説明

細胞性免疫反応アッセイおよびそのためのキット

本発明は、被験対象から採取した少量の無希釈の全血において細胞性免疫(CMI)を測定するための方法およびキットを提供する。特に、本方法は、例えば50μl〜500μlの量を有する無希釈の全血試料において反応を測定するための方法である。それと共に、毛細血管採血および小児、成人または高齢ヒト被験対象を含む被験対象の迅速な試験が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬剤に対する細胞反応性をin vitroで測定する、診断、モニタリングまたは治療に使用するための方法およびキットに関する。特に、本発明は、被験対象から採取した少量の全血試料において抗原に対する細胞性免疫(CMI)反応を測定するシステムを提供する。本方法およびキットは、試料量に制限があるか、または少量の試料量が望ましい場合の、乳幼児または他の被験対象由来のものを含む、一連の種々の量を有する全血試料の分析に広範な応用を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の著者により引用された刊行物の書誌情報詳細は、本明細書の末尾にまとめてある。
【0003】
本明細書におけるどのような事前掲載(またはそれに由来する情報)または既知の事柄への引用も、その事前掲載(またはそれに由来する情報)または既知の事柄が、本明細書の関する技術分野における一般的かつ通常の知識を形成することを承認、容認または何らか示唆するものではなく、またそうみなすべきではない。
【0004】
免疫反応の機能は、侵入する病原体または毒素を無力化することである。状況によっては、免疫反応は生物に対して大変な破壊力を示すことができ、生存は、自己と非自己を区別する免疫系の能力に依存している。例えば、自己免疫疾患は、免疫系が自己に過剰反応するとき発症する。免疫反応には、比較的無害な非自己分子に対するものがある。例えば、喘息および枯草熱は、非自己に対する免疫反応を伴い、原因菌よりも免疫反応のほうが消耗性が強い。一般に、自然免疫系は、非病原性生物に対する反応を選別して除き、また、このような無害な薬剤に対する適応免疫反応を防ぐのに役立つ。
【0005】
適応免疫反応は、抗体反応を行うBリンパ球または細胞性反応を行うTリンパ球などのリンパ球により行われる。Bリンパ球は、病原体および毒素を不活化するのに役立つ免疫グロブリンを産生する。T細胞は、"自己"分子のレパートリーを与える主要組織適合性(MHC)分子と共同して、宿主細胞の表面に露出された非自己分子(抗原)と直接に反応する。いずれの場合も非自己分子の特定のエピトープに特異的な細胞性反応が引き起こされ、免疫反応および免疫エフェクター分子のネットワークを提供する。
【0006】
よって、感染を診断またはモニタリングする1つの方法、すなわち非自己に対して免疫反応を起こす被験対象の能力を評価する1つの方法は、被験対象が抗原刺激に対して免疫反応を起こしたかどうかを測定することである。T細胞応答は、抗原に応答することができるか、または免疫エフェクター分子を産生することにより、刺激を受けて抗原に応答することができるエフェクターT細胞の産生を含むので、細胞性免疫反応の尺度として、特異抗原に応答するこれらの分子の産生を測定することができる。しかしながら、抗原提示細胞によりT細胞上に非自己抗原分子が提示されるので、検出のための十分な免疫エフェクター分子を産生するためには、in vitroで首尾よく引き起こされなければならない分子と細胞との複雑な相互作用が存在する。
【0007】
細胞性免疫反応を検出するためのin vitro法の大部分は、種々の分離技術を用いる全血からの末梢血単核細胞の精製を含む。このようなアッセイは、クロム放出アッセイ、細胞毒性アッセイ、MHCクラスIテトラマーアッセイ、IFN-γまたは他のサイトカインのアッセイ(ELISPOTがその好例である)を含む。ELISPOT法は、抗原提示細胞を固定化するが、これは抗原刺激に応じて特定のサイトカインを産生するT細胞数を検出するために用いられてきた。
【0008】
全血を用いる場合、赤血球を希釈するために、一般に全血を培地で希釈するが、このことはアッセイの感度を低下させると考えられている。無希釈の全血を用いる管内(in-tube)細胞性免疫反応アッセイが、Cellestis Limited社の名で国際公開W02004/042396に記載されている(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。国際公開W02004/042396は、抗原および単糖と試料とのインキュベーションのための採血管の使用を開示しており、24ウェルマイクロタイタープレート上に血液を移し、そこでインキュベートするアッセイと比較して、管システムを用いた場合感度が上昇したことを明らかにしている。
【0009】
ヒトおよび家畜動物における全血アッセイについては、細胞性免疫反応アッセイを行うのに十分な試料を得るために、被験対象から血液を少なくとも約3ml採取する。一般に、しばしば減圧下で、針を用いる静脈採血により採取容器にこの量を採取する。
【0010】
エンザイムイムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはフローサイトメトリー法などの免疫エフェクター分子を検出するための種々の方法は、少量を用いることができる。しかしながら、in vitro細胞性免疫反応アッセイの抗原刺激段階を行うための改善されたシステムが当該技術分野で求められている。特に、少量の血液、例えば末梢毛細血管採血により得られる血液での全血測定を可能にする方法が求められている。少量の血液試料をスクリーニングする能力により、採血が困難であるかあるいは制限される可能性のある小児または他の被験対象の採血が大変容易になると考えられ、静脈採血を用いずに、毛細血管血、例えば拇指、踵、耳たぶまたは他の便利な部位のプリックテストにより得られる毛細血管血を用いることによる採血が可能となり、1回の少量採血でマイトジェンおよびハプテンを含む多数または一連の抗原を試験することが可能となる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、一部分において、被験対象からの非常に少量の全血において細胞性免疫反応を引き起こし検出することが可能であり、これは静脈または動脈血である必要はないという驚くべき発見に基づく。このことは、細胞性免疫反応アッセイの実施のための血液採取が、例えば、一般に約1ミリリットル以下の量を与える末梢毛細血管血のプリック採血を用いて達成できることを意味する。さらにまた、非常に少量の全血試料で免疫エフェクター分子を産生する能力を試験できることにより、少量の試料での多数の試験が容易となる。
【0012】
主要な一実施形態において、本発明は、被験対象からの試料において細胞性免疫反応を測定する方法であって、前記試料が薬剤、例えば抗原による刺激後に免疫エフェクター分子を分泌する細胞を含む前記方法を提供する。特定の一実施形態において、本発明は、被験対象から採取した全血試料において細胞性免疫(CMI)反応を測定する方法であって、前記全血試料が抗原による刺激後に免疫エフェクター分子を産生することができる免疫系細胞を含む前記方法において、(i)末梢毛細血管からの全血試料または被験対象の動脈もしくは静脈からの0.5mL未満の全血を、実質的に試料を希釈しないで、インキュベーション容器内で抗原とインキュベートし;(ii)免疫エフェクター分子または、細胞性反応を起こす被験対象の能力を示すエフェクター分子を産生することができる核酸分子の存在を検出または測定することを含む前記方法を提供する。
【0013】
他の実施形態において、本方法は、(i)末梢毛細血管からの全血試料または被験対象の動脈もしくは静脈からの0.5mL未満の全血を容器に採取し;(ii)全血を抗原および抗凝血薬とインキュベートし;(iii)免疫エフェクター分子または、細胞性反応を起こす被験対象の能力を示す免疫エフェクター分子を産生することができる核酸分子の存在を検出または測定することを含む。
【0014】
本方法は、例えば、炎症性疾患、病原体感染、例えば細菌性、ウイルス性、寄生虫または真菌性病原体により引き起こされる病原体感染、自己免疫疾患、免疫機能不全、アレルギーもしくは癌またはこのような疾患を発症する傾向を有する被験対象を治療するための適切な治療プロトコルの選択に広範な応用を提供する。
【0015】
好ましい実施形態において、本方法は、毛細血管血試料を採取することおよび/もしくはインキュベートすることまたは毛細血管採血装置で被験対象から試料を採取することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、本方法は、試料の形状が最適化された寸法を含む条件下で試料と薬剤をインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、寸法は特定の被験対象または被験対象集団に最適化されている。他の実施形態において、寸法は特定の細胞試料に最適化されている。いくつかの実施形態において、寸法は試料の高さである。他の実施形態において、量は最適化されている。他の実施形態において、末梢血単核細胞(PBMC)または他の免疫細胞の濃度も最適化されている。"最適化された"とは、選択された寸法値または範囲が、試験された他の値または範囲と比較して最適の細胞性反応をもたらすことを意味する。従って、いくつかの実施形態において、試料は、最適の細胞性反応をもたらすために、本明細書に開示された方法を用いて事前選択された寸法を含む。
【0017】
実施例1に示すように、標準的な標識結合イムノアッセイ試験により、全量が0.5mL、0.4mL、0.3mL、0.2mLおよび0.1mLのような少量の血液のインキュベーションでIFN-γが産生されることが明らかにされた。実施例2〜4に記載されているさらなる実験は、20μlのような少量のおよび/または試料の高さ4mmを有する血液試料のインキュベーションにより、診断アッセイに有用な十分な免疫エフェクター分子を生じさせることができることを示している。採取される試料量またはインキュベートされる試料量とは無関係に、約6mm〜約12mmまたは約5mm〜約18mmの試料の高さおよびその間の高さで最適の結果が得られる。
【0018】
よって、いくつかの実施形態において、インキュベーション容器は試料の最適の形状を維持するのに適し、前記形状は(i)約6mm未満の最大円直径;(ii)少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの高さ;または(iii)0.5mL未満および場合により約400μl未満の量;から選択される1または2以上の寸法を有する。
【0019】
他の側面において、本発明は、被験対象からの全血試料において薬剤への細胞性反応を測定するためのキットであって、免疫細胞を刺激して免疫エフェクター分子を分泌させることができる薬剤と別々にまたは一緒に収容する採取容器を含み、さらに場合により使用説明書を含む前記キットを提供する。いくつかの実施形態において、試料は抗原とのインキュベーションのための1以上の容器に採取容器から移され、キットは1以上の採取容器および1以上のインキュベーション容器を含む。好都合には、いくつかの実施形態において、採取容器は抗凝血薬を含む。他の実施形態において、インキュベーション容器は抗原および場合により単糖、例えばデキストロースを含む。
【0020】
よって、本発明は、被験対象から採取した全血試料において細胞性免疫反応を測定するためのキットであって、被験対象から採取した全血試料において細胞性免疫反応を測定するためのキットにおいて、(i)末梢毛細血管全血試料または0.5mL未満の全静脈血もしくは動脈血を保持またはインキュベートするのに適した1以上の採取および/またはインキュベーション容器;(ii)それに対するin vitro反応の分析のための1以上の試験抗原および場合により対照抗原;(iii)免疫エフェクター分子の存在またはレベルの上昇を測定する試薬;および(iv)場合により本明細書に記載の方法のいずれかを含む1組の使用説明書;を多成分構成で含む前記キットを提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、インキュベーション容器は試料の最適の形状を維持するのに適し、前記形状は(i)約6mm未満の最大円直径;(ii)少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの高さ;または(iii)0.5mL未満および場合により400μl未満の量;から選択される1または2以上の寸法を有する。
【0022】
使用説明書は、例えば、血液と抗凝血薬を混合するために、全血を採取し、採取/インキュベーション容器に血液を混合する使用説明書を含むことができる。他の実施形態において、使用説明書は、全血試料と抗原および場合により対照抗原またはマイトジェンとをインキュベートするための使用説明書を含む。他の実施形態において、使用説明書は、インキュベーション容器を遠心分離して血漿を採取するための使用説明書を含む。いくつかの実施形態において、使用説明書は血漿中の免疫エフェクター分子を検出するための使用説明書を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、試料の高さが約12mmであることを確認するために採取容器に印が付けられる。いくつかの実施形態において、キットは、同じおよび/または異なる寸法の複数個の印を付けられた採取容器を含む。いくつかの実施形態において、キットは毛細血管採血装置を含む。他の実施形態において、キットは、それに対するin vitro反応の分析のために、診断のための1以上の試験抗原および場合により対照抗原としてのマイトジェンを含む。場合により、キットは、陽性および陰性対照を含む、免疫エフェクター分子またはそれをコードする分子の存在またはレベルの上昇を測定する適切な試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、免疫エフェクターを検出するアッセイを行うための適切な試薬をさらに含む。一実施形態において、アッセイは、IFN-γまたは下流のエフェクター分子のアッセイである。好ましい実施形態において、試薬は、IFN-γ、TNFまたはGM-CSFを検出するための抗体複合体を含む。典型的な実施形態において、抗体複合体はIFN-γを検出する。このようなアッセイは、例えばELISAもしくはELISPOTベースのアッセイまたは当該技術分野で公知の同様なアッセイを含む。他の実施形態において、アッセイは、免疫エフェクター分子、例えばIFN-γをコードするRNAの逆転写増幅アッセイである。このようなアッセイは当該技術分野で公知であり、例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, CSHLP, CSH, NY, 2001 およびAusubel (Ed) Current Protocols in Molecular Biology, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc, NY, 2002 に記載されている。
【0024】
他の側面において、本発明は、自動化もしくは半自動化が可能な方法、コンピュータプログラム、コンピュータ製品、被験対象のアッセイからの出力の解釈を容易にするコンピュータを考える。
【0025】
いずれにせよ、上記の概要を本発明のすべての実施形態の包括的記述と見なしてはならない。
【0026】
好ましい実施形態の詳細な説明
特記しない限り、本明細書に用いるすべての学術用語は、本発明が属する当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書記載のものと類似または等価な任意の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることはできるが、好ましい方法および材料は記載されている。本発明においては、以下の用語は、下記のように定義される。
【0027】
用語"約"は、それを前に置く用語の数値における少しの変動または補正を規定する。この用語は、列挙されている用語に対して35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%または3%程度変化する量、容量、レベル、値、百分率、寸法、サイズまたは総量に関する。従って、"少なくとも約6mm"は、6mmばかりでなく4mmまたは5mmおよび6mmを超える高さを含み、"約12mm"は、13mm、14mm、15mmまたは16mmを含み、12mmより低い高さも含む。さらに、この用語は、数値の端数、例えば6.5mmまたは6.9mmなどを含む。好ましい実施形態において、変動は低く、数値の10%または15%の変動に限定される。
【0028】
本明細書においては、冠詞である"a"および"an"は、冠詞の文法上の1または2以上(すなわち少なくとも1つ)の目的語を指すために用いられる。例としては、"an antigen"は1つの抗原または2以上の抗原を意味し、"an immune effector molecule"は1以上の免疫エフェクター分子を意味する。
【0029】
本明細書において、用語"抗原"は、免疫反応、特に細胞性免疫反応を刺激する任意の分子または薬剤を含み、アンチセンスタンパク質もしくはペプチド、ハプテン、マイトジェン、アレルゲンまたは毒素あるいはこのような活性を有する天然もしくは合成分子またはそれらの一部を含む。いくつかの実施形態において、抗原は、1以上の完全長または部分長のポリペプチドを含む。他の実施形態において、抗原は、1以上の異なる完全長または部分長ポリペプチドからのペプチドまたは1組のペプチドを含む。いくつかの実施形態において、in vivoで免疫系に提示される抗原の効果の1以上を模倣する抗原が用いられる。一般に、試験抗原は、所定の集団または被験対象における最適の選択性および感受性に基づいて選択される。一実施形態例において、抗原は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来の抗原である。いくつかの実施形態において、抗原は結核(TB)特異抗原である。他の実施形態において、抗原は結核菌またはトリ型結核菌由来の精製ツベルクリンである。いくつかの実施形態において、抗原は、マイコバクテリアタンパク質、例えばESAT-6(Skjot et al., Infection and Immunity, 68(1):214-20, 2000)、CFP-10およびTB7(Brock et al., Int. J. Tuberc. Lung. Dis, 5(5):462-467, 2001)を模倣する。マイトジェンは、陽性対照として、あるいは抗原非特異的免疫反応を起こす試料中の細胞の能力を検出するために用いることができる。他の実施形態において、薬剤はマイトジェンである。他の実施形態において、抗原は、自己抗原、病原性生物由来抗原、免疫反応を刺激する金属もしくは無機分子または腫瘍抗原から選択される。いくつかの実施形態において、薬剤(抗原)は、リン脂質、リン酸化タンパク質またはホスホリン脂質である。他の実施形態例において、抗原はサイトメガロウイルス(CMV)由来である。いくつかの実施形態において、病原性生物由来抗原は細菌性、ウイルス性、寄生虫もしくは真菌性抗原またはそれらの類縁体である。
【0030】
特記しない限り、語"含む(comprise)"ならびにその語尾変化形、例えば"含む(comprises)"および"含むこと(comprising)"は、記載された整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を包含するが、任意の他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を除外しないことを意味すると解される。
【0031】
特記しない限り、本明細書記載の各実施形態は、他の実施形態のいずれにも、必要な変更を加えて適用することができる。
【0032】
好ましくは、"被験対象(subject)"はヒトである。しかしながら、本発明は、霊長類、家畜動物、ペット動物および鳥類はもちろん非哺乳動物、例えば爬虫類および両生類も考える。従って、本アッセイは、ヒト、家畜、獣医および野生生物の治療、診断およびモニタリングに用途を有する。いくつかの実施形態において、ヒト被験対象は、特定の属性または疾患を示す群から選択される。いくつかの実施形態において、被験対象は小児、成人または高齢被験対象である。いくつかの実施形態において、被験対象は病原体感染、自己免疫疾患または癌を現在または過去に有し、あるいは癌の治療中であり、あるいはこのような疾患を発症する傾向を有し、あるいは免疫不全であり、あるいは炎症反応を起こしている。本方法および/またはキットを用いることを含めて、被験対象が評価されれば、次いで被験対象は治療をうけることができる。よって、診断および治療を含む方法もまた具体的に考えられる。
【0033】
よって、本発明は、被験対象が小児、成人または高齢被験対象を含むヒトである本明細書に開示された方法のいずれかを提供する。他の実施形態において、被験対象は、動物または鳥、例えば家畜動物、レース動物、エキゾチックアニマル、移住動物または鳥である。
【0034】
上記のように、本発明の重要な利点の1つは、末梢毛細血管からの無希釈の全血を用いてCMIアッセイを行う設備である。よって、いくつかの実施形態において、本方法は毛細血管採血装置で被験対象から試料を採取することを含む。装置は、任意の末梢毛細血管、例えば拇指、指、踵、足趾、耳たぶなどの末梢毛細血管から毛細血管採血するのに適したプリック装置であることができる。いくつかの実施形態において、装置はキャピラリーチューブを含む。キャピラリーチューブまたは他の、細いまたは円錐形の容器は、非常に少量の試料、例えば約20μl〜50μlおよび約200μl〜250μlの試料で最適の高さの試料形状を形成するのに有用である。いくつかの実施形態において、インキュベーション容器は試料の最適の形状を維持するのに適し、前記形状は(i)6mm未満の円直径;(ii)少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの高さ;または(iii)0.5mL未満および場合により400μl未満の量;から選択される1または2以上の寸法を有する。いくつかの実施形態において、容器内の試料は、少なくとも約6mm〜最大約12mmの高さを有する。いくつかの実施形態において、試料は、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mmまたは20mmの高さまたはその間の高さを有する。他の実施形態において、試料は6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mmまたは12mmの高さまたはその間の高さを有する。試料量に関しては、いくつかの実施形態において、インキュベートされる全試料量は、500μl未満、400μl未満、300μl未満、200μl未満、100μl未満または50μl未満である。試料が毛細血管血である場合、インキュベートされる全試料量は約2000μl、1500μl、1400μl、1300μl、1200μl、1100μl、900μl、800μl、700μl、600μl、500μl、400μl、300μl、200μl、100μl、50μlまたは40μlの量またはその間の量から選択される。いくつかの実施形態において、試料は直径約3〜4mmのキャピラリーチューブに採取される。
【0035】
"免疫細胞"とは、細胞、例えばナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞(CD4+および/もしくはCD8+細胞)、B細胞、マクロファージおよび単球を含むリンパ球、樹状細胞または、直接または間接の抗原刺激に応じてエフェクター分子を産生することができる任意の他の細胞を含む。好都合には、免疫細胞はリンパ球であり、より具体的にはTリンパ球である。
【0036】
よって、本発明は、免疫細胞がナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞、マクロファージまたは単球から選択される、本明細書に開示された方法を考える。好ましい実施形態において、細胞はT細胞である。
【0037】
免疫エフェクター分子は、細胞活性化または抗原刺激に応じて産生される一連の分子のいずれかであることができる。インターフェロン(IFN)、例えばIFN-γは、特に有用な免疫エフェクター分子であるが、他には一連のサイトカイン、例えばインターロイキン(IL)、例えばIL-2、IL-3IL-4、IL-5、IL-10もしくはIL-12、腫瘍壊死因子α(TNF-α、TNF-β)、コロニー刺激因子(CSF)、例えば顆粒球(G)-CSFまたは顆粒球マクロファージ(GM)-CSFを含み、とりわけ例えば補体または補体経路における成分、パーフォリン、デフェンシン、カテリシジン、グランザイム、Fasリガンド、CD-40リガンド、エキソタキシン(exotaxin)、サイトトキシン、ケモカインおよびモノカインを含む。
【0038】
よって、いくつかの実施形態において、本発明は、免疫エフェクター分子がサイトカイン、補体系成分、パーフォリン、デフェンシン、カテリシジン、グランザイム、Fasリガンド、CD-40リガンド、エキソタキシン、サイトトキシン、ケモカインまたはモノカインである方法を提供する。好ましい実施形態において、サイトカインはIFN-γ、TNFαまたはGM-CSFである。
【0039】
"全血"とは、細胞の周囲の血液環境が実際的に天然の血漿条件の近くに維持されている、実質的に希釈または分画されていない被験対象の血液を意味する。従って、例えば少量または乾燥量の抗原、糖質または抗凝血薬の添加は、本発明による希釈を構成しないが、血液量を超える培地の添加は希釈を構成する。無希釈の全血が好ましく、最も便利な試料ではあるが、本発明は、免疫細胞を含む他の試料、例えばリンパ液、脳脊髄液、組織液(例えば骨髄液または胸腺液)ならびに鼻腔液および肺液を含む呼吸器液にまでおよぶ。処理により、これらの試料の派生物を得ることもできる。例えば、当該技術分野で公知の方法により、バフィーコート細胞または末梢血単核細胞または抗原プロセシング細胞が得られる。当該技術分野で公知の方法により、全血を処理して、成分、例えば赤血球および/または血小板を除去することもできる。元の量の約40%〜50%を超える量の試料を添加することにより、実質的希釈が起こると考えられる。
【0040】
よって、いくつかの実施形態において、本方法は、エフェクター分子またはエフェクター分子を産生することができる核酸分子の存在を検出することを含む。本実施形態において、エフェクター分子またはエフェクター分子を産生することができる核酸分子の存在またはレベルの上昇は、細胞性反応を起こす被験対象の能力を示す。
【0041】
一実施形態例において、試料の形状は最適化された高さを含む。本実施形態の一例において、細胞試料は、少なくとも6ミリメートル(mm)から最大約12mmの高さまたはその間の任意の高さを含む。当業者には明らかなように、本開示の最適化された試料の高さの必要条件には、用いられる試料量および試料がインキュベートされる容器の形状に関してかなりの変動または選択が許される。従って、いくつかの実施形態において、インキュベーション中の試料の高さが約12mmを超えないことを確実にする適切な寸法の容器中で、大量の試料、例えば血液10ミリリットル(mL)がインキュベートされる。反対側の規模では、試料50マイクロリットル(μl)を、例えば、少なくとも約6mmから最大約12mmの試料の高さまたはその間の任意の高さを得るために直径3〜4mmのキャピラリーチューブ中でインキュベートされることができる。本発明は、インキュベートされる特定の試料量または試料を含有する容器の特定の寸法もしくは形状に必ずしも限定されない。しかしながら、本発明が少量の血液(毛細血管採血量を含む)の使用を容易にし、従って静脈採血を必用としないことは好ましい側面である。さらにまた、さらなる取扱段階を必用とする血液の希釈を必要とせず、免疫反応を測定するための選択的な状態に血液を維持することは好ましい側面である。ヒトドナーからの全血を用いて、上記の最適の高さが決定された。他の被験対象または被験対象集団または部分群または細胞試料形態は異なる特徴を有し、試料インキュベーションのための最適の高さにはいくらかの変動がある。これらの群において、最適化により、試料インキュベーションの最小および最大高さにおけるさらなるいくらかの変動が考えられる。本発明が認められれば、このような最適化は十分に当業者の範囲である。
【0042】
いくつかの実施形態において、試料および抗原が共インキュベートされる容器は、被験対象から試料を採取するために用いられる採取容器でもある。多数の異なる入手可能な容器のいずれか1つを、それらが適切な試料寸法を与える限り使用することができる。実例として多くの異なる管が実施例中に記載されているが、本発明は、決してこれらの容器に限定されるものではない。いくつかの実施形態において、容器は、被験対象からの血液採取を容易にするための真空を含む管である。他の実施形態において、容器はキャピラリーチューブである。いくつかの実施形態において、毛管作用により皮膚の表面から血液を採取するためにキャピラリーチューブが用いられる。いくつかの実施形態において、試料は、被験対象から採取して抗原を含有する採取容器に入れられるかまたは採取後に採取容器に抗原が添加される。いくつかの実施形態において、毛細血管採血装置、例えばピン・プリック装置を用いて血液が採血され、ヘパリン処理済み採取容器に血液が採取され、続いて薬剤との共インキュベーションのために適切な容器に血液が移される。
【0043】
いくつかの実施形態において、試料は血液試料である。一般に、血液は、抗凝血薬、例えばヘパリンの存在下で維持され、これは血液が添加されるとき容器内に含むことができ、あるいは続いて添加される。単糖、例えばデキストロースは、容器内に含まれるかあるいはインキュベーション混合物に添加される。いくつかの好ましい実施形態において、血液試料は全血試料である。いくつかの実施形態において、被験対象からの全血は抗原および/または抗凝血薬を含有する容器に採取される。他の実施形態において、抗原および/または抗凝血薬はその後血液に添加される。
【0044】
一実施形態において、本方法は、毛細血管採血装置を用いて被験対象から血液試料を採取し、適切な採取容器に血液を入れることを含む。いくつかの実施形態において、毛細血管採血装置は抗凝血薬および抗原を含む。他の実施形態において、採取容器またはその後の容器は抗原を含む。他の実施形態において、採取容器は、CMI反応を起こす試料細胞能力を維持するための単糖、例えばデキストロースまたは他の薬剤を含む。どのような手段によっても、本方法は、実質的に試料を希釈しないで抗原と血液試料を接触させ、試料の形状が特定の被験対象または被験対象集団または試料形態に最適化されている高さを含む条件下で試料と抗原をインキュベートすることを含む。他の実施形態において、本方法は、試料と薬剤をインキュベートし、エフェクター分子またはエフェクター分子を産生することができる核酸分子の存在を検出することを含む。一実施形態例において、免疫エフェクター分子はサイトカイン、例えばIFN-γである。
【0045】
他の実施形態において、血液は、標準的方法により採取容器に採取され、所定量の血液が、試料の形状が特定の被験対象または被験対象集団または試料形態に最適化されている高さまたは量を含む条件下で抗原と共にインキュベートされることを確実にするようにあらかじめ決められた寸法の試料(試験)容器に移される。
【0046】
採取容器および試験容器としての採血管の使用は、Cellestis Limited社の名で国際公開WO2004/042396に記載されている(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗原と共にインキュベートされる血液試料は、約1mL未満の血液量または約2mLを超える血液量を含む。他の実施形態において、インキュベーション中の血液試料1mLまたは血液試料約1mLは、幅13mmを含まない。
【0048】
いくつかの実施形態において、毛細血管採血装置はプリック装置であり、例えば、決して限定するものではないが、米国特許第4,469,110号に記載されているものである。
【0049】
他の実施形態において、本方法は1以上の被験対象群からの血液試料における細胞性免疫反応を評価することを含み、ここで各被験対象群からの試料が評価され、評価される各被験対象群からの最小試料量が決定される。場合により、本方法は、各被験対象または被験対象群に適切な血液量を採血することを含み、ここで各試料は、抗原とのインキュベーション中、特定の被験対象または被験対象集団または試料形態に最適化されている高さを含む形状を含む。このようにして、例えば、少量の試料量(約1ミリリットル未満)を含む被験対象の試料の分析からの結果は、例えば血液数ミリリットルを含む、より大量の試料からの結果に十分匹敵しうる。従って、本発明は、細胞性反応アッセイにおける変数を特徴付け調節することにより、アッセイからの出力の診断的価値を高める。
【0050】
本発明は、一部分において、インキュベーション容器の形状により決定されるインキュベーション中の試料の高さを、細胞性免疫反応アッセイの感度を調節するために用いることができるという観察にも基づく。一実施形態において、本発明は、細胞試料において細胞性免疫反応を測定する方法であって、試料の形状が少なくとも6ミリメートル(mm)から約12mmの高さを含む条件下で試料と抗原をインキュベートすることを含む前記方法を提供する。この観察の特に有用な応用において、本発明は、試料量に制限があるか、または少しの試料量が望ましい場合の、被験対象からの試料をアッセイする方法を提供する。血液試料を用いて実施される本発明の一実施形態によれば、約20μl〜約200μlのような少量の血液試料であって、インキュベーション中の試料の形状が最高点で少なくとも約6ミリメートル(mm)から最高点で最大約12mmの高さを含む前記血液試料が用いられる。
【0051】
よって、一側面において、本発明は、被験対象からの試料に細胞性免疫反応アッセイを行う方法であって、針の使用を避ける前記方法において、少量の血液を取り出すために毛細血管採血装置を用いて血液を採取することを含む前記方法を提供する。他の関連する側面において、本発明は、少量の試料、例えば約20μl〜約1mL未満の1以上の試料の使用を含む本明細書に記載のアッセイの実施を含む。他の実施形態において、細胞アッセイ技術のための標準的採血が用いられ、一般的には1mL〜5mLのより大きな試料量が用いられるが、約10〜200mLまたはそれ以上の量も含まれる。好ましい実施形態において、全血の全インキュベーション量は、約50μl〜約500μl未満の範囲内である。
【0052】
本発明は、被験対象の試料において細胞性免疫(CMI)反応を測定する方法であって、試料の形状が最適化された寸法を含む条件下で試料と薬剤をインキュベートすることを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、細胞試料は、約4または5〜約50時間抗原と共にインキュベートされる。
【0053】
いくつかの実施形態において、本方法は、抗原刺激に応じての、免疫系細胞による免疫エフェクター分子産生を測定することに基づく。他の実施形態において、免疫エフェクター分子は、抗原刺激に応じてエフェクターT細胞により産生される直接エフェクター分子である。他の実施形態において、下流エフェクターが測定される。例えば、IFN-γまたは他の直接エフェクター分子はさらなるエフェクター分子の産生を誘導するが、その産生が測定される。他の実施形態において、免疫エフェクターを産生することができる核酸分子のレベルまたは存在を測定することにより、免疫エフェクターの産生が測定される。よって、いくつかの実施形態において、リガンドまたは結合分子、例えばエフェクターに特異的な抗体を用いて、あるいはエフェクターをコードする遺伝子の発現レベルを測定することにより免疫エフェクターを検出できる。従って、本発明は、被験対象の細胞反応性を測定する手段を提供し、言い換えれば、感染症、病的状態、免疫状態、免疫能のレベルおよび内因性または外因性抗原に対するT細胞反応性のマーカーを診断する手段を提供する。
【0054】
よって、他の実施形態において、本発明は、被験対象においてCMI反応を測定する方法であって、i)薬剤による刺激後に免疫エフェクター分子を産生する免疫系細胞を含む被験対象からの体液試料を採取容器に採取すること;を含む前記方法を考える。いくつかの実施形態において、採取容器は抗凝血薬、例えばヘパリンを含む。他の実施形態において、採取容器は薬剤を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、さらに、採取容器において薬剤と試料を接触させることを含む。本方法は、さらに、iii)試料の形状が最適化された寸法を含む条件下で前記試料と抗原をインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、場合により、iv)免疫エフェクター分子またはこれらのいずれかを産生することができる核酸分子を検出すること;を含み、ここでエフェクター分子の存在もしくはレベルの上昇またはエフェクター分子を産生することができる核酸分子が細胞性反応を起こす被験対象の能力を示す。他の実施形態において、免疫エフェクターはサイトカイン、サイトトキシンまたはケモカインである。一実施形態例において、免疫エフェクターはIFN-γである。
【0055】
いくつかの実施形態において、一連の寸法を有する試料においてエフェクター細胞機能を測定し、エフェクター細胞機能の最も感度の高い測定と関連する形状を選択することにより、試料の形状が最適化される。好ましい実施形態において、試料の高さは様々である。一実施形態例において、試料の高さは最大高さ約12mmから最小高さ約6mmまで様々である。
【0056】
好ましい実施形態によれば、本発明は、ヒト被験対象においてCMI反応を測定する方法であって、毛細血管採血装置を用いて前記ヒト被験対象から試料を採取し、採取容器に入れることを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、試料は、抗原、マイトジェンまたはハプテンによる刺激後に免疫エフェクター分子を産生することができる免疫系細胞を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、前記試料と抗原をインキュベートし、免疫エフェクター分子の存在またはレベルの上昇を測定することを含み、ここで前記免疫エフェクター分子の存在またはレベルが細胞性免疫反応を起こす前記ヒト被験対象の能力を示す。
【0057】
よって、他の好ましい実施形態において、本発明は、被験対象においてCMI反応を測定する方法であって、抗原による刺激後にIFN-γ分子を産生することができる免疫系細胞を含む前記被験対象からの試料を採取容器に採取し、前記試料と抗原をインキュベートし、ついでIFN-γ分子の存在またはレベルの上昇を測定し、ここで前記IFN-γ分子の存在またはレベルが細胞性免疫反応を起こす前記被験対象の能力を示す前記方法を提供する。
【0058】
被験対象から採取された試料は、一般に採血容器に入れられる。無希釈の全血が好ましく、最も便利な試料ではあるが、本発明は、免疫細胞を含む他の試料、例えばリンパ液、脳脊髄液、組織液ならびに鼻腔液および肺液を含む呼吸器液にまでおよぶ。
【0059】
被験対象からの採血後に長期間たつと、CMIシステムの細胞は、全血においてCMI反応を起こす能力を失い、採血後24時間までには、しばしば、介入なしの反応は大きく減少または消失している。本発明において、労働力および専門装置の必用性が削減されていることにより、診療所、クリニック、外来患者用施設および獣医クリニックなどの医療の場所または飼育場で、抗原を用いるCMI刺激が可能となる。ひとたび抗原刺激が完了されれば、新鮮で活性な細胞の必要性はもはや存在しない。IFN-γおよび他のサイトカインまたは免疫エフェクター分子は血漿中で安定であり、他の伝染病また他の疾患診断に用いられる標準的な血清試料と同様の方法で、特別な条件または急ぎの時間条件なしで試料を保存または輸送することができる。
【0060】
インキュベーション段階は、約4または5時間〜50時間、より好ましくは約5時間〜40時間、よりさらに好ましくは約8〜24もしくは約16〜24時間またはその間の時間であることができる。いくつかの実施形態において、抗原を試料に分布させるための選択可能な最初の混合段階後に、さらに混合することなく試料がインキュベートされる。
【0061】
よって、本発明の他の好ましい実施形態は、ヒト被験対象を含む被験対象においてCMI反応を測定する方法であって、毛細血管採血により前記被験対象から全血試料を採取し、前記全血試料と抗原をインキュベートし、次いで免疫エフェクター分子、例えばIFN-γの存在またはレベルの上昇を測定し、ここで前記免疫エフェクター分子の存在またはレベルが細胞性免疫反応を起こす前記被験の能力を示すことを含む前記方法を考える。
【0062】
CMIを測定する能力は、病原体、例えば微生物またはウイルスまたは寄生虫による感染に応答したり、糖尿病の場合のように自己免疫反応を起こしたり、癌または他の腫瘍疾患から保護したり、あるいは環境抗原(アレルギー試験)に対する感度を試験する被験対象の能力を評価するのに重要である。従って、"被験対象においてCMI反応を測定すること"とは、感染症および自己免疫疾患、免疫能ならびに内因性および/または外因性抗原に対するT細胞応答の検出のためのマーカー(ワクチンの有効性の測定を含む)ばかりでなく、アレルギー、炎症性疾患および癌のマーカーの免疫診断を含む。
【0063】
少量の血液で本試験を行う能力は、血液に制限がある可能性のある小児および他の試料にとって重要である。少量からのリンパ球の精製および計数は、無菌環境で加温した無菌培地および試薬を添加するなどの実施上の難点を有するので、リンパ球精製の取り扱い段階がなんら存在しないことは、少量の血液量において利点をもたらす。インキュベートする容器または試料の相対的比率(例えば、形状、幅および高さ)を調節することにより、少量で最適のCMI反応を得る能力は、有益な利点を提供する。容器、器、区画などの用語は同義で使用され、任意の量を含む任意の容器、例えばウェル、くぼみ、管、エッペンドルフなどを含む。
【0064】
本明細書により考えられる自己免疫疾患は、特に、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病多発性硬化症、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、ベーチェット病、類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素病、クローン病、疱疹状皮膚炎、円板状エリテマトーデス、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛症、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少紫斑病(ITP)、IgA腎症インスリン依存性糖尿病(I型)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎ならびに尋常性白斑を含む。
【0065】
一般に、これらの個体における潜在的または実際上のCMl反応性を評価することが重要である。
【0066】
考えられる他の病状は炎症性疾患を含む。
【0067】
本発明により考えられる炎症性疾患の例は、限定するものではないが、損傷または疾患により襲われた組織を保護する意味を持つ、特定の領域において発赤、腫れ、疼痛および熱感の反応をもたらす疾患および障害を含む。本発明の方法を用いて治療できる炎症性疾患は、限定するものではないが、アクネ、アンギナ、関節炎、誤嚥性肺炎、疾患、蓄膿、胃腸炎、炎症、腸感冒、NEC、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、PID、胸膜炎、ひりひりするのど、発赤、発赤、咽頭痛、胃インフルエンザおよび尿路感染、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーを含む。
【0068】
癌治療もまたCMIに少し依存する。本明細書により考えられる癌は、制御された異なる細胞への細胞の分化を有さない制御されていない細胞増殖(例えば腫瘍の形成)を特徴とする疾病・疾患群を含む。このような疾病・疾患は、ABL1癌原遺伝子、エイズ関連癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、副腎皮質癌、原因不明骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、皮膚のT細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、乳管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼球内メラノーマ、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニー貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化器癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、生殖細胞腫瘍、妊娠性トロホブラスト腫瘍、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球症、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内メラノーマ、島細胞癌、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、子宮平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性横紋筋様腫瘍、髄芽腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄腫、脊髄増殖性疾患、鼻腔癌、上咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、Nijmegen染色体不安定症候群、非メラノーマ皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、術後卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性赤血球増加症、前立腺癌、稀な癌および関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロトムンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌(膀胱)、移行細胞癌(腎盂/尿管)、絨毛癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウイルムス腫瘍を含む。
【0069】
一連の抗原、例えば特定の生物、ウイルス、自己抗原また癌細胞に特異的な抗原のいずれでも試験できる。また、細胞性免疫反応の包括的能力を試験するために、より一般的な薬剤を使用することができる。後者の例は、結核菌由来のPPDおよび破傷風トキソイドを含む。本アッセイ系には、任意のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、炭水化物、糖タンパク質、リン脂質、リン酸化タンパク質もしくはホスホリン脂質または非タンパク質化学薬剤を使用できる。
【0070】
上記のように、免疫エフェクター分子の検出は、タンパク質または核酸レベルで行うことができる。その結果として、"前記免疫エフェクター分子の存在またはレベル"とは、直接的および間接的なデータを含む。例えば、高レベルのIFN-γ mRNAは、IFN-γのレベル増加を示す間接的なデータである。RNAを評価するための当該技術分野で公知のアッセイは、例えばSambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, CSHLP, CSH, NY, 2001 およびAusubel (Ed) Current Protocols in Molecular Biology, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc, NY, 2002 記載されている。
【0071】
免疫エフェクターへのリガンドは、これらの分子を検出および/または定量するのに特に有用である。免疫エフェクター分子に対する抗体は特に有用である。本明細書により考えられるアッセイの技術は当該技術分野で公知であり、例えば、サンドイッチアッセイ、ELISAおよびELISSPOTを含む。迅速な医療現場でのイムノクロマトグラフィー装置もまた含まれる。"抗体"とは、抗体の部分、哺乳動物化(例えばヒト化)抗体、組換えもしくは合成抗体ならびにハイブリッドおよび一本鎖抗体を含む。
【0072】
免疫エフェクターまたはその抗原性フラグメントを用いる免疫によりポリクローナルおよびモノクローナル抗体のどちらも得られ、いずれのタイプもイムノアッセイに用いることができる。2つのタイプの血清を得る方法は当該分野で公知である。ポリクローナル血清は好ましさは劣るが、適切な実験動物に免疫エフェクターまたはその抗原性部分の有効量を注入し、前記動物から血清を採取し、既知の免疫吸着技術のいずれかにより特異的血清を分離することにより比較的容易に製造される。この方法により産生される抗体は、事実上どんなタイプのイムノアッセイにも使用できるが、産物の潜在的不均一性により、これらは一般に好ましさは劣る。
【0073】
イムノアッセイにおけるモノクローナル抗体の使用は、それらを大量に産生する能力および産物の均一性により特に好ましい。不死化細胞株と免疫原性調製物に対して感作されたリンパ球を融合させることにより誘導される、モノクローナル抗体産生のためのハイブリドーマ細胞株の作製は、当業者に公知の技術により行うことができる。
【0074】
従って、本発明の他の側面は、被験対象からの免疫細胞を含む試料において免疫エフェクターを検出する方法であって、前記試料または前記試料のアリコートと前記免疫エフェクターまたはその抗原性フラグメントに特異的な抗体を、抗体-エフェクター複合体を形成するのに十分な時間および条件下で接触させ、次いで前記複合体を検出することを含む前記方法を考える。
【0075】
試料は全血を含む。本方法は、平板状または球状の固体担体上のマイクロアレイおよびマクロアレイを含む。
【0076】
米国特許第4,016,043号、第4,424,279号および第4,018,653号を参照することにより理解できるように、広範囲のイムノアッセイ技術が利用可能である。
【0077】
以下は、アッセイの1つのタイプの説明である。固体支持体に非標識抗体を固定化し、免疫エフェクター(例えば抗原)を試験するための試料を結合分子に接触させる。適切なインキュベーション時間、すなわち抗体-抗原複合体を形成するのに十分な時間の後に、検出可能シグナルを生成することができるレポーター分子で標識した、抗原に特異的な第2抗体を加え、他の抗体-抗原-標識抗体複合体を形成するのに十分な時間インキュベートする。反応していない試料はすべて洗い流し、レポーター分子が生成するシグナルを観察することにより抗原の存在を測定する。結果は、単に目に見えるシグナルを観察することによる定性的なものであることもでき、あるいは既知量の抗原を含有する対照試料と比較することによる定量的なものであることもできる。この一般化技術は、任意の多くの変形と同様に当業者に公知である。
【0078】
これらのアッセイにおいて、本免疫エフェクターに特異性を有する第1抗体は、固体表面に、共有結合的あるいは受動結合的に結合している。固体表面は、一般的にはガラスまたはポリマーであり、最も一般に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンである。固体担体は、容器、ビーズ、スフェア、ディスクまたマイクロプレートの形であることもでき、あるいはイムノアッセイの実施に適した任意の他の表面であることもできる。結合プロセスは当該分野で公知であり、一般に架橋共有結合または物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は試験試料に備えて洗浄される。次いで、試験される試料のアリコートを固相複合体に加え、抗体中に存在する任意のサブユニットの結合を可能にする、十分な時間(例えば2〜120分あるいはより便利には終夜)、適切な条件下(例えば約20℃〜約40℃)でインキュベートする。インキュベーション時間後に、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥し、抗原の一部に特異的な第2抗体と共にインキュベートする。第2抗体は、ハプテンに対する第2抗体の結合を示すために用いられるレポーター分子に結合されている。
【0079】
このアッセイには多くの変形が存在する。特に有用な変形の1つは、全部または多くの成分が実質的に同時に混合される同時アッセイである。
【0080】
本明細書において、"レポーター分子"とは、その化学的性質により、抗原に結合した抗体の検出を可能にする分析的に同定できるシグナルを提供する分子を意味する。検出は定性的であることも、定量的であることもできる。このタイプのアッセイにおいて最も一般に用いられるレポーター分子は、酵素、フルオロフォアまた放射性核種含有分子(すなわち放射性同位体)および化学発光分子のいずれかである。適切なフルオロフォアの例を表2に示す。エンザイムイムノアッセイの場合は、一般に、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩により第2抗体に酵素が結合される。しかしながら、当然ではあるが、当業者に容易に入手できる、さまざまな異なる結合技術が存在する。一般的に用いられる酵素は、特に、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。一般に、対応する酵素による加水分解に際して検出可能な色変化を生じさせるために、特定の酵素と共に用いられる基質が選択される。適切な酵素の例は、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼを含む。上記の発色基質よりはむしろ蛍光物質を生じる蛍光基質を用いることもまた可能である。すべての場合において、第1抗体-抗原複合体に酵素-標識抗体を添加し、結合させ、次いで過剰の試薬を洗い流す。次いで、複合体である抗体-抗原-抗体に、適切な基質を含有する溶液を加える。基質は、第2抗体に結合されている酵素と反応し、定性的な視覚シグナルを生じるが、通例これを分光測定法により定量して、試料中に存在していた抗原量の表示を得ることができる。また、本発明は、実質的同時アッセイにまでおよぶ。
【0081】
代わりに、蛍光化合物、例えばフルオレセインおよびローダミンを、抗体の結合能を変化させないで抗体に化学的に結合させることができる。特定の波長の光を照射することにより活性化されるとき、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子は励起状態になり、次いで、光学顕微鏡で視覚的に検出できる特徴的な色の光を放出する。蛍光標識抗体を、第1抗体-抗原複合体に結合させる。非結合試薬を洗浄で除いた後、残った3元複合体を適切な波長の光にさらすとき検出される蛍光は、対象とする抗原の存在を示す。免疫蛍光法およびEIA法は、共に当該技術分野でよく確立された方法であり、本方法に特に好ましい。しかしながら、他のレポーター分子、例えば放射性同位体、化学発光またはまたは生物発光分子もまた用いることができる。
【0082】
コロイド金を含む一連の他の検出系も用いることができ、このような検出系もすべて本発明に含まれる。
【0083】
本発明はまた、例えば、免疫エフェクターをコードする遺伝子配列のRNA発現産物を検出する、当該技術分野で公知のRT-PCR分析または他の増幅に基づく戦略を含む遺伝子アッセイを考える。
【0084】
一実施形態において、PCRはプライマー対を用いて行われるが、その1つまたは両方は、一般に、区別できるシグナルシグナルを与えることができる同じまたは異なるレポーター分子で標識されている。フルオロフォアの使用は、本発明の実施に特に有用である。適切なフルオロフォアの例は、表2に示すリストから選択することができる。他の標識は、ルミネセンスおよび燐光に加えて赤外色素も含む。これらの色素またはフルオロフォアは、抗体のレポーター分子としても使用できる。
【0085】
蛍光発光を分析する任意の適切な方法が本発明に含まれる。この点において、本発明は、限定するものではないが、2光子および3光子時間分解蛍光分光法、例えば、Lakowicz et al., Biophys. J., 72: 567, 1997 に開示されているもの、蛍光寿命イメージング、例えば、Eriksson et al., Biophys. J., 2:64, 1993 に開示されているものおよび蛍光共鳴エネルギー転移、例えば、Youvan et al., Biotechnology. 3:1-18, 1997 に開示されているものを含む方法を考える。
【0086】
ルミネセンスおよび燐光は、当該技術分野で公知のように、それぞれ適切なルミネセンスまたは燐光標識から生じさせることができる。これに関して、このような標識を検出する任意の光学的手段を用いることができる。
【0087】
赤外放射は、適切な赤外色素から生じさせることができる。本発明に使用できる典型的な赤外色素は、限定するものではないが、Lewis et al., Dyes Pigm., 42(2):197, 1999、Tawa et al., Mater. Res. Soc. Symp. Proc., 488 [Electrical, Optical and Magnetic Properties of Organic Solid-State Materials IV], 885-890、Daneshvar et al., J. Immunol. Methods, 226(1-2):119-128, 1999、Rapaport et al., Appl. Phys. Lett., 74(3):329-331, 1999 およびDurig et al., J. Raman Spectrosc., 24(5):281-285, 1993 に記載されているものを含む。赤外色素を調べるために、任意の適切な赤外分光法を用いることができる。これに関して、例えば、フーリエ変換赤外分光法、例えば、Rahman et al., J. Org. Chem., 63:6196, 1998 に記載されているものを用いることができる。
【0088】
適切には、光およびX線を含む入射電磁放射の回折、反射、分極または屈折から電磁界散乱を生じさせることができる。mRNAレベルまたはタンパク質レベルを定量するためにこのような散乱を用いることができる。
【0089】
フルオロフォア発光を分析するのにフローサイトメトリーは特に有用である。
【0090】
当該技術分野で公知のように、フローサイトメトリーは、粒子(例えば標識mRNA、DNAまたはタンパク質)を流体流に懸濁させて1以上のレーザー光の通路を通過させるときに、その粒子の化学的および物理的特定を迅速に分析することを含むハイスループット技術である。各粒子がレーザー光を遮断するとき、各細胞または粒子により放出される散乱光および蛍光を検出し、例えば以下に記載のような任意の適切な計測アルゴリズムを用いて記録する。
【0091】
最新のフローサイトメーターは、最大100,000細胞/粒子s-1までのタスクを行うことができる。光フィルターアレイおよびダイクロイックミラーを用いて、異なる波長の蛍光を分離し検出できる。さらに、異なる励起波長を有する多数のレーザーを用いることができる。従って、種々のフルオロフォア、例えば多数の被験対象からの試料または免疫エフェクター内の異なる免疫エフェクターを対象とし、試験するために用いることができる。
【0092】
本発明の方法に使用できる適切なフローサイトメーターは、通常、15mWで作動し、488nmのスペクトル線を用いるアルゴンイオン空冷式レーザーである単一の励起レーザーを用いて5〜9個の光学パラメータ(表3参照)を測定するものを含む。より最新のフローサイトメーターは、複数の励起レーザー、例えばアルゴンイオンレーザー(488または514nm)に、HeNeレーザー(633nm)またはHeCdレーザー(325nm)を加えたものを用いることができる。
【0093】
例えば、Biggs et al., Cytometry, 36:36-45, 1999 は、3つの励起レーザーを用いる11パラメータフローサイトメーターを構築しており、粒子の免疫表現型を検査(すなわち分類)するための、前方および側方散乱測定に加えた9つの区別できるフルオロフォアの使用を明らかにした。現在市販されているものの最大のパラメータ数は17であり、前方散乱、側方散乱およびそれぞれが5つの蛍光検出器を備えた3つの励起レーザーを用いる。すべてのパラメータが適切に使用できるかどうかは、主に減衰係数、量子収量およびすべてのフルオロフォア間のスペクトルの重なり量によっている(Malemed et al., "Flow cytometry and sorting", 2nd Ed., New York, Wiley-Liss, 1990)。しかしながら、本発明が、特定のフローサイトメーターまたは特定のパラメータセットに限定されないことは当然である。この点において、本発明は、従来のフローサイトメーターの代わりに、微細加工フローサイトメーター、例えば、Fu et al., Nature Biotechnology, 17: 1109-1111, 1999 に開示されているものも考える。
【0094】
一人の被験対象からの多数の免疫エフェクターのハイスループットスクリーニングまたはスクリーニングのために、本発明のアッセイを自動化または半自動化することができる。自動化は、好都合には、コンピュータソフトウェアにより制御される。
【0095】
本発明は、従って、1以上の免疫エフェクターの有無またはレベルを評価するためのコンピュータプログラム製品であって、
(1)標識mRNAまたは抗体と結合しているレポーター分子の同定を入力値として受信するコード;
(2)レポーター分子のレベルおよび/またはレポーター分子が結合している分子の同定を測定するための、前記入力値と基準値を比較するコード;および
(3)コードを記憶する機械可読媒体
を含む前記製品を考える。
【0096】
他の実施形態において、プログラム製品は、さらに、試験管内の試料の高さに関する入力情報として受信するためのコードを含む。いくつかの実施形態において、情報により、1以上のあらかじめ決められた寸法を外れる形状を有する試料を含む試験容器が同定される。いくつかの実施形態において、情報は、試料の高さが、少なくとも約12mmまたは異なる試料用に補正した他の値を超える試料(および対応する試験容器)の検出を報告するシグナルの形でであることができる。他の実施形態において、情報は、試料の高さが約6mm未満または異なる試料用に補正した他の値である試料の検出を報告するシグナルの形であることができる。
【0097】
本発明のさらに他の側面は、1以上の免疫エフェクターの有無またはレベルを評価するコンピュータであって、
(1)機械可読データをエンコードするデータ記憶材料を含む機械可読データ記憶媒体であって、前記機械可読データが、標識mRNAまたは抗体と結合しているレポーター分子を同定する入力値を含む前記データ記憶媒体;
(2)前記機械可読データを処理するための命令を記憶するワーキングメモリ;
(3)前記ワーキングメモリおよび前記機械可読データ記憶媒体に連結された中央処理装置であって、前記機械可読データを処理して前記値を比較し、レポーター分子またはそれが結合している分子の同定またはレベルの評価を得るための前記中央処理装置;および
(4)比較結果を受信するための、前記中央処理装置に連結された出力ハードウェア
を含む前記コンピュータにまでおよぶ。
【0098】
これらの実施形態の一バージョンを図1に示す。図1は、中央処理装置("CPU")20、例えばRAM(ランダムアクセスメモリ)または"コア"メモリであることができるワーキングメモリ22、大容量記憶メモリ24(例えば1以上のディスクドライブまたはCD-ROMドライブ)、1以上の陰極線管("CRT")ディスプレイ端末26、1以上のキーボード28、1以上の入力線30および1以上の出力線40であって、それらのすべてを通常の双方向システムバス50で相互接続したものを含むコンピュータ11を含むシステム10を示す。
【0099】
入力線30によりコンピュータ11に連結された入力ハードウェア36は、さまざまに実装されることができる。例えば、本発明の機械可読データは、電話線または専用データ線34により接続されるモデム(単数または複数)32の使用により入力できる。これに代えて、あるいはこれに加えて、入力ハードウェア36はCDを含むことができる。また、ディスプレイ端末26、キーボード28と連結したROMドライブまたはディスクドライブ24は、入力装置としても使用できる。
【0100】
出力線40によりコンピュータ11に連結された出力ハードウェア46もまた同様に、通常の装置により実装されることができる。一例として、出力ハードウェア46は、本明細書記載の合成ポリヌクレオチド配列または合成ポリペプチド配列を表示するためのCRTディスプレイ端末26を備えることができる。出力ハードウェアはまた、ハードコピー出力を生成するプリンター42または、後に使用するためにシステム出力を記憶させるディスクドライブ24もまた備えることができる。
【0101】
運転中、CPU20は種々の入力および出力装置36、46の使用を統合し、大容量記憶装置24からのデータアクセスおよびワーキングメモリ22からのアクセスを統合し、データ処理ステップの順序を決定する。本発明の機械可読データを処理するために、多くのプログラムを使用することができる。典型的なプログラムは、例えば以下のステップ:
(1)標識mRNAまたは抗体と結合しているレポーター分子を同定する入力値の入力;
(2)レポーター分子のレベルおよび/またはレポーター分子が結合している分子の同定を測定するための、前記入力値と基準値を比較することを含む評価;および
(3)評価の結果の出力
を使用することができる。
【0102】
図2は、システム、例えば図1のシステム10により実施することができる免疫エフェクターレベルの評価のための、機械可読データまたは命令セットをエンコードすることができる磁気データ記憶媒体100の断面を示す。媒体100は、通常のものであってよい適切な支持体101および、極性または配向を磁気的に変えることができる磁気ドメイン(非表示)を片側または両側に含む通常のものであってよい適切なコーティング102を有する通常のフロッピー(登録商標)ディスクまたはハードディスクであることができる。媒体100はまた、ディスクドライブまたは他のデータ記憶装置24のスピンドルを受ける開口部を有することもできる。媒体100のコーティング102の磁気ドメインは、システム、例えば図1のシステム10により実行するための機械可読データを通常のものであってよい方法でエンコードするために分極または配向される。
【0103】
図3は、システム、例えば図1のシステム10により実施できる本発明の合成分子のデザインのための、機械可読データまたは命令セットをエンコードすることもできる光検知式データ記憶媒体110の断面を示す。媒体110は、通常のコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)であることもでき、あるいは書き換え可能な媒体、例えば光検知式であり光磁気的に書き込み可能な光磁気ディスクであることもできる。媒体100は、好ましくは通常のものであってよい適切な支持体111および、通例支持体111の一面の、通常のものであってよい適切なコーティング112を有する。
【0104】
公知のように、CD-ROMの場合は、コーティング112は反射し、機械可読データをエンコードする多数のピット113が刻まれている。コーティング112の表面からレーザー光を反射させることによりピット配列が読み取られる。保護コーティング114は、好ましくは実質的に透明であり、コーティング112の上部に備えられる。
【0105】
本発明は、さらに、本明細書記載の方法による、細胞性反応を起こす被験対象の能力を評価するためのキットを考える。キットは、好都合には、1以上の区画で仕切られており、被験対象からの試料、例えば全血、好ましくはプリック装置などにより採取された毛細血管採血を受け取るのに適している。従って、いくつかの実施形態において、キットは、毛細血管採血に適した装置、例えば皮膚を刺すかまたは穴をあけ、末梢毛細血管からの出血を可能にする装置を含む。試料を受け取る容器は、同じ均一な寸法を有することもできるし、複数の寸法を含むこともできる。いくつかの実施形態において、試料を受け取る容器は、容器内の試料の高さを評価できるように、印を付けられているかあるいは別なふうにアレンジされている。試料が全血の場合、容器は、免疫細胞の効率的な機能的能力を維持するために、単糖、例えばデキストロースの有り無しで抗凝血薬を含有するのに適したものであることができる。
【0106】
一般に、キットは、1組の使用説明書と共に一括して販売される形をとる。使用説明書は、一般に、被験対象においてCMI反応を測定する方法であって、抗原による刺激後に免疫エフェクター分子を産生することができる免疫系細胞を含む前記被験対象からの試料を採取し、形状および試料が最適化された寸法を含む条件下で抗原と前記試料をインキュベートし、次いで場合により免疫エフェクター分子の存在またはレベルの上昇を測定し、ここで前記免疫エフェクター分子の存在またはレベルが細胞性免疫反応を起こす前記被験対象の能力を示すことを含む前記方法の形をとると考えられる。
【0107】
好都合には、キットはさらに、毛細血管採血装置および/またはインキュベーターを含む。いくつかの実施形態において、血液は直径約3〜4mmのキャピラリーチューブを用いて採取される。
【0108】
いくつかの実施形態において、試料が由来する被験対象は、ヒト被験対象、例えば小児、成人または高齢被験対象である。動物または鳥はすべて被験対象であることができる。
【0109】
例に示した免疫エフェクター分子はIFN-γであるが、他のサイトカイン例えばTNFαおよびGM-CSFは、補体系成分、パーフォリン、デフェンシン、カテリシジン、グランザイム、Fasリガンド、CD-40リガンド、エキソタキシン、サイトトキシン、ケモカインまたはモノカインと同様に容易にアッセイされる。いくつかの実施形態において、試験される免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞、マクロファージまたは単球から選択される。
【0110】
いくつかの実施形態において、キットは、自己抗原、病原性生物由来抗原、金属もしくは無機抗原または腫瘍抗原またはそれらの類縁体から選択される抗原を含む。いくつかの実施形態において、抗原はマイコバクテリウム(Mycobacterium)由来であり、例えば、限定するものではないが、ESAT-6、CFP-10およびTB7である。他の実施形態において、試験される抗原は、結核菌(M. tuberculosis)またはトリ型結核菌(M. avium)由来の破傷風トキソイド(TT)または精製ツベルクリン(PPD)である。
【0111】
本方法に関して記載されているように、容器は、インキュベーション段階において最適の試料形状を形成するように選択される。いくつかの実施形態において、インキュベーション容器は、少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの試料の高さを形成する。他の実施形態において、少なくとも約6mmから最大約12mmの試料の高さが好ましい。いくつかの実施形態において、インキュベーション容器は4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mmまたは20mmの試料の高さまたはその間の高さを形成する。他の実施形態において、インキュベーション容器は、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mmまたは12mmの試料の高さまたはその間の高さを形成する。インキュベーション容器内の試料量に関しては、いくつかの実施形態において、インキュベートされる試料は、500μl未満、400μl未満、300μl未満、200μl未満、100μl未満または50μl未満の量を有する。他の実施形態において、試料は毛細血管血であり、インキュベートされる試料は、約2000μl、1500μl、1400μl、1300μl、1200μl、1100μl、900μl、800μl、700μl、600μl、500μl、400μl、300μl、200μl、100μl、50μlまたは40μlの量またはその間の量を有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、キットはIFN-γを検出するための試薬を含み、試薬はIFN-γを検出するための抗体複合体を含む。
【0113】
本発明は、さらに、病原体感染、自己免疫疾患、もしくは癌の症状またはこのような疾患を発症する傾向を有する被験対象の治療方法であって、被験対象においてCMI反応を測定する方法により細胞性免疫反応を起こす前記被験対象の能力を評価することを含む前記方法において、場合により毛細血管採血により前記被験対象から試料を採取し、ここで前記試料は抗原による刺激後に免疫エフェクター分子を産生することができる免疫系細胞を含み、試料の形状が最適化された寸法を含む条件下、インキュベーション容器内で前記試料を抗原とインキュベートし、次いで免疫エフェクター分子の存在またはレベルの上昇測定し、ここで前記免疫エフェクター分子の存在またはレベルが細胞性免疫反応を起こす前記被験対象の能力を示し、次いで適切な治療プロトコルを選択することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、試料は血液試料である。いくつかの実施形態において、試料の形状は、少なくとも6mmから最大約12mmの高さを含む。他の実施形態において、試料量は1mL未満であり、より好ましくは0.5mL未満であり、0.01mLの試料を含む。いくつかの実施形態において、被験対象は家畜動物またはヒトまたは鳥被験対象である。さらなる実施形態において、インキュベーション容器は試料の最適の形状を維持するのに適し、前記形状は(i)約6mm未満の最大円直径;(ii)少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの高さ;または(iii)0.5mL未満および場合により約400μl未満の量;から選択される1または2以上の寸法を有する。
【0114】
他の側面において、本発明は、in vitro細胞性免疫反応を最適化する方法であって、i)一連の異なる高さまたは他の寸法を有する複数の細胞試料であって、薬剤(例えば抗原、ハプテンまたはマイトジェン)での刺激後に免疫エフェクター分子を分泌する細胞を含む前記細胞試料を、細胞が免疫エフェクター分子を分泌するのに十分な時間および条件下、インキュベーション容器内でin vitroで薬剤とインキュベートし、ii)各試料からの免疫エフェクター分子の存在またはレベルを測定し、iii)最適の細胞性反応を引き起こす試料寸法を確認することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、寸法はインキュベーション容器における試料の高さである。他の実施形態において、寸法はインキュベーション容器内の試料量である。他の実施形態において、寸法はインキュベーション容器内の試料の最大円直径である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】記憶媒体によりエンコードされる命令を実施するために用いられるシステムの概略図である。
【図2】磁気記憶媒体の断面の概略図である。
【図3】光検知式データ記憶システムの断面の概略図である。
【0116】
本発明は、以下の限定するものではない実施例により、さらに詳細に説明される。
【実施例1】
【0117】
抗原と共にインキュベートした少量の試料における免疫エフェクター分子の検出
直径6.6mmの円筒形の形状およびU字底を有する9mL VacuetteヘパリンLi管に、健常ドナー(4名のドナー)から全血を採取した。血液0.1、0.2、0.3、0.4および0.5mLのアリコートをVacuette Mini-Collect管内で刺激した(添加剤なし)。破傷風トキソイドおよびフィトヘモアグルチニン-P(Phytohaemagglutinin-P)(マイトジェン)を用いて血液を刺激した。血液量に比例した抗原量を各管に加えた。例えば、血液0.1mLは抗原0.01mLで刺激し、血液0.4mLは抗原0.04mLで刺激した。
【0118】
少量の血液で生じたIFN-γ反応を、13/75Vacuette採血管内の血液1mL(対照)を用いて生じた反応と比較した。
【0119】
抗原と共に血液を37℃で16〜24時間インキュベートし、次いで血漿を取り除き、IFN-γ検出(QuantiFERON-TB Gold ELISA)を行った。不十分な試料しか得られなかったため、試料0.1mLについてわずかに血漿25μLをアッセイしたにすぎない。
【0120】
ELISA試験により、わずか0.1mLの血液量でIFN-γが産生されたことが明らかとなった(表3参照)。直径6.6mmの容器内での血液0.3〜0.4mLの抗原に対する反応結果は、直径11mmの円形容器内での各被験対象に対する対照1mLと同様であった。マイトジェン結果は容量にはあまり影響を受けず、0.1mL〜0.5mLで同様であった。このことは、容量対容器の比率を最適化する必要性がより少ないことを示唆している。
【0121】
本発明によれば、容器の事前最適化を行いさえすれば、少量(例えばプリック採血により得られる量)で、サイトカイン産生またはさらなるエフェクター機構で測定する最適の細胞性反応を得ることができる。いったんこのことが可能であることが理解されれば、当業者は最適化を行うことができる。
【実施例2】
【0122】
種々の内部形状を有する容器内でインキュベートされる少量の全血における免疫エフェクター分子の検出
ポリプロピレンチューブにヘパリン処理済み血液を、3x5mLのアリコートで分配した。ヒトサイトメガロウイルス(CMV)または破傷風トキソイド(tetanus)のいずれかの抗原を適切な濃度で血液に加えた。各管を十分に混合し、血液(50μl)を種々の容器に分配した。その血液量で種々の高さとなった。具体的には、PCR管(高さ10mmまで円錐形、最大直径5mm、U字底)、ミニコレクト(minicollect)容器(直径6.5mmの円筒形、U字底)、96ウェルプレート(直径6.5mmの円筒形、平底)および48ウェルプレート(直径11mmの円筒形、平底)を用いた。容器を37℃で20時間インキュベートし、血漿(20μl)を除去し、標識抗体を用いてIFN-γの産生を検出するQFT-ELISAで試験した。対照実験においては、円筒形容器(内径10.5mm、平底)内で血液1mLをインキュベートし、血漿20μlをQFT-ELISAで試験した。結果を表4に示す。表4では、抗原なし(Nil)、破傷風トキソイド(TT)およびサイトメガロウイルス(CMV)について、IU/mLでIFN-γが示されている。0.20IU/mLおよびNil以上の反応が有意である。種々の容器における血液量の高さおよび最大円直径もまた表4に示されている。試料の高さ11.5mmおよび6mmに関して、CMVおよび/またはTTを用いて、被験対象1、3、4および5において強いシグナルが検出される。CMVに関して、高さが6mmから3mmに低下し、次いで1.5mmに低下するに従ってシグナルは低下する。従って、全血試料15μlは、この血液量が少なくとも約4mmの試料の高さを与える適切な容器内で血液がインキュベートされれば、強いシグナルを与える。
【実施例3】
【0123】
末梢毛細血管血における免疫エフェクター分子の検出
フィンガープリックにより、ヘパリンリチウムミニコレクト管に毛細血管血を採取(150μl)した。少量(50μl)を3つのPCR管に移した。PCR管には、円筒形の上部を有し、10mmから円錐底まで先細りする円錐形のものを用いた。CMVまたは破傷風トキソイド(Tetanus)または抗原なし(Nil)である抗原を前記管に加え、これを37℃で20時間インキュベートした。その後、血漿(20μl)を除去し、QFT-ELISAを用いた試験した。表5に示すように、CMV陽性対照被験対象(TR)試料は、陰性対照と比較して有意なシグナルを生じた。このことは、毛細血管血50μlのような少量で本アッセイを実施できることを示している。
【実施例4】
【0124】
6mmの高さから18mmまでの高さでの免疫エフェクター分子の検出
血液の高さ11.5mm、18mmおよび6mmを与える3つのタイプの容器内で、種々の量のヘパリン処理済みヒト血液を、抗原(抗原なし(Nil)、破傷風トキソイド(TT)またはサイトメガロウイルス(CMV))と共にインキュベートした。QFT-ELISAで血漿を試験した。ここでもまた、6mmに至るまでの有効性を結果(表6参照)は示している。円錐管での18mmの結果もまた陽性結果を示している。このことは、免疫エフェクター分子は18mm以上の試料の高さでも産生されるが、最適の結果は5〜18mmで得られることを示している。
【0125】
図3に示した結果を表8にしなおしたが、この表もまた種々の血液試料の高さを示している。この表からは、16mmを超えて試料の高さが増加するとき、シグナルの低下が生じることがわかる。表8においては、表3からのマイトジェン結果を除いたが、PHA-Pは非特異的刺激薬であり、これに対して破傷風トキソイドは細胞性抗原のプロセシングおよび提示を必要とするからである。
【実施例5】
【0126】
全血4mmおよび20μlまでの免疫エフェクター分子の検出
試料の高さ6mm、5.5mm、5mm、4mmおよび2.5mmをそれぞれ与える小さいPCR管内で、種々の量:50μl、40μl、30μl、20μlおよび10μlのヘパリン処理済みヒト血液を試験した。抗原には、抗原なし(N)、破傷風トキソイド(TT)およびサイトメガロウイルスを適切な濃度で用いた。37℃で20時間血液をインキュベートし、血漿を除去してQFT-ELISAで試験した。培養物1mLを用いる対照実験(表7に続く)には、少量の血漿(50μl、40μl、30μl、20μl、15μl、10μlおよび5μl)を用いてQFT-ELISAで試験した。表7に示した結果は、高さ4mmで血液20μlに至るまで陽性シグナルが得られるが、最適の結果は5.5および6mmにおいて見出されることを示している。
【0127】
本明細書記載の本発明は、特記したものを除き変形および修飾が可能であることは、当業者には明らかであろう。このような変形および修飾を本明細書はすべて含むことが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書に個別的または総合的に参照または指摘した段階、特徴、組成物および化合物をすべて含み、かつ前記段階または特徴の任意のありとあらゆる2以上の組み合わせを含む。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

【0138】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験対象から採取した全血試料において細胞性免疫(CMI)反応を測定する方法であって、前記全血試料が抗原による刺激後に免疫エフェクター分子を産生することができる免疫系細胞を含む前記方法において、
i)末梢毛細血管からの全血試料または被験対象の動脈もしくは静脈からの0.5mL未満の全血を、実質的に試料を希釈しないで、インキュベーション容器内で抗原とインキュベートし;
ii)免疫エフェクター分子または、細胞性反応を起こす被験対象の能力を示すエフェクター分子を産生することができる核酸分子の存在またはレベルの上昇を検出または測定すること
を含む前記方法。
【請求項2】
i)末梢毛細血管からの全血試料または被験対象の動脈もしくは静脈からの0.5mL未満の全血を容器に採取すること
を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
炎症性疾患、病原体感染、自己免疫疾患、免疫機能不全、アレルギーもしくは癌の症状またはこのような疾患を発症する傾向を有する被験対象を治療するための適切な治療プロトコルの選択に使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
方法が毛細血管血試料をインキュベートすることおよび/または採取することを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
方法が毛細血管採血装置で被験対象から試料を採取することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
被験対象からの全血が抗原および/または抗凝血薬を含有する容器に採取されるか、あるいは抗原および/または抗凝血薬がその後血液に添加される、請求項2〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
抗凝血薬がヘパリンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
インキュベーション段階が、単糖、例えばデキストロースの存在下で行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
被験対象がヒトである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
被験対象が動物または鳥である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ヒトが小児、成人または高齢被験対象である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
全血試料が抗原と共に約4時間〜約50時間インキュベートされる、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ii)における免疫エフェクター分子が、サイトカイン、補体系成分、パーフォリン、デフェンシン、カテリシジン、グランザイム、Fasリガンド、CD-40リガンド、エキソタキシン、サイトトキシン、ケモカインまたはモノカインである、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
サイトカインがIFN-γ、TNFαまたはGM-CSFである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
免疫細胞がナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞、マクロファージまたは単球から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項16】
細胞がT細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗原が自己抗原、病原性生物由来抗原、金属もしくは無機抗原または腫瘍抗原またはそれらの類縁体から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項18】
病原性生物が細菌性、ウイルス性、真菌性または寄生性生物である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗原がマイコバクテリウム由来である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
抗原がESAT-6、CFP-10およびTB7から選択されるマイコバクテリアタンパク質である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
抗原が破傷風トキソイド(TT)または結核菌もしくはトリ型結核菌由来の精製ツベルクリン(PPD)である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
容器内の試料が少なくとも約4mm〜約6mmから最大約12mm〜約20mmの高さを有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
容器内の試料が少なくとも約6mmから最大約12mmの高さを有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
試料が4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mmまたは20mmの高さまたはその間の高さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
試料が6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mmまたは12mmの高さまたはその間の高さを有する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
インキュベートされる全試料量が500μl未満、400μl未満、300μl未満、200μl未満、100μl未満または50μl未満である、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
試料が毛細血管血であり、インキュベートされる全量が約2000μl、1500μl、1400μl、1300μl、1200μl、1100μl、900μl、800μl、700μl、600μl、500μl、400μl、300μl、200μl、100μl、50μlまたは40μlの量またはその間の量である、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
試料が毛細血管血試料である、請求項1〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
試料が直径約3〜4mmのキャピラリーチューブに採取される、請求項2記載の方法。
【請求項30】
インキュベーション容器が試料の最適の形状を維持するのに適し、前記形状が(i)約6mm未満の最大円直径;(ii)少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの高さ;または(iii)0.5mL未満および場合により400μl未満の量;から選択される1または2以上の寸法を有する、請求項1〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
被験対象から採取した全血試料において細胞性免疫(CMI)反応を測定するためのキットであって、前記全血試料が抗原による刺激後に免疫エフェクター分子を産生することができる免疫系細胞を含む前記キットにおいて、(i)末梢毛細血管全血試料または0.5mL未満の全静脈血もしくは動脈血を保持またはインキュベートするのに適した1以上の採取および/またはインキュベーション容器;(ii)それに対するin vitro反応の分析のための1以上の試験抗原および場合により対照抗原;(iii)免疫エフェクター分子の存在またはレベルの上昇を測定する試薬;および(iv)場合により本明細書に記載の方法のいずれかを含む1組の使用説明書;を多成分構成で含む前記キット。
【請求項32】
インキュベーション容器が試料の最適の形状を形成するのに適し、前記形状が(i)約6mm未満の最大円直径;(ii)少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの高さ;または(iii)0.5mL未満および場合により400μl未満の量;から選択される1または2以上の寸法を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
使用説明書が、(i)全血を採取し、採取/インキュベーション容器に血液を混合し;(ii)全血試料と抗原および場合により対照抗原またはマイトジェンとをインキュベートし;(iii)インキュベーション容器を遠心分離して血漿を採取し;(iv)血漿中の免疫エフェクター分子を検出するための使用説明書を含む、請求項31記載のキット。
【請求項34】
毛細血管採血装置をさらに含む、請求項31〜33のいずれか1項記載のキット。
【請求項35】
被験対象がヒトである、請求項31〜33のいずれか1項記載のキット。
【請求項36】
被験対象が動物または鳥である、請求項31〜33のいずれか1項記載のキット。
【請求項37】
ヒトが小児、成人または高齢被験対象である、請求項36記載のキット。
【請求項38】
全血試料が抗原と共に約4時間〜約50時間インキュベートされるインキュベーターをさらに含む、請求項31記載のキット。
【請求項39】
(iii)における免疫エフェクター分子がサイトカイン、補体系成分、パーフォリン、デフェンシン、カテリシジン、グランザイム、Fasリガンド、CD-40リガンド、エキソタキシン、サイトトキシン、ケモカインまたはモノカインである、請求項31記載のキット。
【請求項40】
サイトカインがIFN-γ、TNFαまたはGM-CSFである、請求項39記載のキット。
【請求項41】
免疫細胞がナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞、マクロファージまたは単球から選択される、請求項31記載のキット。
【請求項42】
細胞がT細胞である、請求項41記載のキット。
【請求項43】
抗原が自己抗原、病原性生物由来抗原、金属もしくは無機抗原または腫瘍抗原またはそれらの類縁体から選択される、請求項31記載のキット。
【請求項44】
抗原がマイコバクテリウム由来である、請求項43記載のキット。
【請求項45】
抗原がESAT-6、CFP-10およびTB7から選択されるマイコバクテリアタンパク質である、請求項43記載のキット。
【請求項46】
抗原が破傷風トキソイド(TT)または結核菌もしくはトリ型結核菌由来の精製ツベルクリン(PPD)である、請求項43記載のキット。
【請求項47】
インキュベーション容器が少なくとも約4mm〜6mmから最大約12mm〜20mmの試料の高さを形成する請求項31または32記載のキット。
【請求項48】
インキュベーション容器が少なくとも約6mmから最大約12mmの試料の高さを形成する、請求項47記載のキット。
【請求項49】
インキュベーション容器が4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mmまたは20mmの試料の高さまたはその間の高さを形成する、請求項31または32記載のキット。
【請求項50】
インキュベーション容器が6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mmまたは12mmの試料の高さまたはその間の高さを形成する、請求項31または32記載のキット。
【請求項51】
インキュベートされる試料が500μl未満、400μl未満、300μl未満、200μl未満、100μl未満、または50μl未満の量を有する、請求項32記載のキット。
【請求項52】
試料が毛細血管血であり、インキュベートされる試料が約2000μl、1500μl、1400μl、1300μl、1200μl、1100μl、900μl、800μl、700μl、600μl、500μl、400μl、300μl、200μl、100μl、50μlまたは40μlの量またはその間の量を有する、請求項32記載のキット。
【請求項53】
試料が毛細血管血試料である、請求項31〜52のいずれか1項記載のキット。
【請求項54】
試薬がIFN-γを検出するための抗体複合体を含む、請求項31記載のキット。
【請求項55】
直径約3〜4mmのキャピラリーチューブを含む、請求項31〜54のいずれか1項記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−521680(P2010−521680A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553865(P2009−553865)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000377
【国際公開番号】WO2008/113119
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509260112)セルスティス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】