好ましい。特に好ましい実施態様において、前記レシピエント細胞は、脂肪組織由来の幹細胞である。前記脂肪は、任意の適切な起源のものでもよいが、特に好ましくは、皮下脂肪組織、又は器官に関連する脂肪組織(例えば、限定されないが心臓、肝臓、腎臓、又は膵臓と関連する脂肪)である。
【0053】
本発明の核酸構築物を含み、かつインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを構成的に発現する細胞は、その必要のある患者の療法のために適したインビボ免疫調節能力を有する。従って、本発明は、本発明の核酸構築物でトランスフェクトされ、又は形質転換された細胞を提供する。本発明は、また、本発明の核酸構築物を含み、かつIDO、又はその機能的に等価な断片、変異体、及び類似体を構成的に発現する細胞を提供する。
【0054】
外来性核酸構築物は、安定して、若しくは安定せずに、いずれかでレシピエント細胞のゲノム、若しくはその他の内因性の遺伝物質に組み込まれてもよく、又は細胞内に含まれてもよいが、その内因性遺伝物質とは別々であってもよい。
【0055】
本発明の核酸構築物を含む細胞は、以下「本発明のIDO細胞」という。本発明のIDO細胞は、IFN-γに対する曝露の非存在下でIDOを発現することができ、及び/又はIDOを構成的に発現する。特に好ましくは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを発現する本発明のIDO細胞である。前記細胞は、キヌレニンを分泌することが特に好ましい。更に好ましくは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを発現、及び分泌する本発明のIDO細胞であって、前記細胞が未分化、及び/又は多分化能幹細胞であるIDO細胞である。
【0056】
本発明のIDO 細胞を調製するための方法
一つの態様において、本発明は、本発明のIDO細胞を調製するための方法を提供する。前記方法は、本発明の核酸構築物を単離された生存可能なレシピエント細胞、又は細胞群に導入することを含む。
【0057】
前記レシピエント細胞は、動物、又はヒト細胞でもよいが、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはヒト細胞である。前記レシピエント細胞は、間葉系幹細胞(以下、MSCともいう)、線維芽細胞、又は線維芽細胞様の滑膜細胞であることが、特に好ましい。前記レシピエント細胞は、出産後起源であり、従って、適切な任意の組織、例えば、限定されないが骨髄、脂肪、臍帯、臍帯血、及び胎盤から単離し得ることが、更に好ましい。本発明の方法において使用されるレシピエントMSCは、好ましくは結合組織に由来する。代わりの実施態様において、前記レシピエントMSCは、ガラス軟骨の軟骨細胞から得られる。さらなる実施態様において、前記レシピエントMSCは、皮膚から得られる。別の実施態様において、前記レシピエントMSCは、骨髄から得られる。
【0058】
最も好ましい実施態様において、前記レシピエントMSCは、脂肪組織に由来し、更に好ましい実施態様において、脂肪組織の間質画分由来である。特に好ましい実施態様において、前記レシピエント細胞は、脂肪組織に由来する幹細胞である。前記脂肪は、任意の適切な起源でもよいが、特に好ましくは、皮下起源、又は脂肪組織に関連する器官(例えば心臓、肝臓、腎臓、又は膵臓と関連する脂肪であるが限定されない)である。
【0059】
対象から脂肪組織を収集するための任意の適切な方法を使用してもよく、リポ吸引、脂肪吸引、及び生検を含むが、限定されない。当業者であれば、脂肪供与源から間葉系幹細胞の単離のための方法に精通しているだろう。このような方法は、当該技術分野において公知であり、このような単離のためのプロトコルは、容易に入手できる。簡潔には、脂肪物質を最初に洗浄し(例えば、限定されないがリン酸緩衝食塩水を使用)、次いで、例えばコラゲナーゼを使用して酵素的に消化して細胞懸濁液を得る。次いで、細胞を懸濁液から、例えば遠心によって単離して、適切な緩衝液、又は増殖培地に再懸濁する。単離された細胞集団は、間質血管画分と称され、間葉系幹細胞はこれらの粘着性の特徴を基礎としてそこから単離してもよい。
【0060】
レシピエント細胞が間葉系幹細胞(以下MSCと記載する)である場合、これらがAPC表現型と関連するマーカーについてネガティブであることが好ましい。従って、前記レシピエントMSCが、次のマーカーCD11b;CD11c;CD14;CD45;HLAIIの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は好ましくは全てにネガティブであることが好ましい。更に、レシピエントMSCは、好ましくは次の細胞表面マーカーCD31;CD34;CD133の少なくとも1つ、2つ、又は好ましくは全てについてネガティブである。
【0061】
特定の実施態様において、本方法に使用されるレシピエントMSCは、これらが次の細胞表面マーカーCD9、CD44、CD54、CD90、及びCD105の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は好ましくは全てを発現する(すなわち、ポジティブである)ということを好ましくは特徴とする。好ましくは、レシピエントMSCは、好ましくはこれらが前記細胞表面マーカー(CD9、CD44、CD54、CD90、及びCD105)の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、及び好ましくは全ての有意な発現レベルを有することを特徴とする。
【0062】
任意に、レシピエントMSCは、また、細胞表面マーカーCD106(VCAM-I)についてネガティブでもよい。本発明の方法における使用のための適切なレシピエントMSCの例は、当該技術分野において、例えばその全体が参照として本明細書に組み込まれるWO2007039150に記述されている。
【0063】
レシピエントMSC
本発明の方法における使用のための適切なレシピエントMSCは、増殖する能力を示してもよく、少なくとも2、より好ましくは、3、4、5、6、7、又はそれ以上の細胞系統に分化してもよい。前記レシピエントMSCが分化することができる細胞系統の、例示的な非限定の例は、骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋細胞、心筋細胞、造血補助間質細胞、内皮細胞、神経単位、神経膠星状細胞、及び肝細胞を含む。レシピエントMSCは、従来法によって増殖、及びその他の系統の細胞に分化することができる。これらの未分化対応物から分化した細胞を同定し、その後単離する方法は、また、当該技術分野において周知の方法によって実施することができる。
【0064】
レシピエントMSCは、また、エキソビボで増殖することができる。すなわち、単離の後、前記MSCを維持することができ、かつ培養液においてエキソビボで増殖することができる。このような培地は、例えば、抗生物質(例えば、100units/mlペニシリン、及び100[mu]g/mlストレプトマイシン)有り、又は抗生物質無し、及び2mMグルタミン、並びに2〜20%のウシ胎児血清(FBS)を補った、ダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)で構成される。使用する細胞の必要に応じて培地、及び/若しくは培地補充物の濃度を修正し、又は調整することは、当業者の技術の範囲内である。血清は、たいてい、生存度、及び増殖のために必要となる細胞の、及び非細胞性の因子、並びに成分を含む。血清の例は、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(BS)、仔ウシ血清(CS)、ウシ胎仔血清(FCS)、新生児仔ウシ血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、豚血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ネズミ血清(RS)、その他を含む。前記レシピエントMSCがヒト起源である場合、細胞培養液は、好ましくは自己由来の起源のヒト血清が補われることも、本発明の範囲内である。補体カスケードの成分を不活性化することが必要であると考えられる場合、血清を55〜65℃にて熱不活性化することができることが理解される。血清濃度の調整、培養液からの血清の除去は、また1つ以上の所望の細胞タイプの生存を促進するために使用することができる。好ましくは、前記レシピエントMSCは、約2%〜約25%のFBS濃度から利益を得るだろう。別の実施態様において、レシピエントMSCは、血清が血清アルブミン、血清トランスフェリン、セレン、並びに当技術分野において公知のインスリン、血小板由来成長因子(PDGF)、及び塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を含むが、限定されない組換えタンパク質の組み合わせによって置換されている、定義された組成の培養液中で増殖することができる。多くの細胞培地は、すでにアミノ酸を含むが、いくつかは、細胞を培養する前に補う必要がする。このようなアミノ酸は、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン等を含むが、限定されない。抗菌物質は、また、典型的には、細菌、真菌原形質、及び真菌の混入を軽減するために、細胞培養において使用される。典型的には、使用される抗生物質、又は抗真菌化合物は、ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるが、またアンホテリシン(フンギソン(R))、アンピシリン、ゲンタミシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシン、その他を含むが、限定されない。ホルモンは、また細胞培養において都合よく使用することができ、D-アルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメタゾン、b-エストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、黄体刺激ホルモン、プロゲステロン、ソマトスタチン/ヒト成長ホルモン(hGH)、その他を含むが限定されない。
【0065】
増殖したレシピエントMSC
細胞の増殖は、一般に複数の継代にわたって実施され、それぞれの継代は、細胞培養の希釈、所望の個体群密度への希釈された細胞培養の増殖、続いてその後の再希釈を含む。一つの実施態様において、レシピエントMSCは、本発明の方法における使用の前に増殖させてもよかった。細胞増殖の方法は、当該技術分野において公知である。前記細胞が核酸構築物を細胞に導入する前に増殖されることは、特に好ましい。本方法の一つの実施態様において、前記増殖は、前記集団の二倍化、又は三倍化により、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも15回、又は少なくとも20回行われる。さらなる実施態様において、前記増殖は、少なくとも1回の、少なくとも2回の、少なくとも3回の、少なくとも4回の、少なくとも5回の、少なくとも10回の、少なくとも15回の、又は少なくとも20回の継代で実施される。
【0066】
次いで、核酸構築物を細胞に導入する。これは、当該技術分野における任意の標準の手段によって実施してもよい。
【0067】
外来性核酸を挿入するための方法は、当該技術分野において公知である。一つの実施態様において、核酸構築物は、限定されないがウイルス、プラスミド、又はコスミドベクターなどのDNAベクターに挿入してもよい。挿入は、一般に、適切な酵素手段による構築物、及びベクター配列の制限、並びにライゲーションの手段によって実施される。前記酵素、及び適切なベクターは、当業者に公知である。本発明の一つの実施態様において、前記ベクターは発現ベクターであり、それ自体、遺伝子発現が前記プロモーターによって制御去れ得るように挿入される核酸構築物である構成的プロモーターで構成されていてもよい。その技術の当業者であれば、使用する宿主細胞を考慮して、本発明の核酸構築物が、首尾よく宿主細胞に挿入されるときに、転写、及び翻訳され、その結果宿主細胞が機能的なIDO、又はその機能的に等価な断片、変異体、及び類似体を構成的に発現し、及び分泌するような適切なベクターを選択することができる。
【0068】
次いで、生じる組換えベクター構築物をレシピエント細胞に導入する。これは、形質転換、又は形質導入を含む当該技術分野における標準手段によって実施してもよいが、好ましくは形質導入、又は動物細胞にベクターを導入するための他の適切な手段によって実施される。ベクター核酸のトランスフェクションのための方法は、リン酸カルシウム処理、ウイルス形質導入、ナノ粒子衝撃、熱ショック、マグネトフェクション、又は市販のキット、若しくは試薬の使用によるものを含む。
【0069】
レシピエント細胞への本発明の核酸構築物の挿入は、ウイルス形質導入によって実施されることが好ましい。
【0070】
本発明の免疫調節性細胞を調製するための方法
本発明のIDO細胞は、また、その必要のある患者のインビボ療法のための適切な免疫調節性細胞の調製においてエキソビボ適用を有する。従って、一つの態様において、本発明は、免疫系の活性化を抑制し、かつ病理学的な自己反応性、すなわち自己免疫疾患を予防する免疫調節性細胞の調製、及び/又は産生の方法を提供する。一つの実施態様において、前記免疫調節性細胞は、調節性T細胞であり、特に好ましい実施態様において、前記免疫調節性細胞は、Foxp3+CD4+CD25+ T調節、及び/又はIL-10/TGFbを産生する調節性Tr1細胞である。本発明の方法に従って調製、及び/又は産生される免疫調節性細胞は、本発明のさらなる態様を構成する。
【0071】
一つの実施態様において、前記方法は、血液、又はその成分と本発明のIDO細胞を接触させることを含む。前記成分は、最も好ましくは末梢血単核細胞(PBMC)、又は末梢血白血球(PBL)である。
【0072】
PBL、及び/又はPBMCに対する本発明のIDO細胞数の比は、それぞれ1:1〜1:150の間であることが好ましい。PBL、及び/又はPBMCに対する本発明のIDO細胞数の比は、1:70〜1:5の間にあることは、更に好ましい。PBL、及び/又はPBMCに対する本発明のIDO細胞数の比は、1:60〜1:30の間であることが、特に好ましい。従って、一つの実施態様において、これは、25末梢血白血球毎に対して約1の本発明のIDO細胞であり、又は10末梢血単核細胞毎に対して本発明の1つのIDO細胞でもよい。
【0073】
方法のさらなる実施態様において、薬剤IL-4、及びGM-CSFの両方が、本発明の方法で使用される。IL-4の濃度に対するGM-CSFの濃度の比は、5:1、又は1:1の間であり、前記薬剤のそれぞれの濃度は、1〜2000IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000IU/mlであることが更に好ましい。従って、一つの実施態様において、これは、約500IU/mlのIL-4に対して約1000IU/mlのGM-CSFでもよい。
【0074】
本発明の免疫調節性細胞の調製、及び/又は産生のための前記方法において、MSC、及び/又は線維芽細胞集団は、LPS、IL-2、IL-4、及びGM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤の存在下において、末梢血白血球と共にインビトロにおいて培養される。培養期間は、好ましくは1日〜15日の間であり、より好ましくは、7〜10日の間である。さらなる実施態様において、前記培養は、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6日以上の間実施される。この共培養により、免疫調節性細胞の産生を生じ、これを対象の治療のために使用することができる。
【0075】
免疫調節性細胞を調製するための方法は、好ましくは温度、及び二酸化炭素の制御された環境、例えばインキュベーターにおいて行われる。本方法は、好ましくはおよそ哺乳類の体温、地域格差を考慮して、例えば摂氏37度にて予備成形される(preformed)。本発明の方法は、また、二酸化炭素濃度が0%〜10%の間で、より好ましくは、1%〜5%の間である環境において実施されることが好ましい。
【0076】
本発明の方法によって調製される免疫調節性細胞の意図されるレシピエントに関して、前記の上記した方法において使用されるMSC、及び/又は線維芽細胞は、同種異系(ドナー)、又は自己由来(対象)起源でもよい。本方法の一つの実施態様において、前記MSC、及び/又は線維芽細胞は、同種異系起源である。
【0077】
PBL/PBMCの調製
本発明の上記した方法によって調製される免疫調節性細胞の意図されるレシピエントに関して、前記方法において使用される末梢血の成分は、自己由来、又は同種異系起源でもよい。しかし、これらが自己由来起源(すなわち、これらは、その後に免疫調節性細胞、又はその任意の治療、医薬、若しくは医薬組成物を受ける対象から得られるもの)であることが好ましい。全血からのPBL/PBMCの単離のための方法は、当該技術分野において公知であり、Ficoll-Hypaque、及び/又は赤血細胞溶解手順、又はLeucoPREP(商標)細胞分離装置(Becton Dickinson & Co.)、及びHISTOPAQUE(商標)(Sigma Diagnostics)溶液などの市販の入手可能な手段の使用を含む。
【0078】
抗原特異的な免疫調節性細胞の調製のための方法
本発明は、また、選択した抗原、若しくは抗原のグループに特異的な免疫調節性細胞(以下、抗原特異的な免疫調節性細胞、又は本発明の抗原特異的な免疫調節性細胞ともいう)の調製、及び/又は産生、及びその抗原、若しくは抗原のグループに関する疾患、又は障害の治療におけるこれらの使用のための方法を提供する。このような抗原の例は、例えば慢性関節リウマチ、クローン病、過敏性反応タイプIV、狼蒼、乾癬、並びに当該技術分野において公知の、及び本明細書に他で記述したその他の自己免疫疾患などの自己免疫疾患において役割を果たすものである。一つの実施態様において、前記抗原特異的な免疫調節性細胞は、調節性T細胞であり、特に好ましい実施態様において、前記抗原特異的な免疫調節性細胞は、Foxp3+CD4+CD25+ T-調節、及び/又はIL-10/TGFbを産生する調節性Tr1細胞である。本発明の前記方法に従って調製、及び/又は産生される選択した抗原、若しくは抗原のグループに特異的な抗原特異的な免疫調節性細胞は、本発明のさらなる態様を構成する。
【0079】
前記方法は、血液、又はその成分、及び選択した抗原、又は抗原のグループと本発明のIDO細胞の接触を含む。前記成分は、大部分が末梢血単核細胞(PBMC)、又は末梢血白血球(PBL)である。
【0080】
一つの実施態様において、前記方法は、LPS、IL-2、IL-4、及びGM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤の存在下において、末梢血白血球、及び選択した抗原、又は抗原のグループとMSC、及び/又は線維芽細胞集団を接触させることを含む。
【0081】
本方法の一つの実施態様において、薬剤は、LPS(グラム陰性細菌内毒素リポポリサッカリド)である。LPS濃度は、0.01〜100μg/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、1〜50μg/mlの間、例えば約10μg/mlであることが更に好ましい。
【0082】
本方法の一つの実施態様において、薬剤は、IL-2である。IL-2濃度は、約0.01〜1000 IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、約500まで、約600まで、約700まで、約800まで、又は約900IU/mlまでであることが更に好ましい。
【0083】
代わりの実施態様において、前記薬剤は、GM-CSF、及びIL-4のいずれかである。GM-CSF、及びIL-4は、両方ともサイトカインである。その濃度は、1〜2000IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000IU/mlの間であることは更に好ましい。
【0084】
本方法のさらなる実施態様において、IL-4、及びGM-CSFの両方の薬剤を、本発明の方法において使用する。IL-4の濃度に対するGM-CSFの濃度の比は、5:1〜1:1の間であり、それぞれの前記薬剤の濃度は1〜2000IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000IU/mlの間であることは更に好ましい。従って、一つの実施態様において、これは、500IU/mlのIL-4に対して約1000IU/mlのGM-CSFでもよい。
【0085】
抗原特異的な免疫調節性細胞の調製、及び/又は産生のための方法において、本発明のIDO細胞を、末梢血白血球、及び選択した抗原、抗原のグループ、又は前記抗原、若しくは抗原群を発現、及び/若しくは提示する細胞タイプとインビトロで培養する。前記接触、又は培養期間は、好ましくは約2時間〜約25日の間であり、より好ましくは、約10〜約18日の間であり、より好ましくは、約14〜16日の間である。さらなる実施態様において、前記培養、又は接触は、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、又は少なくとも15日以上の間実施される。この共培養により、免疫調節性細胞の産生を生じ、これを対象の治療のために使用することができる。
【0086】
本発明の方法は、好ましくは温度、及び二酸化炭素の制御された環境、例えばインキュベーターにおいて行われる。本方法は、好ましくはおよそ哺乳類の体温、地域格差を考慮して、例えば摂氏37度にて予備成形される。本発明の方法は、また、二酸化炭素濃度が0%〜10%の間で、より好ましくは、1%〜5%の間である環境において実施されることが好ましい。
【0087】
代わりの実施態様において、抗原特異的な免疫調節性細胞の調製、及び/又は産生のための方法は、(a)末梢血白血球、及び/又は末梢の血液単核細胞を、選択した抗原、又は抗原のグループと接触させること、(b)前記細胞集団をMSC、及び/又は線維芽細胞集団と接触させることを含む。
【0088】
抗原特異的な免疫調節性細胞の調製、及び/又は産生のための前記方法の工程(a)において、末梢血白血球は、選択した抗原、抗原のグループ、又は前記抗原、若しくは抗原群を発現、及び/若しくは提示する細胞タイプの存在下で、インビトロで培養される。約2、4、6、12、24、48、又はそれ以上の時間、好ましくは約12から約24時間の間の培養期間の後、任意に抗原、抗原のグループ、又は前記抗原を運ぶ細胞の除去の後、本発明の細胞集団を更に本発明のIDO細胞と共培養する。前記接触、又は培養期間は、好ましくは約2時間〜約25日の間であり、より好ましくは約10〜約18日の間であり、より好ましくは約14、又は16日の間である。さらなる実施態様において、前記培養、又は接触は、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、又は少なくとも15日以上の間実施される。この共培養により、免疫調節性細胞の産生を生じ、これを対象の治療のために使用することができる。この共培養は、選択した抗原に特異的な免疫調節性細胞の産生を生じ、これを対象の治療のために使用することができる。
【0089】
本発明の方法は、温度、及び二酸化炭素の制御された環境、例えばインキュベーターにおいて好ましくは行われる。本方法は、好ましくはおよそ哺乳類の体温、地域格差を考慮して、例えば摂氏37度にて予備成形される。本発明の方法は、二酸化炭素の環境において実施されることも好ましい。
【0090】
抗原(群)
抗原特異的な免疫調節性細胞の調製、及び/又は産生のための前記方法において使用される抗原は、選択した抗原、抗原のグループ、又は前記抗原、若しくは抗原群を発現、及び/若しくは提示する細胞のタイプでもよい。
【0091】
一つの実施態様において、抗原は、自己免疫に罹患している患者由来の自己抗原の混合物、ペプチド抗原、核酸、変化したペプチドリガンド、組換えタンパク質、又はこれらの断片からなる群から選択してもよい。一つの実施態様において、前記抗原は、関節炎(限定されないがコラーゲン抗原など)と関連する。代わりの実施態様において、前記抗原は、セリアック病(或いは、小児脂肪便症、セリアックスプルー、非熱帯性スプルー、風土(endemic)スプルー、グルテン性腸症、又はグルテン過敏性腸症、及びグルテン不耐性といわれる)と関連する。セリアック病と関連する抗原は、プロラミンのいくつかの形態(限定されないがグリアジン、ホルデイン、及び/又はセカリンなどの抗原)を含むグルテンファミリーのメンバーである。さらなる実施態様において、前記抗原は、多発性硬化症と関連する(ミエリン抗原などであるが限定されない)。このような抗原の単離、精製、及び調製のための方法は、当業者に公知である。
【0092】
さらなる実施態様において、本発明のIDO細胞と末梢血白血球(又はその成分)、及び任意に選択した抗原、又は抗原のグループを接触させることは、LPS、IL-2、IL-4、及びGM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤の存在下において実施した。
【0093】
本方法の一つの実施態様において、薬剤は、LPS(グラム陰性細菌内毒素リポポリサッカリド)である。LPS濃度は、0.01〜100μg/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、1〜50μg/mlの間、例えば約10μg/mlであることが更に好ましい。
【0094】
本方法の一つの実施態様において、薬剤は、IL-2である。IL-2濃度は、約0.01〜1000 IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、約500まで、約600まで、約700まで、約800まで、又は約900IU/mlまでであることが更に好ましい。
【0095】
代わりの実施態様において、前記薬剤は、GM-CSF、及びIL-4のいずれかである。GM-CSF、及びIL-4は、両方ともサイトカインである。その濃度は、1〜2000IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000IU/mlの間であることが更に好ましい。
【0096】
本方法のさらなる実施態様において、薬剤IL-4、及びGM-CSFの両方が、本発明の方法において使用される。IL-4の濃度に対するGM-CSFの濃度の比は、5:1、又は1:1の間であること、及びそれぞれの前記薬剤の濃度は、1〜2000IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000IU/mlの間であることが更に好ましい。従って、一つの実施態様において、これは、500IU/mlのIL-4に対して約1000IU/mlのGM-CSFでもよい。
【0097】
本発明の細胞
「本発明のIDO細胞」、「本発明の免疫調節性細胞」、及び「本発明の抗原特異的な免疫調節性細胞」は、本明細書において、ひとまとめに「本発明の細胞」と称するものとする。
【0098】
本発明の組成物
本発明は、また、本発明の細胞で構成される組成物を提供する。特に好ましくは、本発明の細胞で本質的に構成される細胞組成物である。従って、一つの態様において、本発明は、細胞の組成物、又は集団を提供し、前記集団の細胞の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は好ましくは少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%は、本発明の細胞である。一つの実施態様において、前記細胞組成物は、細胞培養であり、従って更に適切な培地、緩衝液、成長因子、栄養素、及び/又はそういったものを含む。前記細胞培養は、適切な容器内に含まれてもよく、一定で適切な環境において維持してもよい。細胞の培養のための方法は、当該技術分野において公知である。
【0099】
本発明の細胞の使用
本発明の細胞は、特に対象の免疫系の調整が有益である疾患状態と関連する1つ以上の症候を予防し、治療し、又は寛解させるために使用することができる。これらは、自己免疫疾患、炎症性障害、及び免疫学的に媒介される疾患を含むが、限定されない。前記使用は、本発明のさらなる態様を構成する。
【0100】
従って、別の実施態様において、本発明の細胞は、医薬品として使用される。特定の実施態様において、本発明の細胞で構成される医薬品は、前記障害、又は疾患のいずれかに罹患している対象において、移植寛容性を誘導するため、又は自己免疫、若しくは炎症性の障害の症候、又は移植臓器、及び組織の拒絶を含む免疫学的に媒介される疾患を治療し、これにより軽減するために使用してもよい。従って、本発明の細胞は、前記障害のいずれかに罹患している対象における免疫、自己免疫、若しくは炎症性の障害の症候を、治療的に、若しくは予防的に治療し、これにより軽減するため、又は前記疾患に罹患している対象における免疫学的に媒介される疾患の症候を軽減するために使用することができる。本発明の細胞は、自己免疫疾患、炎症性障害、又は免疫学的媒介される疾患の治療において有用である。治療することができる前記疾患、及び障害の例示的な非限定の例は、見出し「定義」の下に以前に収載したものである。特定の実施態様において、前記炎症性疾患は、例えば、セリアック病、多発性硬化症、乾癬、IBD、又はRAなどの慢性炎症性疾患である。別の態様において、本発明は、自己免疫疾患、炎症性障害、並びに移植臓器、及び組織の拒絶を含む免疫学的に媒介される疾患を含むが限定されない、障害と関連する1つ以上の症候を予防し、治療し、又は寛解させる医薬品の調製のための、本発明の細胞の使用であって、対象の免疫系の調整が有益である使用に関する。従って、本発明は、更に、免疫応答を抑制し、又は移植寛容性を誘導し、又は自己免疫疾患を治療し、又は炎症性障害を治療するための医薬品の調製のための本発明の細胞の使用をいう。前記自己免疫疾患、及び炎症性疾患の例は、以前に言及した。特定の実施態様において、疾患は、慢性炎症性疾患、例えば、セリアック病、多発性硬化症、乾癬、IBD、又はRAなどの炎症性疾患である。
【0101】
抗原特異的な免疫調節性細胞の使用
本発明は、また、抗原特異的な免疫調節性細胞の使用を提供し、それは、対象、最も好ましくは末梢血白血球が得られた対象に対して、前記抗原特異的な免疫調節性細胞の投与による、前記選択した抗原、又は抗原のグループに関連した疾患、及び障害の治療において本発明の方法に従って調製、及び/又は産生される。
【0102】
従って、別の態様においては、前記抗原特異的な免疫調節性細胞は、医薬品として使用される。特定の実施態様において、本明細書に記述されるような抗原特異的な免疫調節性細胞からなる医薬品は、前記選択した抗原、又は抗原のグループに関連した疾患、及び障害の治療のために使用してもよい。従って、抗原特異的な免疫調節性細胞は、前記障害のいずれかに罹患している対象における自己免疫、又は炎症性障害の症候を、治療的に、又は予防的に治療し、これにより軽減するために、又は前記疾患に罹患している対象における免疫学的に媒介される疾患の症候を軽減するために使用することができる。本発明の抗原特異的な免疫調節性細胞は、自己免疫疾患、炎症性障害、又は免疫学的に媒介される疾患の治療において有用である。治療することができる前記疾患、及び障害の例示的な非限定の例は、見出し「定義」の下に以前に収載したものである。特定の実施態様において、前記炎症性疾患は、例えば、セリアック病、多発性硬化症、乾癬、IBD、又はRAなどの慢性炎症性疾患である。別の態様において、本発明は、自己免疫疾患、炎症性障害、並びに移植臓器、及び組織の拒絶を含む免疫学的に媒介される疾患を含むが限定されない、障害と関連する1つ以上の症候を予防し、治療し、又は寛解させる医薬品の調製のための本発明の抗原特異的な細胞の使用であって、対象の免疫系の調整が有益である使用に関する。従って、本発明は、更に、前記抗原(群)と関連する免疫応答を抑制するための医薬品の調製のための、本明細書に記述した抗原特異的な免疫調節性細胞の使用をいう。前記自己免疫疾患、及び炎症性疾患の例は、以前に言及した。特定の実施態様において、疾患は、慢性炎症性疾患、例えば、セリアック病、多発性硬化症、乾癬、IBD、又はRAなどの炎症性疾患である。
【0103】
医薬組成物
本発明は、対象の免疫系の調整が有益である障害と関連する1つ以上の症候の治療、予防、及び寛解のための医薬組成物を提供する。これらは、自己免疫疾患、炎症性障害、並びに移植臓器、及び組織の拒絶を含む免疫学的に媒介される疾患を含む。
【0104】
従って、別の態様において、本発明は、本発明の細胞、及び医薬品担体を含む、医薬組成物に関し、以下本発明の医薬組成物という。前記細胞タイプの2つ以上の組み合わせは、本発明によって提供される医薬組成物の範囲内に含まれる。
【0105】
本発明の医薬組成物は、予防的、若しくは治療的に有効な量の、1つ以上の予防的、又は治療的な薬剤(すなわち、本発明の細胞)、及び医薬品担体を含む。適切な医薬品担体は、当該技術分野において公知であり、好ましくは、米国連邦、若しくは州政府の監査機関に承認され、又は米国、若しくは欧州薬局方、又は動物、より詳細にはヒトにおける使用のためのその他の一般に認識された薬局方に収載されるものである。「担体」という用語は、それと共に治療的な薬剤が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体をいう。組成物は、必要に応じて、また微量のpH緩衝剤を含むことができる。適切な医薬品担体の例は、E W Martinによる「レミントン医薬品化学(Remington Pharmaceutical Science)」に記述されている。このような組成物は、対象への適当な投与のための形態を提供するために、適切な量の担体と共に、予防的、又は治療的に有効な量の、好ましくは精製した形態の予防的、又は治療的な薬剤を含む。処方は、投与の様式に適合すべきである。好ましい実施態様において、医薬組成物は、無菌で、対象、好ましくは動物対象、より好ましくは、哺乳動物対象、及び最も好ましくはヒト対象への投与のために適した形態である。
【0106】
本発明の医薬組成物は、多様な形態であってもよい。これらは、例えば、凍結乾燥標品、液体溶液、又は懸濁液、注射可能、及び不溶解性の溶液、その他などの固体、半固体、及び液体の投薬量形態を含む。好ましい形態は、意図された投与の様式、及び治療的な適用に依存する。
【0107】
その必要な対象に対する、本発明の細胞、又は同じもを含む医薬組成物の投与は、従来の手段によって実施することができる。特定の実施態様において、前記細胞集団は、インビトロ(例えば、埋め込む、又は生着前の移植片として)、又は対象組織に直接インビボにおいてのいずれかで、細胞を所望の組織に移植することを含む方法によって、対象に投与される。細胞は、任意の適切な方法によって所望の組織へ移植することができ、これは一般に組織タイプによって変化するだろう。例えば、細胞を含む培養液に移植片を浸すこと(又はそれを注入すること)によって、細胞を移植片へ移植することができる。或いは、細胞を、集団を確立するための組織内の所望の部位に播種することができる。細胞は、例えば細胞懸濁液の注入によって、全身的に投与することもできる。細胞は、細胞に播種することができるカテーテル、トロカール、カニューレ、ステントなどの装置を使用して、インビボで部位へ移植することができる。
【0108】
本発明の細胞集団、及び医薬組成物は、併用療法において使用することができる。具体的な実施態様において、併用療法は、1つ以上の抗炎症性因子に対して抵抗性である炎症性障害の対象に投与される。別の実施態様において、併用療法は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド性抗炎症薬物、β-アゴニスト、抗コリン作働性薬剤、及びメチルキサンチンを含むが、限定されないその他のタイプの抗炎症薬剤と組み合わせて使用される。NSAIDの例は、イブプロフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、オキサプロジン、ナブメトン、スリンダク(suhndac)、トルメチン、ロフェコキシブ、ナプロキセン、ケトプロフェン、ナブメトン、その他を含むが、限定されない。このようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-I、及び/又はCOX-2)を阻害することによって機能する。ステロイド性抗炎症薬物の例は、糖質コルチコイド、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニソロン、トリアムシノロン、アザルフィ[オタ]ジン、並びにトロンボキサン及びロイコトリエンなどのエイコサノイドを含むが、限定されない。インフリキシマブのようなモノクローナル抗体を、また使用することができる。
【0109】
上記の実施態様に従って、本発明の併用療法は、このような抗炎症性薬剤の投与の前に、同時に、又はその後に使用することができる。更に、このような抗炎症薬剤は、リンパ組織誘導因子、及び/又は免疫調節性薬剤として本明細書に特徴づけられる薬剤を包含しない。
【0110】
別の態様において、本発明は、自己免疫疾患、炎症性障害、並びに移植臓器、及び組織の拒絶を含む免疫学的に媒介される疾患を含むが、限定されない障害と関連する1つ以上の症候を予防し、治療し、若しくは寛解させる医薬組成物或いは医薬品の調製、又は製造のための本発明の細胞の使用であって、対象の免疫系の調整が有益である障害がある使用に関する。従って、本発明は、更に、免疫応答を抑制し、若しくは移植寛容性を誘導し、又は自己免疫疾患を治療し、若しくは炎症性障害を治療するための医薬組成物、又は医薬品の調製、又は製造のための本発明の細胞の使用をいう。前記自己免疫疾患、及び炎症性疾患の例は、セリアック病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、及びリウマチ様関節炎(RA)を含むが、限定されない。
【0111】
キット
本発明は、更に、本発明の細胞の調製、及び/又は使用において有用なキットに関する。一つの実施態様において、前記キットは、i)本発明のIDO細胞、及びii)LPS、IL-2、IL-4、及びGM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。
【0112】
一つの実施態様において、前記薬剤は、LPS(グラム陰性細菌内毒素リポポリサッカリド)である。LPS濃度は0.01〜100μg/mlであることが好ましく、前記濃度は、1〜50μg/ml、例えば約10μg/mlであることが更に好ましい。
【0113】
本方法の一つの実施態様において、薬剤は、IL-2である。IL-2濃度は、約0.01〜1000 IU/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、約500まで、約600まで、約700まで、約800まで、又は約900IU/mlまでであることが更に好ましい。
【0114】
代わりの実施態様において、前記薬剤は、GM-CSF、及びIL-4のいずれかである。その濃度は、1〜2000μg/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000μg/mlであることは更に好ましい。
【0115】
さらなる実施態様において、薬剤IL-4、及びGM-CSFの両方が、混合物、又は別々の容器のいずれかとして、本発明の前記キットに提供される。IL-4の濃度に対するGM-CSFの濃度の比は、5:1、又は1:1の間にあること、及びそれぞれの前記薬剤の濃度は、1〜2000μg/mlの間であることが好ましく、前記濃度は、500〜1000μg/mlの間であることが更に好ましい。従って、一つの実施態様において、これは、500μg/mlのIL-4に対して約1000μg/mlのGM-CSFでもよい。
【0116】
さらなる実施態様において、前記キットは、更に、iii)1つ以上の抗原、又は前記1つ以上の抗原を発現、及び/又は提示する細胞タイプを含む。さらなる実施態様において、本発明の前記キットは、免疫調節性細胞の調製、又は産生に使用するためのiv)説明書を含んでいてもよい。
【0117】
さらなる実施態様において、本発明は、本発明の細胞で対象を治療する際にて有用なキットを提供する。前記キットは、i)本発明の細胞、及びii)前記細胞を投与するための装置を含む。前記装置は、シリンジ、注射装置、カテーテル、トロカール、カニューレ、及びステントを含むが、限定されない。
【0118】
さらなる実施態様において、本発明の全てのキットは更に、対象の治療に使用するための説明書を含んでいてもよい。
【0119】
使用
本発明の核酸構築物、前記構築物を含む細胞、前記細胞を作製するための方法、前記細胞を使用して調製される免疫調節性細胞、並びに本発明の細胞を含む組成物及びキットは、特に対象の免疫系の調整が有益である疾患状態と関連する1つ以上の症候を予防し、治療し、又は寛解させるのに使用してもよい。これらは、限定されないがセリアック病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、及びリウマチ様関節炎(RA)などの自己免疫疾患、炎症性障害、及び免疫学的に媒介される疾患を含むが、限定されない。前記使用は、本発明のさらなる態様を構成する。
【実施例】
【0120】
実施例:1 IDO構築物の調製
IDO断片をクローン化するために、IFN-γで刺激した脂肪由来の幹細胞(以下、ASCともいう)から得られたmRNAからのcDNAの逆転写を実施した。IFN-γ刺激により、ASCにおいてIDOの産生が生じる。15.000個の脂肪由来幹細胞/sqcmを、75sqmの組織培養プレートにまき、48時間、3ng/mlのIFN-γで刺激した。製造業者明細書に従って、InvitrogenのTRIzol試薬を使用してRNAを得た。製造業者明細書に従って、InvitrogenのSuperscript IIキットを使用して、cDNAを転写した。
【0121】
以下の増幅プライマーを使用するPCRによって、得られたcDNAを増幅した:
【化1】

【0122】
摂氏56.4度のアニーリング温度にてPCRを実施した。Invitrogen(商標)のHigh Fidelity Expandキットを、PCRを実施するために使用した。増幅した核酸をゲル電気泳動によって単離し、製造業者の説明書に従って、Invitrogen(商標) TOPO IIクローニングキットを使用してサブクローン化した。いくつかのクローンをシーケンスし、正確なクローンCEL-P907GBpをさらなるクローン化のために使用した。配列番号:1をベクターに挿入した(配列番号:2を参照されたい)。簡潔には、シーケンスしたIDO遺伝子をNotI、及びBamHIなどの標準的な制限酵素を使用して切り出し、その後、WO 2005061721に詳述されている専売のベクターpRV IRES neoにクローン化した。5つのトランスフェクションプロセス、及びその後のレトロウイルスの上清の産生は、ポリエチレンイミンを使用して行った(lvol PEI:2vol DNA)。次いでウイルスの上清を、脂肪由来幹細胞の形質導入において使用した。詳しくはWO 2005061721を参照されたい。
【0123】
IDO活性
IDOベクターを形質導入し、その後構成的にIDOを発現するASCを、以下hASC-IDO+細胞という。比較として、IDO遺伝子のsiRNAサイレンサーを有するASC(hASC-IDOsi)を、適切な空ベクターで形質転換した15個の対照ASC(hASC-空)と共に作製した。これらのクローンのIDO活性は、静止状態、及び異なる時点でのIFN-γ刺激(3ng/ml)後の両方で、HPLCによって評価した。予想通りに、IFN-γで刺激したときに、hASC-空の細胞は、キヌレニン(Kyn)産生を生じるだけであった。重要なことに、hASC-IDO+細胞は、培地に構成的にKynを蓄積した。この活性は、IFNγ処理によって更に誘導された。hASC-IDOsi細胞は、IFN-γでの刺激後、Kyn濃度の著しい減少を示し、IDOのサイレンシングが非常に効率的だったことを示した(図1)。
【0124】
細胞の免疫抑制効果
IDOの構成的発現が免疫抑制を増強することを確立するために、hASC-空、又はhASC-IDO+細胞の存在下において、準最適の1:50の比にてPBMCを刺激し、PBMCの増殖を決定した。図2に示したように、hASC-IDO+細胞は、対照細胞と比較して有意に阻害を増加させた。次に、hASCが媒介する免疫抑制に対するIDO活性のサイレンシング効果を解析した。従って、hASC-空、又はhASC-IDOsi細胞の存在下において、1:25の比にてPBMCを刺激し、PBMCの増殖を決定した。特に、hASC-IDOsi細胞は、PBMC増殖を阻害する能力の顕著な減少を示した(図2)。更にまた、IFN-γ中和はhASC-空による免疫抑制を予防する一方、hASC-IDO+に対し効果を有さなかった(図3)。すべて合わせると、これらのデータは、IDO活性の誘導がhASCによって媒介される免疫抑制機構において必須な役割を果たすことを示す。
【0125】
実施例2:調節性T細胞産生
適切な状態下で末梢の血液単核細胞と接触したASCは、調節性T細胞の産生を生じる。このような方法は、WO2007039150において開示されている。hASC-IDO+が調節性T細胞産生において優れていることを証明するために、産生した調節性T細胞の集団を、以降またhASCともいう脂肪由来の幹細胞を使用して標準的な手段(すなわち、IDO構築物なしで)で産生した場合のもの;並びにIDO発現をサイレンスするための特異的なsiRNAを有するASC(hASC-IDOsi)を使用して産生したものと比較した。対照として、適切な空ベクターを有するクローンを産生し、ASCを形質転換するために使用した(hASC-空)。hASC、hASC-IDO+、hASC-IDOsi、及びhASC-IDO 空を24穴プレートにまき、24時間培養した。PBMCをPan T細胞活性化キット(抗CD3、抗CD2、及び抗CD28を添加したマイクロビーズ)で活性化し、接触系においてhASCの有無において培養した(比ASC:PBMC 1:25)。5日目にて、FACS解析のために細胞を収集した。調節性T細胞(Treg)の集団を検出するために、PE、PerCP、及びAPCでそれぞれ標識したCD25、CD4、CD3に対する抗体で細胞を染色した(CD3+CD4+CD25+++と記述した)。洗浄の後、細胞を固定し、FACScalibur(BD Bioscience)を使用して得た。50×103のイベントを得て、CellQuest-proソフトウェアを獲得、及び解析のために使用した。各アッセイ法の前に、サイトメーターを較正するために、CALIBRITEビーズ(BD Bioscience)を使用した。データを、ゲートで制御されたリンパ球(前方、及び側方散乱特性に基づいた)上で解析した。
【0126】
図4に示したように、PBMCがASCの存在なしで刺激され、培養されるときに、総CD4細胞の中の調節性T細胞集団の割合(CD3+CD4+CD25+++)は2.4%である。しかしhASC、及びASCIDOemptyの存在下において達した割合は、約10〜15%である。hASC-IDO+(IDOを構成的に発現するhASC)とのPBMCの共培養は、CD4総集団において50%の調節性T細胞の産生を生じた。この実験のネガティブ対照として、IDO酵素を発現しないhASC-IDOsiを使用した。このクローンは、CD4細胞サブセット内部で2%未満の調節性T細胞集団を誘導した。従って、hASCにおけるIDOの構成的発現は、調節性T細胞(CD3+CD4+CD25+++)の産生を増加させると結論することができる。
【0127】
この観察を確認するために、100UI/mlのIL-2の添加、及び7日の培養で記述したとおりに実験を繰り返した。培養の7日後、細胞を遠心によって収集し、ペレットにし、フローサイトメトリー(FACS)の手段によって解析した。個々のウェルのFACS解析の結果を図3に提供してあり、(IDOクローン)を使用すると細胞の19.5%がCD4+CD25brightであり、それに対して(SIL)を使用すると8.94%、(WT)では16.1%であったことを示している。これは、更に図4において図示してあり、各グループにおける全てのウェルの比較の平均を示す。これらの細胞は、細胞内F0XP3によって、調節性T細胞であることが確認された。
【0128】
実験の結果は、ASCがサイレンス遺伝子を示す場合、共培養において見いだされる調節性T細胞の割合は、IDO活性が存在するときに産生された細胞よりも低かったことを確認する。
【0129】
図5は、実験2の第2パートにおいて解析した条件のうちの3つの代表的なドットプロットを提供する。左のプロットは、構成的遺伝子をもつASCとのPBMCの共培養のFACS解析(CD4/CD25/FOXP3)を提供し、中央のプロットは、サイレンス遺伝子が存在するASCのウェルのFACS結果を提供し、右のプロットは、空のベクターを有する対照を提供する。
【0130】
図6は、共培養のそれぞれの調節性T細胞の平均割合を示す。構成的IDOがIDO空、及びサイレンスされたIDOよりも多くの調節性T細胞を誘導したことが分かる。ASCは、IDO空とほぼ同じ量の調節性T細胞を産生したことも分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IFN-γに対する曝露の非存在下でIDOを発現する細胞。
【請求項2】
IDOを構成的に発現する細胞。
【請求項3】
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、又はその断片をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む核酸発現構築物を含む、請求項1、又は2記載の細胞。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:1又は配列番号:6の少なくとも800塩基を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の細胞。
【請求項5】
請求項3又は4に記載した前記核酸発現構築物が、ii)前記第1のポリヌクレオチドの発現を指揮するためのプロモーターをコードする第2のポリヌクレオチドを更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項6】
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、又はその断片をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む核酸発現構築物。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:1又は配列番号:6の少なくとも800塩基を含む、請求項6記載の核酸構築物。
【請求項8】
ii)前記第1のポリヌクレオチドの発現を指揮するためのプロモーターをコードする第2のポリヌクレオチドを更に含む、請求項6、又は7のいずれか1項記載の核発現構築物。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項記載の構築物を含むベクター。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項記載の構築物又はベクターを含む細胞。
【請求項11】
前記細胞が幹細胞、線維芽細胞、又は線維芽細胞様滑膜細胞である、請求項1〜4、又は10のいずれか1項記載の細胞。
【請求項12】
前記細胞が間充織幹細胞である、請求項11記載の細胞。
【請求項13】
前記間充織幹細胞が骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、臍帯由来幹細胞、臍帯血由来幹細胞、及び胎盤由来幹細胞からなる群から選択される、請求項12記載の細胞。
【請求項14】
前記脂肪由来幹細胞が、脂肪由来組織に、皮下脂肪由来組織に、又は脂肪関連器官に由来する、請求項13記載の細胞。
【請求項15】
前記細胞が多分化能である、請求項1〜4、又は10〜14のいずれか1項記載の細胞。
【請求項16】
請求項6〜8のいずれか1項記載の構築物をレシピエント細胞に導入することを含む、請求項1〜4、又は10〜15のいずれか1項記載の細胞の製造のための方法。
【請求項17】
前記レシピエント細胞が、幹細胞、線維芽細胞、又は線維芽細胞様滑膜細胞からなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記細胞集団が間充織幹細胞を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記間充織幹細胞が、骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、臍帯由来幹細胞、臍帯血由来幹細胞、及び胎盤由来幹細胞からなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記脂肪由来幹細胞が、脂肪由来組織に、皮下脂肪由来組織に、又は脂肪関連器官に由来する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記レシピエント細胞が、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、又は少なくとも20回の複製まで増殖される請求項16〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜4、若しくは10〜15のいずれか1項記載の細胞を、血液又はその成分、特に末梢血、又はその成分と接触させることを含む、免疫調節性細胞の製造及び/又は産生のための方法。
【請求項23】
抗原に特異的な免疫調節性細胞の製造及び/又は産生のための方法であって、前記抗原の存在下において、請求項1〜4、又は10〜15のいずれか1項記載の細胞、細胞培養、又は細胞集団を、血液、又はその成分、特に末梢血、若しくはその成分と接触させることを含む、前記方法。
【請求項24】
前記成分が末梢血単核細胞、又は末梢血白血球である、請求項22、又は23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記接触がLPS、IL-2、IL-4、及びGM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤の存在下において実施される、請求項22〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
免疫調節性細胞が調節性T細胞である、請求項22〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
請求項22〜26のいずれかに従って得られる免疫調節性細胞。
【請求項28】
請求項1〜4、10〜15、又は27に記載の細胞を少なくとも50%含む組成物。
【請求項29】
医薬として使用するための、請求項1〜4、10〜15、27、又は28のいずれか1項記載の細胞又は組成物。
【請求項30】
医薬の製造における請求項29記載の細胞又は組成物の使用。
【請求項31】
請求項29記載の細胞又は組成物、及び医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含む医薬。
【請求項32】
請求項29記載の細胞又は組成物を含むキット。
【請求項33】
前記細胞を投与するための装置を更に含む、請求項32記載のキット。
【請求項34】
LPS、IL-2、IL-4、及びGM-CSFからなる群から選択される1つ以上の薬剤を更に含む、請求項32、又は33記載のキット。
【請求項35】
炎症、慢性炎、及び自己免疫疾患からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、請求項29記載の細胞又は組成物;請求項16〜26記載の方法、請求項31記載の医薬、請求項32〜34のいずれか1項記載のキット。
【請求項36】
セリアック病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、及びリウマチ様関節炎(RA)からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、請求項29記載の細胞又は組成物;請求項16〜26記載の方法、請求項31記載の医薬、請求項32〜34のいずれか1項記載のキット。
【請求項37】
炎症、慢性炎、及び自己免疫疾患からなる群から選択される疾患の治療のための医薬の製造に使用するための、請求項29記載の細胞又は組成物;請求項16〜26記載の方法、請求項31記載の医薬、請求項32〜34のいずれか1項記載のキットの使用。
【請求項38】
セリアック病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、及びリウマチ様関節炎(RA)からなる群から選択される疾患の治療のための医薬の製造に使用するための、請求項29記載の細胞又は組成物;請求項16〜26記載の方法、請求項31記載の医薬、請求項32〜34のいずれか1項記載のキットの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−507997(P2012−507997A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535119(P2011−535119)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064788
【国際公開番号】WO2010/052313
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511110463)セルルエリク エス.エー. (2)
【Fターム(参考)】