説明

細胞凍結保存容器

【課題】複数の収容室を有しつつ、所定の容積中に効率的に細胞を保存できる細胞凍結保存容器を提供すること。
【解決手段】第1方向WDに所定間隔をあけて配置される複数の収容室2と、隣り合って配置される収容室2の間に配置される区画領域3と、区画領域3における第2方向HDの一端側及び/又は他端側に配置され、2つの収容室2を連通させる連通部4と、を備え、第3方向TDの一方側に表面部11が形成され、該第3方向TDの他方側に背面部12が形成される細胞凍結保存容器1であって、表面部11は、収容室2が第3方向TDの一方側に突出して凹凸状に形成されると共に、背面部12は平面状に形成され、区画領域3の第1方向WDにおける長さは、収容室2の第1方向WDにおける長さよりも長く構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料から採取された幹細胞等を保存する細胞凍結保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療分野においては、生体試料から採取された幹細胞が、例えば、造血幹細胞移植や各種組織の再構築等の様々な用途に用いられている。幹細胞は、生体から採取された後、再生医療に用いられるまでの間、細胞凍結保存容器に収容された状態で、液体窒素が充填された容器中に凍結保存される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案された細胞凍結保存容器は、可撓性を有する樹脂部材により構成され、比較的多量(例えば20ml)の細胞を収容可能な第1収容室と、比較的少量(例えば5ml)の細胞を収容可能な第2収容室と、これら第1収容室と第2収容室とを区画する区画領域と、この区画領域に設けられ第1収容室と第2収容室とを連通させる連通部と、を備える。
【0004】
特許文献1で提案された細胞凍結保存容器によれば、第1収容室及び第2収容室に細胞を収容した後に、連通部を溶着等により遮断することで、第1収容室と第2収容室とを分離できる。これにより、第1収容室又は第2収容室のみを解凍して細胞を使用できるので、必要な細胞の量に応じて、凍結保存した細胞を有効利用できる。
また、凍結保存した細胞を、少量ずつ複数回に亘って解凍して使用できるように、比較的少量の細胞を収容可能な3以上の収容室を備える細胞凍結保存容器も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−517103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような細胞凍結保存容器は、ステンレスやアルミニウム等の金属材料により構成された保護ケースに収容された状態で凍結保存される。ここで、細胞凍結保存容器において、収容室の数を増やした場合、隣り合って配置される収容室を区画する区画領域の数も増えるため、細胞凍結保存容器に占める区画領域の面積の割合が増える。そのため、収容室を多く含んで構成された細胞凍結保存容器を保護ケースに収容すると、保護ケースの内部に、細胞が収容されない無駄なスペースが生じてしまう。その結果、収容室を多く含んで構成された細胞凍結保存容器では、収容室の数の少ない細胞凍結保存容器に比して、同じ容積の保護ケースに収容できる細胞の量が少なくなってしまい、液体窒素中に効率的に細胞を保存できないという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、複数の収容室を有しつつ、所定の容積中に効率的に細胞を保存できる細胞凍結保存容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1方向に所定間隔をあけて配置される複数の収容室と、隣り合って配置される2つの前記収容室の間に配置される一又は複数の区画領域と、前記区画領域における前記第1方向に直交する第2方向の一端側及び/又は他端側に配置され、隣り合って配置される2つの前記収容室を連通させる一又は複数の連通部と、を備え、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の一方側に表面部が形成され、該第3方向の他方側に背面部が形成される細胞凍結保存容器であって、前記表面部は、前記複数の収容室及び前記連通部が前記第3方向の一方側に突出して凹凸状に形成されると共に、前記背面部は、平面状に形成され、前記区画領域の前記第1方向における長さは、前記収容室の前記第1方向における長さよりも長く構成される細胞凍結保存容器に関する。
【0009】
また、前記複数の収容室それぞれにおける前記表面部側の端面、及び前記区画領域の前記表面部側の面は、平面状に形成されることが好ましい。
【0010】
また、前記連通部は、前記区画領域における前記第2方向の一端側に配置される第1連通部と、前記区画領域における前記第2方向の他端側に配置される第2連通部と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記第1連通部は、前記収容室の前記第2方向における一端部の位置よりも該第2方向の一端側に配置され、前記第2連通部は、前記収容室の前記第2方向における他端部の位置よりも該第2方向の他端側に配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記連通部の前記第3方向における長さは、前記収容室の前記第3方向における長さの1/2以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記複数の収容室のいずれかに設けられ、該複数の収容室に細胞を導入する細胞導入部と、前記複数の収容室に設けられ、該収容室に収容された細胞を導出する細胞導出部と、を更に備えることが好ましい。
【0014】
また、前記細胞導出部は、前記複数の収容室それぞれにおける前記第2方向の一端部に設けられ、前記細胞導入部は、前記複数の収容室のうちの一の収容室における前記第2方向の他端部に設けられることが好ましい。
【0015】
また、前記区画領域は、前記第1方向における長さが第1長さの第1区画領域と、前記第1方向における長さが前記第1長さよりも長い第2長さの第2区画領域と、を備え、前記第2区画領域は、前記複数の収容室のうちの中央に位置する2つの前記収容室の間に配置されることが好ましい。
【0016】
また、前記第2区画領域には、前記連通部は配置されないことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の細胞凍結保存容器によれば、複数の収容室を有しつつ、所定の容積中に効率的に細胞を保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る細胞凍結保存容器を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の細胞凍結保存容器を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】図2のD矢視図である。
【図7】筒状部材を示す斜視図である。
【図8A】細胞凍結保存容器を収容する保護ケースを示す斜視図である。
【図8B】保護ケースに第1の細胞凍結保存容器を収容した状態を示す斜視図である。
【図8C】保護ケースに第2の細胞凍結保存容器を収容した状態を示す斜視図である。
【図8D】保護ケースの蓋部を閉めた状態を示す斜視図である。
【図8E】図8DのD−D線断面図である。
【図9A】第1実施形態の細胞凍結保存容器の製造方法における立体形状形成工程を示す模式図である。
【図9B】第1実施形態の細胞凍結保存容器の製造方法における積層配置工程を示す模式図である。
【図9C】第1実施形態の細胞凍結保存容器の製造方法における第1溶着工程を示す模式図である。
【図9D】第1実施形態の細胞凍結保存容器の製造方法における第2溶着工程を示す模式図である。
【図10】第2実施形態の細胞凍結保存容器を示す平面図である。
【図11】第3実施形態の細胞凍結保存容器を示す平面図である。
【図12】図11のF矢視図である。
【図13】第3実施形態の細胞凍結保存容器を折り畳んだ状態を示す側面図である。
【図14】第3実施形態の細胞凍結保存容器の変形例を示す平面図である。
【図15】細胞凍結保存容器の連通部の第1変形例を示す平面図である。
【図16】細胞凍結保存容器の連通部の第2変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の細胞凍結保存容器の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の細胞凍結保存容器1は、生体試料から採取された幹細胞等の細胞を凍結保存する場合に用いられる。
【0020】
まず、第1実施形態の細胞凍結保存容器1について、図1〜図7を参照しながら説明する。第1実施形態の細胞凍結保存容器は、図1及び図2に示すように、所定の幅、高さ及び厚さを有し、平面視において矩形形状に形成される。この細胞凍結保存容器1は、図1及び図2に示すように、複数の収容室2と、これら複数の収容室2を区画する区画領域3と、隣り合って配置される2つの収容室2を連通させる連通部4と、収容室2に細胞を導入する細胞導入部6と、収容室2に収容された細胞を導出する細胞導出部7と、を備える。
【0021】
尚、以下においては、第1方向として細胞凍結保存容器1の幅方向WDを、第1方向に直交する第2方向として細胞凍結保存容器1の高さ方向HDを、第1方向及び第2方向に直交する第3方向として細胞凍結保存容器1の厚さ方向TDを例にして、本発明を説明する。
【0022】
複数の収容室2は、図1及び図2に示すように、幅方向WDに所定間隔をあけて配置される。複数の収容室2は、図1〜図3に示すように、幅方向WDの長さ(幅)及び厚さ方向TDの長さ(厚さ)よりも、高さ方向HDの長さ(高さ)の長い略直方体形状に構成される。より具体的には、複数の収容室2は、図3に示すように、厚さ方向TDの一方側に突出して形成される。そして、複数の収容室2それぞれの突出した側の端面である突出端面21は、平面状に構成される。また、複数の収容室2の厚さ方向TDの他方側の面は平面状に形成される。
複数の収容室2の幅方向WDにおける断面形状、及び複数の収容室2の高さ方向HDにおける断面は、図3及び図5に示すように、いずれも、突出端面21に向かって徐々に幅が狭くなる台形状に形成される。
【0023】
これら複数の収容室2には、生体試料から採取された細胞が収容される。第1実施形態では、収容室2は、幅方向WDに所定の間隔をあけて3つ配置される。複数の収容室2それぞれの容積は、一回の使用に供される量が比較的少量の場合に無駄なく細胞を解凍するという観点から、好ましくは1ml〜10mlである。
【0024】
区画領域3は、隣り合って配置される2つの収容室2の間に配置される。第1実施形態では、区画領域3は、図1及び図2に示すように、2つ設けられる。区画領域3の幅方向WDの長さW2は、収容室2の幅方向WDの長さW1よりも長く構成される。より具体的には、区画領域3の幅方向WDの長さW2は、好ましくは収容室2の幅方向WDの長さW1の100%〜150%である。
【0025】
連通部4は、図1及び図2に示すように、複数の第1連通部41と、複数の第2連通部42と、を備える。
第1連通部41は、図2に示すように、複数(2つ)の区画領域3それぞれにおける高さ方向HDの一端側である上端側に配置される。この第1連通部41は、隣り合って配置される2つの収容室2を連通させる。
第1連通部41は、図2に示すように、収容室2の上端部よりも上端側に配置される。第1実施形態では、第1連通部41は、収容室2の突出端面21の上端部の位置よりも上端側に配置される。
【0026】
第2連通部42は、図2に示すように、複数(2つ)の区画領域3それぞれにおける高さ方向HDの他端側である下端側に配置される。この第2連通部42は、隣り合って配置される2つの収容室2を連通させる。
第2連通部42は、図2に示すように、収容室2の下端部よりも下端側に配置される。第1実施形態では、第2連通部42は、収容室2の突出端面21の下端部の位置よりも下端側に配置される。
【0027】
以上の第1連通部41及び第2連通部42は、図6に示すように、厚さ方向TDの一方側に突出して形成される。
第1連通部41及び第2連通部42の厚さ(厚さ方向TDの長さ)T2は、好ましくは、収容室2の厚さ(厚さ方向TDの長さ)T1の1/2以下、より好ましくは1/4以下である。
【0028】
細胞導入部6は、複数の収容室2のうちの一の収容室2に設けられ、複数の収容室2に細胞を導入する場合における細胞の導入口となる。第1実施形態では、細胞導入部6は、3つの収容室2のうちの幅方向WDの一端部(図2に示す左端)に位置する収容室2に設けられる。また、細胞導入部6は、収容室2における上端部に配置される。
第1実施形態では、細胞導入部6は、EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)等の熱可塑性樹脂製のチューブ83により構成され、このチューブ83の一端部が収容室2の上端部に接続され、チューブ83の他端部が上方に延びている。
【0029】
細胞導出部7は、複数の収容室2に収容された細胞を導出する場合における導出口となる。細胞導出部7は、図1及び図2に示すように、複数の収容室2のうちの細胞導入部6が設けられていない収容室2に設けられる。また、細胞導出部7は、収容室2における上端部に配置される。
第1実施形態では、細胞導出部7は、EVA樹脂等の熱可塑性樹脂製の筒状部材84により構成される。より具体的には、筒状部材84は、図7に示すように、筒状部71と、この筒状部71の長手方向の一端側を閉鎖する閉鎖膜部72と、筒状部71の一端側から長手方向に延出する一対のガード部73と、を備える。
筒状部材84は、図3に示すように、一対のガード部73が収容室2の内部に位置し、かつ、一対のガード部73が厚さ方向TDの一方側(後述の表面部11側)及び他方側(後述の背面部12側)に位置するように配置される。
【0030】
以上の細胞凍結保存容器1においては、図3〜図6に示すように、厚さ方向TDの一方側に凹凸状の表面部11が形成され、厚さ方向TDの他方側に平面状の背面部12が形成される。
より具体的には、複数の収容室2、第1連通部41、第2連通部42、細胞導入部6及び細胞導出部7は、上述のように、厚さ方向TDの一方側(表面部11側)に突出しており、これら複数の収容室2、第1連通部41及び第2連通部42により表面部11における凸状部が形成される。また、区画領域3の表面部11側は、平面状に形成されており、この区画領域3が配置された領域により表面部11における凹状部が形成される。
【0031】
また、複数の収容室2、区画領域3、第1連通部41、第2連通部42、細胞導入部6及び細胞導出部7は、いずれも背面部12側には突出しておらず、これにより、背面部12は平面状に形成される。
【0032】
第1実施形態の細胞凍結保存容器1は、以下のようにして使用される。
第1実施形態の細胞凍結保存容器1に細胞を導入する場合には、まず、生体試料から採取された細胞が収容されたシリンジ(図示せず)等を、細胞導入部6を構成するチューブ83に接続する。次いで、シリンジ等に収容された細胞を、細胞導入部6が設けられた収容室2に導入する。ここで、複数の収容室2の下端部は、第2連通部42により連通しており、複数の収容室2の上端部は、第1連通部41により連通している。そのため、細胞導入部6が設けられた収容室2に導入された細胞は、主として、第2連通部42を通じて複数の収容室2のすべてに導入される。また、複数の収容室2の内部の空気は、主として、第1連通部41を通じて、細胞導入部6が設けられた収容室2に移動し、その後、細胞導入部6からシリンジ等に導出される。これにより、複数の収容室2に、細胞が収容される。
【0033】
次いで、細胞が収容された細胞凍結保存容器1のチューブ83が溶断され、細胞導入部6は密閉される。また、必要に応じて、第1連通部41及び第2連通部42が溶着等により遮断され、複数の収容室2は、互いに分離される。
この状態で、細胞凍結保存容器1は、凍結保存される。
【0034】
凍結保存された細胞凍結保存容器1に収容された細胞を使用する場合には、まず、必要とされる量に対応する数の収容室2を、第1連通部41及び第2連通部42が溶着された部分で切り離して解凍する。次いで、解凍された収容室2に収容された細胞を、先端に注射針が取り付けられたシリンジ(図示せず)等を用いて細胞導出部7から採取する。より具体的には、細胞導出部7から細胞を採取する場合には、シリンジに取り付けられた注射針を、筒状部材84の閉鎖膜部72に刺し込んでこの閉鎖膜部72を貫通させ、収容室2の内部に収容された細胞を採取する。
【0035】
次に、細胞が収容された細胞凍結保存容器1の凍結保存方法について、図8A〜図8Eを参照しながら説明する。図8A〜図8Eは、それぞれ、細胞凍結保存容器1を凍結保存する様子を示す図である。
細胞導入部6から複数の収容室2に細胞が導入された細胞凍結保存容器1は、図8Aに示すように、上面が開放された本体部110及びこの本体部110に開閉自在に取り付けられ本体部110の上面を被覆可能な蓋部120を備える保護ケース100に収容された状態で、液体窒素中に凍結保存される。
【0036】
ここで、保護ケース100に細胞凍結保存容器1を保存する場合には、まず、本体部110に、第1の細胞凍結保存容器1を収容する。ここで、第1の細胞凍結保存容器1は、図8Bに示すように、背面部12が本体部110の底面側を向くように本体部110に収容される。すると、本体部110の上面側に第1の細胞凍結保存容器1の表面部11側が配置される。
【0037】
次いで、本体部110に収容された第1の細胞凍結保存容器1に重ねるように、第2の細胞凍結保存容器1を配置する。このとき、図8Cに示すように、第2の細胞凍結保存容器1は、表面部11が第1の細胞凍結保存容器1の表面部11に対向するように配置される。ここで、細胞凍結保存容器1の表面部11には、収容室2により形成された凸状部と、区画領域3により形成された凹状部とが交互に配置されている。また、区画領域3の幅方向WDの長さW2は、収容室2の幅方向WDの長さW1よりも広く構成されている。更に、細胞凍結保存容器1の背面部12は、平面状に形成されている。これにより、第2の細胞凍結保存容器1の収容室2と第1の細胞凍結保存容器1の区画領域3とが対向するように、第2の細胞凍結保存容器1を第1の細胞凍結保存容器1に重ねて配置することで、第1の細胞凍結保存容器1を収容した状態において、区画領域3によって形成された空間(凹状部)を利用して、第2の細胞凍結保存容器1を収容できる。よって、本体部110に無駄なスペースを設けることなく、2つの細胞凍結保存容器1を収容できる。
【0038】
次いで、図8Dに示すように、蓋部120を閉めて、本体部110の上面を被覆する。これにより、保護ケース100に第1の細胞凍結保存容器1及び第2の細胞凍結保存容器1が収容される。ここで、細胞凍結保存容器1の背面部12は、平面状に形成されているので、保護ケース100に2つの細胞凍結保存容器1を収容した状態において、本体部110の底面と第1の細胞凍結保存容器1の背面部12との間、及び第2の細胞凍結保存容器1の背面部12と蓋部120の内面との間には、無駄なスペースは生じない(図8E参照)。
【0039】
次に、第1実施形態の細胞凍結保存容器1の製造方法につき、図9A〜図9Dを参照しながら説明する。図9A〜図9Dは、第1実施形態の細胞凍結保存容器1の製造工程を模式的に示す図である。
第1実施形態の細胞凍結保存容器1は、図3〜図5に示すように、表面部11側を構成する第1シート状部材81と、背面部12側を構成する第2シート状部材82と、細胞導入部6を構成するチューブ83と、細胞導出部7を構成する筒状部材84と、により構成される。これら第1シート状部材81、第2シート状部材82、チューブ83及び筒状部材84は、いずれも、EVA樹脂により構成される。
【0040】
細胞凍結保存容器1の製造方法は、立体形状形成工程S1と、積層配置工程S2と、第1溶着工程S3と、第2溶着工程S4と、を備える。
【0041】
立体形状形成工程S1では、図9Aに示すように、第1シート状部材81に成形加工が施され、第1シート状部材81に、複数の収容室2、第1連通部41及び第2連通部42(図示せず)の形状に対応した立体形状が形成される。立体形状形成工程S1は、例えば、加熱した第1シート状部材81を、複数の収容室2、第1連通部41及び第2連通部42の形状に対応する形状を有する金型(図示せず)の表面に密着させた後、この密着させた第1シート状部材81を金型の裏面側から吸引する真空成形法により行われる。
【0042】
積層配置工程S2では、図9Bに示すように、外面側(立体形状における凸となった側)が下面となるように配置された第1シート状部材81の上面に、チューブ83及び筒状部材84が配置され、更に、第2シート状部材82が積層される。
【0043】
第1溶着工程S3では、図9Cに示すように、上型131及び下型132からなる第1溶着金型130により、第1シート状部材81と第2シート状部材82との間に挟まれて配置されたチューブ83及び筒状部材84が、これら第1シート状部材81及び第2シート状部材82と溶着される。
【0044】
第2溶着工程S4では、図9Dに示すように、上型141及び下型142からなる第2溶着金型140により、積層された第1シート状部材81及び第2シート状部材82の周縁部同士が溶着されると共に、隣り合って配置される収容室2の間においても、第1連通部41及び第2連通部42に対応する立体形状が形成された領域を除く領域において、第1シート状部材81と第2シート状部材82とが溶着される。
これにより、第1実施形態の細胞凍結保存容器1が製造される。
【0045】
以上説明した第1実施形態の細胞凍結保存容器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0046】
(1)収容室を多く含んで構成される細胞凍結保存容器を保護ケース100に収容すると、収容室同士を区画する区画領域の存在により、保護ケース100の内部に無駄なスペースが生じてしまう。そこで、細胞凍結保存容器1を、複数の収容室2と、隣り合って配置される2つの収容室2の間に配置される区画領域3とを含んで構成すると共に、表面部11を、複数の収容室2及び区画領域3により凹凸状に形成し、背面部12を平面状に形成した。そして、区画領域3の幅方向WDにおける長さW2を、収容室2の幅方向WDにおける長さW1よりも長く構成した。これにより、2つの細胞凍結保存容器1を表面部11同士が対向するように重ねることで、第1の細胞凍結保存容器1の収容室2を、第2の細胞凍結保存容器1の区画領域3に嵌め合わせた状態で保護ケース100に2つの細胞凍結保存容器1を収容できる。よって、保護ケース100に第1の細胞凍結保存容器1を収容した状態において、区画領域3によって形成された空間(凹状部)を利用して、第2の細胞凍結保存容器1を収容できるので、保護ケース100に無駄なスペースを設けることなく、2つの細胞凍結保存容器1を収容できる。また、細胞凍結保存容器1の背面部12は、平面状に形成されているので、保護ケース100の内面と細胞凍結保存容器1背面部12との間には、無駄なスペースは生じない。その結果、収容室2を多く(特に、3つ以上)含んで細胞凍結保存容器1を構成した場合であっても、所定の容積中に効率的に細胞を保存できる。
【0047】
(2)複数の収容室2それぞれにおける表面部11側の突出端面21、及び区画領域3の表面部11側の面を、平面状に形成した。これにより、2つの細胞凍結保存容器1を重ね合わせた場合に、突出端面21と区画領域3の表面部11側の面とを密着させられる。よって、2つの細胞凍結保存容器1を保護ケース100に収容した状態における保護ケース100の内部の無駄なスペースをより減少させられる。
【0048】
(3)連通部4を、第1連通部41及び第2連通部42を含んで構成した。これにより、細胞導入部6から収容室2に導入された細胞を、第2連通部42を通じて複数の収容室2のすべてに導入でき、また、複数の収容室2の内部の空気を、第1連通部41を通じて、細胞導入部6が設けられた収容室2に移動させ、その後、細胞導入部6から外部に導出できる。よって、複数の収容室2に細胞を効率よく収容できる。
【0049】
(4)第1連通部41を収容室2の上端部よりも上端側に配置し、第2連通部42を収容室2の下端部よりも下端側に配置した。これにより、2つの細胞凍結保存容器1を重ね合わせた場合における、収容室2と第1連通部41及び第2連通部42との干渉を防げる。よって、2つの細胞凍結保存容器1を重ね合わせた場合に、収容室2と区画領域3とをより密着させられるので、2つの細胞凍結保存容器1を保護ケース100に収容した状態における保護ケース100の内部の無駄なスペースをより減少させられる。また、2つの細胞凍結保存容器1を重ね合わせた場合に、これら細胞凍結保存容器1が高さ方向HDにずれることを防げる。
【0050】
(5)第1連通部41及び第2連通部42の厚さ(厚さ方向TDの長さ)T2を、好ましくは、収容室2の厚さ(厚さ方向TDの長さ)T1の1/2以下、より好ましくは1/4以下に構成した。これにより、2つの細胞凍結保存容器1を重ね合わせた場合における、収容室2と第1連通部41及び第2連通部42との干渉を低減できる。よって、2つの細胞凍結保存容器1を重ね合わせた場合に、収容室2と区画領域3とをより密着させられるので、2つの細胞凍結保存容器1を保護ケース100に収容した状態における保護ケース100の内部の無駄なスペースをより減少させられる。
【0051】
(6)細胞導入部6及び複数の細胞導出部7を、複数の収容室2の上端部に配置した。これにより、細胞凍結保存容器1の製造における第1溶着工程S3において、積層された第1シート状部材81及び第2シート状部材82の上端側のみを溶着することで、細胞導入部6及び複数の細胞導出部7を形成できる。よって、細胞凍結保存容器1の製造工程を簡略化できる。
【0052】
(7)収容室2に収容された細胞を細胞導出部7から採取する場合には、細胞導出部7から収容室2に注射針を刺し込んで、細胞の採取を行う。そこで、細胞導出部7を、一対のガード部73を含んで構成し、一対のガード部73を、収容室2の内部における厚さ方向TDの一方側及び他方側に配置した。これにより、細胞導出部7から収容室2の内部に収容された細胞を採取する場合に、細胞を採取するために差し込んだ注射針等が収容室2の表面部11側及び背面部12側に誤って刺さることを防げる。特に、第1実施形態においては、平面状に形成され、注射針の先端が接触しやすい背面部12に注射針が誤って刺さることを防げる。
【0053】
次に、本発明の細胞凍結保存容器の第2実施形態について、図10を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態の細胞凍結保存容器1Aを示す平面図である。尚、第2実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0054】
第2実施形態の細胞凍結保存容器1Aは、細胞導入部6及び細胞導出部7の構成において、第1実施形態と異なる。
第2実施形態では、細胞導入部6は、複数の収容室2のうちの一の収容室2の下端部に配置されている。そして、細胞導出部7は、複数の収容室2それぞれの上端部に配置されている。
第2実施形態の細胞凍結保存容器1Aによれば、上述した(1)〜(5)、(7)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0055】
(8)細胞導出部7を、複数の収容室2のそれぞれに配置した。これにより、細胞導入部6を設けた収容室2にも細胞導出部7が配置されるので、複数の収容室2のすべてを互いに分離できる。よって、細胞凍結保存容器1に収容された細胞をより効率的に使用できる。
【0056】
次に、本発明の細胞凍結保存容器の第3実施形態について、図11〜図13を参照しながら説明する。図11は、第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bを示す平面図であり、図12は、図11のF矢視図である。図13は、第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bを折り畳んだ状態を示す側面図である。
【0057】
第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bは、収容室2の数及び区画領域3Bの構成において、第1実施形態と異なる。
第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bは、図11及び図12に示すように、6つの収容室2と、5つの区画領域3Bと、を備える。第3実施形態の区画領域3Bは、幅方向WDの長さが第1長さW3である第1区画領域31Bと、幅方向WDの長さが第1長さW3よりも長い第2長さW4である第2区画領域32Bと、を備える。
【0058】
第1区画領域31Bは、6つの収容室2のうちの中央に配置される2つの収容室2の間以外の収容室2間に配置される。即ち、第3実施形態では、第1区画領域31Bは、4箇所に配置される。第1区画領域31Bの幅方向WDの長さである第1長さW3は、好ましくは、収容室2の幅方向WDの長さW1の100%〜150%である。
【0059】
第2区画領域32Bは、6つの収容室2のうちの中央に配置される2つの収容室2の間に配置される。第2区画領域32Bの幅方向WDの長さである第2長さW4は、この第2区画領域32Bを折り返した場合に、好適に収容室2と第1区画領域31Bとを嵌め合わせられるようにする観点から、第1長さW3と収容室2の厚さT1との和の100%〜150%である。
【0060】
第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bは、図13に示すように、第2区画領域32Bにおいて、表面部11同士が対向するように折り返された状態で、保護ケースに収容される。ここで、第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bにおいては、第2区画領域32Bの幅方向WDの長さW4が第1区画領域31Bの長さW3よりも長く構成されている。これにより、細胞凍結保存容器1Bを折り返した場合に、対向する収容室2と第1区画領域31Bとを好適に嵌め合わせられる。
【0061】
第3実施形態の細胞凍結保存容器1Bによれば、上述した(2)〜(5)、(7)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0062】
(9)区画領域3Bを、幅方向WDの長さが第1長さW3の第1区画領域31Bと、幅方向WDにおける長さが第1長さW3よりも長い第2区画領域32Bと、を含んで構成し第2区画領域32Bを、複数の収容室2のうちの中央に位置する2つの収容室2の間に配置した。これにより、細胞凍結保存容器1Bを、第2区画領域32Bにおいて、表面部11同士が対向するように折り返すことで、対向する収容室2と第1区画領域31Bとを好適に嵌め合わせられる。よって、保護ケース100に無駄なスペースを設けることなく細胞凍結保存容器1Bを収容できるので、複数の収容室2を有しつつ、所定の容積中に効率的に細胞を保存できる。
【0063】
以上、本発明の細胞凍結保存容器の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、細胞凍結保存容器1,1Aを3つの収容室2を含んで構成し、第3実施形態では、細胞凍結保存容器1Bを、6つの収容室2を含んで構成したが、これに限らない。即ち、細胞凍結保存容器を、例えば、4つ、5つ、8つ等の他の数の収容室を含んで構成してもよい。
【0064】
また、第3実施形態では、第1連通部41及び第2連通部42を、第1区画領域31B及び第2区画領域32Bに設けたが、これに限らない。即ち、図14に示すように、第1連通部41及び第2連通部42を、第1区画領域31Bのみに設けてもよい。これにより、保護ケースに収容される場合に折り曲げられる第2区画領域32Bに第1連通部41及び第2連通部42が設けられないので、第2区画領域32Bを容易に折り曲げられる。
尚この場合、細胞導入部6を、例えば、6つの収容室2のうちの両端の収容室2にそれぞれ設けてもよい。
【0065】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、連通部4を、第1連通部41及び第2連通部42により構成したが、これに限らない。即ち、連通部4を、図15に示すように、第1連通部41のみにより構成してもよく、また、図16に示すように、連通部4を、第2連通部42のみにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 細胞凍結保存容器
2 収容室
3 区画領域
4 連通部
41 第1連通部
42 第2連通部
6 細胞導入部
7 細胞導出部
11 表面部
12 背面部
WD 幅方向(第1方向)
HD 高さ方向(第2方向)
TD 厚さ方向(第3方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に所定間隔をあけて配置される複数の収容室と、
隣り合って配置される2つの前記収容室の間に配置される一又は複数の区画領域と、
前記区画領域における前記第1方向に直交する第2方向の一端側及び/又は他端側に配置され、隣り合って配置される2つの前記収容室を連通させる一又は複数の連通部と、を備え、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の一方側に表面部が形成され、該第3方向の他方側に背面部が形成される細胞凍結保存容器であって、
前記表面部は、前記複数の収容室及び前記連通部が前記第3方向の一方側に突出して凹凸状に形成されると共に、前記背面部は、平面状に形成され、
前記区画領域の前記第1方向における長さは、前記収容室の前記第1方向における長さよりも長く構成される細胞凍結保存容器。
【請求項2】
前記複数の収容室それぞれにおける前記表面部側の端面、及び前記区画領域の前記表面部側の面は、平面状に形成される請求項1に記載の細胞凍結保存容器。
【請求項3】
前記連通部は、
前記区画領域における前記第2方向の一端側に配置される第1連通部と、
前記区画領域における前記第2方向の他端側に配置される第2連通部と、を備える請求項1又は2に記載の細胞凍結保存容器。
【請求項4】
前記第1連通部は、前記収容室の前記第2方向における一端部の位置よりも該第2方向の一端側に配置され、
前記第2連通部は、前記収容室の前記第2方向における他端部の位置よりも該第2方向の他端側に配置される請求項3に記載の細胞凍結保存容器。
【請求項5】
前記連通部の前記第3方向における長さは、前記収容室の前記第3方向における長さの1/2以下である請求項1〜4のいずれかに記載の細胞凍結保存容器。
【請求項6】
前記複数の収容室のいずれかに設けられ、該複数の収容室に細胞を導入する細胞導入部と、
前記複数の収容室に設けられ、該収容室に収容された細胞を導出する細胞導出部と、を更に備える請求項1〜5のいずれかに記載の細胞凍結保存容器。
【請求項7】
前記細胞導出部は、前記複数の収容室それぞれにおける前記第2方向の一端部に設けられ、
前記細胞導入部は、前記複数の収容室のうちの一の収容室における前記第2方向の他端部に設けられる請求項6に記載の細胞凍結保存容器。
【請求項8】
前記区画領域は、前記第1方向における長さが第1長さの第1区画領域と、前記第1方向における長さが前記第1長さよりも長い第2長さの第2区画領域と、を備え、
前記第2区画領域は、前記複数の収容室のうちの中央に位置する2つの前記収容室の間に配置される請求項1〜7のいずれかに記載の細胞凍結保存容器。
【請求項9】
前記第2区画領域には、前記連通部は配置されない請求項8に記載の細胞凍結保存容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−5825(P2013−5825A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138403(P2011−138403)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】