細胞膜に固定された抗凝固性融合タンパク質
【課題】本発明は、(特に、器官拒絶の間の)血液凝固の阻害、特に、遅延型血管拒絶の阻害に関する。
【解決手段】本発明は、細胞膜に固定された抗凝固性タンパク質を提供する。抗凝固機能は、好ましくは、ヘパリン、アンチトロンビン、ヒルジン、TFPI、ダニ抗凝固性ペプチド、またはヘビ毒液因子により提供される。これらの抗凝固性タンパク質は、好ましくは、細胞表面で構成的に発現されることが妨げられる。特に、細胞表面での発現は、細胞活性化に従って(例えば、タンパク質を適切な分泌顆粒に標的化することにより)調節される。これらのタンパク質の発現は、細胞、組織、および器官を、移植後の(例えば、異種移植後の)拒絶に受け難くさせる。
【解決手段】本発明は、細胞膜に固定された抗凝固性タンパク質を提供する。抗凝固機能は、好ましくは、ヘパリン、アンチトロンビン、ヒルジン、TFPI、ダニ抗凝固性ペプチド、またはヘビ毒液因子により提供される。これらの抗凝固性タンパク質は、好ましくは、細胞表面で構成的に発現されることが妨げられる。特に、細胞表面での発現は、細胞活性化に従って(例えば、タンパク質を適切な分泌顆粒に標的化することにより)調節される。これらのタンパク質の発現は、細胞、組織、および器官を、移植後の(例えば、異種移植後の)拒絶に受け難くさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、(特に、器官拒絶の間の)血液凝固の阻害に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
器官移植の外科技術はもう数十年間首尾良く行われており、そしてその成功のためにこの手順は普及しており、そして論証可能に日常的になった。しかし、適切な移植片器官の供給は、絶え間なく増大する需要とつり合うことができない。
【0003】
適切なヒト(すなわち、同種異系)器官の不足のために、近年、ヒト移植片手術において動物(すなわち、異種)器官を使用すること(「異種移植術(xenografting)」または「異種移植(xenotransplantation)」)の可能性は、増大した注目を集めている(例えば、Nature1997;385:285)。ブタは解剖学的および生理学的にヒトに類似し、そして豊富な供
給量があるので、ブタドナー器官は適切な候補物であると考えられる。
【0004】
しかし、異種移植術は、現在、厳しくかつ十分に証明された拒絶の問題により妨げられている。このプロセスは別個の段階に分けられ得、第1の段階は移植の数分以内に起こる。これは超急性応答として知られ、そして異種移植片の内皮細胞(EC)上の外来抗原を認識し、そしてそれと反応する抗体がレシピエントに存在することにより引き起こされる。この認識は、順に、移植片のECの溶解および死を導く補体カスケードを誘発する。
【0005】
次いで、この最初の超急性拒絶は、遅延型血管応答(急性血管拒絶または遅延型異種移植片拒絶としても知られる)により補強される。超急性応答の間のECの溶解および死は、浮腫および外膜細胞(この細胞は、細胞表面上に組織因子(TF)を構成的に発現する)の暴露が伴う。組織因子は、インビボ凝固カスケードの開始に極めて重要であると考えられ、そして血漿へのその暴露は凝固反応を誘発する。トロンビンおよびTNF-αは、損傷組織周囲に局在化するようになり、そしてこれは、ECによるTFのさらなる合成および発現を誘導する。
【0006】
休止ECの周囲の環境は凝固に有利でない。いくつかの天然凝固インヒビター(例えば、組織因子系凝固インヒビター、アンチトロンビンIII、およびトロンボモジュリン)は、ECの細胞外プロテオグリカンと結合している。しかし、異種反応性(xenoreactive)天然
抗体(XNA)による外来組織の認識は、これらの分子の喪失を引き起こす。従って、組織
因子の暴露および誘導と共に、ECの周囲の抗凝固環境は凝固促進性になる。
【0007】
従って、異種移植片の血管化領域は、損傷組織の特徴である血餅部位になる。血流は損なわれ、そして移植された器官は虚血性になる。遅延型血管拒絶のより十分な記述は、Bachら(1996)に見出され得る。
【0008】
従って、移植における異種器官の使用は、最初の超急性拒絶、それに続く長期の血管拒絶、恐らくそれに続くT細胞媒介拒絶により妨げられる。これらの拒絶の原因となる機構の阻害は、異種移植片の使用を容易にし得る。
【0009】
しかし、適切なインヒビターの単純な投与は、特に適切なアプローチというわけではない。レシピエント動物において補体を完全に阻害することは免疫抑制と同等であり、これは、被験体を日和見感染にかかりやすくしておく。同様に、レシピエントにおいて凝固カ
スケードを阻害することは、動物を、制御されない手術後出血になりやすくしておく。従って、インヒビターは、望ましくは、レシピエントにおいて異種移植片部位に局在化されるべきである。
【0010】
超急性拒絶の防止は、欧州特許0495852(Imutran)の主題である。組織を異種移植術により適切にするために、本発明は、組織が、同種補体制限因子(homologouscomplementrestriction factor)(これは、異種器官レシピエントにおいて補体の完全な活性化を防止
する)と結合されるべきということを教示する。
【0011】
このアプローチは、超急性拒絶を生き残るように設計された器官を有するトランスジェニック動物を作製するために開発され、そして適用されている(Squinto,1996)。心臓EC上に、補体レギュレーターであるヒトCD59を発現するトランスジェニックマウスが作製された(Diamond,1995)。ヒトCD59は生物学的活性を保持し、そしてトランスジェニック心臓がヒト血漿を灌流された場合に、補体は阻害された。
【0012】
ヒトDAFおよび/またはCD59を発現するトランスジェニックブタが報告された(McCurry,1996)。心臓拒絶は、トランスジェニック異種移植片を用いて起こるのにコントロールよ
り2倍長くかかった。
【0013】
遅延型血管拒絶を阻害することは同様の注意を受けていなかったが、凝固カスケードのインヒビターは当該分野で周知であり、そして多くが十分に特徴付けられている。
【0014】
例えば、組織因子系凝固インヒビター(TFPI)は、通常、組織因子、第VIIa因子、および第Xa因子の間で形成される活性複合体の機能を阻害することが知られ、TFPIは、その正に荷電したC末端がECのプロテオグリカン層中のヘパリン硫酸に結合する、276残基の可溶
性ポリペプチドである。これは、概念的に、3つの「クニッツ」ドメインに分けられており:クニッツドメインIは、組織因子および第VIIa因子の結合を担い;ドメインIIは、第Xa因子を結合するが;ドメインIIIの機能はあまり明らかではない(Hamamoto,1993)。
【0015】
ダニ抗凝固性ペプチド(TAP)は、第Xa因子の特異的なおよび強力なインヒビターである
。この60アミノ酸ポリペプチドは、ヒメダニOrnithodorosmoubataから精製された。
【0016】
多くのヘビ毒もまた、抗凝固性ポリペプチドを含む。例えば、231アミノ酸プロテイン
Cアクチベーターは、ヘビAgkistrodoncontortrix contortrixの毒液から精製された(McMullen,1989;Kisiel,1987)。
【0017】
ヒルジンは、ヒルの犠牲者から血液を吸う場合にヒルHirudo medicinalisにより利用される抗凝固性タンパク質である。ヒルジンは、非常に強力であり、そしてフェムトモル範囲内の解離定数で1:1比でトロンビンに結合する。トロンビンの活性部位は安定な複合体
ではマスクされ、そのためヒルジンは、フィブリノーゲン分解を防止し、従って血餅形成を阻害する。
【0018】
抗凝固性物質を拒絶部位に局在化させるための1つの可能なアプローチは、ヒルジンをE-セレクチン(これは、細胞活性化の間、ECの表面上に発現される)に対する抗体に連結することである。このアプローチは、インビトロで血餅形成を阻害することに有効であることが示された(Kiely,1995)。他の可能なストラテジーは、最近、Bachら(1996)により概説された。
【0019】
P-セレクチン(CD62としても知られる)もまた、細胞活性化の間、ECの表面上に発現される。合成の間、これは、その細胞質ドメインに存在する配列により血小板および内皮細
胞の分泌貯蔵顆粒に標的化される(Disdier,1992)。細胞アゴニスト(例えば、トロンビン)に応答して、顆粒は急速に再分配され、そしてP-セレクチンは細胞表面上で発現される(Green,1994)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
膜結合型抗凝固性タンパク質を提供することは、本発明の目的である。これらのタンパク質は、ECの表面で凝固カスケードを阻害することに適切であり、従って、器官拒絶を担うインビボ機構を阻害することに適切である。
【0021】
凝固阻害が器官拒絶の状態の間に局所的に生じるように、ECの表面上でのこのような分子の調節された発現を提供することは、さらなる目的である。拒絶は、異種または同種異系であり得る。
【0022】
移植(特に、異種移植)に適切な生物学的組織を提供することは、本発明のなおさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の説明
本発明の第1の局面によれば、タンパク質であって、抗凝固活性を有する領域およびこのタンパク質を細胞膜に固定(anchor)し得る領域を含むタンパク質が提供される。好ましくは、これはキメラタンパク質であり、すなわち、固定領域(anchorregion)と抗凝固性領域とは異なるタンパク質に由来する。
【0024】
抗凝固性領域は、任意の抗凝固性ポリペプチドの配列を含み得る。このような抗凝固性ポリペプチドの例は、ヘパリン、TAP、アンチトロンビン、ヒルジン、およびTFPIを、そ
れらの機能的誘導体(例えば、抗凝固活性を保持するフラグメントおよび誘導体)とともに含む。トロンビンの抗凝固性誘導体(通常、凝固促進物質)もまた報告された(Dang,1997)。
【0025】
好ましくは、抗凝固性領域は、ヒルジンの配列を含む。ヒルジンは、ヒルジン、ヒルジン誘導体、アナログ(「ヒルログ(hirulog)」)、および改変体(例えば、ヒルジシン(hirudisin))を含む。例えば、Tyr-64での硫酸化はヒルジンの抗凝固活性を増大させ、そしてヒルジシン-2は、ヒルジン自体より強力な、トロンビン活性のインヒビターであることが報告された(例えば、Knapp,1992;Skern,1990)。
【0026】
代替として、抗凝固性領域は、組織因子系凝固インヒビター(TFPI)の配列を含み得る。TFPIは、TFPI自体および阻害活性を保持するその誘導体またはアナログを含む。好ましくは、TFPI配列は、TFPI自体のクニッツドメインIおよびIIを含む。
【0027】
さらなる代替として、抗凝固性領域は、ダニ抗凝固性ペプチド(TAP)の配列を含み得る
。TAPは、TAP自体および阻害活性を保持するその誘導体またはアナログを含む。例えば、TAPによるFXa阻害の効力は、部位特異的変異誘発により増強された(例えば、Mao,1995)。
さらなる代替の抗凝固性領域は、例えば、プロテインCアクチベーター(例えば、ヘビ
毒から単離されたもの(例えば、McMullen,1989;Kisiel,1987))の配列、またはプロテインC活性化を介する以外のことで作用するヘビ毒から単離された抗凝固性物質の配列、または抗凝固活性を保持するそれらの誘導体もしくはアナログを含み得る。
【0028】
固定領域は、タンパク質を細胞膜に付着させ得る任意の実体(entity)であり得る。適
切な例は、膜タンパク質およびGPIアンカーに由来する膜貫通配列を含む。好ましくは、
固定領域は、タンパク質を脂質二重層に付着させ得る配列(例えば、HLAクラスIまたはCD4タンパク質の膜貫通領域)である。タンパク質が、通常、上記の膜貫通領域と結合している細胞質ドメイン(例えば、CD4細胞質ドメイン)、および/または細胞膜に隣接して
並べられる細胞外ドメイン(例えば、CD4ドメイン3および4)を含むこともまた望まし
くあり得る。あるいは、固定領域は、タンパク質自体が細胞膜に挿入されることなく、膜タンパク質と細胞外で会合する能力をタンパク質に与える配列であり得る。
【0029】
本発明の第2の局面によれば、タンパク質が細胞表面で構成的に発現するのを防止する標的化配列をさらに含む、第1の局面に従うタンパク質が提供される。
【0030】
好ましくは、標的化配列は、新生(nascent)ポリペプチドを分泌顆粒に標的化し得るポ
リペプチド配列であり、そしてより好ましくは、この分泌顆粒は、細胞が適切に刺激されるまで、細胞原形質膜と融合しない分泌顆粒である。例えば、ヴァイベル-パラーデ体(Weibel-Paladebody)は、内皮細胞表面が分泌促進物質(例えば、トロンビンまたはフィブリン)により刺激されるまで、原形質膜と融合しない(Wagner,1993)。好ましくは、分
泌顆粒は、器官拒絶の間に起こるEC活性化の間に原形質膜と融合する。
【0031】
従って、標的化配列は、好ましくは、新生ポリペプチドをヴァイベル-パラーデ体に標
的化する標的化配列(例えば、P-セレクチンに由来する関連配列)である。最も好ましくは、本発明の第2の局面に従うタンパク質は、抗凝固性配列ならびにP-セレクチンの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。従って、P-セレクチンに由来するドメインは、固定配列および標的化配列の両方を提供する。
【0032】
本発明の第3の局面によれば、本発明に従うタンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。
【0033】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、本発明に従うタンパク質の発現の調節に適切な配列を含む。好ましくは、この発現は制御され得る(例えば、細胞特異的制御、誘導性制御、または一時的制御)。例えば、発現はECに特異的であり得るか、または細胞活性化に応答して調節され得る。
【0034】
本発明の第4の局面によれば、第3の局面に従うポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0035】
用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に移し得る分子を意味する。好ましくは、ベクターはDNAベクターであり、より好ましくは、本発明に従うタンパク質をコー
ドするRNAを発現し得る。非常に多くの適切なベクターが当該分野で公知である。
【0036】
好ましくは、ベクターは、トランスジェニック動物の作製に適切である。トランスジェニックブタの作製に適切なベクターは、例えば、Heckl-Ostreicher(1995)、McCurry(1996)、White(1995)、Yannoutsos(1995)、およびLangford(1996)に記載される。トランスジェニックマウスの作製に適切なミニ遺伝子ベクターは、Diamond(1995)に記載される。
【0037】
本発明の第5の局面によれば、第1、第2、第3、または第4の局面の分子を含む送達系、および上記の分子を標的細胞に送達するための手段が提供される。
【0038】
第4の局面に従う特定のベクターはまた、適切な送達系として機能し得る。同様に、この第5の局面に従う特定の送達系はまた、本質的にベクターであり得るが、必ずしもそうとは限らない。例えば、ウイルスベクターは送達系としても機能し得るが、リポソーム送
達系はベクターではない。
【0039】
送達系は、ウイルス性または非ウイルス性であり得る。非ウイルス性の系(例えば、リポソーム)は、ウイルスに基づく系に関係する困難のうちのいくつか(例えば、調整される(scaled)生成の出費、不十分な発現持続、および安全性についての懸念)を避ける。好ましくは、送達系は、遺伝子治療における使用に適切である。非常に多くの適切な送達系が当該分野で公知である。
【0040】
好ましくは、送達系は、本発明に従う分子が、移植に適切な細胞または移植された細胞により取り込まれるように標的化される。より好ましくは、送達系は、これらの細胞に特異的である。例えば、送達系は、特定の器官(例えば、心臓もしくは腎臓)または特定の細胞型(例えば、内皮細胞)に標的化され得る。
【0041】
これを達成するために、送達系は、例えば、標的細胞に見出されるレセプターに標的化される、レセプター媒介送達系であり得る。例えば、送達系は、心臓細胞に見出されるレセプターに、好ましくは、心臓細胞にだけ見出されるレセプターに標的化され得るか、あるいは送達系は、内皮細胞に見出されるレセプターに、好ましくは、内皮細胞にだけ見出されるレセプターに、または活性化内皮細胞に見出されるレセプター(例えば、E-セレクチンもしくはP-セレクチン)に標的化され得る。
【0042】
好ましくは、送達系は、トランスジェニック動物の作製に適切である。例えば、送達系は、配偶子、接合子、または胚性幹細胞に標的化され得る。
【0043】
本発明の第6の局面によれば、細胞を本発明に従うベクターでトランスフェクトする方法が提供される。これは、本発明に従う送達系の使用を含み得る。
【0044】
細胞型は制限されず、そして原核生物または真核生物であり得る。トランスフェクションは、インビボまたはエクスビボで起こり得る。
【0045】
細胞が移植使用のためである場合、細胞は、好ましくは真核生物であり、より好ましくは内皮細胞である。ブタ内皮細胞の安定なトランスフェクションは、例えば、Heckl-Ostreicher(1995)に記載される。
【0046】
好ましくは、細胞は、トランスジェニック動物の作製に適切である。より好ましくは、細胞は、配偶子、接合子、または胚性幹細胞である。トランスジェニックマウスを作製するための、マイクロインジェクションによるマウス卵子のトランスフェクションは、例えば、Diamond(1995)に記載され、そして例えば、トランスジェニックブタを作製するため
の、ブタ接合子のマイクロインジェクションは、Yannoutsos(1995)、Langford(1996)、およびWhite(1995)に記載される。
【0047】
本発明の第7の局面によれば、第6の局面に従ってトランスフェクションされた細胞が提供される。
【0048】
凝固カスケードの阻害効力を増大させるために、細胞は、好ましくは、2つ以上の異なる本発明に従うタンパク質を発現し得、これらのタンパク質の各々は、異なる段階で凝固カスケードを阻害する。例えば、一方のタンパク質における抗凝固性領域はTFPIを含み得、一方、他方のタンパク質における抗凝固性領域はヒルジンを含む。
【0049】
本発明の第8の局面によれば、本発明に従う細胞を含む生物学的組織が提供される。本明細書中で使用する用語「生物学的組織」は、細胞、組織、および器官の集合を含む。従
って、この定義は、例えば、線維芽細胞、角膜、神経組織、心臓、肝臓、または腎臓を含む。
【0050】
本発明の第9の局面によれば、本発明に従う細胞および/または生物学的組織を含む動物が提供される。好ましくは、動物は、ヒトへの移植のための器官の作製に適する。好ましくは、動物は哺乳動物であり、そしてより好ましくは、トランスジェニックブタまたはトランスジェニックヒツジである。
【0051】
動物は処置され得るが、一方、動物がトランスジェニックな生物学的組織を含むように、生きたままであり得る(すなわち、遺伝子治療により処置される)。好ましくは、生きている動物が、トランスジェニック動物を作製するために、本発明に従うベクターでトランスフェクトされる。例えば、本発明に従うベクターは、異種移植に適切なトランスジェニック器官を作製するために、ブタの内皮細胞に特異的に送達され得る。
【0052】
あるいは、動物は、トランスジェニック動物として生まれ得る。このようなトランスジェニック動物を作製するための種々の適切なアプローチは、当該分野で公知である(例えば、BradleyおよびLiu,1996;Clarke,1996;Wheeler,1994)。例えば、DNAのマイクロイ
ンジェクションによる、接合子または初期胚の直接操作は、多能性細胞(例えば、胚性幹細胞)のインビトロ操作と同様に周知である。初期胚のレトロウイルス感染は、ある範囲の種において成功することが証明され、そして透明帯のない(zona-free)卵のアデノウイ
ルス感染が報告された。核移入によるヒツジのトランスジェノシス(transgenesis)およびクローニングもまた記載された(例えば、WO97/07668)。
【0053】
本発明の第10の局面によれば、生物学的組織を移植に適切にする方法が提供され、この方法は、1つ以上の本発明に従うタンパク質を上記の生物学的組織において(好ましくは、その内皮細胞において)発現させる工程を含む。生物学的組織は、インビボまたはエクスビボのいずれかでそのようにされ得る。例えば、動物器官は、インビボで、本発明に従うベクターでトランスフェクトされ得るか、または器官は、移植前にエクスビボでもしくは移植後にインビボでトランスフェクトされ得る。
【0054】
本発明の第11の局面によれば、移植方法が提供され、この方法は、ドナー動物に由来する本発明に従う生物学的組織をレシピエント動物に移植する工程を含む。好ましくは、この方法は異種移植のためであり、そしてドナー生物学的組織は、レシピエント動物に関して異種である。本発明は以下をも提供する。
1.タンパク質であって、抗凝固活性を有する領域、該タンパク質を細胞の膜に固定し得る領域、および該タンパク質が該細胞の表面で構成的に発現されるのを防止する標的化配列を含む、タンパク質。
2.前記抗凝固性領域が、ヒルジン、組織因子系凝固インヒビター、ダニ抗凝固性ペプチド、またはプロテインCアクチベーターの配列を含む、項目1に記載のタンパク質。
3.前記固定領域が、前記タンパク質を脂質二重層に付着させ得る配列である、項目1または項目2に記載のタンパク質。
4.前記固定領域が、膜タンパク質に由来する膜貫通配列を含む、項目3に記載のタンパク質。
5.前記標的化配列が、新生ポリペプチドを分泌顆粒に標的化し得る配列である、項目1または項目2に記載のタンパク質。
6.前記分泌顆粒は、前記細胞が適切に刺激されるまで該細胞の原形質膜と融合しない、項目5に記載のタンパク質。
7.前記分泌顆粒がヴァイベル-パラーデ体である、項目6に記載のタンパク質。
8.前記標的化配列がP-セレクチンの細胞質ドメインである、項目7に記載のタンパク質。
9.前記固定配列がP-セレクチンの配列である、項目1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質。
10.項目1〜9のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
11.項目10に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
12.項目1から9のいずれか1項に記載のタンパク質、項目10に記載のポリヌクレオチド、または項目11に記載のベクターを含む、送達系。
13.細胞を項目11に記載のベクターでトランスフェクトする、方法。
14.項目13に従ってトランスフェクトされた、細胞。
15.項目14に記載の細胞を含む、生物学的組織。
16.項目15に記載の生物学的組織および/または項目14に記載の細胞を含む、動物。
17.前記動物がトランスジェニックブタまたはヒツジである、項目16に記載の動物。18.組織または器官を移植に適切にする方法であって、項目1または9のいずれか1項に記載のタンパク質を、前記組織または器官における内皮細胞上で発現させる工程を包含する、方法。
19.ドナー動物に由来する項目15に記載の生物学的組織をレシピエント動物に移植する工程を包含する、移植方法。
20.タンパク質であって、抗凝固活性を有する領域および該タンパク質を細胞の膜に固定し得る領域を含み、該抗凝固性領域が、ヒルジン、組織因子系凝固インヒビター、ダニ抗凝固性ペプチド、またはプロテインCアクチベーターの配列を含む、タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明に従う、ヒルジン-CD4キメラタンパク質および構築物のマップを示す。(A)グリシンリンカーを有するHLA-ヒルジン-CD4構築物。(B)ヒトP-セレクチンC末端を有するHLA-ヒルジン-CD4構築物(特異的標的化配列に下線を引いた)。CD4の膜貫通(TM)領域、膜透過停止(ST)領域、および細胞質(C)領域を示す。
【図2】図2は、DAP.3線維芽細胞において発現されたHLA-ヒルジン-CD4構築物のFACSプロフィールを示す。
【図3】図3は、CHO-K1において発現されたHLA-ヒルジン-CD4-P-セレクチンcDNA構築物のFACSプロフィールを示す。
【図4】図4は、ヒルジン-CD4発現線維芽細胞がトロンビンを結合することを示す。
【図5】図5は、ヒルジン-CD4発現細胞へのトロンビン結合の特異性を示す。
【図6】図6は、HLA-ヒルジン構築物でトランスフェクトされたCHO-K1細胞へのトロンビン結合を示す。
【図7】図7は、トロンビンの不活化が、細胞表面でのヒルジン-CD4へのトロンビン結合を完全に破壊することを示す。ヒルジン-G2-CD4発現細胞を、トロンビンまたは不活化トロンビンとともにインキュベートし、そして抗プロトロンビン抗体または抗トロンビン-ヒルジン抗体を用いてトロンビン結合について染色した。
【図8】図8は、本発明に従う、TFPI-CD4キメラタンパク質および構築物のマップを示す。
【図9】図9は、細胞表面につなぎ止められたTFPIを発現するDAP.3細胞のフローサイトメトリープロフィールを示す。
【図10】図10は、細胞表面に結合したTFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4への特異的FXa結合を示す。
【図11】図11は、ポリクローナル抗TFPI免疫グロブリン画分によるFXa結合のブロッキングを示す。
【図12】図12は、クニッツドメインIおよびIIに対して指向されたモノクローナル抗体によるFXa結合のブロッキングを示す。
【図13】図13は、TFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4を発現する細胞によるFXa阻害を示す。FXaとともにインキュベートされたトランスフェクトDAP.3細胞について、FXa特異的色素形成性基質がOD405=0.1に達する平均時間が示される。コントロール細胞についての値が引かれ、そして誤差棒は標準偏差を示す。
【図14】図14は、活性TF1-219/FVIIa複合体が、TFPI-CD4キメラタンパク質への最大結合に必要とされることを示す。
【図15】図15は、ヒルジン-CD4を発現する不死化ブタ内皮細胞(IPEC)へのトロンビン結合の特異性を示し、そして凝固時間に対する細胞表面ヒルジン-CD4発現の効果も示す。
【図15C】図15は、ヒルジン-CD4を発現する不死化ブタ内皮細胞(IPEC)へのトロンビン結合の特異性を示し、そして凝固時間に対する細胞表面ヒルジン-CD4発現の効果も示す。
【図16】図16は、蛍光により示される場合の、D16/16細胞におけるACTHおよびヒルジンの分布を示す。
【図16D】図16は、蛍光により示される場合の、D16/16細胞におけるACTHおよびヒルジンの分布を示す。
【図17】図17は、PMA刺激後のヒルジン-CD4-P-セレクチン細胞分布の変化を示す。
【図17B】図17は、PMA刺激後のヒルジン-CD4-P-セレクチン細胞分布の変化を示す。
【図17C】図17は、PMA刺激後のヒルジン-CD4-P-セレクチン細胞分布の変化を示す。
【図18】図18は、IPEC上で発現されたTFPI-CD4がその結合特性を保持することを示す。
【図18B】図18は、IPEC上で発現されたTFPI-CD4がその結合特性を保持することを示す。
【図19】図19は、ブタおよびヒトの組織因子の競合結合を示す。
【図20】図20は、TFPI-CD4が、IPEC表面上で発現された場合に凝固時間を延長することを示す。
【図21】図21は、TFPI-CD4およびヒルジン-CD4の同時発現の抗凝固効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実施態様の説明
1.HLAクラスIシグナルペプチドと融合され、そしてヒトCD4のドメイン3およびドメイン4に連結されたヒルジンは、細胞膜につなぎ止められる。
【0057】
哺乳動物細胞において異種ヒルジン構築物を発現するために、ヒトHLAクラスI A2.1、アミノ酸−1〜−24に由来する膜標的化シグナルペプチドリーダー配列のcDNA(Holmes,1987)を、重複伸長を用いたPCRを使用してヒルジン改変体1(Dodt,1984)に融合した(
図1)。
【0058】
HLA A2.1リーダー配列を、以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-cagtgtcgacggatccatggccgtcatggcgccccga-3’[hla-1] <配列番号1>
(SalI制限部位およびBamHI制限部位を導入する)および:
5’-gtcagtgtaaacaaccgcccaggtctgggtcagg-3’ <配列番号2>
ヒルジン配列を以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-acccagacctgggcggttgtttacactgactgcacc-3’および <配列番号3>
5’-gacgctgcagaattcttgcaggtattcttccgggatt-3’[hir-3] <配列番号4>
(遠位のEcoRI部位およびPstI部位を導入する)
得られたPCR産物(108および228bp)をアガロースゲル電気泳動により精製し、次いで、
隣接プライマーhla-1およびhir-3を用いて第3のPCRにおいて使用した。得られたPCR産物(300bp)をSalIおよびBamHIで消化し、そしてpBluescriptSK(+)(Stratagene)にサブクローニングした。
【0059】
CD4の膜透過停止配列(ST)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン(CD4166-435)と共
に、CD4のドメイン3およびドメイン4(Maddon,1985)をコードするcDNAからなるアンカーを、HLA-ヒルジンカセットに付加した。
【0060】
しかし、ヒルジンC末端をCD4アンカーに連結した場合に、ヒルジンが可動性のままで
あり、そして活性のままであることを確実にするために、3つの異なるグリシンリンカー長を作った(G1〜G3と呼ぶ−図1A):
−グリシンリンカー1(G1;GGSGG)について、オリゴヌクレオチド対は、5’-aattaggaggttctggaggctgca-3’<配列番号5>(変異EcoRI認識配列およびPstI部位を含む)および5’-gcctccagaacctcct-3’<配列番号6>からなっていた;
−グリシンリンカー2(G2)およびグリシンリンカー3(G3)は、それぞれ、2または3回反復するコア配列(GGSGG)からなっていた。
【0061】
これらのリンカーを、HLA-ヒルジンフラグメントの3’末端に導入した。
【0062】
グリシンリンカーオリゴヌクレオチドをアニールし、そして各々を、CD4アンカー挿入
前に、HLA-ヒルジンカセットを含むプラスミドのEcoRI/PstI部位に連結した。
【0063】
CD4166-435を以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-tgtctgcaggaaccagaagaaggtggaattca-3’ <配列番号7>
(PstI部位およびEcoRI部位を導入する)および:
5’-gtgggatccgcctggcctcgtgcctcaa-3’ <配列番号8>
(遠位BamHIを含む)。
【0064】
得られたPCR産物をpBluescriptにクローニングし、そして配列決定した。CD4166-435において、V328は、A328に変異したことが見出された。PstI/BamHICD4フラグメントを、HLA-ヒルジン-G1、HLA-ヒルジン-G2、およびHLA-ヒルジン-G3プラスミドにサブクローニングし、そしてこれらの構築物をDNA配列分析により確認した。
【0065】
3つのcDNA構築物の各々を、哺乳動物発現ベクターpHβActpr-1gpt(Gunning,1987)(ヒトβ-アクチンエンハンサーおよびプロモーター領域を、ミコフェノール酸の存在下での
クローン選択を可能にするSV40エンハンサーエレメント駆動gpt耐性遺伝子と共に含む)
のBamHI部位にサブクローニングした(図1Cおよび1D)。最終構築物の方向を、制限エン
ドヌクレアーゼマッピングにより確認した。
【0066】
個々のHLA-ヒルジン-G1/2/3-CD4構築物を含むベクターを、標準的なプロトコルに従っ
てリン酸カルシウムを用いて、マウス線維芽細胞株DAP.3(Marguelies,1983)にトランスフェクトした。5%ウシ胎児血清、アンピシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミンを補充したDMEM培地(Gibco)中での18時間の増殖後、細胞を30秒間グリセロール処理した
。次いで、細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、そしてキサンチン、ヒ
ポキサンチン、およびミコフェノール酸を最終濃度12μg/mlまで含む新しい培地を添加した。
【0067】
ネガティブコントロールとして、HLA-DRを発現するヒトクラスII構築物でトランスフェクトされたDAP.3細胞(細胞株531)(Lechler,1988)を、同一のミコフェノール酸含有培養培地中で増殖させた。
【0068】
生き残ったクローンを、それぞれ、マウスモノクローナル抗体4158-81-7(Schlaeppi,1991)およびOKT-4(Reinherz,1979)を用いて、FACSによりヒルジンおよびCD4発現について試験した。105個の細胞を、マウス抗体を用いて氷上で30分間染色し、そしてFITC結合ヒツ
ジ抗マウスポリクローナル抗体を2次層(layer)として添加した。
【0069】
図2に示すように、これらのヒルジン-CD4構築物は、DAP.3の細胞表面でよく発現され
た。3つの異なるグリシンリンカー長を有するヒルジン-CD4間で、発現レベルの有意な相
違は検出されなかった。
【0070】
従って、抗凝固性ポリペプチドは、細胞表面上で安定に発現され得る。
【0071】
2.P-セレクチンのC末端に由来する標的化配列を有するヒルジン-CD4は、CHO-K1細胞表面で発現される。
【0072】
HLA-ヒルジン-G1/2/3-CD4構築物に加えて、もう2つの構築物を、ヒトP-セレクチンに
由来する標的化配列を用いて合成した(図1B)。CD4に由来する膜貫通領域をこれらの構
築物のために使用したが、一方、膜透過停止配列およびC末端を、P-セレクチンに由来する対応する配列(Johnston,1989)で置換した。
【0073】
CD4のドメイン3およびドメイン4+膜貫通領域(CD4166-395)とヒトP-セレクチンの膜
透過停止配列および細胞質領域1および細胞質領域2(P-sel754-789)(McEver1989)とを融合するために、重複伸長を用いるPCRを行った。分子のCD4部分の増幅のために、以下のプライマー:
5’-tgtctgcaggaaccagaagaaggtggaattca-3’[CD4-5] <配列番号7>
(PstI制限部位およびEcoRI制限部位を導入する)および:
5’-gtctgaaacgctttctgaagaagatgcctagcccaatgaaaagcaggaggccg-3’
<配列番号9>
を使用した。並行して、P-セレクチンのC末端領域を増幅するために、以下のプライマー:
5’-tgggctaggcatcttcttcagaaagcgtttcagacaaaaaga-3’および <配列番号10>
5’-gaccaggatccggacaggtctctta-3’[P-selN3] <配列番号11>
(遠位BamHI部位を導入する)を使用した。
【0074】
アガロースゲルからの得られたPCR産物の精製後、第3のPCRを、隣接プライマーCD4-5
およびP-selN3を用いて行った。得られたPCR産物(832bp)を、PstIおよびBamHIで消化し、pBluescriptにサブクローニングし、そして配列決定した。その後、CD4-P-selフラグメント(CD4166-395-P-sel754-789)をPstI/BamHIで切り出し、そしてHLA-ヒルジン-G1またはHLA-ヒルジン-G2を含むプラスミドにサブクローニングした。
【0075】
最終HLA-ヒルジン-G1/G2-CD4-P-セレクチン構築物を、pHβActpr-1gptのBamHI部位にサブクローニングし、そしてCHO-K1細胞(ATCCCCL61)にトランスフェクトし、5%ウシ胎児
血清、アンピシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミンを補充したRPMI 1640培地(Gibco)中で増殖させた。
【0076】
トランスフェクションは、標準的なプロトコルに従ったエレクトロポレーションによった。簡単には、5×106個の細胞を350μlの無血清培地に再懸濁し、そして電極間で0.4cmの空間を有する1mlエレクトロポレーションキュベット(Bio-Rad)に移した。150μl中10
μgのプラスミドDNAの添加後、サンプルを穏やかに振盪し、そして氷上で保持した。細胞を、GenePulser装置(Bio-Rad)において、無限抵抗(infiniteresistance)、960μF、および350Vでエレクトロポレーションに供した。エレクトロポレーションの次の日、細胞をPBSで2回洗浄し、そしてミコフェノール酸、キサンチン、およびヒポキサンチンを含む新しい培地を添加した。
【0077】
最近、CHO-K1細胞をP-セレクチンcDNAでトランスフェクトした場合に、P-セレクチンタンパク質は細胞内に蓄積されないが、細胞表面で発現されることが示された(Disdier,1992)。上記で生成されたCHO-K1トランスフェクタントにおいて、ヒルジン-G1-CD4-P-セレクチンおよびヒルジン-G2-CD4-P-セレクチンの両方は、OKT-4および4158-81-7モノクロー
ナルを用いた染色により判断されるように表面で発現された(図3)。使用されたネガティブコントロールは、同じミコフェノール酸含有培地中で増殖された、CD4のドメイン3
およびドメイン4に融合されたTFPI(TFPI-CD4166-435)を発現するCHO-K1細胞株であった
。
【0078】
ポジティブコントロールとして、CHO-K1細胞を、完全長ヒトP-セレクチン(Johnston,1989)でトランスフェクトし、これを3142bpのSalIフラグメントとして、SV40駆動ネオマイ
シン(G418)耐性遺伝子を含む、pHβActpr-1neoにサブクローニングした。これらの細胞を400μg/mlG418で処理し、そして2週間後、個々のクローンを綿棒で拾い、そして12ウェ
ルプレートに移した。生き残ったクローンを、10μg/mlの4158-81-7および未希釈OKT-4ハイブリドーマ上清を用いてヒルジンおよびCD4発現について分析した。
【0079】
ヒトP-セレクチンを、製造者の推奨に従って抗CD62mAb(BectonDickinson)により検出
した。ヒルジン-CD4-P-セレクチンを用いたのと同様のFACSプロフィールが、これらのCD62標識細胞について観察され(図3E)、CHO-K1細胞が原形質膜でP-セレクチンを発現する
ことを確認した。
【0080】
従って、P-セレクチン標的化配列を含むキメラタンパク質は、細胞表面で発現された場合、機能的なままである。
【0081】
3.細胞表面に固定されたヒルジンは、特異的抗体で検出されるようにトロンビンを結合する。
【0082】
この方法で細胞表面につなぎ止められたヒルジンがそのトロンビン結合活性を保持するか否かを試験するために、以下の結合アッセイを使用した。
【0083】
安定にトランスフェクトされた細胞を、各実験前に、T75培養フラスコ中で36時間増殖
させた。DAP.3細胞を細胞スクレイパーを用いて剥離したが、一方CHO-K1細胞を、PBS、5mMEDTAを用いた37℃で10分間の処理によりプラスチックから剥離した。0.1%BSA(w/v)
を含むPBSでの4回の洗浄後、150μl中の2.5×105個の細胞を、漸増濃度のトロンビンと
ともに37℃で1時間インキュベートした。細胞を、0.1%BSAを含むPBSで4回洗浄し、そ
してウサギ抗ヒトプロトロンビン免疫グロブリン(100μl中10μg/ml)(Dakopatts)と氷上
で30分間さらにインキュベートした。さらに2回の洗浄後、細胞を、FITC結合ブタ抗ウサギ免疫グロブリン(Dakopatts)と30分間インキュベートした。最後に、トランスフェクタ
ントを3回洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
【0084】
図4に示すように、細胞表面で発現されたヒルジンは、トロンビンを結合する能力を保持し、そしてグリシンリンカー長は、トロンビン結合に影響を及ぼさなかった。
【0085】
ヒルジン-CD4発現細胞を飽和させるために必要とされるトロンビンの量を評価するために、2つのクローンを、82U/mlまでのトロンビンとともにインキュベートした。ポジティブ細胞の百分率を分析した場合、トランスフェクタントは、41U/mlトロンビンで飽和した(図4C)。しかし、平均蛍光強度(mfi)によれば、細胞は、82U/mlでさえも飽和しなかっ
た(図4D)。これらの高い実験トロンビン濃度で、HLA-DAを発現するコントロール細胞へのバックグラウンド結合は著しく増大した。
【0086】
ヒルジン-CD4へのトロンビン結合の特異性を明らかにするために、さらに、ブロッキング実験を行った。DAP.3HLA-ヒルジン-G3-CD4トランスフェクタントを、10μg/ml抗ヒルジンmAbと氷上で30分間、または適切なコントロール(マウスIgG1およびIgG2a、Dakopatts)と氷上で30分間プレインキュベートし、そして上記のようにトロンビンと37℃で1時間
インキュベートする前に、0.1%BSAを含むPBSで2回洗浄した。トロンビン結合を上記の
ように分析した。
【0087】
4158-81-7とのプレインキュベーションは、ヒルジン-CD4への特異的トロンビン結合を
阻害した(図5A)。ヒルジン-CD4によるトロンビン結合は、トロンビンとのインキュベーション、ならびにmAb4107-76-1(Schlaeppi,1991)および抗プロトロンビン免疫グロブリンを用いて標識を比較することにより証明された。4107-76-1は、ヒルジン-トロンビン複合体に対して指向され、そしてトロンビンを伴わないヒルジンも内因性トロンビンレセプターに結合したトロンビンも検出しない。図5Bに示すように、4107-76-1を用いて検出され
たトロンビン結合は、抗プロトロンビン免疫グロブリン画分を用いて観察された結合と似ていた。
【0088】
従って、DAP.3細胞表面上で発現されたヒルジンは、特異的なトロンビン結合を保持す
る。
【0089】
不死化ブタ上皮細胞(IPEC)を、同じ方法でヒルジン-CD4を用いてトランスフェクトした。図15Aに示すように、トランスフェクトされた細胞のみがトロンビンを結合し、これは
、用量依存様式で4158-81-7によりブロックされた(図15B)。ヒト血漿カルシウム再添加試験系を、IPEC上で表面につなぎ止められたヒルジンの発現の機能的効果のさらなる調査に使用した。図15Cに示すように、トランスフェクトしていないIPECは、細胞非存在下で
の370秒のコントロール凝固時間と比較して、カルシウム再添加血漿の凝固時間を約170秒まで短くした。TF発現を誘導するIL-1とのプレインキュベーションは、凝固時間を100秒
未満までさらに減らした。対照的に、トランスフェクトされたIPECについての凝固時間は、IL-1誘導TF発現物とのプレインキュベーション後でさえも延長された。4158-81-7との
インキュベーションは、用量依存様式で抗凝固効果を減らし、これは、この効果が細胞表面ヒルジンの存在によるものであったことを示した(図15D)。
【0090】
従って、IPECの表面上で発現されたヒルジンはトロンビンを結合し、そしてまたヒト血漿の凝固を阻害する。
【0091】
4.CHO-K1細胞により発現されたヒルジン-CD4-P-セレクチンはトロンビンを結合する
。
【0092】
ヒルジン-CD4-P-セレクチンもまた、CHO-K1細胞の表面で発現された場合にトロンビン
を結合するか否かを調べるために、これらの細胞を、トロンビンとともに37℃で1時間インキュベートした。抗プロトロンビン免疫グロブリンを用いた染色および第2のFITC標識抗体層の添加の後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。
【0093】
図6Aに示すように、別個の結合プロフィールを検出した。抗プロトロンビン免疫グロブリンを用いた場合、CD4に連結した無関係のタンパク質を発現するCHO-K1細胞へのバック
グラウンドトロンビン結合は、かなり低い濃度のトロンビンとのインキュベーション後に検出可能であった。しかし、ヒルジンへの特異的トロンビン結合は、特異的抗ヒルジン/トロンビンmAb4107-76-1を用いた染色により確認された(図6B)。この抗体を用いて、コントロールCHO-K1細胞によるバックグラウンド結合は、検出不可能であった。ヒルジンを発現するクローンが、トロンビンを異なる程度で非特異的に結合するようであったこと(これは、クローンが、異なる発現レベルの内因性トロンビンレセプターを有したことを意味する)は、図6から明らかである。非特異的結合のこの変化は、いくつかの他のクローンで確認された。
【0094】
比較のために、ヒルジン-G1-CD4およびヒルジン-G2-CD4(すなわち、P-セレクチン配列
なし)を発現する2つのCHO-K1トランスフェクタントからの結果を、図6Cおよび6Dに示す。より多く発現されたキメラタンパク質(より高いmfi)に起因してわずかに増大したト
ロンビン結合を除いて、CD4-P-セレクチンアンカーに連結されたヒルジンを発現するトランスフェクタントと比較して、結合プロフィールの主な相違は検出されなかった。
【0095】
5.ヒルジン-CD4-P-セレクチンは分泌顆粒に貯蔵され、そして活性化の際に放出され
得る。
【0096】
ヒルジンの細胞内蓄積および分泌顆粒から細胞表面へのその経路を調べるために、分泌マウス下垂体細胞株(D16/16)を、ヒルジン-CD4-P-セレクチンまたはヒルジン-CD4のいず
れかをコードするcDNAで一過的にトランスフェクトした。この細胞株を2つの理由から選択した。第1に、これらの細胞は特定の貯蔵顆粒においてACTHを発現することが知られ、ACTHは、ホルボールエステルでの活性化の際に細胞表面で放出される。第2に、内皮細胞(これは、P-セレクチン構築物の細胞内標的化を調べるための理想的な細胞型であるようである)は、インビトロ培養の間にそれらのヴァイベル-パラーデ貯蔵顆粒を急速に失う
。
【0097】
トランスフェクションの48時間後、D16/16細胞を、ヒルジンおよびACTHに対する抗体を用いて染色した。ヒルジン-CD4-P-セレクチンでトランスフェクトされた細胞において、
ヒルジンは、細胞質中に均質に分布した顆粒において検出された(図16A)。顆粒分布の
同じパターンはACTH特異的染色で見られ、これは、ヒルジンと同じ位置に局在化することを意味する(図16B)。これは、両方の抗体が染色に使用された場合に確認された(図16C)。
【0098】
対照的に、ヒルジン-CD4でトランスフェクトされたD16/16細胞は、ヒルジンを細胞内顆粒に蓄積しなかったが、細胞表面で高レベルのヒルジンを発現した(図16D)。二重染色
(図16F)は、ヒルジンおよびACTHがわずかな同じ位置に局在化することしか示さなかっ
た。
【0099】
ヒルジン-CD4-P-セレクチンを発現する細胞を、ホルボールエステルPMAで活性化し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。4158-81-7は、非刺激細胞の細胞表面でいず
れのヒルジンも検出しなかった(図17A)。しかし、PMA刺激の30分後、ヒルジンは細胞表面で検出された(図17B)。さらに、活性化D16/16細胞は、非活性化細胞とは異なりトロ
ンビンに特異的に結合した(図17C−4107-76-1で染色)。
【0100】
従って、顆粒を含む下垂体細胞株D16/16を使用することにより、ヒルジン-CD4-P-セレ
クチンが、特定の細胞内貯蔵顆粒に標的化され得ること、および機能的なキメラ分子は、活性化の際に放出され、そして細胞表面で暴露され得ることが明らかに証明された。
【0101】
6.トロンビンとヒルジン-CD4との間の相互作用は、トロンビンの触媒部位が不活化された場合に破壊される。
【0102】
P-セレクチン標的化配列を伴うおよび伴わないヒルジン-CD4への特異的トロンビン結合は明らかであった(図4および6)。トロンビン−ヒルジン相互作用の特異性をさらに強化するために、トロンビン(50μlTris緩衝化生理食塩水(TBS)、0.1%BSA、pH7.4中で210nmol)を、以下のいずれかと37℃で1時間プレインキュベートした:
−10倍モル過剰のネイティブな完全長ヒルジン(Biopharm);
−100倍モル過剰のD-Phe-Pro-Argクロロメチルケトンジヒドロクロリド(「PPACK-HCl」)(Calbiochem);または
−100倍モル過剰の、スルファト-Tyr64を有するヒルジン残基53-64を含む合成C末端ヒル
ジンドデカペプチドアナログ(AmericanDiagnostica)。
【0103】
トロンビン依存性触媒活性を、小さな色素形成性オリゴペプチド基質(H-D-Phe-Pip-Arg-pNA・2HCl(「S-2238」)(Quadratech))を用いて分析した。
【0104】
トロンビンがPPACK-HClおよびヒルジンにより不活化されたか否か確かめるために、5
μlの各反応混合物を95mlTBS、0.1%BSAで希釈し、そして50μlの4mMS-2238と37℃で10分間インキュベートした。
【0105】
予想されたように、色素形成性変換は、インヒビターなしでインキュベートされたトロンビンと比較して、PPACK-HClまたはヒルジンとともにインキュベートされたトロンビン
で観察されず、一方、ドデカペプチドは、S-2238切断により測定された場合、トロンビン依存性触媒活性に影響を及ぼさなかった。
【0106】
3つの異なる調製物を、細胞表面につなぎ止められたヒルジンを発現するトランスフェクタントに添加した。上記の手順を使用して、トロンビン結合を、抗プロトロンビン抗体または抗ヒルジン-トロンビン抗体を用いて調べた。図7Aに見られ得るように、ヒルジン
またはPPACK-HClで不活化されたトロンビンは、DAP.3の細胞表面で発現されたヒルジンにより結合されない。さらに、部分的なトロンビン-ドデカペプチド複合体結合しか観察さ
れなかった。DAP.3トランスフェクタントとは対照的に、CHO-K1細胞は、比較的高いトロ
ンビン-PPACK-HCl結合を示した(図7B)。この相互作用は、抗ヒルジン-トロンビンmAb4107-76-1で例示されるように非特異的であることが見出された。特異的トロンビン-PPACK-HCl-ヒルジン結合は検出されなかった。
【0107】
これは、細胞表面につなぎ止められたヒルジンが、その触媒部位でトロンビンを特異的および強力に結合することを確証する。
【0108】
7.CD4ドメインに固定された完全長TFPIおよび短縮型TFPIは、細胞表面で発現される
。
【0109】
TFPIを細胞膜につなぎ止めるために、融合タンパク質は、3つ全てのクニッツドメインを含む完全長TFPI(TFPI1-276)、またはクニッツドメインIIIおよびC末端を欠く短縮形態のTFPI(TFPI1-183)(Wun,1988)のいずれかに連結されたヒトCD4166-435からなる(図
8)。これらを、ヒルジンについて上記に記載された方法と同様の方法で合成し、TFPIおよびCD4配列をカセットクローニングストラテジーを用いて融合したが、ヒルジンとは異
なり、TFPIは哺乳動物タンパク質であり、従って内在性シグナルペプチドを含む。
【0110】
クニッツドメインIおよびクニッツドメインIIを含むTFPIのN末端部分をコードするDNA(675bp)を、以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-catcgtcgacggatcctagatgatttacacaatgaagaaagtacatgcactttgggc-3’
<配列番号12>
(SalI制限部位およびBamHI制限部位を導入する);および
5’-ggacctgcagaattcaaaaaggctgg-3’ <配列番号13>
(EcoRI部位およびPstI部位を含む)。
【0111】
TFPIのC末端と共に第3のクニッツドメインをコードするDNA(315bp)を、以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-agcctttttgaattccacggtccctcat-3’ <配列番号14>
(EcoRI部位を有する);および
5’-cattgctataacaactgcagatatttttaac-3’ <配列番号15>
(PstI部位を含む)。
【0112】
CD4166-435を上記のように増幅した。
【0113】
制限部位のTFPI1-183cDNAの3’末端およびTFPI184-276cDNAの5’末端への導入により
、H184およびG185を、組換え融合タンパク質においてC184およびR185に変異した(図8)。さらに、P186をS186に変異させた。TFPIの停止コドンをPstI部位を導入することにより除去し、従ってM276をI276に変異し、そしてアミノ酸C277を付加した。CD4ドメイン3の
N末端にPstI部位を導入する経過において、L164およびQ165を、それぞれC164およびR165に変異させた。TFPI184-276cDNAにおいて、K265はE265に変異することが見出され、そし
てCD4166-435においてV328はA328に変異した(上記と同様)。
【0114】
全てのPCR産物を、pBluescriptSK(+)にクローニングした。
【0115】
完全TFPI-CD4cDNAを、pHβActpr-1gpt発現ベクターのBamHI部位に連結した。
【0116】
上記のように、補充DMEM中で維持されたDAP.3細胞を、上記のようにリン酸カルシウム
を用いてトランスフェクトした。クローンを、マウス抗ヒトTFPImAb 4903または4904(American Diagnostica)(両方10μg/ml)および未希釈OKT-4ハイブリドーマ上清(Reinherz,1979)を用いてFACSにより、TFPIおよびCD4発現について分析した。4903は、クニッツドメ
インIに対して指向され、一方、4904は、クニッツドメインIIに対して指向される。各サンプルについて105個の細胞を分析し、そして上記のように細胞株531をコントロールとして使用した。
【0117】
図9に示すように、TFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4の両方は、細胞表面で発現され得る。
【0118】
8.細胞表面につなぎ止められたTFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4は、FXa結合を与
える。
【0119】
この方法で細胞表面につなぎ止められたTFPIが、そのFXa結合活性を保持するか否かを
試験するために、以下の結合アッセイを使用した。
【0120】
安定にトランスフェクトされたDAP.3細胞を、PBS、5mM EDTAを用いた37℃で10分間の
処理により剥離した。過剰なPBS、0.1%BSA(w/v)での4回の洗浄後、100μl中の2.5×105個の細胞を、漸増濃度のFXaと37℃で1時間インキュベートした。
【0121】
次いで、細胞を2回洗浄し、そして100μl中の10μg/mlのウサギ抗ヒトFXa免疫グロブ
リン(RAFX-IG,EnzymeResearch Laboratories)と氷上で30分間さらにインキュベートした。さらに2回の洗浄後、細胞を、FITC結合ブタ抗ウサギポリクローナル免疫グロブリンとともに30分間インキュベートし、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
【0122】
図10に示すように、細胞表面でTFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4を発現するDAP.3細
胞は、用量依存性様式でFXaを強力に結合し(図10)、有意な結合が0.02nMで検出された
。完全長TFPI-CD4と短縮TFPI-CD4との間で、FXa結合の相違は検出されなかった。
【0123】
ポリクローナル抗TFPI免疫グロブリン画分(4901)またはモノクローナル4903および4904を用いてFXa結合をブロックすることもまた可能であった。
【0124】
細胞を、ネガティブコントロールとして抗ヘモグロビン抗血清(Dakopatts)を用いて、
漸増濃度の4901、4903、または4904とともに氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBS、0.1%BSAで2回洗浄し、そして5nMFXaと37℃で1時間さらにインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、そして上記のようにRAFX-IGとともにインキュベートし、
そしてFXa結合をFACSにより分析した。
【0125】
TFPI1-276-CD4へのFXa結合は、無関係な抗ヘモグロビンポリクローナルコントロールとともにインキュベートされた細胞と比較して、10μg/mlおよび80μg/mlのポリクローナル4901で、それぞれ27%および55%減少した(図11A)。減少したFXa結合はまた、4901とプレインキュベートされたTFPI1-183-CD4細胞について見出された(図11B)。
【0126】
TFPI1-276-CD4を4903または4904のいずれかでブロックした場合、アイソタイプ適合マ
ウス免疫グロブリンと比較して、33%少ないFXa結合が40μg/mlmAbで観察された(図12)。mAb 4903とmAb 4904との間でブロッキング活性の有意な相違は検出されなかった。
【0127】
これは、TFPIが、膜結合融合タンパク質として発現された場合にそのFXa結合活性を保
持することを最初に証明する。
【0128】
9.TFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4は、両方、FXaに対して機能的に活性である。
【0129】
細胞表面につなぎ止められたTFPIがFXaの機能を阻害するその能力を保持するか否かを
決定するために、FXaのタンパク質分解活性を、色素形成性基質N-a-Z-D-Arg-Gly-Arg-pNA・2HCl(「S-2765」)(Quadratech)を用いて分析した。
【0130】
トランスフェクトしたDAP.3細胞を上記のように剥離し、そして過剰TBS(pH7.4)、0.1%BSAで4回洗浄した。1ウェルあたり0.5×106個の細胞(100μl中)を種々の濃度のFXaとともに37℃で1時間インキュベートした。50μlの4mMS-2765を添加し、そして細胞を、37℃で2時間さらにインキュベートした。OD405を30秒毎に測定し、そしてOD405=1に達
するために必要とされる時間(残存する活性FXaを示す)を決定した。
【0131】
FXa活性を、用量依存様式で発現されたTFPI-CD4により阻害し、最も大きな阻害は、低
濃度のFXa(0.16nM)を添加した場合に示された(図13)。一連の実験において、TFPI1-183-CD4またはTFPI1-276-CD4を発現する細胞間でのFXa阻害の有意な相違は観察されなかった。
【0132】
従って、クニッツドメインIIは、TFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4の両方において細胞表面につなぎ止められた場合にその機能を保持する。
【0133】
10.TF1-219/FVIIa複合体は、第3のクニッツドメインの存在に関係なく結合する。
【0134】
組織因子および第VIIa因子の結合を使用して、クニッツドメインIもまたその機能を保持するか否かを確認し得る。
【0135】
組換えヒトTF1-219およびFVIIaを、それぞれ、E.coliおよびCHO-K1において生成した(O’Brien,1994)。これらを等モル濃度で混合し、そして25℃で15分間インキュベートして
、TF1-219/FVIIa複合体を得た。
【0136】
ヒトTFに対するポリクローナルウサギ免疫グロブリンを、標準的な方法に従って生成した。
【0137】
TFPI1-276-CD4またはTFPI1-183-CD4のいずれかを発現するDAP.3細胞を、5nMFXaと37℃
で1時間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、そしてTF1-219/FVIIa複合体を、100μl中の2.5×105個細胞に添加した。37℃で1時間後、トランスフェクタントを2回洗浄し
、そして50μlのポリクローナルウサギ抗TF免疫グロブリン(2.5μg/ml)と氷上で30分間インキュベートし、続いて2回洗浄し、FITC結合ブタ抗ウサギ免疫グロブリンとさらにインキュベーションした。ポジティブ細胞を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0138】
TF1-219/FVIIaは、TFPI1-276-CD4(図14A)およびTFPI1-183-CD4(図14B)の両方に等
しく効率的に結合し、一方、コントロール細胞株531への結合は少しも検出されなかった
。
【0139】
TF1-219/FVIIa複合体によるクニッツドメインIへの特異的な結合を確認するために、FVIIaを、1,5-ダンシル-Glu-Gly-Arg-クロロメチルケトン,ジヒドロクロリド(「1,5-DNS-GGACK・HCl」)とのプレインキュベーションにより不活化した。これはFVIIaの活性部位に結合し、そしてTFPIへの結合を阻害するが、一方、TF1-219/FVIIa複合体形成に影響を及
ぼさない(Bajaj,1992)。
【0140】
FVIIaを、最初に100倍モル過剰の1,5-DNS-GGACK・HClとともに20℃で18時間インキュベートし、そしてイオン交換クロマトグラフィーにより再精製した。活性部位が阻害されたFVIIa(FVIIai)を、等モル濃度のTF1-219とともに25℃で15分間インキュベートし、次いで、100μl中の2.5×105個細胞に添加した。後の工程は、上記の通りであった。
【0141】
図14から見られ得るように、結合した「活性」TF1-219/FVIIaと比較して、有意に少な
いTF1-219/FVIIai複合体がTFPI-CD4発現細胞に結合した。TFPI1-276-CD4またはTFPI1-183-CD4でトランスフェクトされたDAP.3間での相違は観察されなかった。
【0142】
従って、クニッツドメインIはまた、TFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4において細胞表面につなぎ止められた場合、その機能を保持する。従って、細胞表面でつなぎ止められたTFPIは、全体として、機能的に活性であることは明らかである。
【0143】
11.IPEC上で発現されたTFPI-CD4は、関連ヒト凝固因子およびブタTFを結合する。
【0144】
図18に示されるように、TFPI-CD4融合タンパク質はIPEC上で発現され得、そしてFXaお
よびFVIIaを結合する能力を保持する。TFPIがブタTFと物理的に相互作用し得ることを証
明するために、可溶性ヒトTFを用いる競合阻害アプローチを採用した。図19Aに示される
ように、飽和濃度のFXaおよびFVIIaの存在下で、可溶性ヒトTFのTFPIトランスフェクトIPEC(IL-1αでの前処理)への結合は、TFネガティブコントロールトランスフェクタント(IL-1α活性化されない)による結合と比較して有意に低減した。これは、ブタTFが、VIIaについて(従って、TFPI結合について)可溶性ヒトTFと競合していたことを示唆する。図19Bはこのことを支持し、トランスフェクタントが漸増濃度のブタTFに対する抗体ととも
にインキュベートされた場合に、TFPI-CD4でトランスフェクトされたIPEC(IL-1α予備活性化)への可溶性ヒトTFの結合が増大したことを示す。この抗体の効果は、ブタTFとFVIIaとの間の、またはブタTF-VIIa複合体とTFPI-CD4との間の相互作用の阻害を反映し得る。いずれにせよ、この結果は、IPECの表面上で発現されたTFPI-CD4融合タンパク質が、ブタTF-FVIIaと物理的に相互作用することを示唆する。
【0145】
12.IPEC上で発現されたTFPI-CD4は、TF依存性フィブリン生成を阻害する。
【0146】
図20Aは、TFPI-CD4でトランスフェクトされたIPECの凝固促進表現型を例示するための
1つの代表的な実験の結果を示す。トランスフェクトされた細胞上の融合タンパク質の存在は、コントロールIPECと比較した場合に凝固時間を一貫して延長した。しかし、この効
果はIL-1α活性化後のみに観察された(TFPI-CD4発現は、TFネガティブIPECを使用した場合、凝固時間に影響しなかった)。従って、TFPI-CD4は、予想されたように、TF依存性フィブリン生成を阻害したが、TF非依存性フィブリン生成を阻害しなかった。プレインキュベーション工程の間に漸増濃度で使用された抗TFPI抗体は、凝固時間を、トランスフェクトしていないIL-1α活性化コントロールIPECを用いて見られた凝固時間に正常化し得た(図20B)。これは、トランスフェクトした細胞の存在下での凝固時間の延長が、完全に、TFPIの特異的阻害作用によるものであったことを示す。
【0147】
13.細胞膜でのプロテインCアクチベーターの発現
Agkistrodoncontortrix contortrixの毒液から精製されたプロテインCアクチベータ
ー(McMullen,1989;Kisiel,1987)を含む異種構築物を発現するために、このタンパク質をコードするcDNAを合成した。タンパク質配列は、<配列番号16>である:
【0148】
【表1A】
【0149】
ブタコドン使用頻度の偏り(全てではないにしても、大部分の哺乳動物細胞に適用可能である)に従って、以下の一本鎖DNAを合成した<配列番号17>:
【0150】
【表1B】
【0151】
【表1C】
【0152】
この一本鎖DNAを相補的なオリゴヌクレオチドにアニールして、二本鎖分子を得た。制
限部位は二本鎖DNAのいずれかの末端に含まれ、これに、上記の方法と同様の方法でCD4アンカーおよびP-セレクチンシグナル配列を連結する。得られた分子を、上記と同様に、pHβActpr-1gptベクターに連結した。
【0153】
代替DNA供給源として、ヘビDNAライブラリーを、既知のタンパク質配列に基いてスクリーニングし得る。
【0154】
14.TFPI-CD4およびヒルジン-CD5の同時発現は、TF依存性凝固およびTF非依存性凝固の阻害を引き起こす。
【0155】
TFPI-CD4およびヒルジン-CD4の両方を発現する安定なトランスフェクタントを作製した。図21Aに示されるように、一次トランスフェクタントは、可変レベルのヒルジンおよび
低レベルのTFPIを発現した。しかし、大多数のトランスフェクタントによるこの適度な発現にもかかわらず、これらの細胞の凝固促進表現型は、コントロールと比較して有意に低減した(図21B)。IL-1α活性化IPECにおける両抗凝固性分子の細胞表面存在は、血漿を
凝固する時間を約300秒に著しく延長し、これは、カルシウム再添加ヒト血漿が自発的に
凝固するのにかかる時間に近い。抗ヒルジン抗体および抗TFPI抗体を用いたブロッキング研究は、これらの二重トランスフェクタントの変えられた表現型が、発現されたヒルジンおよびTFPIによる凝固の特異的阻害によるものであったことを確認した。
【0156】
本発明は、例示のためだけに上記に記載され、そして本発明の範囲および精神内にとどまりながら改変がなされ得ることが理解される。
参考文献(これらの内容は、本明細書中に援用される)
【0157】
【表2A】
【0158】
【表2B】
【0159】
【表2C】
【0160】
(配列表)
【0161】
【表3A】
【0162】
【表3B】
【0163】
【表3C】
【0164】
【表3D】
【0165】
【表3E】
【0166】
【表3F】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、(特に、器官拒絶の間の)血液凝固の阻害に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
器官移植の外科技術はもう数十年間首尾良く行われており、そしてその成功のためにこの手順は普及しており、そして論証可能に日常的になった。しかし、適切な移植片器官の供給は、絶え間なく増大する需要とつり合うことができない。
【0003】
適切なヒト(すなわち、同種異系)器官の不足のために、近年、ヒト移植片手術において動物(すなわち、異種)器官を使用すること(「異種移植術(xenografting)」または「異種移植(xenotransplantation)」)の可能性は、増大した注目を集めている(例えば、Nature1997;385:285)。ブタは解剖学的および生理学的にヒトに類似し、そして豊富な供
給量があるので、ブタドナー器官は適切な候補物であると考えられる。
【0004】
しかし、異種移植術は、現在、厳しくかつ十分に証明された拒絶の問題により妨げられている。このプロセスは別個の段階に分けられ得、第1の段階は移植の数分以内に起こる。これは超急性応答として知られ、そして異種移植片の内皮細胞(EC)上の外来抗原を認識し、そしてそれと反応する抗体がレシピエントに存在することにより引き起こされる。この認識は、順に、移植片のECの溶解および死を導く補体カスケードを誘発する。
【0005】
次いで、この最初の超急性拒絶は、遅延型血管応答(急性血管拒絶または遅延型異種移植片拒絶としても知られる)により補強される。超急性応答の間のECの溶解および死は、浮腫および外膜細胞(この細胞は、細胞表面上に組織因子(TF)を構成的に発現する)の暴露が伴う。組織因子は、インビボ凝固カスケードの開始に極めて重要であると考えられ、そして血漿へのその暴露は凝固反応を誘発する。トロンビンおよびTNF-αは、損傷組織周囲に局在化するようになり、そしてこれは、ECによるTFのさらなる合成および発現を誘導する。
【0006】
休止ECの周囲の環境は凝固に有利でない。いくつかの天然凝固インヒビター(例えば、組織因子系凝固インヒビター、アンチトロンビンIII、およびトロンボモジュリン)は、ECの細胞外プロテオグリカンと結合している。しかし、異種反応性(xenoreactive)天然
抗体(XNA)による外来組織の認識は、これらの分子の喪失を引き起こす。従って、組織
因子の暴露および誘導と共に、ECの周囲の抗凝固環境は凝固促進性になる。
【0007】
従って、異種移植片の血管化領域は、損傷組織の特徴である血餅部位になる。血流は損なわれ、そして移植された器官は虚血性になる。遅延型血管拒絶のより十分な記述は、Bachら(1996)に見出され得る。
【0008】
従って、移植における異種器官の使用は、最初の超急性拒絶、それに続く長期の血管拒絶、恐らくそれに続くT細胞媒介拒絶により妨げられる。これらの拒絶の原因となる機構の阻害は、異種移植片の使用を容易にし得る。
【0009】
しかし、適切なインヒビターの単純な投与は、特に適切なアプローチというわけではない。レシピエント動物において補体を完全に阻害することは免疫抑制と同等であり、これは、被験体を日和見感染にかかりやすくしておく。同様に、レシピエントにおいて凝固カ
スケードを阻害することは、動物を、制御されない手術後出血になりやすくしておく。従って、インヒビターは、望ましくは、レシピエントにおいて異種移植片部位に局在化されるべきである。
【0010】
超急性拒絶の防止は、欧州特許0495852(Imutran)の主題である。組織を異種移植術により適切にするために、本発明は、組織が、同種補体制限因子(homologouscomplementrestriction factor)(これは、異種器官レシピエントにおいて補体の完全な活性化を防止
する)と結合されるべきということを教示する。
【0011】
このアプローチは、超急性拒絶を生き残るように設計された器官を有するトランスジェニック動物を作製するために開発され、そして適用されている(Squinto,1996)。心臓EC上に、補体レギュレーターであるヒトCD59を発現するトランスジェニックマウスが作製された(Diamond,1995)。ヒトCD59は生物学的活性を保持し、そしてトランスジェニック心臓がヒト血漿を灌流された場合に、補体は阻害された。
【0012】
ヒトDAFおよび/またはCD59を発現するトランスジェニックブタが報告された(McCurry,1996)。心臓拒絶は、トランスジェニック異種移植片を用いて起こるのにコントロールよ
り2倍長くかかった。
【0013】
遅延型血管拒絶を阻害することは同様の注意を受けていなかったが、凝固カスケードのインヒビターは当該分野で周知であり、そして多くが十分に特徴付けられている。
【0014】
例えば、組織因子系凝固インヒビター(TFPI)は、通常、組織因子、第VIIa因子、および第Xa因子の間で形成される活性複合体の機能を阻害することが知られ、TFPIは、その正に荷電したC末端がECのプロテオグリカン層中のヘパリン硫酸に結合する、276残基の可溶
性ポリペプチドである。これは、概念的に、3つの「クニッツ」ドメインに分けられており:クニッツドメインIは、組織因子および第VIIa因子の結合を担い;ドメインIIは、第Xa因子を結合するが;ドメインIIIの機能はあまり明らかではない(Hamamoto,1993)。
【0015】
ダニ抗凝固性ペプチド(TAP)は、第Xa因子の特異的なおよび強力なインヒビターである
。この60アミノ酸ポリペプチドは、ヒメダニOrnithodorosmoubataから精製された。
【0016】
多くのヘビ毒もまた、抗凝固性ポリペプチドを含む。例えば、231アミノ酸プロテイン
Cアクチベーターは、ヘビAgkistrodoncontortrix contortrixの毒液から精製された(McMullen,1989;Kisiel,1987)。
【0017】
ヒルジンは、ヒルの犠牲者から血液を吸う場合にヒルHirudo medicinalisにより利用される抗凝固性タンパク質である。ヒルジンは、非常に強力であり、そしてフェムトモル範囲内の解離定数で1:1比でトロンビンに結合する。トロンビンの活性部位は安定な複合体
ではマスクされ、そのためヒルジンは、フィブリノーゲン分解を防止し、従って血餅形成を阻害する。
【0018】
抗凝固性物質を拒絶部位に局在化させるための1つの可能なアプローチは、ヒルジンをE-セレクチン(これは、細胞活性化の間、ECの表面上に発現される)に対する抗体に連結することである。このアプローチは、インビトロで血餅形成を阻害することに有効であることが示された(Kiely,1995)。他の可能なストラテジーは、最近、Bachら(1996)により概説された。
【0019】
P-セレクチン(CD62としても知られる)もまた、細胞活性化の間、ECの表面上に発現される。合成の間、これは、その細胞質ドメインに存在する配列により血小板および内皮細
胞の分泌貯蔵顆粒に標的化される(Disdier,1992)。細胞アゴニスト(例えば、トロンビン)に応答して、顆粒は急速に再分配され、そしてP-セレクチンは細胞表面上で発現される(Green,1994)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
膜結合型抗凝固性タンパク質を提供することは、本発明の目的である。これらのタンパク質は、ECの表面で凝固カスケードを阻害することに適切であり、従って、器官拒絶を担うインビボ機構を阻害することに適切である。
【0021】
凝固阻害が器官拒絶の状態の間に局所的に生じるように、ECの表面上でのこのような分子の調節された発現を提供することは、さらなる目的である。拒絶は、異種または同種異系であり得る。
【0022】
移植(特に、異種移植)に適切な生物学的組織を提供することは、本発明のなおさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の説明
本発明の第1の局面によれば、タンパク質であって、抗凝固活性を有する領域およびこのタンパク質を細胞膜に固定(anchor)し得る領域を含むタンパク質が提供される。好ましくは、これはキメラタンパク質であり、すなわち、固定領域(anchorregion)と抗凝固性領域とは異なるタンパク質に由来する。
【0024】
抗凝固性領域は、任意の抗凝固性ポリペプチドの配列を含み得る。このような抗凝固性ポリペプチドの例は、ヘパリン、TAP、アンチトロンビン、ヒルジン、およびTFPIを、そ
れらの機能的誘導体(例えば、抗凝固活性を保持するフラグメントおよび誘導体)とともに含む。トロンビンの抗凝固性誘導体(通常、凝固促進物質)もまた報告された(Dang,1997)。
【0025】
好ましくは、抗凝固性領域は、ヒルジンの配列を含む。ヒルジンは、ヒルジン、ヒルジン誘導体、アナログ(「ヒルログ(hirulog)」)、および改変体(例えば、ヒルジシン(hirudisin))を含む。例えば、Tyr-64での硫酸化はヒルジンの抗凝固活性を増大させ、そしてヒルジシン-2は、ヒルジン自体より強力な、トロンビン活性のインヒビターであることが報告された(例えば、Knapp,1992;Skern,1990)。
【0026】
代替として、抗凝固性領域は、組織因子系凝固インヒビター(TFPI)の配列を含み得る。TFPIは、TFPI自体および阻害活性を保持するその誘導体またはアナログを含む。好ましくは、TFPI配列は、TFPI自体のクニッツドメインIおよびIIを含む。
【0027】
さらなる代替として、抗凝固性領域は、ダニ抗凝固性ペプチド(TAP)の配列を含み得る
。TAPは、TAP自体および阻害活性を保持するその誘導体またはアナログを含む。例えば、TAPによるFXa阻害の効力は、部位特異的変異誘発により増強された(例えば、Mao,1995)。
さらなる代替の抗凝固性領域は、例えば、プロテインCアクチベーター(例えば、ヘビ
毒から単離されたもの(例えば、McMullen,1989;Kisiel,1987))の配列、またはプロテインC活性化を介する以外のことで作用するヘビ毒から単離された抗凝固性物質の配列、または抗凝固活性を保持するそれらの誘導体もしくはアナログを含み得る。
【0028】
固定領域は、タンパク質を細胞膜に付着させ得る任意の実体(entity)であり得る。適
切な例は、膜タンパク質およびGPIアンカーに由来する膜貫通配列を含む。好ましくは、
固定領域は、タンパク質を脂質二重層に付着させ得る配列(例えば、HLAクラスIまたはCD4タンパク質の膜貫通領域)である。タンパク質が、通常、上記の膜貫通領域と結合している細胞質ドメイン(例えば、CD4細胞質ドメイン)、および/または細胞膜に隣接して
並べられる細胞外ドメイン(例えば、CD4ドメイン3および4)を含むこともまた望まし
くあり得る。あるいは、固定領域は、タンパク質自体が細胞膜に挿入されることなく、膜タンパク質と細胞外で会合する能力をタンパク質に与える配列であり得る。
【0029】
本発明の第2の局面によれば、タンパク質が細胞表面で構成的に発現するのを防止する標的化配列をさらに含む、第1の局面に従うタンパク質が提供される。
【0030】
好ましくは、標的化配列は、新生(nascent)ポリペプチドを分泌顆粒に標的化し得るポ
リペプチド配列であり、そしてより好ましくは、この分泌顆粒は、細胞が適切に刺激されるまで、細胞原形質膜と融合しない分泌顆粒である。例えば、ヴァイベル-パラーデ体(Weibel-Paladebody)は、内皮細胞表面が分泌促進物質(例えば、トロンビンまたはフィブリン)により刺激されるまで、原形質膜と融合しない(Wagner,1993)。好ましくは、分
泌顆粒は、器官拒絶の間に起こるEC活性化の間に原形質膜と融合する。
【0031】
従って、標的化配列は、好ましくは、新生ポリペプチドをヴァイベル-パラーデ体に標
的化する標的化配列(例えば、P-セレクチンに由来する関連配列)である。最も好ましくは、本発明の第2の局面に従うタンパク質は、抗凝固性配列ならびにP-セレクチンの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。従って、P-セレクチンに由来するドメインは、固定配列および標的化配列の両方を提供する。
【0032】
本発明の第3の局面によれば、本発明に従うタンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。
【0033】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、本発明に従うタンパク質の発現の調節に適切な配列を含む。好ましくは、この発現は制御され得る(例えば、細胞特異的制御、誘導性制御、または一時的制御)。例えば、発現はECに特異的であり得るか、または細胞活性化に応答して調節され得る。
【0034】
本発明の第4の局面によれば、第3の局面に従うポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0035】
用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に移し得る分子を意味する。好ましくは、ベクターはDNAベクターであり、より好ましくは、本発明に従うタンパク質をコー
ドするRNAを発現し得る。非常に多くの適切なベクターが当該分野で公知である。
【0036】
好ましくは、ベクターは、トランスジェニック動物の作製に適切である。トランスジェニックブタの作製に適切なベクターは、例えば、Heckl-Ostreicher(1995)、McCurry(1996)、White(1995)、Yannoutsos(1995)、およびLangford(1996)に記載される。トランスジェニックマウスの作製に適切なミニ遺伝子ベクターは、Diamond(1995)に記載される。
【0037】
本発明の第5の局面によれば、第1、第2、第3、または第4の局面の分子を含む送達系、および上記の分子を標的細胞に送達するための手段が提供される。
【0038】
第4の局面に従う特定のベクターはまた、適切な送達系として機能し得る。同様に、この第5の局面に従う特定の送達系はまた、本質的にベクターであり得るが、必ずしもそうとは限らない。例えば、ウイルスベクターは送達系としても機能し得るが、リポソーム送
達系はベクターではない。
【0039】
送達系は、ウイルス性または非ウイルス性であり得る。非ウイルス性の系(例えば、リポソーム)は、ウイルスに基づく系に関係する困難のうちのいくつか(例えば、調整される(scaled)生成の出費、不十分な発現持続、および安全性についての懸念)を避ける。好ましくは、送達系は、遺伝子治療における使用に適切である。非常に多くの適切な送達系が当該分野で公知である。
【0040】
好ましくは、送達系は、本発明に従う分子が、移植に適切な細胞または移植された細胞により取り込まれるように標的化される。より好ましくは、送達系は、これらの細胞に特異的である。例えば、送達系は、特定の器官(例えば、心臓もしくは腎臓)または特定の細胞型(例えば、内皮細胞)に標的化され得る。
【0041】
これを達成するために、送達系は、例えば、標的細胞に見出されるレセプターに標的化される、レセプター媒介送達系であり得る。例えば、送達系は、心臓細胞に見出されるレセプターに、好ましくは、心臓細胞にだけ見出されるレセプターに標的化され得るか、あるいは送達系は、内皮細胞に見出されるレセプターに、好ましくは、内皮細胞にだけ見出されるレセプターに、または活性化内皮細胞に見出されるレセプター(例えば、E-セレクチンもしくはP-セレクチン)に標的化され得る。
【0042】
好ましくは、送達系は、トランスジェニック動物の作製に適切である。例えば、送達系は、配偶子、接合子、または胚性幹細胞に標的化され得る。
【0043】
本発明の第6の局面によれば、細胞を本発明に従うベクターでトランスフェクトする方法が提供される。これは、本発明に従う送達系の使用を含み得る。
【0044】
細胞型は制限されず、そして原核生物または真核生物であり得る。トランスフェクションは、インビボまたはエクスビボで起こり得る。
【0045】
細胞が移植使用のためである場合、細胞は、好ましくは真核生物であり、より好ましくは内皮細胞である。ブタ内皮細胞の安定なトランスフェクションは、例えば、Heckl-Ostreicher(1995)に記載される。
【0046】
好ましくは、細胞は、トランスジェニック動物の作製に適切である。より好ましくは、細胞は、配偶子、接合子、または胚性幹細胞である。トランスジェニックマウスを作製するための、マイクロインジェクションによるマウス卵子のトランスフェクションは、例えば、Diamond(1995)に記載され、そして例えば、トランスジェニックブタを作製するため
の、ブタ接合子のマイクロインジェクションは、Yannoutsos(1995)、Langford(1996)、およびWhite(1995)に記載される。
【0047】
本発明の第7の局面によれば、第6の局面に従ってトランスフェクションされた細胞が提供される。
【0048】
凝固カスケードの阻害効力を増大させるために、細胞は、好ましくは、2つ以上の異なる本発明に従うタンパク質を発現し得、これらのタンパク質の各々は、異なる段階で凝固カスケードを阻害する。例えば、一方のタンパク質における抗凝固性領域はTFPIを含み得、一方、他方のタンパク質における抗凝固性領域はヒルジンを含む。
【0049】
本発明の第8の局面によれば、本発明に従う細胞を含む生物学的組織が提供される。本明細書中で使用する用語「生物学的組織」は、細胞、組織、および器官の集合を含む。従
って、この定義は、例えば、線維芽細胞、角膜、神経組織、心臓、肝臓、または腎臓を含む。
【0050】
本発明の第9の局面によれば、本発明に従う細胞および/または生物学的組織を含む動物が提供される。好ましくは、動物は、ヒトへの移植のための器官の作製に適する。好ましくは、動物は哺乳動物であり、そしてより好ましくは、トランスジェニックブタまたはトランスジェニックヒツジである。
【0051】
動物は処置され得るが、一方、動物がトランスジェニックな生物学的組織を含むように、生きたままであり得る(すなわち、遺伝子治療により処置される)。好ましくは、生きている動物が、トランスジェニック動物を作製するために、本発明に従うベクターでトランスフェクトされる。例えば、本発明に従うベクターは、異種移植に適切なトランスジェニック器官を作製するために、ブタの内皮細胞に特異的に送達され得る。
【0052】
あるいは、動物は、トランスジェニック動物として生まれ得る。このようなトランスジェニック動物を作製するための種々の適切なアプローチは、当該分野で公知である(例えば、BradleyおよびLiu,1996;Clarke,1996;Wheeler,1994)。例えば、DNAのマイクロイ
ンジェクションによる、接合子または初期胚の直接操作は、多能性細胞(例えば、胚性幹細胞)のインビトロ操作と同様に周知である。初期胚のレトロウイルス感染は、ある範囲の種において成功することが証明され、そして透明帯のない(zona-free)卵のアデノウイ
ルス感染が報告された。核移入によるヒツジのトランスジェノシス(transgenesis)およびクローニングもまた記載された(例えば、WO97/07668)。
【0053】
本発明の第10の局面によれば、生物学的組織を移植に適切にする方法が提供され、この方法は、1つ以上の本発明に従うタンパク質を上記の生物学的組織において(好ましくは、その内皮細胞において)発現させる工程を含む。生物学的組織は、インビボまたはエクスビボのいずれかでそのようにされ得る。例えば、動物器官は、インビボで、本発明に従うベクターでトランスフェクトされ得るか、または器官は、移植前にエクスビボでもしくは移植後にインビボでトランスフェクトされ得る。
【0054】
本発明の第11の局面によれば、移植方法が提供され、この方法は、ドナー動物に由来する本発明に従う生物学的組織をレシピエント動物に移植する工程を含む。好ましくは、この方法は異種移植のためであり、そしてドナー生物学的組織は、レシピエント動物に関して異種である。本発明は以下をも提供する。
1.タンパク質であって、抗凝固活性を有する領域、該タンパク質を細胞の膜に固定し得る領域、および該タンパク質が該細胞の表面で構成的に発現されるのを防止する標的化配列を含む、タンパク質。
2.前記抗凝固性領域が、ヒルジン、組織因子系凝固インヒビター、ダニ抗凝固性ペプチド、またはプロテインCアクチベーターの配列を含む、項目1に記載のタンパク質。
3.前記固定領域が、前記タンパク質を脂質二重層に付着させ得る配列である、項目1または項目2に記載のタンパク質。
4.前記固定領域が、膜タンパク質に由来する膜貫通配列を含む、項目3に記載のタンパク質。
5.前記標的化配列が、新生ポリペプチドを分泌顆粒に標的化し得る配列である、項目1または項目2に記載のタンパク質。
6.前記分泌顆粒は、前記細胞が適切に刺激されるまで該細胞の原形質膜と融合しない、項目5に記載のタンパク質。
7.前記分泌顆粒がヴァイベル-パラーデ体である、項目6に記載のタンパク質。
8.前記標的化配列がP-セレクチンの細胞質ドメインである、項目7に記載のタンパク質。
9.前記固定配列がP-セレクチンの配列である、項目1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質。
10.項目1〜9のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
11.項目10に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
12.項目1から9のいずれか1項に記載のタンパク質、項目10に記載のポリヌクレオチド、または項目11に記載のベクターを含む、送達系。
13.細胞を項目11に記載のベクターでトランスフェクトする、方法。
14.項目13に従ってトランスフェクトされた、細胞。
15.項目14に記載の細胞を含む、生物学的組織。
16.項目15に記載の生物学的組織および/または項目14に記載の細胞を含む、動物。
17.前記動物がトランスジェニックブタまたはヒツジである、項目16に記載の動物。18.組織または器官を移植に適切にする方法であって、項目1または9のいずれか1項に記載のタンパク質を、前記組織または器官における内皮細胞上で発現させる工程を包含する、方法。
19.ドナー動物に由来する項目15に記載の生物学的組織をレシピエント動物に移植する工程を包含する、移植方法。
20.タンパク質であって、抗凝固活性を有する領域および該タンパク質を細胞の膜に固定し得る領域を含み、該抗凝固性領域が、ヒルジン、組織因子系凝固インヒビター、ダニ抗凝固性ペプチド、またはプロテインCアクチベーターの配列を含む、タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明に従う、ヒルジン-CD4キメラタンパク質および構築物のマップを示す。(A)グリシンリンカーを有するHLA-ヒルジン-CD4構築物。(B)ヒトP-セレクチンC末端を有するHLA-ヒルジン-CD4構築物(特異的標的化配列に下線を引いた)。CD4の膜貫通(TM)領域、膜透過停止(ST)領域、および細胞質(C)領域を示す。
【図2】図2は、DAP.3線維芽細胞において発現されたHLA-ヒルジン-CD4構築物のFACSプロフィールを示す。
【図3】図3は、CHO-K1において発現されたHLA-ヒルジン-CD4-P-セレクチンcDNA構築物のFACSプロフィールを示す。
【図4】図4は、ヒルジン-CD4発現線維芽細胞がトロンビンを結合することを示す。
【図5】図5は、ヒルジン-CD4発現細胞へのトロンビン結合の特異性を示す。
【図6】図6は、HLA-ヒルジン構築物でトランスフェクトされたCHO-K1細胞へのトロンビン結合を示す。
【図7】図7は、トロンビンの不活化が、細胞表面でのヒルジン-CD4へのトロンビン結合を完全に破壊することを示す。ヒルジン-G2-CD4発現細胞を、トロンビンまたは不活化トロンビンとともにインキュベートし、そして抗プロトロンビン抗体または抗トロンビン-ヒルジン抗体を用いてトロンビン結合について染色した。
【図8】図8は、本発明に従う、TFPI-CD4キメラタンパク質および構築物のマップを示す。
【図9】図9は、細胞表面につなぎ止められたTFPIを発現するDAP.3細胞のフローサイトメトリープロフィールを示す。
【図10】図10は、細胞表面に結合したTFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4への特異的FXa結合を示す。
【図11】図11は、ポリクローナル抗TFPI免疫グロブリン画分によるFXa結合のブロッキングを示す。
【図12】図12は、クニッツドメインIおよびIIに対して指向されたモノクローナル抗体によるFXa結合のブロッキングを示す。
【図13】図13は、TFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4を発現する細胞によるFXa阻害を示す。FXaとともにインキュベートされたトランスフェクトDAP.3細胞について、FXa特異的色素形成性基質がOD405=0.1に達する平均時間が示される。コントロール細胞についての値が引かれ、そして誤差棒は標準偏差を示す。
【図14】図14は、活性TF1-219/FVIIa複合体が、TFPI-CD4キメラタンパク質への最大結合に必要とされることを示す。
【図15】図15は、ヒルジン-CD4を発現する不死化ブタ内皮細胞(IPEC)へのトロンビン結合の特異性を示し、そして凝固時間に対する細胞表面ヒルジン-CD4発現の効果も示す。
【図15C】図15は、ヒルジン-CD4を発現する不死化ブタ内皮細胞(IPEC)へのトロンビン結合の特異性を示し、そして凝固時間に対する細胞表面ヒルジン-CD4発現の効果も示す。
【図16】図16は、蛍光により示される場合の、D16/16細胞におけるACTHおよびヒルジンの分布を示す。
【図16D】図16は、蛍光により示される場合の、D16/16細胞におけるACTHおよびヒルジンの分布を示す。
【図17】図17は、PMA刺激後のヒルジン-CD4-P-セレクチン細胞分布の変化を示す。
【図17B】図17は、PMA刺激後のヒルジン-CD4-P-セレクチン細胞分布の変化を示す。
【図17C】図17は、PMA刺激後のヒルジン-CD4-P-セレクチン細胞分布の変化を示す。
【図18】図18は、IPEC上で発現されたTFPI-CD4がその結合特性を保持することを示す。
【図18B】図18は、IPEC上で発現されたTFPI-CD4がその結合特性を保持することを示す。
【図19】図19は、ブタおよびヒトの組織因子の競合結合を示す。
【図20】図20は、TFPI-CD4が、IPEC表面上で発現された場合に凝固時間を延長することを示す。
【図21】図21は、TFPI-CD4およびヒルジン-CD4の同時発現の抗凝固効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実施態様の説明
1.HLAクラスIシグナルペプチドと融合され、そしてヒトCD4のドメイン3およびドメイン4に連結されたヒルジンは、細胞膜につなぎ止められる。
【0057】
哺乳動物細胞において異種ヒルジン構築物を発現するために、ヒトHLAクラスI A2.1、アミノ酸−1〜−24に由来する膜標的化シグナルペプチドリーダー配列のcDNA(Holmes,1987)を、重複伸長を用いたPCRを使用してヒルジン改変体1(Dodt,1984)に融合した(
図1)。
【0058】
HLA A2.1リーダー配列を、以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-cagtgtcgacggatccatggccgtcatggcgccccga-3’[hla-1] <配列番号1>
(SalI制限部位およびBamHI制限部位を導入する)および:
5’-gtcagtgtaaacaaccgcccaggtctgggtcagg-3’ <配列番号2>
ヒルジン配列を以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-acccagacctgggcggttgtttacactgactgcacc-3’および <配列番号3>
5’-gacgctgcagaattcttgcaggtattcttccgggatt-3’[hir-3] <配列番号4>
(遠位のEcoRI部位およびPstI部位を導入する)
得られたPCR産物(108および228bp)をアガロースゲル電気泳動により精製し、次いで、
隣接プライマーhla-1およびhir-3を用いて第3のPCRにおいて使用した。得られたPCR産物(300bp)をSalIおよびBamHIで消化し、そしてpBluescriptSK(+)(Stratagene)にサブクローニングした。
【0059】
CD4の膜透過停止配列(ST)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン(CD4166-435)と共
に、CD4のドメイン3およびドメイン4(Maddon,1985)をコードするcDNAからなるアンカーを、HLA-ヒルジンカセットに付加した。
【0060】
しかし、ヒルジンC末端をCD4アンカーに連結した場合に、ヒルジンが可動性のままで
あり、そして活性のままであることを確実にするために、3つの異なるグリシンリンカー長を作った(G1〜G3と呼ぶ−図1A):
−グリシンリンカー1(G1;GGSGG)について、オリゴヌクレオチド対は、5’-aattaggaggttctggaggctgca-3’<配列番号5>(変異EcoRI認識配列およびPstI部位を含む)および5’-gcctccagaacctcct-3’<配列番号6>からなっていた;
−グリシンリンカー2(G2)およびグリシンリンカー3(G3)は、それぞれ、2または3回反復するコア配列(GGSGG)からなっていた。
【0061】
これらのリンカーを、HLA-ヒルジンフラグメントの3’末端に導入した。
【0062】
グリシンリンカーオリゴヌクレオチドをアニールし、そして各々を、CD4アンカー挿入
前に、HLA-ヒルジンカセットを含むプラスミドのEcoRI/PstI部位に連結した。
【0063】
CD4166-435を以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-tgtctgcaggaaccagaagaaggtggaattca-3’ <配列番号7>
(PstI部位およびEcoRI部位を導入する)および:
5’-gtgggatccgcctggcctcgtgcctcaa-3’ <配列番号8>
(遠位BamHIを含む)。
【0064】
得られたPCR産物をpBluescriptにクローニングし、そして配列決定した。CD4166-435において、V328は、A328に変異したことが見出された。PstI/BamHICD4フラグメントを、HLA-ヒルジン-G1、HLA-ヒルジン-G2、およびHLA-ヒルジン-G3プラスミドにサブクローニングし、そしてこれらの構築物をDNA配列分析により確認した。
【0065】
3つのcDNA構築物の各々を、哺乳動物発現ベクターpHβActpr-1gpt(Gunning,1987)(ヒトβ-アクチンエンハンサーおよびプロモーター領域を、ミコフェノール酸の存在下での
クローン選択を可能にするSV40エンハンサーエレメント駆動gpt耐性遺伝子と共に含む)
のBamHI部位にサブクローニングした(図1Cおよび1D)。最終構築物の方向を、制限エン
ドヌクレアーゼマッピングにより確認した。
【0066】
個々のHLA-ヒルジン-G1/2/3-CD4構築物を含むベクターを、標準的なプロトコルに従っ
てリン酸カルシウムを用いて、マウス線維芽細胞株DAP.3(Marguelies,1983)にトランスフェクトした。5%ウシ胎児血清、アンピシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミンを補充したDMEM培地(Gibco)中での18時間の増殖後、細胞を30秒間グリセロール処理した
。次いで、細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、そしてキサンチン、ヒ
ポキサンチン、およびミコフェノール酸を最終濃度12μg/mlまで含む新しい培地を添加した。
【0067】
ネガティブコントロールとして、HLA-DRを発現するヒトクラスII構築物でトランスフェクトされたDAP.3細胞(細胞株531)(Lechler,1988)を、同一のミコフェノール酸含有培養培地中で増殖させた。
【0068】
生き残ったクローンを、それぞれ、マウスモノクローナル抗体4158-81-7(Schlaeppi,1991)およびOKT-4(Reinherz,1979)を用いて、FACSによりヒルジンおよびCD4発現について試験した。105個の細胞を、マウス抗体を用いて氷上で30分間染色し、そしてFITC結合ヒツ
ジ抗マウスポリクローナル抗体を2次層(layer)として添加した。
【0069】
図2に示すように、これらのヒルジン-CD4構築物は、DAP.3の細胞表面でよく発現され
た。3つの異なるグリシンリンカー長を有するヒルジン-CD4間で、発現レベルの有意な相
違は検出されなかった。
【0070】
従って、抗凝固性ポリペプチドは、細胞表面上で安定に発現され得る。
【0071】
2.P-セレクチンのC末端に由来する標的化配列を有するヒルジン-CD4は、CHO-K1細胞表面で発現される。
【0072】
HLA-ヒルジン-G1/2/3-CD4構築物に加えて、もう2つの構築物を、ヒトP-セレクチンに
由来する標的化配列を用いて合成した(図1B)。CD4に由来する膜貫通領域をこれらの構
築物のために使用したが、一方、膜透過停止配列およびC末端を、P-セレクチンに由来する対応する配列(Johnston,1989)で置換した。
【0073】
CD4のドメイン3およびドメイン4+膜貫通領域(CD4166-395)とヒトP-セレクチンの膜
透過停止配列および細胞質領域1および細胞質領域2(P-sel754-789)(McEver1989)とを融合するために、重複伸長を用いるPCRを行った。分子のCD4部分の増幅のために、以下のプライマー:
5’-tgtctgcaggaaccagaagaaggtggaattca-3’[CD4-5] <配列番号7>
(PstI制限部位およびEcoRI制限部位を導入する)および:
5’-gtctgaaacgctttctgaagaagatgcctagcccaatgaaaagcaggaggccg-3’
<配列番号9>
を使用した。並行して、P-セレクチンのC末端領域を増幅するために、以下のプライマー:
5’-tgggctaggcatcttcttcagaaagcgtttcagacaaaaaga-3’および <配列番号10>
5’-gaccaggatccggacaggtctctta-3’[P-selN3] <配列番号11>
(遠位BamHI部位を導入する)を使用した。
【0074】
アガロースゲルからの得られたPCR産物の精製後、第3のPCRを、隣接プライマーCD4-5
およびP-selN3を用いて行った。得られたPCR産物(832bp)を、PstIおよびBamHIで消化し、pBluescriptにサブクローニングし、そして配列決定した。その後、CD4-P-selフラグメント(CD4166-395-P-sel754-789)をPstI/BamHIで切り出し、そしてHLA-ヒルジン-G1またはHLA-ヒルジン-G2を含むプラスミドにサブクローニングした。
【0075】
最終HLA-ヒルジン-G1/G2-CD4-P-セレクチン構築物を、pHβActpr-1gptのBamHI部位にサブクローニングし、そしてCHO-K1細胞(ATCCCCL61)にトランスフェクトし、5%ウシ胎児
血清、アンピシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミンを補充したRPMI 1640培地(Gibco)中で増殖させた。
【0076】
トランスフェクションは、標準的なプロトコルに従ったエレクトロポレーションによった。簡単には、5×106個の細胞を350μlの無血清培地に再懸濁し、そして電極間で0.4cmの空間を有する1mlエレクトロポレーションキュベット(Bio-Rad)に移した。150μl中10
μgのプラスミドDNAの添加後、サンプルを穏やかに振盪し、そして氷上で保持した。細胞を、GenePulser装置(Bio-Rad)において、無限抵抗(infiniteresistance)、960μF、および350Vでエレクトロポレーションに供した。エレクトロポレーションの次の日、細胞をPBSで2回洗浄し、そしてミコフェノール酸、キサンチン、およびヒポキサンチンを含む新しい培地を添加した。
【0077】
最近、CHO-K1細胞をP-セレクチンcDNAでトランスフェクトした場合に、P-セレクチンタンパク質は細胞内に蓄積されないが、細胞表面で発現されることが示された(Disdier,1992)。上記で生成されたCHO-K1トランスフェクタントにおいて、ヒルジン-G1-CD4-P-セレクチンおよびヒルジン-G2-CD4-P-セレクチンの両方は、OKT-4および4158-81-7モノクロー
ナルを用いた染色により判断されるように表面で発現された(図3)。使用されたネガティブコントロールは、同じミコフェノール酸含有培地中で増殖された、CD4のドメイン3
およびドメイン4に融合されたTFPI(TFPI-CD4166-435)を発現するCHO-K1細胞株であった
。
【0078】
ポジティブコントロールとして、CHO-K1細胞を、完全長ヒトP-セレクチン(Johnston,1989)でトランスフェクトし、これを3142bpのSalIフラグメントとして、SV40駆動ネオマイ
シン(G418)耐性遺伝子を含む、pHβActpr-1neoにサブクローニングした。これらの細胞を400μg/mlG418で処理し、そして2週間後、個々のクローンを綿棒で拾い、そして12ウェ
ルプレートに移した。生き残ったクローンを、10μg/mlの4158-81-7および未希釈OKT-4ハイブリドーマ上清を用いてヒルジンおよびCD4発現について分析した。
【0079】
ヒトP-セレクチンを、製造者の推奨に従って抗CD62mAb(BectonDickinson)により検出
した。ヒルジン-CD4-P-セレクチンを用いたのと同様のFACSプロフィールが、これらのCD62標識細胞について観察され(図3E)、CHO-K1細胞が原形質膜でP-セレクチンを発現する
ことを確認した。
【0080】
従って、P-セレクチン標的化配列を含むキメラタンパク質は、細胞表面で発現された場合、機能的なままである。
【0081】
3.細胞表面に固定されたヒルジンは、特異的抗体で検出されるようにトロンビンを結合する。
【0082】
この方法で細胞表面につなぎ止められたヒルジンがそのトロンビン結合活性を保持するか否かを試験するために、以下の結合アッセイを使用した。
【0083】
安定にトランスフェクトされた細胞を、各実験前に、T75培養フラスコ中で36時間増殖
させた。DAP.3細胞を細胞スクレイパーを用いて剥離したが、一方CHO-K1細胞を、PBS、5mMEDTAを用いた37℃で10分間の処理によりプラスチックから剥離した。0.1%BSA(w/v)
を含むPBSでの4回の洗浄後、150μl中の2.5×105個の細胞を、漸増濃度のトロンビンと
ともに37℃で1時間インキュベートした。細胞を、0.1%BSAを含むPBSで4回洗浄し、そ
してウサギ抗ヒトプロトロンビン免疫グロブリン(100μl中10μg/ml)(Dakopatts)と氷上
で30分間さらにインキュベートした。さらに2回の洗浄後、細胞を、FITC結合ブタ抗ウサギ免疫グロブリン(Dakopatts)と30分間インキュベートした。最後に、トランスフェクタ
ントを3回洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
【0084】
図4に示すように、細胞表面で発現されたヒルジンは、トロンビンを結合する能力を保持し、そしてグリシンリンカー長は、トロンビン結合に影響を及ぼさなかった。
【0085】
ヒルジン-CD4発現細胞を飽和させるために必要とされるトロンビンの量を評価するために、2つのクローンを、82U/mlまでのトロンビンとともにインキュベートした。ポジティブ細胞の百分率を分析した場合、トランスフェクタントは、41U/mlトロンビンで飽和した(図4C)。しかし、平均蛍光強度(mfi)によれば、細胞は、82U/mlでさえも飽和しなかっ
た(図4D)。これらの高い実験トロンビン濃度で、HLA-DAを発現するコントロール細胞へのバックグラウンド結合は著しく増大した。
【0086】
ヒルジン-CD4へのトロンビン結合の特異性を明らかにするために、さらに、ブロッキング実験を行った。DAP.3HLA-ヒルジン-G3-CD4トランスフェクタントを、10μg/ml抗ヒルジンmAbと氷上で30分間、または適切なコントロール(マウスIgG1およびIgG2a、Dakopatts)と氷上で30分間プレインキュベートし、そして上記のようにトロンビンと37℃で1時間
インキュベートする前に、0.1%BSAを含むPBSで2回洗浄した。トロンビン結合を上記の
ように分析した。
【0087】
4158-81-7とのプレインキュベーションは、ヒルジン-CD4への特異的トロンビン結合を
阻害した(図5A)。ヒルジン-CD4によるトロンビン結合は、トロンビンとのインキュベーション、ならびにmAb4107-76-1(Schlaeppi,1991)および抗プロトロンビン免疫グロブリンを用いて標識を比較することにより証明された。4107-76-1は、ヒルジン-トロンビン複合体に対して指向され、そしてトロンビンを伴わないヒルジンも内因性トロンビンレセプターに結合したトロンビンも検出しない。図5Bに示すように、4107-76-1を用いて検出され
たトロンビン結合は、抗プロトロンビン免疫グロブリン画分を用いて観察された結合と似ていた。
【0088】
従って、DAP.3細胞表面上で発現されたヒルジンは、特異的なトロンビン結合を保持す
る。
【0089】
不死化ブタ上皮細胞(IPEC)を、同じ方法でヒルジン-CD4を用いてトランスフェクトした。図15Aに示すように、トランスフェクトされた細胞のみがトロンビンを結合し、これは
、用量依存様式で4158-81-7によりブロックされた(図15B)。ヒト血漿カルシウム再添加試験系を、IPEC上で表面につなぎ止められたヒルジンの発現の機能的効果のさらなる調査に使用した。図15Cに示すように、トランスフェクトしていないIPECは、細胞非存在下で
の370秒のコントロール凝固時間と比較して、カルシウム再添加血漿の凝固時間を約170秒まで短くした。TF発現を誘導するIL-1とのプレインキュベーションは、凝固時間を100秒
未満までさらに減らした。対照的に、トランスフェクトされたIPECについての凝固時間は、IL-1誘導TF発現物とのプレインキュベーション後でさえも延長された。4158-81-7との
インキュベーションは、用量依存様式で抗凝固効果を減らし、これは、この効果が細胞表面ヒルジンの存在によるものであったことを示した(図15D)。
【0090】
従って、IPECの表面上で発現されたヒルジンはトロンビンを結合し、そしてまたヒト血漿の凝固を阻害する。
【0091】
4.CHO-K1細胞により発現されたヒルジン-CD4-P-セレクチンはトロンビンを結合する
。
【0092】
ヒルジン-CD4-P-セレクチンもまた、CHO-K1細胞の表面で発現された場合にトロンビン
を結合するか否かを調べるために、これらの細胞を、トロンビンとともに37℃で1時間インキュベートした。抗プロトロンビン免疫グロブリンを用いた染色および第2のFITC標識抗体層の添加の後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。
【0093】
図6Aに示すように、別個の結合プロフィールを検出した。抗プロトロンビン免疫グロブリンを用いた場合、CD4に連結した無関係のタンパク質を発現するCHO-K1細胞へのバック
グラウンドトロンビン結合は、かなり低い濃度のトロンビンとのインキュベーション後に検出可能であった。しかし、ヒルジンへの特異的トロンビン結合は、特異的抗ヒルジン/トロンビンmAb4107-76-1を用いた染色により確認された(図6B)。この抗体を用いて、コントロールCHO-K1細胞によるバックグラウンド結合は、検出不可能であった。ヒルジンを発現するクローンが、トロンビンを異なる程度で非特異的に結合するようであったこと(これは、クローンが、異なる発現レベルの内因性トロンビンレセプターを有したことを意味する)は、図6から明らかである。非特異的結合のこの変化は、いくつかの他のクローンで確認された。
【0094】
比較のために、ヒルジン-G1-CD4およびヒルジン-G2-CD4(すなわち、P-セレクチン配列
なし)を発現する2つのCHO-K1トランスフェクタントからの結果を、図6Cおよび6Dに示す。より多く発現されたキメラタンパク質(より高いmfi)に起因してわずかに増大したト
ロンビン結合を除いて、CD4-P-セレクチンアンカーに連結されたヒルジンを発現するトランスフェクタントと比較して、結合プロフィールの主な相違は検出されなかった。
【0095】
5.ヒルジン-CD4-P-セレクチンは分泌顆粒に貯蔵され、そして活性化の際に放出され
得る。
【0096】
ヒルジンの細胞内蓄積および分泌顆粒から細胞表面へのその経路を調べるために、分泌マウス下垂体細胞株(D16/16)を、ヒルジン-CD4-P-セレクチンまたはヒルジン-CD4のいず
れかをコードするcDNAで一過的にトランスフェクトした。この細胞株を2つの理由から選択した。第1に、これらの細胞は特定の貯蔵顆粒においてACTHを発現することが知られ、ACTHは、ホルボールエステルでの活性化の際に細胞表面で放出される。第2に、内皮細胞(これは、P-セレクチン構築物の細胞内標的化を調べるための理想的な細胞型であるようである)は、インビトロ培養の間にそれらのヴァイベル-パラーデ貯蔵顆粒を急速に失う
。
【0097】
トランスフェクションの48時間後、D16/16細胞を、ヒルジンおよびACTHに対する抗体を用いて染色した。ヒルジン-CD4-P-セレクチンでトランスフェクトされた細胞において、
ヒルジンは、細胞質中に均質に分布した顆粒において検出された(図16A)。顆粒分布の
同じパターンはACTH特異的染色で見られ、これは、ヒルジンと同じ位置に局在化することを意味する(図16B)。これは、両方の抗体が染色に使用された場合に確認された(図16C)。
【0098】
対照的に、ヒルジン-CD4でトランスフェクトされたD16/16細胞は、ヒルジンを細胞内顆粒に蓄積しなかったが、細胞表面で高レベルのヒルジンを発現した(図16D)。二重染色
(図16F)は、ヒルジンおよびACTHがわずかな同じ位置に局在化することしか示さなかっ
た。
【0099】
ヒルジン-CD4-P-セレクチンを発現する細胞を、ホルボールエステルPMAで活性化し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。4158-81-7は、非刺激細胞の細胞表面でいず
れのヒルジンも検出しなかった(図17A)。しかし、PMA刺激の30分後、ヒルジンは細胞表面で検出された(図17B)。さらに、活性化D16/16細胞は、非活性化細胞とは異なりトロ
ンビンに特異的に結合した(図17C−4107-76-1で染色)。
【0100】
従って、顆粒を含む下垂体細胞株D16/16を使用することにより、ヒルジン-CD4-P-セレ
クチンが、特定の細胞内貯蔵顆粒に標的化され得ること、および機能的なキメラ分子は、活性化の際に放出され、そして細胞表面で暴露され得ることが明らかに証明された。
【0101】
6.トロンビンとヒルジン-CD4との間の相互作用は、トロンビンの触媒部位が不活化された場合に破壊される。
【0102】
P-セレクチン標的化配列を伴うおよび伴わないヒルジン-CD4への特異的トロンビン結合は明らかであった(図4および6)。トロンビン−ヒルジン相互作用の特異性をさらに強化するために、トロンビン(50μlTris緩衝化生理食塩水(TBS)、0.1%BSA、pH7.4中で210nmol)を、以下のいずれかと37℃で1時間プレインキュベートした:
−10倍モル過剰のネイティブな完全長ヒルジン(Biopharm);
−100倍モル過剰のD-Phe-Pro-Argクロロメチルケトンジヒドロクロリド(「PPACK-HCl」)(Calbiochem);または
−100倍モル過剰の、スルファト-Tyr64を有するヒルジン残基53-64を含む合成C末端ヒル
ジンドデカペプチドアナログ(AmericanDiagnostica)。
【0103】
トロンビン依存性触媒活性を、小さな色素形成性オリゴペプチド基質(H-D-Phe-Pip-Arg-pNA・2HCl(「S-2238」)(Quadratech))を用いて分析した。
【0104】
トロンビンがPPACK-HClおよびヒルジンにより不活化されたか否か確かめるために、5
μlの各反応混合物を95mlTBS、0.1%BSAで希釈し、そして50μlの4mMS-2238と37℃で10分間インキュベートした。
【0105】
予想されたように、色素形成性変換は、インヒビターなしでインキュベートされたトロンビンと比較して、PPACK-HClまたはヒルジンとともにインキュベートされたトロンビン
で観察されず、一方、ドデカペプチドは、S-2238切断により測定された場合、トロンビン依存性触媒活性に影響を及ぼさなかった。
【0106】
3つの異なる調製物を、細胞表面につなぎ止められたヒルジンを発現するトランスフェクタントに添加した。上記の手順を使用して、トロンビン結合を、抗プロトロンビン抗体または抗ヒルジン-トロンビン抗体を用いて調べた。図7Aに見られ得るように、ヒルジン
またはPPACK-HClで不活化されたトロンビンは、DAP.3の細胞表面で発現されたヒルジンにより結合されない。さらに、部分的なトロンビン-ドデカペプチド複合体結合しか観察さ
れなかった。DAP.3トランスフェクタントとは対照的に、CHO-K1細胞は、比較的高いトロ
ンビン-PPACK-HCl結合を示した(図7B)。この相互作用は、抗ヒルジン-トロンビンmAb4107-76-1で例示されるように非特異的であることが見出された。特異的トロンビン-PPACK-HCl-ヒルジン結合は検出されなかった。
【0107】
これは、細胞表面につなぎ止められたヒルジンが、その触媒部位でトロンビンを特異的および強力に結合することを確証する。
【0108】
7.CD4ドメインに固定された完全長TFPIおよび短縮型TFPIは、細胞表面で発現される
。
【0109】
TFPIを細胞膜につなぎ止めるために、融合タンパク質は、3つ全てのクニッツドメインを含む完全長TFPI(TFPI1-276)、またはクニッツドメインIIIおよびC末端を欠く短縮形態のTFPI(TFPI1-183)(Wun,1988)のいずれかに連結されたヒトCD4166-435からなる(図
8)。これらを、ヒルジンについて上記に記載された方法と同様の方法で合成し、TFPIおよびCD4配列をカセットクローニングストラテジーを用いて融合したが、ヒルジンとは異
なり、TFPIは哺乳動物タンパク質であり、従って内在性シグナルペプチドを含む。
【0110】
クニッツドメインIおよびクニッツドメインIIを含むTFPIのN末端部分をコードするDNA(675bp)を、以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-catcgtcgacggatcctagatgatttacacaatgaagaaagtacatgcactttgggc-3’
<配列番号12>
(SalI制限部位およびBamHI制限部位を導入する);および
5’-ggacctgcagaattcaaaaaggctgg-3’ <配列番号13>
(EcoRI部位およびPstI部位を含む)。
【0111】
TFPIのC末端と共に第3のクニッツドメインをコードするDNA(315bp)を、以下のプライマーを用いて増幅した:
5’-agcctttttgaattccacggtccctcat-3’ <配列番号14>
(EcoRI部位を有する);および
5’-cattgctataacaactgcagatatttttaac-3’ <配列番号15>
(PstI部位を含む)。
【0112】
CD4166-435を上記のように増幅した。
【0113】
制限部位のTFPI1-183cDNAの3’末端およびTFPI184-276cDNAの5’末端への導入により
、H184およびG185を、組換え融合タンパク質においてC184およびR185に変異した(図8)。さらに、P186をS186に変異させた。TFPIの停止コドンをPstI部位を導入することにより除去し、従ってM276をI276に変異し、そしてアミノ酸C277を付加した。CD4ドメイン3の
N末端にPstI部位を導入する経過において、L164およびQ165を、それぞれC164およびR165に変異させた。TFPI184-276cDNAにおいて、K265はE265に変異することが見出され、そし
てCD4166-435においてV328はA328に変異した(上記と同様)。
【0114】
全てのPCR産物を、pBluescriptSK(+)にクローニングした。
【0115】
完全TFPI-CD4cDNAを、pHβActpr-1gpt発現ベクターのBamHI部位に連結した。
【0116】
上記のように、補充DMEM中で維持されたDAP.3細胞を、上記のようにリン酸カルシウム
を用いてトランスフェクトした。クローンを、マウス抗ヒトTFPImAb 4903または4904(American Diagnostica)(両方10μg/ml)および未希釈OKT-4ハイブリドーマ上清(Reinherz,1979)を用いてFACSにより、TFPIおよびCD4発現について分析した。4903は、クニッツドメ
インIに対して指向され、一方、4904は、クニッツドメインIIに対して指向される。各サンプルについて105個の細胞を分析し、そして上記のように細胞株531をコントロールとして使用した。
【0117】
図9に示すように、TFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4の両方は、細胞表面で発現され得る。
【0118】
8.細胞表面につなぎ止められたTFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4は、FXa結合を与
える。
【0119】
この方法で細胞表面につなぎ止められたTFPIが、そのFXa結合活性を保持するか否かを
試験するために、以下の結合アッセイを使用した。
【0120】
安定にトランスフェクトされたDAP.3細胞を、PBS、5mM EDTAを用いた37℃で10分間の
処理により剥離した。過剰なPBS、0.1%BSA(w/v)での4回の洗浄後、100μl中の2.5×105個の細胞を、漸増濃度のFXaと37℃で1時間インキュベートした。
【0121】
次いで、細胞を2回洗浄し、そして100μl中の10μg/mlのウサギ抗ヒトFXa免疫グロブ
リン(RAFX-IG,EnzymeResearch Laboratories)と氷上で30分間さらにインキュベートした。さらに2回の洗浄後、細胞を、FITC結合ブタ抗ウサギポリクローナル免疫グロブリンとともに30分間インキュベートし、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
【0122】
図10に示すように、細胞表面でTFPI1-276-CD4およびTFPI1-183-CD4を発現するDAP.3細
胞は、用量依存性様式でFXaを強力に結合し(図10)、有意な結合が0.02nMで検出された
。完全長TFPI-CD4と短縮TFPI-CD4との間で、FXa結合の相違は検出されなかった。
【0123】
ポリクローナル抗TFPI免疫グロブリン画分(4901)またはモノクローナル4903および4904を用いてFXa結合をブロックすることもまた可能であった。
【0124】
細胞を、ネガティブコントロールとして抗ヘモグロビン抗血清(Dakopatts)を用いて、
漸増濃度の4901、4903、または4904とともに氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBS、0.1%BSAで2回洗浄し、そして5nMFXaと37℃で1時間さらにインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、そして上記のようにRAFX-IGとともにインキュベートし、
そしてFXa結合をFACSにより分析した。
【0125】
TFPI1-276-CD4へのFXa結合は、無関係な抗ヘモグロビンポリクローナルコントロールとともにインキュベートされた細胞と比較して、10μg/mlおよび80μg/mlのポリクローナル4901で、それぞれ27%および55%減少した(図11A)。減少したFXa結合はまた、4901とプレインキュベートされたTFPI1-183-CD4細胞について見出された(図11B)。
【0126】
TFPI1-276-CD4を4903または4904のいずれかでブロックした場合、アイソタイプ適合マ
ウス免疫グロブリンと比較して、33%少ないFXa結合が40μg/mlmAbで観察された(図12)。mAb 4903とmAb 4904との間でブロッキング活性の有意な相違は検出されなかった。
【0127】
これは、TFPIが、膜結合融合タンパク質として発現された場合にそのFXa結合活性を保
持することを最初に証明する。
【0128】
9.TFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4は、両方、FXaに対して機能的に活性である。
【0129】
細胞表面につなぎ止められたTFPIがFXaの機能を阻害するその能力を保持するか否かを
決定するために、FXaのタンパク質分解活性を、色素形成性基質N-a-Z-D-Arg-Gly-Arg-pNA・2HCl(「S-2765」)(Quadratech)を用いて分析した。
【0130】
トランスフェクトしたDAP.3細胞を上記のように剥離し、そして過剰TBS(pH7.4)、0.1%BSAで4回洗浄した。1ウェルあたり0.5×106個の細胞(100μl中)を種々の濃度のFXaとともに37℃で1時間インキュベートした。50μlの4mMS-2765を添加し、そして細胞を、37℃で2時間さらにインキュベートした。OD405を30秒毎に測定し、そしてOD405=1に達
するために必要とされる時間(残存する活性FXaを示す)を決定した。
【0131】
FXa活性を、用量依存様式で発現されたTFPI-CD4により阻害し、最も大きな阻害は、低
濃度のFXa(0.16nM)を添加した場合に示された(図13)。一連の実験において、TFPI1-183-CD4またはTFPI1-276-CD4を発現する細胞間でのFXa阻害の有意な相違は観察されなかった。
【0132】
従って、クニッツドメインIIは、TFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4の両方において細胞表面につなぎ止められた場合にその機能を保持する。
【0133】
10.TF1-219/FVIIa複合体は、第3のクニッツドメインの存在に関係なく結合する。
【0134】
組織因子および第VIIa因子の結合を使用して、クニッツドメインIもまたその機能を保持するか否かを確認し得る。
【0135】
組換えヒトTF1-219およびFVIIaを、それぞれ、E.coliおよびCHO-K1において生成した(O’Brien,1994)。これらを等モル濃度で混合し、そして25℃で15分間インキュベートして
、TF1-219/FVIIa複合体を得た。
【0136】
ヒトTFに対するポリクローナルウサギ免疫グロブリンを、標準的な方法に従って生成した。
【0137】
TFPI1-276-CD4またはTFPI1-183-CD4のいずれかを発現するDAP.3細胞を、5nMFXaと37℃
で1時間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、そしてTF1-219/FVIIa複合体を、100μl中の2.5×105個細胞に添加した。37℃で1時間後、トランスフェクタントを2回洗浄し
、そして50μlのポリクローナルウサギ抗TF免疫グロブリン(2.5μg/ml)と氷上で30分間インキュベートし、続いて2回洗浄し、FITC結合ブタ抗ウサギ免疫グロブリンとさらにインキュベーションした。ポジティブ細胞を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0138】
TF1-219/FVIIaは、TFPI1-276-CD4(図14A)およびTFPI1-183-CD4(図14B)の両方に等
しく効率的に結合し、一方、コントロール細胞株531への結合は少しも検出されなかった
。
【0139】
TF1-219/FVIIa複合体によるクニッツドメインIへの特異的な結合を確認するために、FVIIaを、1,5-ダンシル-Glu-Gly-Arg-クロロメチルケトン,ジヒドロクロリド(「1,5-DNS-GGACK・HCl」)とのプレインキュベーションにより不活化した。これはFVIIaの活性部位に結合し、そしてTFPIへの結合を阻害するが、一方、TF1-219/FVIIa複合体形成に影響を及
ぼさない(Bajaj,1992)。
【0140】
FVIIaを、最初に100倍モル過剰の1,5-DNS-GGACK・HClとともに20℃で18時間インキュベートし、そしてイオン交換クロマトグラフィーにより再精製した。活性部位が阻害されたFVIIa(FVIIai)を、等モル濃度のTF1-219とともに25℃で15分間インキュベートし、次いで、100μl中の2.5×105個細胞に添加した。後の工程は、上記の通りであった。
【0141】
図14から見られ得るように、結合した「活性」TF1-219/FVIIaと比較して、有意に少な
いTF1-219/FVIIai複合体がTFPI-CD4発現細胞に結合した。TFPI1-276-CD4またはTFPI1-183-CD4でトランスフェクトされたDAP.3間での相違は観察されなかった。
【0142】
従って、クニッツドメインIはまた、TFPI1-183-CD4およびTFPI1-276-CD4において細胞表面につなぎ止められた場合、その機能を保持する。従って、細胞表面でつなぎ止められたTFPIは、全体として、機能的に活性であることは明らかである。
【0143】
11.IPEC上で発現されたTFPI-CD4は、関連ヒト凝固因子およびブタTFを結合する。
【0144】
図18に示されるように、TFPI-CD4融合タンパク質はIPEC上で発現され得、そしてFXaお
よびFVIIaを結合する能力を保持する。TFPIがブタTFと物理的に相互作用し得ることを証
明するために、可溶性ヒトTFを用いる競合阻害アプローチを採用した。図19Aに示される
ように、飽和濃度のFXaおよびFVIIaの存在下で、可溶性ヒトTFのTFPIトランスフェクトIPEC(IL-1αでの前処理)への結合は、TFネガティブコントロールトランスフェクタント(IL-1α活性化されない)による結合と比較して有意に低減した。これは、ブタTFが、VIIaについて(従って、TFPI結合について)可溶性ヒトTFと競合していたことを示唆する。図19Bはこのことを支持し、トランスフェクタントが漸増濃度のブタTFに対する抗体ととも
にインキュベートされた場合に、TFPI-CD4でトランスフェクトされたIPEC(IL-1α予備活性化)への可溶性ヒトTFの結合が増大したことを示す。この抗体の効果は、ブタTFとFVIIaとの間の、またはブタTF-VIIa複合体とTFPI-CD4との間の相互作用の阻害を反映し得る。いずれにせよ、この結果は、IPECの表面上で発現されたTFPI-CD4融合タンパク質が、ブタTF-FVIIaと物理的に相互作用することを示唆する。
【0145】
12.IPEC上で発現されたTFPI-CD4は、TF依存性フィブリン生成を阻害する。
【0146】
図20Aは、TFPI-CD4でトランスフェクトされたIPECの凝固促進表現型を例示するための
1つの代表的な実験の結果を示す。トランスフェクトされた細胞上の融合タンパク質の存在は、コントロールIPECと比較した場合に凝固時間を一貫して延長した。しかし、この効
果はIL-1α活性化後のみに観察された(TFPI-CD4発現は、TFネガティブIPECを使用した場合、凝固時間に影響しなかった)。従って、TFPI-CD4は、予想されたように、TF依存性フィブリン生成を阻害したが、TF非依存性フィブリン生成を阻害しなかった。プレインキュベーション工程の間に漸増濃度で使用された抗TFPI抗体は、凝固時間を、トランスフェクトしていないIL-1α活性化コントロールIPECを用いて見られた凝固時間に正常化し得た(図20B)。これは、トランスフェクトした細胞の存在下での凝固時間の延長が、完全に、TFPIの特異的阻害作用によるものであったことを示す。
【0147】
13.細胞膜でのプロテインCアクチベーターの発現
Agkistrodoncontortrix contortrixの毒液から精製されたプロテインCアクチベータ
ー(McMullen,1989;Kisiel,1987)を含む異種構築物を発現するために、このタンパク質をコードするcDNAを合成した。タンパク質配列は、<配列番号16>である:
【0148】
【表1A】
【0149】
ブタコドン使用頻度の偏り(全てではないにしても、大部分の哺乳動物細胞に適用可能である)に従って、以下の一本鎖DNAを合成した<配列番号17>:
【0150】
【表1B】
【0151】
【表1C】
【0152】
この一本鎖DNAを相補的なオリゴヌクレオチドにアニールして、二本鎖分子を得た。制
限部位は二本鎖DNAのいずれかの末端に含まれ、これに、上記の方法と同様の方法でCD4アンカーおよびP-セレクチンシグナル配列を連結する。得られた分子を、上記と同様に、pHβActpr-1gptベクターに連結した。
【0153】
代替DNA供給源として、ヘビDNAライブラリーを、既知のタンパク質配列に基いてスクリーニングし得る。
【0154】
14.TFPI-CD4およびヒルジン-CD5の同時発現は、TF依存性凝固およびTF非依存性凝固の阻害を引き起こす。
【0155】
TFPI-CD4およびヒルジン-CD4の両方を発現する安定なトランスフェクタントを作製した。図21Aに示されるように、一次トランスフェクタントは、可変レベルのヒルジンおよび
低レベルのTFPIを発現した。しかし、大多数のトランスフェクタントによるこの適度な発現にもかかわらず、これらの細胞の凝固促進表現型は、コントロールと比較して有意に低減した(図21B)。IL-1α活性化IPECにおける両抗凝固性分子の細胞表面存在は、血漿を
凝固する時間を約300秒に著しく延長し、これは、カルシウム再添加ヒト血漿が自発的に
凝固するのにかかる時間に近い。抗ヒルジン抗体および抗TFPI抗体を用いたブロッキング研究は、これらの二重トランスフェクタントの変えられた表現型が、発現されたヒルジンおよびTFPIによる凝固の特異的阻害によるものであったことを確認した。
【0156】
本発明は、例示のためだけに上記に記載され、そして本発明の範囲および精神内にとどまりながら改変がなされ得ることが理解される。
参考文献(これらの内容は、本明細書中に援用される)
【0157】
【表2A】
【0158】
【表2B】
【0159】
【表2C】
【0160】
(配列表)
【0161】
【表3A】
【0162】
【表3B】
【0163】
【表3C】
【0164】
【表3D】
【0165】
【表3E】
【0166】
【表3F】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む非ヒト動物であって、該細胞は、キメラ組換えタンパク質を発現するものであり、該組換えタンパク質は、抗凝固の活性を伴う抗凝固領域および該組換えタンパク質を細胞膜にアンカーするアンカー領域を含む、非ヒト動物。
【請求項2】
前記組換えタンパク質の前記アンカー領域および前記抗凝固領域は、異なるタンパク質に由来する、請求項1に記載の非ヒト動物。
【請求項3】
前記抗凝固領域がヒルジン、組織因子経路インヒビター、ダニ抗凝固ペプチド、またはプロテインCアクチベーターの配列を含む、請求項1に記載の非ヒト動物。
【請求項4】
前記抗凝固領域が、組織因子経路インヒビターの配列を含む、請求項3に記載の非ヒト動物。
【請求項5】
前記アンカー領域は、膜タンパク質からの膜貫通配列を含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の非ヒト動物。
【請求項6】
前記細胞が組織内に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項7】
前記組織が細胞の集合物である、請求項6に記載の非ヒト動物。
【請求項8】
前記組織が繊維芽細胞、角膜、神経組織、心臓、肝臓または腎臓である、請求項6に記載の非ヒト動物。
【請求項9】
前記動物は、トランスジェニックマウス、トランスジェニックブタまたはトランスジェニックヒツジである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項10】
細胞を含む生物学的組織であって、該細胞は、キメラ組換えタンパク質を発現するものであり、該組換えタンパク質は、抗凝固の活性を伴う抗凝固領域および該組換えタンパク質を細胞膜にアンカーするアンカー領域である、生物学的組織。
【請求項11】
前記組換えタンパク質の前記アンカー領域および前記抗凝固領域は、異なるタンパク質に由来する、請求項10に記載の組織。
【請求項12】
組織または臓器を移植のために適したものとするための方法であって、該方法は、該組織または臓器において内皮細胞の表面にキメラタンパク質を発現させる工程であって、該タンパク質は、抗凝固の活性を伴う抗凝固領域および該組換えタンパク質を細胞膜にアンカーするアンカー領域である、方法。
【請求項13】
前記タンパク質の前記アンカー領域および前記抗凝固領域は、異なるタンパク質に由来するものである、請求項12に記載の方法。
【請求項1】
細胞を含む非ヒト動物であって、該細胞は、キメラ組換えタンパク質を発現するものであり、該組換えタンパク質は、抗凝固の活性を伴う抗凝固領域および該組換えタンパク質を細胞膜にアンカーするアンカー領域を含む、非ヒト動物。
【請求項2】
前記組換えタンパク質の前記アンカー領域および前記抗凝固領域は、異なるタンパク質に由来する、請求項1に記載の非ヒト動物。
【請求項3】
前記抗凝固領域がヒルジン、組織因子経路インヒビター、ダニ抗凝固ペプチド、またはプロテインCアクチベーターの配列を含む、請求項1に記載の非ヒト動物。
【請求項4】
前記抗凝固領域が、組織因子経路インヒビターの配列を含む、請求項3に記載の非ヒト動物。
【請求項5】
前記アンカー領域は、膜タンパク質からの膜貫通配列を含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の非ヒト動物。
【請求項6】
前記細胞が組織内に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項7】
前記組織が細胞の集合物である、請求項6に記載の非ヒト動物。
【請求項8】
前記組織が繊維芽細胞、角膜、神経組織、心臓、肝臓または腎臓である、請求項6に記載の非ヒト動物。
【請求項9】
前記動物は、トランスジェニックマウス、トランスジェニックブタまたはトランスジェニックヒツジである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
【請求項10】
細胞を含む生物学的組織であって、該細胞は、キメラ組換えタンパク質を発現するものであり、該組換えタンパク質は、抗凝固の活性を伴う抗凝固領域および該組換えタンパク質を細胞膜にアンカーするアンカー領域である、生物学的組織。
【請求項11】
前記組換えタンパク質の前記アンカー領域および前記抗凝固領域は、異なるタンパク質に由来する、請求項10に記載の組織。
【請求項12】
組織または臓器を移植のために適したものとするための方法であって、該方法は、該組織または臓器において内皮細胞の表面にキメラタンパク質を発現させる工程であって、該タンパク質は、抗凝固の活性を伴う抗凝固領域および該組換えタンパク質を細胞膜にアンカーするアンカー領域である、方法。
【請求項13】
前記タンパク質の前記アンカー領域および前記抗凝固領域は、異なるタンパク質に由来するものである、請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15C】
【図17】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図16】
【図16D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15C】
【図17】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図16】
【図16D】
【公開番号】特開2010−279348(P2010−279348A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269347(P2009−269347)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2008−7332(P2008−7332)の分割
【原出願日】平成10年3月26日(1998.3.26)
【出願人】(500165809)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2008−7332(P2008−7332)の分割
【原出願日】平成10年3月26日(1998.3.26)
【出願人】(500165809)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (32)
【Fターム(参考)】
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