説明

細胞取扱装置、組織再生用組成物及び組織再生方法

【課題】本発明は、再生医療において、採取或いは培養した細胞を、周囲から汚染されることなく保存並びに搬送できるようにすること、並びに、その細胞を生体に容易に注入可能とすることを主目的とする。
【解決手段】流動性媒体と、当該流動性媒体中に浮遊する細胞の足場となる粒子形状の細胞足場粒子とを有し、前記細胞足場粒子は生体吸収性材料からなるとともに、当該細胞足場粒子は細胞接着性を有する構成の組織再生用組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療に関し、特に再生医療に用いる細胞取扱装置及び組織再生用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子細胞生物学や細胞工学の進歩により、生体から取り出した分化した細胞あるいは多分化能及び自己複製能を持つ細胞(幹細胞)を患者に移植して治療を行う再生医療の研究が進められている。再生医療とは、分化した細胞または幹細胞を生体組織の欠損部や疾患の責任病巣部位へ移植して目的組織(臓器を含む)を修復・回復させる治療法である。一般に再生医療では、採取した細胞をいったん単独又は足場の存在下に専用の容器内で培養し、これによって得た分化した細胞又は未分化な細胞を、外科的処置によって目的部位に移植する。
【0003】
このように再生医療において細胞移植のために切開術を伴う外科的処置を行うことがしばしば行われるが、患者への負担が大きいので、培養した細胞を直接体内に注入する方法が検討されている。例えば、関節への軟骨細胞又はその前駆細胞の注入、脳への神経細胞、生理活性物質産生細胞又はその前駆細胞の注入、心臓への心筋細胞又はその前駆細胞の注入などは、有力な治療法となり得る。当該治療を実施する場合、容器壁に接着している細胞をトリプシンやEDTA(エチレンジアミン四酢酸、通称エデト酸)などで剥離し、洗浄などの工程を経て所定量を採取する。そして、注射器やカテーテルを使用して生体に注入するのが一般的である。
【0004】
また再生医療の細胞移植では、細胞採取、培養、分化誘導、生体への移植等の一連の工程が比較的煩雑であるだけでなく、周囲からの汚染(コンタミネーション)を防止するために、クリーンな環境下で、且つ、熟練された高度な技術を使って一連の操作を行う必要がある。従って、設備の整った施設や高度な技術を持つ者以外では細胞移植治療を実施するのが難しい。また、操作以外にも、採取或いは培養した細胞を、周囲の環境からいかに汚染させずにクリーンルームやインキュベーター等の所定の設備へ搬送するかという困難性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景にもとづいてなされたものであって、再生医療において、採取或いは培養した細胞を、周囲から汚染されることなく保存及び搬送できるようにすること、並びに、その細胞を生体に容易に注入可能とすることを主要な目的としている。
ところで、このような目的を達成するための研究をする中で、以下に挙げる課題があることもわかったので、本発明では、これらの課題を解決することも目的としている。
【0006】
すなわち、従来の再生医療では細胞を採取、保存、培養し、使用時には当該細胞を簡単に体内に移植できるといった、再生医療の一連操作を誰でも簡単に行うことができるように考慮した細胞取扱装置が存在しなかった。
具体的には、多くの細胞は足場に接着しなければ生存・増殖できないので、細胞は足場となる培養容器の壁面に接着している。このため、細胞を生体移植する際には、容器表面に貼り付いた細胞を剥離する必要が生じる。この細胞を物理的に剥離したり、トリプシンやEDTA等の薬剤を用いて剥離することもできるが、これらの操作は、細胞に対して悪影響を及ぼす可能性がある。また、このような細胞の操作は、設備の整った施設で高度な技術を持った者以外では実施が難しい。
【0007】
このように現在は、培養した細胞を一旦容器壁面から剥離する必要があるため、細胞移植を簡便に行うことのできない状況であると言える。
従って、本発明は従来に比べて簡便な構成でありながら汚染を防ぎつつ良好に細胞を保存でき、且つ、細胞移植治療において、容器から細胞を剥離する処理を行うことなく、容易に当該細胞を生体へ注入することの可能な細胞取扱装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主要な目的は、組織再生方法において、生体から採取した細胞もしくはその細胞を培養して得られる細胞を、細胞取扱装置として、シリンジ仕様の装置(すなわち、当該装置にピストンの手動操作や、空気圧制御などの機械的手段によって力を加え、当該装置内の液体の貯留空間の容積を変化させることによって内容物を流入・流出させる(加圧することによって吐出口から内容物を吐出させられる)装置)に保存し、当該装置に保存した細胞を生体に移植することによって達成できる。
【0009】
すなわち、シリンジ仕様の細胞取扱装置を用いることによって、再生医療の現場における細胞移植時には、通常の医療用シリンジと同様の操作で、細胞を生体に移植することができる。このため、高度且つ熟練した技術を持つ者に限らず、比較的容易に、且つ迅速に細胞移植を行うことができるので有利である。また、シリンジ仕様の細胞取扱装置は、内容物の吐出量や流入量の制御を、内圧の変化速度を制御することで簡単に行えるという利点がある。
【0010】
また上記目的を達成するために、以下のような細胞取扱装置並びに組織再生用組成物に関する発明も行なった。これらを組み合わせることは、細胞を周囲から汚染されることなく培養、保存並びに搬送したり、細胞を生体に容易に注入可能にするという主要な目的を達成する上でも極めて有効である。
本目的を達成するため、本願発明者らは、本発明の細胞取扱器具として、細胞を含有した流動性の取扱対象物を液密に貯留可能な細胞取扱装置であって、少なくとも、前記細胞と接触する部位の少なくとも一部において、細胞の生存に必要な量のガス(呼吸のための酸素ガス、pH維持のための炭酸ガスなど)を透過させる領域が設けられている構成とした。
【0011】
ここで「ガスを透過させる領域(ガス透過性領域)」は、細胞と接触する可能性のあるところはガスの透過性は有し、且つ液体に対しては非透過性の材料で形成された領域を指す。なお、細胞と接触する可能性のないところにガス透過性領域を設ける場合は、必ずしも当該ガス透過性領域が液密性を有してなくてもよい。
本発明におけるガス透過性領域とは、酸素透過度が0.1mL/cm・24hr・atm以上の領域である。ガス透過性領域の面積についてはとくに制限はないが、細胞取扱装置が細胞懸濁液と接触する部分における総酸素透過量が、1mL/24hr・atm以上であることが、細胞に必要な酸素を十分に供給する上で好ましく、とくに好ましいのは10mL/24hr・atm以上である。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の細胞取扱装置では、ガス透過性領域を介してガスの流通(ガス交換性)が可能であるので、当該ガス透過性領域以外の部分では、液密及び気密な材料を用いても、当該装置内部で細胞懸濁液を液密に保存しながら、細胞の生存に必要な酸素の取り込みや炭酸ガスの排出等のガス調節によって、細胞懸濁液が含む培養液のpH条件などのコンディションの維持が実現される。このため、再生医療用に採取した細胞が当該装置内で失活するのを防止しつつ、当該装置を搬送することができるとともに、当該装置内部で細胞を良好に増殖あるいは分化誘導させることもできる。
【0013】
ここで前記ガス透過性領域を、前記細胞取扱装置における細胞貯留部分において全体的に設ければ、細胞懸濁液中の細胞全体に対して均等且つ十分にガス交換性が発揮されやすくなる。このため、それほど優れたガス透過性材料でなくても、十分なガス交換性を得ることができる。
一方、比較的優れたガス透過性を有する材料を用いる場合には、前記細胞取扱装置の全体をこの材料で構成する必要は無く、少なくとも細胞貯留部分において、細胞懸濁液と接触する内壁に部分的に設ければよい。この場合、矩形状、円形状などの形状で、所定の面積を有する領域として形成すれば良い。
【0014】
上記したシリンジ仕様の細胞取扱装置の場合には、細胞を貯留する本体部の全体もしくは一部、細胞が接触する押し子の一部分にガス透過性領域を形成することが望ましい。前記本体部の一部にガス透過性領域を形成する場合には、面積が限られることから、細胞の生存に要求されるガス(酸素ガス、炭酸ガス)の必要最低濃度にも依存するが、比較的ガス透過性が高い材料を用いて、生存に必要なガスを十分に確保できるように設計することが望ましいと思われる。言い換えると、細胞の生存に必要なガスの量は細胞によって異なるが、細胞を生存させるには、高いガス透過性を有する材料を用いて十分にガス交換を行うことが望ましいということである。
【0015】
また、材料の選択範囲が限られているなどの理由で、前記本体部の一部にガス透過性領域を形成する場合には、個々に独立した複数の領域として形成することで、前記細胞貯留部分の全体に対して、ガスを均等且つ十分量、供給させる効果が高まることになるので望ましい。
前記本体部の一部にガス透過性領域を設ける場合に、優れたガス透過性を有するもの例として、多孔質膜が挙げられる。この多孔質膜では孔径を制御することで、液密性を維持することが可能であるので、液密を確保できる程度の孔に加工した膜を用いれば、比較的小さな面積であっても十分なガス透過量を確保することができることが解かっている。
【0016】
また上記ガス透過性領域として多孔質膜を採用すれば、細胞取扱装置中に貯留される細胞懸濁液中に存在している気泡を、多孔質膜を通して細胞取扱装置の外部へ安全に排出することもできる。
シリンジタイプの細胞取扱装置の場合に、細胞を貯留する本体部の形態としては、筒状の容器(外筒体)に直接細胞を貯留する形態のもの、及び押圧力の作用によって、内部空間が縮小可能な蛇腹形状のもの、バック状のもの、チューブ形状などいわゆる袋状の容器を外筒体に収納した形態のものが挙げられる。前者の場合には、外筒体、液密性を確保するためのキャップ、押し子などにガス透過性領域を形成することが望ましい。後者の形態の場合、内部に収納した容器の少なくとも一部にガス透過性領域を形成することで、細胞へのガス供給が可能となり、そして、特に、後者の場合、袋状の容器を外筒体に収納した状態において、袋状の容器内と装置外部との間でガス交換が可能なよう、袋状の容器以外の部分(押し子や、外筒体などの部位)においてガス透過性領域を形成することが望ましい。また、袋状の容器は、着脱自在として、装着した状態での細胞の保存・培養はもとより、脱離した状態での細胞の保存・培養を実施することもできる。この容器自体が、液密なものであると同時にガス透過性を備えるからである。
【0017】
また、ガス透過性領域を形成する膜としては、ガス透過性の良好な高分子材料からなる薄いフィルムを用いてもよいが、ガス透過性がそれほど優れない高分子材料であっても、多孔質膜にして、孔径を適切に設定することによって、ガス透過性と液体に対する非透過性を付与できる。従って、細胞取扱装置を液密にしながら、ガス透過膜部分から細胞懸濁液の一部が漏出するのを防ぐこともできる。
【0018】
また、本発明においては、細胞取扱装置の細胞懸濁液と接触する部位を細胞の接着しにくい材料で形成することが有効である。細胞接着性の評価方法としては、フォーカルコンタクト(接着斑)を形成する加担タンパク質を免疫学的手法によって検出することや、細胞付着数を計数することによって評価できる。
このように細胞取扱装置の内面の細胞接着性を低減することで、保存中に細胞が細胞取扱装置壁面に接着するのを抑制することができる。これによって、再生医療の現場では以下のような効果が得られる。
【0019】
すなわち従来では、再生医療で移植する細胞は、例えば細胞培養用シャーレ等を利用して培養保存されていたが、このような従来の細胞取扱装置では細胞がその内面に接着するので、生体への移植時には細胞の剥離処理が必要であった。また、当該剥離処理を行うために、高度に汚染を防止する設備で、高い技術を有する熟練した者が操作を行う必要があり、容易に再生医療を行うことができなかった。これに対し本発明の細胞取扱装置では、当該細胞取扱装置から細胞を取り出す際に細胞の剥離処理が不要となる分、物理的な剥離操作や薬剤を使用することなく、細胞を損傷させず生体へ移植することができるので、良好に再生医療を実施できるという効果が望める。また、細胞の剥離処理を行わなくて済む分、細胞取扱装置に保存された細胞をそのまま生体に移植できるので、移植操作の煩雑さを省くことができるとともに、それほど高度な熟練技術を持たない者であっても容易に細胞の移植操作を行うことも可能である。
【0020】
更に、本願発明者らは、再生医療用の細胞を増殖し、分化誘導させるための足場の素材や形状について、独自の着想に基づき研究を重ね、足場の形状を粒子形状とすること、並びに足場を生体吸収性材料で形成することを組み合わせることによって、細胞培養に伴う操作を大幅に簡略化できることを見出し、本発明の組織再生用組成物を開発するに至った。すなわち本発明にかかる組織再生用組成物は、流動性媒体と、細胞の足場となる粒子形状の細胞足場粒子とを有し、細胞足場粒子は、生体吸収性材料からなり、当該細胞足場粒子に細胞が接着する構成とした。
【0021】
このような本発明の組織再生用組成物によれば、生体から採取した細胞は、足場粒子の表面において、増殖または標的細胞へ分化誘導させることができる。この間、細胞は足場粒子に付着して増殖し、常に流動性媒体(培養液(体液を含む))中で流動性を有している。そして、細胞移植時には、この細胞培養粒子をそのまま生体に注入することができる。
【0022】
このため、従来のように細胞増殖後に細胞剥離処理を行う必要もなく、再生医療における細胞移植操作の効率を飛躍的に向上できる。また、細胞剥離処理を行う必要がないので、細胞を損傷する心配もない。この組織再生用組成物は、必ずしも患部に注入する際は、足場粒子に細胞を付着させたものを用いなくても良く、足場粒子のみを注入しホストの細胞の足場とすることもできる。
【0023】
また、足場粒子を生体吸収性材料で形成しているので、生体注入後に所定期間が経過した後に、足場粒子が生体吸収によって消失される。従って、術後に足場を除去する操作も不要となる。
ここで、細胞を人体に移植する場合、培養液に細胞を懸濁したものを人体に移植する手法が一つの試みとしてあるが、この手法では、流動性が高いため細胞が流れてしまい、細胞が移植部位に巧く生着し難い。この問題を解決するために、細胞が流れてしまわないように、移植用細胞を分散用マトリックス(高粘性溶液、例えばゼラチン、コラーゲンなど)に分散して得られた懸濁液(高粘性溶液)を患部に移植する方法が試みられているが、この手法では、分散用のマトリックスが障壁となって移植部位に巧く生着しない。しかし、上記した組織再生用組成物は、粒子の表面に細胞が接着するものであるので、細胞移植を試みた場合、このような問題が生じにくく、良好に細胞が生着することが判っている。
【0024】
更に、足場が粒子状であるので、単位体積当たりの表面積が高いため、少量の足場に多くの細胞を効果的に付着させることができる。
そして、このような細胞培養粒子からなる組織再生用組成物を、上述したシリンジ仕様を有する細胞取扱装置中に保存しておけば、移植時には、当該細胞取扱装置から容易且つ迅速に生体に細胞を移植することができる。このため、例えば体力に乏しい乳児や老人等の患者の手術を軽減することができるなど、その他、再生治療において患者の負担を減らすことが可能である。
【0025】
更に、このように上記した細胞取扱装置にこの組織再生用組成物を収納することで、細胞の運搬・培養・人体への細胞移植までの段階的な工程を一貫して一つの容器で簡易に実施することが可能となるという効果も奏する。すなわち、上記細胞取扱装置がガス透過性領域を備えることから、当該装置内で保存及び培養を行うことができるので、わざわざ細胞培養専用の容器に細胞を移し替える作業が省略できる上、当該装置シリンジ仕様の形態とすることで、内部に保存及び培養しておいた細胞をそのまま同じ装置を用いて針、カテーテルなどの導管を通じ、移植操作できるという高い効果が奏される。
【0026】
上記した細胞取扱装置にて移植を実施する場合、細胞が装置壁面に接着すると、注入される細胞数が減少することになるので、細胞が必要量人体に移植されないことにもなる。ここにおいて、この問題を解決するために、装置内壁面に細胞非接着という上述した特性を付与して細胞の接着数を減らすことが有効である一方、培養・分化の際に足場を必要とする接着性細胞を用いる場合には、その細胞は、足場を失うことになる。この場合に上記した生体吸収性の足場粒子を用いると、そのような細胞に足場を提供することになるので極めて有効である。
【0027】
なお細胞は、接着する部位が複数ある場合には、接着しやすい部位に接着するという傾向があることから、足場粒子が機能するには、装置の内壁面よりも細胞が接着しやすい材料としなければならないのは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、本発明の組織再生方法について説明する。
本発明の組織再生方法においては、基本的に以下のステップが含まれる。
i.生体から細胞を採取する採取ステップ
まず、特定の細胞を生体より採取する。
ii.分離・純化ステップ
採取した細胞をFACS(フローサイトメトリー)等により分離・純化する。
【0029】
iii.細胞を細胞取扱装置に保存する保存ステップ
その後、細胞を細胞取扱装置に保存する。
iv.増殖ステップ
細胞を保存した細胞取扱装置を細胞培養設備(CPC)等において保存する。そして当該細胞培養設備等において、細胞取扱装置中の細胞を増殖及び必要に応じて分化誘導させる。
【0030】
v.移植ステップ
上記細胞取扱装置を用い、増殖及び分化誘導させた細胞を生体に移植する。
********************************
ここで、iiiからvのステップにおいて、以下の実施の形態1〜8に示すようなシリンジタイプの細胞取扱器具を用いることによって、保存・運搬・増殖・移植の再生医療の全ての工程において、同じ装置による一環した取り扱いが可能となるので、細胞を他の容器に移し替えなくても良く、次の工程に、安全且つ迅速に進むことができ、迅速な治療が可能となる。
特に、再生医療の現場における細胞の移植時にはその有用性が高く、通常の医療用シリンジと同様に操作し、保存した細胞を生体に移植することができる。このため、高度且つ熟練した技術を持つ者に限らず、容易に且つ迅速に細胞移植を行うことができる。また、細胞を保存しながら搬送することもできる。
********************************
また、実際の再生医療の現場では、各ステップを行なう場所が、互いに離れている場合も多いが、本発明の細胞取扱装置は、液体を密封して取り扱うこともできるので、離れた場所に細胞を搬送するのにも適している。
【0031】
例えば、iiiの保存ステップで生体から細胞を採取してから培養するまで、あるいは移植するまでの間の細胞保存に用いることによっても、同様に容易に且つ迅速に細胞を取り扱うことができる。あるいは、本発明の細胞取扱装置を、ivの増殖ステップで細胞培養する際にも用いることもできる。また細胞の培養装置として使用し、その後にそのまま細胞を保存する手段としても利用できる。
【0032】
なお、一般的に細胞懸濁液は、培養液と細胞とで構成される。培養液には、従来から用いられている培養液をそのまま利用することができるが、生体内に培養液を細胞とともに移植する際の安全性を考慮して、なるべく感染原因となる可能性のある物質(ウィルス、プリオンなど)の添加をなくすか低減することが望ましい。
ここで、細胞懸濁液には、再生医療の治療用途などに用いられる各種細胞を含ませることができる。細胞には、治療の目的に応じて前述した様々な細胞種を使用することが可能である。当該細胞種に特に制限はなく、具体例には胚性幹細胞(embryonic stem cells;ES細胞)、胚性生殖細胞(embryonicgerm cells;EG細胞)、体性幹細胞(adult stem cells;AS細胞、成人幹細胞とも言う)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、血管内皮幹細胞、造血系幹細胞、肝幹細胞等の幹細胞の他に、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、心筋細胞、神経細胞、腱細胞、脂肪細胞、膵細胞、肝細胞、腎細胞、毛母細胞、血球細胞等の分化した細胞またはその前駆細胞を挙げることができる。このように、胚性幹細胞を始め、各分化の度合いが異なる幹細胞や、各組織に分化した細胞を用いることができる。中でも、接着性細胞を用いる場合、細胞非接着性を細胞取扱装置に付与したり、微粒子状の足場を用いることが有効になる。接着性細胞は、増殖・分化の際の足場を必要とするからである。
【0033】
このような細胞は、公知の方法により採取することができる。すなわち生体の所定部位から組織(細胞)を分離し、この中から必要な細胞を選択的に分離した後、必要に応じて細胞増殖因子または成長因子等を添加して培養する。当該培養は専用のインキュベータ内で実施するのが望ましい。これにより培養した細胞をシリンジ仕様の細胞取扱装置内部に貯留し、保存に適した条件で治療に必要となるまで保存する。
【0034】
細胞と培養液の組み合わせの例を示す。
すなわち、培養細胞にヒト間葉系幹細胞(human mesenchymal stem cell)を用いる場合、440mLのhuman mesenchymal stem cell basal medium(POIETICS社,米国)にmesenchymalcell growth supplement(50mL)、L−Glutamine(10mL)、penicillin/streptomycin(0.5mL)を添加して培養液とすることができる。
【0035】
また、軟骨細胞を使用する場合における軟骨分化誘導培地(培養液)としては、hMSC differentiation basal medium(185mL)にdexamethasone(1mL)、sodium pyruvate(2mL)、ascorbate(2mL)、proline(2mL)、ITS+supplement(2mL)、L−Glutamine(4mL)、penicillin/streptomycin(2mL)を添加したものを用いることができる。
【0036】
一方、本発明にかかる細胞培養粒子からなる組織再生用組成物については後で詳述する。
以下、シリンジ仕様の細胞取扱装置を用いて、細胞懸濁液を保存する場合について詳細に説明する。
1.本発明の細胞取扱装置に関して
(実施の形態1)
1−1.シリンジ型細胞取扱装置1の構成
図1は、本発明の細胞取扱装置の一例である実施の形態1のシリンジ型細胞取扱装置1の構成を示す図である。図1(A)は斜視図、図1(B)は側面図、図1(C)は図1(B)のX−X’断面図である。
図1に示されるシリンジ型細胞取扱装置1の構成は、大きく分けてシリンジ本体部2、プランジャ(押し子またはピストンとも称する)40等からなる。シリンジ本体部2の中には細胞懸濁液100が貯留されている。
【0037】
シリンジ本体部2は、細胞非接着性材料を円筒形状に射出成形してなる筒状体3と、後述のガス透過膜20からなる。
筒状体3は、前端側面には円盤状の天面110と、そこにルアー部120が突出するように形成されている。ルアー部120の先端は、通常はキャップ60が施される。シリンジ本体部2の後端12側からはプランジャ40が挿入され、これによってシリンジ本体部2内部が液密に封止される。なおルアー部120はこの他に内部を樹脂などで封止し、使用時(細胞移植時)に封止を破るようにしてもよい。
【0038】
ここで筒状体3の材料は、成型可能な材料であればよく、一般的にシリンジに用いられる材料を用いてもよいが、本発明の特徴の一つとして、筒状体3の材料に細胞に対して接着しにくい材料を用いることが好ましい。詳細を後に述べるように、筒状体3の一部がこの細胞非接着性材料を用いることによって、細胞が筒状体3内部に貼り付くのを防止し、培養液中で浮遊させながら良好に保存することができる。
【0039】
ここで言う「細胞非接着性」とは、細胞が全く接着しないか、或いは接着しても簡単に剥がれる程度にしか接着しないことを意味する。
プランジャ40は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の材料を射出成形してなり、十字断面形状の本体42の両端に、径方向に広がる円盤状の端部が形成された構造を持つ。前記端部の一方はシリンジ本体部2内部に軸方向に挿入されるプランジャヘッド部43であって、他方の端部はユーザが指で押圧し、プランジャ40をシリンジ本体部2内部に押し込むための押圧端部41である。
【0040】
プランジャヘッド43は弾性部材から構成され、シリンジ本体部2(詳しくは筒状体3とガス透過膜20)内部において、液密に細胞懸濁液100を保持できるようになっている。
(細胞非接着性材料について)
ここで、「細胞が接着しにくいか否かの評価」言い換えると「細胞非接着性の有無についての評価」は、例えばフォーカルコンタクト(接着斑)を形成する加担タンパク質を免疫学的手法によって検出することや、細胞付着数を計数することで行うことができる。
【0041】
上記細胞非接着性材料として好ましいものは以下の通りである。すなわち、保存する細胞の種類によっても異なるが、一般には、親水性材料または疎水性材料で形成されたもの及び表面に負電荷を有する材料は細胞非接着性を有するものが多く、好ましい材料として挙げることができる。親水性材料としては、対水接触角が50度以下のものが好ましく、疎水性材料としては対水接触角が100度以上のものが好ましい。
【0042】
好ましい親水性材料の例としては、アクリルアミド系重合体、メタクリルアミド系重合体、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、デキストラン、ヒアルロン酸、グリコサミングリカン、プロテオグリカン、カラギーナン及びタンパク質などを基材の表面にグラフト共重合や化学反応などの方法で結合するか表面に被覆した材料を挙げることができる。基材表面の調整や被覆処理については、基材を射出成形等で作製してから別途行う必要がある。
【0043】
疎水性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどのフッ素樹脂及びシリコーン樹脂を挙げることができる。
また表面に負電荷を有する材料としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンスルホン酸、アルギン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸またはデルマタン硫酸を表面に結合した材料を挙げることができる。これらの中でも、表面にカルボキシル基を有する材料がとくに好ましい。当該材料の表面は平滑な方が細胞の非接着性に優れるので好ましい。
【0044】
上述した材料の中でもシリコーン樹脂はガス透過性にも優れているので好ましい材料である。また、ポリテトラフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体は、多孔質膜にすることにより高いガス透過性を得ることができるので、同様に好ましい。
なお、当該細胞非接着性材料を用いて細胞と接触するガスケット部分を構成することが望ましい。
【0045】
(ガス透過性領域について)
筒状体3の周壁30には、筒状体3の厚み方向に貫通する貫通孔が設けられている。ここでは図1(A)に示すように、当該シリンジ軸方向を長手方向とする短冊状スリット31が複数(ここでは4本)としているが、この短冊状スリット31は貫通孔の形状の一例であって、その形状及び個数はこれに限定するものではない。
【0046】
更に、スリット31の内部には、図1(C)に示すように、シリンジ本体部2の内周面に接触させながら、スリット31のルアー部120を除く全長に合わせて、円筒状のガス透過膜20が配設されている。当該ガス透過膜20は、スリット31の主材料よりもガス透過性が高い材料(例えばガス透過性材料からなるフィルム)で構成することができる。このガス透過膜20が前記短冊状スリット31を遮蔽しつつ、当該短冊状スリット31から部分的に外部に露出する部分が、複数のガス透過性単位領域からなるガス透過性領域21になっている。
【0047】
なお、ガス透過膜20を筒状とせず、短冊状フィルムとし、これを各スリット31に合わせて液密に遮蔽するように筒状体3の外側から貼り付けて配設することもできる。
上記ガス透過性材料としては、細胞懸濁液100に対しては非透過性の(すなわち液密に保持できる)ガス透過性樹脂を用いることができる。このガス透過性樹脂は、例えばシリコーン樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン(P4M1P)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン及びポリスチレン等である。これらのガス透過性材料は、プラスチック材料の中では比較的良好なガス透過性を有しているが、厚さが増すとガス透過性が低下する。このためガス透過膜20の肉厚は、通常は200μm以下の厚みであることが望ましく、特に100μm以下であることが好ましい。
【0048】
またガス透過性材料としては、この他に、細胞懸濁液100の外部への漏出を防止するとともに、細胞懸濁液100への細菌の侵入などの汚染を防止できるように、孔径を所定値以下に設定した多孔質膜を利用することができる。この場合、多孔質膜の原材料は、疎水性の高分子材料が好ましい。多孔質膜の孔径は1μm以下、より好ましくは0.4μm以下に設定することが望ましい。この疎水性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が利用できる。また、疎水性ポリビニリデンフロライドを用いることもできる。
ここで、上記ガス透過膜20の材料として、多孔質膜材料である前記疎水性材料等を用いるか、もしくは前記ガス透過性樹脂材料のシリコーン樹脂、ポリエチレンやポリスチレンを用いることによって、ガス透過膜20にガス透過性と、細胞非接着性の両方の性能を持たせることができるので更に望ましい。前記疎水性材料には、細胞非接着性を呈するものが多く見られる。
【0049】
なおシリンジ型細胞取扱装置1は、細胞懸濁液100を保存する前に予め滅菌処理を施しておくことが望ましい。細胞保存時には、シリンジ本体2の筒状体3内部におけるガス透過膜20の内側において、プランジャヘッド43及びルアー部120の間に細胞懸濁液100が貯留される(図1(C)を参照)。細胞懸濁液100は、例えばルアー部120からシリンジ本体部2内部に入れ、その後ルアー部120をキャップ60或いは樹脂により封止することで液密に保持されるようになっている。或いは、ルアー部先端120を封止しておき、筒状体3の後端12側から細胞懸濁液100を入れることもできる。
【0050】
なお、ここには図示しないが、シリンジ型細胞取扱装置1内には細胞懸濁液100とともに若干のガスを貯留させるようにしてもよい。しかしながら、当該ガスが気泡となって培養液中に混入すると、細胞を破壊しかねないので、なるべくガスは含まないようにするのが望ましい。
1−2.シリンジ型細胞取扱装置1の効果
実施の形態1のシリンジ型細胞取扱装置1は、筒状体3が細胞懸濁液100に対して非透過性の材料からなり、その周面30にスリット31が形成され、当該領域に細胞懸濁液100に対して非透過性で且つガスに対して透過性を有する性質を持つ材料でガス透過性領域21が形成されている。これにより、筒状体3はガス透過性である必要はないので、上記した各種材料を用いて、通常の射出成形等の工程により容易に作製できる。また、シリンジとして必要な剛性と強度を確保することも容易である。
【0051】
またこのシリンジ型細胞取扱装置1では、上記のようにシリンジ本体部2内部に細胞懸濁液100を貯留する一方で、細胞懸濁液100がガス透過性領域21を介して外部とガス交換できるように保持される。従って、細胞は生存に必要な酸素をシリンジ型細胞取扱装置1外部より取り込み、且つ、炭酸ガスによる培養液のpH維持ができるので、活性の低下を抑制して良好に保存される。
【0052】
なお、細胞懸濁液100中に存在する気泡は、例えば細胞取扱装置を搬送する際に細胞と接触し、これを破壊する原因となりうるものである。本実施の形態1のシリンジ型細胞取扱装置1では、ガス透過性領域に多孔質膜を使用した場合にこのような気泡がガス透過性領域21を介して、汚染を防止しながら気泡を外部に排出除去できるので、細胞が破壊されることなく安全にこれを保存することが可能である。
【0053】
更に、シリンジ型細胞取扱装置1はガス透過性領域21を設けることで外部とガス交換可能になっているが、当該ガス透過性領域21からシリンジ本体部2の内部に細菌が侵入しないように形成されている。そのため、汚染の発生を防止して、良好に細胞を保存できる。当該汚染の防止効果の度合は前述したように、ガス透過膜20の材料として、例えばガス透過性材料を用いる場合にはその部材厚み、或いは多孔質膜を利用する場合には孔径の適切な設定等を行うことで、適宜調整できる。但し、このような調節は、細胞取扱装置として必要なガス透過性との兼ね合いも考慮して行う必要がある。
【0054】
以上の本発明の細胞取扱装置が備えるガス透過性効果は、再生医療の現場で、例えば病院の外来で細胞を採取し、これを臨床検査設備の整った専門施設まで安全に運搬する際に特に求められるものであるが、本実施の形態1のシリンジ型細胞取扱装置1はこのような要望を満足する細胞取扱装置として有効な効果を発揮することができる。
更にシリンジ型細胞取扱装置1は、医療用シリンジ仕様に作られているので、再生医療における使用時にはルアー部120の先端のキャップ60を外し、ルアー部120と針、血管留置カテーテルまたはその他の導管を接続する。そして、プランジャ40の押圧端部41を指で押し込むだけで細胞を生体内に注入することができる。従って、通常のシリンジの操作とほぼ同様の操作で、煩雑な操作を必要とせず、高度な技術を有する熟練した者でなくても細胞を生体の患部に注入することができ、容易且つ迅速に再生医療を実施することができる。
【0055】
また、ガス透過性領域を多孔質膜で形成した場合は、プランジャ40の押圧端部41をルアー部120側に押し込むことで、細胞懸濁液100に圧力を掛け、ガス透過性領域21から気泡除去操作を簡単に行うことができるという効果も奏する。
また、シリンジ型細胞取扱装置1は、シリンジ本体部2の筒状体3及びガス透過膜20の一方又は両方を細胞非接着性材料から構成した場合、細胞懸濁液100と接触する内壁の一部或いは全体において細胞は貼り付かない。これにより細胞は、培養液中に浮遊した状態で保存されるので、シリンジ型細胞取扱装置1から細胞を生体に移植する際においては、細胞を筒状体3の内壁から剥離処理する工程が不要となり、その分工程の煩雑さをなくすことが可能である。また、細胞が培養液中で浮遊しているので、プランジャ40を押し込むだけで細胞を培養液とともにスムーズにシリンジ型細胞取扱装置1内部から生体へ移植させることができる。
【0056】
更にシリンジ型細胞取扱装置1では、シリンジ本体部2に上記細胞非接着性材料を用いることで、従来の細胞の剥離処理に伴う問題、すなわち、物理的に細胞を剥離する際には細胞への損傷問題、或いは薬剤(トリプシンやEDTA等剥離剤)を用いて剥離処理を行う際には当該薬剤による細胞や移植先の生体への悪影響の問題、細胞の洗浄処理を行う必要、或いは温度変化処理による細胞の剥離処理等の煩雑な処理問題等を根本的に回避できるといった効果が奏される。
【0057】
本実施の形態1のシリンジ型細胞取扱装置1を用いれば、上記のように高い容易さと迅速さ、及び的確さで再生医療現場での細胞移植操作を行えるので、それほど高度な設備の整っていない施設においても、汚染等の問題の発生を回避しつつ良好に再生医療を実施することができる。本発明の細胞取扱装置は、このように再生医療における操作に関して求められる条件を良好に満足できるものである。
【0058】
上記のようにシリンジ型細胞取扱装置1内部に保存された細胞を生体患部または血管内に注入することにより、変形性関節症、慢性関節リュウマチ、偽関節、進行性筋ジストロフィー症、心筋梗塞、脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷、腱損傷、糖尿病、肝機能障害、消化器機能不全、皮膚損傷、白血病、血液系疾患などに対する治療へ応用される。
なお、一般的に細胞は培養液(或いは培地)とともに培養保存するが、本実施の形態1のシリンジ型細胞取扱装置1を利用して、細胞懸濁液ごと生体にそのまま注入する場合には、生体に安全な組成の培養液を選ぶ必要がある。
【0059】
例えば、変形性関節症の患者に軟骨細胞またはその前駆細胞を注入する場合、パーキンソン病の患者の脳に神経細胞またはその前駆細胞を注入する場合、或いは心臓病の患者に心筋細胞を注入する場合、ヒトに細胞を注入する場合などには、ウシ血清などの生体由来成分を含まない合成培地や患者自身の血清を使用した培地が好ましい。
(実施の形態2)
図2は、本発明の細胞取扱装置の一例である実施の形態2のシリンジ型細胞取扱装置1の構成を示す断面図である。実施の形態1との違いは、シリンジ本体部2において、筒状体3の周壁に貫通孔を設けないかわりに、当該筒状体3の天面1100にガス透過性領域が形成されている点にある。このガス透過性領域は、具体的には、シリンジ本体部2を成形する際に、天面1100部分だけをガス透過性材料で形成してもよいし、天面1100に貫通孔を開設し、当該貫通孔を覆うようにガス透過膜を溶着或いは接着により液密に配設することにより形成してもよい。
【0060】
上記細胞非接着性材料、及び上記ガス透過膜の材料は、実施の形態1に挙げた材料と同様のものを用いることができる。ルアー部先端120には通常は図2のようにキャップ60を施すか、内部を樹脂で封止することでシリンジ型細胞取扱装置1内部を液密に保つようにする。
このような構成を有する実施の形態2のシリンジ型細胞取扱装置1によっても、実施の形態1とほぼ同様の効果(ガス交換性、細胞懸濁液100からの気泡除去、及び容易且つ迅速に細胞移植できる等の効果)が奏される。
【0061】
これに加えて本実施の形態2のシリンジ型細胞取扱装置1では、シリンジ本体部2の内壁大部分が細胞懸濁液100と接触するが、この筒状体3が細胞非接着性材料で構成されていることから、細胞がシリンジ本体部2の内壁に貼り付くことなく、培養液中で浮遊した状態で保存できる効果が高い。
更に本実施の形態2のシリンジ型細胞取扱装置1では、実施の形態1とは異なり、シリンジ本体部2の円筒状の内壁には貫通孔が設けられていないので、気泡除去操作を行う際には、ルアー部120を上方に向けてプランジャ40をシリンジ本体部2内部からルアー部120側に押し込むようにすると、容易に気泡を天面1100近傍に集め、液漏れを最小限に抑えながら当該気泡を天面1100より容易に除去することができるので望ましい。これにより、細胞懸濁液100中の気泡の混入を防ぎつつ細胞を良好に生体側へ移植することができるといった効果も奏される。
【0062】
なお、プランジャヘッド44もガス透過性材料で構成するようにしてもよい。こうすることで、細胞懸濁液100がより良好に外部とガス交換を行えるようになるので望ましい。
また、プランジャヘッド44を細胞非接着性材料で構成し、細胞が貼り付かないように工夫することも望ましい。
【0063】
(実施の形態3)
図3は、本発明の細胞取扱装置の実施の形態3におけるシリンジ型細胞取扱装置1の構成を示す断面図である。上記実施の形態1及び2との違いは、シリンジ本体部2が従来のシリンジの本体と同様の筒状体で構成され、プランジャヘッド44がガス透過性材料で構成されている点に特徴を有する。ガス透過性材料は上記実施の形態1或いは2で挙げたものを用いることができる。
【0064】
プランジャヘッド44は、シリンジ本体部2内壁に対し、液密に接するように、プランジャ40の本体42のシリンジ側先端に嵌合固定されている。ここでプランジャヘッド44は、ガスのみを選択的に透過するので、細胞懸濁液100の溶液は外部に漏出しない。
なお、本実施の形態3でも、シリンジ本体部2並びにプランジャヘッド44を上記した細胞非接着性材料で構成することが好ましい。
【0065】
このような構成を有する実施の形態3のシリンジ型細胞取扱装置1によっても、実施の形態2とほぼ同様の効果が奏される。
また、本実施の形態3のシリンジ型細胞取扱装置1では、当該ガス透過性を有するプランジャヘッド44を通じ、細菌等による汚染の発生を防ぎつつ、細胞懸濁液100中の細胞が外部とガス交換が行えるので、細胞の活性低下を抑制しながら良好に細胞保存がなされる。また、細胞懸濁液100中に含まれる気泡がプランジャヘッド44から外部に効果的に除去され、気泡により細胞破壊が生じるのを防止する効果も奏される。
【0066】
なお、本実施の形態3のシリンジ型細胞取扱装置1を用いた気泡除去操作時には、実施の形態2とは逆に、ルアー部120を下方に向けて操作した方が、細胞懸濁液100中の気泡をプラシジャヘッド44のガス透過膜近傍に集めて排出し易くなるので望ましい。
また、本実施の形態3では、プランジャヘッド44全体がガス透過性を有する構成例を示したが、本発明はこれに限定せず、例えば従来と同様の弾性部材でプランジャヘッドの本体を作製しておき、その主面に貫通孔を設けて、これによって形成された貫通部分を覆うようにガス透過性領域(例えばガス透過膜)を配設してプランジャヘッドを構成してもよい。
【0067】
(実施の形態4)
図4は、本発明の細胞取扱装置の実施の形態4におけるシリンジ型細胞取扱装置1の構成を示す外観図である。本実施の形態4の特徴は、シリンジ本体部2を前記細胞非接着性材料で構成するとともに、シリンジ本体部2にガス透過性領域は設けず、シリンジ本体部2のルアー部120先端に、ガス透過膜131をフィルターとして備えるフィルター付きキャップ130を配設した点にある。ガス透過膜の材料(ガス透過性材料)、及び細胞非接着性材料は上記各実施の形態1〜3で挙げたものを用いることができる。
【0068】
このような構成を持つ本実施の形態4のシリンジ型細胞取扱装置1においても、キャップ130におけるガス透過膜131を介してシリンジ型細胞取扱装置1の内外でガスが交換されるので、上記各実施の形態1〜3とほぼ同様の効果が奏される。
また、実施の形態4のシリンジ型細胞取扱装置1における気泡除去操作も実施の形態3と同様に、予めキャップ130を上方へ向けてプランジャ40を押し込むことにより、ルアー部120周辺(及びガス透過膜131周辺)に細胞懸濁液100中の気泡を集中させ、これを良好に除去することができる。
【0069】
上記した実施の形態2、3、4のシリンジ型細胞取扱装置1は、プランジャー40が摺動する方向の前方または後方にガス透過性領域を設けた構成である。このように摺動方向の前方または後方に設けることで、プランジャー40の摺動操作に伴って容易に気泡を当該ガス透過性領域から追い出すことが可能となる。
ここで、実施の形態1〜4で挙げたガス透過膜20、131、天面1100、或いはプランジャヘッド44には、前述した疎水性材料からなる多孔質膜を用いるか、シリコーン樹脂、ポリエチレンやポリスチレン等のガス透過性樹脂材料を用いることで、ガス透過性とともに細胞非接着性を持たせ、より細胞を細胞懸濁液100中で良好に浮遊させて貯留またはスムーズに細胞移植することができる。
【0070】
(実施の形態1〜4に対する変形例及び性能比較試験)
上記実施の形態1〜4では、シリンジ本体部2全体を細胞非接着性材料で構成する例を示したが、本発明ではシリンジ本体部2全体を当該細胞非接着性材料で構成する必要はなく、細胞懸濁液100と接触する内壁のみを細胞非接着性材料で構成するようにしてもよい。また、細胞懸濁液100と接触するシリンジ本体部2の内壁を部分的に細胞非接着性材料で構成するようにしても、それなりの効果が望める。しかしながら、本発明の効果を十分に得るためには、やはり細胞懸濁液100と接触するシリンジ本体部2の内壁全体をできるだけ細胞非接着性材料で構成するか、シリンジ本体部2全体を細胞非接着性材料で構成するのが望ましい。
【0071】
性能比較実験
ここでは従来技術にかかるシリンジと本発明に掛かるシリンジの性能を比較するために、下記a〜gのパターンに基づく各シリンジ内で細胞培養を行い、細胞の生存率を計測した。本発明品としては、実施の形態2及び4のシリンジを採用した。
図5は、実験結果を示すデータである。
【0072】
*****
a.浮遊細胞培養用シャーレを用いた培養
b.従来構成(ポリプロピレン製)の医療用シリンジを用い、ルアー部先端をキャップして密閉した状態での培養
c.実施の形態2の医療用シリンジ(天面にガス透過膜配設、シリンジ本体部を細胞非接着性材料で作成)を用い、ルアー部先端をキャップで密閉した状態での培養
d.実施の形態2の医療用シリンジ(天面にガス透過膜配設、シリンジ本体部を細胞非接着性材料で作成)を用い、ルアー部先端に実施の形態4のフィルター付きキャップ(小型)を装着した状態での培養
e.実施の形態2の医療用シリンジ(天面にガス透過膜配設、シリンジ本体部を細胞非接着性材料で作成)を用い、ルアー部先端に実施の形態4のフィルター付きキャップ(大型)を装着した状態での培養
*****
aにおける浮遊細胞培養用シャーレ(面積21cm)では、浮遊系での培養とした。
【0073】
またフィルターはe−PTFE製とし、厚み;70μm、孔径;0.1μmとして作製したものを用いた。
各サイズは以下の通りである。
小型フィルター付きキャップのガス透過膜面積;約43mm
大型フィルター付きキャップのガス透過膜面積;約113mm
シリンジ内容積;10mL
ガス透過性天面面積;約70mm
*****
ここで、細胞生存率の具体的な評価方法としては以下の通りである。
【0074】
すなわち、マウス骨髄から造血幹細胞(HSC)の濃縮分画とされている表面マーカーLeneage negative Scal+sKit+(以下KSL;浮遊系細胞)を純化し、KSL細胞数10000個を培養液中2mL中に浮遊させ、各シリンジの内部で3日間培養した。そして、生存しているHSC数の評価として、Surface makerやcolony assayを用いた。
【0075】
・培養液の種類は以下の通りである。
StemSpan medium(Stemcell Technology)
50ng/mL murine stem cell factor(mSCF;Peprotech)
20ng/mL human flt−3−ligand(Peprotech)
20ng/mL murine thrombopoietin(mTPO;Stemcell Technology)
・添加抗生物質の種類;0.05μg/mL ストレプトマイシン
図5に示す実験結果から、まず従来の医療用シリンジを用いたbでは、細胞の失活が激しいのに対し、実施例のシリンジであるdとeのパターンが最も高い性能が得られることが分かった。この結果は、実施例のシリンジでは、シリンジ本体部の天面に設けられたガス透過膜と、ルアー部に装着されたフィルター付きキャップによって高いガス交換性能が得られ、シリンジ内部に貯留された細胞懸濁液に対して良好にガス交換が行われ、結果として優れた細胞保存性能が発揮されたことを表していると思われる。
【0076】
このように本発明では、各実施の形態の細胞取扱装置の特徴部分を互いに組み合わせると、非常に高い細胞保存性能を獲得できることが期待できる。例えば、上記データでは実施の形態2と4の組み合わせについて示したが、更に実施の形態1のようにシリンジ本体部側面にガス透過性領域を設けたり、実施の形態3のようにプランジャヘッドにガス透過性を持たせる組み合わせを行うことで、より広い面積のガス透過性領域を持たせることが可能となる。これによって細胞懸濁液中の細胞が、更に外部と良好にガス交換できるようになり、細胞の活性低下が抑制されると思われる。また、細胞懸濁液中からの気泡の除去効率も向上し、細胞破壊を招くことなく一層安全に細胞を保存することも可能になると考えられる。
【0077】
また、cに示されるように、フィルター付きキャップを装着しない場合でも、シリンジ本体部の天面にガス透過膜を設けることによって、少なくとも細胞培養用シャーレでの培養条件とほぼ同様、或いはそれ以上の細胞活性が維持できることが分かる。一方、bでは細胞活性が低下していることを考えると、単に細胞取扱装置として従来の医療用シリンジを用いても、本発明のように良好な細胞保存性能まで得られないことが分かる。
【0078】
以上の考察から、実施の形態1〜4に示すシリンジ仕様の細胞取扱装置は、細胞移植時に迅速且つ容易に細胞を移植できる性能と、高レベルの細胞保存性能を合わせ持っていることは明らかである。
(実施の形態5)
図6は、実施の形態5の細胞取扱装置200の構成を示す外観図である。
【0079】
当該細胞取扱装置200は、ガス透過性及び可撓性を有する材料からなり、全体が円筒形状であって、その本体周壁部201が蛇腹状に形成されることによって、円筒形状を維持しながら伸縮できるようになっている。本体周壁部201の先端部にはルアー部203が形成され、非使用時にはキャップ60が嵌合されることで、本体周壁部201の内部が液密に保たれている。細胞懸濁液100(不図示)は細胞取扱装置200の内部に貯留される。
【0080】
細胞取扱装置200を構成する材料としては、実施の形態1〜4に挙げたガス透過性材料を用いることができる。但し、本実施の形態5では、このガス透過性材料が細胞取扱装置のほぼ全体を構成するので、細胞取扱装置の形状を円筒形状に保持することを考慮して、それなりの剛性を有する材料を用いることが好ましい。また、細胞取扱装置200の材料として多孔質膜を用いると、細胞取扱装置の透明性が低くなって中の細胞懸濁液100が確認しづらくなる場合がある。この場合、細胞取扱装置200の一部(本体周壁部201の後端部202)をガス透過性樹脂材料で構成して細胞取扱装置の透明性を確保し、内部に貯留される細胞懸濁液100を確認できるようにすればよい。このような工夫は、後述する実施の形態6の細胞取扱装置300について行ってもよい。
【0081】
以上の構成を有する実施の形態5の細胞取扱装置200によれば、当該細胞取扱装置200全体が上記ガス透過性材料で作製されているので、内部に液密に貯留された細胞懸濁液100は細菌等による汚染の発生を防ぎつつ、細胞取扱装置200の内壁全体の広い面積にわたって、その生存に必要な酸素の取り込みを行うことができる。このため、一部だけをガス透過性とした細胞取扱装置に比べて、飛躍的に良好なガス交換性能を得ることができる。特に細胞取扱装置200は蛇腹状に形成されているので、保存時にも容器形態をそのまま保つことが容易であり、且つ、細胞のガス交換に関与する細胞取扱装置の表面積を広く確保できる。
【0082】
更に細胞取扱装置200は、上記各実施の形態1〜4の構成に比べて構造が簡単であり、製造が容易であるという利点もある。また、細胞取扱装置200はプランジャを必要としないことから、保存中にシリンジ本体部とプランジャとの間隙より液漏れ(シール漏れ)を生じる心配もない。
このような細胞取扱装置200の優れた性能は、再生医療における使用時にも発揮される。すなわち、使用時にはキャップ60をはずしてルアー部203に針、又はカテーテルを装着し、生体内部の所定位置に合わせ、本体周壁部201の後端部202を手動または治具により押圧するだけで、汚染の発生を回避して内部の細胞を生体側に容易かつ迅速に注入できる。また、装置一部に多孔質膜を使用する場合には、後端部202を押圧することで細胞懸濁液100中の気泡除去操作も効率的に行うことが可能である。
【0083】
(実施の形態6)
図7は、実施の形態6の細胞取扱装置300の構成を示す外観図である。
当該細胞取扱装置300は、前記細胞取扱装置200と同様のガス透過性及び可撓性を有する材料からなり、その本体周壁部301が細長い袋(チューブ)状に形成されている。本体周壁部301の先端部にはルアー部303が形成され、非使用時には、当該ルアー部303にキャップ60が嵌合されることで内部が液密に保たれる。更に本体周壁部301には、後端部302側から扁平環状の扱きリング304が挿通されている。細胞懸濁液100(不図示)は、細胞取扱装置300の内部において液密に貯留される。
【0084】
このような構成を有する実施の形態6の細胞取扱装置300によっても、実施の形態5とほぼ同様の効果が奏されるが、構造上の違いにより、特に細胞取扱装置300では、実施の形態5の細胞取扱装置200のように蛇腹状等に加工する必要もないので、更に製造が容易になるというメリットも有する。
当該細胞取扱装置300によれば、再生医療における使用時には、まずキャップ60を外してルアー部303に針、又はカテーテルを装着し、本体周壁部301の後端部302を保持する。そして、指で扱きリング304を前方へ移動させる。このような簡単な操作を行うだけで、扱きリング304の圧力を受けて本体周壁部301が押圧され、ルアー部303より細胞懸濁液100を吐出させることができる。これにより、実施の形態5とほぼ同様に、汚染の発生を回避して内部の細胞を生体側に容易かつ迅速に注入できるという効果が奏されるのである。
【0085】
更に、上記実施の形態5及び6では、細胞取扱装置全体が蛇腹状または可撓性を有する細長い袋状としたが、本発明の細胞取扱装置はこのような形状に限定されず、例えば円柱状、球状、直方体状でもよく、少なくとも細胞取扱装置の材料として、上記細胞取扱装置200、300の構成材料として挙げたもので作製すればよい。この場合も、当該細胞取扱装置にルアー部を設ければ、使用時に細胞を良好に生体へ移植でき、迅速な再生医療が実現されるので望ましい。
【0086】
なお、実施の形態5及び6では、細胞取扱装置200、300の材料として、実施の形態1〜5で挙げたガス透過膜20、131や天面1100、プランジャヘッド44、細胞取扱装置200と同様に、前述した疎水性材料からなる多孔質膜を用いるか、シリコーン樹脂、ポリエチレンやポリスチレン等のガス透過性樹脂材料を用いることで、細胞取扱装置300に細胞非接着性を持たせれば、細胞乃至細胞塊を細胞懸濁液100中でより良好に浮遊させて貯留またはスムーズに細胞移植することができる。
【0087】
また、上記実施の形態5及び6において、細胞懸濁液100の保存期間が極めて短期間などの理由で、ガス透過性の要件がそれほど要求されない場合には、細胞乃至細胞塊を培養液中に浮遊させて保存する効果を主な目的として、細胞取扱装置200、300の材料に、実施の形態1のシリンジ本体部2の材料として挙げた細胞非接着性材料を用いることができる。
【0088】
なお、上記実施の形態5及び6に挙げた蛇腹状やチューブ状の細胞取扱装置200、300を、後述の実施の形態7、8におけるシリンジ本体部2内部に収納されるバッグ50として利用することも可能である。
(実施の形態7)
図8は、実施の形態7におけるシリンジ型細胞取扱装置1の構成を示す断面図である。
【0089】
当該シリンジ型細胞取扱装置1は、筒状体3及びバッグ50からなるシリンジ本体部2と、プランジャ40を備える構成となっている。
筒状体3及びプランジャ40は、一般的なシリンジに用いられている材料で作製することができる。筒状体3はほぼ筒状に形成されており、前端側面には、中央部に穿孔部11を持つ円盤状の天面110が形成されている。
【0090】
バッグ50は、両端がルアー部51及び後端部52を有するように形成され、その体積が縮小可能な可撓性筒体の液貯留器である。当該バッグ50は、後端部52がプランジャヘッド部43に対向して配され、その全体が押圧によって体積縮小可能な押圧部となっており、プランジャヘッド43で押圧されることにより、内部の貯留物がルアー部51から押し出されるようになっている。また、ルアー部51が前記天面110の穿孔部11より外部に露出するように、筒状体3の内周面に沿って納められ、プランジャヘッド部43で前方にまで押圧されたときにバッグ50内に貯留物が残留しにくい構成となっている。なお、ルアー部51は、キャップを被嵌し、針又はカテーテルなどの導管を装着することができるように、細胞を貯留する部位よりも硬い材質で成形されていることが望ましい。
【0091】
本実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1は、このバッグ50内において細胞懸濁液100が液密に貯留される構成を持つ。ここで本実施の形態7では、このバッグ50に主たる特徴を有する。すなわちバッグ50は、液密でありながらガス透過性を有する材料から構成されており、これによって内部に貯留する細胞懸濁液100中の細胞が、ルアー部51以外において外に出ることなく、且つ、バッグ50の外部とガス交換できるようになっている。
【0092】
このガス透過性材料としては、上記実施の形態1〜6で挙げたガス透過性材料を用いることができる。
また、バッグ50に求められるガス透過性は、細胞取扱装置の表面積、細胞の充填量、細胞の種類及び保存条件等により異なってくるが、細胞取扱装置に充填された細胞が生存するのに十分な量であることが必要である。ガス透過性は、バッグ50の内壁に部分的に持たせるようにすればよいが、ガス透過効率を十分に得るためには、バッグ50の内壁部分全体、あるいはバッグ50全体をガス透過性材料で構成するのが望ましい。
【0093】
なお、本実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1に細胞懸濁液100を充填する際には、筒状体3内部に空のバッグ50を先にセットしておき、しかる後に、ルアー部51先端からバッグ50内部に細胞懸濁液100を貯留するようにしてもよいし、先にバッグ50に細胞懸濁液100を充填してから、これを筒状体3の内部にセットしてもよい。なお、このようにバッグ50を筒状体3から取り外し可能として使用するには、天面110の穿孔部11の大きさをキャップ60を装着したルアー部51が挿通できるサイズに設定するか、筒状体3にバッグ50を装着した後にキャップ60を装着するか、もしくはキャップ60を装着したルアー部51が天面110の穿孔部11に挿入される際に、挿入可能な大きさや形に変形できるように設定する必要がある。
【0094】
ルアー部51の先端には、非使用時(保存時)にはキャップ60が嵌合され、これによってバッグ50内部が液密に保たれている。
なお、ルアー部51に良好にキャップ60を装着する目的で、バッグ50において、少なくともルアー部51を、ある程度剛性を有する材料で構成するのが望ましい。
プランジャ40は、全体的には実施の形態1と同様のものであるが、プランジャヘッド43を構成する弾性部材において、シリンジ軸方向に沿って複数の孔431が形成された特徴を持つ。この孔431を流通路として、バッグ50内部の細胞懸濁液100が、バッグ50外部(プランジャヘッド43より外部)とガス交換可能なように工夫されている。
【0095】
当該シリンジ型細胞取扱装置1は、基本的に滅菌処理を施して使用される。
このような構成を有する実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1では、その第一の特徴として、バッグ50が細菌の侵入等による汚染を防止しつつガス透過性を持っており、バッグ50内部の細胞懸濁液100中に含まれる細胞が、バッグ50を介して、プランジャヘッド43の孔431、及びルアー部51と穿孔部11との間隙から外部とガス交換可能になっている。従って細胞懸濁液100中の細胞は、生存に必要な酸素をバッグ50の外部より取り込むことができるので、バッグ50内で活性低下することなく良好に保存される。
【0096】
なお、本実施の形態7では、プランジャヘッド43の孔431とともに、天面110の穿孔部11を流通路としてガス交換が可能になっているが、装置の外部から細胞にガス供給が可能であれば、孔431、穿孔部11には限定されないのは言うまでもないことであり、この他に何れの部位にガス透過性領域を形成しても良い。
本実施の形態7及び後述する実施の形態8のバッグ50の材料としては、実施の形態1〜6で挙げたガス透過膜20、131や天面1100、プランジャヘッド44、細胞取扱装置200、300と同様に、前述した疎水性材料からなる多孔質膜を用いるか、シリコーン樹脂、ポリエチレンやポリスチレン等のガス透過性樹脂材料を用いることで、バッグ50にも細胞非接着性を持たせ、より細胞を細胞懸濁液100中で良好に浮遊させて貯留することができる。こうすることで、従来のように細胞を取り出す際に薬剤(トリプシンやEDTA等剥離剤)を用いたり、温度変化処理を行って細胞取扱装置から細胞を剥離する手間が不要となり、細胞の物理的・化学的損傷を防ぎ、作業効率を大幅に向上させることができる。また、このような剥離処理や、細胞の洗浄処理等の煩雑な操作が要らないため、迅速な再生医療の処方が可能となり、細胞移植を受ける患者への負担も軽減できる。
【0097】
また、実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1は、その第二の特徴として、医療用シリンジ仕様に作られているので、再生医療における使用時には、実施の形態1〜4のシリンジ型細胞取扱装置1と同様に、迅速且つ容易に細胞の移植操作を行うことができる。
なお、このとき本実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1では、バッグ50を多孔質膜で構成する際に、膜の孔径を前記所定の大きさに設定することによって、バッグ50に加圧力が掛かっても液漏れを生じにくくなっている。このため、気泡除去時に貴重な細胞懸濁液100が漏出して失われるのを防止できる。この効果は、特に細胞量の確保が制限される際に有効である。
【0098】
なお、バッグ50を多孔性材料で構成すると、場合によってはバッグ50が白くなり、バッグ50の内部を確認しづらくなるので注意が必要である。バッグ50の視認性は、特に細胞懸濁液100の残量や、汚染の有無を確認する際に必要となることがあるので、その場合は、多孔度や孔径を調節する等の工夫を行うとよい。
本実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1では、少なくとも筒状体3とプランジャ40は細胞懸濁液100が接触しないので、再利用が可能である。
【0099】
また、上記例ではバッグ50をガス透過性材料、或いはガス透過性及び細胞非接着性を有する材料で構成する例を示したが、細胞の保存期間が短いなど、ガス透過性の要件がそれほど重要でない場合には、筒状体3の構成材料として前述した細胞非接着性を主目的とする細胞非接着性材料でバッグ50を構成することもできる。
(実施の形態8)
図9は、実施の形態8におけるシリンジ型細胞取扱装置1の構成を示す断面図である。
【0100】
本実施の形態8と前記実施の形態7との差異は、プランジャヘッド43に孔431が設けられていない点、及びバッグ先端部53が筒状体3内部で封止されている点、そして、バッグ先端部53に対向するように、筒状体3内部にバッグ破断手段13が設けられている点である。
バッグ破断手段13は、具体的には鋭利な金属刃や針状部材で構成することもできる。図9ではバッグ破断手段13として金属刃を設ける例を示しているが、破棄時の処理を考慮する必要のある場合、当該バッグ破断手段13は例えばシリンジ本体部と同様の樹脂部材で構成することもできる。
【0101】
このような構成を持つ実施の形態8のシリンジ型細胞取扱装置1によっても、細胞保存時には実施の形態7のシリンジ型細胞取扱装置1とほぼ同様の効果が奏される。
更に、本実施の形態8のシリンジ型細胞取扱装置1では、図9に示すように、天面110に設けられたルアー部120の開口部121を流通路としてバッグ50の先端部53が外気に露出しているため、実施の形態7に比べて更に良好にガス交換及び気泡除去を行えるという効果がある。
【0102】
(細胞取扱装置に対する変形例)
上記実施の形態1〜8で説明した細胞取扱装置の形状は、当然ながら例示に過ぎず、これ以外の形状であってもよい。すなわち、少なくとも内部に液密に細胞を貯留可能な細胞取扱装置であって、少なくとも前記細胞と接触する細胞取扱装置の内壁のうち一部以上が細胞非接着性材料、またはガス透過性材料で構成されていればよい。
【0103】
例えば、本発明の細胞取扱装置は、円柱状の外観形状としてもよい。この場合、当該細胞取扱装置内に細胞を保存しておき、使用時には細胞取扱装置の側面に針またはカテーテルを装着するとともに、細胞取扱装置の体積を縮小させて細胞を吐出させることもできる。
2.本発明の組織再生用組成物について
図10は、本発明にかかる組織再生用組成物の部分拡大図である。この組織再生用組成物は、細胞培養粒子1000と、これを含む流動性媒体2000(例えば培養液)とから構成される。
【0104】
当該組織再生用組成物は以下に述べるように、従来の比較的大がかりな構成を持つ足場と、当該足場に配された細胞からなる組織再生用組成物の代わりに用いることのできるものであって、再生医療用の組織再生用組成物として最適な性能を有するものである。
当図に示すように細胞培養粒子1000は、流動性媒体2000に複数にわたり分散されており、生体吸収性材料から形成された足場粒子1001の表面に、複数の細胞1002が接着された構成を有する。なお細胞1002の接着数は、個々の足場粒子1001によって変化がある。
【0105】
足場粒子1001は、直径が10μm以上2000μm以下の範囲にあることが望ましく、50μm以上500μm以下の範囲が特に好ましい。この粒径に設定することによって、細胞培養粒子1000が流動性媒体2000中に良好に分散されるので、組織再生用組成物全体としても流動性を持つ。従って、細胞培養粒子1000を含む組織再生用組成物を前述した実施の形態1〜8の細胞取扱装置に保存しておけば、当該細胞取扱装置内部よりルアー部等を通じて良好に外部に取り出すことが可能となる。また細胞培養粒子1000は、細胞の接着面積を確保する目的で、細胞が侵入するのに十分な孔径の細孔を有する多孔質体であることが好ましい。
【0106】
足場粒子1001を構成する上記生体吸収性材料としては、公知の材料を使用でき、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−カプロラクトン共重合体、グリコール酸−カーボネート共重合体、ポリジオキサノン、キトサン、架橋ヒアルロン酸、アルギン酸、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ポリリジン、フィブリン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ポリシアノアクリレート、ポリグルタミン酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、キチン、デンプン、フィブリノーゲン、ハイドロキシアパタイト及びゼラチンの群より選ばれた1種類以上とすることができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0107】
当該足場粒子1001の製造例としては、上記生体吸収性材料を溶媒に溶解した液を噴霧して微粒子化し、溶媒を蒸発除去させることによって製造することができる。また材料溶液を分散溶媒中に分散して乳化させ、次いで溶媒を蒸発させる方法、或いは上記生体吸収性材料の原料を乳化させ、それを重合させる乳化重合によっても製造することが可能である。
【0108】
更に足場粒子1001を多孔質にする方法としては、生体吸収性材料溶液を乳化させて凍結し、次いで溶媒を蒸発させる凍結乾燥法を挙げることができる。また、生体吸収性材料に食塩、糖などの粉末を造孔剤として混合した混合物で粒子を作成し、次いで造孔剤を溶解除去することによって粒子を多孔質にする方法もある。
一方、細胞1002には、治療の目的に応じて前述した様々な細胞種を使用することが可能である。当該細胞種に特に制限はなく、具体例には胚性幹細胞(embryonic stem cells;ES細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cells;EG細胞)、体性幹細胞(adult stem cells;AS細胞、成人幹細胞とも言う)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、血管内皮幹細胞、造血幹細胞、肝幹細胞等の幹細胞の他に、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、心筋細胞、神経細胞、腱細胞、脂肪細胞、膵細胞、肝細胞、腎細胞、毛母細胞、血球細胞等の分化した細胞またはその前駆細胞を挙げることができる。このように、胚性幹細胞を始め、各分化の度合いが異なる幹細胞や、各組織に分化した細胞を用いることができる。中でも、接着性細胞を用いる場合、増殖・分化の際の足場を提供できるので有効である。ここで、接着性細胞とは、造血系幹細胞中の血球系細胞を除外した細胞の殆どが含まれる。
【0109】
また、ここに挙げた各種細胞のいずれかを遺伝子工学的手法により改変してなる遺伝子改変細胞も問題なく用いることができる。
更に、上記流動性媒体2000としては、一般的な培養液の他に培養液以外の媒体、例えば生理食塩水、リン酸緩衝液などを使用することもできる。しかしその場合は、細胞培養に使用した培養液をこれらの媒体と置換する必要がある。
【0110】
上記細胞培養粒子1000を製造するには、まず培養液(流動性媒体2000)中で上記細胞1002を足場粒子1001上に播種し、当該培養液中で培養すればよい。これにより細胞1002は自然に足場粒子1001の表面に接着し、細胞培養粒子1000が構成される。細胞培養は既知の方法により行うことができる。
細胞培養の操作手順の例としては、まず、生体から細胞を分離・精製し、目的とする細胞を選別する。その後、必要に応じて細胞増殖因子を添加して増殖または標的細胞への分化誘導をかけるとともに、培養液中で細胞培養粒子1000を添加しゆっくりと攪拌しながら培養する。この際、細胞増殖因子など細胞増殖に必要な成分を細胞培養粒子に含有させてもよい。
【0111】
ここで、実際の細胞培養はインキュベータ内で実施するのが望ましい。得られた組織再生用組成物は、所定の細胞取扱装置(本発明の実施の形態1〜8等で挙げた細胞取扱装置が望ましい)に収納して、保存に適した条件で治療に必要となるまで保存する。保存は低温で行うのが望ましいが、細胞の失活が起こりにくい条件では常温または加温下で実施することもできる。
【0112】
このような方法により、細胞1002が足場粒子1001の多孔質表面における孔中に接着されて細胞培養粒子1000が構成され、細胞1002は細胞培地或いは分化誘導培地内で良好に培養される。
なお、細胞1002の足場粒子1001への接着性をより向上させるために、足場粒子1001表面を、公知の手法(オゾン処理、UV処理、プラズマ処理などの物理的な処理、硫酸処理、塩酸処理などの化学的な処理、コーティング処理など)によって細胞接着性向上処理を施しておくことが望ましい。コーティング材料の例としては、しては、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ポリリジン、フィブリン(プレクロッティング処理を含む)、フィブリノーゲン及びゼラチンまたはコラーゲンで被覆する構成である。更に粒子自体に、各種増殖因子、ホルモンなどの生理活性物質を固定、吸着させてもよい。このような構成によれば、足場粒子1001自体の機械的強度が良好になり、細胞1002の接着性も向上するとともに、治癒効果も高めることが可能となる。
(粒子状の組織再生用組成物による効果)
以上の構成を持つ組織再生用組成物によれば、細胞1002は足場粒子1001の表面において、増殖または標的細胞へ分化誘導させることができるが、この期間中、細胞1002は足場粒子1001とともに微細な細胞培養粒子1000となって培養液中で浮遊した状態となり、全体として流動性を有している。そして再生医療の使用時には、細胞培養粒子1000をそのまま生体に注入して細胞移植することができる。
【0113】
更に、足場粒子1001は生体吸収性材料で形成されているので、細胞培養粒子1000を、上記実施形態1〜8で説明したシリンジ仕様の細胞取扱装置に保存しておけば、使用時には当該細胞培養粒子1000を流動性媒体2000ごとルアー部等からスムーズに生体へ細胞移植できる。
このようなシリンジタイプの細胞取扱装置による細胞移植の手技としては、足場を埋植してない患部に細胞注入する手技や、予め患部に埋植した足場に対して、繰り返し細胞注入する手法など、が考えられる。後者の手技は、徐々に患部を治癒再生させたい場合(軟骨再生や、乳房再生など)に有効である。
【0114】
すなわち、一般に細胞を容器中に保存すると、保存中に細胞が容器の内壁に接着しやすいため、細胞を容器外に容易に取り出すことができないが、上記シリンジ仕様の細胞取扱器具に保存しておけば、保存中に細胞が内壁に接着することがなく、細胞培養粒子1000が流動性媒体2000中で浮遊した状態が維持される。従って、細胞取扱器具のルアー部に針や血管留置カテーテルを接続して、押し子等を押し込むことによって、細胞培養粒子1000を生体内に注入することができる。
【0115】
また、上記シリンジ仕様の細胞取扱器具内において、足場粒子1001上で細胞を培養し、培養によって形成された細胞培養粒子1000を、細胞取扱器具内からシリンジ操作によって細胞培養粒子1000を生体内に注入することができる。
足場粒子1001は、生体注入後に所定期間が経過すると、生体に吸収されて消失するので、移植後に足場を除去する手術も不要となる。このため、患者に対する負担を著しく低減でき、特に、体力に乏しい乳児や老人等の患者に対する負担も軽減することできる。
【0116】
また、粒子状の組織再生用組成物を、上記実施の形態1〜8で挙げた細胞取扱装置に保存しておけば、細胞取扱装置内壁への細胞接着、細胞失活、気泡による細胞破壊を防止しながら、良好に細胞を保存することができる。
本発明の組織再生用組成物を再生医療に適用する例としては、生体の患部に注入することにより、変形性関節症、慢性関節リュウマチ、偽関節、歯周病、進行性筋ジストロフィー症、心筋梗塞、脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷、腱損傷、糖尿病、肝機能障害、消化器機能不全、皮膚損傷、白血病、血液系疾患等に対する治療に利用できる。
【0117】
更に具体的には、変形性関節症の患者への軟骨細胞またはその前駆細胞の注入、歯周病患者への骨細胞またはその前駆細胞の注入、パーキンソン病患者の脳への神経細胞またはその前駆細胞の注入、或いは心臓病患者への心筋細胞またはその前駆細胞の注入などである。
なお、以上の説明では、細胞種として再生治療用の細胞を利用する例を示したが、本発明の細胞取扱装置及び組織再生用組成物に用いる細胞としては、再生治療以外の治療用細胞、またはそれ以外の細胞を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の細胞取扱装置及び組織再生用組成物は、収納された細胞を生体患部又は血管内に注入することにより、変形性関節症、慢性関節リュウマチ、偽関節、進行性筋ジストロフィー症、心筋梗塞、脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷、腱損傷、糖尿病、肝機能障害、消化器機能不全、皮膚損傷、白血病、血液系疾患、毛髪再生などに対する治療へ応用される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施の形態1の細胞取扱装置であるシリンジの構成図である。
【図2】実施の形態2の細胞取扱装置であるシリンジの構成図である。
【図3】実施の形態3の細胞取扱装置であるシリンジの構成図である。
【図4】実施の形態4の細胞取扱装置であるシリンジの構成図である。
【図5】本発明の細胞取扱装置の性能データである。
【図6】実施の形態5の細胞取扱装置の構成図である。
【図7】実施の形態6の細胞取扱装置の構成図である。
【図8】実施の形態7の細胞取扱装置であるシリンジの構成図である。
【図9】実施の形態8の細胞取扱装置であるシリンジの構成図である。
【図10】本発明の組織再生用組成物の構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性媒体と、当該流動性媒体中に浮遊する細胞の足場となる粒子形状の細胞足場粒子とを有し、
前記細胞足場粒子は生体吸収性材料からなるとともに、
当該細胞足場粒子は細胞接着性を有する構成である
こと特徴とする組織再生用組成物。
【請求項2】
前記足場粒子の直径が10μm以上2000μm以下の範囲である
ことを特徴とする請求項1に記載の組織再生用組成物。
【請求項3】
前記足場粒子が多孔質である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組織再生用組成物。
【請求項4】
前記足場粒子には、細胞の接着性が向上する処理が施されている
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の組織再生用組成物。
【請求項5】
前記細胞は、細胞増殖に足場が必要とされる接着性細胞群から選ばれた細胞である
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の組織再生用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−17892(P2009−17892A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266719(P2008−266719)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【分割の表示】特願2005−509618(P2005−509618)の分割
【原出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【出願人】(501260163)
【Fターム(参考)】