説明

細胞治療において使用するための方法および組成物

本発明は、細胞治療薬のリンパ内投与のための方法を提供する。本発明のさらなる態様は、このような方法と関連している組成物、キットおよびその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、細胞治療を提供する方法およびその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 高等脊椎動物における免疫系は、種々の疾患の原因病原体である細菌、真菌およびウイルスなどの微生物をはじめとする、脊椎動物の身体に侵入し得る種々の抗原に対する防御の最前線を努める。さらに、免疫系はまた、自己免疫または免疫病理学的疾患、免疫不全症候群、アテローム性動脈硬化症および種々の腫瘍性疾患をはじめとする種々のその他の疾患または障害に関与している。これらの疾患を治療するための方法は入手できるが、多くの現在の治療は、十分でない結果しか提供しない。新しい緊急の治療戦略の中では、細胞治療に基づいた治療戦略が多くの疾患を治療するための潜在的に有用なツールを構成すると思われる。したがって、前記目的を達成するために、現在、研究者によって大いに努力されている。
【0003】
自己免疫疾患
[0003] 自己免疫疾患は、細菌、ウイルスおよび任意のその他の外来生成物に対して身体を防御するよう意図されている身体の免疫系が、正常に機能せず、健常な組織、細胞および臓器に対して病的応答を生じさせる場合に引き起こされる。抗体、T細胞およびマクロファージは、有益な保護を提供するが、有害なまたは致命的な免疫応答を引き起こす場合もある。
【0004】
[0004] 自己免疫疾患は、臓器特異的または全身性であり得、種々の発症機序によって誘発される。臓器特異的自己免疫は、主要組織適合複合体(MHC)抗原の異常な発現、抗原擬態およびMHC遺伝子における対立遺伝子変異を特徴とする。全身性自己免疫疾患は、ポリクローナルB細胞活性化および免疫調節性T細胞、T細胞受容体およびMHC遺伝子の異常を伴う。臓器特異的自己免疫疾患の例として、糖尿病、甲状腺機能亢進症、自己免疫副腎不全症、純赤血球貧血、多発性硬化症およびリウマチ性心炎が挙げられる。代表的な全身性自己免疫疾患として、全身性紅斑性狼瘡、慢性炎症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎および強皮症がある。
【0005】
[0005] 自己免疫疾患の現在の治療は、コルチゾン、アスピリン誘導体、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート、アザチオプリンおよびシクロホスファミドまたはそれらの組合せなどの免疫抑制剤を投与することを含む。しかし、免疫抑制剤を投与する場合に直面するジレンマは、自己免疫疾患がより効果的に治療されるほど、患者が感染からの攻撃に対してより無防備になること、また、腫瘍の発生に対してより感受性になるということである。したがって、自己免疫疾患の治療のための新しい治療が求められている。
【0006】
炎症性障害
[0006] 炎症は、身体の白血球および分泌された因子が、細菌およびウイルスなどの生体異物による感染から我々の身体を保護するプロセスである。サイトカインおよびプロスタグランジンとして知られる分泌された因子はこのプロセスを制御し、秩序ある自己制御式のカスケードで血液または患部組織に放出される。
【0007】
炎症性腸疾患(IBD)
[0007] IBDは、粘膜T細胞の機能障害、最終的に遠位小腸および結腸粘膜の損傷につながるサイトカイン産生および細胞炎症の変化を特徴とする、慢性、特発性、再発性、および組織破壊性疾患のファミリーである。IBDは、臨床的に2つの表現型:クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎に細分される。CDは、現在、有病率が0.05%である不治の自己免疫疾患であり、腹痛、直腸の出血、下痢、体重減少、皮膚および眼の障害ならびに小児における成長遅延および性的成熟遅延をはじめとするさまざまな胃腸症状および腸外症状をもたらす慢性炎症につながる。これらの症状は、患者の健康、生活の質および機能的能力に大きく影響を及ぼし得る。CDは、慢性であり、通常、30歳前に発症するので、患者は、一般に、生涯の治療を必要とする。その病因論は依然としてわかっていないが、CDを内因性抗原に対する免疫応答を減弱する粘膜免疫系の不全と関連付ける間接的証拠がある。
【0008】
[0008] アミノサリチル酸、副腎皮質ステロイド、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、抗生物質およびメトトレキサートをはじめとするCDのために現在使用される治療薬は、完全には有効ではなく、非特異的であり、複数の有害な副作用を有する。ほとんどの場合で、外科的切除が最終的な代替手段である。したがって、本治療戦略は、疾患の両成分、すなわち、炎症反応およびT細胞駆動応答を特異的に調節する薬物または薬剤を見出すことである。
【0009】
[0009] 最近、薬物インフリキシマブが、標準的な治療薬に対して応答しない中程度乃至重篤なクローン病の治療用に及び開放性排出性瘻の治療用に承認された。インフリキシマブは、特にクローン病用に承認された最初の治療であり、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体である。TNFは、クローン病と関連する炎症を引き起こし得る、免疫系によって産生されるタンパク質である。抗TNFは、TNFを血流から除去し、その後、腸に到達し、それによって炎症を防ぐ。しかし、TNFは、全身効果を有し、TNFは、極めて多面的な因子であるので、重篤な副作用が比較的よく見られ、その長期間の安全性は、まだ調べられる必要がある。また、患者において起こる炎症プロセスの多くがTNFシグナル伝達に依存していないので、有効性も制限される。
【0010】
関節リウマチ(RA)
[0010] 関節リウマチおよび若年性関節リウマチは、炎症性関節炎の種類である。関節炎は、関節における炎症を説明する一般用語である。すべてではないが、一部の種類の関節炎は、間違った炎症の結果である。関節リウマチは、世界の人口の約1%に影響を及ぼしており、本質的に身体に障害を引き起こすものである。関節リウマチは、それによって、身体の免疫系が、関節中で潤滑液を分泌する滑膜を外来性であると誤って同定する自己免疫障害である。その結果、炎症が起こり、関節中およびその周囲の軟骨および組織が損傷を受けるか、破壊される。身体は、損傷を受けた組織を瘢痕組織と取り換え、関節中の正常な空間を狭くさせ、骨が一緒に融合してしまう。
【0011】
[0011] 関節リウマチには、持続的抗原提示、T−細胞刺激、サイトカイン分泌、滑膜細胞活性化および関節破壊という自己免疫のサイクルがある。
【0012】
[0012] 関節炎のための現在の治療は、抗炎症性医薬または免疫抑制医薬を用いて関節の炎症を低減させることに焦点を合わせている。任意の関節炎の治療の最前線は、普通、アスピリン、イブプロフェンならびにセレコキシブおよびロフェコキシブなどのCox−2阻害剤などの抗炎症薬である。インフリキシマブなどの抗TNFヒト化モノクローナル抗体も使用される。しかし、インフリキシマブは多くの続発性の効果または副作用を有し、その有効性はかなり低い。「第2選択薬」として、金、メトトレキサートおよびステロイドが挙げられる。これらは、関節炎の確立した治療であるが、これらの系列の治療単独で緩解する患者はほとんどなく、難しい治療の問題は、関節リウマチの患者にとっては依然として残っている。
【0013】
[0013] 一般に、慢性炎症性障害のための現在の治療は、極めて制限された効率しか有さず、その多くは、副作用の高い罹患率を有するか、疾患進行を完全に防ぐことができない。今までのところ、理想的な治療はなく、これらの種類の病態の治癒はない。したがって、炎症性障害の治療のための新しい治療が大いに必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[0014] 本発明は、それを必要とする患者の細胞治療のための改善された方法を提供する。本発明のさらなる態様は、リンパ内に送達される細胞治療薬において使用するためのキットおよび組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[0015] 一態様では、損傷を受けた組織を治療もしくは修復するための方法ならびに/または損傷を受けた組織ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連する1種もしくは複数の症状を有する、炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、調節、予防および/もしくは改善のための方法が記載されており、この方法は、前記被験体のリンパ系に、予防上または治療上有効な量の幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含む組成物を投与することを含む。一実施形態では、本発明は、リンパ器官への細胞治療の直接送達を含む、個体において免疫疾患および/または炎症性疾患を予防、治療または改善する方法を提供する。本発明の一実施形態では、細胞治療は、抗原と組み合わせて送達される。
【0016】
[0016] 別の態様では、
i.損傷を受けた組織の治療もしくは修復;および/または
ii.炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、調節、改善および/もしくは予防
の方法において使用するための、リンパ系に投与される、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞が記載されている。
【0017】
[0017] さらに別の態様では、i)幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞集団を含んでなる医薬と、ii)このような治療を必要とする被験体において、損傷を受けた組織を治療もしくは修復するための方法ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を治療、調節、予防および/もしくは改善するための方法のための使用説明書と、を含むキットが記載されており、これは、前記被験体のリンパ系に、予防上または治療上有効な量の幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含む組成物を投与することを含む。
【0018】
[0018] なお別の態様では、損傷を受けた組織の治療もしくは修復のための、ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、調節、予防および/もしくは改善のための医薬の製造における、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の使用であって、リンパ系への幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の投与を含む使用が記載される。
【0019】
[0019] 別の態様は、リンパ系へ投与するための幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞に関する。さらに別の態様は、治療において使用するためのその細胞に関する。
【0020】
[0020] なお別の態様は、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞、ならびに抗原を含む、リンパ系に投与するための医薬組成物に関する。
【0021】
[0021] その他の態様、特徴および利点は、以下の開示および添付の特許請求の範囲から、より十分に明らかとなろう。
【0022】
定義
[0022] 本明細書の理解を容易にするために、本発明との関連で、一部の用語および表現の意味を以下に説明する。さらなる定義は、必要に応じて明細書全体を通して含まれよう。
【0023】
[0023] 本発明によれば、用語「リンパ内注射に適合する」または「結節内注射に適合する」または「腋窩および/または鼠径部リンパ節への直接注射に適合する」とは、リンパ内または結節内注射に適合する、好ましくは、免疫調節細胞を含む、最も好ましくは、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含む細胞治療薬ならびに医薬およびそれを含む医薬組成物が、このような治療を必要とする被験体において、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)を治療もしくは修復するために、ならびに/または、炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を治療、調節、予防および/もしくは改善するために、個体、特に、ヒト、さらにより好ましくは、ヒト患者のリンパ組織中に、薬物治療として上記のものを注射するのに必要なまたは有益な、物理的、化学的、生物学的およびその他の特徴を有することを意味する。さらに、本発明による「リンパ内注射に適合する」または「結節内注射に適合する」免疫調節細胞、ならびにそれを含む本発明の医薬および医薬組成物は、リンパ組織への適当な容量、好ましくは、最大0.01、好ましくは、最大0.05、好ましくは、最大0.1、好ましくは、最大0.2、好ましくは、最大0.3、好ましくは、最大0.4、好ましくは、最大0.6、好ましくは、最大0.8、好ましくは、最大1.0、好ましくは、最大2mLの容量での、すべての構成成分の適当な量の適用を可能にする組成物のすべての構成成分の濃度を含有する。さらに、「リンパ内または結節内注射に適合する」組成物は、多すぎる量で適用されるとリンパ組織に損傷を与え得る溶媒およびアジュバントなどの潜在的に有害な物質を全く含有しないか、限定された量のみを含有させなければならない。リンパ組織の損傷とは、細胞に対する毒性効果による、細胞の化学的破壊による、例えば、炎症性反応、壊死などを誘導することによる細胞に対する間接的損傷による直接損傷を意味する。
【0024】
[0024] さらに、本発明による「リンパ内または結節内注射に適合する」組成物は、注射がリンパ組織を外れ、最悪の場合、免疫調節細胞ならびにそれを含む医薬および医薬組成物の血液循環への直接注射となる場合に、免疫調節細胞ならびにそれを含む医薬および医薬組成物の偶発的な全身適用を防ぐある種の安全機構を有することが理想的である。このような安全機構は、生物学的に活性な物質の短い細胞外半減期を含む。
【0025】
[0025] 本明細書において、用語「注射」は、当技術分野におけるその通常の意味を与えられるものとし、身体の一部、通常、皮膚に穴を開けることによる身体への薬剤の送達を指す。この用語は、中空シリンジおよび高圧ジェット注射装置の使用を含む。
【0026】
[0026] 本明細書において、用語「同種異系の(allogeneic)」とは、同一種の異なる個体に由来することを意味すると取られるべきである。2種以上の個体は、遺伝子が1つまたは複数の遺伝子座で同一ではない場合に互いに同種異系であるといわれる。
【0027】
[0027] 本明細書において用語「自己」とは、同一個体に由来することを意味するととられるべきである。
【0028】
[0028] 用語「免疫疾患」とは、被験体の免疫学的反応によって引き起こされる、細胞傷害、組織傷害および/または臓器傷害を特徴とする被験体における状態を指す。用語「自己免疫疾患」とは、被験体の、自身の細胞、組織および/または臓器に対する免疫学的反応によって引き起こされる細胞傷害、組織傷害および/または臓器傷害を特徴とする被験体における状態を指す。本発明の免疫調節細胞で治療できる自己免疫疾患の例示的な、限定しない例として、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー−皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFlDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症−線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型または免疫媒介性真性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象(Raynauld's phenomenon)、ライター症候群、サルコイドーシス、強皮症、進行性全身性硬化症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、全身硬直症候群、全身性紅斑性狼瘡、紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎 血管炎などの血管炎、白斑、ウェジナー肉芽腫症、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質症候群、神経系の自己免疫疾患、家族性地中海熱、ランバートイートン筋無力症症候群、交感性眼炎、多腺性内分泌不全症、乾癬などが挙げられる。
【0029】
[0029] 用語「免疫媒介性炎症性疾患」とは、正常な免疫応答の調節不全に起因する、それと関連している、それによって誘発される、慢性または急性炎症を特徴とする任意の疾患、例えば、クローン病、1型真性糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性紅斑性狼瘡、橋本病、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、悪性貧血、アジソン病、強皮症、グッドパスチャー症候群、潰瘍性大腸炎、自己免疫性溶血性貧血、不妊、重症筋無力症、多発性硬化症、バセドウ病、血小板減少性紫斑病、ギランバレー症候群、アレルギー、喘息、アトピー性疾患、動脈硬化症、心筋炎、心筋症、糸球体腎炎、低形成性貧血および臓器移植後の拒絶を意味するととられるべきである。
【0030】
[0030] 「セリアック病(celiac disease)」はあるいは、セリアック病(coeliac disease)、セリアックスプルー(c(o)eliac sprue)、非熱帯性スプルー、地方病性スプルー(endemic sprue)、グルテン性腸炎またはグルテン感受性腸炎およびグルテン不耐性とも呼ばれる。
【0031】
[0031] 本明細書に記載される本発明の目的上、「免疫障害」は、自己免疫疾患および免疫学的に媒介される疾患を含む。
【0032】
[0032] 用語「炎症性疾患」とは、炎症、例えば、慢性炎症を特徴とする被験体における状態を指す。炎症性障害の例示的な、限定されない例として、限定するものではないが、セリアック病、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、脳炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性骨溶解症、アレルギー性障害、敗血性ショック、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、炎症性血管炎(vacultides)(例えば、結節性多発性動脈炎、ウェゲナー(Wegner's)肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎およびリンパ腫様肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosus))、外傷後血管の血管形成(例えば、血管形成術後の再狭窄)、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解症、慢性肝炎および慢性ウイルス感染または細菌感染に起因する慢性炎症が挙げられる。
【0033】
[0033] 細胞集団に適用される用語「単離」とは、in vivoまたはin vitroで前記細胞集団と関連している1種または複数の細胞集団を実質的に含まない、ヒトまたは動物の身体から単離された細胞集団を指す。用語「MHC」(主要組織適合複合体)とは、細胞表面抗原を提示するタンパク質をコードする遺伝子のサブセットを指す。ヒトでは、これらの遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と呼ばれる。本明細書では、略語MHCまたはHLAは、同義的に使用される。用語「被験体」とは、動物、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットまたはマウス)および霊長類(例えば、サルまたはヒト)を含めた哺乳類を指す。好ましい実施形態では、被験体は、ヒトである。
【0034】
[0034] 用語「免疫調節」とは、免疫系の1種または複数の生物活性の阻害または低減を指し、限定するものではないが、免疫応答および炎症状態のダウンレギュレーションならびにサイトカインプロフィール、細胞傷害活性および抗体産生の変化が含まれる。用語「抗原特異的免疫調節」とは、同種抗原および自己抗原の両方を含む、特定の抗原または複数の抗原と関連する免疫系の1種または複数の生物活性の阻害または低減を指す。用語「免疫調節」は、「抗原特異的免疫調節」を含むととられるべきである。
【0035】
[0035] 本明細書において、細胞表面マーカーに関して使用される場合、「陰性」または「−」は、細胞集団中、20%未満、10%未満、好ましくは、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の細胞が前記マーカーを発現するか、すべての細胞が前記マーカーを発現しないことを意味するととられるべきである。細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来法および装置(例えば、市販の抗体および当技術分野で公知の標準プロトコールとともに使用されるBeckman Coulter Epics XL FACSシステム)を使用して特定の細胞表面マーカーについてのフローサイトメトリーによって決定できる。
【0036】
[0036] 本明細書において、用語「リンパ系」は、当技術分野における通常の意味であり、リンパ管および毛細リンパ管の伝導系によって接続されているリンパ組織を指す。用語「リンパ器官」とは、リンパ節、最も好ましくは、腋窩または鼠径部リンパ節を指し、またはリンパ節を欠く個体もしくはその欠陥を有する個体については、リンパ組織または免疫細胞を指す。
【0037】
[0037] 本明細書において、用語「間葉幹細胞」(本明細書において「MSC」とも呼ばれる)は、もともとは間充織に由来する複数の異なる種類の細胞を生じさせることができる細胞を意味するととられるべきである。この用語は、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞または筋細胞のうち少なくとも1種に分化できる細胞を指す。MSCは、任意の種類の組織から単離され得る。一般に、MSCは、骨髄、脂肪組織、臍帯または末梢血から単離される。本発明において使用されるMSCは、いくつかの実施形態では、骨髄(BM-MSC)または脂肪組織(ASC)から単離され得る。本発明の好ましい態様では、MSCは、それら自体が脂肪組織から得られる吸引脂肪組織から得られる。
【0038】
[0038] 本明細書において、表現「有意な発現」またはその同義語「陽性」および「+」は、細胞表面マーカーに関して使用される場合、細胞集団中、20%超、好ましくは、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、99%超の細胞、またはさらにすべての細胞が前記マーカーを発現することを意味するととられるべきである。
【0039】
[0039] 細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来法および装置(例えば、市販の抗体および当技術分野で公知の標準プロトコールとともに使用されるBeckman Coulter Epics XL FACSシステム)を使用して、バックグラウンドシグナルを上回るフローサイトメトリーにおける特定の細胞表面マーカーのシグナルを示す、従来法および装置(例えば、市販の抗体および当技術分野で公知の標準プロトコールとともに使用されるBeckman Coulter Epics XL FACSシステム)を使用する特定の細胞表面マーカーについてのフローサイトメトリーによって決定できる。バックグラウンドシグナルは、従来のFACS分析において各表面マーカーを検出するために使用される特定の抗体と同一アイソタイプの非特異的抗体によって示されるシグナル強度として定義される。陽性と考えられるマーカーについては、観察される特定のシグナルは、従来法および装置(例えば、市販の抗体および当技術分野で公知の標準プロトコールとともに使用されるBeckman Coulter Epics XL FACSシステム)を使用して、バックグラウンドシグナル強度よりも20%強い、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、500%、1000%、5000%、10000%以上強い。
【0040】
[0040] さらに、前記細胞表面マーカーに対する市販のおよび既知のモノクローナル抗体(例えば、細胞受容体および膜貫通型タンパク質)を使用して、関連細胞を同定できる。
【0041】
[0041] 用語「結合組織」とは、間充織に由来する組織を指し、その細胞が、細胞外マトリックス内に含まれることを特徴とするいくつかの組織を含む。結合組織の例として、限定するものではないが、脂肪組織および軟骨組織が挙げられる。
【0042】
[0042] 本明細書において、用語「線維芽細胞」は、線維芽細胞様滑膜細胞を含むととられるべきである。
【0043】
[0043] 用語「T細胞」とは、T細胞受容体(TCR)を発現するリンパ球のサブセットである免疫系の細胞を指す。用語「調節性T細胞」(本明細書において、T-reg細胞とも呼ばれる)とは、免疫系の活性化を活発に抑制し、病的自己反応性、すなわち、自己免疫疾患を防ぐT細胞サブセットを指す。用語「調節性T細胞」または「T−reg細胞」とは、天然に存在するt細胞(FoxP3+ T-reg細胞)とFoxP3分子を発現しない獲得T細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても知られる)の両方を含むととられるべきである。
【0044】
[0044] 用語「グルテン」は、グリアジンおよびグルテン成分を含むタンパク質を意味するととられるべきである。
【0045】
[0045] 本明細書において、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療している(treating)」とは、患者または被験体に関して直接的に使用される場合、限定するものではないが、炎症性障害、自己免疫疾患または移植された臓器および組織の拒絶を含めた免疫学的に媒介される疾患をはじめとする障害と関連している1種または複数の症状の改善を意味するととられるべきであり、前記改善は、本発明の免疫調節細胞またはそれを含む医薬組成物を前記治療を必要とする被験体に投与することに因る。
【0046】
[0046] 本明細書において、用語「修復する(repair)」および「修復している(repairing)」とは、損傷を受けた組織に関して直接的に使用される場合、損傷を受けた組織の再生などの直接的な機序ならびに間接的機序、例えば、炎症を低減し、それによって組織形成が可能となることの両方によるこのような損傷の改善を意味するととられるべきである。
【0047】
[0047] 用語「併用治療」とは、限定するものではないが、炎症性障害、自己免疫疾患または移植された臓器および組織の拒絶を含めた免疫学的に媒介される疾患をはじめとする障害と関連している1種または複数の症状の改善のための本発明の形式で、本発明の免疫調節細胞またはそれを含む医薬組成物を、他の活性物質または治療モダリティ(modality)とともに使用することを指す。これらのその他の薬剤または治療は、このような障害の治療のための既知の薬物および治療薬、例えば、限定するものではないが、副腎皮質ステロイドおよび非ステロイド系抗炎症化合物を含み得る。
【0048】
[0048] 本発明の免疫調節細胞またはそれを含む医薬組成物はまた、その他の治療モダリティ、例えば、副腎皮質ステロイド、非ステロイド系抗炎症化合物または炎症の治療において有用なその他の薬剤と組み合わせてもよい。本発明の薬剤とこれらの他の治療薬または治療モダリティとの併用は、同時であっても、逐次的に与えられてもよい。すなわち、2種の治療は、前記免疫調節細胞またはそれを含む医薬組成物が、その他の治療薬または治療モダリティに先立って与えられても、またはその後に与えられてもよいように分けられ得る。主治医は、免疫調節細胞、それを含む医薬組成物を、その他の薬剤、治療薬または治療モダリティと組み合わせて投与する適当な順序を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】[0049]コラーゲン誘導性関節炎マウスモデルにおいて、増殖させた脂肪由来幹細胞の投与が関節炎スコアを低下させること、およびリンパ内投与が静脈内経路よりも治療上有効であることを示す図である。群A:未処理対照;群C:5連続日でIV投与された100万個のASC;群D:1日目に投与された300万個のASCならびに3日目および5日目に投与された100万個のASC;群E:1日目および7日目にリンパ内に投与された320,000個のASC;群F:1日目および7日目にリンパ内に投与されたビヒクル。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[0050] 一態様では、本発明は、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)を治療もしくは修復するための方法ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の、このような治療を必要とする被験体における治療、調節、予防および/もしくは改善のための方法であって、前記被験体のリンパ系に、予防上または治療上有効な量の細胞治療薬を含む組成物を投与することを含む。したがって、さらなる態様では、本発明は、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)の治療もしくは修復において使用するための、ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、調節、予防および/もしくは改善のための、好ましくは、免疫調節細胞を含む、最も好ましくは、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含む細胞治療薬を提供し、該細胞治療薬は、リンパ系に投与される。リンパ内投与は、リンパ内注射によって実施されることが好ましい。細胞治療薬は、リンパ内投与、好ましくは、リンパ内注射に適合している。
【0051】
[0051] 幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞のリンパ系への直接的な投与は、先行技術を上回る、すなわち、従来の前記幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の皮下注射を上回るいくつかの利点、例えば、少量の免疫調節細胞が十分であること;治療は、患者にとって通常の皮下注射と同じ程度に痛みを伴うものでないこと;および有害な副作用が少ないことなどの利点を有する。さらに、リンパ組織への直接適用によって、例えば、結節内注射によって、免疫調節細胞が、損傷を受けた組織の治療または修復部位の近くに送達される。
【0052】
[0052] 本発明による免疫調節細胞ならびにそれを含む医薬および医薬組成物は、従来経路、たとえば、皮下投与または舌下投与により、あるいは経口的に、経皮的に(局所ワクチン接種)、皮内に、髄内に、くも膜下腔内に、脳室内に、鼻腔内に、結膜への、気管支内に、経皮的に、直腸内に、腹膜内に、筋肉内に、肺内に、膣内に、直腸性に、または眼内に、リンパ内投与と同時に投与してもよい。
【0053】
[0053] 本発明による細胞治療は、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含むことが好ましい。前記幹細胞が、間葉幹細胞(本明細書において以下、MSCとも呼ばれる)、最も好ましくは、脂肪組織に由来する、通常、ヒト脂肪組織(hASC)に由来するMSCである脂肪由来間葉幹細胞(本明細書において以下、ASCとも呼ばれる)であることが特に好ましい。
【0054】
[0054] 本発明において使用される線維芽細胞は、細胞外マトリックスの合成および維持と関連している間充織由来結合組織であり、線維芽細胞様滑膜細胞を含むととられるべきである。線維芽細胞は、任意の好適な動物、最も好ましくは、ヒトから得ることができる。
【0055】
[0055] 本発明において使用される調節性T細胞(サプレッサーT細胞としても知られることもある)は、血液または脾臓などの任意の好適な供給源に由来することができる。調節性T細胞は、天然に存在するCD4Foxp3細胞であってもよく、または体外で単離されたおよび/もしくは増殖させた調節性T細胞であってもよい。調節性T細胞の体外増殖法は、当技術分野で公知であり、全血からの単離(例えば、PBMC画分の一部として)と、それに続く、例えば、間葉幹細胞またはラパマイシンを使用する増殖を含む。
【0056】
[0056] 本発明の方法において使用されるMSCは、結合組織に由来することが好ましい。好ましい実施形態では、前記MSCは、脂肪組織に、さらに好ましい実施形態では、脂肪組織の間質画分に由来する。代替実施形態では、前記MSCは、硝子軟骨の軟骨細胞から得られる。さらなる実施形態では、前記MSCは、皮膚から得られる。別の実施形態では、前記MSCは、骨髄から得られる。
【0057】
[0057] MSCは、任意の好適な動物、最も好ましくは、ヒトから得た結合組織の任意の好適な供給源から得ることができる。前記細胞が、非病的哺乳類供給源、好ましくは、出生後の(例えば、げっ歯類または霊長類)供給源から得られることが好ましい。好ましい実施形態では、MSCは、限定するものではないが、脂肪組織の間質分画、硝子軟骨、骨髄または皮膚などの結合組織の供給源から得られる。本発明の方法のMSCは、非病的、出生後、ヒト間質脂肪組織から得られることが最も好ましい。
【0058】
[0058] 本発明の方法に従って投与されるような免疫調節細胞の意図されるレシピエントに関して、前記の上記方法において使用されるMSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、同種異系(ドナー)または自己(被験体)起源のいずれかのものであり得る。本方法の一実施形態では、前記MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、同種異系起源のものである。本方法の一実施形態では、前記MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、自己起源のものである。
【0059】
[0059] 本発明の方法において使用されるMSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、(i)それらが抗原提示細胞に特異的なマーカーを発現しないこと、(ii)それらが、IDO(インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ)を構成的に発現しないこと、(iii)それらが、IFN−γでの刺激時にIDOを発現すること、およびMSCの場合には、(iv)それらが、少なくとも2種の細胞系統に分化する能力を示すことを特徴とすることが好ましい。
【0060】
[0060] 本発明による幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、注射に好適な生理学的に許容される担体中で送達されることが好ましい。一般に、使用のために公知の、任意の生理学的に許容される担体を、本発明の実施において使用してよい。このような担体の選択は、制限するものではないが、リンガー溶液、水、標準の生理食塩水溶液、デキストロース溶液およびアルブミン水を含み、容易に当技術分野における技術の範囲内である。
【0061】
[0061] 任意選択により、リンパ系またはその一部、例えば、リンパ管またはリンパ器官、好ましくはリンパ節の、局在する領域を、注射手順の際に可視化してもよい。超音波、放射線学的またはその他の可視化手段、例えば、コンピュータ断層撮影(CATスキャン)を使用して、リンパ節を可視化し、ニードルの位置および腫脹などのリンパ節における変化をモニタリングしてもよい。腋窩および鼠径部リンパ節への注射が、超音波によってガイドされる位置決定および注射の容易さのために好ましい。
【0062】
[0062] 注射のために使用される技術は、当技術分野の技術の範囲内である。1つの方法は、液体製剤中の細胞を含有する単一チャンバーシリンジを使用することである。
【0063】
[0063] 別の態様では、本発明は、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)を治療もしくは修復するための方法ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を、このような治療を必要とする被験体において、治療、調節、予防および/もしくは改善するための方法を提供し、該方法は、前記被験体のリンパ系に、予防上または治療上有効な量の細胞治療薬を含む(最も好ましくは、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含んでなる)組成物を投与することを含み、前記被験体のリンパ系への抗原の直接的な投与をさらに含む。前記抗原は、細胞治療の投与に先立って、それと同時に、それに続いて投与してもよい。抗原は、細胞治療の投与の少なくとも1、2、3、5もしくは10時間前に、または少なくとも1、2、3、5もしくは10時間後に投与してもよい。
【0064】
[0064] 前記方法において使用される抗原は、選択された抗原、抗原群または前記抗原もしくは複数の抗原を発現および/もしくは提示する細胞型であり得る。一実施形態では、抗原は、自己免疫を患う患者に由来する自己抗原の混合物、ペプチド抗原、核酸、改変ペプチドリガンド、組換えタンパク質またはそのフラグメントを含む群から選択される。一実施形態では、前記抗原は、関節炎と関連している(限定するものではないが、コラーゲン抗原など)。代替実施形態では、前記抗原は、セリアック病と関連している。セリアック病と関連している抗原は、いくつかの形態のプロラミンを含むグルテンファミリーのメンバーである(限定するものではないが、グリアジン、ホルデインおよび/またはセカリンの抗原など)。さらなる実施形態では、前記抗原は、多発性硬化症と関連している(限定するものではないが、ミエリン抗原など)。このような抗原を単離、精製および調製する方法は、当業者には公知である。
【0065】
[0065] 本発明のすべての態様の細胞治療薬が、リンパ器官、最も好ましくは、限定するものではないが、リンパ節、最も好ましくは、腋窩または鼠径部リンパ節を含めた末梢のリンパ器官に直接的に投与されることが特に好ましい。リンパ節を欠く個体もしくはその欠陥を有する個体では、細胞治療薬を、リンパ組織または免疫細胞に送達してもよい。
【0066】
[0066] リンパ内投与のための方法は、当技術分野で公知であり、注射装置(例えば、シリンジ)によって実施されることが多い。投与は、限定するものではないが、放射線学的、超音波およびコンピュータ断層撮影(CATスキャン)などのイメージング装置によって補助され、観察され得る。これによって細胞治療薬の正確な投与およびまた有害な事象についてのリンパ器官のモニタリングが可能となる。本方法の一態様では、被験体は、リンパ内に投与される細胞治療薬の複数の用量を用いて治療される。少なくとも2、3、4、5、10または15用量が間隔をおいて投与されることが好ましい。本方法のさらなる態様では、該用量の各々は、10,000〜5,000,000個の間の細胞を含む。さらなる実施形態では、該用量の各々は、10,000〜100,000個の細胞;100,000〜500,000個の細胞;500,000〜1,000,000個の細胞または1,000,000〜5,000,000個の細胞を含んでなる。
【0067】
[0067] なお別の態様では、本発明は、リンパ系に投与するための幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を提供する。
【0068】
[0068] 別の態様では、本発明は、リンパ系への幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の投与によって、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)を治療もしくは修復するための医薬ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を治療、調節、予防および/もしくは改善するための医薬として使用することを提供する。
【0069】
[0069] 本発明の代替態様は、リンパ系への幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の投与による、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)を治療もしくは修復するための医薬ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を治療、調節、予防および/もしくは改善するための医薬の製造における、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の使用を提供する。
【0070】
[0070] さらなる態様では、本発明は、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含む、リンパ系に投与するための医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、損傷を受けた組織、または、限定するものではないが、自己免疫疾患、炎症性障害および免疫学的に仲介される疾患、例えば、移植された臓器および組織の拒絶などの炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、修復、予防および/または改善において役に立つ。本発明の一実施形態では、医薬組成物は、抗原、抗原の群または前記抗原もしくは複数の抗原を発現および/もしくは提示する細胞型をさらに含み得る。一実施形態では、抗原は、自己免疫を患う患者に由来する自己抗原の混合物、ペプチド抗原、核酸、改変ペプチドリガンド、組換えタンパク質またはそのフラグメントを含んでなる群から選択される。一実施形態では、限定するものではないが、コラーゲン抗原などの前記抗原は、関節炎と関連している。代替実施形態では、前記抗原は、セリアック病と関連している。セリアック病と関連している抗原は、いくつかの形態のプロラミンを含むグルテンファミリーのメンバーである(限定するものではないが、グリアジン、ホルデインおよび/またはセカリンの抗原など)。グルテンおよびその成分、グルタニンおよびグリアジンは、セリアック病と関連している好ましい抗原である。さらなる実施形態では、限定するものではないが、ミエリン抗原およびミエリン成分抗原、例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、プロテオリピドタンパク質(PLP)およびミエリン糖脂質、例えば、ガラクトセレブロシドなどの前記抗原は、多発性硬化症と関連している。このような抗原を単離、精製および調製する方法は、当業者に公知である。
【0071】
[0071] 本発明の医薬組成物は、予防上または治療上有効な量の幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞と、任意選択により、抗原と、薬剤担体とを含む。これらの細胞型の各々の投与量および投与計画の例は、上記に示されている。好適な薬剤担体は、当技術分野で公知であり、好ましくは、動物、より特定すれば、ヒトにおいて使用するための、米連邦もしくは州政府の規制当局によって承認されたものまたは米国薬局方もしくは欧州薬局方もしくはその他の一般に認識される薬局方に列挙されるものである。用語「担体」とは、それとともに治療薬が投与される賦形剤、アジュバント、添加剤またはビヒクルを指す。必要に応じて、組成物はまた、微量のpH緩衝剤を含有し得る。好適な薬剤担体の例は、E W Martinによる「Remington‘s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、予防上または治療上有効な量の予防薬または治療薬を、好ましくは、精製された形態で、被験体への適切な投与のための形態を提供するよう好適な量の担体と一緒に含有することになる。製剤は、投与様式に適合すべきである。好ましい実施形態では、医薬組成物は、無菌であり、被験体、好ましくは、動物被験体、より好ましくは、哺乳類被験体、最も好ましくは、ヒト被験体への投与に好適な形態である。
【0072】
[0072] 本発明の医薬組成物は、種々の形態であり得る。これらとして、例えば、半固体および液体剤形、例えば、凍結乾燥製剤、液体溶液剤または懸濁剤、注射用および注入用溶液剤などが挙げられる。上に記載したように、医薬組成物は、注射可能であることが好ましい。
【0073】
[0073] 本発明の方法、医薬、組成物および細胞は、損傷を受けた組織(好ましくは、間葉組織)を治療もしくは修復するために、ならびに/または炎症性障害および/または免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を治療、調節、予防および/もしくは改善するために使用されることが好ましい。したがって、本発明の方法および細胞は、前記症状のいずれかまたはすべて特徴とする任意の障害の治療において役に立つ。このような障害の代表的な包括的でないリストは、定義の節において提供される。免疫媒介性炎症性疾患の治療における本発明の方法、医薬、組成物および細胞の使用が、特に好ましい。真性糖尿病、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD、クローン病および/または潰瘍性大腸炎を含めた)および多発性硬化症(MS)の治療における本発明の方法、医薬、組成物および細胞の使用が、さらに好ましい。関節リウマチの治療における本発明の方法、医薬、組成物および細胞の使用がなおさらに特に好ましい。
【0074】
[0074] 本発明の方法または組成物が、1種または複数の抗原を含む場合には、方法または組成物が、前記抗原と関連しているかまたはそれによって誘導される障害の治療において使用されることが好ましく、例えば、抗原がコラーゲンである場合には、方法または組成物は関節炎の治療において使用してもよく、抗原がグルテン成分である場合には、方法または組成物はセリアック病の治療において使用してもよく、抗原がミエリン成分である場合には、方法または組成物は多発性硬化症を治療するために使用してもよい。したがって、好ましい組成物は、以下を含む:関節炎の治療用に、MSC、好ましくは、ASCおよびコラーゲン;セリアック病の治療用に、MSC、好ましくは、ASCならびにグルテンおよび/またはグルテン成分;多発性硬化症の治療用に、MSC、好ましくは、ASCならびにミエリンおよび/またはミエリン成分。
【0075】
[0075] さらなる態様において、本発明は、i)幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞集団を含んでなる医薬と、ii)本発明の方法に従ってそれを使用するための使用説明書とを含むキットを提供する。
【0076】
[0076] さらなる実施形態では、前記キットは、iii)1種または複数の抗原をさらに含んでなり得る。
【0077】
MSC表現型マーカー。
【0078】
[0077] 本発明の好ましい方法において使用されるMSCは、APC(抗原提示細胞)表現型と関連するマーカーについて陰性であることが好ましい。したがって、前記MSCは、以下のマーカー:CD11b;CD11c;CD14;CD45;HLAI1のうち少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、好ましくはすべてについて陰性であることが好ましい。さらに、MSCは、以下の細胞表面マーカー:CD31;CD34;CD133のうち少なくとも1つ、2つ、好ましくはすべてについて陰性であることが好ましい。
【0079】
[0078] 特定の実施形態では、本方法において使用されるMSCは、それらが以下の細胞表面マーカー:CD9、CD44、CD54、CD90およびCD105のうち少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、好ましくはすべてを発現する(すなわち、陽性である)ことを特徴とすることが好ましい。MSCは、それらが、前記細胞表面マーカー:CD9、CD44、CD54、CD90およびCD105のうち少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、好ましくはすべての有意な発現レベルを有することを特徴とすることが好ましい。
【0080】
[0079] 任意選択により、MSCはまた、細胞表面マーカーCD106(VCAM-1)について陰性であり得る。本発明の方法において使用するのに好適なMSCの例は、当技術分野において、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているWO2007039150に記載されている。
【0081】
分化
[0080] 本発明の方法において使用するのに好適なMSCは、好ましくは、多能性(multipotent)または多能性(pluripotent)幹細胞であり、増殖し、少なくとも2、より好ましくは、3、4、5、6、7またはそれ以上の細胞系統に分化される能力を示し得る。前記MSCが分化され得る細胞系統の例示的な非限定的な例として、骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋細胞、心筋細胞、造血支持間質細胞、内皮細胞、ニューロン、星状細胞および肝細胞が挙げられる。MSCは、従来法により、増殖してその他の系統の細胞に分化し得る。分化した細胞を同定し、続いて、その未分化の対応物から分化した細胞を単離する方法も当技術分野で周知の方法によって実施できる。
【0082】
MSC単離
[0081] MSCを単離する方法は、当技術分野で公知であり、任意の好適な方法を使用してもよい。ASCの単離の一実施形態では、これは、
(i)脂肪の試料から細胞懸濁液を調製する工程と;
(ii)前記細胞懸濁液から細胞を回収する工程と;
(iii)細胞が固体表面と接着し、増殖するのを可能にする条件下、固体表面で、好適な細胞培地中の前記細胞をインキュベートする工程と;
(iv)インキュベーション後に前記固体表面を洗浄して、接着していない細胞を除去する工程と;
(v)このような培地で少なくとも2回継代された後に、前記固体表面に接着したままである細胞を選択する工程と;
(vi)選択された細胞集団が注目する表現型を示すことを確認する工程と
を含み得る。
【0083】
[0082] 本明細書において、用語「固体表面」とは、ASCが接着できる任意の物質を指す。特定の実施形態では、前記物質は、哺乳類細胞のその表面への接着を促進するよう処理されたプラスチック物質、例えば、ポリ−D−リシンまたはその他の試薬で任意選択によりコーティングされている、市販のポリスチレンプレートである。
【0084】
[0083] 工程(i)〜(vi)は、当業者に公知の従来技術によって実施できる。手短には、ASCは、上記で論じられたような任意の好適な動物に由来する結合組織の任意の好適な供給源から従来手段によって得ることができる。通常、ヒト脂肪細胞は、外科的脂肪組織切除または吸引脂肪組織切除などのよく認識されたプロトコールを使用して生体ドナーから得られる。実際、脂肪吸引手順は非常に一般的であるので、脂肪吸引流出物はASCを得ることができる特に好ましい供給源である。したがって、特定の実施形態では、ASCは脂肪吸引によって得られたヒト脂肪組織の間質画分から得られる。
【0085】
[0084] 組織は、洗浄され、その後、残部の物質からASCを分離するよう処理されることが好ましい。あるよく使用されるプロトコールでは、組織の試料を、生理学的に相溶性である生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))で洗浄し、次いで、激しく撹拌し、沈降させる(組織から遊離した物質(例えば、損傷を受けた組織、血液、赤血球など)を除去する工程)。したがって、洗浄および沈降工程は、通常、上清が細片を比較的含まなくなるまで反復される。残存した細胞は、通常、種々の大きさの凝集塊で存在することになり、プロトコールは、細胞自体に対する損傷を最小にしながら、全体構造を分解するようされた工程を使用して進行する。この目的を達成する1つの方法は、洗浄した細胞の塊を細胞間の結合を弱めるか、破壊する酵素(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシンなど)で処理することである。このような酵素処理の量および期間は、使用される条件に応じて変わることになるが、このような酵素の使用は、通常、当技術分野で公知である。あるいは、またはこのような酵素処理と組み合わせて、機械的撹拌、超音波エネルギー、熱エネルギーなどといったその他の処理を使用して細胞の塊を分解してもよい。酵素法によって分解が達成される場合には、好適な期間の後に酵素を中和して、細胞に対する有害な作用を最小にすることが望ましい。
【0086】
[0085] 分解工程から、通常、凝集した細胞および遊離間質細胞(例えば、赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞および幹細胞)を通常含有する流体画分のスラリーまたは懸濁液が生じる。分離プロセスの次の段階は、ASCから凝集した細胞を分離することである。これは、細胞を上清に覆われたペレットにする遠心分離によって達成され得る。次いで、上清を廃棄し、ペレットを生理学的に適合する液体に懸濁してもよい。さらに、懸濁された細胞は、通常、赤血球を含み、ほとんどのプロトコールで、それらを溶解することが望ましい。赤血球を選択的に溶解する方法は、当技術分野で公知であり、任意の好適なプロトコールを使用してよい(例えば、高張培地または低張培地中でのインキュベーション、塩化アンモニウムを使用する溶解によってなど)。赤血球が溶解される場合には、当然、次いで、残存した細胞を、例えば、濾過、沈降または密度分画によって溶解物から分離すべきである。
【0087】
[0086] 赤血球が溶解されるかどうかにかかわらず、懸濁された細胞を1回または複数の連続回、洗浄し、再遠心分離し、再懸濁して、より高純度を達成できる。あるいは、細胞を、細胞表面マーカープロフィールに基づいて、または細胞の大きさおよび粒度に基づいて分離してもよい。
【0088】
[0087] 最終の単離および再懸濁後、必要に応じて、細胞を培養し、数および生存率についてアッセイして、収率を評価できる。細胞は、好適な細胞培地を使用して、適当な細胞密度および培養条件で、固体表面上で分化せずに培養されることが好ましい。したがって、特定の実施形態では、細胞は、好適な細胞培地[例えば、通常、5〜15%(例えば、10%)のウシ胎児血清またはヒト血清などの好適な血清を補充したDMEM]の存在下で、ペトリ皿または細胞培養フラスコなどの、通常プラスチック物質からなる固体表面上で分化せずに培養され、細胞が固体表面と接着し、増殖するのを可能にする条件下でインキュベートされる。インキュベーション後、細胞を洗浄して、接着していない細胞および細胞フラグメントを除去する。細胞を、必要に応じて細胞培地を換えながら、それらが適当なコンフルエンス、通常、約70%、約80%または約90%の細胞コンフルエンスに達するまで、同一培地、同一条件下での培養で維持する。所望の細胞コンフルエンスに達した後、細胞を、トリプシンなどの剥離剤を使用して連続継代し、適当な細胞密度(通常、2,000〜10,000個細胞/cm)で新しい細胞培養表面上に播種することによって増殖させることができる。したがって、次いで細胞を、その発達表現型を依然として保持しながら、分化させずに、このような培地で少なくとも2回継代する。より好ましくは、細胞を、発達表現型を失うことなく少なくとも10回(例えば、少なくとも15回または少なくとも20回でさえ)継代してもよい。通常、細胞は、約100個細胞/cm〜約100,000個細胞/cmの間(例えば、約500個細胞/cm2〜約50,000個細胞/cmまたはより特定すれば、約1,000個細胞/cm〜約20,000個細胞/cmの間)などの所望の密度で平板培養する。低密度(例えば、約300個細胞/cm)で平板培養されると、細胞を、より容易にクローンとして単離できる。例えば、数日後、このような密度で平板培養された細胞は、均一な集団に増殖することになる。特定の実施形態では、細胞密度は、2,000〜10,000個細胞/cmの間である。
【0089】
[0088] 少なくとも2回の継代を含むこのような処理後に固体表面に接着されたままである細胞を選択し、以下に記載されるように、注目する表現型を従来法によって分析して、ASCの素性を確認する。第1の継代後に固体表面に接着されたままである細胞は、不均一な起源に由来し、したがって、前記細胞は、少なくとももう1回の継代に付されなければならない。上記の方法の結果として、対象の表現型を有する均一な細胞集団が得られる。少なくとも2回の継代後の固体表面への細胞の接着は、ASCを選択するための本発明の好ましい実施形態を構成する。対象の表現型の確認は、従来手段を使用することによって実施できる。
【0090】
[0089] 前記増殖は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20回の前記集団の2倍化または3倍化によって実施されることが好ましい。さらなる実施形態では、前記増殖は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20回の継代にわたって実施される。
【0091】
[0090] 細胞表面マーカーは、通常、陽性/陰性選択に基づいて任意の好適な従来技術によって同定でき、例えば、細胞中のその存在/不在が確認される、細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体も使用できるが、その他の技術も使用できる。したがって、特定の実施形態では、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34およびCD133のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または好ましくはすべてに対するモノクローナル抗体を使用して、選択された細胞中の前記マーカーの不在を確認し、CD9、CD44、CD54、CD90およびCD105のうち1つ、2つ、3つ、4つ、または好ましくはすべてに対するモノクローナル抗体を使用して、前記マーカーのうち少なくとも1つ、好ましくはすべての存在またはその検出可能な発現レベルを確認する。前記モノクローナル抗体は、公知であり、市販されているか、または当業者によって従来法によって得ることができる。
【0092】
[0091] 選択された細胞におけるIFN−γ誘導性IDO活性は、任意の好適な従来アッセイによって決定できる。例えば、選択された細胞をIFN−γで刺激し、IDO発現についてアッセイしてもよく、次いで、IDOタンパク質発現についての従来のウェスタンブロット分析を実施してもよく、例えば、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析および読み取り値としての上清中のキヌレニン濃度の光度定量を介して、トリプトファンからキヌレニンへの変換によって、選択された細胞のIFN−γ刺激後のIDO酵素活性を測定してもよい。ASCは、特定の条件下でIDOを発現するので、IFN−γ刺激後のIDO活性の検出を可能にする任意の好適な技術をASCの選択に使用してもよい。生じるIDOの量は、5000個細胞/cm以上のレベルであることが好ましいが、この濃度に限定されない平方センチメートルあたりの細胞数、および理想的には3ng/ml以上であるが、この濃度に限定されないIFN−γの濃度に応じて変わる。記載された条件下で生じるIDOの活性は、24時間以上後にμM範囲でのキヌレニンの検出可能な産生をもたらすことになる。
【0093】
[0092] 選択された細胞の少なくとも2種の細胞系統へ分化する能力は、当技術分野で公知の従来法によってアッセイできる。
【0094】
[0093] ASCは、必要に応じて、細胞集団をクローニングするための好適な方法を使用してクローンとして増殖させることができる。例えば、細胞の増殖集団を物理的に選別し、別個の表面(またはマルチウェルプレートのウェル)に播種できる。あるいは、細胞を、単細胞を各ウェル中に入れることを容易にする統計比率で(例えば、約0.1〜約1個細胞/ウェルまたはさらに約0.25〜約0.5個細胞/ウェル、例えば、0.5個細胞/ウェル)マルチウェルプレート上にサブクローニングできる。勿論、細胞を低密度で(例えば、ペトリ皿またはその他の好適な基質中に)平板培養し、クローニングリングなどの装置を使用してそれらをその他の細胞から単離することによって、クローニングできる。クローン集団の生成物は、任意の好適な培地中で増殖することができる。任意の事象において、単離された細胞をその発達表現型がアッセイされ得る好適な点に培養できる。
【0095】
[0094] 例えば、好適な血清(ウシ胎児血清またはヒト血清など)の特別にスクリーニングされたロットを使用することによって、分化を誘導せずにASCの体外増殖を長期間達成できることがわかっている。生存率および収率を測定する方法は、当技術分野で公知である(例えば、トリパンブルー排除)。
【0096】
[0095] 本発明の細胞集団の細胞を単離するための工程および手順のいずれも必要に応じて、手作業で実施してもよい。あるいは、このような細胞を単離するプロセスは、1種または複数の好適な装置によって容易にされ、および/または自動化され得、その例は、当技術分野で公知である。
【0097】
MSC細胞培養。
【0098】
[0096] 前記MSCはまた、体外増殖され得る。すなわち、単離後、前記MSCを細胞培地中で維持し、体外増殖させることが可能である。このような培地は、例えば、2〜20%ウシ胎児血清(FBS)を補充した、抗生物質(例えば、ペニシリン100ユニット/mlおよびストレプトマイシン100μg/ml)を含む、または抗生物質を含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)と、グルタミン2mMとで構成させる。使用される細胞の必要に応じて、培地および/または培地サプリメントの濃度を改変または調節することは、当業者の技術の範囲内である。血清は、細胞性因子および非細胞性因子および生存率および増殖に必要である成分を含有することが多い。血清の例として、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(BS)、仔ウシ血清(CS)、ウシ胎児血清(FCS)、新生仔ウシ血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清(RS)などが挙げられる。前記MSCが、ヒト起源のものである場合には、細胞培地が、ヒト血清、好ましくは、自己起源のものを補充されることも本発明の範囲内である。補体カスケードの成分を不活化することが必要と考えられる場合には、血清を55〜65℃で熱不活化できることが理解される。1種または複数の所望の細胞型の生存を促進するために、血清濃度の調節および/または培地からの血清除去を使用してもよい。好ましくは、前記MSCは、約2%〜約25%のFBS濃度によって利益を得る。別の実施形態では、MSCを、当技術分野で公知のように、血清が、血清アルブミン、血清トランスフェリン、セレン、ならびに限定するものではないが、インスリン、血小板由来増殖因子(PDGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)をはじめとする組換えタンパク質の組合せによって置換されている所定の組成の細胞培地で増殖させることができる。
【0099】
[0097] 多数の細胞培地は、すでにアミノ酸を含有しているが、一部は、細胞の培養に先立って補充を必要とする。このようなアミノ酸として、限定するものではないが、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、Lシステイン、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−グリシンなどが挙げられる。
【0100】
[0098] 抗菌剤も、細菌、マイコプラズマ、および真菌汚染を軽減するために細胞培養において通常使用される。通常、使用される抗生物質または抗真菌化合物は、ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるが、限定するものではないが、アンホテリシン(ファンギゾン(登録商標))、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマシン(hygromacin)、カナマイシン、マイトマイシンなども含み得る。
【0101】
[0099] ホルモンも細胞培養において有利に使用でき、限定するものではないが、D−アルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメタゾン、b−エストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、プロラクチン、プロゲステロン、ソマトスタチン/ヒト成長ホルモン(HGH)などが含まれる。
【0102】
増殖させた細胞
[00100] 一実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、本発明の方法において使用する前に増殖させておいてもよい。細胞増殖法は、当技術分野で公知である。
【0103】
遺伝子改変された細胞
[00101] 別の実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、遺伝子改変された(例えば、外因性核酸を用いて形質導入された、またはトランスフェクトされた)細胞であってもよく、それに由来してもよい。
【0104】
[00102] 例えば、前記細胞は、例えば、前記酵素と、任意選択により、好適なプロモーター配列とをコードする適当な核酸構築物を用いるトランスフェクションによって、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)を構成的に発現するよう遺伝子改変されていてもよい。細胞の遺伝子工学は、当技術分野で公知であり、当業者によって実施され得る。
【0105】
照射された細胞
[00103] さらに別の実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞は、本発明の方法におけるその使用に先立って照射されていてもよい。細胞の照射は、その増殖能および生存時間を低減する。
【0106】
[00104] 照射は、γ照射装置などの好適な制御されたイオン化放射線供給源を使用して実施してもよい。照射条件は、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞の長期の増殖停止を引き起こす放射線量を与えるために必要な曝露時間を決定するために、当業者によって実験的に調整されなければならない。一実施形態では、前記放射線量は、1〜100Gy;5〜85Gy、10〜70Gy、12〜60Gyからなる群から選択される範囲内であるが、前記放射線量が15〜45Gyの範囲内であることが特に好ましい。
【0107】
CD26アンタゴニスト処理細胞
[00105] さらに別の実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、本発明の方法における使用に先立って、CD26アンタゴニストまたは阻害剤を用いて処理してもよい。CD26アンタゴニストおよび阻害剤は、当技術分野で公知であり、限定するものではないが、アミノメチルピリジン;P32/98;NVP DPP728;PSN9301;イソロイシンチアゾリジド;デナグリプチン(Denagliptin);シタグリプチン;ビルダグリプチン;サキサグリプチン;アログリプチン;ジプロチンAが挙げられ、このような処理は当業者によって実施され得る。
【0108】
IFN−γ刺激された細胞
[00106] 別の実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、本発明の方法における使用に先立ってインターフェロンγで刺激してもよい。その刺激のためのMSCのIFN−γ処理は、当技術分野で公知であり、当業者によって実施され得る。
【0109】
抗原刺激された細胞
[00107] さらに別の実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、本発明の方法における使用に先立って、抗原を用いて刺激してもよい。その刺激のためのMSCの抗原処理は、当技術分野で公知であり、当業者によって実施され得る。
【0110】
マイトマイシンC処理されたMSC
[00108] さらに別の実施形態では、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、本発明の方法における使用に先立ってマイトマイシンCを用いて処理してもよい。MSCのマイトマイシンC処理は、当技術分野で公知であり、当業者によって実施され得る。
【0111】
[00109] さらに、必要に応じて、MSC、調節性T細胞および/または線維芽細胞を、本発明の方法における使用に先立って、照射、IFN−γ刺激およびマイトマイシンC処理からなる群から選択される処理のうち2種または3種の組合せに付してもよい。
【0112】
[00110] 前記MSCの維持条件はまた、細胞が未分化形態のままであることを可能にする細胞因子を含有し得る。分化に先立って、細胞分化を阻害するサプリメントを培地から除去しなくてはならないことは当業者には明らかである。すべてではないが、細胞がこれらの因子を必要とすることも明らかである。実際、これらの因子は、細胞型に応じて不要な効果を引き起こし得る。
【0113】
[00111] 本発明の特徴および利点は、以下の限定されない例によって、より十分に示され、これでは、すべての部分およびパーセンテージは、特に断りのない限り、重量によるものである。
【実施例】
【0114】
(実施例1)
ASCを用いるコラーゲン誘導関節炎(CIA)の治療
材料および方法
コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスモデル
[00112] 実験的関節炎を、DBAl/(H−2)雄マウス(6〜8週齢)において誘導した。研究の開始当日に、各マウスに、0.1ml/動物の容量で、完全フロイントアジュバント(結核菌1mg/ml最終濃度)(CFA)中、ニワトリII型コラーゲン(CII)(1mg/ml最終濃度)のエマルジョンの第1の用量を用いて尾(身体から2〜3cm)に皮下注射した。コラーゲンの第1の注射の21日後、各動物にCII(0.1ml/動物)の第2の注射(追加免疫)を、やはり尾であるが第1の注射とは異なる位置で皮下投与した。この際、不完全フロイントアジュバント(IFA)を使用してコラーゲン懸濁液を作製した。
【0115】
[00113] 関節炎スコア指数が約2〜4である場合には、動物を増殖させた脂肪由来幹細胞を用いて、または対照としてビヒクル(リンガー溶液)を用いて治療した。CIAの発展を、予め確立したスコアリングシステムに従って、上肢および下肢の関節の炎症−発赤−関節強直を測定することによって毎日(月曜から金曜まで)追跡した。
【0116】
[00114] 試験品またはビヒクルの投与後、各動物の両後足の体積を毎日測定し、両足の平均を算出した。さらに、その後、各日に測定した足の体積から各動物の1日目に測定した後足の体積(第1のコラーゲン注射の前に、基礎体積としてとった)を差し引いて、各動物の足体積の純増加(すなわち浮腫)を得た。さらに、以下の関節炎指数スコアリングシステムに従って、前足および後足の両方において関節炎の重篤度を同一頻度およびタイミングを用いて採点した:
0:関節炎の徴候なし
1:足または1本の指の腫脹および/発赤
2:2群の炎症(腫脹および/または発赤)関節
3:2を超える群の炎症(腫脹および/または発赤)関節
4:足全体の炎症。重篤な関節炎
最終スコアは、4本の足のスコアの合計である。最大スコアは16である。
【0117】
実験計画
[00115] 対照
群A=治療なし。
【0118】
[00116] 静脈内投与
群C=用量あたり100万個細胞の静脈内注射。連続日あたり1用量。全部で5用量。
【0119】
群D=300万個細胞の第1用量ならびに100万個細胞の第2および第3の用量の静脈内注射、隔日あたり1用量。全部で3用量。
【0120】
[00117] リンパ内投与
群E=1用量あたり320,000個細胞のリンパ内注射(160,000個右鼠径部結節、160,000個左のもの)。全部で2用量、第1の7日前に第2の用量。
【0121】
[00118] ビヒクル対照
群F=リンガー溶液のリンパ内注射。全部で2用量、第1の7日前に第2の用量。
【0122】
[00119] N=12匹のマウス/群。
【0123】
[00120] 静脈内投与
[00121] 試験品を、滅菌バタフライニードル(25G)の使用によって尾静脈を介して静脈内に投与した。動物に5連続用量または3隔日(1日あたり1)を与えた。動物に、試験品0.2mlを、0.05ml/分の速度での注入として尾静脈を介して静脈内に与えた。
【0124】
[00122] 鼠径部リンパ節におけるリンパ内投与
[00123] DBAlマウスを、鼻マスクを介して2.0〜2.5%のイソフロラン(Isofloran)の吸入によって麻酔し、37℃の加温プレート上に寝かせた。脱毛(Veetセンシティブ脱毛クリーム)および70%エタノールでの鼠径部領域の消毒後、鼠径部領域中で6〜8mmの切開を行った。鼠径部脂肪内のリンパ節の位置を特定し、8μlのビヒクルまたはビヒクルおよびASC(2000万個細胞/mlの密度で)を、30ゲージニードルを備えたHamiltonシリンジを使用してリンパ節に注射した。1つまたは2つの結び目によって切開を縫合し、もう一方の側の鼠径部リンパ節において手順を反復した。マウスを麻酔から回復させた。7日後、手順を反復した。
【0125】
[00124] 増殖させた脂肪由来幹細胞の調製
[00125] 局所麻酔および全身鎮静下、ヒト脂肪組織を脂肪吸引によって得た。中空の先端の丸いカニューレを、小さい切開(直径0.5cm未満)を通して皮下空間中入れた。穏やかに吸引しながら、脂肪組織の機械的破壊のために、カニューレを脂肪組織腹壁コンパートメント中に移動させた。生理食塩水溶液および血管収縮薬エピネフリンを脂肪組織コンパートメント中に注射し、血液喪失を最小化した。このようにして、治療されるべき各患者から生吸引脂肪組織80〜100mlが得られた。
【0126】
[00126] 生吸引脂肪組織を、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco BRL、Paisley、Scotland、UK)を用いて十分に洗浄して、血液細胞、生理食塩水および局所麻酔薬を除去した。平衡塩溶液(5mg/ml;Sigma、St. Louis、USA)中のII型コラゲナーゼ(0.075%;Gibco BRL)の溶液を用いて細胞外マトリックスを、37℃で30分間消化して、細胞画分を放出させた。次いで、等容量の、10%ウシ胎児血清(FBS;Gibco BRL)を含有する細胞培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco BRL)の添加によってコラゲナーゼを不活化した。細胞の懸濁液を、250×gで10分間遠心分離した。赤血球の溶解のために、細胞をNHCl0.16Mに再懸濁し、室温(RT)で5分間静置させた。混合物を、250×gで遠心分離し、細胞をDMEMおよび10% FBSおよび1%アンピシリン/ストレプトマイシン混合物(Gibco BRL)に再懸濁し、次いで、それらを40μmのメッシュを通して濾過し、10〜30×10個細胞/cmの濃度で組織培養フラスコに平板培養した。
【0127】
[00127] 細胞を、大気中、5%COの雰囲気中、37℃で24時間培養した。次いで、培養フラスコをPBSで洗浄し、接着していない細胞および細胞フラグメントを除去した。細胞を、3〜4日毎に培地を置換しながら、それらがおよそ80%のコンフルエンスに達するまで、同一条件下、同培地での培養で維持した。次いで、細胞を、およそ約5〜6×10個細胞/cmの細胞密度に対応する1:3の希釈でトリプシン−EDTA(Gibco BRL)を用いて継代した。
【0128】
[00128] 実験のために、12〜16の複製倍化の細胞をトリプシン処理し、ビヒクル(リンガー溶液)で所望の細胞密度に再懸濁した。次いで、シリンジに移し、マウスに注射した。
【0129】
[00129] 統計分析
[00130] 結果の統計的有意性を、統計プログラムGraphPad Instat 3を使用して評価した。結果は、平均±標準誤差として表し、ここで、(n)は動物の数である。
【0130】
[00131] 図1は、群A対群Eの比較のp値を示すよう注釈がつけられている。有意差は、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001として表されている。群間の差は、不対データのクラスカル−ウォリス検定およびDunn形態多重比較の事後テストによって評価した。P<0.05の値を有意とした。
【0131】
[00132] 結果
[00133] 関節炎をニワトリコラーゲンIIの注射によってDBAlマウスで誘発した。マウスが2〜4の関節炎スコアを示した場合には、増殖させたASCを用い、静脈内またはリンパ内経路によってそれらを治療した。リンパ内投与の対照として、マウスをビヒクルを用いて治療した。関節炎スコアを毎日モニタリングした(表1参照のこと)。未治療のマウスまたはビヒクルを用いて治療されたマウスは、時間依存的に増大した足の高い炎症を示したのに対し、リンパ内に送達された増殖させたASCを用いて治療されたマウスは、有意に低減された炎症を示した。さらに、リンパ内投与の治療効果は、静脈内投与よりも高かった(図1参照のこと)。
【0132】
[00134] 結論
[00135] 本研究は、DBAlマウスへのヒトASCのリンパ内投与が、関節炎の重篤度の統計的に有意な低減をもたらすことを示す(関節炎指数スコアによって示されるように)。
【0133】
[00136] さらに、総計640,000個のASC(2用量で)のリンパ内投与の治療効果は、総計500万個の細胞の静脈内投与よりも有意に高かった。これらの結果は、リンパ内の投与経路は、より少ない細胞数を用いて、より高い治療効果に達するので、より有効であることを示す。
【0134】
[00137] したがって、本発明を、本発明の特定の態様、特徴および例示的実施形態を参照して本明細書において記載してきたが、本発明の有用性は、このように制限されず、むしろ、多数のその他の態様、特徴および実施形態に及び、包含することが理解されよう。したがって、以下に示される特許請求の範囲は、その精神および範囲内に、すべてのこのような態様、特徴および実施形態を含むとして、相応に広く解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷を受けた組織ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状を有する被験体における、損傷を受けた組織を治療もしくは修復するための方法ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害の治療、調節、予防および/もしくは改善のための方法であって、前記被験体のリンパ系に、予防上または治療上有効な量の幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記幹細胞が、間葉幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体のリンパ系への抗原の投与をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原が、幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞の投与に先立って、それと同時に、またはそれに続いて投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原が、幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞の投与の少なくとも1、2、3、5もしくは10時間前または少なくとも1、2、3、5もしくは10時間後に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記治療薬が、リンパ器官に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療薬が、末梢のリンパ器官に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記末梢のリンパ器官が、リンパ節である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リンパ節が、腋窩または鼠径部リンパ節である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が、シリンジによって実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
放射線装置、超音波装置またはイメージング装置を使用して、注射ニードルの位置をモニタリングする工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
i.損傷を受けた組織の治療もしくは修復、ならびに/または
ii.炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、調節、改善および/もしくは予防
の方法において使用するための、リンパ系に投与される、幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞。
【請求項13】
前記幹細胞が間葉幹細胞である、請求項12に記載の使用のための、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
前記方法が、前記被験体のリンパ系への抗原の投与をさらに含む、請求項12または13に記載の使用のための、請求項12または13に記載の細胞。
【請求項15】
前記抗原が、幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞の投与に先立って、それと同時にまたはそれに続いて投与される、請求項14に記載の使用のための、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
前記抗原が、幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞の投与の少なくとも1、2、3、5もしくは10時間前または少なくとも1、2、3、5もしくは10時間後に投与される、請求項14に記載の使用のための、請求項14に記載の細胞。
【請求項17】
前記幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞が、リンパ器官に投与される、請求項12〜16のいずれか一項に記載の使用のための、請求項12〜16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
前記幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞が、末梢のリンパ器官に投与される、請求項12〜16のいずれか一項に記載の使用のための、請求項12〜16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
前記末梢のリンパ器官が、リンパ節である、請求項18に記載の使用のための、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
前記リンパ節が、腋窩または鼠径部リンパ節である、請求項19に記載の使用のための、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
前記投与が、シリンジによって実施される、請求項12〜20のいずれか一項に記載の使用のための、請求項12〜20のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項22】
放射線装置、超音波装置またはイメージング装置を使用して、注射ニードルの位置をモニタリングする工程をさらに含む、請求項21に記載の使用のための、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
i)幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞集団を含んでなる医薬と、ii)請求項1に記載の方法のための使用説明書とを含むキット。
【請求項24】
リンパ系への幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞の投与による、損傷を受けた組織の治療もしくは修復のための、ならびに/または炎症性障害および/もしくは免疫障害と関連している1種もしくは複数の症状の治療、調節、予防および/もしくは改善のための医薬の製造における幹細胞および/または線維芽細胞の使用。
【請求項25】
前記障害が、セリアック病、関節リウマチ、炎症性腸疾患および多発性硬化症からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記障害が、セリアック病、関節リウマチ、炎症性腸疾患および多発性硬化症からなる群から選択される、請求項12〜22のいずれか一項に記載の使用のための、請求項12〜22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項27】
前記障害が、セリアック病、関節リウマチ、炎症性腸疾患および多発性硬化症からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
リンパ系への投与のための幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞。
【請求項29】
治療において使用するための、請求項28に記載の幹細胞、調節性T細胞または線維芽細胞。
【請求項30】
幹細胞、調節性T細胞および/または線維芽細胞、ならびに抗原を含む、リンパ系への投与のための医薬組成物。
【請求項31】
前記抗原が、コラーゲン、グルテン、グルテン成分、ミエリンまたはミエリン成分である、請求項30に記載の医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532859(P2012−532859A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519080(P2012−519080)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001968
【国際公開番号】WO2011/004264
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512005575)
【Fターム(参考)】