説明

細胞ベースの抗癌組成物ならびに当該物の製造方法および使用方法

粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する単離された複数のT細胞および当該物を含む医薬組成物が記載されている。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を製造する方法も記載されている。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子およびこのような核酸分子を含むT細胞で、粘膜組織の癌と診断された個体を処置する方法、または危険性が高い個体におけるこのような癌を予防する方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、粘膜組織に由来する抗原を標的とするT細胞を含む組成物、このような組成物を製造する方法、ならびに、起源が粘膜組織である転移性癌に対して個体を保護するために、および起源が粘膜組織である転移性癌に罹患している個体を処置するためのそれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療における改良および成功にもかかわらず、癌は、世界中で多数の人々の命を奪い続けている。例えば、結腸直腸癌は、西洋諸国において悪性疾患の3番目に多い死因である。世界中で、毎年、少なくとも50万の結腸直腸癌の新たな症例があると概算されている。
【0003】
スクリーニングにおける改良は、早期の癌を有する多数の個体ならびに癌を有さないが、遺伝的に癌を発症しやすく、したがって癌を発症する危険性が高い多数の個体を同定する機会を提供する。さらに、処置における改良のおかげで、癌を除去されたかまたは寛解期の癌を有した多数の人々が存在する。このような人々は、回帰または再発の危険性があり、癌を発症する危険性も高い。
【0004】
粘膜組織の癌に罹患している個体を処置する改善された方法が必要である。粘膜組織の癌に罹患している個体を処置するために有用な組成物が必要である。粘膜組織の癌を処置された個体における粘膜組織の癌の再発を予防する改善された方法が必要である。粘膜組織の癌を処置された個体における粘膜組織の癌の再発を予防するために有用な組成物が必要である。個体、特に粘膜組織の癌に対する遺伝的素因を有すると同定された個体における粘膜組織の癌を予防する改善された方法が必要である。個体における粘膜組織の癌を予防するために有用な組成物が必要である。個体における粘膜組織の癌を処置および予防するために有用な組成物を同定する改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
粘膜限定抗原(mucosally restricted antigen)の少なくとも1つのエピトープを認識する単離された複数のT細胞を提供する。
【0006】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する単離された複数のT細胞および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物も提供する。
【0007】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を製造する方法を提供する。いくつかの方法は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する少なくとも1つのT細胞を含む細胞ドナーからサンプルを単離すること;粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定すること;および該T細胞を、その複製を促進する条件下で粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を生産するために十分な期間培養することを含む。他の方法は、少なくとも1つのT細胞を含む細胞ドナーからサンプルを単離すること;該T細胞を、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体、または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の少なくとも機能性フラグメントを含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質のいずれかをコードする核酸配列で形質転換すること、ここに、発現時に、該融合タンパク質は膜結合型タンパク質である;および該形質転換されたT細胞を、その複製を促進する条件下で粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を生産するために十分な期間培養することを含む。
【0008】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞の有効量を個体に投与する工程を含む、粘膜組織の癌と診断された個体を処置する方法を提供する。
【0009】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞の有効量を個体に投与する工程を含む、粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された個体における粘膜組織の癌を予防する方法も提供する。
【0010】
加えて、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体タンパク質、または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の少なくとも機能性フラグメントおよびヌクレオチド配列が細胞内で発現されるときに、融合タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分に対するコード配列を含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0011】
このような核酸分子を含むT細胞も提供される。
【0012】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用される「粘膜組織」は、鼻、口、肺および消化管を含む体中のいくつかの臓器および体腔を裏打ちする湿潤組織である粘膜の組織を示す。粘膜組織は、限定はしないが、口、例えば、頬、舌下および口腔粘膜組織;鼻、例えば、嗅粘膜組織;肺;消化管、例えば、食道、胃、十二指腸、小腸および大腸、結腸、直腸および肛門;ならびに泌尿生殖器、例えば、膀胱、尿道、膣の一部、陰茎および子宮の一部を含む体のいくつかの様々な一部において見ることができる。粘膜組織は、また、乳房、腎臓および眼の一部として見出される。
【0013】
本明細書において使用される「粘膜組織の癌になりやすいと疑われる個体」は、粘膜組織の癌を発症する平均より高い危険性がある個体を示すことを意図する。粘膜組織の癌を発症する特定の危険性がある個体の例は、その家族の病歴が家族のメンバー中の粘膜組織の癌の平均より高い発生率を示す個体、および/または、存在が粘膜癌の高い発生率と相関性がある遺伝子マーカーを有する個体、および/または、以前に粘膜組織の癌を発症しており、処置されており、したがって疾患の進行、回帰もしくは再発の危険性を抱える個体である。粘膜組織の癌を発症する平均より高い危険性の一因となり得、それにより粘膜組織の癌になりやすいと疑われる個体に分類される因子は、個体の特定の遺伝的、医薬的および/または行動的背景および特性に基づき得る。
【0014】
本明細書において使用される「粘膜限定抗原」は、正常非粘膜細胞では発現されないが、正常粘膜細胞において発現される抗原を示すことを意図する。粘膜限定抗原の例は、グアニル酸シクラーゼC、CDX−1、CDX−2、スクラーゼイソマルターゼ、マンマグロビン、小乳房上皮性ムチン、腸特異的ホメオボックス、RELMベータ(FIZZ2)、ビリン、A33、ラクターゼ(ラクターゼ−フロリジンヒドロラーゼ)、H(+)/ペプチド共輸送体1(PEPT1、SLC15A1)、インテクチン(Intectin)、炭酸脱水酵素、マンマグロビン、B726P、小乳房上皮性ムチン(SBEM)、LUNXおよびTSC403を含む。
【0015】
本明細書において使用される「粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する単離された複数のT細胞」なる用語は、それぞれ粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに対して反応性である生体外に維持された少なくとも1×10個のT細胞の集団を示す。いくつかの態様において、単離された複数のT細胞は、生体外に維持された少なくとも1×10個のこのようなT細胞の集団を含む。いくつかの態様において、単離された複数のT細胞は、生体外に維持された少なくとも1×10個のこのようなT細胞の集団を含む。いくつかの態様において、単離された複数のT細胞は、生体外に維持された少なくとも1×10個のこのようなT細胞の集団を含む。いくつかの態様において、単離された複数のT細胞は、生体外に維持された少なくとも1×1010個のこのようなT細胞の集団を含む。いくつかの態様において、単離された複数のT細胞は、生体外に維持された少なくとも1×1011個のこのようなT細胞の集団を含む。集団は、複数の容器または単一の容器内に維持され得る。
【0016】
本明細書において使用される「粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープ」なる用語は、全長粘膜限定抗原またはそのフラグメントを含む粘膜限定抗原と免疫学的に交差反応性である分子を示すことを意図する。
【0017】
本明細書において使用される「CMA結合性膜結合型融合タンパク質」なる用語は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の少なくとも機能性フラグメント、およびT細胞において発現されたとき、タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分を含むタンパク質を示す。
【0018】
本明細書において使用される「CD4+ヘルパーエピトープ」は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラス2ヒト白血球抗原(HLA)と複合体を形成し、CD4+T細胞上のT細胞受容体により認識されるペプチド配列である。ペプチド、例えば、CD4+ヘルパーエピトープは、MHCと複合体を形成し、該複合体は特定のT細胞受容体により認識され得る。MHC/ペプチド複合体とT細胞受容体間の相互作用は、MHCを発現する細胞とT細胞受容体を発現するT細胞間のシグナルをもたらす。MHCクラスIIの場合、ペプチドおよびMHCクラスII複合体により形成される複合体は、CD4+ヘルパーT細胞のT細胞受容体と相互作用する。したがって、CD4+ヘルパーT細胞のT細胞受容体により複合体として認識され得るMHCクラスII分子との複合体を形成することができるペプチドは、CD4+ヘルパーエピトープである。
【0019】
本明細書において使用される「分泌シグナル」および「分泌ペプチド」および「シグナルペプチド」は、互換的に使用され、存在するとき、細胞の外部にタンパク質の輸送および分泌をもたらすタンパク質のアミノ酸配列を示すことを意味する。分泌シグナルは、一般的に、前駆体タンパク質のN末端または該N末端付近で開裂可能な前駆体タンパク質の疎水性セグメントである。分泌プロセスにおいて、このような分泌シグナルは、酵素的に除去され、タンパク質の成熟形態、すなわち分泌シグナルを欠いているタンパク質の形態の分泌をもたらす。いくつかの態様において、分泌シグナルは、粘膜限定抗原に由来する。いくつかの態様において、分泌シグナルは、別の供給源に由来する。分泌シグナルの例は、粘膜限定抗原上に存在するものまたは他の供給源に由来するものを含む。前者の場合、シグナル配列を含む粘膜限定抗原のコード配列は、そのままで使用される。後者の場合、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列は、粘膜限定抗原のコード配列に連結される。このような場合において、シグナル配列は、遺伝的構築物が投与される個体の細胞中で機能性であるあらゆる配列であり得る。
【0020】
概観
米国仮シリアル番号61/099,398(これは、出典明示により本明細書に包含させる)は、癌粘膜抗原(CMA)と称される粘膜(気道消化器、泌尿生殖器、乳房、その他)から生じる腫瘍に対するワクチン標的の1つのクラスを標的化するワクチンを記載している。2004年7月22日に公開された米国公開特許出願第20040141990号(これは、出典明示により本明細書に包含させる)は、転移性結腸直腸癌に対するワクチンを記載している。米国公開特許出願第20010039017、20010036635、20010029020および20010029019号(これらは、それぞれ出典明示により本明細書に包含させる)は、それぞれ、消化管起源の癌細胞を標的化するワクチンを記載している。
【0021】
本明細書において粘膜限定抗原とも称されるCMAは、通常、粘膜区画のみにおいて発現され、これらの発現は、粘膜細胞が悪性形質転換を受け、癌細胞になった後に存続する。さらに、これらの抗原は、これらの腫瘍細胞が転移した後に発現され続ける。免疫治療標的としてこれらの抗原を使用することにおいていくつかの利点がある。通常、これらの抗原に対して未感作の全身的区画において部分的にのみ耐性であり得、抗転移腫瘍の有効性を提供する全身的処置を可能にする。さらに、粘膜炎症および自己免疫の回避を提供し得る交差区画免疫応答の欠如が存在する。
【0022】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープ、例えば、全長粘膜限定抗原またはそのフラグメントを含むタンパク質は、粘膜組織の癌の粘膜限定抗原と免疫原性的に交差反応性である。
【0023】
いくつかの癌患者の免疫化は、年齢、疾患および集団中の遺伝的多型と関連した免疫における変化を不十分であることが反映して、および自己タンパク質に対する免疫応答の産生の制限により、観察されている。T細胞免疫応答を生産するために患者を免疫する代わりに、大量の特定のT細胞が患者に投与され得る。
【0024】
T細胞が粘膜限定抗原を発現する粘膜癌細胞に結合し、それにより癌細胞と、または癌細胞に対して免疫学的に反応するように、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を提供する。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を製造する何らかの特定の方法に限定されることは望まないが、3つの方法が本明細書において提供される。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を得るための第1の方法は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を単離し、培養技術を使用して、T細胞の数を指数関数的に増大させ、複数のこのような細胞を生産する方法である。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を得るための第2の方法は、個体からT細胞を単離し、それを粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸分子で形質転換し、培養技術を使用して、形質転換されたT細胞の数を指数関数的に増殖させ、複数のこのような細胞を生産する方法である。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を得るための第3の方法は、個体からT細胞を単離し、それを粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の機能性フラグメントおよび細胞、例えばT細胞において発現するとき、タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分を含む融合タンパク質をコードする核酸分子で形質転換する方法である。
【0025】
これらのT細胞は、粘膜限定抗原を発現する細胞を含む粘膜組織の癌に対する治療および予防に使用される。
【0026】
出発物質としての抗CMA T細胞
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞のクローン性増殖は、細胞ドナーからこのようなT細胞を単離すること、および、培養技術を使用して、細胞分裂を促進する条件下で維持することにより細胞の数を指数関数的に増大させることを含む。
【0027】
細胞ドナーは、増殖された細胞の集団が投与される個体、すなわち自己細胞ドナーであり得る。あるいは、T細胞は、T細胞が投与される個体と異なる個体である細胞ドナーから得ることができる(すなわち同種T細胞)。同種T細胞が使用される場合、ドナーは、型が合うこと、すなわちレシピエントと同じ、またはほぼ同じ白血球抗原のセットを発現すると同定されることが好ましい。
【0028】
T細胞は、細胞ドナーから、日常的な方法により、例えば、血液分画、特に末梢血単球細胞成分、または骨髄サンプルからの単離により得ることができる。
【0029】
T細胞が細胞ドナーから得られると、標準技術を使用して、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定し、サンプルから単離してもよい。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質を、固体支持体に付着させ、サンプルと接触させてもよい。次に、洗浄後に表面上に残るT細胞をさらに試験し、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定する。アフィニティー単離方法、例えば、カラム、細胞に結合する標識化されたタンパク質、細胞分別機技術も、種々に使用され得る。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞は、また、それらの反応性により、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを有するタンパク質の存在下で同定され得る。
【0030】
T細胞が粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞と同定されると、それは、細胞増殖および分裂を促進および維持する条件で組織培養技術を使用してクローン的に増殖させ、指数関数的な数の同一の細胞を生産してもよい。増殖されたT細胞集団は、患者への投与のために回収され得る。
【0031】
いくつかの態様において、細胞ドナーは、T細胞免疫応答を含む粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに対する免疫応答を誘導するために、T細胞を含むサンプルの除去の前にワクチンを接種される。いくつかの態様において、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定し、単離すること、このような細胞の数を増大するために細胞を培養すること、および複数のこのような細胞を、ワクチンを接種された細胞ドナーと同じ個体(自己処理)またはワクチンを接種された細胞ドナーと異なる個体(同種処理)であり得るレシピエントに投与することを含む処置の一部として、細胞ドナーは、T細胞免疫応答を含む粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに対する免疫応答を誘導するために、T細胞を含むサンプルの除去の前にワクチンを接種される。
【0032】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体を含むT細胞を誘導するために使用され得るワクチンおよびワクチン接種の例は、本明細書に記載されているものならびに本明細書において出典明示により包含されている特許および公開された特許出願に記載されているものを含む。
【0033】
抗CMAT細胞受容体で形質転換されたT細胞
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、細胞ドナーからT細胞を単離すること、それを粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸分子で形質転換すること、および、該形質転換された細胞を培養して、形質転換されたT細胞の数を指数関数的に増大させ、このような複数の細胞を生産することにより得ることができる。
【0034】
細胞ドナーは、増殖された細胞の集団が投与される個体、すなわち自己細胞ドナーであり得る。あるいは、T細胞は、T細胞が投与される個体と異なる個体である細胞ドナーから得ることができる(すなわち同種T細胞)。同種T細胞が使用される場合、細胞ドナーは、型が合うこと、すなわちレシピエントと同じ、またはほぼ同じ白血球抗原のセットを発現すると同定されることが好ましい。
【0035】
T細胞は、細胞ドナーから、日常的な方法により、例えば、血液分画、特に末梢血単球細胞成分、または骨髄サンプルからの単離により得ることができる。
【0036】
T細胞が細胞ドナーから得られると、1つ以上のT細胞は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸で形質転換され得る。
【0037】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸分子は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体を発現するT細胞を有する「TCR遺伝子ドナー」から粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を単離することにより得ることができる。このようなTCR遺伝子ドナーは、ワクチン接種以外の免疫原への暴露から生じる免疫応答のため、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を有し得、または、このようなTCR遺伝子ドナーは、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞の生産を誘導するワクチンを受けたもの、すなわちワクチンを接種されたTCR遺伝子ドナーと同定され得る。ワクチンを接種されたTCR遺伝子ドナーは、以前にワクチンを接種されていてもよく、または特に、T細胞を粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸分子で形質転換すること、細胞数を増大すること、および増大された形質転換されたT細胞の集団を個体に投与することを含む方法における使用のために、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するこのようなT細胞を産生する目的の一環として、ワクチンを投与してもよい。
【0038】
TCR遺伝子ドナーは、形質転換されたT細胞のレシピエントである個体または形質転換されたT細胞のレシピエントである個体と異なる個体であり得る。TCR遺伝子ドナーは、細胞ドナーと同じ個体であり得、またはTCR遺伝子ドナーは、細胞ドナーと異なる個体であり得る。いくつかの態様において、細胞ドナーは、形質転換されたT細胞のレシピエントであり、TCR遺伝子ドナーは、異なる個体である。いくつかの態様において、細胞ドナーは、TCR遺伝子ドナーと同じ個体であり、形質転換されたT細胞のレシピエントと異なる個体である。いくつかの態様において、細胞ドナーは、TCR遺伝子ドナーと同じ個体および形質転換されたT細胞のレシピエントと同じ個体である。
【0039】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体を含むT細胞を誘導するために使用され得るワクチンの例は、本明細書に記載されているものならびに本明細書において出典明示により包含されている特許および公開された特許出願に記載されているものを含む。
【0040】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸分子、すなわちTCRコード配列は、DNAまたはRNA分子であり得る。核酸分子は、ドナーT細胞におけるTCRコード配列の発現のために必要な調節因子に作動可能に連結され得る。いくつかの態様において、TCRコード配列を含む核酸分子は、プラスミドDNA分子である。いくつかの態様において、TCRコード配列を含む核酸分子は、発現ベクターであるプラスミドDNA分子であって、該TCRコード配列は、ドナーT細胞におけるTCRコード配列の発現のために必要であるプラスミド中の調節因子に作動可能に連結されているDNA分子である。いくつかの態様において、TCRコード配列を含む核酸分子は、ドナーT細胞に感染させるために使用されるウイルス粒子に組み込まれ得る。このような粒子を製造するためのパッケージング技術は知られている。粒子に組み込まれたTCRコード配列は、ドナーT細胞におけるTCRコード配列の発現のために必要であるプラスミド中の調節因子に作動可能に連結され得る。いくつかの態様において、TCRコード配列を含む核酸分子は、ウイルスゲノムに組み込まれる。いくつかの態様において、ウイルスゲノムは、ドナーT細胞に感染させるために使用されるウイルス粒子に組み込まれる。核酸分子を細胞に送達するためのウイルスベクターは、よく知られており、例えば、ワクチンウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルスならびに種々のレトロウイルスに基づくウイルスベクターを含む。ウイルスゲノムに組み込まれたTCRコード配列は、ドナーT細胞におけるコード配列の発現のために必要であるプラスミド中の調節因子に作動可能に連結され得る。
【0041】
形質転換されたT細胞における核酸の発現時に、該形質転換された細胞は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定するために試験され得る。このような形質転換されたT細胞は、標準技術を使用して、同定し、サンプルから単離してもよい。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質を、固体支持体に付着させ、サンプルと接触させてもよい。次に、洗浄後に表面上に残るT細胞をさらに試験し、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定する。アフィニティー単離方法、例えば、カラム、細胞に結合する標識化されたタンパク質、細胞分別機技術も、種々に使用され得る。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞は、また、それらの反応性により、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを有するタンパク質の存在下で同定され得る。
【0042】
T細胞が粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞と同定されると、それは、細胞増殖および分裂を促進および維持する条件で組織培養技術を使用してクローン的に増殖させ、指数関数的な数の同一の細胞を生産してもよい。増殖されたT細胞の集団は、患者への投与のために回収され得る。
【0043】
抗CMA膜結合型融合タンパク質で形質転換されたT細胞
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、細胞ドナーからT細胞を単離すること、それを、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の機能性結合フラグメントおよび細胞、例えば、T細胞において発現するとき、タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分を含むCMA結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸分子で形質転換すること、および、該形質転換された細胞を培養して、形質転換されたT細胞の数を指数関数的に増大させ、このような複数の細胞を生産することにより得ることができる。
【0044】
細胞ドナーは、増殖された細胞の集団が投与される個体、すなわち自己細胞ドナーであり得る。あるいは、T細胞は、T細胞が投与される個体と異なる個体である細胞ドナーから得ることができる(すなわち同種T細胞)。同種T細胞が使用される場合、ドナーは、型が合うこと、すなわち、レシピエントと同じ、またはほぼ同じ白血球抗原のセットを発現すると同定されることが好ましい。
【0045】
T細胞は、細胞ドナーから、日常的な方法により、例えば、血液分画、特に末梢血単球細胞成分、または骨髄サンプルからの単離により得ることができる。
【0046】
T細胞が細胞ドナーから得られると、1つ以上のT細胞は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の機能性結合フラグメントおよび細胞、例えば、T細胞において発現するとき、タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分を含むCMA結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸で形質転換され得る。
【0047】
CMA結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸分子は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するB細胞を有する「抗体遺伝子ドナー」から粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するB細胞を単離することにより得ることができる。このような抗体遺伝子ドナーは、ワクチン接種以外の免疫原への暴露から生じる免疫応答のため、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するB細胞を有し得、または、このような抗体遺伝子ドナーは、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するB細胞の生産を誘導するワクチンを受けたもの、すなわちワクチンを接種された抗体遺伝的ドナーと同定され得る。ワクチンを接種された抗体遺伝的ドナーは、以前にワクチンを接種されていてもよく、または特に、T細胞をCMA結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸分子で形質転換すること、細胞数を増大すること、および増大された形質転換されたT細胞の集団を個体に投与することを含む方法における使用のために、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するこのようなB細胞を産生する目的の一環として、ワクチンを投与してもよい。
【0048】
抗体遺伝子ドナーは、形質転換されたT細胞のレシピエントである個体または形質転換されたT細胞のレシピエントである個体と異なる個体であり得る。抗体遺伝子ドナーは、細胞ドナーと同じ個体であり得、または抗体遺伝子ドナーは、細胞ドナーと異なる個体であり得る。いくつかの態様において、細胞ドナーは、形質転換されたT細胞のレシピエントであり、抗体遺伝子ドナーは、異なる個体である。いくつかの態様において、細胞ドナーは、抗体遺伝子ドナーと同じ個体であり、形質転換されたT細胞のレシピエントと異なる個体である。いくつかの態様において、細胞ドナーは、抗体遺伝子ドナーと同じ個体および形質転換されたT細胞のレシピエントと同じ個体である。
【0049】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するB細胞を誘導するために使用され得るワクチンの例は、本明細書に記載されているものならびに本明細書において出典明示により包含されている特許および公開された特許出願に記載されているものを含む。
【0050】
CMA結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸分子は、膜結合型タンパク質である発現されたタンパク質を提供するタンパク質配列に連結した、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の機能性結合フラグメントをコードするコード配列を含む。コード配列は、発現される単一の生産物をコードするように連結される。
【0051】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の機能性結合フラグメントをコードするコード配列は、抗体遺伝子ドナー由来のB細胞から単離され得る。このようなB細胞は得ることができ、遺伝情報は単離することができる。いくつかの態様において、B細胞は、抗体を発現し、したがって抗体コード配列を有するハイブリッド細胞を産生するために使用される。抗体コード配列は、CMA結合性膜結合型融合タンパク質を製造するために、決定され、クローニングされ、使用され得る。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の機能性フラグメントは、形質転換されたT細胞において発現されるとき、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに対する結合活性を保持するいくつか、または全ての抗体タンパク質を含み得る。
【0052】
膜結合型タンパク質であるように発現されたタンパク質を提供するタンパク質配列のコード配列は、膜結合型細胞タンパク質に由来し、膜貫通ドメイン、ならびに所望により少なくとも細胞質ドメインの一部、および/または細胞外ドメインの一部、ならびに発現されたタンパク質を細胞膜へ移行するためのシグナル配列を含む。
【0053】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するCMA結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸分子、すなわちCMA結合性膜結合型コード配列は、DNAまたはRNA分子であり得る。核酸分子は、ドナーT細胞におけるコード配列の発現のために必要な調節因子に作動可能に連結され得る。いくつかの態様において、CMA結合性膜結合型コード配列を含む核酸分子は、プラスミドDNA分子である。いくつかの態様において、CMA結合性膜結合型コード配列を含む核酸分子は、発現ベクターであるプラスミドDNA分子であって、該コード配列は、ドナーT細胞におけるCMA結合性膜結合型コード配列の発現のために必要であるプラスミド中の調節因子に作動可能に連結されているDNA分子である。いくつかの態様において、CMA結合性膜結合型コード配列を含む核酸分子は、ドナーT細胞に感染させるために使用されるウイルス粒子に組み込まれ得る。このような粒子を製造するためのパッケージング技術は知られている。粒子に組み込まれたコード配列は、ドナーT細胞におけるCMA結合性膜結合型コード配列の発現のために必要であるプラスミド中の調節因子に作動可能に連結され得る。いくつかの態様において、CMA結合性膜結合型コード配列を含む核酸分子は、ウイルスゲノムに組み込まれる。いくつかの態様において、ウイルスゲノムは、ドナーT細胞に感染させるために使用されるウイルス粒子に組み込まれる。核酸分子を細胞に送達するためのウイルスベクターは、よく知られており、例えば、ワクチンウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルスならびに種々のレトロウイルスに基づくウイルスベクターを含む。ウイルスゲノムに組み込まれたCMA結合性膜結合型コード配列は、ドナーT細胞におけるCMA結合性膜結合型コード配列の発現のために必要であるプラスミド中の調節因子に作動可能に連結され得る。
【0054】
形質転換された細胞における核酸の発現時に、該形質転換された細胞は、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定するために試験され得る。このような形質転換された細胞は、標準技術を使用して、同定し、サンプルから単離してもよい。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質を、固体支持体に付着させ、サンプルと接触させてもよい。次に、洗浄後に表面上に残るT細胞をさらに試験し、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定する。アフィニティー単離方法、例えば、カラム、細胞に結合する標識化されたタンパク質、細胞分別機技術も、種々に使用され得る。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞は、また、それらの反応性により粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを有するタンパク質の存在下で同定され得る。
【0055】
T細胞が粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞と同定されると、それは、細胞増殖および分裂を促進および維持する条件で組織培養技術を使用してクローン的に増殖させ、指数関数的な数の同一の細胞を生産してもよい。増殖されたT細胞の集団は、患者への投与のために回収され得る。
【0056】
ワクチン
ワクチンは、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに対する免疫応答を誘導するため、およびCMA結合性膜結合型融合タンパク質を製造するために有用なTCR遺伝子ドナーおよび/またはB細胞のドナーを生産するために使用され得る。CD4+ヘルパーエピトープは、広範囲にわたる免疫応答を誘導するために提供される。ワクチンの例は、限定はしないが、以下のワクチン技術を含む。
1)感染性ベクター介在ワクチン、例えば、組換えアデノウイルス、ワクシニア、ポックスウイルス、AAV、サルモネラおよびBCGであって、該ベクターは、感染性ベクターが個体に投与されるとき、キメラタンパク質が発現され、広範囲にわたる免疫応答を誘導するような、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープ、CD4+ヘルパーエピトープ、および所望により、分泌シグナルを含み、そして粘膜限定抗原を標的化するキメラタンパク質をコードする遺伝情報を有する;
2)DNAワクチン、すなわちワクチンであって、該DNAは、感染性ベクターが個体に投与されるとき、キメラタンパク質が発現され、広範囲にわたる免疫応答を誘導するような、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープ、CD4+ヘルパーエピトープ、および所望により、分泌シグナルを含み、そして粘膜限定抗原を標的化するキメラタンパク質をコードする;
3)死滅または不活化ワクチンであって、該ワクチンは、a)粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を示す死滅細胞または不活化ウイルス粒子のいずれかを含み、そしてb)個体に投与されるとき、粘膜限定抗原を標的化する免疫応答を誘導する;
4)ハプテン化された死滅または不活化ワクチンであって、該ワクチンは、a)粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を示す死滅細胞または不活化ウイルス粒子のいずれかを含み、b)さらなる免疫原性となるようにハプテン化され、そしてc)個体に投与されるとき、粘膜限定抗原を標的化する免疫応答を誘導する;
5)サブユニットワクチンであって、該ワクチンは、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を含む;ならびに
6)ハプテン化されたサブユニットワクチンであって、該ワクチンは、a)粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を含み、そしてb)さらなる免疫原性となるようにハプテン化される。
【0057】
粘膜限定タンパク質
粘膜限定タンパク質は、一般的に、粘膜の外側で発現されない。したがって、粘膜限定タンパク質は、粘膜の外側で存在するとき、免疫系の種々の成分の少なくともいくつかに対して免疫原性であるため、粘膜限定タンパク質を標的とする全身免疫応答が産生され得る。すなわち、それは免疫系が免疫応答を引き起こすことができない自己タンパク質ではない。一般的に、粘膜限定タンパク質は、正常粘膜ならびに粘膜細胞起源の癌細胞、またはそうでなければ粘膜細胞由来の癌細胞で発現される細胞タンパク質である。したがって、粘膜限定タンパク質に対する免疫応答は、粘膜限定タンパク質を発現する粘膜の外側の細胞、例えば、転移性癌細胞を認識し、攻撃する。一般的に、CD4+免疫応答は、粘膜限定タンパク質が粘膜の外側の組織または体液に導入されているとき、存在しないか、または有意に減少している。
【0058】
粘膜限定タンパク質のいくつかの例は、限定はしないが、通常、結腸直腸特異的タンパク質、例えば、グアニル酸シクラーゼC、CDX−1、CDX−2、スクラーゼイソマルターゼ、RELMベータ(FIZZ2)(Holcomb IN, Kabakoff RC, Chan B, Baker TW, Gurney A, Henzel W, Nelson C, Lowman HB, Wright BD, Skelton NJ, Frantz GD, Tumas DB, Peale FV, Jr., Shelton DL, Hebert CC. FIZZ1, a novel cysteine-rich secreted protein associated with pulmonary inflammation, defines a new gene family. EMBO J 2000;19:4046-55.);ビリン(腎臓粘膜においても見られる)(Wang Y, Srinivasan K, Siddiqui MR, George SP, Tomar A, Khurana S. A novel role for villin in intestinal epithelial cell survival and homeostasis. J Biol Chem 2008.)、A33(Johnstone CN, White SJ, Tebbutt NC, Clay FJ, Ernst M, Biggs WH, Viars CS, Czekay S, Arden KC, Heath JK. Analysis of the regulation of the A33 antigen gene reveals intestine-specific mechanisms of gene expression. J Biol Chem 2002;277:34531-9.)、ラクターゼ(ラクターゼ−フロリジンヒドロラーゼ)(Lee SY, Wang Z, Lin CK, Contag CH, Olds LC, Cooper AD, Sibley E. Regulation of intestine-specific spatiotemporal expression by the rat lactase promoter. J Biol Chem 2002; 277:13099-105.)、H(+)/ペプチド共輸送体1(PEPT1、SLC15A1)(Daniel H. Molecular and integrative physiology of intestinal peptide transport. Annu Rev Physiol 2004;66:361-84; Terada T, Inui K. Peptide transporters: structure, function, regulation and application for drug delivery. Curr Drug Metab 2004;5:85-94;およびShimakura J, Terada T, Shimada Y, Katsura T, Inui K. The transcription factor Cdx2 regulates the intestine-specific expression of human peptide transporter 1 through functional interaction with Sp1. Biochem Pharmacol 2006;71:1581-8.);インテクチン(Kitazawa H, Nishihara T, Nambu T, Nishizawa H, Iwaki M, Fukuhara A, Kitamura T, Matsuda M, Shimomura I. Intectin, a novel small intestine-specific glycosylphosphatidylinositol-anchored protein, accelerates apoptosis of intestinal epithelial cells. J Biol Chem 2004; 279:42867-74.);および炭酸脱水酵素 (Drummond F, Sowden J, Morrison K, Edwards YH. The caudal-type homeobox protein Cdx-2 binds to the colon promoter of the carbonic anhydrase 1 gene. Eur J Biochem 1996; 236:670-81.)を含む細胞タンパク質である。
【0059】
粘膜限定タンパク質のいくつかの例は、限定はしないが、通常、乳房特異的タンパク質、例えば、マンマグロビン(Watson MA, Fleming TP. Mammaglobin, a mammary-specific member of the uteroglobin gene family, is overexpressed in human breast cancer. Cancer Res 1996;56:860-5; Berger J, Mueller-Holzner E, Fiegl H, Marth C, Daxenbichler G. Evaluation of three mRNA markers for the detection of lymph node metastases. Anticancer Res 2006; 26:3855-60; Fleming TP, Watson MA. Mammaglobin, a breast-specific gene, and its utility as a marker for breast cancer. Ann N Y Acad Sci 2000;923:78-89.);B726Pおよび小乳房上皮性ムチン(SBEM)(Miksicek RJ, Myal Y, Watson PH, Walker C, Murphy LC, Leygue E. Identification of a novel breast- and salivary gland-specific, mucin-like gene strongly expressed in normal and tumor human mammary epithelium. Cancer Res 2002;62:2736-40.)を含む細胞タンパク質である。
【0060】
粘膜限定タンパク質のいくつかの例は、限定はしないが、通常、肺特異的タンパク質、例えば、LUNX(Iwao K, Watanabe T, Fujiwara Y, Takami K, Kodama K, Higashiyama M, Yokouchi H, Ozaki K, Monden M, Tanigami A. Isolation of a novel human lung-specific gene, LUNX, a potential molecular marker for detection of micrometastasis in non-small-cell lung cancer. Int J Cancer 2001;91:433-7;およびCheng M, Chen Y, Yu X, Tian Z, Wei H. Diagnostic utility of LunX mRNA in peripheral blood and pleural flu id in patients with primary non-small cell lung cancer. BMC Cancer 2008;8:156.)およびTSC403(Ozaki K, Nagata M, Suzuki M, Fujiwara T, Ueda K, Miyoshi Y, Takahashi E, Nakamura Y. Isolation and characterization of a novel human lung-specific gene homologous to lysosomal membrane glycoproteins 1 and 2: significantly increased expression in cancers of various tissues. Cancer Res 1998; 58:3499-503.)を含む細胞タンパク質である。
【0061】
CD4+Tヘルパーエピトープ
CD4+ヘルパーエピトープ中、ワクチンの製造において有用であり得るものは、MHCクラスII HLA血清型HLA−DP、HLA−DQおよびHLA−DRと複合体を形成する物である。一般的に、自己分子は、MHCクラスII HLAと複合体を形成せず、次に複合体がCD4+T細胞受容体に結合する。したがって、CD4+ヘルパーエピトープは、一般的に異なる種、最も一般的には病原性種に由来する。いくつかの型のMHCクラスII HLAと複合体を形成し、次に複合体がCD4+T細胞受容体に結合するCD4+ヘルパーエピトープは、ユニバーサルCD4+ヘルパーエピトープと称される。
【0062】
それぞれの血清型内で、それぞれの血清型のいくつかの型がある。MHCクラスII分子は、ヘテロダイマー複合体である。HLA−DPは、HLA−DPA1遺伝子座(約23個の対立遺伝子)によってコードされるα鎖およびHLA−DPB1遺伝子座(約127個の対立遺伝子)によってコードされるβ鎖を含む。したがって、HLA−DPについて約2552個の組合せがある。HLA−DQは、HLA−DQA1遺伝子座(約34個の対立遺伝子)によってコードされるα鎖およびHLA−DQB1遺伝子座(約86個の対立遺伝子)によってコードされるβ鎖を含む。したがって、HLA−DQについて約1708個の組合せがある。HLA−DRは、HLA−DRA遺伝子座(約3個の対立遺伝子)によってコードされるα鎖およびHLA−DRB1(約577個の対立遺伝子)、DRB3、DRB4、DRB5遺伝子座(約72個の対立遺伝子)によってコードされる4つの(4)β鎖(これについて、あらゆる人が、一人当たり3個の可能性があり得る)を含む。したがって、HLA−DRについて約1398個の組合せがある。HLA−DRの約16個の共通の型(DR1−DR16)がある。
【0063】
個体は、いくつかの型を発現するが、他のものを発現しない。一般的に、個体は、特定の個体により発現される多数のHLA型および組合せを有するが、恐らく唯一でなく、全体として集団のサブセットを定義する。個体により発現される型の同一性は、よく知られている、および広く利用できる技術を使用して、日常的に解明され得る。したがって、個体は、どの型を発現し、したがってどの型の免疫応答に関与するか決定するように「分類され」得る。
【0064】
特定のCD4+ヘルパーエピトープは、1つの個体上に存在するが別の個体上に存在しないHLAクラスII分子により認識され得る。したがって、有効なCD4+ヘルパーエピトープを有する製品は、製品が個体のCD4+T細胞上で発現されるHLA型により認識されるCD4+ヘルパーエピトープを含むように、個体に対して合わせなければならない。したがって、個体は、呈示するMHCクラスII型を決定して分類し、次に、多数のCD4+ヘルパーエピトープ、例えば、個体により発現されるHLA型により認識される1つ以上のもののいずれかを含むワクチン、または、個体により発現されるHLA型により認識されるCD4+ヘルパーエピトープを含む、すなわち個体に合わせられているワクチンを投与され得る。
【0065】
あるいは、ワクチン製品は、全ての、または多数のHLA型により認識されるCD4エピトープを集合的に有する複数の種々のキメラタンパク質を含み得、したがって少なくとも1つが任意の与えられる個体において有効である可能性が高まる。同様に、ワクチン製品は、全ての、または多数のHLA型により認識されるCD4エピトープを集合的に有する種々のキメラタンパク質をコードする複数の種々のキメラタンパク質を含み得、したがって、個体に投与され、発現されるとき、少なくとも1つが任意の与えられる個体において有効である可能性が高まる。
【0066】
したがって、ワクチンは、個体に合わせるか、または与えられる個体のCD4+T細胞上に発現されるHLA型による認識を確実にするために十分な数の種々のCD4+ヘルパーエピトープを含むいずれかである。
【0067】
HLA型を合わせる必要性の除去および複数の可能性のある合うものを投与する必要性の除去を可能にする代替アプローチは、ユニバーサルCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を含むワクチン製品またはユニバーサルCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子を提供する。ユニバーサルCD4+ヘルパーエピトープは、多数のHLA型に合い、したがって多数のHLA型により認識されるペプチド配列である。
【0068】
ユニバーサルCD4+ヘルパーエピトープの例は、PADREである。PADREペプチドは、HLA−DRの最も一般的な型の16個の少なくとも15個と複合体を形成する。ヒトは少なくとも1つのDRを有し、PADREはその型中の多くに結合するため、PADREは多数のヒトにおいて有効である可能性が高い。いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、ユニバーサルHLA−DRエピトープPADRE(KXVAAWTLKA)由来である(Alexander, J, delGuercio, MF, Maewal, A, Qiao L, Fikes J, Chestnut RW, Paulson J, Bundle DR, DeFrees S, and Sette A, Linear PADRE T Helper Epitope and Carbohydrate B Cell Epitope Conjugates Induce Specific High Titer IgG Antibody Responses, J. Immunol, 2000 Feb 1, 164(3):1625-33; Wei J, Gao W, Wu J, Meng K, Zhang J, Chen J, Miao Y. Dendritic Cells Expressing a Combined PADRE/MUC4-Derived Polyepitope DNA Vaccine Induce Multiple Cytotoxic T-Cell Responses. Cancer Biother Radiopharm 2008, 23:121-8; Bargieri DY, Rosa DS, Lasaro MA, Ferreira LC, Soares IS, Rodrigues MM. Adjuvant requirement for successful immunization with recombinant derivatives of Plasmodium vivax merozoite surface protein-1 delivered via the intranasal route. Mem Inst Oswaldo Cruz 2007, 102:313-7; Rosa DS, Iwai LK, Tzelepis F, Bargieri DY, Medeiros MA, Soares IS, Sidney J, Sette A, Kalil J, Mello LE, Cunha-Neto E, Rodrigues MM. Immunogenicity of a recombinant protein containing the Plasmodium vivax vaccine candidate MSP1(19) and two human CD4+ T-cell epitopes administered to non-human primates (Callithrix jacchus jacchus). Microbes Infect 2006, 8:2130-7; Zhang X, Issagholian A, Berg EA, Fishman JB, Nesburn AB, BenMohamed L. Th-cytotoxic T-lymphocyte chimeric epitopes extended by Nepsilon-palmitoyl lysines induce herpes simplex virus type 1-specific effector CD8+ Tc1 responses and protect against ocular infection. J Virol 2005; 79:15289-301 and Agadjanyan MG, Ghochikyan A, Petrushina I, Vasilevko V, Movsesyan N, Mkrtichyan M, Saing T, Cribbs DH. Prototype Alzheimer's disease vaccine using the immunodominant B cell epitope from beta-amyloid and promiscuous T cell epitope pan HLA DR-binding peptide. J Immunol 2005; 174:1580-6)。
【0069】
ユニバーサルCD4+ヘルパーエピトープ、例えば、PADREおよび他のものは、Setteらによる1998年4月7日取得米国特許第5,736,142号;Setteらによる2002年7月2日取得米国特許第6,413,935号;およびSetteらによる2007年4月10日取得米国特許第7,202,351号に記載されている。いくつかのDR型に結合することが報告されている他のペプチドは、Buschら Int. Immunol. 2, 443-451 (1990); Panina-Bordignonら Eur. J. Immunol. 19, 2237-2242 (1989); Sinigaglia et al., Nature 336, 778-780 (1988); O'Sullivanら J. Immunol. 147, 2663-2669 (1991) Roacheら J. Immunol. 144, 1849-1856 (1991);およびHillら J. Immunol. 147, 189-197 (1991)に記載されているものを含む。さらに、Setteらによる2002年7月2日取得米国特許第6,413,517号は、広範に反応性のDR限定エピトープの同定を記載している。
【0070】
粘膜限定抗原−融合パートナーとしての使用のためのCD4+T細胞エピトープが由来し得る多数の既知の候補タンパク質がある。本明細書において提供されるものは、このようなCD4+T細胞エピトープを含むタンパク質の例である種々のタンパク質および種々のペプチドの例である。これらのタンパク質およびペプチドは、CD4+T細胞エピトープの非限定的な例であることが意図される。
【0071】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、破傷風毒素に由来し得る(Renard V, Sonderbye L, Ebbehoj K, Rasmussen PB, Gregorius K, Gottschalk T, Mouritsen S, Gautam A, Leach DR. HER-2 DNA and protein vaccines containing potent Th cell epitopes induce distinct protective and therapeutic antitumor responses in HER-2 transgenic mice. J Immunol 2003;171:1588-95; Moro M, Cecconi V, Martinoli C, Dallegno E, Giabbai B, Degano M, Glaichenhaus N, Protti MP, Dellabona P, Casorati G. Generation of functional HLA-DR*1101 tetramers receptive for loading with pathogen- or tumour-derived synthetic peptides. BMC Immunol 2005;6:24; BenMohamed L, Krishnan R, Longmate J, Auge C, Low L, Primus J, Diamond DJ. Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H) response. Hum Immunol 2000;61:764-79;およびJames EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、インフルエンザヘマグルチニンに由来し得る(Moro M, Cecconi V, Martinoli C, Dallegno E, Giabbai B, Degano M, Glaichenhaus N, Protti MP, Dellabona P, Casorati G. Generation of functional HLA-DR*1101 tetramers receptive for loading with pathogen- or tumour-derived synthetic peptides. BMC Immunol 2005;6:24)。
【0072】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、B型肝炎表面抗原(HBsAg)に由来し得る(Litjens NH, Huisman M, Baan CC, van Druningen CJ, Betjes MG. Hepatitis B vaccine-specific CD4(+) T cells can be detected and characterised at the single cell level: limited usefulness of dendritic cells as signal enhancers. J Immunol Methods 2008;330:1-11)。
【0073】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、細菌性病原体(例えば、アナプラズマ・マージナーレ(Anaplasma marginale))の外膜タンパク質(OMP)に由来し得る(Macmillan H, Norimine J, Brayton KA, Palmer GH, Brown WC. Physical linkage of naturally complexed bacterial outer membrane proteins enhances immunogenicity. Infect Immun 2008;76:1223-9)。いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、エンテロウイルス71(EV71)株41由来のVP1カプシドタンパク質に由来し得る(Wei Foo DG, Macary PA, Alonso S, Poh CL. Identification of Human CD4(+) T-Cell Epitopes on the VP1 Capsid Protein of Enterovirus 71. Viral Immunol 2008)。いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、EBV BMLF1に由来し得る(Schlienger K, Craighead N, Lee KP, Levine BL, June CH. Efficient priming of protein antigen-specific human CD4(+) T cells by monocyte-derived dendritic cells. Blood 2000;96:3490-8; Neidhart J, Allen KO, Barlow DL, Carpenter M, Shaw DR, Triozzi PL, Conry RM. Immunization of colorectal cancer patients with recombinant baculovirus-derived KSA (Ep-CAM) formulated with monophosphoryl lipid A in liposomal emulsion, with and without granulocyte-macrophage colony-stimulating factor. Vaccine 2004;22:773-80; Piriou ER, van Dort K, Nanlohy NM, van Oers MH, Miedema F, van Baarle D. Novel method for detection of virus-specific CD4+ T cells indicates a decreased EBV-specific CD4+ T cell response in untreated HIV-infected subjects. Eur J Immunol 2005;35:796-805; Heller KN, Upshaw J, Seyoum B, Zebroski H, Munz C. Distinct memory CD4+ T-cell subsets mediate immune recognition of Epstein Barr virus nuclear antigen 1 in healthy virus carriers. Blood 2007;109:1138-46)。
【0074】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、EBV LMP1に由来し得る(Kobayashi H, Nagato T, Takahara M, Sato K, Kimura S, Aoki N, Azumi M, Tateno M, Harabuchi Y, Celis E. Induction of EBV-latent membrane protein 1-specific MHC class II-restricted T-cell responses against natural killer lymphoma cells. Cancer Res 2008;68:901-8)。
【0075】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、HIV p2437に由来し得る(Pajot A, Schnuriger A, Moris A, Rodallec A, Ojcius DM, Autran B, Lemonnier FA, Lone YC. The Th1 immune response against HIV-1 Gag p24-derived peptides in mice expressing HLA-A02.01 and HLA-DR1. Eur J Immunol 2007;37:2635-44)。
【0076】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、アデノウイルスのヘキソンタンパク質に由来し得る(Leen AM, Christin A, Khalil M, Weiss H, Gee AP, Brenner MK, Heslop HE, Rooney CM, Bollard CM. Identification of hexon-specific CD4 and CD8 T-cell epitopes for vaccine and immunotherapy. J Virol 2008;82:546-54)。ワクシニアウイルスタンパク質からの多数のMHC−IIハプロタイプに対する>30個の同定されたCD4+T細胞エピトープ(Calvo-Calle JM, Strug I, Nastke MD, Baker SP, Stern LJ. Human CD4+ T cell epitopes from vaccinia virus induced by vaccination or infection. PLoS Pathog 2007;3:1511-29)および24個の種々のワクシニアタンパク質からの多数のMHC−IIハプロタイプに対する>25個の同定されたCD4+T細胞エピトープがある。
【0077】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、熱ショックタンパク質に由来する(Liu DW, Tsao YP, Kung JT, Ding YA, Sytwu HK, Xiao X, Chen SL. Recombinant adeno-associated virus expressing human papillomavirus type 16 E7 peptide DNA fused with heat shock protein DNA as a potential vaccine for cervical cancer. J Virol 2000;74:2888-94.)。
【0078】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、IgGのFc部分に由来する(You Z, Huang XF, Hester J, Rollins L, Rooney C, Chen SY. Induction of vigorous helper and cytotoxic T cell as well as B cell responses by dendritic cells expressing a modified antigen targeting receptor-mediated internalization pathway. J Immunol 2000;165:4581-91)。
【0079】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、リソソーム膜タンパク質に由来する(Su Z, Vieweg J, Weizer AZ, Dahm P, Yancey D, Turaga V, Higgins J, Boczkowski D, Gilboa E, Dannull J. Enhanced induction of telomerase-specific CD4(+) T cells using dendritic cells transfected with RNA encoding a chimeric gene product. Cancer Res 2002;62:5041-8)。
【0080】
いくつかの態様において、CD4+T細胞エピトープは、破傷風毒素由来のTヘルパーエピトープに由来する(Renard V, Sonderbye L, Ebbehoj K, Rasmussen PB, Gregorius K, Gottschalk T, Mouritsen S, Gautam A, Leach DR. HER-2 DNA and protein vaccines containing potent Th cell epitopes induce distinct protective and therapeutic antitumor responses in HER-2 transgenic mice. J Immunol 2003;171:1588-95)。
【0081】
HLAハプロタイプのサンプルならびに示されるHLA分子に対する典型的なCD4+T細胞エピトープは、限定はしないが、以下のものを含む:
HLA−DR*1101−破傷風菌トキソイドペプチド残基829−844、血球凝集素ペプチド残基306−318(Moro M, Cecconi V, Martinoli C, Dallegno E, Giabbai B, Degano M, Glaichenhaus N, Protti MP, Dellabona P, Casorati G. Generation of functional HLA-DR*1101 tetramers receptive for loading with pathogen- or tumour-derived synthetic peptides. BMC Immunol 2005;6:24)。
【0082】
HLA−DRB1*0101(DR1)−破傷風菌トキソイドペプチド残基639−652、830−843または947−967および14個の他の破傷風菌トキソイドペプチド(BenMohamed L, Krishnan R, Longmate J, Auge C, Low L, Primus J, Diamond DJ. Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H) response. Hum Immunol 2000;61:764-79;およびJames EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。
【0083】
HLA−DRB1*0301−EV71 VP1残基145−159または247−261および5個の種々の破傷風菌トキソイドペプチド(Wei Foo DG, Macary PA, Alonso S, Poh CL. Identification of Human CD4(+) T-Cell Epitopes on the VP1 Capsid Protein of Enterovirus 71. Viral Immunol 2008;およびJames EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。
【0084】
HLA−DRB1*0405−EV71 VP1残基145−159または247−261(Wei Foo DG, Macary PA, Alonso S, Poh CL. Identification of Human CD4(+) T-Cell Epitopes on the VP1 Capsid Protein of Enterovirus 71. Viral Immunol 2008)。
【0085】
HLA−DRB1*1301−EV71 VP1残基145−159または247−261(Wei Foo DG, Macary PA, Alonso S, Poh CL. Identification of Human CD4(+) T-Cell Epitopes on the VP1 Capsid Protein of Enterovirus 71. Viral Immunol 2008)。
【0086】
HLA−DR9−エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr virus)(EBV)潜伏膜タンパク質1(LMP1)残基159−175(Kobayashi H, Nagato T, Takahara M, Sato K, Kimura S, Aoki N, Azumi M, Tateno M, Harabuchi Y, Celis E. Induction of EBV-latent membrane protein 1-specific MHC class II-restricted T-cell responses against natural killer lymphoma cells. Cancer Res 2008;68:901-8)。
【0087】
HLA−DR53−EBV LMP1残基159−175(Kobayashi H, Nagato T, Takahara M, Sato K, Kimura S, Aoki N, Azumi M, Tateno M, Harabuchi Y, Celis E. Induction of EBV-latent membrane protein 1-specific MHC class II-restricted T-cell responses against natural killer lymphoma cells. Cancer Res 2008;68:901-8)。
【0088】
HLA−DR15−EBV LMP1残基159−175(Kobayashi H, Nagato T, Takahara M, Sato K, Kimura S, Aoki N, Azumi M, Tateno M, Harabuchi Y, Celis E. Induction of EBV-latent membrane protein 1-specific MHC class II-restricted T-cell responses against natural killer lymphoma cells. Cancer Res 2008;68:901-8)。
【0089】
HLA−DRB1*0401−15個の種々の破傷風菌トキソイドペプチド(James EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。
【0090】
HLA−DRB1*0701−9個の種々の破傷風菌トキソイドペプチド(James EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。
【0091】
HLA−DRB1*1501−7個の種々の破傷風菌トキソイドペプチド(James EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。
【0092】
HLA−DRB5*0101−8個の種々の破傷風菌トキソイドペプチド(James EA, Bui J, Berger D, Huston L, Roti M, Kwok WW. Tetramer-guided epitope mapping reveals broad, individualized repertoires of tetanus toxin-specific CD4+ T cells and suggests HLA-based differences in epitope recognition. Int Immunol 2007;19:1291-301)。
【0093】
分泌シグナル
分泌された抗原は、筋肉内免疫化後により強力なCD4、CD8および抗体応答を誘導する(Boyle JS, Koniaras C, Lew AM. Influence of cellular location of expressed antigen on the efficacy of DNA vaccination: cytotoxic T lymphocyte and antibody responses are suboptimal when antigen is cytoplasmic after intramuscular DNA immunization. Int Immunol 1997;9:1897-906;およびQiu JT, Liu B, Tian C, Pavlakis GN, Yu XF. Enhancement of primary and secondary cellular immune responses against human immunodeficiency virus type 1 gag by using DNA expression vectors that target Gag antigen to the secretory pathway. J Virol 2000;74:5997-6005)。
【0094】
一般的に、免疫応答を誘導し、分泌シグナルを含む粘膜限定タンパク質を認識するT細胞およびB細胞を生産するために使用されるワクチンは、分泌シグナルのコード配列が、発現されるとき、分泌シグナルを含む融合タンパク質の生産をもたらすキメラ遺伝子の一部である核酸ベースのワクチンを含むものであり得る。このような融合タンパク質の分泌シグナルの存在は、発現されたタンパク質の輸送および分泌をもたらす。いくつかの態様において、分泌シグナルは、細胞からタンパク質の分泌時に、1つ以上の粘膜限定抗原エピトープおよび1つ以上のCD4+ヘルパーTエピトープを含む融合タンパク質の残りから削除され得る。いくつかの態様において、1つ以上の粘膜限定抗原エピトープおよび1つ以上のCD4+ヘルパーTエピトープを含む融合タンパク質は、無傷な分泌シグナルと共に細胞から分泌される。
【0095】
分泌シグナルは、よく知られており、融合タンパク質および他の組換えタンパク質において広く使用されている。当業者は、容易に、ワクチンが投与される種において機能性である既知の分泌シグナルを選択し、機能性分泌シグナル、1つ以上の粘膜限定抗原エピトープおよび1つ以上のCD4+ヘルパーTエピトープを含む融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子を設計し得る。
【0096】
分泌シグナルおよびそれらの設計の例は、vonHeijne G 1985 Signal sequences: the limits of variation J Mol Biol 184:99およびgeneral vonHeijne G 1990 Protein Targeting Signals Curr Opin Cell Biol 6:604に記載されている。さらに、Kuchler K and J Thorner 1992 Secretion of Peptides and Proteins Lacking Hydrophobic Signal Sequences: The Role of Adenosine Triphosphate-Driven Membrane Translocators Endocrine Reviews 13(3)499-514は、タンパク質が分泌され得るさらなるメカニズムを記載している。
【0097】
いくつかの態様において、粘膜限定抗原は、膜結合型細胞タンパク質由来である。膜結合型細胞タンパク質は、しばしば、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。1つ以上のCD4+Tヘルパーエピトープに連結した粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープを含むワクチンにおいて、粘膜限定抗原のエピトープは、いくつかの、または全ての細胞外ドメイン、一般的に不完全な膜貫通ドメインを含み、細胞質ドメインを含まない。このような融合タンパク質は、細胞外ドメインが膜を介して移行するように輸送されるが、膜貫通ドメインは、存在する限り、タンパク質が細胞から放出されるような完全に機能性ではない。
【0098】
核酸ベースのワクチン
粘膜限定タンパク質の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞およびB細胞を含む免疫応答を誘導するために有用ないくつかのワクチンは、個体に投与され、それにより、核酸分子は個体の細胞により取り込まれ、発現され、核酸分子によってコードされるタンパク質を生産する核酸分子を含む。個体自身の細胞内でタンパク質を生産することにより、タンパク質は、細胞性免疫応答を確保するように処理され、標的免疫原に対する広くより有効な免疫応答を生産することができる。
【0099】
感染性ベクター介在ワクチンおよびDNAワクチンは、個体に投与される核酸分子を含むワクチンである。感染性ベクター介在ワクチンおよびDNAワクチンは、キメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子を含む核酸分子を含む。キメラ遺伝子は、キメラタンパク質がワクチンの核酸分子を取り込む少なくともいくつかの細胞において生産できるように、細胞において機能性である調節因子に作動可能に連結している。
【0100】
キメラタンパク質は、1)粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープ、2)CD4+ヘルパーエピトープ、および所望により、3)分泌シグナルを含む。このような態様において、核酸分子は、ワクチンが投与される個体における細胞に導入され、そこでそれらは発現され、細胞においてキメラタンパク質を生産する。キメラタンパク質の細胞内生産は、広範囲にわたる免疫応答を引き起こす。いくつかの態様において、キメラは、キメラタンパク質が分泌シグナルを含むように分泌シグナルをさらにコードする。分泌シグナルを含むキメラタンパク質は、分泌用の細胞により処理される。キメラタンパク質配列の分泌は、免疫系プロセスおよびより広範囲にわたる免疫応答のさらなる関わりをもたらす。
【0101】
感染ベクターは、一般的に、組換え感染性ベクターを示す。細胞内でのタンパク質生産は、広範囲にわたる免疫応答の局面に関与する細胞内プロセスを確保するために有用であるため、細胞に感染し、細胞内でタンパク質を生産するウイルスベクターおよび他のベクターは、特に有効である。同様に、DNAワクチンは、DNA分子、通常プラスミドが、ワクチン接種を受けた個体における細胞により取り込まれるように設計される。細胞内に生産されるタンパク質配列は、例えば、T細胞受容体へのMHC分子によるエピトープの呈示を介して、細胞性免疫応答の産生において標的として使用され得る。
【0102】
組換え感染性ベクターおよび技術の例は、感染性ベクター介在ワクチン、例えば、組換えアデノウイルス、AAVワクシニア、サルモネラおよびBCGを含む。それぞれの場合において、ベクターは、キメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子を有する。
【0103】
上記のとおり、核酸ベースのワクチンの利点は、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープを含むタンパク質の細胞内生産である。タンパク質は、細胞内でプロセッシングされ、細胞性免疫系を保証する様式で与えられ得、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープを呈示する細胞に向けられた細胞毒性T細胞を含む細胞性免疫応答をもたらす。
【0104】
CD4+ヘルパーエピトープの存在は、キメラタンパク質上に存在する粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに向けられた免疫応答におけるCD4+免疫細胞の確保を提供する。CD4+ヘルパーエピトープなしで、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに対する免疫応答は、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに特異的なCD4+免疫細胞の欠如により限定され得る。粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープと共にCD4+ヘルパーエピトープが提供されることにより、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに対する免疫応答は、個体のCD4+免疫細胞により認識され、応答を引き起こすことができるCD4+ヘルパーエピトープの同時確保によって、広くより完全であり得る。したがって、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープの組合せを有するキメラタンパク質は、CD4+ヘルパーエピトープなしで粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープにより引き起こされる免疫応答と比較して、さらにより有効な免疫応答をもたらす。
【0105】
任意のシグナル配列を含むことは、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープで指向される免疫応答のさらなる増強を提供し得る。キメラタンパク質中にシグナル配列を含むことは、細胞からおよび細胞外環境へのキメラタンパク質の輸送および分泌を容易にし、そこで、キメラタンパク質のエピトープは、それらを認識することができる免疫細胞を確保することができる。この確保は、より広くより有効な免疫応答を引き起こし得、シグナル配列に関するキメラ遺伝子上のコード配列の存在により有意に容易にされる。一般的に、細胞内でこのような構築物から生産されたキメラタンパク質は、分泌プロセスの一部として除去されるシグナル配列を有し、したがってシグナル配列をもはや含まないキメラタンパク質の成熟形態を分泌する。
【0106】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープ、CD4+ヘルパーエピトープ、および所望により、分泌シグナルを含むキメラタンパク質は、感染性ベクターにより感染された細胞において生産される。粘膜限定抗原エピトープの存在は、免疫応答に対する標的として働く。CD4+ヘルパーエピトープは、CD4+細胞介在免疫応答の確保をもたらす。分泌シグナルは、細胞からのタンパク質の分泌を容易にし、その存在を細胞外に提供し、そこでそれは免疫応答の種々の局面と関連する種々のプロセスに対する標的として働くことができる。
【0107】
1つ以上の粘膜限定抗原エピトープは、粘膜限定抗原の完全長形態または切断形態の一部であり得る。いくつかの粘膜限定抗原は、シグナル配列を含む。したがって、1つ以上の粘膜限定抗原エピトープは、粘膜限定抗原のシグナル配列を含む粘膜限定抗原の完全長形態または切断形態の一部であり得る。キメラタンパク質の発現が、CD4+ヘルパーエピトープおよび1つ以上の粘膜限定抗原エピトープ、例えば、粘膜限定抗原の完全長形態または切断形態を含む成熟キメラタンパク質の分泌をもたらすように、CD4+ヘルパーエピトープのコード配列は、1つ以上の粘膜限定抗原エピトープ、例えば、粘膜限定抗原の完全長形態または切断形態のコード配列へシグナル配列を用いて連結され得る。
【0108】
DNAワクチンは、米国特許第5,580,859、5,589,466、5,593,972、5,693,622号およびPCT/US90/01515(これらは出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。他のものは、リポソーム介在DNA移動、微粒子銃を使用するDNA送達の使用を教示している(Sanfordらによる1990年7月31日取得米国特許第4,945,050号(これは出典明示により本明細書に包含させる))。それぞれの場合において、DNAは、細菌において生産され、単離され、処置される動物に投与されるプラスミドDNAであり得る。プラスミドDNA分子は、動物の細胞により取り込まれ、そこで興味あるタンパク質をコードする配列は発現される。したがって、生産されるタンパク質は、動物における治療または予防効果を提供する。
【0109】
個体における治療的および/または予防的免疫学的効果を生産するために、核酸分子を個体の細胞へ送達するウイルスベクターを含むベクターおよび他の手段の使用は、同様によく知られている。ワクシニアベクターを使用する組換えワクチンは、例えば、Stunnenbergらによる1991年5月21日取得米国特許第5,017,487号(これは出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。ポックスウイルスを使用する組換えワクチンは、例えば、米国特許第5,744,141、5,744,140、5,514,375、5,494,807、5,364,773および5,204,243号(これらは出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。アデノウイルス関連ウイルスを使用する組換えワクチンは、例えば、米国特許第5,786,211、5,780,447、5,780,280、5,658,785、5,474,935、5,354,678および4,797,368号(これらは出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。アデノウイルス関連ウイルスを使用する組換えワクチンは、例えば、米国特許第5,585,362、5,670,488、5,707,618および5,824,544号(これらは出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。
【0110】
死滅または不活化ワクチン
ワクチンの他の形態は、ハプテン化されているか、またはハプテン化されていない死滅または不活化ワクチンを含む。死滅または不活化ワクチンは、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を示す死滅細胞または不活化ウイルス粒子を含み得る。個体に投与されるとき、死滅または不活化ワクチンは、粘膜限定抗原を標的化する免疫応答を誘導する。いくつかの死滅または不活化ワクチンは、ハプテン化されている。すなわち、それらは、その存在が粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに対する免疫応答を含む死滅または不活化ワクチンに対する免疫応答を増加させるさらなる成分、ハプテンを含む。ハプテン化された死滅または不活化ワクチンは、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を示す死滅細胞または不活化ウイルス粒子のいずれかを含み、ハプテン化されている死滅または不活化ワクチンを含む。死滅または不活化ワクチン、または、ハプテン化された死滅または不活化ワクチンを個体に投与されたとき、粘膜限定抗原を標的化する免疫応答が誘導される。
【0111】
いくつかの態様において、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含む細胞を提供する。いくつかの態様において、細胞はヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は非ヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は細菌細胞である。いくつかの態様において、細胞はヒト癌細胞である。細胞は死滅されていてもよい。
【0112】
タンパク質ベースのワクチン
ワクチンの他の形態は、ハプテン化されたサブユニットワクチンを含むサブユニットワクチンを含む。サブユニットワクチンは、一般的に、免疫応答が望まれる免疫原性標的を含む単一のタンパク質またはタンパク質複合体を示す。サブユニットワクチンは、本明細書において、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4+ヘルパーエピトープを含むキメラタンパク質を含む。サブユニットワクチンは、タンパク質をさらに免疫原性にするためにハプテン化され得る。すなわち、ハプテン化は、粘膜限定抗原の1つ以上のエピトープに対する増強された免疫応答をもたらす。
【0113】
サブユニットワクチンの製造および使用はよく知られている。当業者は、粘膜限定抗原またはそのフラグメントに連結したCD4+ヘルパーエピトープをコードする核酸分子を単離することができる。単離されると、標準技術を使用して、核酸分子を発現ベクターに挿入することができ、容易に出発物質として利用できる。粘膜限定抗原またはそのフラグメントに連結したCD4+ヘルパーエピトープを含むタンパク質を単離することができる。
【0114】
組換え発現ベクターは、粘膜限定抗原またはそのフラグメントに連結したCD4+ヘルパーエピトープをコードする核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本明細書において使用される「組換え発現ベクター」なる用語は、適当な宿主に導入されるとき、タンパク質をコードするコード配列の発現を指向するために必要な遺伝因子を含む、プラスミド、ファージ、ウイルス粒子または他のベクターを示すことを意図する。コード配列は、必要な調節配列に作動可能に連結している。発現ベクターはよく知られており、容易に利用できる。発現ベクターの例は、プラスミド、ファージ、ウイルスベクターおよび宿主細胞を形質転換させ、コード配列の発現を容易にするために有用なビヒクルを含む他の核酸分子または核酸分子を含む。本発明の組換え発現ベクターは、本発明の単離されたタンパク質を製造するための組換え発現系を製造するために、宿主を形質転換するために有用である。
【0115】
いくつかの態様は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞に関する。タンパク質の生産のためのよく知られている組換え発現系における使用のための宿主細胞は、よく知られており、容易に利用できる。宿主細胞の例は、細菌細胞、例えば、大腸菌、酵母細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)、昆虫細胞、例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(S. frugiperda)、非ヒト哺乳動物組織培養細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびヒト組織培養細胞、例えば、HeLa細胞を含む。いくつかの態様において、例えば、よく知られている技術を使用して、当業者は、これらの発現系または他のよく知られている発現系における使用のための市販の発現ベクターにこのようなDNA分子を挿入することができる。
【0116】
いくつかの態様は、ワクチン組成物において使用されるタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。組換えタンパク質を生産するために有用なトランスジェニック非ヒト哺乳動物、トランスジェニック動物を産生するために必要な発現ベクターおよび産生するための技術は、よく知られている。一般的に、トランスジェニック動物は、粘膜限定抗原またはそのフラグメントに連結したCD4+ヘルパーエピトープをコードするヌクレオチド配列が、乳房細胞特異的プロモーターに作動可能に連結しており、それによりコード配列は乳房細胞においてのみ発現され、発現された組換えタンパク質は畜乳から回収される、組換え発現ベクターを含む。当業者は、標準技術、例えば、Wagnerによる1989年10月10日取得米国特許第4,873,191号およびLederによる1988年4月12日取得米国特許第4,736,866号(これら両方を出典明示により本明細書に包含させる)に教示されているものを使用して、ワクチンの製造に、またはワクチンの製造のために有用であり得るタンパク質を生産するトランスジェニック動物を生産することができる。動物の例は、ヤギおよび齧歯動物、特にラットおよびマウスである。
【0117】
組換え技術によりこれらのタンパク質を生産することに加えて、自動ペプチド合成装置を、また、粘膜限定抗原またはそのフラグメントに連結したCD4+ヘルパーエピトープを含むタンパク質を生産するために使用され得る。このような技術は、当業者によく知られており、誘導体がDNAコードタンパク質生産において提供されない置換を有するときに有用である。
【0118】
ハプテン化
いくつかの態様において、ワクチンは、サブユニットワクチンを構成するタンパク質または死滅または不活化ワクチンの細胞または粒子である。いくつかの態様において、このようなサブユニットワクチンを構成するタンパク質または死滅または不活化ワクチンの細胞または粒子は、免疫原性を増加させるためにハプテン化され得る。いくつかの場合において、ハプテン化は、大型分子構造を粘膜限定抗原もしくはそのフラグメントまたは粘膜限定抗原もしくはそのフラグメントを含むタンパク質と結合させることである。いくつかの場合において、患者由来の腫瘍細胞は、有効なワクチン製品を製造するための手段として死滅およびハプテン化される。粘膜限定抗原もしくはそのフラグメントまたは粘膜限定抗原もしくはそのフラグメントを含むタンパク質を製造する、および示すために遺伝情報で提供される他の細胞、例えば、細菌または真核細胞が、死滅され、活性なワクチン成分として使用される場合において、このような細胞は、免疫原性を増加させるためにハプテン化される。ハプテン化は、よく知られており、容易に行うことができる。
【0119】
細胞、一般的に腫瘍細胞をハプテン化する方法は、特にBerdら May 1986 Cancer Research 46:2572-2577およびBerdら May 1991 Cancer Research 51:2731-2734(これらを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。さらなるハプテン化プロトコールは、Millerら 1976 J. Immunol. 117(5:1):1591-1526に記載されている。
【0120】
ハプテン化組成物および本発明のハプテン化された免疫原を製造するために使用されるように構成され得る方法は、Strahilevitzによる1991年8月6日取得米国特許第5,037,645号;Shiosakaらによる1992年5月12日取得米国特許第5,112,606号;Stevensによる1985年7月2日取得米国特許第4,526716号;Christensonらによる1982年5月11日取得米国特許第4,329,281号;およびGrossによる1977年5月10日取得米国特許第4,022,878号(これらそれぞれを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されているものを含む。ペプチドワクチンおよび本発明の免疫原を修飾するように構成され得るペプチドの免疫原性を増強する方法は、また、Francisら 1989 Methods of Enzymol. 178:659-676(これを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。Sadら 1992 Immunolology 76:599-603(これを出典明示により本明細書に包含させる)は、ゴナドトロピン放出ホルモンをジフテリアトキソイドへ接合することにより免疫治療ワクチンを製造する方法を教示している。免疫原は、本発明の免疫治療ワクチンを生産するために同様に接合され得る。MacLeanら 1993 Cancer Immunol. Immunother. 36:215-22.2(これを出典明示により本明細書に包含させる)は、本発明の免疫治療ワクチンを生産するために適合できる免疫治療ワクチンを生産するための接合方法論を記載している。ハプテンは、免疫原へ接合され得るキーホールリンペットヘモシアニンである。
【0121】
いくつかの態様におけるワクチンは、核酸分子、核酸分子を含むベクター、例えば、ウイルス、タンパク質または細胞であり得る活性剤と組み合わせて薬学的に許容される担体を含む。医薬製剤はよく知られており、このような活性剤を含む医薬組成物は、当業者により日常的に製剤化され得る。適当な医薬担体は、この分野における標準文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol(これを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。本発明は、薬学的に許容される担体および活性剤を含む注射可能な医薬組成物に関する。該組成物は、好ましくは滅菌され、発熱源(pyrogen)を含まない。
【0122】
いくつかの態様において、例えば、活性剤は、薬学的に許容されるビヒクルと共に溶液、懸濁液、エマルジョンまたは凍結乾燥粉末として製剤化することができる。このようなビヒクルの例は、水、塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液および5%のヒト血清アルブミンである。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば、固定油も使用され得る。ビヒクルまたは凍結乾燥粉末は、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)および化学安定性(例えば、バッファーおよび防腐剤)を維持する付加物を含み得る。製剤は、一般的に使用される技術により滅菌される。
【0123】
注射可能な組成物は、賦形剤、例えば、例えば、滅菌水、電解質/デキストロース、植物性の脂肪油、脂肪エステルまたはポリオール、例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール中の免疫原を含み得る。注射可能な組成物は、滅菌され、発熱源を含まないべきである。
【0124】
ワクチンは、免疫原性応答の認識および誘導のために免疫原を身体の免疫系へ提供することを可能にする任意の方法により投与され得る。医薬組成物は、非経腸的、すなわち、静脈内、皮下、筋肉内に投与され得る。
【0125】
用量は、活性剤および既知の因子の性質、例えば、特定の薬剤の薬物動力学特性、およびその様式および投与経路;レシピエントの年齢、健康状態および体重;症状の性質および程度、同時処置の種類、処置の頻度、ならびに所望の効果に依存して変化する。免疫原の量は、予防または治療に有効な免疫応答を誘導するように送達される。当業者は、日常的な方法により、範囲および最適用量を容易に決定することができる。
【0126】
処置方法
本発明の局面は、粘膜組織の癌を有する個体を処置する方法を含む。該処置は、全身的に提供される。本明細書に記載されている粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞でこのような個体を処置することにより、T細胞は、特に個体の免疫系の非粘膜区画において、粘膜限定抗原を発現する癌細胞を特異的に標的する。すなわち、T細胞は、粘膜の外側に存在する粘膜組織から生じるあらゆる癌細胞を攻撃する。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、同定された転移性疾患、ならびに、あらゆる検出されていない転移、例えば、微小転移を含むあらゆる転移性疾患を処置するために特に有用である。
【0127】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、粘膜組織に関連する癌の診断において提供される通常の処置および/または癌ワクチン処置と共にアジュバント治療処置を提供する。当業者は、癌を粘膜組織に関連する癌として診断することができる。転移性疾患の検出は日常的な方法論を使用して行うことができるが、小さいレベルの癌は癌の最初の診断時に検出不可能であり得る。治療の典型的な様式は、外科的、化学療法または放射線療法、または種々の組合せを含む。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、転移によって粘膜の外側であるが粘膜組織由来の癌細胞を選択的に検出し、除去するさらなる攻撃手段を提供する。
【0128】
したがって、いくつかの態様において、個体は癌を有すると診断され、癌は一種の粘膜組織由来と同定される。粘膜組織の癌は、当該分野で受け入れられる臨床的および実験的病理学的プロトコールを使用して、当業者により診断され得る。癌の由来が粘膜組織の特定の型の同一性は決定することができ、このような粘膜組織型と関連する粘膜限定抗原を選択され得る。粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、単独で、または、外科的および/または放射線処置および/または他の抗癌剤の投与および/または癌ワクチンの投与を含む処置レジメンの一部として、患者に投与される。
【0129】
予防方法
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、また、粘膜組織癌を発症する危険性がある個体において予防的に使用され得る。集団と比較して上昇した、または特に高い危険性がある個体を同定するいくつかの方法がある。いくつかの癌の危険性は、ファミリーの病歴および/または遺伝子マーカーの存在に基づいて予測することができる。ある挙動またはある環境因子への暴露によって、個体を高い危険性がある集団に分類され得る。除去されたまたは寛解期の原発性疾患との以前の診断は、個体をより高い危険性に分類される。当業者は、個体の危険性を評価すること、および個体が粘膜組織由来の癌の上昇した、または高い危険性があるか否かを決定することができる。
【0130】
粘膜組織癌を発症する危険性がある個体は、個体が検出可能な疾患を有する前に、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を投与され得る。
【0131】
組成物、製剤、投与およびレジメン
いくつかの態様における粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞は、該細胞と共に薬学的に許容される担体を含む。細胞を含む医薬製剤はよく知られており、当業者により日常的に製剤化され得る。適当な医薬担体は、この分野における標準文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol(これを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。本発明は、注入用の医薬組成物に関する。
【0132】
いくつかの態様において、例えば、該複数の細胞は、薬学的に許容されるビヒクルと共に懸濁液として製剤化することができる。このようなビヒクルの例は、水、塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液および5%のヒト血清アルブミンである。ビヒクルは、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)および化学安定性(例えば、バッファーおよび防腐剤)を維持する付加物を含み得る。ビヒクルは、一般的に使用される技術により、細胞への添加の前に滅菌される。
【0133】
該複数の細胞は、それらが癌細胞と接触することが可能である任意の方法により投与され得る。医薬組成物は、例えば、静脈内に投与され得る。
【0134】
用量は、該複数の細胞の性質、レシピエントの年齢、健康状態および体重、症状の性質および程度、同時処置の種類、処置の頻度、ならびに所望の効果に依存して変化する。一般的に、1×1010から1×1012個のT細胞を投与するが、より多いまたはより少ない、例えば、1×10から1×1013個の細胞を投与され得る。一般的に、1×1011個のT細胞を投与する。送達される細胞の数は、予防または治療応答を誘導するために十分な量である。当業者は、日常的な方法により、範囲および最適用量を容易に決定することができる。
【0135】
本明細書中で引用されている特許、公開特許出願および文献は、出典明示により本明細書に包含させる。
【0136】
以下の実施例は、単に典型的な態様として提供し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0137】
実施例1
T細胞は、白血球除去輸血による結腸直腸癌患者のPBMCから、または、結腸直腸癌患者の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から回収され得る。TIL外植片またはPBMC由来T細胞を、6000IU/mlのIL−2を含む完全培地(10%のヒト血清を補ったRPMI1640ベース培地)中で培養する。培養物は、数百万のTIL細胞は利用するまで、通常2−4週間、1mlあたり5×10から2×10細胞の細胞濃度で維持してもよい。多数の独立した培養物を、CMAエピトープの認識のためのサイトカイン分泌アッセイによりスクリーニングしてもよい。最も高いサイトカイン分泌を示す2から6つの独立したTIL培養物を、細胞数が5×10個を越えるまで(この細胞数には、一般的に、腫瘍切除後に3−6週間で達する)、1mlあたり6000IUのIL−2を有する完全培地中でさらに増殖させてもよい。CMA認識を維持したTIL培養物を、照射された同種異系の支持細胞、OKT3(抗CD3)抗体、および1mlあたり6000IUのIL−2での迅速な拡張プロトコールの1サイクルを使用して、処置のために増殖させる。この迅速な拡張プロトコールは、一般的に、拡張の開始後14−15日間の投与時間により1000倍の細胞の拡張をもたらす。患者は、0.5から1時間にわたって、1×1011個の細胞のボーラス静脈内注入を受けてもよい。
【0138】
実施例2
操作するためのT細胞は、50ng/mlのOKT3を補った、300IU/mlのIL−2、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1.25μg/mlのアンホテリシン、10μg/mlのシプロフロキサシンおよび5%のヒトAB血清を有するT細胞培養培地AIM−V(Invitrogen Corp, Grand Isle, NY)中で1×10/mlの濃度で細胞を培養することによる白血球の採取の後にPBMCから得ることができる。培養の2日後、細胞を回収し、OKT3を含まない新鮮なT細胞培養培地に再懸濁する。マウス幹細胞ウイルス(MSCV)末端反復(LTR)および高度に効率的な内部リボソーム侵入部位(IRES)を使用して、CMA特異的TCRαおよびβ鎖またはCMA結合性膜結合型融合タンパク質のいずれかを発現するレトロウイルスベクター(例えば、pMSGV1)は、ヒトポリオウイルス(TCRのみに対する)に由来であった。臨床等級のレトロウイルスベクター上清は、商業的に生産されており、任意の選択方法の使用なしに高度に効率的な遺伝子導入をもたらす固相形質導入プロトコールにおいて使用される。最大5×10個の細胞の形質導入を、6mlのベクターおよび1ウェルあたり最大5×10個の細胞を使用して、Retronectin(CH−296、Takara Bio. Inc, Japanから購入したGMP等級Retronectin)で被覆され、ベクターで前負荷された6ウェルの組織培養プレート上での一晩培養により行う。患者は、0.5から1時間にわたって、1×1010−1011個の細胞のボーラス静脈内注入を受けてもよい。
【0139】
実施例3
CMA反応性T細胞を、PBMCまたはTILから上記のとおり増殖させる。個々の全長cDNA鎖のクローニングのためにPCRプライマーを設計するようにTCRαおよびβ鎖使用を決定するために、CMA反応性T細胞クローンから単離されたRNAを、RACE(cDNA末端の迅速な増幅)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびDNA配列分析に付す。PolyA+RNAは、Poly(A) Pure mRNA精製キット(Ambion, Austin, TX)を使用してT細胞から単離される。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)は、再配列されたαおよびβTCR鎖に対するオリゴヌクレオチドプライマーの対を使用するTitan One Tube RT−PCRキット(Roche, Indianapolis, IN)を使用して行った。増幅された産物をゲル精製し、レトロウイルスベクター骨格にクローニングする。クローニングされたαおよびβセグメントを、シーケンシングにより確認する。
【0140】
実施例4
CMA特異的B細胞ハイブリドーマを生産する。マウスをCMA特異的B細胞(抗体)応答を生産するためにCMAで免疫化する。脾臓を回収し、抗体を生産するB細胞を回収する。これらを、メチルセルロースベースの培地系、ClonaCell−HYモノクローナル抗体生産キット(StemCell Technologies, Inc.)を使用して、SP2/0−Ag14骨髄腫細胞系と融合させる。融合した細胞を限界希釈法によりクローニングし、CMA特異的抗体生産のためにスクリーニングし、CMA抗体を生産するハイブリドーマを同定する。これらを、CMA特異的モノクローナル抗体の恒久的な供給源として維持する。
【0141】
重鎖および軽鎖の抗体配列を、選択されたハイブリドーマからクローニングし、PCRによりscFV(一本鎖Fv)抗体を産生する。cDNAを、縮退オリゴヌクレオチド(oligodT)を使用してハイブリドーマRNAから生産する。VLおよびVH(重鎖および軽鎖可変セグメント)を、確立したオリゴヌクレオチドで3工程PCRアプローチを使用して、増幅させ、scFVに集合させる。CMA特異的ハイブリドーマから生産されたscFVを使用して、キメラ抗原受容体(CMA結合性膜結合型融合タンパク質またはT−body)を生産する。
【0142】
T−body遺伝子は、CMA特異的scFvがPCRによりCD28細胞外ドメイン(リガンド結合領域が切断されている)を介してFcRIγ鎖の細胞内部分に連結している3つの構成のものである。T−body cDNA構築物を、レトロウイルスベクターにクローニングし、治療のためにT−bodyを発現するT細胞を生産するように、T細胞にトランスフェクトするために使用する(上記)。
【0143】
実施例5
トランスファー(Transfer)は、サイトカイン投与(主にIL−2)、CMA指向性ワクチン接種および/または抗体治療、化学療法、シクロホスファミドおよびフルダラビン全身照射(TBI)での宿主調製リンパ球枯渇、その他の可能性のある補助剤処置を含む種々の処置と組み合わせてもよい。
【0144】
参考文献
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する単離された複数のT細胞。
【請求項2】
該T細胞が、個体から単離されたT細胞のクローン性増殖に由来する、請求項1に記載の単離された複数のT細胞。
【請求項3】
該T細胞が、個体から単離された粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞のクローン性増殖に由来する、請求項1から2のいずれかに記載の単離された複数のT細胞。
【請求項4】
該T細胞が、個体から単離され、癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸分子で形質転換されたT細胞のクローン性増殖に由来する、請求項1から2のいずれかに記載の単離された複数のT細胞。
【請求項5】
核酸分子が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞から単離されたT細胞受容体をコードする、請求項4に記載の単離された複数のT細胞。
【請求項6】
核酸分子によりコードされる癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の少なくとも機能性抗原結合フラグメントを含む、請求項4に記載の単離された複数のT細胞。
【請求項7】
グアニル酸シクラーゼC、スクラーゼイソマルターゼ、CDX1、CDX2、マンマグロビン(mammoglobin)および小乳房上皮性ムチンからなる群から選択される粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する、請求項1から6のいずれかに記載の単離された複数のT細胞。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の単離された複数のT細胞および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する少なくとも1つのT細胞を含む細胞ドナーからサンプルを単離すること;
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞を同定すること;および
該T細胞を、その複製を促進する条件下で粘膜限定抗原を認識する複数のT細胞を生産するために十分な期間培養すること
を含む、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を製造する方法。
【請求項10】
細胞ドナーに、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする核酸を含むワクチンを投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞ドナーに、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4エピトープを含むタンパク質または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4エピトープを含むタンパク質をコードする核酸を含むワクチンを投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞が、グアニル酸シクラーゼC、スクラーゼイソマルターゼ、CDX1、CDX2、マンマグロビンおよび小乳房上皮性ムチンからなる群から選択される粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞である、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌と診断された患者または粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された患者である、請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された患者である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌と診断された患者である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞ドナーが、粘膜組織の転移性癌と診断された患者である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのT細胞を含む細胞ドナーからサンプルを単離すること;
T細胞を、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体、または、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の少なくとも機能性フラグメントを含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質のいずれかをコードする核酸配列で形質転換すること、ここに、発現時に、該融合タンパク質は膜結合型タンパク質である;および
該形質転換されたT細胞を、その複製を促進する条件下で粘膜限定抗原を認識する複数のT細胞を生産するために十分な期間培養すること
を含む、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞を製造する方法。
【請求項18】
T細胞が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸配列で形質転換される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸配列が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープまたは粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする核酸を含むワクチンをTCR遺伝子ドナーに投与すること、該TCR遺伝子ドナーから1つ以上のT細胞を得ること、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体を含むT細胞を同定すること、該T細胞から粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸配列を単離すること、および粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞受容体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを製造することにより得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
TCR遺伝子ドナーに、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4エピトープを含むタンパク質または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4エピトープを含むタンパク質をコードする核酸を含むワクチンを投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
T細胞が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の少なくとも機能性フラグメントを含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸配列で形質転換され、ここに、発現時に、該融合タンパク質は膜結合型タンパク質である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードする核酸配列が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープまたは粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする核酸を含むワクチンを抗体遺伝子ドナーに投与すること、該抗体遺伝子ドナーから1つ以上のB細胞を得ること、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するB細胞または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を生産するB細胞に由来するハイブリッド細胞のいずれかを同定すること、B細胞から粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体をコードする核酸配列を単離すること、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の機能性フラグメントおよび該融合タンパク質を膜結合型タンパク質にするタンパク質配列をコードするキメラ遺伝子を製造すること、および該キメラ遺伝子を含む発現ベクターを製造することにより得られる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ワクチン接種ドナーに、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4エピトープを含むタンパク質または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープおよびCD4エピトープを含むタンパク質をコードする核酸を含むワクチンを投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞が、グアニル酸シクラーゼC、スクラーゼイソマルターゼ、CDX1、CDX2、マンマグロビンおよび小乳房上皮性ムチンからなる群から選択される粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞である、請求項17から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌と診断された患者または粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された患者である、請求項17から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された患者である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌と診断された患者である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
細胞ドナーが、粘膜組織の転移性癌と診断された患者である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
TCR遺伝子ドナーまたは抗体遺伝子ドナーが、粘膜組織の癌と診断された患者または粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された患者である、請求項17から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された患者である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
細胞ドナーが、粘膜組織の癌と診断された患者である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
細胞ドナーが、粘膜組織の転移性癌と診断された患者である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
細胞ドナーが、TCR遺伝子ドナーまたは抗体遺伝子ドナーである、請求項17から23のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
請求項13から20のいずれかに記載の方法により生産された粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞の有効量を、個体に投与する工程を含む、粘膜組織の癌と診断された個体を処置する方法。
【請求項35】
請求項13から20のいずれかに記載の方法により生産された粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞の有効量を、個体に投与する工程を含む、粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された個体において粘膜組織の癌を予防する方法。
【請求項36】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞の有効量を個体に投与する工程を含む、粘膜組織の癌と診断された個体を処置する方法。
【請求項37】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する複数のT細胞の有効量を個体に投与する工程を含む、粘膜組織の癌を発症する危険性が高いと同定された個体において粘膜組織の癌を予防する方法。
【請求項38】
該T細胞が、個体から単離されたT細胞のクローン性増殖に由来する、請求項36から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
該T細胞が、個体から単離された粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞のクローン性増殖に由来する、請求項36から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
該T細胞が、個体から単離され、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するタンパク質をコードする核酸分子で形質転換されたT細胞のクローン性増殖に由来する請求項36から38のいずれかに記載の方法であって、該タンパク質は、T細胞が粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するように膜結合型タンパク質として発現される方法。
【請求項41】
核酸分子が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するT細胞から単離されたT細胞受容体をコードする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
核酸分子が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体の少なくとも機能性抗原結合フラグメントを含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードする、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
グアニル酸シクラーゼC、スクラーゼイソマルターゼ、CDX1、CDX2、マンマグロビンおよび小乳房上皮性ムチンからなる群から選択される粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する、請求項36から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープを認識するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、該ヌクレオチド配列が細胞内で発現されるとき、該タンパク質は、T細胞受容体、または粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の少なくとも機能性フラグメントおよび融合タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分に対するコード配列を含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項45】
タンパク質が、T細胞受容体である、請求項44に記載の核酸分子。
【請求項46】
ヌクレオチド配列が細胞内で発現されるとき、タンパク質が、粘膜限定抗原の少なくとも1つのエピトープに結合する抗体の少なくとも機能性フラグメントおよび融合タンパク質を膜結合型タンパク質にする部分に対するコード配列を含む癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質である、請求項44に記載の核酸分子。
【請求項47】
癌粘膜抗原結合性膜結合型融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が調節因子に作動可能に連結している、請求項44から46のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項48】
核酸分子がDNAである、請求項44から46のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項49】
核酸分子がプラスミドである、請求項48に記載の核酸分子。
【請求項50】
核酸分子がウイルスゲノムである、請求項44から46のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項51】
核酸分子がウイルス粒子中のウイルスゲノムである、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項52】
核酸分子がアデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、SV40およびワクシニアからなる群から選択されるウイルス粒子中のウイルスゲノムある、請求項50に記載の核酸分子。
【請求項53】
粘膜限定抗原が、グアニル酸シクラーゼC、グアニル酸シクラーゼCの免疫原性的に活性なフラグメント、スクラーゼイソマルターゼ、スクラーゼイソマルターゼの免疫原性的に活性なフラグメント、CDX1、CDX1の免疫原性的に活性なフラグメント、CDX2、CDX2の免疫原性的に活性なフラグメント、マンマグロビン、マンマグロビンの免疫原性的に活性なフラグメント、小乳房上皮性ムチンおよび小乳房上皮性ムチンの免疫原性的に活性なフラグメントからなる群から選択される、請求項44から52のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項54】
該キメラタンパク質が、グアニル酸シクラーゼC、スクラーゼイソマルターゼ、CDX1、CDX2、マンマグロビンおよび小乳房上皮性ムチンからなる群から選択される粘膜限定抗原を含む、請求項44から52のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項55】
請求項44から54のいずれかに記載の核酸分子を含むT細胞。

【公表番号】特表2013−507970(P2013−507970A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535411(P2012−535411)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053733
【国際公開番号】WO2011/066048
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(597177242)トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】Thomas Jefferson University
【Fターム(参考)】