説明

細胞処理装置

【課題】装置の簡素化及び処理速度の高速化を図ることができる細胞処理装置を提供する。
【解決手段】ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置。前記ろ過膜を有するホルダを配置する配置部と、前記配置部に配置された前記ホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、前記配置部に配置された前記ホルダに試薬を分注する第2分注部と、ろ過膜上の細胞を遊離させるための液体を供給する液体供給部とを備えている。前記第1分注部によって前記ホルダのろ過膜上に細胞懸濁液を分注し、前記第2分注部によって前記ろ過膜上の細胞に試薬を分注し、前記液体供給部によって前記ろ過膜上から試薬処理された細胞が回収されるように液体を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞処理装置に関する。さらに詳しくは、ろ過膜を用いて人体などの細胞に所定の処理を施すための細胞処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮頸部のスクリーニング法として、通常は細胞診が利用されている。ここで、子宮頸部の細胞診は、子宮頸部表面を綿棒やスクレーパー等の専用の採取器具で擦過し、擦過した細胞を、直ちにスライドグラス上に塗抹して標本を作り、顕微鏡等で観察することにより診断を行っている。あるいは健康診断のように大量の検体を処理する必要がある場合には、擦過により採取した細胞群を、固定液中で保存して検査センターに輸送し、検査センターで、塗抹標本をつくり、それをパパニコロウ染色して、顕微鏡で観察して病変の診断情報を得ることが行われている。
【0003】
いずれの場合であっても、個々の検体について塗抹標本を作製し、顕微鏡観察しなければならないため、処理が煩雑で時間を要することや、診断に高度の習熟を要することから、近年細胞診の自動化の試みが検討されている。
【0004】
細胞診の自動化方法としては、例えば、フローサイトメトリが挙げられる。フローサイトメトリは、蛍光標識した任意の抗体で細胞を免疫し、その細胞の懸濁液をフローセルに流してレーザ光を照射し、個々の細胞から発せられる蛍光情報や散乱光情報を測定することによって、短時間に多量の細胞から複数の測定情報を得て、相関解析と統計解析を行う方法である。細胞診においては、癌などの病変に依存する任意のタンパクをマーカーとして選択し、このマーカーに対する蛍光標識特異的抗体で処理した細胞の懸濁液をフローサイトメータで測定することにより、癌細胞の有無を測定することができる。このような細胞の染色工程には、細胞と試薬の反応の工程と、溶液の交換による細胞の洗浄工程とが必要になる。
【0005】
このような工程を経て、フローサイトメータ用の測定試料を調製する方法としては、細胞と溶液の比重差を利用した遠心分離法が挙げられる。しかしながら、遠心分離法は、細胞処理装置が大型化することや安全性の観点からあまり自動化に適した技術ではない。一方、遠心分離法以外の方法として、細胞の大きさを利用する濾過法が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、弾性変形可能な材料の濾過膜を用い、弾性変形を利用してポア径を変化させて細胞を濾過・回収する技術が記載されている。すなわち、特許文献1の技術では、圧縮状態で小さいポア径を有する濾過膜で細胞を捕捉し、その後非圧縮状態にして該濾過膜のポア径を大きくして、逆方向から供給した液体で捕捉されていた細胞を該濾過膜から離脱させる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、濾過膜の延伸・圧縮をするための装置が必要であり、また複数の濾過膜を用いるため、工程が複雑でありコストがかかるという欠点がある。また、細胞を回収するための回収液が多量に必要であり、回収液中の細胞含有率が低くなるため、フローサイトメータ用の測定試料の調製には不適であるという問題もある。
【0008】
【特許文献1】特開平10−137557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、1つのろ過膜を用いて当該ろ過膜上の細胞に対して処理を行い、当該処理済の細胞を効率よく回収することが可能な細胞処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の細胞処理装置は、ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置であって、前記ろ過膜を有するホルダを配置する配置部と、前記配置部に配置された前記ホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、前記配置部に配置された前記ホルダに試薬を分注する第2分注部と、ろ過膜上の細胞を遊離させるための液体を供給する液体供給部とを備え、前記第1分注部によって前記ホルダのろ過膜上に細胞懸濁液を分注し、前記第2分注部によって前記ろ過膜上の細胞に試薬を分注し、前記液体供給部によってろ過膜上から試薬処理された細胞が回収されるように液体を供給することを特徴としている。
【0011】
本発明の細胞処理装置は、第1分注部によってホルダのろ過膜上に細胞懸濁液を分注し、第2分注部によってろ過膜上の細胞に試薬を分注し、液体供給部によってろ過膜上から試薬処理された細胞が回収されるように液体を供給するように構成されているので、1つのろ過膜上に分注された細胞に対して試薬処理、回収処理を自動的に行うことができる。
【0012】
配置部に配置されたホルダに分注された液体をろ過膜を介して吸引する吸引部をさらに備えるのが好ましい。この場合、ろ過膜上に分注された液体を吸引することにより、ろ過膜上における液体の置換を効率的に行うことができる。
【0013】
吸引部が、ろ過膜上に所定の液体を残存させるように吸引するのが好ましい。この場合、ろ過膜上に所定の液体を残存させるため、細胞がろ過膜に強く固着あるいは付着することがないので、細胞に損傷や変形を与えることがない。
【0014】
ろ過膜上の液体を検知する液面センサを備えているのが好ましい。この場合、ろ過膜上の液体を吸引部によりろ過膜を介して吸引するに際し、液面センサでろ過膜上の液体を検知し、その信号に基づいて前記吸引部の吸引動作を制御するようにすることができる。これにより、ろ過膜上に所定量の液体を残存させるべく吸引部で液体を吸引することができる。
【0015】
液体供給部材が、ろ過膜上の細胞存在領域と対向して配置される対向面、対向面に設けられ、ろ過膜と対向面との間隔を規定するスペーサー部、および液体を供給する供給口を備えるのが好ましい。この場合、ろ過膜上の細胞存在領域と対向して配置される対向面と、この対向面に設けられ、ろ過膜と対向面との間隔を規定するスペーサー部という比較的簡素な構成により、細胞をろ過膜から遊離する力を作用させるように液体を供給することが可能となる。
【0016】
前記細胞存在領域、対向面及びスペーサー部により形成される流路がらせん状であるのが好ましい。流路がらせん状であると、流れの抵抗が小さいので、スムーズに液体をろ過膜の細胞存在領域に供給することができる。
【0017】
ろ過膜の細胞存在面の背面側に圧力を付与する空圧源を備えているのが好ましい。ろ過膜上の細胞を遊離させるために回収液をろ過膜上に供給すると、ろ過膜上に供給された液体がその供給圧によってろ過膜を透過する漏れ流となることが考えられる。この場合、前記空圧源を設けることで、ろ過膜の細胞存在面の背面側に空気により圧力を付与してろ過膜の変形及び漏れ流を防止することができる。その結果、液体を効率よく一様にろ過膜の細胞存在領域に供給することができ、ろ過膜上の細胞を効率よく回収することができる。
【0018】
空圧源が、ろ過膜の細胞存在面の背面側との連通状態を遮断するバルブ手段を備えているのが好ましい。所定の圧力をろ過膜の細胞存在面の背面側に付与した後に、バルブ手段により、空圧源とろ過膜の細胞存在面の背面側との連通状態を遮断することで、ろ過膜の背面側の空間を密封された閉空間とすることができ、回収液がろ過膜上に供給されたときのろ過膜の透過流をより小さくすることができる。
【0019】
ホルダ配置部が、前記ホルダを環状に配置可能であり、且つ、回転移動可能に構成されているのが好ましい。ホルダを環状に配置したホルダ配置部を回転移動可能にすることで、ホルダ配置部を回転させて複数の被処理物を自動的に処理する構成を容易に実現することができる。
【0020】
ろ過膜を、細胞が載置されるメンブレンフィルタと、このメンブレンフィルタを支持するためのメッシュフィルタとの2層構造とすることができる。このような2層構造とすることで、ろ過膜上の細胞の処理又は回収工程におけるろ過膜の破損を防止するとともに、変形を小さくすることができる。これにより、ろ過膜の機能を充分に発揮させることができる。
【0021】
本発明の細胞処理装置は、ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置であって、
前記ろ過膜を有するホルダを複数個配置可能なホルダ配置部と、
このホルダ配置部に配置されたホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、
前記ホルダ配置部に配置されたホルダに試薬を分注する第2分注部と、
前記ホルダに分注された液体をろ過膜を介して吸引し得る吸引部と、
この吸引部の吸引動作を制御する制御部と、
試薬処理されたろ過膜上の細胞を遊離させるための回収液を供給する回収液供給部と
を備えており、ろ過膜上で細胞を処理する過程において、当該ろ過膜上に所定量の液体を残存させるべく前記吸引部による液体の吸引を制御し得るように構成されていることを特徴としている。
【0022】
本発明の細胞処理装置は、ホルダに分注された液体をろ過膜を介して吸引し得る吸引部と、この吸引部の吸引動作を制御する制御部とを備えており、ろ過膜上で細胞を処理する過程において、当該ろ過膜上に所定量の液体を残存させるべく前記吸引部による液体の吸引を制御し得るように構成されている。したがって、処理過程において、液体分の欠如により細胞がろ過膜に強く固着あるいは付着することがないので、細胞に損傷や変形を与えることなく1つのフィルタ上で試薬処理や洗浄処理などの処理を行うことができる。その結果、従来技術のように試薬の交換率を確保するために大量の試薬を必要とすることがなることから、装置の簡素化及び処理速度の高速化を図ることができる。
【0023】
ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置であって、前記ろ過膜を有するホルダを配置する配置部と、前記配置部に配置された前記ホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、前記配置部に配置された前記ホルダに試薬を分注する第2分注部と、ろ過膜に対向して配置される対向面、前記対向面に設けられ、ろ過膜と対向面との間隔を規定するスペーサー部、および前記液体を供給する供給口を有し、ろ過膜上の細胞を遊離させるための液体を供給する液体供給部とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の細胞処理装置は、ろ過膜に対向して配置される対向面、前記対向面に設けられ、ろ過膜と対向面との間隔を規定するスペーサー部、および前記液体を供給する供給口を有し、ろ過膜上の細胞を遊離させるための液体を供給する液体供給部とを備えることによって、細胞を効率的にろ過膜上から遊離させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の細胞処理装置によれば、1つのろ過膜を用いてろ過膜上の細胞に対して連続的に試薬の交換処理を行い、処理済の細胞を回収することにより、装置の簡素化及び処理速度の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の細胞処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る細胞処理装置の平面説明図である。この細胞処理装置1は、細胞懸濁液中の細胞をろ過膜でろ過し、ろ過膜上の細胞に対して染色などの試薬処理と洗浄液での洗浄処理を施した後、ろ過膜上の細胞を回収液中に回収する装置である。
【0027】
細胞処理装置1は、図1及び図10に示すように、フィルタ(ろ過膜)を有するホルダ2が複数個配置されるホルダ配置部10、前記ホルダ2に細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部である検体分注ユニット20、前記ホルダ2に試薬を分注する第2分注部である試薬分注ユニット30、試薬処理されたろ過膜上の細胞を遊離させるための回収液を供給する回収液供給部である回収液供給ユニット40、回収液中の検体を回収する検体回収ユニット50、使用済みのホルダ2をホルダ配置部10から取り外すホルダ脱着ユニット60、回収液供給ユニット40を洗浄するための洗浄スピッツ80、細胞懸濁液を収容するバイアルを移送するためのバイアル移送部71、回収ユニット40により回収液中から回収された検体を収容するチューブを移送するためのチューブ移送部130、ホルダ配置部を回転させる回転駆動部110、ホルダ2のフィルタ上の液体を吸引するための吸引ユニット120及び制御部101により主に構成されている。また、制御部101は、検体分注ユニット20、試薬分注ユニット、回収液供給ユニット40、検体回収ユニット50、回転駆動部110、吸引ユニット120、ホルダ脱着ユニット60、洗浄スピッツ80、チューブ移送部130およびバイアル移送部71に電気的に接続されている。
【0028】
ホルダ配置部10は、リング形状を呈しており、周方向に沿って所定間隔で複数の凹所11(図3〜4参照)が形成されている。そして、各凹所11内にフィルタを有するホルダ2が着脱自在に配設される。これにより、ホルダ2は所定の間隔で環状に配置される。ホルダ配置部10は、図示しない駆動手段(回転駆動部110)により所定のピッチで回転可能であり、これにより各ホルダ2を検体分注位置、試薬分注位置など必要な処理が施される位置に移動させることができる。ホルダ2を環状に配置したホルダ配置部10を回転移動可能にすることで、当該ホルダ配置部10を回転させて複数の被処理物を自動的に処理する構成を容易に実現することができる。
【0029】
ホルダ2は、図3〜4に示されるように、略短円筒形状を呈しており、ポリプロピレンなどの合成樹脂で作製されている。なお、補強のために前記合成樹脂中に10重量%程度のグラスファイバーを混入させるようにしてもよい。ホルダ2の一方の端面2a(凹所11内に挿入される側の端面)付近には、細胞懸濁液中の細胞が載置されるフィルタ3が張設されている。ホルダ2の他方の端面付近の外周面には、断面略L字形のリング状係止部4が形成されている。この係止部4は、ホルダ2の外周面から径方向外方に突設されたつば部4aと、このつば部4aの先端から軸方向に沿って前記一方の端面側に延設された垂下部4bとからなっている。そして、この垂下部4bの先端には、径方向内方に突出する第1爪部4cが形成されている。この第1爪部4cは、前記ホルダ配置部10の凹所11の開口周縁に立設されたリング状の固定部5の外周面に形成された、径方向外方に突出する第2爪部5bと係合し、ホルダ2をホルダ配置部10に着脱可能に固定する役割を果たしている。
【0030】
前記フィルタ3は、図5に示されるように、細胞が載置されるメンブレンフィルタ3aと、このメンブレンフィルタ3aを支持するためのメッシュフィルタ3bとの2層構造を有している。メンブレンフィルタ3aは、直接細胞や試薬と接する反応の場であることから、適切な耐薬性を有しかつ細胞が付着しにくい材料で作製するのが好ましく、例えば、親水性のポリテトラフルオロエチレン、親水性ナイロン、親水性ポリビニリデンフロライド、親水性ポリカーボネイト、親水性ポリプロピレン、親水性ポリスルフォン及び親水性ポリエーテルスルホンなどで作製することができる。また、ポア径は、処理する細胞の大きさに応じて選定すればよく、本発明において特に限定されるものではないが、通常、1〜5μmが目安である。一方、メッシュフィルタ3bは、液体分注時などにおける前記メンブレンフィルタ3aの変形を抑制するために設けられており、当該メンブレンフィルタ3aよりも弾性が小さく、強度の大きい材料、例えば、ナイロンなどの合成樹脂でメッシュ状に作製されている。メッシュサイズは、特に限定されるものではないが、例えば20〜500μmとすることができる。フィルタ3を2層構造とすることで、当該フィルタ3上の細胞の処理又は回収工程におけるフィルタ3の破損を防止するとともに、変形を小さくすることができる。これにより、フィルタ3の機能を充分に発揮させることができる。
【0031】
かかるフィルタ3は、金型にメンブレンフィルタ3a及びメッシュフィルタ3bを重ねたものを配置し、ついでホルダ2を構成する合成樹脂を用いてアウトサート成型することで当該ホルダ2と一体化させることができる。これにより、少ない工程でフィルタ3付きのホルダ2を作製することができる。なお、ホルダ2とフィルタ3を別々に作製し、フィルタ3を接着剤などによりホルダ2に固着することもできる。
【0032】
検体分注ユニット20は、Z軸(鉛直軸)廻りに回動可能であるとともに当該Z軸に沿って上下動可能なアーム21と、この回動アーム21の先端部(回動軸と反対側の端部)に取り付けられた検体分注用ピペットとを備えている。アーム21はステッピングモータ20aにより上下動、回動可能に構成されている。さらに、検体分注ユニット20は、検体分注用ピペットにより検体を吸引および分注するための図示しないポンプ手段を備えている。ベルトコンベアからなるバイアル移送部71により移送されるバイアル72内に収容されている、細胞を含む細胞懸濁液を前記検体分注用ピペットにより吸引して、ホルダ2のフィルタ3上に分注する。なお、バイアル移送部71は、ベルトコンベアを移送させるための駆動モータ71aを備えている。
【0033】
試薬分注ユニット30は、図6に示されるように、細胞処理装置1が配置されるベースプレート31上に立設された支柱32と、この支柱32の上端から水平方向に突設されたアーム33と、このアーム33により垂直状態に保持された試薬分注ピペット34とで主に構成されている。試薬分注ピペット34の根元側端部には、試薬注入チューブ73が接続されており、この試薬注入チューブ73の他端側は、図示しないポンプ手段を経由して試薬収容部74(図1参照)に配設された試薬ボトル75に接続されている。
【0034】
試薬分注ユニット30は、ホルダ配置部10に配置された複数のホルダに試薬の分注を行うためにホルダ配置部10の外周に沿って配設されている。ホルダ2が試薬分注位置に回転移動させられると、ポンプ手段が駆動されて、試薬分注ピペット34先端よりホルダ2のフィルタ3上に所定量の試薬が分注される。
【0035】
また、前記アーム33には、フィルタ3上の液体を検出する液面センサ76が取り付けられており、この液面センサ76により、フィルタ3上の液体の液面を検出する、換言すれば、液面までの距離を検出するように構成されている。そして、この液面センサ76からの信号に従って、後述するように、前記ホルダ2のフィルタ3の背面側(細胞懸濁液や試薬が分注される側と反対側)を負圧にする吸引手段の駆動を停止させるようにしている。
【0036】
回収液供給ユニット40は、前記検体分注ユニット20と同様に、Z軸廻りに回動可能であるとともに当該Z軸に沿って上下動可能なアーム41を備えている。アーム41はステッピングモータ40aにより上下動、回動可能に構成されている。このアーム41の先端付近には、試薬処理されたフィルタ3上の細胞を回収するための筒体41(図7〜8参照)が接続されている。この筒体41の根元側には、回収液供給チューブ(図示せず)が接続されており、容器に収容されている回収液が、図示しないポンプ手段により当該回収液供給チューブ及び筒体41を経由してフィルタ3に供給されるようになっている。
【0037】
前記筒体41の先端には、図7〜8に示されるように、フィルタ3の表面に一定の流れの回収液を供給する回収液供給部材42が設けられている。この回収液供給部材42は、前記フィルタ3上の細胞存在領域と対向して配置される対向面43と、この対向面43に設けられ、フィルタ3と対向面43との間隔を規定するスペーサー部44と、前記回収液を供給する供給口45とを備えている。
【0038】
前記回収液供給部材42においては、前記フィルタ3上の細胞存在領域、対向面43及びスペーサー部44により形成されるらせん状の流路46に前記供給口45から回収液が供給される。この場合に、前記回収液供給部材42は、細胞を遊離させるための回収液を供給する工程において、フィルタ3上の細胞存在領域にスペーサー部44を接した状態で配設される。フィルタ3上の細胞存在領域にスペーサー部44を接した状態で回収液供給部材42を配設することで、フィルタ3上の細胞に対し当該フィルタ3に対して平行な流路に回収液を供給することで、フィルタ3面に対して平行な回収液の流れを作る。このことにより、フィルタ面の細胞存在領域に一様で強力な剪断力を作用させるように回収液を供給することが可能となり、細胞を損傷させることなくきれいな形で当該細胞をろ過膜から遊離させて回収液中に分散した状態で効率よく回収液中に回収することができる。さらに、流路がらせん状であるので、円形のフィルタ面の細胞存在領域に一様で強力な流れの回収液をフィルタ3の細胞存在領域に供給することができる。なお、細胞をフィルタ3から遊離させる剪断力は、供給される回収液の単位時間当たりの流量、スペーサー部44の高さ、及びスペーサー部44により形成される流路の幅によって調整することができ、処理する細胞の状態や量に応じて適宜設定することができる。
【0039】
前記流路に供給された回収液は、らせん状に細胞存在領域を流れた後に、当該らせん状の流路の終端付近に設けられた、フィルタ3から遊離した細胞を含む回収液を排出する排出口47より、回収液を貯留する貯留部48に排出される。この貯留部48は、凹所からなっており、前記回収液供給部材42における、対向面43と反対側の面に形成されている。
【0040】
検体回収ユニット50は、前記検体分注ユニット20と同様に、Z軸廻りに回動可能であるとともに当該Z軸に沿って上下動可能なアーム51と、この回動アーム51の先端部(回動軸と反対側の端部)に取り付けられた検体回収用ピペット(図示せず)を備えている。アーム51はステッピングモータ50aにより上下動、回動可能に構成されている。さらに、検体回収ユニット50は、検体回収用ピペットにより検体を吸引および分注するための図示しないポンプ手段を備えている。検体回収ユニット50は、前記回収液供給部材42の貯留部48内の回収液(フィルタ3から遊離した細胞を含んでいる)を回収する。前記検体回収用ピペットの吸い口は、当該検体回収用ピペットの軸心より3〜20度程度オフセットするように配置されており、前記アーム51を上下動及び回動させることで、前記吸い口を貯留部48内の回収液中に配置し、ついで図示しないポンプ手段を駆動させて回収液の吸引を行う。
【0041】
回収液を吸引した後、アーム51は所定角度回動し、ついで、前記検体回収用ピペットは、ベルトコンベアからなるチューブ移送部130により移送されるチューブ49内に回収液を排出する。なお、チューブ移送部130は、ベルトコンベアを移送させるための駆動モータ130aを備えている。
【0042】
貯留部48内の回収液が吸引された回収液供給部材42は、洗浄スピッツ80により洗浄される。この洗浄スピッツ80は、図9に示されるように、上部が開放された有底円筒体81からなっており、有底円筒体81の側壁82には、洗浄液の入口ポート83及び出口ポート84が形成されている。前記入口ポート83及び出口ポート84には、洗浄液を供給するためのチューブ85及び排出するためのチューブ86がそれぞれ接続されている。入り口ポート83と出口ポート84は図示しないポンプ手段に接続されている。なお、洗浄液は、ポンプ手段により洗浄液ボトル76から入口ポート83を介して、洗浄スピッツ80内部に供給される。洗浄スピッツ80内部に供給された洗浄液は、ポンプ手段により出口ポート84を介して吸引され、排出される。また、有底円筒体81の底部87には、排液口88が形成されており、図示しない吸引手段により有底円筒体81内の洗浄液が吸引されるように構成されている。有底円筒体81内において、回収液供給部材42は複数回上下動され、その間に入口ポート83から供給される洗浄液によって回収液供給部材42が洗浄される。
【0043】
ホルダ脱着ユニット60は、先端に開閉可能な把持部61を備えたアーム62を有しており、このアーム62は、上下動及び進退可能に構成されている。後退位置にあるアーム62を前進させ、ついで前記把持部61を閉じて、ホルダ2の口部を把持し、この状態でアーム62を上昇させて、当該ホルダ2を凹所11内から取り出す。そして、アーム62を前進させて、把持部61を開くことで、把持していたホルダ2をホルダ廃棄部63に落とす。このホルダ廃棄部63に溜まった使用済みのホルダ2は、ユーザにより適宜回収され、廃棄される。
【0044】
図1において、90は遮光カバーであり、細胞を染色するのに用いた蛍光染料が光により退色し、フローサイトメータで用いる励起用のレーザ光を当てたときに光らなくなるのを防止するために設けられている。
【0045】
つぎに、図2を参照しつつ、吸引ユニット120の構成とフィルタ3上の液体を吸引する機構及び当該フィルタ3の背面側に圧力を付与する機構について説明をする。
吸引ユニット120は、ホルダ配置部10と、第1バルブ14と、第2バルブ15と、第3バルブ19と、陰圧源16と、陽圧源17とから構成されている。そして、ホルダ2の裏面側に形成された第1ポート12には、配管13の一端が接続されており、この配管13の他端側は、第1バルブ14及び第2バルブ15を経由して吸引部である陰圧源16と、空圧源である陽圧源17とに接続されている。また、ホルダ配置部10の側面に形成された第2ポート18には大気開放管8の一端が接続されており、この大気開放管8の他端は第3バルブ19を経由して大気に開放されている。前記第1バルブ14及び第3バルブ19は、開閉機能を有する開閉バルブであり、一方、前記第2バルブ15は、流路の切換を行う切換バルブである。
【0046】
まず、フィルタ3上に分注した液体を、その一部をフィルタ3上に残存させつつ残りを当該フィルタ3を介して吸引する場合、第1バルブ14を開にし、第3バルブ19を閉にする。ついで、第2バルブ15を陰圧源16側に切り替えた後に当該陰圧源16を駆動させて、前記フィルタ3の背面側を負圧にする。これにより、フィルタ3上の液体を当該フィルタ3を介して吸引することができる。その際、前記液面センサ76により、フィルタ3上の液体の液面までの距離が検出され、この液面センサ76からの信号に従って、第1バルブ14を閉にし、第3バルブ19を開にして、フィルタ3の背面側を大気圧に開放する。これにより、フィルタ3上に確実に所定量の液体を残存させつつ不要な液体を吸引することができる。
【0047】
また、試薬処理、洗浄などの所定の処理が施された細胞を、回収液を供給して当該回収液中に回収する場合、第3バルブ19を開、第1バルブを開、第2バルブを陰圧側に切り替え、ホルダ配置部10及びチューブ移送部13内部の液を排出して空気で置換した後、第3バルブ19を閉にし、次に第2バルブ15を陽圧源17側に切り替えた後に当該陽圧源17を駆動させて、前記フィルタ3の背面側を陽圧にする。フィルタ3上の細胞を遊離させるために回収液をフィルタ3上に供給すると、当該回収液によってフィルタ3上に供給された回収液がその供給圧によってフィルタ3を透過する漏れ流となることにより、効果的にフィルタ面に平行な流れを生むことが出来ない。またフィルタ3が下方に突出するように撓み、これにより、回収液の流れに乱れが生じて細胞を効率よく回収することができないことが考えられる。しかしながら、フィルタ3の背面側を空気により陽圧にすることで当該フィルタ3の変形及び前記漏れ流を防止することができる。その結果、回収液を効率よくスムーズにフィルタ3の細胞存在領域に供給することができ、当該フィルタ3上の細胞を効率よく回収することができる。
【0048】
なお、フィルタ3の背面側を所定の陽圧にした後に、前記第1バルブ14を閉にするのが好ましい。所定の圧力をフィルタ3の細胞存在面の背面側に付与した後に、前記陽圧源17とフィルタ3の背面側との連通状態を遮断することで、前記フィルタ3の背面側の空間を密封された閉空間とすることができ、回収液がフィルタ3上に供給されたときの当該フィルタ3の変形をより小さくすることができる。
【0049】
前記所定の圧力(陽圧)は、フィルタ3上に供給される回収液の液圧以上であり、かつフィルタ3がエアを通さないように当該フィルタ3のバブルポイント以下に設定するのが好ましい。このような状態でフィルタ3上に回収液が供給されると、フィルタ3の変形及び漏れ流が防止され効率よく回収液の流れを形成することができる。
【0050】
次に、図10に示された回転駆動部110について説明する。回転駆動部110は、ホルダ設置部10を所定のピッチで回転させる回転駆動源(図示せず)を備えている。そして、ホルダ設置部10は、制御部101から回転駆動部110に供給された駆動パルス信号のパルス数に応じた分だけ回転し、停止する。
【0051】
なお、制御部101は、供給した駆動パルス信号のパルス数をカウントすることにより、ホルダ設置部10の原点位置からのホルダ設置部10の回転移動量を決定し、ホルダ設置部10の回転移動を制御することが可能である。また、制御部101は、ホルダ設置部10を3分間に1ピッチ、左回りに回転移動するように回転駆動部110を制御している。
【0052】
制御部101は、図11に示すように、CPU101aとROM101bと、RAM101cと、通信インターフェース101dとから主として構成されている。
CPU101aは、ROM101bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM101cに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM101bは、CPU101aに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ等を記憶している。RAM101cは、ROM101bに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU101aの作業領域として利用される。
【0053】
通信インターフェース101dは、検体分注ユニット20、試薬分注ユニット30、回収液供給ユニット40、検体回収ユニット、回転駆動部110、吸引ユニット120、ホルダ脱着ユニット60、洗浄スピッツ80、チューブ移送部130及びバイアル移送部71の各部を駆動するためのCPU501aからの指令を送信するための機能を有する。
【0054】
つぎに、本実施の形態に係る細胞処理装置を用いた細胞処理の方法の一例について説明をする。この方法において、細胞懸濁液中の細胞は、例えば、患者から採取された細胞であり、その細胞を検査することにより診断を支援する情報を得るためのものである。例えば、子宮頸癌の診断には、子宮頸部由来細胞を溶媒に懸濁した細胞懸濁液が用いられる。
【0055】
図1に示すように、ホルダ設置部10は、ホルダ2を51個設置でき、回転駆動部110により3分間に1ピッチ、左回りに回転移動し、各所定位置において各処理が行われる。つまり、51の所定位置において、各処理が行われる。各所定位置に対応して、1P〜51Pの位置番号が付与されている。以下、図12〜16、図17に示すフローチャートをもちいて、位置番号に対応して、ホルダ設置部10に設置されたホルダ2における処理工程について説明する。なお、制御部101による回転駆動部110の制御については、ホルダ設置部10を3分間に1ピッチ、左回りに回転移動させるだけなので、その説明については省略する。
【0056】
<位置番号1P〜12P>
まず、ユーザがホルダ設置部10の1P〜12Pにホルダ2を設置する。
【0057】
<位置番号13P>
次に、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、希釈/洗浄液を13Pのホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS1)。ついで、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS2)。
ここで、ステップS2における吸引処理を図17に示すフローチャートをもちいて、具体的に説明する。制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、フィルタ3の背面側から弱陰圧をかけてフィルタ3上の液体の吸引を開始する(ステップS101)。液面センサ76にてフィルタ3上の液面を検知し、所定の液面レベルにあるか否かを判断する(ステップS102)。所定の液面レベルにない場合、所定の液面レベルになるまで、ステップS102の処理を繰り返す。所定の液面レベルにある場合には、制御部101は、第1バルブ14を閉にし、第3バルブ19を開にして、フィルタ3の背面側を大気圧に開放、その直後に閉にすることにより、陰圧による吸引を停止する(ステップ103)。このように、フィルタ3上の液面を検知することにより、フィルタ3が常に液体で濡れた状態になるようにしている。
なお、以降の吸引処理は、ステップS2と同様であるため、その説明は省略する。
【0058】
<位置番号14P>
次に、制御部101は、子宮頸部擦過検体から調整された細胞懸濁液(径が3〜200μm程度の細胞を1mLの固定液中に約1×105個含有)が収容されたバイアル72をバイアル移送部71により吸引位置まで移送し(ステップS3)、移送されたバイアル72から細胞懸濁液を検体分注アーム20の検体分注用ピペットにより吸引し、ホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS4)。フィルタ3は、固液分離膜としての親水性PTFE平膜フィルタ(ポア径0.4〜5μm)を60μm程度の網状シート上に積層した2層構造のものを用いた。
【0059】
<位置番号15P〜16P>
次に、15Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS5)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS6)。
次に、16Pにおいて、制御部101は、同様な処理を行う(ステップS7,8)。
【0060】
<位置番号17P>
次に、17Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS9)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS10)。さらに、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS11)。
【0061】
<位置番号18P>
次に、18Pにおいて、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から賦活化剤を分注する(ステップS12)。
【0062】
<位置番号19P〜20P>
次に、19P〜20Pにおいて、制御部101は処理を行わない(細胞と賦活化剤とを反応させるための時間が設けられる)。
【0063】
<位置番号21P〜22P>
次に、21Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS13)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS14)。
次に、22Pにおいて、制御部101は、同様な処理を行う(ステップS15,16)。
【0064】
<位置番号23P>
次に、23Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS17)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS18)。さらに、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS19)。
【0065】
<位置番号24P>
次に、24Pにおいて、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から賦活化反応停止剤を分注する(ステップS20)。
【0066】
<位置番号25P〜28P>
次に、25P〜28Pにおいて、制御部101は処理を行わない(賦活化剤と賦活化反応停止剤とを反応させるための時間が設けられる)。
【0067】
<位置番号29P>
次に、29Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS21)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS22)。さらに、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS23)。
【0068】
<位置番号30P>
次に、30Pにおいて、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75からブロッキング剤をフィルタ3上に分注する(ステップS24)。
【0069】
<位置番号31P〜34P>
次に、25P〜28Pにおいて、制御部101は処理を行わない(細胞とブロッキング剤とを反応させるための時間が設けられる)。
【0070】
<位置番号35P>
次に、35Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS25)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から抗体をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS26)。
【0071】
<位置番号36P〜39P>
次に、36P〜39Pにおいて、制御部101は処理を行わない(細胞と抗体とを反応させるための時間が設けられる)。
【0072】
<位置番号40P〜41P>
次に、40Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS27)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS28)。
次に、41Pにおいて、制御部101は、同様な処理を行う(ステップS29,30)。
【0073】
<位置番号42P>
次に、42Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS31)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS32)。さらに、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS33)。
【0074】
<位置番号43P>
次に、43Pにおいて、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から染色液を分注する(ステップS34)。
【0075】
<位置番号44P〜45P>
次に、44P〜45Pにおいて、制御部101は処理を行わない(抗体と染色とを反応させるための時間が設けられる)。
【0076】
<位置番号46P〜48P>
次に、46Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS35)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS36)。
次に、47P〜48Pにおいて、制御部101は、同様な処理を行う(ステップS37〜40)。
【0077】
<位置番号49P>
次に、49Pにおいて、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS41)。そして、制御部101は、試薬分注ユニット30を制御することにより、試薬ボトル75から希釈/洗浄液をホルダ2のフィルタ3上に分注する(ステップS42)。さらに、制御部101は、吸引ユニット120を制御することにより、吸引処理を行う(ステップS41)。
次に第3バルブを開、第1バルブを開にしてホルダ配置部10及びチューブ移送部13内部の液を排出して空気で置換した後、第3バルブ19を閉、第一バルブ14を開にしフィルタ3の背面側に当該フィルタ3のバブルポイント以下であり、かつ回収液供給時にフィルタ3上に供給される回収液の液圧以上となるような陽圧を印加した後、第1バルブ14を閉にしてフィルタ3の背面側を閉塞させる(ステップS44)。
【0078】
<位置番号50P>
次に、50Pにおいて、制御部101は、チューブ移送部130を制御することにより、チューブ49を回収位置に移動させる(ステップS45)。
回収液供給ユニット40のアーム41を回動及び下降させて、図7〜8に示される回収液供給部材42のスペーサー部44をフィルタ3上の細胞存在領域に接した状態で配設する(ステップS46)。つぎに、フィルタ3上の細胞存在領域、対向面43及びスペーサー部44により形成されるらせん状の流路46に、回収液供給部材42の中心部に位置する供給口45から回収液を供給する(ステップ47)。これにより、フィルタ3面に平行で一様な流れが形成され、この流れによりフィルタ3上の細胞が遊離され回収液中に回収される。その際、回収液供給部材42を上下に数回往復させることで、フィルタ3に強固に付着した細胞の遊離や細胞同士の分散を促進しても良い。
次に、制御部101は、前記回収液供給部材42の貯留部48に収容された、フィルタ3から遊離された細胞を含む回収液を、検体回収ユニット50を制御することにより、チューブ49内に回収し、封入する(ステップS48)。また、制御部101は、回収液供給ユニット40および洗浄スピッツ80を制御することにより、回収液供給部材42を洗浄液で洗浄する(ステップS49)。このチューブ49をフローサイトメータの所定位置にセットすることで、検体の測定及び分析を行うことができる。
【0079】
<位置番号51P>
次に、制御部101は、ホルダ脱着ユニット60を制御することにより、ホルダ設置部10の設置されたホルダ2を取り外し、ホルダ廃棄部63へ廃棄する(ステップ50)。
【0080】
前記実施の形態において、ユーザがホルダ設置部10にホルダ2を設置するようにしたが、ホルダ2をホルダ設置部10に自動的に供給する供給部をも設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の細胞処理装置の一実施の形態の平面説明図である。
【図2】図1に示される細胞処理装置におけるホルダ配置部の空気回路図である。
【図3】フィルタを有するホルダとホルダ配置部の断面説明図である。
【図4】ホルダが装着されたホルダ配置部の断面説明図である。
【図5】ホルダの端部付近の断面説明図である。
【図6】試薬分注ユニット及びホルダ配置部の断面説明図である。
【図7】回収液供給ユニットにおける回収液供給部材を下方から見た説明図である。
【図8】回収液供給ユニットにおける回収液供給部材を上方から見た説明図である。
【図9】洗浄スピッツの断面説明図である。
【図10】細胞処理装置を構成するユニットの説明図である。
【図11】細胞処理装置を制御する制御部の説明図である。
【図12】本発明の細胞処理装置を用いた細胞処理の例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の細胞処理装置を用いた細胞処理の例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の細胞処理装置を用いた細胞処理の例を示すフローチャートである。
【図15】本発明の細胞処理装置を用いた細胞処理の例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の細胞処理装置を用いた細胞処理の例を示すフローチャートである。
【図17】本発明における吸引処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1 細胞処理装置
2 ホルダ
3 フィルタ
4 係止部
5 固定部
10 ホルダ配置部
11 凹所
12 第1ポート
13 配管
14 第1バルブ
15 第2バルブ
16 陰圧源
17 陽圧源
18 第2ポート
19 第3バルブ
20 検体分注ユニット
21 アーム
30 試薬分注ユニット
32 支柱
33 アーム
40 回収液供給ユニット
42 回収液供給部材
43 対向面
44 スペーサー部
45 供給口
46 流路
47 排出口
48 貯留部
50 検体回収ユニット
60 ホルダ脱着ユニット
71 バイアル移送部
72 バイアル
73 試薬注入チューブ
74 試薬収容部
75 試薬ボトル
76 液面センサ
80 洗浄スピッツ
90 遮光カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置であって、
前記ろ過膜を有するホルダを配置する配置部と、
前記配置部に配置された前記ホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、
前記配置部に配置された前記ホルダに試薬を分注する第2分注部と、
ろ過膜上の細胞を遊離させるための液体を供給する液体供給部とを備え、
前記第1分注部によって前記ホルダのろ過膜上に細胞懸濁液を分注し、前記第2分注部によって前記ろ過膜上の細胞に試薬を分注し、前記液体供給部によって前記ろ過膜上から試薬処理された細胞が回収されるように液体を供給することを特徴とする細胞処理装置。
【請求項2】
前記配置部に配置された前記ホルダに分注された液体をろ過膜を介して吸引する吸引部をさらに備える請求項1に記載の細胞処理装置。
【請求項3】
前記吸引部が、前記ろ過膜上に所定の液体を残存させるように吸引する請求項2に記載の細胞処理装置。
【請求項4】
前記ろ過膜上の液体を検知する液面センサさらに備えている請求項3に記載の細胞処理装置。
【請求項5】
前記液体供給部材が、ろ過膜上の細胞存在領域と対向して配置される対向面、前記対向面に設けられ、ろ過膜と対向面との間隔を規定するスペーサー部、及び前記液体を供給する供給口を備える請求項1に記載の細胞処理装置。
【請求項6】
前記細胞存在領域、対向面及びスペーサー部により形成される流路が、らせん状である請求項5に記載の細胞処理装置。
【請求項7】
前記ろ過膜の細胞存在面の背面側に圧力を付与する空圧源を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞処理装置。
【請求項8】
前記空圧源が、前記ろ過膜の細胞存在面の背面側との連通状態を遮断するバルブ手段を備えている請求項7に記載の細胞処理装置。
【請求項9】
前記配置部が、前記ホルダを環状に配置可能であり、且つ、回転移動可能に構成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞処理装置。
【請求項10】
前記ろ過膜が、細胞が載置されるメンブレンフィルタと、このメンブレンフィルタを支持するためのメッシュフィルタとの2層構造である請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞処理装置。
【請求項11】
ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置であって、
前記ろ過膜を有するホルダを複数個配置可能なホルダ配置部と、
このホルダ配置部に配置されたホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、
前記ホルダ配置部に配置されたホルダに試薬を分注する第2分注部と、
前記ホルダに分注された液体をろ過膜を介して吸引し得る吸引部と、
この吸引部の吸引動作を制御する制御部と、
試薬処理されたろ過膜上の細胞を遊離させるための回収液を供給する回収液供給部と
を備えており、ろ過膜上で細胞を処理する過程において、当該ろ過膜上に所定量の液体を残存させるべく前記吸引部による液体の吸引を制御し得るように構成されていることを特徴とする細胞処理装置。
【請求項12】
ろ過膜上で細胞を処理する細胞処理装置であって、
前記ろ過膜を有するホルダを配置する配置部と、
前記配置部に配置された前記ホルダに細胞を含む細胞懸濁液を分注する第1分注部と、
前記配置部に配置された前記ホルダに試薬を分注する第2分注部と、
ろ過膜に対向して配置される対向面、前記対向面に設けられ、ろ過膜と対向面との間隔を規定するスペーサー部、および前記液体を供給する供給口を有し、ろ過膜上の細胞を遊離させるための液体を供給する液体供給部とを備えることを特徴とする細胞処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−118877(P2008−118877A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304086(P2006−304086)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】