説明

細胞死抑制活性強化タンパク質FNKを用いた骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の凍結保存と移植の効率の増強

【課題】 骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに凍結保存するための凍結保存剤および骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに活性を維持し、移植時の移植効率を高めるための骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤の提供。
【解決手段】 Bcl-xLタンパク質の第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちの少なくとも1つの置換を有するFNKタンパク質を有効成分として含む骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤、または骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに凍結保存する方法および凍結保存剤に関し、さらに骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植時に移植細胞を劣化させずに活性を維持する方法および維持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、骨髄、臍帯血、末梢血由来の造血幹細胞が白血病の治療のために移植に使用されている。これらの造血幹細胞は、CD34陽性細胞(細胞の表面のマーカー)として研究が行われており、CD34陽性細胞を大量にフラスコ内で増やす試みも行われている。移植後に造血幹細胞が、移植された人体中で赤血球や白血球といった血液系の細胞を作り出して行く。
【0003】
骨髄幹細胞等は採取後直ぐに移植に供されることは少なく、液体窒素で凍結保存を行なうことが多い。しかし、凍結保存とそれに続く融解(解凍)を行なうことによって、細胞の活性が低下してしまう。そこで、凍結・融解を行なっても、骨髄幹細胞の活性が低下しない方法が求められていた。
【0004】
従来、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ハイドロキシエチルスターチ(HES)、エチレングリコール、グリセロールや凍結保存剤として市販されているCP-1(極東製薬工業株式会社、東京)、セルバンカー(十慈フィールド株式会社、東京)等を添加することによって、凍結保存を行なっていた。この方法は動物細胞の凍結保存方法としては一般的な方法であったが(非特許文献1等参照)、それだけでは充分な効果は得られなかった。
【0005】
【非特許文献1】宗村庚修編、「細胞培養マニュアル」、講談社サイエンティフィク、1997年8月1日、p.32-33
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに凍結保存するための凍結保存剤および骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに活性を維持し、移植時の移植効率を高めるための骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに凍結保存する方法について鋭意検討を行った。アポトーシス抑制タンパク質であるBcl-xLを改変してその活性を強化したタンパク質であるFNKタンパク質に細胞膜通過ドメイン(PTD)を連結させたタンパク質PTD-FNKの骨髄幹細胞の凍結保存に対する効果を検討した。フローサイトメーターを用いてCD34陽性細胞を指標に骨髄幹細胞の活性を検査した。PTD-FNK添加群では凍結・融解による細胞傷害が著しく現れる低い細胞密度(細胞濃度)で凍結保存を行なっても骨髄細胞の80%、骨髄幹細胞でも80%の活性(生存)が保たれることを見出した。このような細胞活性(生存)保存効果は、凍結保存を繰り返し行なっても得られた。
【0008】
本発明者はさらに上記タンパク質を骨髄移植を行う際の骨髄幹細胞を含む骨髄単核球細胞に添加したところ、骨髄単核球細胞の細胞死を防ぎ、骨髄移植時の単核球細胞の劣化を防止することをも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
[1] Bcl-xLタンパク質の第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちの少なくとも1つの置換を有するFNKタンパク質を有効成分として含む骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
[2] Bcl-xLタンパク質がヒト由来(配列番号5)、マウス由来(配列番号6)、ラット由来(配列番号7)、ブタ由来(配列番号8)およびイヌ由来(配列番号9)Bcl-xLタンパク質から選択される[1]の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
[3] FNKタンパク質のN末端側に細胞膜通過ペプチドが連結している、[1]または[2]の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
【0010】
[4] 細胞膜通過ペプチドが、以下のペプチド(i)〜(xiii)のいずれかから選択される[3]の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
(i) 6〜12個のアルギニンからなるペプチド、
(ii) 6〜12個のリシンからなるペプチド、
(iii) 6〜15個のアルギニンおよびリシンからなるペプチド、
(iv) (i)から(iii)のいずれかのペプチドにおいて、数個のアミノ酸がグリシンに置換されたペプチド、
(v) 配列番号11で表される(i)のペプチド、
(vi) 配列番号13で表される(iii)のペプチド、
(vii) 配列番号15で表される(iv)のペプチド、
(viii) 配列番号17で表されるペプチド、
(viiii) 配列番号18で表されるペプチド、
(x) 配列番号19で表されるペプチド、
(xi) 配列番号20で表されるペプチド、
(xii) 配列番号21で表されるペプチド、ならびに
(xiii) 配列番号22で表されるペプチド
【0011】
[5] [1]〜[4]のいずれかの骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤を用いて骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を生存率を低下させずに凍結保存する方法。
[6] Bcl-xLタンパク質の第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちの少なくとも1つの置換を有するFNKタンパク質を有効成分として含む骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
[7] Bcl-xLタンパク質がヒト由来(配列番号5)、マウス由来(配列番号6)、ラット由来(配列番号7)、ブタ由来(配列番号8)およびイヌ由来(配列番号9)Bcl-xLタンパク質から選択される[6]の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
[8] FNKタンパク質のN末端側に細胞膜通過ペプチドが連結している、[6]または[7]の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
【0012】
[9] 細胞膜通過ペプチドが、以下のペプチド(i)〜(xiii)のいずれかから選択される[8]の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
(i) 6〜12個のアルギニンからなるペプチド、
(ii) 6〜12個のリシンからなるペプチド、
(iii) 6〜15個のアルギニンおよびリシンからなるペプチド、
(iv) (i)から(iii)のいずれかのペプチドにおいて、数個のアミノ酸がグリシンに置換されたペプチド、
(v) 配列番号11で表される(i)のペプチド、
(vi) 配列番号13で表される(iii)のペプチド、
(vii) 配列番号15で表される(iv)のペプチド、
(viii) 配列番号17で表されるペプチド、
(viiii) 配列番号18で表されるペプチド、
(x) 配列番号19で表されるペプチド、
(xi) 配列番号20で表されるペプチド、
(xii) 配列番号21で表されるペプチド、ならびに
(xiii) 配列番号22で表されるペプチド
[10] 人体から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を、[6]〜[7]のいずれかの骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤と共に培養することを含む、移植骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植効率増強方法。
【発明の効果】
【0013】
骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を凍結する際にFNKタンパク質に細胞膜通過ドメインを連結させたタンパク質を添加することにより、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の細胞死を抑制することができ、凍結・融解後の生存率が高まる。従って、上記タンパク質は、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の凍結保存剤として利用することができる。また、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を移植する際にFNKタンパク質に細胞膜通過ドメインを連結させたタンパク質を添加することにより、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の細胞死を抑制することができ、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植効率を高めることができる。従って、上記タンパク質は、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の細胞活性維持剤あるいは移植効率増強剤として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
細胞死抑制活性強化タンパク質であるFNKは、がん原遺伝子であるbcl-2遺伝子(Science 226(4678):1097-1099, 1984; Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(22):7166-7170, 1984; Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83(14):5214-5218, 1986; Cell47(1):19-28, 1986)のホモログからなるbcl-2ファミリーに属するbcl-xL遺伝子(Cell 74(4):597-608, 1993)を改変することにより得られる。
【0015】
FNKは、Bcl-xLタンパク質の第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちのいずれか1つ、いずれか2つまたは3つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する。好ましくは3つが置換されている。FNKをコードする遺伝子は、bcl-xL遺伝子のコード領域において、第22番目のTyrをコードするトリプレットコドン(tac)をPheをコードするコドン(tttまたはttc)に置換する塩基の置換、第26番目のGlnをコードするコドン(cag)をAsnをコードするコドン(aatまたはaac)に置換する塩基の置換および第165番目のArgをコードするコドン(cgg)をLysをコードするコドン(aaaまたはaag)に置換する塩基の置換のうちのいずれか1つ、いずれか2つまたは3つの置換を有するように塩基配列を変異させることにより得られる。FNKタンパク質をコードするDNA配列およびアミノ酸配列の一例として、ラット由来のものをそれぞれ配列番号1および2に、ヒト由来のものをそれぞれ配列番号3および4に示す。
【0016】
本発明で用いるFNKはいかなる動物種由来のBcl-xLタンパク質を改変したものでもよく、例えばヒト、マウス、ラット、ブタ、イヌ由来のBcl-xLタンパク質が挙げられる。図7にヒト、マウス、ラット、ブタ、イヌ由来のBcl-xLタンパク質のアラインメントを示す。また、ヒト、マウス、ラット、ブタおよびイヌ由来のBcl-xLタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5〜9に示す。図7において、いずれの動物種由来のBcl-xLタンパク質のアミノ酸配列においても、第22番目のアミノ酸はTyrであり、第26番目のアミノ酸はGlnであり、165番目のアミノ酸はArgである。図7に示されている動物種以外の動物種由来のBcl-xLタンパク質においても、これら3箇所のアミノ酸は保存されていると考えられ、本発明のFNKタンパク質は由来動物種を問わず、Bcl-xLタンパク質のアミノ酸配列において、第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちのいずれか1つ、いずれか2つまたは3つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。また、本発明のFNKタンパク質は、各種動物由来のFNKタンパク質が有するアミノ酸配列において、第22番目、第26番目および165番目のアミノ酸以外のアミノ酸の1個または数個のアミノ酸が置換したアミノ酸配列を有するタンパク質であって、FNKタンパク質活性を有するタンパク質、またはFNKタンパク質が有するアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、FNKタンパク質活性を有するタンパク質も包含する。一般に、遺伝子には個体特異的な遺伝的多型が知られている。ヒトのBcl-xLタンパク質においても、FNKタンパク質活性に影響を与えない部位にアミノ酸置換(遺伝的多型)がある場合があり、例えば、配列番号5に表すヒトBcl-xLタンパク質のアミノ酸配列において、第70番目のGlyがAlaに置換されているものが知られている。本発明のFNKタンパク質は、このような個体特異的なアミノ酸置換であって、FNKタンパク質活性に大きな影響を与えないアミノ酸置換を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をも包含する。
【0017】
本発明のFNKタンパク質は、本明細書に記載のBcl-xLタンパク質もしくはFNKタンパク質のアミノ酸配列またはbcl-xL遺伝子もしくはFNKタンパク質をコードするDNAの塩基配列情報を基に、得ることができる。例えば、特開2001-120281号公報には、ラット由来のFNKタンパク質について記載されており、該公報の記載に従って本発明のFNKタンパク質を得ることができる。
【0018】
本発明の凍結保存剤に用いるFNKタンパク質のN末端側に細胞膜通過ドメイン(PTD)が連結している。
【0019】
細胞膜通過ドメインはアルギニン、リシンを含む塩基性アミノ酸を種に含む細胞膜通過ペプチドからなり、アミノ酸の光学異性体(D体、L体)に依存しない。細胞膜通過ペプチドとしては種々のものが知られており、本発明においてはいかなる細胞膜通過ペプチドを用いることができる。
【0020】
細胞膜通過ペプチドとして、6個から12個、好ましくは7個から11個、さらに好ましくは9個または10個のアルギニンのみまたはリシンのみからなるペプチド、5個から15個のアルギニンおよびリシンからなるペプチド、ならびに前記アルギニンのみまたはリシンのみからなるペプチドまたはアルギニンおよびリシンからなるペプチドにおいて、数個、好ましくは1個から8個のアミノ酸がグリシンに置換されたペプチド等が挙げられる。例としてアルギニン9個からなるペプチド(R9、配列番号10および11)、アルギニン7個およびリシン2個からなるペプチド(K2R7、配列番号12および13)、アルギニン7個およびグリシン6個からなるペプチド(R7G6、配列番号14および15)等が挙げられる。これらの細胞膜通過ペプチドを連結するとき、FNKタンパク質のアミノ酸配列の第1番目のメチオニンは残しておいてもよいし、除去してもよい。
【0021】
また、細胞膜通過ペプチドとして、HIV-1・TATの細胞膜通過ドメイン(protein transduction domain)YGRKKRRQRRR(配列番号16および17)やショウジョウバエのホメオボックスタンパク質アンテナペディアの細胞膜通過ドメインRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号18)が挙げられる。その他、VP22のC末端(267-300)ペプチドDAATATRGRSAASRPRERPRAPARSASRPRRPVE(配列番号19)、HIV-1/Rev(34-50)ペプチドTRQARRNRRRRWRERQR(配列番号20)、FHV/coat(35-49)ペプチドRRRRNRTRRNRRRVR(配列番号21)、K-FGFのN末端(7-22)の疎水性領域AAVALLPAVLLALLAP(配列番号22)等が挙げられる。
【0022】
また、FNKタンパク質と細胞膜通過ペプチドの間にスペーサー配列を有していてもよい。スペーサー配列はアミノ酸数個からなりその配列には限定はないが、例えば、1個から5個、好ましくは1個から3個、さらに好ましくは1個のグリシンが挙げられる。
【0023】
これらの細胞膜通過ペプチドは、それぞれの細胞膜通過ペプチドをコードするDNAをFNKをコードするDNAと連結して融合DNAを作製し、この融合DNAを遺伝子工学の手法により大腸菌等の宿主細胞で発現させることによって、N末端側に細胞膜通過ペプチドを連結したFNKタンパク質を作製することができる。あるいはまた、2価の架橋剤(例えば、EDCやβ-アラニン等を介して、FNKタンパク質と細胞膜通過ペプチドを結合させる方法によって細胞膜通過ペプチドを連結したFNKタンパク質を作製することができる。
【0024】
細胞膜通過ペプチドを連結したFNKタンパク質として、ヒトFNKタンパク質にK2R7ペプチドを連結させたもの(DNA配列を配列番号23に、アミノ酸配列を配列番号24に示す)、ヒトFNKタンパク質にR7G6ペプチドを連結させたもの(DNA配列を配列番号25に、アミノ酸配列を配列番号26に示す)、ヒトFNKタンパク質にR9ペプチドを連結させたもの(DNA配列を配列番号27に、アミノ酸配列を配列番号28に示す)、ヒトFNKタンパク質に1個のGlyをスペーサーとしてTatの細胞膜通過ドメインを連結させたもの(DNA配列を配列番号29に、アミノ酸配列を配列番号30に示す)およびラットFNKタンパク質に1個のGlyをスペーサーとしてTatの細胞通過ドメインを連結させたもの(DNA配列を配列番号31に、アミノ酸配列を配列番号32に示す)等が挙げられる。
【0025】
本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤は、上記のFNKタンパク質にPTDを連結させたタンパク質を含み、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させることなく凍結保存することができる。ここで、骨髄細胞とは、骨髄から採取された細胞をいい、臍帯血細胞とは臍帯から採取された細胞をいい、末梢血幹細胞とは末梢血から分離された幹細胞(造血幹細胞)をいう。本発明の凍結保存剤は、骨髄または臍帯血から得られた細胞全体を対象とすることもできるし、骨髄または臍帯血細胞から単離された幹細胞(造血幹細胞)や単核球を対象とすることもできる。また、骨髄または臍帯血細胞から造血幹細胞等の表面に発現する抗原であるCD34抗原を発現しているCD34陽性細胞またはCD34陽性CD38陰性細胞をフローサイトメーター等を用いて単離し(CD34陽性細胞)、本発明の凍結保存剤を用いて凍結保存することもできる。また、末梢血幹細胞も末梢血から単核球またはCD34抗原を発現している細胞を単離することにより得られる。本発明において、細胞を劣化させないとは、細胞死を起こすことなく細胞の生存率を高く保ち、さらに細胞本来が有する機能を維持させることをいう。本発明の凍結保存剤は、RPMI1640、DMEM等の細胞培養用培地、生理食塩水、リンガー液、リン酸緩衝液等の緩衝液にFNKタンパク質にPTDを連結させたタンパク質を0.01〜100nM、好ましくは0.05nM〜50nM、さらに好ましくは0.1nM〜10nM、特に好ましくは0.3nM〜10nM含んでいる。また、適宜動物血清、ヒトアルブミン等の動物由来アルブミン、スクロース等の糖や、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ハイドロキシエチルスターチ(HES)、エチレングリコール、グリセロール等を含んでいてもよい。採取した骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を105〜108細胞/mlの密度で懸濁させ、クライオチューブ等の細胞凍結用チューブや細胞凍結用バッグに入れ、凍結すればよい。なお、一般的に細胞を凍結する場合は、細胞密度が高い方が凍結・融解後の細胞生存率が高くなる。本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤は、105細胞/mlの低密度で凍結した場合でも、本発明保存剤がない場合に比べ、凍結・融解後の細胞生存率を高く保つことが可能である。凍結は-20℃以下、好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-80℃以下あるいは液体窒素中で行う。凍結期間は限定されず、上記低温に保たれている限り、数ヶ月から数年間の長期保存を行っても、凍結骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞は劣化することはない。本発明は凍結保存剤のpHは、中性付近が好ましく、pH4〜8、好ましくはpH5〜7.5、さらに好ましくはpH6〜7である。
【0026】
本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤を採取した骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞に添加し、凍結後融解した場合の、生存率は20%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上、特に好ましくは40%以上である。
【0027】
本発明は、採取した細胞を上記骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞保存剤に入れ凍結することを含む、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させずに凍結保存する方法をも包含する。
【0028】
本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤は、上記のFNKタンパク質にPTDを連結させたタンパク質を含み、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を移植する際に骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を劣化させることなく骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植効率を高めることができる。また、造血幹細胞の移植において、幹細胞の生体外での増殖は希求されているが、本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤は、幹細胞の生体外での増殖にも用いることができる。すなわち、幹細胞の活性を維持することにより、幹細胞の増殖も促進される。この際、幹細胞を培養する際に、適宜幹細胞の増殖因子等を添加すればよい。本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤は、RPMI1640、DMEM等の細胞培養用培地、生理食塩水、リンガー液、リン酸緩衝液等の緩衝液にFNKタンパク質にPTDを連結させたタンパク質を0.01〜100nM、好ましくは0.05nM〜50nM、さらに好ましくは0.1nM〜10nM、特に好ましくは0.3nM〜10nM含んでいる。また、適宜動物血清等を含んでいてもよい。本発明は骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤のpHは、中性付近が好ましく、pH4〜8、好ましくはpH5〜7.5、さらに好ましくはpH6〜7である。採取した骨髄細胞、臍帯血細胞もしくは末梢血幹細胞または凍結保存後融解した骨髄細胞、臍帯血細胞もしくは末梢血幹細胞懸濁液中に本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤を添加すればよい。骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を移植する前に本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤の存在下で数日間培養してもよいし、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植直前に添加してもよい。また、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤の存在下で培養し、移植前に、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を単離し、維持剤と分離した後に移植してもよい。本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤の存在下で骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を培養することにより、移植細胞の生存率(移植効率)が上昇する。すなわち、本発明の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤は、骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞移植効率増強剤として用いることもできる。さらに、本発明は、人体から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤と共に培養することを含む、移植骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植効率増強方法をも包含する。
【0029】
本発明の凍結保存剤、活性維持剤を用いて凍結保存したまたは活性維持した骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞は白血病の治療や、腎癌、脳腫瘍等の腫瘍の治療に用いることができる。
【実施例】
【0030】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 PTD-FNKによる凍結耐性
1.骨髄単核球細胞の調製、PTD-FNK処理
ラットFNKタンパク質に1個のGlyをスペーサーとしてTatの細胞膜通過ドメインを連結させたタンパク質(DNA配列を配列番号32にアミノ酸配列を配列番号33に示す)を大腸菌で発現させ精製し、実施例1および2で用いた。この発現及び精製に関しては、既に報告されている方法を用いて行った(Asoh, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 17107-17112. (2002))。
【0031】
インフォームド・コンセントを得たヒトから採取された正常骨髄(1〜2 ml)から常法に従いリンフォプレップ(Lymphoprep, 1.077±0.001 g/ml, AXIS-SHIELD PoC AS社, オスロー、ノルウェー)を用いて行った。骨髄はPBS (Phosphate-buffered saline)溶液を加えて骨髄溶液とした。50-mlファルコンチューブ (Falcon社)に15 mlのリンフォプレップを加え、その上に静かに30 mlの骨髄溶液を重層し、界面がきちんとできていることを確認した。20℃, 400xgの遠心条件で35分遠心し、ブレーキをかけずに止めた。界面に中間層として認められる単核球層をスポイトで取り出して新しいファルコンチューブに入れる。等量以上のPBS/EDTA溶液を加えて混合後、20℃, 250xgの遠心条件で10分遠心し、ブレーキをかけずに止めた。骨髄単核球細胞を沈殿物として回収し、10% FBS(牛胎児血清)を含むRPMI1640 (Life Technologies,インビトロジェン社)培地で懸濁した。トリパンブルー色素を用いて、血球計数板上で生細胞数を計測した。RPMI1640培地で細胞を2 x 106 と2 x 105 個/mlの細胞濃度にし、PTD-FNKを所定の濃度に加えた。PTD-FNK 0 nMでは等量の溶媒(vehicle)を加えた。37℃で保温した後、2-ml クリオチューブ (Nunc社、デンマーク)に250μlずつ入れた。これに、250μlのCP-1細胞凍害保護液を加え500μlとした(最終的細胞濃度は1 x 106 と1 x 105 個/ml)。CP-1細胞凍害保護液は極東製薬工業(株)(東京)から発売されているCP-1(50 ml用;hydroxyethyl starch 10 g + demethyl sulfoxide 5 mlに生理食塩水を加えて34 mlとして販売)に、添付されていて説明書に従って、ヒト血清アルブミン(Calbiochem製、メルクジャパン、東京)を注射用蒸留水(大塚製薬)で25%に溶かした溶液を加えて全量50 mlとして調製した。
【0032】
2.凍結保存と生細胞数の計測
細胞が入ったクリオチューブはフリージングコンテナー NalgenCryo 1℃ freezing container (Nalgene社、米国)内に設置し、フリージングコンテナーを-80℃の冷凍庫内に置いて冷却し、-80℃の冷凍庫内で一週間保存した(1st cycle)。保存したクリオチューブを取り出し、37℃のウォーターバスに浸けることで細胞を急速に解凍した。解凍後、穏やかに懸濁した。1 x 106個/mlで凍結保存した細胞については、250μlを5 ml のRPMI1640培地がはいった15-mlファルコンチューブに入れた。残りの250μlが入っているクリオチューブは、再びフリージングコンテナー内に設置し、フリージングコンテナーを-80℃の冷凍庫内に置いて冷却し、-80℃の冷凍庫内で一週間保存した(2nd cycle)。1 x 10 個/mlで凍結保存した細胞については、500μlを5 ml のRPMI1640培地がはいった15-mlファルコンチューブに入れた。
【0033】
15-mlファルコンチューブに入れた細胞は遠心(上記条件)によって沈殿物として回収し、250μlのRPMI1640培地に懸濁した。5μlを等量のトリパンブルー溶液と混合し、血球計数板で生細胞数を計測した(図1. 生存率)。2nd cycle の凍結保存(-80℃、1週間)した細胞についても同様にして急速解凍し、トリパンブルーを使って、血球計数板で生細胞数を計測した。図1は、1 x 106 と1 x 105 個/mlの条件で1回(1st cycle)凍結・融解後の細胞の生存率を示す(3回の実験結果)。凍結前の細胞数(1 x 106 と1 x 105 個/ml)をそれぞれ100%として,PTD-FNKの各濃度での平均の生存率(棒グラフ)に標準偏差(縦線)をつけて示した。統計的解析(one-way ANOVA)の結果、1 x 106個/mlの条件でPTD-FNK 0 nM (vehicle)との有意差が認められ、*はP<0.05, **はP<0.01を示す。1 x 105 個/mlの条件でもPTD-FNK 0 nM (vehicle)との有意差が認められ、#はP<0.005、##はP<0.001を示す。
【0034】
図1に示すように、いずれの細胞濃度でもPTD-FNKは明白に凍結・融解による細胞死を抑制し、それはPTD-FNK濃度依存的であり、その効果は0.3 nMでプラトーに達した。細胞濃度が高い条件に比べ、低い条件のほうで、PTD-FNKの細胞死抑制活性は顕著に認められた。
【0035】
実施例1の結果は、PTD-FNKは骨髄単核球細胞の凍結・融解による細胞死を抑制したことを示す。
【0036】
3.CD34幹細胞のフローサイトメトリーによる検討
1 x 106 個/mlで凍結保存細胞については、骨髄単核球細胞の中で造血幹細胞や血管新生に関わっている血管内皮幹細胞を含んでいるCD34陽性細胞について検討した。トリパンブルーを使って、血球計数板で生細胞数を計測した残りの細胞(245μl)を蛍光色素FITCが結合した抗ヒト34抗体(FITC-conjugate anti-human CD34 mouse monoclonal antibody; BD Biosciences Pharmingen社、米国)とヨウ化プロピヂウム(PI; 5μM)で処理した。処理の条件はBD Biosciences Pharmingen社から提供された説明書(添付)に従って行った。フローサイトメーター(EPICS ELITE ESP; Beckma Coulter K.K.社、東京)を使って、10,000個の細胞についてPI染色性(陽性;死細胞、陰性;生細胞)とFITC染色性(陽性;CD34 positive, 陰性;CD34 negative)を調べ、生存している(PI陰性)細胞の中で、CD34陽性幹細胞の割合を計測した(図2)。使用した抗ヒト34抗体のCD34染色特異性については、同じアイソタイプの抗体FITC-conjugated IgG (BD Biosciences Pharmingen社、米国)で上記細胞を処理しても、FITC陽性となった細胞が検出されないことで確認した。
【0037】
図2に1 x 106 個/mlの条件で凍結・融解を1回(1st cycle)および2回(2nd cycle)行った後の骨髄単核球細胞中の生存しているCD34陽性幹細胞の割合を示した。また表1に生存CD34陽性細胞の割合を示す。PI陰性(生存している細胞)を縦軸、その細胞のFITC蛍光強度を横軸にとった。図2中に示した横棒の範囲内のFITC蛍光強度を持った生細胞をCD34陽性細胞とし、その全生細胞数に対する割合(%)を横棒の上に示した。通常、ヒト骨髄単核球細胞中にはCD34陽性細胞が1.5%から8.2% (medianは5.4%)含まれている。
【0038】
図2に示すように、1st cycleでも2nd cycleでも、処理したPTD-FNK濃度依存的に生存しているCD34陽性細胞の割合が上昇した。骨髄単核球細胞の生存率(図1)を考慮すると、PTD-FNK 0 nMと1 nMを比べた時、CD34陽性細胞数は3倍多く生き残っている。
【0039】
また、PTD-FNK 0 nMでは1回(1st cycle)に比べ2回(2nd cycle)目で、CD34陽性細胞の割合が55%に減少していた。一方、PTD-FNK処理した細胞では、2回の凍結・融解後でも1回の時とほぼ同じ割合を示した。PTD-FNK 0 nMと1 nMを比べると、CD34陽性細胞の割合は3.6倍高かった。
【0040】
【表1】

【0041】
さらに、2回凍結・融解した後の骨髄単核球細胞の生存率は2.6% (標準偏差1.1;PTD-FNK 0 nM), 6.0% (標準偏差1.5;PTD-FNK 0.1 nM), 6.5% (標準偏差1.4;PTD-FNK 0.3 nM), 8.6% (標準偏差1.8;PTD-FNK 1 nM)であった(3回の実験結果)。この生存率と上記2の結果を一緒に考慮すると、PTD-FNK 0 nMと1 nMを比べた時、2回の凍結・融解後に生き残ったCD34陽性細胞数はPTD-FNK処理で12倍上昇した。
【0042】
以上のように、本実施例は、PTD-FNKは骨髄CD34陽性幹細胞の凍結再解凍による細胞死を著しく抑制したことを示す。
【0043】
実施例2 ラット下肢虚血モデルを用いた、骨髄単核球細胞の移植効率に対するPTD-FNKの効果の検討
EGFP-トランスジェニック SDラット(”green rat CZ-004” 6から9週齢、雄、大阪大学遺伝情報実験センター 岡部 勝 教授より使用許可を得て購入)の大腿骨と脛骨から骨髄を取り出し、常法に従い、Lymphoprep (Axis-Shield PoC AS, Oslo, Norway)を用いた密度勾配遠心法で骨髄単核球細胞を調製した。調製されたgreen rat由来骨髄単核球細胞はEGFP(enhanced green fluorescent protein)を発現し、EGM-2培地で8日間培養してもEGFPの蛍光が消滅しないことを確認した(図3パネルA、B)。
【0044】
常法に従い、正常SDラットの右側大腿動脈を抜去して下肢虚血モデルを作製した。green rat由来骨髄単核球細胞をPTD-FNK(0、10 nM)を含むEGM-2培地で1時間処理し、1 x107個の細胞を下肢虚血モデルラットの前脛骨筋に注入(移植)した。8日後に注入部の筋肉を取り出し、注入部を中心に上下に300μmごとに8μm厚の凍結切片を5枚作製した。ヨウ化プロピジウム (PI)で染色し、細胞の並び方から直径50μm以上の血管のEGFPの蛍光を共焦点レーザー顕微鏡で調べた(図6パネルA、B、C)。このような細胞の並び方をしている構造が血管であることを隣接凍結切片を用いて、1枚をPI染色で、もう1枚を血管壁のフォンウィルブランド因子に対する抗体(DAKOPATTS, Denmark;希釈倍率 1:500)で染色し、確認した(図4パネルA、B)。切片あたりEGFPの蛍光を発している血管の数を計数し、その平均値(各4匹,5切片/匹)を図5に示した。図中のscale barは100μmである。
【0045】
各図は以下を示す。
図3A 調製直後のgreen rat由来骨髄単核球細胞のEGFPの蛍光
図3B EGM-2培地で8日間培養したgreen rat由来骨髄単核球細胞のEGFPの蛍光
図4A PI染色した隣接切片。中央にPI染色された細胞の並び方から血管とおもわれる。
図4B 上記Aの隣接切片を、抗フォンウィルブランド因子(vWF)抗体で染色した。中央部が抗体で染色され、上記AのPI染色で血管と思われた構造が血管であることが確認された。
図5 PTD-FNKで処理、未処理のgreen rat由来骨髄単核球細胞を注入された虚血部位の前脛骨筋のEGFP陽性の切片あたりの血管数。*P<0.03, t 検定。
図6A、B、C 図5で計測した切片の代表的染色像。同じ切片の(A) PI染色、(B) EGFPの蛍光、(C) 2枚の像を重ね合わせた像(merge)。
【0046】
本実施例に示すように、PTD-FNK処理で、移植骨髄単核球細胞が生き残って定着している血管数が約2倍多かった。PTD-FNK処理で、移植骨髄単核球細胞の虚血による細胞死を抑制し、その結果移植効率を高めたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】凍結・融解後の骨髄単核球細胞の生存率を示す図である。
【図2】凍結・融解後の骨髄単核球細胞中のCD34陽性幹細胞の割合を示す図である。
【図3】green rat由来骨髄単核球細胞の蛍光を示す図である。
【図4】PI染色で細胞の並び方から判断した血管様構造が確かに血管であることを確認した図である。
【図5】PTD-FNKで処理したgreen rat由来骨髄単核球細胞を注入した虚血部位の前脛骨筋において、移植骨髄単核球細胞が定着した血管の数を示す図である。
【図6】PTD-FNKで処理したgreen rat由来骨髄単核球細胞を注入した虚血部位の前脛骨筋において、移植骨髄単核球細胞が定着した血管を示す図である。
【図7】ヒト、ラット、マウス、ブタおよびイヌ由来のBcl-xLタンパク質のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0048】
配列番号10から32、合成

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bcl-xLタンパク質の第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちの少なくとも1つの置換を有するFNKタンパク質を有効成分として含む骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
【請求項2】
Bcl-xLタンパク質がヒト由来(配列番号5)、マウス由来(配列番号6)、ラット由来(配列番号7)、ブタ由来(配列番号8)およびイヌ由来(配列番号9)Bcl-xLタンパク質から選択される請求項1記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
【請求項3】
FNKタンパク質のN末端側に細胞膜通過ペプチドが連結している、請求項1または2に記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
【請求項4】
細胞膜通過ペプチドが、以下のペプチド(i)〜(xiii)のいずれかから選択される請求項3記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤。
(i) 6〜12個のアルギニンからなるペプチド、
(ii) 6〜12個のリシンからなるペプチド、
(iii) 6〜15個のアルギニンおよびリシンからなるペプチド、
(iv) (i)から(iii)のいずれかのペプチドにおいて、数個のアミノ酸がグリシンに置換されたペプチド、
(v) 配列番号11で表される(i)のペプチド、
(vi) 配列番号13で表される(iii)のペプチド、
(vii) 配列番号15で表される(iv)のペプチド、
(viii) 配列番号17で表されるペプチド、
(viiii) 配列番号18で表されるペプチド、
(x) 配列番号19で表されるペプチド、
(xi) 配列番号20で表されるペプチド、
(xii) 配列番号21で表されるペプチド、ならびに
(xiii) 配列番号22で表されるペプチド
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞凍結保存剤を用いて骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の生存率を低下させずに凍結保存する方法。
【請求項6】
Bcl-xLタンパク質の第22番目のTyrのPheへの置換、第26番目のGlnのAsnへの置換および165番目のArgのLysへの置換のうちの少なくとも1つの置換を有するFNKタンパク質を有効成分として含む骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
【請求項7】
Bcl-xLタンパク質がヒト由来(配列番号5)、マウス由来(配列番号6)、ラット由来(配列番号7)、ブタ由来(配列番号8)およびイヌ由来(配列番号9)Bcl-xLタンパク質から選択される請求項6記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
【請求項8】
FNKタンパク質のN末端側に細胞膜通過ペプチドが連結している、請求項6または7に記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
【請求項9】
細胞膜通過ペプチドが、以下のペプチド(i)〜(xiii)のいずれかから選択される請求項8記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤。
(i) 6〜12個のアルギニンからなるペプチド、
(ii) 6〜12個のリシンからなるペプチド、
(iii) 6〜15個のアルギニンおよびリシンからなるペプチド、
(iv) (i)から(iii)のいずれかのペプチドにおいて、数個のアミノ酸がグリシンに置換されたペプチド、
(v) 配列番号11で表される(i)のペプチド、
(vi) 配列番号13で表される(iii)のペプチド、
(vii) 配列番号15で表される(iv)のペプチド、
(viii) 配列番号17で表されるペプチド、
(viiii) 配列番号18で表されるペプチド、
(x) 配列番号19で表されるペプチド、
(xi) 配列番号20で表されるペプチド、
(xii) 配列番号21で表されるペプチド、ならびに
(xiii) 配列番号22で表されるペプチド
【請求項10】
人体から採取した骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞を、請求項6〜7のいずれか1項に記載の骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞活性維持剤と共に培養することを含む、移植骨髄細胞、臍帯血細胞または末梢血幹細胞の移植効率増強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246853(P2006−246853A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71819(P2005−71819)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(803000034)学校法人日本医科大学 (37)
【Fターム(参考)】