説明

細胞マニピュレータ

【課題】インジェクションピペットに対する微動動作とインジェクション動作を同一の手
段で実施すること。
【解決手段】細胞に針を挿入するインジェクションピペット34と、インジェクションピ
ペット34の位置を制御するXY軸テーブル36およびZ軸テーブル38を備え、インジ
ェクションピペット34を支持するZ軸テーブル38に微動機構44を内蔵し、微動機構
44は、印加電圧に応じてインジェクションピペット34の長手方向に沿って伸縮する圧
電素子54と、圧電素子54に対する印加電圧を制御する制御回路を有し、圧電素子54
は、微動用電圧の印加に応答してインジェクションピペット34をその長手方向に沿って
微動駆動し、インジェクション用電圧の印加に応答してインジェクションピペット34に
針を挿入するための押圧力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞マニピュレータに係り、特に、顕微鏡観察下で細胞に針を挿入して、細
胞に核などを注入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの分野において、顕微鏡観察下で細胞に針を挿入して、細胞に核な
どを注入する細胞マニピュレータとして、マイクロマニピュレータシステムが知られてい
る(特許文献1参照)。このマイクロマニピュレータシステムにおいては、マニピュレー
タ用微小器具を細胞に挿入する際に、細胞が大きく変形して、細胞にダメージを与えるの
を防止するために、マニピュレータ用微小器具を固定状態で保持する保持部材を移動体に
固定するとともに、保持部材に圧電・電歪素子を直接取り付ける構成が採用されている。
【特許文献1】特開2004−325836号公報(第3頁から第5頁、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されているマイクロマニピュレータシステムでは、マニピュレータ用
微小器具を保持する保持部材を移動体に固定するとともに、保持部材に圧電・電歪素子を
直接取り付けるようにしているので、マニピュレータ用微小器具を細胞に挿入する際に、
細胞にダメージを与えるのを防止することができる。
【0004】
しかし、保持部材に圧電アクチュエータとしての圧電・電歪素子が取り付けられている
が、マニピュレータ用微小器具を微動駆動する構成が採用されていないので、マニピュレ
ータ用微小器具を高精度に位置決めするための微動機構を別に設けたのでは、制御軸数が
増加するとともに、配線処理が困難となる。
【0005】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて為されてものであり、その目的は、インジェク
ションピペットに対する微動動作とインジェクション動作を同一の手段で実施することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、細胞を挿入対象とするインジェクションピペッ
トと、前記インジェクションピペットを駆動対象として、前記細胞を含む三次元空間を移
動領域として前記インジェクションピペットの位置を制御する三次元軸移動テーブルとを
備え、前記ナノポジショナは、前記三次元軸移動テーブルのいずれかの軸の移動テーブル
に配置されて、印加電圧に応じて前記インジェクション方向に沿って伸縮する圧電アクチ
ュエータと、前記圧電アクチュエータに対する印加電圧を制御する制御回路を含み、前記
圧電アクチュエータは、前記制御回路の印加電圧に応じて前記インジェクションピペット
に対してインジェクション動作または微動動作をさせてなる細胞マニピュレータを構成し
たものである。
【0007】
本発明によれば、ナノポジショナに支持された圧電アクチュエータに対する印加電圧を
調整することで、インジェクションピペットに対してインジェクション動作または微動動
作をさせることができ、構成の簡素化を図ることができるとともに、インジェクションピ
ペットに対する位置決めを高精度に行うことができる。
【0008】
また、細胞マニピュレータを構成するに際しては、細胞を挿入対象とするインジェクシ
ョンピペットと、前記インジェクションピペットを駆動対象として前記インジェクション
ピペットに連結されたナノポジショナと、前記ナノポジショナを支持する支持部材と、前
記支持部材を伴って二次元空間を移動して前記インジェクションピペットの位置を制御す
る二次元軸テーブルとを備え、前記ナノポジショナは、印加電圧に応じて前記インジェク
ションピペットの長手方向に沿って伸縮する圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエ
ータに対する印加電圧を制御する制御回路を含み、前記圧電アクチュエータは、前記制御
回路からの印加電圧に応じて前記インジェクションピペットに対してインジェクション動
作または微動動作をさせることができる。この場合、前記支持部材は、前記ナノポジショ
ナを前記インジェクションピペットの設置角度と平行に配置することができる。
【0009】
前記各細胞マニピュレータを構成するに際しては、以下の要素を付加することができる
。(1)前記圧電アクチュエータは、インジェクション用電圧の印加に応答して、前記細
胞に針を挿入するための押圧力を前記インジェクションピペットに付与してなる。(2)
前記圧電アクチュエータは、前記制御回路からの微動用電圧の印加に応答して前記インジ
ェクションピペットを微動駆動してなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構成の簡素化を図ることができるとともに、インジェクションピペッ
トに対する位置決めを高精度に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態を
示す細胞マニピュレータの構成図である。図1において、マニピュレータシステム10は
、顕微鏡観察下で細胞等の対象物に人工操作を実施するためのシステムとして、顕微鏡ユ
ニット12と、ホールディング用マニピュレータ14と、インジェクション用マニピュレ
ータ16とを備えており、顕微鏡ユニット12の両側にマニピュレータ12、14が分か
れて配置されている。
【0012】
顕微鏡ユニット12は、カメラ18、顕微鏡20、ベース22を備えており、ベース2
2の上方に顕微鏡20が配置され、顕微鏡20にはカメラ18が連結されている。ベース
22上には細胞等の対象物が載置されるようになっており、ベース22上の細胞(図示せ
ず)に顕微鏡20から光が照射されるようになっている。ベース22上の細胞で反射した
光が顕微鏡20に入射すると、細胞に関する光学像は、顕微鏡20で拡大された後カメラ
18で撮像されるようになっており、カメラ18の撮像による画像を基に細胞を観察する
ことができる。
【0013】
ホールディング用マニピュレータ14は、直交3軸構成のマニピュレータとして、ホー
ルディングピペット24、XY軸テーブル26、Z軸テーブル28、XY軸テーブル26
を駆動する駆動装置30、Z軸テーブル28を駆動する駆動装置32を備えて構成されて
おり、ホールディングピペット24は、Z軸テーブル28に連結され、Z軸テーブル28
はXY軸テーブル26上に上下動自在に配置されている。XY軸テーブル26は、駆動装
置30の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル2
8は、駆動装置32の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように
構成されている。Z軸テーブル28に連結されたホールディングピペット24は、XY軸
テーブル26とZ軸テーブル28の移動に従って三次元空間を移動領域として移動し、ベ
ース22上の細胞等を保持するように構成されている。
【0014】
インジェクション用マニピュレータ16は、直交3軸構成のマニピュレータとして、イ
ンジェクションピペット34、XY軸テーブル36、Z軸テーブル38、XY軸テーブル
36を駆動する駆動装置40、Z軸テーブル38を駆動する駆動装置42を備えて構成さ
れており、インジェクションピペット34は、Z軸テーブル38に連結され、Z軸テーブ
ル38はXY軸テーブル36上に上下動自在に配置されている。XY軸テーブル36は、
駆動装置40の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テー
ブル38は、駆動装置42の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動する
ように構成されているとともに、ベース22上の細胞等を、針を挿入するための挿入対象
とするインジェクションピペット34に連結されている。すなわち、XY軸テーブル36
とZ軸テーブル38は、駆動装置40、42の駆動により、ベース22上の細胞等を含む
三次元空間を移動領域として移動し、インジェクションピペット34の位置、例えば、イ
ンジェクションピペット34の先端側からベース22上の細胞に対して、針を挿入するた
めの挿入位置を制御する三次元軸移動テーブルとして構成されている。
【0015】
また、X軸テーブル38は、移動テーブルとしての機能の他に、ナノポジショナとして
の機能を備え、インジェクションピペット34を往復動自在に支持するととともに、イン
ジェクションピペット34をその長手方向(軸方向)に沿って微動駆動するように構成さ
れている。
【0016】
具体的には、X軸テーブル38には、ナノポジショナとして、図2に示す微動機構44
、または図3に示す微動機構46が付加(内蔵)されている。
【0017】
微動機構44は、圧電アクチュエータの本体を構成するハウジング48を備えており、
略円筒状に形成されたハウジング48内には、ねじ軸50が挿通されているとともに、円
筒状の圧電素子54、円筒状の間座56がねじ軸50の外周側に収納されており、軸受5
8、60が内輪間座62を間にしてねじ軸50にロックナット66により固定されて収納
されている。
【0018】
軸受58、60は、それぞれ内輪58a、60aと、外輪58b、60bと、内輪58
a、60aと外輪58b、60b間に挿入されたボール58c、60cを備え、各内輪5
8a、60aがねじ軸50の外周面に内輪間座62を介し嵌合され、各外輪58b、60
bがハウジング48の内周面に嵌合され、ねじ軸50を回転可能に支持するようになって
いる。軸受58は、ハウジング48の内周面に嵌合された間座56との当接により、圧電
素子を介してふた64を締めつけることによって予圧が付与される。ハウジング48の一
端側には圧電素子に電圧を印加するための信号線を通すための孔48a、48bが形成さ
れている。
【0019】
予圧調整は間座54の長さを調整することによって押圧力を調整させ軸受へ適切な予圧
力を与える。これにより、軸受58、60に所定の予圧が付与され、軸受58、60の外
輪間に軸方向間距離としての間隙63が形成される。
【0020】
圧電素子54は、孔48a、48b内にそれぞれ挿入されたリード線70、72を介し
て制御回路(図示せず)に接続されており、制御回路からの電圧に応じてインジェクショ
ンピペット34のインジェクション方向に沿って伸縮する圧電アクチュエータの一要素と
して構成されている。例えば、圧電素子54は、制御回路からインジェクション用電圧と
して、例えば、図4に示すような矩形波状の電圧V1が印加されたときには、この印加電
圧V1に応答して、インジェクションピペット34の先端側からベース22上の細胞に対
して、針を挿入するための押圧力をインジェクションピペット34に付与したり、あるい
は、制御回路から微動用電圧が印加されたときには、この印加電圧に応答して、ねじ軸5
0をその長手方向(軸方向)に沿って微動させて、インジェクションピペット34の位置
を微調整したりするようになっている。
【0021】
インジェクション用電圧としては、矩形波状の電圧V1の代わりに、図5(a)に示す
ように、時間勾配を有する台形波状の電圧V2を用いることができる。この場合、電圧V
2を、初期値から最大印加電圧に達するまでの時間t1と最大電圧から初期値になるまで
の時間t2がそれぞれ同じになるように設定することで、インジェクションの際に、細胞
へ針を挿入するときの速度と細胞から針を抜くときの速度をそれぞれ同じにすることがで
きる。また、電圧V2の代わりに、図5(b)に示すように、初期値から最大印加電圧に
達するまでの時間t3と最大電圧から初期値になるまでの時間t4がそれぞれ異なる電圧
V3を用い、インジェクションの際に、細胞へ針を挿入するときの速度と細胞から針を抜
くときの速度をそれぞれ個別に設定することもできる。さらに、インジェクション用電圧
としては、図6に示すように、三角波状の電圧V4を用いることができる。この場合も、
初期値から最大印加電圧に達するまでの時間t5と最大電圧から初期値になるまでの時間
t6を任意に設定することができる。
【0022】
また、インジェクション用電圧を設定するに際しては、使用する細胞の性質に合わせて
、電圧の振幅や電圧の波形を調整することが望ましい。
【0023】
微動機構46は、圧電アクチュエータの本体を構成するハウジング74を備えており、
略円筒状に形成されたハウジング74内には、ねじ軸76の軸方向一端側と、、圧電素子
80、間座82、軸受84、86が収納されている。圧電素子80は、ねじ軸76の延長
線上に、間座82を介してねじ軸76と直列になって配置されており、間座82は、ねじ
軸76の軸方向端部に噛合されたロックナット88を囲むように配置されている。軸受8
4と軸受86は内輪間座90を間にしてねじ軸76の外周側に配置されている。
【0024】
軸受84、86は、それぞれ内輪84a、86aと、外輪84b、86bと、内輪84
a、86aと外輪84b、86b間に挿入されたボール84c、86cを備え、各内輪8
4a、86aがねじ軸76の外周面に嵌合され、各外輪84b、86bがハウジング74
の内周面に嵌合され、ねじ軸76を回転可能に支持するようになっている。
【0025】
ハウジング74の一端側には、圧電素子80に対して、ねじ軸76の軸方向への移動を
規制する蓋94が固定されている。蓋94には凹部94aが形成されているとともに、孔
94b、94cが形成されており、蓋94の凹部94aと間座82の凹部82aとの間に
圧電素子80が挿入されている。
【0026】
予圧調整は間座82の長さを調整することによって押圧力を調整させ軸受へ適正な予圧
力を与える。これにより、軸受84、86に所定の予圧が付与され、軸受84、86の外
輪間に軸方向間距離としての間隙93が形成される。
【0027】
圧電素子80は、蓋94の孔94b、94c内にそれぞれ挿入されたリード線96、9
8を介して制御回路(図示せず)に接続されており、制御回路からの電圧に応じてインジ
ェクションピペット34の長手方向に沿って伸縮する圧電アクチュエータとして構成され
ている。圧電素子80は、制御回路からインジェクション用電圧、例えば、図4に示す電
圧V1が印加されたときには、この印加電圧V1に応答して、インジェクションピペット
34の先端側からベース22上の細胞に対して、針を挿入するための押圧力をインジェク
ションピペット34に付与したり、あるいは、制御回路から微動用電圧が印加されたとき
には、この印加電圧に応答して、ねじ軸76をその長手方向(軸方向)に沿って微動させ
て、インジェクションピペット34の位置を微調整したりするようになっている。この場
合も、インジェクション用電圧としては、電圧V1の代わりに、図5または図6に示すよ
うに、電圧V2、V3、V4を用いることができる。
【0028】
上記構成において、インジェクション用マニピュレータ16を駆動するに際しては、X
Y軸テーブル36とZ軸テーブル38を粗動駆動して、インジェクションピペット34を
ベース22上の細胞に近づけて位置決めした後、微動機構44または微動機構46を用い
てインジェクションピペット34を微動駆動することとしている。
【0029】
具体的には、図7に示すように、駆動装置40、42に内蔵された粗動用モータに対し
て、粗動指令200としてパルス信号を印加すると、粗動用モータのうちX軸用モータ、
Y軸用モータ、Z軸用モータがパルス信号に応答して回転駆動し、XY軸テーブル36が
X軸またはY軸方向に沿って漸次ベース22に近づく方向に移動するととともに、Z軸テ
ーブル38がZ軸に沿って漸次ベース22に近づく方向に移動する。この場合、粗動用モ
ータとして、ステッピングモータが用いられたときには、粗動指令200は、X、Y、Z
軸用モータを設定回転数で回転させるために必要な角度ステップ数に相当するパルス信号
を出力することになる。また、微動機構44の圧電素子54または微動機構46の圧電素
子80には、初期設定電圧Vsが印加されているだけであり、圧電素子54は、軸受58
、60の予圧の反力による圧縮荷重が作用した状態に、圧電素子80は、軸受84、86
の予圧の反力による圧縮荷重が作用した状態にある。
【0030】
XY軸テーブル36またはZ軸テーブル38の移動に伴ってインジェクションピペット
34が粗動用目標位置に到達すると、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38の駆動が停
止され、その後、駆動装置42に微動指令202が印加される。駆動装置42に微動指令
202が印加されると、微動機構44の圧電素子54または微動機構46の圧電素子80
に、微動指令202に従った微動用電圧V0が印加され、インジェクションピペット34
がその長手方向に沿って微動し、ベース22上の細胞に対する挿入位置に位置決めされる

【0031】
例えば、微動機構44を用いた場合、微動機構44では、圧電素子54の変位の半分の
変位量がインジェクションピペット34の微動変位量に設定されていることから、圧電素
子54には、微動変位量の2倍の変位を与えるための制御電圧と初期設定電圧Vsとを加
算した微動用電圧V0が印加されることになる。
【0032】
このとき、例えば、圧電素子54に2xの伸びが生じたときには、この伸びによる押圧
力は微動制御を行う前の予圧荷重に加えて軸受外輪を押圧し、軸受58、60の各外輪5
8b、60b間の間隙63が2x分更に狭くなってねじ軸がX変位する。
【0033】
逆に、圧電素子54が2x縮むと押圧力が減少し、軸受58、60の弾性変形がそれぞ
れxずつ減少し、間隙63が拡がる方向に、2x変位することになり、ねじ軸がX変位す
る。
【0034】
このように、間隙63の変位2xを軸受58、60がxずつ分けて吸収するので、軸受
58、60を互いに押圧する力がバランスしたときに、スペーサ52に嵌合している軸受
58、60の内輪58a、60aがねじ軸50とともに軸方向にx変位する。これにより
、ねじ軸50に連結されているインジェクションピペット34が軸方向にxだけ変位する
。つまり、圧電素子54の2xの変位の半分の変位量がインジェクションピペット34の
微動変位量となって、インジェクションピペット34が挿入位置に位置決めされる。
【0035】
インジェクションピペット34が挿入位置に位置決めされたときには、位置決めが完了
したとして、微動機構44の圧電素子54または微動機構46の圧電素子80に、微動指
令202に従ったインジェクション用電圧として、例えば、電圧V1が印加され、ベース
22上の細胞に対して、インジェクションピペット34の先端側から針が挿入される。
【0036】
本実施形態によれば、微動機構44の圧電素子54または微動機構46の圧電素子80
に対する印加電圧を調整することで、インジェクションピペット34に対してインジェク
ション動作または微動動作をさせることができ、構成の簡素化を図ることができるととも
に、インジェクションピペット34に対する位置決めを高精度に行うことができる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態を図8に従って説明する。本実施形態は、ホールディング
用マニピュレータ14とインジェクション用マニピュレータ16を、直交3軸構成のマニ
ピュレータとして用いる代わりに、Z軸をピペット設置角度と平行に配置したマニピュレ
ータとして用いたものであり、他の構成は、前記実施形態で同様である。
【0038】
具体的には、ホールディング用マニピュレータ14は、Z軸テーブル28の代わりに、
角度調整治具100とナノポジショナ102を用いて構成されており、ナノポジショナ1
02は、駆動装置32に連結された状態で角度調整治具100に、Y軸に平行な軸に対し
て回動自在に固定され、ナノポジショナ102にはホールディングピペット24が固定さ
れている。すなわち、ホールディングピペット24の延在する方向(長手方向)をZ軸と
したときに、ナノポジショナ102がホールディングピペット24の設置角度と平行に配
置されている。
【0039】
インジェクション用マニピュレータ16は、XY軸テーブル36を二次元軸テーブルと
して用いるが、Z軸テーブル38の代わりに、角度調整治具(支持部材)104とナノポ
ジショナ106を用いて構成されており、ナノポジショナ106は、駆動装置42に連結
された状態で、Z軸と平行に配置された角度調整治具104に対して回動自在に固定され
、ナノポジショナ106にはインジェクションピペット34が固定されている。すなわち
、ナノポジショナ106は、インジェクションピペット34の設置角度と平行に配置され
た状態で角度調整治具104に支持されている。
【0040】
ナノポジショナ106としては、微動機構44または微動機構46を用いることができ
、駆動装置40、42を微動機構44または微動機構46を駆動することで、すなわち、
XY軸テーブル36を粗動駆動して、インジェクションピペット34をベース22上の細
胞に近づけて位置決めした後、微動機構44または微動機構46を用いてインジェクショ
ンピペット34を微動駆動することで、インジェクションピペット34を、ベース22上
の細胞に対する挿入位置に位置決めすることができる。インジェクションピペット34が
挿入位置に位置決めされたときには、位置決めが完了したとして、微動機構44の圧電素
子54または微動機構46の圧電素子80に、微動指令202に従ったインジェクション
用電圧として、例えば、電圧V1を印加することで、ベース22上の細胞に対して、イン
ジェクションピペット34の先端側から針を挿入することができる。
【0041】
本実施形態によれば、微動機構44の圧電素子54または微動機構46の圧電素子80
に対する印加電圧を調整することで、インジェクションピペット34に対してインジェク
ション動作または微動動作をさせることができ、構成の簡素化を図ることができるととも
に、インジェクションピペット34に対する位置決めを高精度に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、ナノポジショナ106をピペット設置角度(インジェクシ
ョンピペット34を設置するための角度)と平行に配置したので、X軸とY軸による移動
領域にXYテーブル36を用い、Z軸の移動領域のみにナノポジショナ106を用いるこ
とができる。
【0043】
前記各実施形態においては、Z軸にナノポジショナとしての微動機構44、46を適用
したものについて述べたが、X軸、Y軸およびZ軸の全ての軸にナノポジショナ構造のサ
ポート軸受を適用することができる。
【0044】
また、前記各実施形態において、微動機構44の圧電素子54または微動機構46の圧
電素子80に基づいた微動動作が必要でないときには、圧電素子54または圧電素子80
をインジェクションピペット34に対するインジェクション動作のみに使用することもで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態を示す細胞マニピュレータのブロック構成図である。
【図2】微動機構の一実施例を示す断面図である。
【図3】微動機構の他の実施例を示す断面図である。
【図4】インジェクション用電圧として矩形波状の電圧を用いたときの波形図である。
【図5】インジェクション用電圧として台形状の電圧を用いたときの波形図である。
【図6】インジェクション用電圧として三角波状の電圧を用いたときの波形図である。
【図7】インジェクション用マニピュレータの粗動時、微動時およびインジェクション時の動作を説明するための波形図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す細胞マニピュレータのブロック構成図である。
【符号の説明】
【0046】
10 マニピュレータシステム
12 顕微鏡ユニット
14 ホールディング用マニピュレータ
16 インジェクション用マニピュレータ
18 カメラ
20 顕微鏡
22 ベース
34 インジェクションピペット
36 XY軸テーブル
38 Z軸テーブル
40、42 駆動装置
44、46 微動機構
54、80 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を挿入対象とするインジェクションピペットと、前記インジェクションピペットを
駆動対象として前記インジェクションピペットに連結されたナノポジショナと、前記ナノ
ポジショナを伴って三次元空間を移動して前記インジェクションピペットの位置を制御す
る三次元軸移動テーブルとを備え、前記ナノポジショナは、前記三次元軸移動テーブルの
いずれかの軸の移動テーブルに配置されて、印加電圧に応じて前記インジェクションピペ
ットの長手方向に沿って伸縮する圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータに対す
る印加電圧を制御する制御回路を含み、前記圧電アクチュエータは、前記制御回路からの
印加電圧に応じて前記インジェクションピペットに対してインジェクション動作または微
動動作をさせてなる細胞マニピュレータ。
【請求項2】
細胞を挿入対象とするインジェクションピペットと、前記インジェクションピペットを
駆動対象として前記インジェクションピペットに連結されたナノポジショナと、前記ナノ
ポジショナを支持する支持部材と、前記支持部材を伴って二次元空間を移動して前記イン
ジェクションピペットの位置を制御する二次元軸テーブルとを備え、前記ナノポジショナ
は、印加電圧に応じて前記インジェクションピペットのインジェクション方向に沿って伸
縮する圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータに対する印加電圧を制御する制御
回路を含み、前記圧電アクチュエータは、前記制御回路からの印加電圧に応じて前記イン
ジェクションピペットに対してインジェクション動作または微動動作をさせてなる細胞マ
ニピュレータ。
【請求項3】
前記支持部材は、前記ナノポジショナを前記インジェクション角度と平行に配置してな
ることを特徴とする請求項2項に記載の細胞マニピュレータ。
【請求項4】
前記圧電アクチュエータは、前記制御回路からのインジェクション用電圧の印加に応答
して、前記細胞に針を挿入するための押圧力を前記インジェクションピペットに付与して
なることを特徴とする請求項1、2または3のうちいずれか1項に記載の細胞マニピュレ
ータ。
【請求項5】
前記圧電アクチュエータは、前記制御回路からの微動用電圧の印加に応答して前記イン
ジェクションピペットを微動駆動してなることを特徴とする請求項1、2、3または4の
うちいずれか1項に記載の細胞マニピュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−78871(P2012−78871A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3492(P2012−3492)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【分割の表示】特願2006−219830(P2006−219830)の分割
【原出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】