説明

細胞内活性酸素除去剤

【課題】 骨代謝疾患等の骨疾患の治療、改善または予防のための薬剤や化合物、並びに、神経疾患の治療、改善または予防のための薬剤や化合物において、活性酸素種を低減することで骨芽細胞または神経細胞の障害を防止することができ、かつ、日常的な摂取が可能なものを提供する。
【解決手段】木クレオソートの主要成分であり、長年使用されたクレオソート製剤に含まれる、2−メトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、及び2−メトキシ−4−エチルフェノールのいずれか、またはこれらの組み合わせを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨芽細胞、神経細胞その他における活性酸素による障害を防止するための細胞内活性酸素除去剤に関する。また、骨代謝疾患その他の骨疾患の治療、改善もしくは予防、並びに、神経変性疾患、脳血管疾患、中枢神経感染症、または、その他の脳疾患もしくは神経疾患の治療もしくは予防、または、脳機能もしくはその他の神経機能の改善のための製剤、または健康機能性食品に関する。ここで、健康機能性食品は、健康維持や健康増進の機能を有する飲食物であり、栄養改善法による特定保健用食品、及び、財団法人 日本健康・栄養食品協会の認定による健康補助食品を含む。
【背景技術】
【0002】
健康な成人では、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成とがバランスして、骨の量及び構造がほぼ一定に保たれている。ところが、何らかの原因により骨代謝のバランスが崩れると骨疾患を発症する。骨代謝疾患には、骨髄腫やリンパ腫などが原因で起こる悪性高カルシウム血症、局所性骨吸収によりもたらされる骨ぺージェット病、及び骨粗鬆症が含まれる。中でも、骨粗鬆症は、中・高年女性を中心に患者数が非常に多く、骨折等を起こして寝たきりの状態に至る場合があるため、有効な治療薬の開発が渇望されている。骨粗鬆症の治療薬としては、骨吸収を抑制する効果のあるビスホスフォネート製剤などが知られている(特許文献1〜2)。また、吸収性骨疾患の予防等のために日常的に飲食物の配合成分として摂取しうる薬剤についての提案も行われている(特許文献3)。
【0003】
一方、高齢化等にともない、認知症(痴呆)、アルツハイマー病、パーキンソン病といった神経疾患が増加しており、これらを改善する薬剤や化合物としては、あまり決定的なものがない中で、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が注目されている(例えば特許文献4)。これは、神経伝達物質であるアセチルコリンを分解したり伝達をさまたげる酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害する働きがあり、この作用によってアルツハイマー病等の症状を改善しようと期待されている。また、ある程度の成果が得られている。なお、神経細胞の障害に起因する神経変成疾患には、上記のアルツハイマー病及びパーキンソン病の他、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、小脳変性などが含まれる。
【特許文献1】特開2003−073277
【特許文献2】特開平7−17854
【特許文献3】特開平6−183985
【特許文献4】特開平9−268176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の骨代謝疾患治療薬は、骨吸収を抑制することを主眼とするものであり、骨形成にはほとんど着目されていなかった。また、上記従来の神経系疾患治療薬も、症状を緩和することを主眼とするものであり、神経細胞の障害そのものを軽減させるものではなかった。
【0005】
本件発明者らは、体内で産生される過酸化水素(H22)等によって誘起される骨芽細胞または神経細胞に対する障害に着目し、細胞内の活性酸素種の濃度を低下させることのできる薬剤または化合物を探索した。特には、副作用がないか非常に少なく、日常的に摂取するための安全性が充分に確かめられている化合物の中から、細胞内の活性酸素種の濃度を低下させることのできるものを鋭意探索した。
【0006】
本発明は、骨代謝疾患等の骨疾患の治療、改善または予防のための薬剤や化合物、並びに、神経疾患の治療、改善または予防のための薬剤や化合物において、活性酸素種を低減することで骨芽細胞または神経細胞の障害を防止することができ、かつ、日常的な摂取が可能なものを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の細胞内活性酸素除去剤は、下記の一般式(I-1〜I-4)で示される化合物あるいはその塩を含有してなることを特徴とする。
【化2】

【0008】
但し、上記一般式(I-1〜I-4)におけるR1はメチル基またはエチル基、R2は水素原子または炭素数1〜5の直鎖または側鎖のアルキル基であって、R1とR2は同一であっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
骨代謝性の疾患に対して用いられた場合、骨芽細胞の障害を防ぐ作用により、骨形成の低下を防いで、骨代謝のバランスを維持または回復させるのに寄与する。一方、神経変成疾患に対して用いられた場合、神経細胞の障害を防ぐ作用により、神経機能を維持または回復させるのに寄与する。本発明の細胞内活性酸素除去剤は、他の薬剤等と併用することで、一層効果を発揮することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記一般式(I(I-1〜I-4))の化合物について、以下に具体例を挙げるが、この例示でいう「ブチル」は、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルを総称したものであり、また「プロピル」は、n−プロピル、イソプロピルを総称したものである。すなわち、2−メトキシフェノール(グアヤコール)、2−メトキシ−3−メチルフェノール、2−メトキシ−3−エチルフェノール、2−メトキシ−3−プロピルフェノール、2−メトキシ−3−ブチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−メトキシ−4−エチルフェノール、2−メトキシ−4−プロピルフェノール、2−メトキシ−4−ブチルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−メトキシ−5−エチルフェノール、2−メトキシ−5−プロピルフェノール、2−メトキシ−5−ブチルフェノール、2−エトキシフェノール、2−エトキシ−3−メチルフェノール、2−エトキシ−3−エチルフェノール、2−エトキシ−3−プロピルフェノール、2−エトキシ−3−ブチルフェノール、2−エトキシ−4−メチルフェノール、2−エトキシ−4−エチルフェノール、2−エトキシ−4−プロピルフェノール、2−エトキシ−4−ブチルフェノール、2−エトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−5−エチルフェノール、2−エトキシ−5−プロピルフェノール、2−エトキシ−5−ブチルフェノールなどが挙げられる
上記一般式(I)の化合物の中でも、R2が炭素数1〜3であることが、細胞内活性酸素を除去する能力に優れているという点で好ましく、メチル基あるいはエチル基であることがさらに好ましい。
【0011】
また、R2は3または4の位置に結合していることが、細胞内活性酸素を除去する能力に優れているという点で好ましく、4の位置に結合していることがさらに好ましく、中でも、細胞内活性酸素を除去する能力に優れているという点で、2−メトキシフェノール(グアヤコール)、2−メトキシ−4−メチルフェノール(以下、単に「2M4MP」ともいう)、2−メトキシ−4−エチルフェノール(以下、単に「2M4EP」ともいう)、2−エトキシ−4−メチルフェノール(以下、単に「2E4MP」ともいう)、2−エトキシ−4−エチルフェノール(以下、単に「2E4EP」ともいう)が好ましく、その中でもグアヤコール、2M4MP、及び2M4EPが最も好ましい。なお、上記一般式(I)で示される化合物は1種類を単独で使用しても良いし、2種以上を併用することもできる。
【0012】
これら2−メトキシフェノール(グアヤコール)、2M4MP、2M4EPはいずれも、木クレオソートの構成成分である(Ogata N., Baba T. Analysis of beechwood creosote by gas chromatography-mass spectrometry and high-performance liquid chromatography. Res Commun Chem Pathol Pharmacol 66,411−423(1989),ブナ木クレオソートのガスクロマトグラフィー・質量分析法および高速液体クロマトグラフィー法による分析)。緒方規男(N. Ogata)他著ファーマコロジー(Pharmacology)、46巻、(1993)、第173頁には、クレオソートが腸管運動抑制に基づく止瀉作用を有する旨記載されている。また、医薬品製造指針(日本公定書協会編)1988年版第240頁の胃腸薬製造承認基準において、V欄の止瀉薬の区分中1項の殺菌剤として収載されている。また、伊藤宏著「薬理学」((株)蛍光堂、1983年1月5日改訂第6版発行)第416頁にも、木クレオソートは腸内防腐に用いるほか、吸入適応により去痰作用を示す旨記載され、日本薬局方でも、去痰、腸内異常醗酵、食中毒などに用いる旨記載されている。ザ・ユナイテッド・ステーツ・ディスペンサトリー(The United States Dispensatory)、27th ed.(1973)、第355頁にも、木クレオソートは、外用として殺菌剤、内用として去痰剤として使用される旨記載されている。
【0013】
<塩の形態>
また、本発明の細胞内活性酸素除去剤は、塩基を用いた塩の形態とすることも可能である。用いる塩としては、薬学的に(薬剤学的に)許容し得る塩であれば特に限定するものではなく、例えば、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リチウムなどの金属塩、アミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)との塩あるいはアンモニウム塩などが挙げられる。
【0014】
<神経系疾患>
本発明の細胞内活性酸素除去剤の対象疾患名としては、例えばアルツハイマー病などの痴呆症、パーキンソン病やうつ病などが挙げられる。さらに、脳血管障害や脳虚血後の機能改善やリハビリテーション効果向上(促進)用などへの適応が期待できる。
【0015】
<使用量>
本発明の細胞内活性酸素除去剤の投与量(使用量)については、対象となる動物の種類あるいは性別、年齢、症状の程度によって変わるので一概にはいえないが、ヒトにおける経口投与あるいは直腸内投与(坐剤)の場合は、およそのところ1日当たり成人体重1kgに対して0.1〜10mgであり、0.5〜5mgであることが好ましく、また注射剤としての投与の場合には、1日当たり成人体重1kgに対して0.05〜5mgであり、0.25〜2.5mgであることが好ましい。これらの1日量を1回でまたは分2〜分4、あるいはそれ以上の回数に分けて投与することができる。
【0016】
<剤型・摂取形態>
本発明の細胞内活性酸素除去剤は、医療用薬剤における一般的な形態で以て使用される。一般的な形態としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、顆粒剤、トローチ剤、チュアブル剤、内服液剤や、注射剤(血管内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与など)、あるいは坐剤などが挙げられる。錠剤、顆粒剤、散剤の形態に調製する際には、従来公知の担体を広く使用でき、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、澱粉、結晶セルロース等の賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、トラガント、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等の結合剤、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等の崩壊剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸などの滑沢剤が使用できる。錠剤には、必要に応じて、通常の剤皮を施すこともでき、例えば、糖衣錠、フィルムコーティング錠等とすることができ、さらに二層錠、多層錠としてもよい。また、顆粒剤や散剤も通常の剤皮を施すことができる。
【0017】
このような医薬品としての剤型のみならず、本発明の細胞内活性酸素除去剤は一般の飲食物として摂取することもできる。すなわち、菓子類(クッキー、ビスケット、ケーキ、饅頭、スナック菓子、ガム、キャンデーなど)や飲料水(栄養ドリンク、炭酸飲料水、乳酸飲料水、清涼飲料水など)、インスタント食品(即席麺、即席カレーやシチューなど)、練り食品(ハム、ソーセージ、かまぼこなど)、油脂加工品(バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシングなど)、調味料(ソース、しょう油、塩、コショウなど)、乳製品(ヨーグルト、加工乳など)に含ませて本発明の細胞内活性酸素除去剤の摂取を図ることもできる。
【実施例】
【0018】
<骨芽細胞の培養(図1参照)>
従来公知の方法によって骨芽細胞を培養した。すなわち、ラットの新生仔(1〜2日齢)から摘出した頭蓋骨を0.25%トリプシン液及び0.1%コラーゲナーゼ液を含有するハンクス液中に投入した(37℃で10分を5回)。ついで、10%牛胎児血清(FCS)を含むα−MEM培養液で培養し、1×104個/cm2に調整した。次の日、10%FCS、アスコルビン酸およびβ−グリセロリン酸を含有するα−MEM培養液で培養した。培養液は、一日おきに交換し、28日後に骨芽細胞の数を測定した(1well中)。なお、図には示さないが、カルシウム濃度の増加を計測することにより、骨芽細胞の生育を確認した。また、骨芽細胞の分化の指標としてのアルカリフォスフォターゼ活性についても経時的に増加していることを確かめた。
【0019】
<骨芽細胞培地への過酸化水素及びフェノール化合物の添加試験(図2)>
上記の細胞培地に対して、過酸化水素(H22)を500μMとなるように各ウェルに添加した。また、同時に、各ウェルにそれぞれ、2−メトキシフェノール(グアヤコール)、2−メトキシ−4−メチルフェノール(2M4MP)、及び2−メトキシ−4−エチルフェノール(2M4EP)を1mMの濃度となるように添加して、上記の37℃5%炭酸ガスのインキュベーター中にセットした。なお、各フェノール化合物には、東京化成工業(株)の一級試薬を用いた。
【0020】
添加3時間後、培養液を、牛胎子血清(FBS)を含まず、10μmMのDCFH-DA (2,7-dichlorofluorescin diacetate)を含むDMEMに置き換えた。また、その30分後には、培養液を、元のFBS10%DMEMに置き換えた。これらの培養液置換操作の際には、細胞を充分に、置き換える液にて洗浄した。
【0021】
再度の培養液置換の後、4℃で15〜20分の経過後、共焦点レーザー顕微鏡にて、細胞の状態を観察した。
【0022】
<骨芽細胞内の活性酸素種に対するフェノール系化合物による除去効果>
図3に示す10枚の顕微鏡写真には、各フェノール化合物及び過酸化水素を添加した培地の様子を、過酸化水素のみ添加した培地、無添加の培地(control)の様子とともにまとめて示す。図3の上段には非蛍光写真を示し、下段には蛍光写真を示す。蛍光写真は、活性酸素に反応した発光部分が緑色となっていたが、該緑色部分を白色に返還し、さらにグレイスケールの図に変換して示している
図3の結果から知られるように、各フェノール化合物の添加により、細胞の障害を引き起こす活性酸素が顕著に低減した。この低減効果は、3種のフェノール化合物のうち、2−メトキシ−4−メチルフェノール(2M4MP)、及び2−メトキシ−4−エチルフェノール(2M4EP)が大きく、2−メトキシフェノール(グアヤコール)では比較的小さかった。
【0023】
<神経細胞の採取から播種まで(図4)>
(1) Wistarラットの18日齢胎児より脳を摘出し、海馬を取り出した。
(2) 取り出した海馬を、フタ付き遠心管中のベルセン液に12分間、室温にて浸漬した。なお、ベルセン液は、リン酸緩衝液(PBS)中にエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を0.2重量%含むものであり、細胞間の接着に必要なカルシウムをキレートすることで、細胞を分散しやすくする。
(3) パスツールピペットを用いて、ベルセン液を、ウシ胎児血清(FCS)を10%含有するダルベッコ改変MEM(FCS10%DMEM/F12;Dulbecco's modified Eagle's 培地、Sigma社製)に置き換え、また、当該培地中に海馬を分散した。
(4) フタをしてから、1500rpmにて4分間遠心分離操作を行った。
(5) 上澄みを捨て、遠心管の底にある沈殿(pellet)を、再度、ウシ胎児血清(FCS)10%のDMEM/F12培地に分散した。
(6) 培地の単位体積あたりの細胞数を計測する。詳しくは、ピペッターにより一定量を細胞計数板にとり、染色後、光学顕微鏡にて計測した。
(7) 330,000個/cm2となるように海馬の細胞を24穴マイクロプレートに播種した。
【0024】
<神経細胞の培養(図5)>
(1)FCS10%DMEM/F12を培養液として、インキュベーターに設置し、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃に保った。細胞を播いた時点から数えて0〜24hrを培養1日目とし、培養3日目(播種時から48〜72hrの期間)には、培養液に10μMとなるようにシトシンアラビノシド(Ara-C)を添加した条件で培養を行った。このシトシンアラビノシドによる処理により、グリア細胞の増殖を抑制する。
(2) 培養4〜9日目までは、下記ホルモンミックスを含むDMEM中にて培養を行った。ホルモンミックス:0.5μg/mlインスリン、50μg/mlトランスフェリン、20nMプロゲステロン、1pM β−エストラジオール、3nMトリヨードチロニン、100μMプトレッシン、8ng/mlセレン2ナトリウム。なお、培養6日目の経過後に、培養液を、同一組成の新しいものに置き換えた。
(3) 培養9日目を経過した上記の細胞培地を、下記の2種類の実験に用いた。
【0025】
<神経細胞培地への過酸化水素及びフェノール化合物の添加試験>
上記の細胞培地に対して、過酸化水素(H22)を100μMとなるように各ウェルに添加した。また、各ウェルに、2−メトキシフェノール(グアヤコール)、2−メトキシ−4−メチルフェノール(2M4MP)、及び2−メトキシ−4−エチルフェノール(2M4EP)のいずれかを1mMの濃度となるように添加した。なお、各フェノール化合物には、東京化成工業(株)の一級試薬を用いた。また、この後、図2を用いて説明した骨芽細胞の場合と全く同様にして、各フェノール化合物による活性酸素種の除去効果を評価した。
【0026】
<神経細胞内の活性酸素種に対するフェノール系化合物による除去効果>
図6に示す10枚の顕微鏡写真には、各フェノール化合物及び過酸化水素を添加した培地の様子を、過酸化水素のみ添加した培地、無添加の培地(control)の様子とともにまとめて示す。図6の上段には非蛍光写真を示し、下段には蛍光写真を示す。蛍光写真は、図3と同様、発光部を白色に変換して示している。
【0027】
図6の結果から知られるように、各フェノール化合物の添加により、細胞の障害を引き起こす活性酸素が顕著に低減した。この低減効果は、3種のフェノール化合物のうち、2−メトキシ−4−メチルフェノール(2M4MP)、及び2−メトキシ−4−エチルフェノール(2M4EP)が大きく、2−メトキシフェノール(グアヤコール)では比較的小さかった。
【0028】
<剤型の例>
下記に、各剤型による製剤例を示す。
・製剤例1(丸剤)
(処方1)
グアヤコール、2M4MPまたは2M4EP 5mg
カンゾウ 25mg
グリセリン 10mg
常水 50mg
上記処方の各成分を練合し、その丸剤塊を切丸機で分割し、製丸機で成丸し、1丸中に本発明の神経細胞の細胞死抑制剤5mgを含有する丸剤を調製した。
【0029】
・製剤例2(硬カプセル剤)
(処方2)
グアヤコール、2M4MPまたは2M4EP 10mg
デンプン 250mg
グアヤコール、2M4MPまたは2M4EPとデンプンを混合して混合末とし、硬カプセルに充填して1カプセル中に本発明の神経細胞の細胞死抑制剤10mgを含有する硬カプセル剤を調製した。
【0030】
・製剤例3(軟カプセル剤)
(処方3)
グアヤコール、2M4MPまたは2M4EP 10mg
オリーブ油 200mg
グアヤコール、2M4MPまたは2M4EPとオリーブ油に溶解して溶液を得、ソフトカプセルに充填して、1カプセル中に本発明の神経細胞の細胞死抑制剤10mgを含有する軟カプセル剤を調製した。
【0031】
・製剤例4(錠剤)
(処方4)
グアヤコール、2M4MPまたは2M4EP 20mg
乳糖 250mg
メチルセルロース 3mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
カルボキシメチルセルロース 10mg
上記処方のステアリン酸マグネシウム以外の各成分を混合し、これを水と混練して顆粒とし、この顆粒を乾燥後、ステアリン酸マグネシウムと混合して圧縮成型するか、あるいは上記処方の各成分を混合して直接圧縮成型し、1錠285mgの錠剤を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】骨芽細胞の培養方法を示した略示説明図である。
【図2】過酸化水素及びフェノール化合物の添加の影響を評価するための手順を示した略示説明図である。
【図3】骨芽細胞培地に過酸化水素及びフェノール化合物を添加した影響について示す一群の共焦点レーザー顕微鏡写真である。上段は非蛍光写真、下段は蛍光写真を示す。
【図4】神経細胞の採取から播種までの手順を示した略示説明図である。
【図5】神経細胞を培養する手順を示した略示説明図である。
【図6】神経細胞培地に過酸化水素及びフェノール化合物を添加した影響について示す一群の共焦点レーザー顕微鏡写真である。上段は非蛍光写真、下段は蛍光写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で示される化合物あるいはその塩を含有してなることを特徴とする細胞内活性酸素除去剤。
【化1】

但し、上記一般式(I)におけるR1はメチル基またはエチル基、R2は水素原子または炭素数1〜5の直鎖または側鎖のアルキル基であって、R1とR2は同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
前記化合物が、2−メトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、及び2−メトキシ−4−エチルフェノールからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の細胞内活性酸素除去剤。
【請求項3】
骨粗鬆症その他の骨の骨代謝性疾患の治療、改善もしくは予防、並びに、神経変性疾患、脳血管疾患、中枢神経感染症、または、その他の脳疾患もしくは神経疾患の治療もしくは予防、または、脳機能もしくはその他の神経機能の改善のための製剤であることを特徴とする請求項1または2の細胞内活性酸素除去剤。
【請求項4】
請求項1または2の細胞内活性酸素除去剤を含有することを特徴とする健康機能性食品。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−321747(P2006−321747A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146092(P2005−146092)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(391003392)大幸薬品株式会社 (20)
【Fターム(参考)】