説明

細胞集団を選別するため、および選別後の細胞集団を連続的にカプセル化するためのマイクロ流体システムおよび方法

【課題】ランゲルハンス島などの細胞集団を選別し、選別後の集団を、選別後の集団のサイズに適したサイズのカプセルに、連続的かつ自動的にカプセル化するためのマイクロ流体システムおよび方法を提供する。
【解決手段】マイクロ流体システム101は、細胞選別ユニット110を含むマイクロチャネルのアレイがエッチングされた基板を備えており、選別ユニットが、それぞれがおおむね20μm〜500μmの範囲のサイズであって、おおむね20〜10000個の細胞からなっているランゲルハンス島などの比較的凝集性に乏しい細胞集団Aを、当該選別ユニットを流れる際に、当該選別ユニットの出口に位置する並列に配置された少なくとも2つの選別マイクロチャネル111〜114へと分離することができる偏向手段を備えており、選別後の集団をカプセル化するためのユニット120へと連続的に運ぶように、それぞれ設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランゲルハンス島などの細胞集団を選別するため、および選別後の集団をそれら選別後の集団のサイズに適したサイズのカプセルに連続的かつ自動的に封入するためのマイクロ流体システムおよび方法に関する。本発明は、特には、そのような細胞集団の選別およびカプセル化の間の接続に適合されるが、より広くには、特に細胞、細菌、細胞小器官、またはリポソームの選別およびカプセル化の間の接続にも適用される。
【背景技術】
【0002】
細胞のカプセル化は、細胞または細胞集団を、移植の際の免疫系による攻撃から守るために、マイクロカプセル内に固定することからなる技法である。カプセルの多孔性が、栄養素の分子や酸素分子など、カプセル化された細胞の代謝に不可欠な低分子量の分子の進入を許さなければならないと同時に、抗体または免疫系の細胞など、より大きな分子量の物質の進入を阻止しなければならない。すなわち、カプセルのこの選択的な透過性が、カプセル化された提供者の細胞と、移植の受け手の免疫系の細胞との間に、直接の接触がないことを保証するように設計され、移植の際に使用される免疫抑制処置(この処置は、強力な副作用を有している)の量を抑えることを可能にする。
【0003】
カプセル化の多数の用途の中でも、膵臓に位置し、インスリンを生成することによって体内の血糖を調節するβ細胞を含むいくつかの細胞種で構成されている壊れやすい細胞の塊であるランゲルハンス島への適用を挙げることができる。これらの島のカプセル化は、インスリン依存の糖尿病(免疫系が自身のインスリン生成β細胞を破壊してしまう自己免疫疾患)を処置するために使用される従来からの細胞療法(例えば、膵臓または島の移植)の代替である。
【0004】
生成されるカプセルは、特には生体適合性、機械的強度、および選択的な透過性など、特定の基準に合致していなければならない。他の基本的な基準は、カプセルのサイズであり、細胞集団のサイズを調節することで、以下が可能になるからである(非特許文献1を参照)。
【0005】
‐細胞の周囲の「無用な」ポリマーの量を少なくでき、したがって細胞の応答時間を短縮することができる。例えば、適切なサイズのカプセルに包まれたランゲルハンス島による血糖の調節は、グルコースがより素早く島へと拡散し、生成されたインスリンがより素早く島から外に出るため、より迅速になる。
【0006】
‐カプセル内への酸素の拡散がより迅速になることで、細胞の酸素化が改善され、壊死領域の出現の危険が少なくなるため、カプセル化された島の生存性が最大化される。
【0007】
‐移植すべきカプセルの体積が小さくなり、これは、カプセルを組織の血管再生により適した領域に埋め込むことを可能にする。実際、この血管再生は、カプセル化された細胞の壊死を防ぐために不可欠である。なぜならば、細胞は、特には栄養素および酸素が良好に供給されるよう、血液ネットワークの近くに位置していなければならないからである。例えば、この体積の縮小は、インスリン依存の糖尿病の処置において、カプセル化された島を、血管生成により有利な領域である肝臓または脾臓、ならびに立体障害の理由でカプセルが通常埋め込まれる腹腔に埋め込むことを可能にする。
【0008】
生体適合性、機械的強度、または選択的な透過性といった特性を、文献に従って十分に得ることができるように見受けられる一方で、カプセルのサイズについては、文献に従って十分に得ることができるとは言えず、このことは、ランゲルハンス島のカプセル化において特に問題である。これは、現時点で本出願人の知るすべての文献において、これらの島の周囲に形成されるカプセルのサイズが固定されており、平均で600〜800μm程度である一方で、これらの島は、わずか20〜400μmの範囲のサイズを有するためである。したがって、島のサイズにかかわらずに固定であって同一であるカプセルのサイズは、とりわけ最も効果的な島は最も小さい島であることが最新の研究によって示されている(非特許文献2を参照)ため、問題である。
【0009】
公知の主要なカプセル化方法は、好みに応じて、
‐同軸な液体または空気ジェット(400μm〜800μmの範囲のサイズを有するカプセルが生成される(ただし、生成されるカプセルの平均サイズは、400μmよりも600〜800μmにより近い))、
‐ポテンシャルの相違(カプセルのサイズを小さくすることが優先される場合に最も一般的に使用されるカプセル化技法であり、この場合、カプセルのサイズは200〜800μmの範囲である)、または
‐振動技法(使用される溶液の粘度に制約されることがあるという欠点を抱えている)
を使用する。
【0010】
これらの技法の主たる欠点は、以下のとおりである。
【0011】
‐カプセルのサイズが、カプセル化すべきランゲルハンス島のサイズに必ずしも適していない。
【0012】
‐カプセルがゲル化されてポリカチオンの槽へと落とされ、その後に手作業で回収される点で、カプセル化の手順が自動化を欠いており、結果としてカプセルごとの重合時間にばらつきが生じる。
【0013】
‐カプセルのサイズの分散が、液滴のサイズが小さくなるにつれて大きくなる。
【0014】
‐生成されるカプセルの再現性に欠けており、生成されるカプセルが必ずしも球形でない。
【0015】
近年では、細菌、細胞、細胞小器官、ウイルス、核酸、またはたんぱく質のサイズの選別に適したマイクロ流体システムが、開発されてきており、それらのシステムの中でも、以下を挙げることができる。
【0016】
‐「決定論的横変位(deterministic lateral displacement)」、すなわち「DLD」によって選別を行うシステム(非特許文献6〜8、ならびに例えば文献WO−A−2004/037374、US−A−2007/0059781、およびUS−A−2007/0026381を参照)。このシステムは、障害物の周期的なアレイを使用して、選別対象の粒子の経路を選択的に妨げることにもとづいている。装置の形状によって決まる臨界サイズDcよりも小さい粒子は、全体としては、柱などの障害物による偏向を受けないが、このサイズDcよりも大きい粒子は、柱の各列において同じ方向に偏向させられる。結果として、最大の粒子の経路が、最小の粒子の経路に対して偏向させられ、粒子のサイズ分離が可能になる。DLD技法においては、2つの隣接する柱の間の間隔が、偏向させようとする粒子のサイズよりも常に大きいことが指定されている。この装置は、血液サンプル(赤血球、白血球、および血漿の分離)に適している。
【0017】
‐流体力学的ろ過によって選別を実行するシステム(非特許文献9,10、ならびに文献JP−A−2007 021465,JP−A−2006 263693、およびJP−A−2004 154747を参照)。これは、主チャネルおよび横チャネル間の流量の適切な比を選択することによって、それら横チャネルの流体抵抗を調節することからなる。結果として、臨界サイズ(流体抵抗の値によって決まる)よりも大きいサイズの粒子は、たとえ横チャネルの幅よりも小さいサイズであっても、これらの横チャネルに進入することができない。
【0018】
‐流線の偏向のみを使用してサイズによる選別を行うより単純なシステム(非特許文献11,12、ならびに例えば文献WO−A−2006/1020258を参照)。選別領域において、流線が低圧領域に向かって偏向させられる。流線の位置の相違が強調され、粒子は、自身の慣性中心が位置している流線をたどるため、小さな粒子と大きな粒子との間の位置の相違が強調される。
【0019】
‐臨界値よりも小さいサイズを有する分子の通過を許し(文献US−A−2005/0133480を参照)、あるいは粒子の濃縮または粒子を運んでいる流体の分離のために、流体のみの通過を許す(この場合には、文献WO−A−2006/079007を参照)ことができるフィルタを使用する選別システム。これらのフィルタ選別システムの主たる限界は、粒子によって流路が詰まりかねない点にある。
【0020】
‐マイクロ流体装置を外部のフィールド(例えば、光学的な蛍光または吸収の測定(文献WO−A−2002/023163およびWO−A−02/40874を参照)、光学トラップ、誘電泳動、伝導度測定、電位差測定または電流測定、リガンド/レセプタの結合の検出、など)に組み合わせてなる選別システム。
【0021】
これらの文献に提示されたすべてのマイクロ流体選別システムの主たる欠点は、それらが、ランゲルハンス島または同様のサイズの他の比較的凝集力に乏しい集団など、細胞集団の選別に全く適していないことである。実際、すでに述べたように、これらの集団のそれぞれは、そのサイズ(単一の細胞の約10μmに対し、ランゲルハンス島では20μm〜400μm)および弱い凝集力(使用されるマイクロ流体選別システムにおいて、弱いせん断応力が使用されなければならないことを意味する)ゆえに、細胞とはかなり異なった挙動を示す。
【0022】
そのような細胞集団を選別するための本出願人が知る唯一のシステムは、Union Biometrica社によって市販されている「COPAS」として知られるフローサイトメトリである。このシステムは、マイクロ流体式ではないが、レーザ照射のビーム内で集団のそれぞれの飛行時間を測定することによって、集団をサイズによって選別する(非特許文献13]を参照)。
【0023】
近年では、マイクロ流体カプセル化システムも開発されてきており、それらは、特には
・T分岐(非特許文献14を参照)、
・マイクロ流体流フォーカシング装置(Microfluidic flow focusing device:MFFD)のオリフィス(非特許文献15を参照)、
・構造化マイクロチャネル(非特許文献16を参照)、または
・ノズル(非特許文献17を参照)
において形成することができる乳濁液を使用する。
【0024】
これらのカプセル化システムは、多数の文献の主題であり、とりわけ文献WO−A−2004/071638、US−A−2007/0054119、FR−A−2776535、JP−A−2003 071261、およびUS−A−2006/0121122が挙げられ、さらに詳しくは、細胞または細胞集団のカプセル化ならびに形成されたカプセルのゲル化について、文献US−A−2006/0051329、WO−A−2005/103106、およびWO−A−2006/078841が挙げられる。
【0025】
ゲル化工程は、文献US−A−2006/0051329およびWO−A−2005/103106に記載されているように、コイルの形態のマイクロチャネルまたはH字形のマイクロチャネルを有するマイクロシステムにおいて直接的に実行される。
【0026】
これらのマイクロ流体カプセル化システムの主要な欠点は、導入部において上述した欠点と同じであり、細胞集団のサイズにかかわらず、ただ1つのカプセルサイズしか得られない点にある。本出願人の知るところでは、Wymanらの装置(非特許文献18および文献US−A−2007/0009668を参照)だけが、カプセルのサイズをランゲルハンス島などの細胞集団のサイズに合わせることを、カプセル化される島のサイズと関係なく20μmの領域の一定な厚さを有しているカプセルで包むことによって可能にしている。後者の文献においては、水相が油相の上方に配置され、これら2つの相のそれぞれの相対密度を調節することによって、島が水/油の界面に発見される。界面から特定の距離において油中に配置されたサンプリングチューブが、水相および島を微細なジェットにて取り出すことを可能にし、この微細なジェットが、表面張力の作用のもとで崩れ、固定の厚さの微細なヒドロゲル被膜が島の表面に残され、UV照射によって重合を生じる。しかしながら、この装置は、巨視的な装置であって、マイクロ流体システムではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】De Vos, Association between capsule diameter, adequacy of encapsulation, and survival of microencapsulated rat islet allografts. Transplantation, 1996. 62: p. 893-899.
【非特許文献2】Lehmann, R., Superiority of small islets in human islet transplantation. Diabetes, 2007. 56: p. 594-603.
【非特許文献3】Zimmermann, Fabrication of homogeneously cross-linked, functional alginate microcapsules validated by NMR-, CLSM-, and AFM-imaging. Biomaterials, 2003. 24: p. 2083-2096.
【非特許文献4】Goosen, Electrostatic droplet generation for encapsulation of somatic tissue: assessment of high-voltage power supply. Biotechnol.Prog., 1997. 13(497-502).
【非特許文献5】Seifert, Production of small, monodispersed alginate beads for cell immobilization. Biotechnol.Prog., 1997. 13: p. 562-568.
【非特許文献6】Huang, Continuous particles separation through deterministic lateral displacement. Science, 2004. 304(987-990).
【非特許文献7】Davis, Deterministic hydrodynamics: taking blood apart. PNAS, 2006. 103(40): p. 14779-14784.
【非特許文献8】Inglis, Critical particle size for fractionation by deterministic lateral displacement. Lab on a chip, 2006. 6: p. 655-658.
【非特許文献9】Yamada, Microfluidic particle sorter employing flow splitting and recombining. Anal.Chem, 2006. 78: p. 1357-1362.
【非特許文献10】Yamada, Hydrodynamic filtration for on-chip particle concentration and classification utilizing microfluidics. Lab on a chip, 2005. 5: p. 1233-1239.
【非特許文献11】Yamada, Pinched flow fractionation: continuous size separation of particles utilizing a laminar flow profile in a pinched microchannel. Anal.Chem, 2004. 76: p. 5465-5471.
【非特許文献12】Takagi, Continuous particle separation in a microchannel having asymmetrically arranged multiple branches. Lab on a chip, 2005. 5: p. 778-784.
【非特許文献13】Internet site of the company Union Biometrica, the address of which is http://www.unionbio.com/applications/app_notes/app_islet.html
【非特許文献14】Thorsen, Dynamic pattern formation in a vesicle-generating microfluidic device. Physical Review Letters, 2001. 86(18): p. 4163-4166.
【非特許文献15】Anna, Formation of dispersions using "flow focusing" in microchannels. Applied physics letters, 2003. 82(3): p. 364-366.
【非特許文献16】Sugiura, Interfacial tension driven monodispersed droplet formation from microfabricated channel array. Langmuir, 2001. 17: p. 5562-5566.
【非特許文献17】Sugiura, Size control of calcium alginate beads containing living cells using micronozzle array. Biomaterials, 2005. 26: p. 3327-3331.
【非特許文献18】Wyman, Immunoisolating pancreatic islets by encapsulation with selective withdrawal. Small, 2007. 3(4): p. 683-690.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上述のすべての欠点を改善するマイクロ流体システムであって、細胞選別ユニットを含むマイクロチャネルアレイがエッチングされた基板を備えており、該基板の周囲に保護カバーが接合されているマイクロ流体システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この趣旨で、本発明によるマイクロ流体システムにおいては、選別ユニットが、それぞれがおおむね20μm〜500μmの範囲のサイズおよびおおむね20〜10000個の細胞を有しているランゲルハンス島などの比較的凝集性に乏しい細胞集団を、当該選別ユニットを流れる際に、好ましくはそれらのサイズに従って、当該選別ユニットの出口に位置する並列に配置された少なくとも2つの選別マイクロチャネルへと分離することができる偏向手段を備えており、前記少なくとも2つの選別マイクロチャネルが、当該選別マイクロチャネルと同数に分類された選別後の集団を、やはり当該アレイに形成されている選別後の集団をカプセル化するためのユニットへと運ぶように、それぞれ設計されている。
【0030】
細胞集団または細胞集団を被覆するカプセルの「サイズ」という用語は、本明細書において、実質的に球形の集団またはカプセルの場合には、直径を意味することが意図されており、さらに一般的には、この集団またはカプセルの最大の横断寸法(例えば、回転楕円体の近似では、楕円形断面の長軸)を意味することが意図されている。
【0031】
本発明によるマイクロシステムの選別に専用のマイクロチャネルが、ランゲルハンス島などの細胞集団を、それらの規模によって、偏向によって分離できることに注目できる。これは、単一の細胞の選別にしか適していない公知のマイクロ流体システムから大きく相違する。実際、これらの島のサイズが、公知の様相で20〜400μmの範囲であるのに対し、細胞については平均で1〜10μmであり、島は、それらの壊れやすさおよび弱い凝集ゆえに、単一の細胞よりもさらに注意深く取り扱わなければならず、このことが、選別ユニットにおいて加えることができるせん断応力の範囲を制限している。
【0032】
好都合には、前記選別ユニットは、前記集団をサイズによって選別するための少なくとも1つの選別ステージを備えてもよく、そのような選別ステージは、それぞれ前記選別後の集団のための少なくとも2つのサイズ分類を前記選別マイクロチャネルに生成するように設計される。
【0033】
本発明によるシステムの所与のマイクロチャネルのグループによって形成されるサイズ選別ステージが、所望のとおりの数のサイズ分類を(並列に設けられる選別マイクロチャネルの数の関数として)得ることを可能にし、特にはこの選別に続いて、形成されるカプセルのサイズを選別後の細胞集団の各分類のサイズに合わせることを可能にする点に、注目できる。
【0034】
また、複数のサイズ選別ステージを連続的に接続(すなわち、選別ステージを次々に配置)して、選別ユニットの最終的な有効性を最適にできることにも注目できる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記選別ステージまたは各選別ステージの前記偏向手段が、受動的な流体力学的手段であり、この受動的な流体力学的手段が、当該選別ステージの少なくとも1つのマイクロチャネルに含まれる偏向柱からなる設備による決定論的横変位(DLD)を有する形式の手段であり、好ましくは流体力学的フォーカシング形式の手段であり、あるいは主マイクロチャネルに対して横方向に配置されたろ過マイクロチャネルによる流体力学的ろ過を有する形式の手段である。
【0036】
変形例として、前記選別ステージまたは各選別ステージの前記偏向手段は、本発明によれば、静電気力もしくは磁力または電磁波もしくは音波に組み合わせられた流体力学的手段であってよい。
【0037】
本発明の別の特徴によれば、前記選別後の集団をそれらの分類の関数として自動的にカプセル化できるカプセル化ユニットが、前記選別マイクロチャネルに流体連通して前記アレイにさらに形成されており、このカプセル化ユニットが、選別後の各集団の周囲に、生体適合性であり、機械的に強く、選択的に透過性である単層または多層のカプセルを連続的に形成することができる。
【0038】
このカプセル化ユニットは、並列に配置された複数のカプセル化サブユニットを備えてもよく、これら複数のカプセル化サブユニットが、それぞれ前記選別マイクロチャネルに連通しており、該選別マイクロチャネルを流れる選別後の集団のそれぞれのサイズ分類について、当該分類の各集団を可能な限りぴったりと囲むように設計された所定のサイズのカプセルを形成する。
【0039】
好都合には、各カプセル化サブユニットが、前記カプセルを形成するための装置であって、T分岐装置、マイクロ流体流フォーカシング装置(MFFD)、マイクロチャネル(MC)アレイ装置、およびマイクロノズル(MN)アレイ装置で構成されるグループから選択される装置を備えてもよい。
【0040】
変形例として、各カプセル化サブユニットは、各分類の前記選別後の集団を含んでいる水相と、該水相に非混和である相、例えば油相、との間の物質の交換器を備えてもよく、この交換器が、圧力の上昇によって前記2つの相の間の界面が破れることによって前記カプセルが形成されるように設計されている。
【0041】
本発明の別の特徴によれば、前記カプセル化ユニットが、形成されたカプセルをゲル化するための手段をさらに備えてもよく、このゲル化手段が、マイクロチャネルで構成された物質の交換器であって、カプセルを含んでいる、例えば油−アルギン酸塩形式の、カプセル化相から水性または非水性のゲル化相へとカプセルを移すために専用である交換器を備える。
【0042】
このようにして、本発明によるマイクロシステムが、今や作業者が、カプセル化および出口におけるあらかじめ選別された集団のサイズに合わせられているカプセルの回収に必要な物質に対応する種々のリザーバを満たすだけでよいという意味で、細胞集団のカプセル化手順の完全な自動化を可能にすることに、注目できる。
【0043】
したがって、マイクロシステムが、選別、カプセル形成、およびゲル化の各工程を、連続的かつ自動化された様相で実行し、単純なカプセル化および多層のカプセル化の双方に適合させることが可能である。後者の場合には、カプセル化モジュールが、カプセルを洗浄するための工程、および他のポリマーまたはポリカチオンの溶液に接触させる工程を組み込むことによって、複雑化される。
【0044】
好ましくは、前記マイクロチャネルのアレイに、前記選別後の集団を該集団を含んでいる培地から該集団を前記カプセル化ユニットに収容するように意図されたカプセル化相へと移すように設計された移送モジュールが形成され、この移送モジュールが、前記選別マイクロチャネルのそれぞれに流体連通しており、前記選別ユニットにおける圧力損失を最小化するように設計されている。
【0045】
実際、移植を目的とする島は、培地に保存されるが、カプセル化のために、ポリマー溶液(最も頻繁には、低いせん断応力でも高い粘性である非ニュートン流体)へと移さなければならない。カプセル化の手順を可能な限り自動化するために、前記移送モジュールが、流体抵抗が押しのけられる溶液の粘性に比例するという事実に鑑み、選別ユニットにおける圧力損失を抑えるために、選別ユニットとカプセル化ユニットとの間においてマイクロシステムへと一体化される。
【0046】
この移送モジュールは、マイクロシステムの合計の圧力を低くし、したがって加えられる圧力が高すぎる場合の漏れの危険性を少なくするという利点も有している。
【0047】
本発明の他の重要な特徴によれば、前記マイクロ流体システムが、好都合には、前記選別ユニットを前記カプセル化ユニットへと接続するためのモジュールをさらに備え、この接続モジュールが、前記カプセル化ユニットを前記選別ユニットに直接または選択的に連通させることによって、これら2つのユニットに層流の状態を維持するように設計される。
【0048】
公知のマイクロシステムがいずれも、選別工程をカプセル化工程へと接続してはいないことに注目できる。ここで、この接続は、選別ユニットの流体工学がカプセル化ユニットの流体工学を妨げる可能性があるため、容易には実現できない。したがって、これら2つのユニットに層流の状態を維持するために、関係するマイクロチャネルの全体としての圧力損失(すなわち、流体抵抗)をモデル化する必要がある。このモデル化は、カプセル化が最も一般的には非ニュートンポリマー(例えば、アルギン酸塩)を使用するため、特に複雑である。非ニュートンポリマーの粘性は、当該流体へと加えられるせん断応力に依存し、したがって全体システムのモデル化を難しくする。
【0049】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、この接続モジュールが、前記選別マイクロチャネルを前記カプセル化ユニットへとそれぞれ接続する中間マイクロチャネルで構成されており、これらの中間マイクロチャネルが、上流および下流の前記層流の状態を維持するために適した寸法および形状を有している。
【0050】
この典型的な実施形態によるこの接続モジュールの欠点は、これらの中間マイクロチャネルに必要とされる緻密な寸法設計に加え、多数の空カプセルが各カプセル化サブユニットにおいて形成されかねず、カプセル化サブユニットの出口において空カプセルと選別後の集団を含んでいるカプセルとの間の最終的な選別が必要になりかねない点にある。
【0051】
本発明の他の好ましい典型的な実施形態によれば、この接続モジュールが、選別後の集団を保存するための緩衝マイクロリザーバを備えており、これらの緩衝マイクロリザーバのそれぞれへと、前記選別マイクロチャネルのうちの1つが開いており、緩衝マイクロリザーバのそれぞれが、選別および濃縮後の集団を運ぶように意図された出口マイクロチャネルであって、例えば気泡式または溶解可能な阻止ゲル(カプセル化にアルギン酸塩が使用される場合には、好ましくはアルギン酸塩ゲルを含んでいる)を有する形式の流体バルブを備えている出口マイクロチャネルを介して、前記カプセル化ユニットへと選択的に接続され、前記バルブの開放および閉鎖のそれぞれによって、各マイクロリザーバの前記選別後の集団の濃度が、前記カプセル化ユニットにおいて形成されるカプセルの数の関数としてそれぞれ低下および上昇させられる。
【0052】
この好ましい流体バルブ接続モジュールが、この各マイクロリザーバの濃度の調節によって、空カプセルの形成を最小限にすることを可能にする点に、注目できる。
【0053】
好都合には、各緩衝マイクロリザーバが、前記バルブが閉鎖されているときに前記集団を含んでいる相を前記集団を残して排出できるように設計された複数の微細な横出口マイクロチャネルをさらに有することができる。
【0054】
一般に、本発明によるマイクロ流体システムは、カプセル化ユニットによって形成されたカプセルを個人へ移植できることに相違ないため、殺菌可能でなければならないことに注目できる。
【0055】
おおむね20μm〜500μmの範囲のサイズであって、おおむね20〜10000個の細胞からなっているランゲルハンス島などの比較的凝集性に乏しい細胞集団を選別するための本発明による方法は、前記集団を、分離すべき該集団のサイズおよび数に適した形状を有しているマイクロ流体システムのマイクロチャネルアレイに流す工程と、前記集団を、該集団のサイズなど、該集団のパラメータのうちの1つに従って互いに偏向させる工程と、で構成され、前記偏向は、前記集団を少なくとも2つの選別マイクロチャネルへと案内するような方法で行われ、該少なくとも2つのマイクロチャネルが、該少なくとも2つのマイクロチャネルと同数に分類された選別後の集団を並列に、この同じシステムにおける集団のカプセル化を視野に運搬する。
【0056】
好都合には、それぞれ前記選別後の集団のための少なくとも2つのサイズ分類を前記選別マイクロチャネルに生成するために、前記集団をサイズによって選別するための少なくとも1つの選別ステージが使用され、
それぞれの選別ステージが、
−好ましくは流体力学的フォーカシングにより、決定論的横変位(DLD)により、もしくは流体力学的ろ過による受動的な流体力学的偏向、または
−静電気力もしくは磁力または電磁波もしくは音波に組み合わせられた流体力学的偏向
を使用する。
【0057】
本発明の他の特徴によれば、これら選別後の集団を、さらにカプセル化することが可能であり、このカプセル化は、選別後の各集団の周囲に生体適合性であり、機械的に強く、選択的に透過性である単層または多層のカプセルを連続的に形成することによって、前記集団の分類の関数として、並列に、自動化された様相で行われる。
【0058】
好都合には、選別後の集団の各サイズ分類について、当該カテゴリの各集団を可能な限りぴったりと囲む所定のサイズのカプセルが形成され、好ましくは値D未満の臨界サイズに従う選別後の集団の分類について、約D+20μm〜D+150μm、好ましくはD+50μmのカプセルサイズのカプセルが形成される。
【0059】
好ましくは、これらのカプセルが、選別後の集団の各分類について、T分岐装置、マイクロ流体流フォーカシング装置(MFFD)、マイクロチャネル(MC)アレイ装置、およびマイクロノズル(MN)アレイ装置で構成されるグループから選択される装置によって形成される。
【0060】
変形例として、これらのカプセルを、各分類の選別後の集団を含んでいる水相と、この水相に非混和である相、例えば油相、との間の物質の交換によって形成することができ、圧力の上昇によって前記2つの相の間の界面が破れることで、前記カプセルが形成される。
【0061】
本発明の他の特徴によれば、形成されたカプセルが、それらのカプセルおよびそれらのカプセルを含んでいる、例えば油−アルギン酸塩形式の、カプセル化相を水性または非水性のゲル化相へと移すことによってゲル化される。
【0062】
カプセル化に使用されるポリマーは、例えばカプセル化に最も一般的に使用されるポリマーである、アルギン酸塩ヒドロゲルであってよい。しかしながら、本発明によるカプセル化は、このヒドロゲルに限られず、カプセル化ユニットが選択されるポリマーが必要とするゲル化の種類に合わせて構成される限りにおいて、これらに限られるわけではないがキトサン、カラギーナン、アガロースゲル、またはポリエチレングリコール(PEG)など、他のカプセル化材料も選択可能である。
【0063】
好ましくは、選別時の圧力損失を最小にするために、それぞれのカプセル化の前に、選別後の集団が、該集団を含んでいる培地から該集団を含むように意図されるカプセル化相へと移される。
【0064】
また好ましくは、本発明による方法は、選別とカプセル化との間の流体接続をさらに含み、この流体接続が、対応するマイクロチャネルに層流の状態を維持する効果を有し、この流体接続が、前記選別後の集団を直接または選択的に前記カプセル化相に連通させる。
【0065】
上述のように、この接続は、選別時およびカプセル化時に層流の状態を維持するために適した寸法および形状を有している中間マイクロチャネルによって実行することができる。
【0066】
変形例として、この接続を、好ましくは、選別後の集団を保存する緩衝マイクロリザーバ内の選別後の集団の各分類の濃度を調節することによって実行でき、緩衝マイクロリザーバは、前記選別マイクロチャネルのうちの1つに連通するとともに、選別および濃縮後の集団を運ぶ出口マイクロチャネルへと、流体バルブを介して選択的に接続され、このバルブの開放および閉鎖のそれぞれによって、前記マイクロリザーバ内の選別後の集団の濃度が、形成されているカプセルの数の関数としてそれぞれ低下および上昇させられることで、空のカプセルの形成が最小化される。また、このマイクロリザーバが、好都合には、前記バルブが閉鎖されているときに前記集団を含んでいる相のみを前記集団を残して排出できるように設計された複数の微細な横出口マイクロチャネルを備えている。
【0067】
好都合には、本発明の方法における前記選別される細胞集団が、ランゲルハンス島であり、50μm未満のサイズに従って選別された島について、70μm〜200μmの範囲のカプセルサイズでカプセル化が行われ、例えば500μmのサイズに従って選別されたる最大の島について、650μmに達することができるカプセルサイズでカプセル化が行われる。
【0068】
上述のように、マイクロ流体システムの本発明による1つの用途は、細胞、細菌、細胞小器官、もしくはリポソーム、または細胞集団を、好ましくは、最初の事例では付着分子による対象の分類に従い、細胞集団の事例ではサイズ分類に従って選別し、次いで選別後の各分類について連続的かつ自動的な様相でカプセル化を行うことで構成される。
【0069】
実際に、本発明は、細胞集団のサイズによる選別およびその後のカプセル化のみに限定されるわけではなく、広くには、細胞、細菌、細胞小器官、またはリポソームの選別とその後のカプセル化との任意の組み合わせであって、これらのきわめて異なる粒子からなる異種集団において細胞、細菌、細胞小器官、またはリポソームを選別し、対象の細胞/細菌/細胞小器官/リポソームのみをカプセル化するような方法での選別およびカプセル化の組み合わせに関することに、注目できる。
【0070】
本発明の他の利点、特徴、および詳細が、添付の図面を参照してあくまでも例として提示される以下のさらなる説明から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】製造方法の第1の段階にある本発明によるマイクロ流体システムの概略横断面図であり、基板の酸化を示している。
【図2】製造方法の第2の段階にある図1のシステムの概略横断面図であり、前記酸化後の基板上への感光樹脂の塗布を示している。
【図3】製造方法の第3の段階にある図2のシステムの概略横断面図であり、マイクロチャネルを生成するためのフォトリソグラフィおよびドライエッチングという後続の工程の結果を示している。
【図4】製造方法の第4の段階にある図3のシステムの概略横断面図であり、ディープエッチング工程の結果を示している。
【図5】製造方法の第5の段階にある図4のシステムの概略横断面図であり、樹脂の剥離およびウェットエッチングによる脱酸の工程の結果を示している。
【図6】製造方法の第6の段階にある図5のシステムの概略横断面図であり、酸化工程の結果を示している。
【図7】製造方法の第7の段階にある図6のシステムの概略横断面図であり、マイクロチャネルの断面を定めるための保護カバーの貼り付けの工程の結果を示している。
【図8】本発明の典型的な実施形態によるマイクロ流体システムの一部分の上方からの概略図であり、流体力学的ろ過による選別のためのユニットおよび該ユニットへと接続されたT分岐によるカプセル化のためのユニットを示している。
【図9】流体力学的フォーカシングによる選別を備えている本発明による選別ユニットの一例における流線をモデル化する画像である。
【図10】決定論的横変位(DLD)偏向手段を備えている本発明による選別ユニットのマイクロチャネルの上方からの概略図である。
【図11】図10の丸囲み部分の詳細図であり、これらの偏向手段によって得られる軌跡の偏向の例を記号的に示している。
【図12】流体力学的ろ過による選別を備えている本発明による選別ユニットの別の例における流線をモデル化する画像である。
【図13】選別後の島を培地からカプセル化に用いられるアルギン酸塩の溶液へと移すためのモジュールを形成しているマイクロチャネルの構成配置を概略的に表わしている画像である。
【図14】本発明による選別/カプセル化方法の実現の例において、4つのカプセル化サブユニットへとそれぞれ接続された4つの選別ステージを示しているブロック図である。
【図15】T分岐のフォーカシング装置を概略的に示している画像であり、本発明による各カプセル化サブユニットにおいて乳濁液を形成するように意図されている。
【図16】MFFD形式のフォーカシング装置を概略的に示している画像であり、本発明による各カプセル化サブユニットにおいて乳濁液を形成するように意図されている。
【図17】形成されたカプセルを油相から水相へと移すために本発明によるカプセル化ユニットに含まれるゲル化モジュールの概略図である。
【図17a】本発明によるカプセル化ユニットに備えることができる図17の変形例によるゲル化モジュールの概略縦断面図である。
【図17b】本発明によるカプセル化ユニットに備えることができる図17aの変形例によるゲル化モジュールの概略縦断面図である。
【図17c】図17aまたは図17bのゲル化モジュールの出口に計画される分離部材の本発明による変形例の一部分の概略縦断面図である。
【図18】選別ステージおよび対応するカプセル化サブユニットへと接続される本発明の第1の例による接続モジュールの概略図である。
【図19】選別ステージおよび対応するカプセル化サブユニットへと接続される本発明の第2の例による接続モジュールの概略図である。
【図20】好ましくは決定論的横変位(DLD)によって実行されるサイズの選別に後続する本発明の別の典型的な実施形態による受動流体カプセル化ユニットの概略図である。
【図21】本発明によるカプセル化ユニットの概略図であり、特にはフォーカシング装置による3層カプセルの形成およびそのゲル化の工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明によるマイクロ流体システム1は、例えば、シリコン上のマイクロエレクトロニクスの公知の方法にもとづく種々の工程(すなわち、特には基板3上でのリソグラフィ、ディープエッチング、酸化、剥離、および保護カバー2の接合)を説明している図1〜図7を参照して、製造することができる。このシリコン上の技法は、きわめて正確(マイクロメートル程度)であり、エッチングの深さおよびユニットの幅の両方に関して制約がないという利点を有している。より具体的には、マイクロシステム1を製造するための手順は、以下のとおりである。
【0073】
酸化ケイ素4(図1)が、シリコン基板上に成膜される。次いで、感光樹脂5が、前面への塗布によって成膜され(図2)、その後に酸化ケイ素4が、フォトリソグラフィおよび酸化ケイ素4のドライエッチングによって、樹脂5の層を通してシリコン基板3までエッチングされる(図3)。
【0074】
次いで、この基板3が、ディープエッチング6によって、所望されるマイクロチャネルの深さまでエッチングされ(図4)、その後に樹脂が、「剥離」される(図5)。次いで、残っている熱酸化ケイ素4が、ウェットエッチングによる脱酸によって除去され(図5)、その後に、新たな熱酸化物7の層が成膜される(図6)。
【0075】
次いで、得られたチップが切り出され、ガラスまたは観察を可能にすべく透明である他の材料で作られた保護カバー2が、例えば陽極接合または直接接合によって貼り付けられる(図7)。
【0076】
マイクロチャネルまたは毛管(不図示)の組み立ての前に、疎水シラン化形式の表面処理を行うことも可能である。
【0077】
上述の手順は、たどることができる多数の製造手順のうちの1つである。さらには、基板3について、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)または他のエラストマーなどといったシリコン以外の材料も、例えばフォトリソグラフィによって前もって作成されたマスター(すなわち、母型)上への成形によって、、使用することが可能である。この製造技法が、マイクロ流体システムが、選別ユニットおよびカプセル化ユニットの間を接続するためのモジュールを備えており、そのようなモジュールが、図18および図19を参照して、流体バルブを備えている場合に、きわめて適していることに注意すべきである。
【0078】
図8に示した本発明の例によるマイクロ流体システム101は、一方では、流体力学的ろ過によって集団Aをサイズによって選別するためのユニット110と、カプセル化ユニット120とを備えている。選別ユニット110は、4つの横選別チャネル111〜114を終端としている。カプセル化ユニット120は、4つのカプセル化サブユニット121〜124へと分割され、4つのカプセル化サブユニット121〜124のそれぞれが、上記マイクロチャネルのそれぞれへと接続され、サイズ分類Atの選別済みの集団を輸送する。
【0079】
この分類ユニット110の原理が、図12に示されており、壁への集団Aの集中にもとづいている。より具体的には、この図12に関して、横マイクロチャネル111〜113の流体抵抗が、主マイクロチャネル115とこれらの横マイクロチャネルとの間の流量の比を適切に選択することによって調節される。その結果、集団Aは、それらのサイズおよびこれらの横マイクロチャネルのそれぞれの流体抵抗の関数として、横チャネル111〜113のうちの1つにだけ進入することができる。横マイクロチャネルの流体抵抗は、そのようなマイクロチャネル111、112、113、または114に進入できる集団Aのサイズ範囲を割り出すために、精密に計算される。
【0080】
集団Aを壁に集中させるための溶液Sが、分岐117〜119を介して主マイクロチャネル115に連通している二次マイクロチャネル116へと注入され、この溶液Sは、例えば培地またはアルギン酸塩など、ユニット110の入り口Eにおいて注入される集団Aを含んでいる溶液と同じであってよい。
【0081】
このようにして、選別ユニット110は、ランゲルハンス島などの細胞集団Aを、以下の4つの分類に従って選別できるようにする。
【0082】
‐100μmよりも小さい島At
‐100〜200μmの島At
‐200〜300μmの島At、および
‐300μmを超える島At
図12の変形例として、図8のシステムにおいて、図9の流体力学的フォーカシングによって選別を行うためのユニット210を使用することも、可能であると考えられる。図9において、選別前の集団Aの導入口、フォーカシング流体Sを使用する動的フォーカシング装置211、ならびに偏向ゾーン212の出口に位置する第1の選別マイクロチャネル213および第2の選別マイクロチャネル214を見て取ることができる。細胞集団が自身の慣性中心が位置している流線をたどるという仮説に従い、第1の選別マイクロチャネル213が、最小であるという事実ゆえに偏向させられて選別された集団Atを運び、第2の選別マイクロチャネル214が、最大であるとして選別された集団Atを運ぶ。フォーカシング流体の一部(集団を含んでいない)のための出口マイクロチャネル215も、このゾーン212の出口に配置されている。
【0083】
図12の別の変形例によれば、図8のシステムにおいて、柱311のアレイを使用してDLDによって選別を行うための図10および図11のユニット310を使用することも、可能であると考えられる。柱311のアレイが、マイクロチャネル312の内部に所定の方法で配置され、その幾何学的特徴によって、細胞集団の臨界サイズDcがもたらされる。Dcよりも小さな粒子は、柱312のアレイによって偏向されることがなく、全体として流体の流線をたどる一方で、Dcよりも大きい粒子は、柱312のそれぞれの横列において偏向させられ、結果として最小の粒子から分離される。複数の選別ステージを、互いに縦列に配置できることに注意すべきである。この選別ユニット310は、選別対象の集団Aを含んでいる溶液と同時に注入されるフォーカシング用バッファ液Fを使用する。
【0084】
図10に見て取ることができるとおり、このユニット310の出口において、集団を含まないバッファ液F、ならびに3つの分類の選別済み集団At、At、およびAt(この典型的な実施形態においては、200μm未満、200〜300μm、および300μmよりも大きいランゲルハンス島にそれぞれ対応する)が、回収される。このように、この例においては、異なる幾何学的特徴の2つの選別ステージが縦列に配置され、2つの臨界選別サイズDc=200μmおよびDc=300μmを得ることを可能にしている。
【0085】
図8に戻ると、選別済みの集団Atを運ぶ4つの横選別マイクロチャネル111〜114が、ここではT分岐型である4つのカプセル化サブユニット121〜124へとそれぞれ開いている。4つのカプセル化サブユニット121〜124のそれぞれを、油Hが、図15を参照してカプセルCを形成するために通過している。図15には、公知の方法で、この分岐点において合流する2つの相(油およびアルギン酸塩)の間の接触による乳濁液の形成が示されている。変形例として、図8のT分岐を図16のMFFDフォーカシング装置(この例においては、2つの油相および1つのアルギン酸塩相を合流させる)で置き換えることも、可能であると考えられる。
【0086】
図17が、図8のそれぞれのカプセル化サブユニット121〜124において使用することができ、アルギン酸塩主体のカプセルCをゲル化のために油相から水相へと移すことができるゲル化モジュール125について、考えられる1つの構造を例として示している。このモジュール125は、例えば全体としてH字形であるが、
‐H字の縦棒の上端の上流に接続され、水溶液にてCa2+イオンを運ぶように意図された入り口マイクロチャネル126と、この同じ縦棒の下端に位置し、合流する3つのマイクロチャネルを備えており、その2つが油相を運ぶように意図され、3つ目がアルギン酸塩を運ぶように意図されており、油中にアルギン酸Na主体のカプセルCを形成するMFFD形式のカプセル化装置127と、
‐H字の他方の縦棒の上端の下流に接続され、Ca2+イオンを含んでいる水溶液とこれらのアルギン酸塩主体の運ばれたカプセルCとの混合物を含むように意図された出口マイクロチャネル128と、この他方の縦棒の下端に位置する油相を収容しているマイクロチャネル129と、
を備えている。
【0087】
図17aの変形例に示されているゲル化モデル135は、本質的には、
‐*上流においてカプセル化された細胞集団Aを含んでいる油相を運ぶように意図された水平向きの入り口マイクロチャネル136、および
*上記マイクロチャネルに連通しており、上記集団を被覆しているカプセル(アルギン酸塩などの親水性化合物を主体とする)を重合によってゲル化させることができるカルシウムなどの物質を含んでいる水相を、上記マイクロチャネルに側方から注入するように意図された垂直向きの入り口マイクロチャネル137
からなる2つの入り口136および137と、
‐セパレータまたは「壁」140(例えば、これらに限られるわけではないが、ケイ素、ガラス、またはPDMSなどのエラストマーで作られる)によって互いに隔てられ、この壁140の各側に位置している
*カプセル化された細胞集団Aがカプセルを構成している材料(例えば、アルギン酸塩)の親水性ゆえに油相から上方の水相へと移動することで、カプセル化された細胞集団Aを含んでいる水相を運ぶように意図された上側出口138、および
*油相の取り出しのための下側出口139
からなる2つの出口138および139と、
を備えている。
【0088】
図17bに示されているゲル化モジュール145は、上述の親水性の引き寄せによる移動の場所である水平向きの入り口マイクロチャネル136の領域に、DLD装置において使用される形式の軌道変更ピラーまたは柱146の設備(すなわち、隣り合う2つのピラー146間の間隔が、カプセル化された集団Aのサイズよりも大きい)を有しており、上述の親水性の引き寄せによる移動に決定論的横変位の効果を付加することによって、カプセル化された集団Aの油相から上方の水相への横変位を増幅できるようにしている点においてのみ、図17aのゲル化モジュールから相違している。
【0089】
図17aまたは図17bによるゲル化モジュール135、145のセパレータ140の変形実施形態を示している図17cに示されているように、水相および油相の分離を最適にするために、「2枚壁」の形態のセパレータ150を好都合に使用することが可能である。このセパレータ150は、中央のすき間チャネル153によって互いに隔てられつつ重ねられた2枚の壁または仕切り151および152で構成されている点においてのみ、先のセパレータとから相違しており、モジュール135または145の出口において、それぞれより純粋な油相または水相の回収を可能にするとともに、このすき間チャネル153によって、中央の水溶液/油の界面を除去することを可能にしている。より具体的には、このチャネル153について計画される幅が、ゲル化モジュール135、145から出るカプセル化済みの集団Aを運ぶことがないような幅である。この2枚仕切りのセパレータ150が、特には油中に残る微量の水溶液を少なくして、この油を再使用可能にすることに、注意すべきである。
【0090】
これらの図17、図17a、図17b、および図17cの変形例として、例えば、これに限られるわけではないが、ゲル化を水層においてではなく、1−ウンデカノールにおいて直接実行する図21による3つのアルギン酸塩−ポリ−L−リシン−アルギン酸塩層を有するカプセル化ユニット220に含まれているゲル化モジュール225を使用することが可能である。
【0091】
この図21に見て取ることができるとおり、カプセルが、MFFD形式のカプセル化装置221の段階で生成され、次いでモジュール225において、CaIを含んでいる1−ウンデカノールの流れを導入することによってゲル化される。次いで、第1のH形洗浄モジュール226の段階において、水相へと移されて洗浄される。
【0092】
次いで、カプセルは、コイル状のチャネル227においてPLL(ポリ−L−リシン)ポリカチオンの溶液に接触させられる。コイル状のチャネル227は、このPLL溶液におけるカプセルの培養時間の調節を可能にする。続いて、このカプセルが、第2の洗浄モジュール228において未結合のPLLを取り除くためにNaCl溶液で洗浄され、次いでNaCl洗浄液も、マイクロチャネル229において除去される。
【0093】
最終工程において、カプセルは、取り付けモジュール230においてアルギン酸塩の外側層で被覆され、ユニット220の出口において3層のアルギン酸塩−PLL−アルギン酸塩のカプセルが得られる。
【0094】
図13は、培地からカプセル化に使用されるアルギン酸塩の溶液へと選別された細胞集団(例えば、ランゲルハンス島)を移すためのモジュール20であって、本発明によるマイクロ流体システムに好都合に取り入れることができるモジュール20について、有用な構造を示している。この移送モジュール20を形成するマイクロチャネルのそれぞれの流体抵抗およびサイズは、これらの選別された集団が、主マイクロチャネルを流れるように強いられ、したがって培地からアルギン酸塩(または、他のポリマー)の溶液へと渡されるように、調節される。
【0095】
図18および図19は、それぞれ図8の選別ステージ111〜114のうちの1つへと接続でき、かつこの同じ図8の該当するそれぞれのカプセル化サブユニット121〜124へと接続できる接続モジュール30および40について、2つの好ましい例を示している。それぞれの接続モジュール30、40は、選別ユニット110およびカプセル化120の双方を互いに選択的に連通させることによって、これら2つのユニット110および120において層流の状態を保つように設計されている。
【0096】
これら2つの図18および図19を参照すると、該当の接続モジュール30、40が、どちらも、選別された集団を保存するための緩衝マイクロリザーバ31、41を有しており、選別マイクロチャネル111〜114が、この緩衝マイクロリザーバ31、41へと開いている。緩衝マイクロリザーバ31、41は、流体バルブ32、42によって、バルブ32、42が開かれたときに選別および濃縮された集団を運ぶように意図された出口マイクロチャネル33、50を介して、カプセル化サブユニット121〜124へと選択的に接続される。さらに、それぞれのマイクロリザーバ31、41は、バルブ32、42が閉じられたときに集団を含んでいる相を集団なしで排出(例えば、培地またはアルギン酸塩の溶液の排出)できるよう、複数の微細な横出口マイクロチャネル34、44を有している。
【0097】
バルブ32、42を閉じることで、カプセル化溶液中の集団の濃度が、形成される空のカプセルの数を少なくするために十分であるような方法で、集団を保存し、特には濃縮することができるようになる。微細なマイクロチャネル34、44が、バルブ32、42を閉じても該当の選別ステージの上流の流体の流線に変化が生じないようにすることを可能にする(なお、これらのマイクロチャネル34、44のサイズは、集団が進入できず、したがってマイクロリザーバ31、41に濃縮を生じさせるようなサイズである)。
【0098】
より具体的には、図18を参照すると、この例においては、チップに組み込まれた抵抗加熱素子32aによって以下の方法で熱的に開放および閉鎖の制御が行われる「気泡」式のバルブ32が使用される。空気が室温に保たれているとき、バルブ32は開いている。バルブの駆動チャンバ32bに収容されている空気の温度が上昇すると、結果として気体の圧力が高まり、この気体が出口マイクロチャネル33へと導入され、流体の通過を阻止する。
【0099】
より具体的には、図19を参照すると、この例においては、溶解可能なブロック用ゲルを備え、好ましくはアルギン酸塩ゲルを備えている形式のバルブ42が使用される。バルブ42は、アルギン酸塩溶液をCa2+イオンに接触させることによってアルギン酸塩ゲル42aを形成することによって閉じられる。バルブ42の開放は、EDTAあるいはクエン酸ナトリウムまたはEGTAタイプの他の任意のCa2+イオンキレート剤の溶液によるアルギン酸塩ゲル42aの溶解に対応する。EDTAおよびCa2+溶液の相対圧力を制御することによって、それぞれの種の量が、EDTAが過剰である場合に、すべてのCa2+イオンがキレートされて、アルギン酸塩ゲル42aがEDTAによって溶かされるような方法で制御され、反対に、自由なCa2+イオンによってゲルの形成が可能にされるような方法で制御される。
【0100】
ゲル42aの位置は、アルギン酸塩、Ca2+、およびEDTAの各相の相対圧力によって決定される。アルギン酸塩を運ぶマイクロチャネル45が閉塞することがないよう、少量のEDTAを、このアルギン酸塩と同時に導入することができる。
【0101】
ひとたび集団濃縮工程が完了し、アルギン酸塩ゲル42aが溶かされると、EDTA循環圧力(出口マイクロチャネル43に関して互いに反対側にある2つの異なるマイクロチャネル46および47へと注入されるEDTA)およびCa2+イオン循環圧力(培地を運ぶマイクロチャネル49に隣接するマイクロチャネル48へと注入されるCa2+イオン)は、実質的にゼロであってよく、したがって集団の生存性に関して完全に無害であるアルギン酸塩およびこの培地のみが、チャンバ43内を循環する。さらに、チャンバ43は、選別および濃縮後の集団を該当のカプセル化サブユニット121〜124へと運ぶための出口50、およびCa2+イオンのみを放出するための微細フィルタマイクロチャネル51aを備えている出口51を有している。
【0102】
この形式のバルブ42の主たる利点が、本発明によるマイクロシステムへの組み込みに関して技術的な厄介事が存在しない点にあることに、注意すべきである。
【0103】
図20が、決定論的横変位(DLD)によって実行されるサイズ選別に後続する本発明によるカプセル化ユニット320の一変形例を概略的に示している。選別後の細胞集団Atが、受動流体工学によってカプセル化され、カプセル化が、局所的な圧力上昇が現れて、水相−油の界面が破れたときに生じる。
【0104】
より具体的には、このカプセル化ユニット320は、
‐選別された集団Atを溶液(例えば、これらに限られるわけではないが、生理食塩水、培地、またはアルギン酸塩)中に含んでいる水相のための第1の入り口321であって、水平なマイクロチャネル321aを定めている第1の入り口321、
‐水相に非混和性である相(例えば、油、ウンデカノール、「FC」)のための第2の入り口322であって、前記第1の入り口321の反対側かつ下方に設けられた第2の入り口322、
‐第1の入り口321を介して導入される水相のための2つの反対向きの出口323および324であって、第1の入り口321よりも下方かつ第2の入り口322よりも上方に設けられており、マイクロチャネル321aを直角に延長する垂直なマイクロチャネル325に連通している2つの(水平な)横マイクロチャネル323aおよび324aによって互いに接続されている2つの反対向きの出口323および324、ならびに
‐カプセル化された細胞集団Atを含んでいる非混和物または油相を排出するための出口326であって、この非混和相のための第2の入り口322の反対側の同じ高さに設けられ、第1の入り口321から由来する集団を重力によって受け入れるための垂直な排出マイクロチャネル325に連通している下部カプセル化マイクロチャネル327を、第2の入り口322と一緒に形成している出口326
を備えている。
【0105】
三次元(マイクロ流体の入り口および出口321、322、323、324、および326が、同じ平面に位置していないという意味で)に形成されたこのカプセル化ユニット320が、2つの横マイクロチャネル323aおよび324aの障害からもたらされる上述の局所的な圧力上昇によるだけでなく、重力による細胞集団の沈降の力によってもカプセルCを形成できることに、注意すべきである。
【0106】
結論として、図14に例として示されるとおり、本発明の選別/カプセル化方法は、所与の数のカプセル化サブユニット121〜124を、選別ユニット110(好ましくは、サイズ選別ユニット)の同数の選別ステージ111〜114へと、対応する数の接続モジュール30、40を介して、自動的な様相で連続的に接続することを可能にする。その結果、例えばランゲルハンス島を、それぞれ相応しいサイズのカプセルに組み合わせられた4つの分類へと選別することができる。
【0107】
‐選別ステージ111において選別され、カプセル化サブユニット121において直径200μmのカプセルでカプセル化される100μm未満のサイズの島
‐選別ステージ112において選別され、カプセル化サブユニット122において直径300μmのカプセルでカプセル化される100〜200μmの間のサイズの島
‐選別ステージ113において選別され、カプセル化サブユニット123において直径400μmのカプセルでカプセル化される200〜300μmの間のサイズの島
‐選別ステージ114において選別され、カプセル化サブユニット124において直径500μmのカプセルでカプセル化される300μm超のサイズの島
このように、本発明による方法によれば、形成されるカプセルのサイズを、細胞集団の選別に続いて、選別された集団の種々の分類のサイズに可能な限り近くなるように構成できることが理解される。その結果、好都合なことに、
‐集団の周囲に形成されるポリマーの量が最小限になり、したがって集団の応答時間が最短になり、
‐特には酸素の拡散がより迅速になることで、移植の際の壊死領域の出現の危険性が少なくなるため、カプセル化された集団の生存性が最適化され、
‐移植すべきカプセルの体積が最小限になるため、組織の血管再生にとってより有利な領域にカプセルを埋め込むことが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞選別ユニット(110、210、310)を含むマイクロチャネルのアレイがエッチングされた基板(3)を備えており、該基板(3)の周囲に保護カバー(2)が接合されているマイクロ流体システム(1、101)であって、
前記選別ユニットは、それぞれがおおむね20μm〜500μmの範囲のサイズであって、おおむね20〜10000個の細胞からなっているランゲルハンス島などの比較的凝集性に乏しい細胞集団(A)を、当該選別ユニットを流れる際に、当該選別ユニットの出口に位置する並列に配置された少なくとも2つの選別マイクロチャネル(111〜114)へと分離することができる偏向手段(211、311)を備えており、
前記少なくとも2つの選別マイクロチャネル(111〜114)は、当該選別マイクロチャネルと同数に分類された選別後の集団(At)を、やはり前記アレイに形成されている前記選別後の集団(At)をカプセル化するためのユニット(120、220、320)へと運ぶように、それぞれ設計されており、
前記選別ユニット(110、210、310)は、好ましくは、前記集団(A)をサイズによって選別するための少なくとも1つの選別ステージを備えており、前記選別ステージは、それぞれ前記選別後の集団(At)のための少なくとも2つのサイズ分類を前記選別マイクロチャネル(111〜114)に生成するように設計されている、マイクロ流体システム(1、101)。
【請求項2】
前記選別ステージまたは各選別ステージの前記偏向手段(211、311)は、受動的な流体力学的手段であり、
前記受動的な流体力学的手段は、当該選別ステージの少なくとも1つのマイクロチャネル(312)に含まれる偏向柱(311)からなる設備による決定論的横変位(DLD)を有する形式の手段であり、好ましくは流体力学的フォーカシング形式の手段であり、あるいは主マイクロチャネル(115)に対して横方向に配置されたろ過マイクロチャネル(111〜114)による流体力学的ろ過を有する形式の手段である、請求項1に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項3】
前記選別ステージまたは各選別ステージの前記偏向手段は、静電気力もしくは磁力または電磁波もしくは音波に組み合わせられた流体力学的手段である、請求項1に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項4】
前記選別後の集団(At)をそれらの分類の関数として自動的にカプセル化できるカプセル化ユニット(120、220、320)は、前記選別マイクロチャネル(111〜114)に連通して前記アレイにさらに形成されており、
前記カプセル化ユニットは、選別後のそれぞれの集団の周囲に、生体適合性であり、機械的に強く、選択的に透過性である単層または多層のカプセル(C)を連続的に形成することができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項5】
前記カプセル化ユニット(120)は、並列に配置された複数のカプセル化サブユニット(121〜124)を備えており、
前記複数のカプセル化サブユニット(121〜124)は、それぞれ前記選別マイクロチャネル(111〜114)に連通しており、該選別マイクロチャネルを流れる選別後の集団(At)のそれぞれのサイズ分類に対して、当該分類の各集団を可能な限り密接して囲むように設計された所定のサイズのカプセル(C)を形成する、請求項4に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項6】
各カプセル化サブユニット(121〜124)は、前記カプセル(C)を形成するための装置(127、221)を備えており、
前記装置(127,221)は、T分岐装置、マイクロ流体流フォーカシング装置(MFFDs)、マイクロチャネル(MC)アレイ装置、およびマイクロノズル(MN)アレイ装置からなるグループから選択される、請求項5に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項7】
各カプセル化サブユニット(121〜124)は、各分類の前記選別後の集団(At)を含んでいる水相(321)と、該水相に非混和である相(321)、例えば油相と、の間の物質の交換器を備えており、
前記交換器は、圧力の上昇によって前記2つの相の間の界面が破れることによって前記カプセル(C)が形成されるように設計されている、請求項5に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項8】
前記カプセル化ユニット(120、220)は、形成されたカプセル(C)をゲル化するための手段(125、135、145、225)をさらに備えており、
前記ゲル化手段(125、135、145、225)は、マイクロチャネルで構成された物質の交換器を備えており、
前記交換器は、カプセルを含んでいる例えば油−アルギン酸塩形式のカプセル化相から水性または非水性のゲル化相へとカプセルを移すことを目的とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項9】
前記選別後の集団(At)を、該集団を含んでいる培地から該集団を前記カプセル化ユニット(120、220、320)に収容するように意図されたカプセル化相へと移すように設計された流体移送モジュール(20)は、前記マイクロチャネルのアレイにさらに形成されており、
前記移送モジュールは、前記選別マイクロチャネル(111〜114)のそれぞれに流体連通しており、前記選別ユニット(110、210、310)における圧力損失を最小化するように設計されている、請求項4〜7のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項10】
前記選別ユニット(110、210、310)を前記カプセル化ユニット(120、220、320)へと接続するためのモジュール(30、40)をさらに備えており、
前記接続モジュールは、前記カプセル化ユニットを前記選別ユニットに直接または選択的に連通させることによって、前記2つのユニットが層流の状態を維持するように設計されている、請求項4〜9のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項11】
前記接続モジュールは、前記選別マイクロチャネル(111〜114)を前記カプセル化ユニット(120、220、320)へとそれぞれ接続する中間マイクロチャネルで構成されており、
前記中間マイクロチャネルは、上流および下流の前記層流の状態を維持するために適した寸法および形状を有している、請求項10に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項12】
前記接続モジュール(30、40)は、前記選別後の集団(At)を保存するための緩衝マイクロリザーバ(31、41)を備えており、
前記緩衝マイクロリザーバ(31、41)のそれぞれへと、前記選別マイクロチャネル(111〜114)のうちの1つが開いており、
前記緩衝マイクロリザーバ(31、41)のそれぞれは、前記選別後および濃縮後の集団を運ぶように意図された出口マイクロチャネル(33、43)を介して、前記カプセル化ユニット(120、220、320)へと選択的に接続され、
前記出口マイクロチャネル(33、43)は、例えば気泡式または溶解可能な阻止ゲルを有する形式の流体バルブ(32、42)を備えており、
前記バルブの開放および閉鎖のそれぞれによって、各マイクロリザーバの前記選別後の集団の濃度が、前記カプセル化ユニットにおいて形成されるカプセル(C)の数の関数としてそれぞれ低下および上昇させられ、
各マイクロリザーバ(31、41)は、好ましくは、前記バルブ(32、42)が閉鎖されているときに前記集団(At)を含んでいる相を前記集団(At)を残して排出できるように設計された複数の微細な横出口マイクロチャネル(34、44)をさらに有している、請求項10に記載のマイクロ流体システム(1、101)。
【請求項13】
おおむね20μm〜500μmの範囲のサイズであって、おおむね20〜10000個の細胞からなっているランゲルハンス島などの比較的凝集性に乏しい細胞集団(A)を選別するための方法であって、
前記集団を、分離すべき該集団のサイズおよび数に適した構造を有しているマイクロ流体システム(1、101)のマイクロチャネルアレイに流す工程と、
前記集団を、該集団のサイズなど、該集団のパラメータのうちの1つに従って互いに偏向させる工程と、を含んでおり、
前記偏向は、前記集団を少なくとも2つの選別マイクロチャネル(111〜114)へと案内するような方法で行われ、
前記少なくとも2つのマイクロチャネル(111〜114)は、該少なくとも2つのマイクロチャネル(111〜114)と同数に分類された選別後の集団(At)を並列に、この同じシステムにおける集団のカプセル化を目的として運搬し、
それぞれ前記選別後の集団(At)のための少なくとも2つのサイズ分類を前記選別マイクロチャネル(111〜114)に生成するために、前記集団(A)をサイズによって選別するための少なくとも1つの選別ステージが好ましくは使用され、
それぞれの選別ステージが、
‐好ましくは流体力学的フォーカシング、決定論的横変位(DLD)、または流体力学的ろ過による受動的な流体力学的偏向、または、
‐静電気力もしくは磁力または電磁波もしくは音波に組み合わせられた流体力学的偏向
を使用する、選別方法。
【請求項14】
前記選別後の集団(At)は、さらにカプセル化され、
前記カプセル化は、選別後の集団のそれぞれの周囲に、生体適合性であり、機械的に強く、選択的に透過性である単層または多層のカプセル(C)を連続的に形成することによって、前記集団の分類の関数として、並列に、自動化された方法で行われ、
前記カプセルは、例えばアルギン酸塩ヒドロゲルを主体としている、請求項13に記載の選別方法。
【請求項15】
選別後の集団(At)のそれぞれのサイズ分類について、当該カテゴリの各集団を可能な限り密接に囲む所定のサイズのカプセル(C)が形成され、好ましくは値D未満の臨界サイズに従う選別後の集団の分類について、約D+20μm〜D+150μmのカプセルサイズのカプセル(C)が形成される、請求項14に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項16】
前記カプセル(C)は、選別後の集団(At)の各分類について、T分岐装置、マイクロ流体流フォーカシング装置(MFFDs)、マイクロチャネルアレイ(MCアレイ)装置、およびマイクロノズルアレイ(MNアレイ)装置からなるグループから選択される装置(127、221)によって形成され、
前記カプセル(C)は、好ましくは、各分類の前記選別後の集団(At)を含んでいる水相(321)と、該水相に非混和である相(322)、例えば油相と、の間の物質の交換によって形成され、圧力の上昇によって前記2つの相の間の界面が破れることで、前記カプセルが形成される、請求項14または15に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項17】
形成されたカプセル(C)は、該カプセルおよび該カプセルを含んでいる例えば油−アルギン酸塩形式のカプセル化相を水性または非水性のゲル化相へと移すことによってゲル化される、請求項14〜16のいずれか一項に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項18】
選別時の圧力損失を最小にするために、それぞれのカプセル化の前に、前記選別後の集団(At)が、該集団を含んでいる培地から該集団を含むように意図されるカプセル化相へと移される、請求項14〜17のいずれか一項に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項19】
選別とカプセル化との間の流体接続をさらに備えており、
前記流体接続は、対応するマイクロチャネル内の層流の状態を維持する効果を有しており、前記選別後の集団(At)を直接または選択的に前記カプセル化相に連通させる、請求項14〜18のいずれか一項に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項20】
前記流体接続は、選別時およびカプセル化時に前記層流の状態を維持するために適した寸法および形状を有している微細な中間マイクロチャネルによってなされる、請求項19に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項21】
前記流体接続は、選別後の集団を保存する緩衝マイクロリザーバ(31、41)内の選別後の集団(At)の各分類の濃度を調節することによってなされ、
前記緩衝マイクロリザーバ(31、41)は、前記選別マイクロチャネル(111〜114)のうちの1つに連通するとともに、選別後および濃縮後の集団を運ぶ出口マイクロチャネル(33、43)へと、流体バルブ(32、42)を介して選択的に接続され、
前記バルブの開放および閉鎖のそれぞれによって、前記マイクロリザーバ内の前記選別後の集団の濃度が、形成されているカプセル(C)の数の関数としてそれぞれ低下および上昇させられることで、空のカプセルの形成が最小化され、
前記マイクロリザーバは、前記バルブが閉鎖されているときに前記集団を含んでいる水相を前記集団を残して排出できるように設計された複数の微細な横出口マイクロチャネル(34、44)を備えている、請求項19に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項22】
前記細胞集団(At)は、ランゲルハンス島であり、50μm未満のサイズに従って選別された島について、70μm〜200μmの範囲のカプセル(C)のサイズでカプセル化が行われ、選別された最大の島について、650μmに達することができるカプセルサイズでカプセル化が行われる、請求項14〜21のいずれか一項に記載の選別および連続的なカプセル化の方法。
【請求項23】
細胞、細菌、細胞小器官、もしくはリポソーム、または細胞集団(At)を、好ましくは、最初の事例では付着分子による対象の分類に従い、細胞集団の事例ではサイズ分類に従って選別し、次いで選別後の各分類について連続的かつ自動的な様相でカプセル化を行うための、請求項1〜12のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム(1、101)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−273461(P2009−273461A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−112687(P2009−112687)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(508358737)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc, Batiment Le Ponant D, 75015 Paris, France
【Fターム(参考)】