説明

細菌由来のインタクトなミニ細胞を介した非食作用性哺乳動物細胞への標的化遺伝子送達

細菌由来のインタクトなミニ細胞を、特定の非食作用性哺乳動物細胞に対してターゲティングする方法は、二重特異性リガンドを使用して核酸を哺乳動物細胞に効率的に送達する。二重特異性リガンドは、(i)細菌由来のミニ細胞の表面構造に対して特異性を有する第一のアーム、及び(ii)非食作用性哺乳動物細胞の表面レセプターに対して特異性を有する第二のアームを含み、ミニ細胞を、特定の非食作用性哺乳動物細胞にターゲティングし、非食作用性細胞によるミニ細胞のエンドサイトーシスを起こすのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2003年12月9日に出願された米国仮出願No.60/527,764の優先権の利益を主張し、その内容はすべて参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
本発明は、特に遺伝子治療の関係においてだけではない、細菌のミニ細胞ベクターを非食作用性宿主細胞に標的化(ターゲティング)する方法及び組成物に関する。本発明は、レセプターなどのミニ細胞の表面構造と宿主細胞の表面構造の両方に特異的に結合する二重特異性分子を用いる。ミニ細胞ベクターと非食作用性宿主細胞間の相互作用を仲介することにより、二重特異性リガンドは宿主細胞にオリゴヌクレオチドとポリヌクレオチドの標的化送達を行うことができる。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療の目的は、生物の細胞に1つ以上の外来遺伝子を挿入して、遺伝子を停止(shut down)させること、欠陥遺伝子を置換すること、又は予防効果若しくは治療効果を与える遺伝子産物を発現させることである。遺伝子治療の最近の進歩により、外来遺伝子をレシピエントの哺乳動物のゲノムに導入する様々な方法が目立ってきた。Romanoら、1998、1999; Balicki及びBeutlar、2002; Wadhwaら、2002;及びThomasら、2003を参照されたい。これらの進歩は、ウイルスベクター、ヒト及び非ヒトの両方、及び非ウイルスベクター、例えばDNA-リポソーム複合体の使用に関係する。
【0004】
各ベクター系はその利点を有する一方で、臨床適用が制限される重大な欠点も有している。特にウイルスベクターは、深刻な安全性に対する懸念、例えば野生型ウイルスの組換え、挿入可能性と発癌可能性、哺乳動物細胞に対する動物ウイルスベクターの内因性毒性、ウイルスにより誘発される免疫抑制、弱毒化ウイルスの病原性への再活性化(reversion)、及び免疫が存在することによって起きる炎症反応などの副作用がある。またウイルスベクターには実施上の問題、例えば組換えウイルスの製造と流通が難しいこと、安定性が低いこと、多量の外因性DNAを運ぶベクターの容量が制限されるなどの問題がある。非ウイルスベクターには、一般的に遺伝子送達での効率が低くなるという欠点がある。
【0005】
これらの欠点を解決するため、PCT/IB02/04632は、治療用核酸分子を含む組換えのインタクトなミニ細胞を開示した。このようなミニ細胞は、in vitro及びin vivoでオリゴヌクレオチドとポリヌクレオチドを宿主細胞に送達するのに有効なベクターである。PCT/IB02/04632は、例えば哺乳動物遺伝子発現プラスミドを有する組換えミニ細胞を食細胞、例えばマクロファージに及び非食細胞に送達できたことをヒト乳がん細胞で明らかにして、証明した。またこの出願は、組換えミニ細胞の腹腔内投与により免疫系の食細胞に組換えプラスミドが送達されたこと、及びコードされたタンパク質に対する血清抗体反応を誘発できたことを示した。
【0006】
ミニ細胞を介した食細胞への遺伝子送達の効率性は高い(40%〜60%)が、従来非食細胞への遺伝子送達の効率は比較的低かった(3%〜5%)。このことから臨床応用は厳しく制限されると予測された。なぜなら、遺伝子治療の多くの可能性のある適応には、内皮細胞及び他の非食細胞が含まれるからである。ほとんどの癌は、例えば食細胞の癌ではないし、また、細胞特異性又は器官特異性の欠くベクターを、そのような癌の治療に効率的に使用できるとは予測されないだろう。
【0007】
また、同じような特異性の欠如は、非ミニ細胞ベクターの適用を妨げており、この問題を解決するため様々なアプローチが開発中である。Wickham, 2003を参照されたい。1つのアプローチは、多くの細胞型に存在するレセプター仲介エンドサイトーシス(RME)システムを使用することであり、標的化リガンドの多様なセットの開発を必要とする。このアプローチでは、特異的細胞表面レセプター又はマーカーを標的にするリガンドとベクターを結合させることにより、細胞特異性をベクターに付与する。特異的結合の後、標的細胞RMEシステムが活性化されて、ベクター/レセプター複合体がインターナライズされて消化され、DNAペイロードのいくらかが遺伝子発現のために核に運ばれる。いくつかの細胞レセプターは、ベクターを細胞質に、形質膜を直接横断して取り込むことを促進し得るであろうが(Fernandez及びBailey, 1998; Phelanら, 1998; Rojasら, 1998)、巨大分子の部分をレセプターの仲介で取り込む最も一般的な経路はエンドサイトーシストラフィッキング経路である(Conner及びSchmid, 2003)。
【0008】
非食作用性哺乳動物細胞への標的化遺伝子送達に関して幾つか課題がある。その課題とは、(i)哺乳動物細胞の形質膜を破ること;(ii)送達ベクターの内在化のメカニズムを利用すること;(iii)特異的哺乳動物細胞表面レセプターを標的にするのに使用される標的化リガンドの性質を選択して理解すること;(iv)ペイロードDNAを完全分解することなく、送達ベクターの細胞内破壊を行うこと;及び(v)哺乳動物細胞の細胞質又は核へのペイロードDNAの放出と運搬を獲得することである。これらの課題は各遺伝子送達ベクターで若干変わる。この分野での徹底した研究にもかかわらず、関連する生物学的過程の詳細な知見はいまだ初歩の段階である。
【0009】
非食細胞に対する、細菌性細胞又は細菌起源の粒子のリガンドベースの標的化は報告されておらず、おそらく(a)生きている細菌性細胞内病原体のみが非食細胞に入り込むことができ、これは活発な侵入過程により達成される(即ち非食細胞への進入は、生きている細菌病原体によって行われる多成分エネルギーで推進される過程を必要とする活発な侵入過程であると考えられる)及び(b)活発な細胞侵入は、受動的な過程、例えばリガンドベースのレセプター仲介エンドサイトーシスよりも優位であるからである。従って、死んだ細菌性細胞は活発な細胞侵入を行っておらず、生きている細菌性細胞は、その天然の向性に反して、所望の非食細胞に向けられていないのであろう。リガンドベースの標的化を、死んだ細菌性細胞又は細菌起源の非生存粒子のエンドサイトーシスを可能にするために用いたとしても、その方法が遺伝子送達に効果的であるとは予想できないであろう。むしろ、エンドソームが非生存細胞又は粒子を分解し、これらを遺伝子送達ベクターとして役に立たなくすると予想されるであろう。その点に関しては現在のところ、生きている任意の細胞内病原細菌のみが、エンドソーム膜から逃れることができるタンパク質を発現できると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今まで、細菌性ミニ細胞ベクターを非食作用性哺乳動物宿主細胞に向けて効果的にターゲティングし、それにより遺伝子ペイロードを送達する、証明された方法論は存在しない。様々なベクター標的化技術が知られているが、それらのどれか1つを単に採用しただけでは、予想どおり、ミニ細胞-標的化遺伝子送達に成功していない。これは、各遺伝子送達ベクターに固有の、標的化遺伝子送達に影響を与えることができる生物学的要因の範囲による。
【0011】
従って、細菌性ミニ細胞ベクターを非食作用性哺乳動物細胞に対して特異的にターゲティングする方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
上記の課題及び他の必要性を解決するため、本発明は、1つの態様に従って、二重特異性リガンドを、(i)治療用核酸配列を含む細菌由来のミニ細胞及び(ii)非食作用性哺乳動物細胞と接触させることを含む、標的化遺伝子送達方法を提供する。リガンドはミニ細胞の表面構成要素と非食作用性哺乳動物細胞の表面構成要素の両方に特異性を有する。結果として、ミニ細胞は哺乳動物細胞に取り込まれ(engulfed)、そのあとで該哺乳動物細胞は治療用核酸配列の発現産物を産生する。ミニ細胞と哺乳動物細胞間の接触は、in vitroでもよいし又はin vivoでもよい。
【0013】
また本発明は、ミニ細胞ベクターを非食作用性哺乳動物宿主細胞に対してターゲティングするのに有用な二重特異性リガンドを提供する。二重特異性リガンドは、ポリペプチド又は炭水化物でよく、抗体又は抗体フラグメントを含んでもよい。好ましい実施形態において、二重特異性リガンドは、細菌性ミニ細胞表面構造に特異性を有する第一のアームと、非食作用性哺乳動物細胞表面構造に特異性を有する第二のアームを持つ。リガンド結合に望ましいミニ細胞表面構造は、リポ多糖類のO-多糖類構成要素である。リガンド結合に望ましい哺乳動物細胞表面構造は、レセプターであり、好ましくはレセプター仲介エンドサイトーシスを活性化できるレセプターである。
【0014】
別の態様において、本発明は、(i)治療用核酸を含む細菌由来のミニ細胞と、(ii)ミニ細胞の表面構成要素及び非食作用性哺乳動物細胞の表面構成要素と結合することが出来る二重特異性リガンドとを含む組成物を提供する。
【0015】
また別の態様において、本発明は、医薬を細胞、組織又は器官に投与することにより、病気を治療し又は体質を改変する方法に使用するための医薬の調製において、治療用核酸及び二重特異性リガンドを含む細菌由来のミニ細胞の使用を提供する。このような医薬は、所望のタンパク質の発現又は機能を向上させることによって、あるいは標的タンパク質の発現又は機能を抑制することによって、様々な病状及び疾患を治療するのに有用である。この関連において治療される病気は、癌であり、又は、例えばエイズなどの後天性疾患、肺炎、肺気腫であり、又は代謝の先天性異常によって生じる病状、例えば嚢胞性線維症であり得る。あるいは、治療により、体質、例えば生殖能力、又はアレルゲンもしくは感染因子と関連する免疫反応に効果をあげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
本発明者らは、二重特異性リガンドが、細菌性ミニ細胞ベクターを非食作用性哺乳動物宿主細胞に標的化するのに用いられることを見出した。一般的に、このような宿主細胞は、in vivoでミニ細胞の接着及びエンドサイトーシスに抵抗するが、二重特異性リガンドの助力で、ミニ細胞送達ベクターの結合と内在化を受け入れられるようにすることができる。
【0017】
更に本発明者らは、内在化したミニ細胞が組換えプラスミドDNAを放出するのに十分に分解されることを見出した。これは驚くべきことであり、非食作用性哺乳動物細胞は固有に、貪食マクロファージ等の免疫系の細胞に主に存在する、ファゴリソソームのようにな攻撃的な細胞内コンパートメントを持っていないからである。
【0018】
更に驚いたことに、本発明者らは、細菌性ミニ細胞が組換えプラスミドに非食細胞の後期エンドソームから逃れさせることができることを見出した。これは予想外であり、ミニ細胞は生きていないし、後期エンドソーム膜-及びファゴソーム膜-溶解タンパク質をコードする親細菌染色体を持っていないからである。実際、リソソーム膜を溶解し、細胞内にDNAを放出するするように設計された、生きている任意の細胞内細菌性病原体のみがノンプロフェッショナルな食細胞に遺伝子を送達できると一般的に受け入れられていた(Gillot-Courvalinら、2002による最近の総説)。例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)は孔形成細胞溶解素、リステリオリシンO(染色体上にhly遺伝子によりコードされる)を発現し、エンドソーム膜とファゴソーム膜を溶解するのに主要な役割を果たすと考えられており、それにより組換えDNAが感染細胞の細胞質に入ることができる。同様に、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)もファゴソーム膜を溶解することにより食胞を逃れると考えられる。
【0019】
更に本発明者らは、非食細胞の核への効率的なミニ細胞仲介組換え遺伝子送達が、ミニ細胞が保有するプラスミドのコピーの数に関係することを立証した。従ってコピー数の多いプラスミド(ミニ細胞当たり60個を超えるプラスミドのコピー)を持つミニ細胞は、非食細胞への効率的な遺伝子送達をもたらすが、中程度のコピー数(ミニ細胞当たり11〜60個)又は低いコピー数(ミニ細胞当たり1〜10個)のプラスミドは効果が弱い。
【0020】
更に、本発明者らは、遺伝子送達の効率性は、エンドソーム内にエンドサイトーシスにより取り込まれるミニ細胞の数に関係することを立証した。従って、例えば、いくつかのヒト乳癌細胞の表面上のEGFレセプターなどの、二重特異性リガンドが標的化されている細胞表面上の高発現されたレセプターを持つ非食作用性標的細胞は、各エンドソーム内に取り込まれた多くのミニ細胞、しばしば10個以上のミニ細胞を示し、細胞核に高効率で組換え遺伝子を送達する。これらの結果は、エンドソーム内の組換えDNA荷重(load)が、エンドソーム内での分解を通じて失われたものを補える程度に十分高ければ、組換えDNAが後期エンドソームから逃れるチャンスが増加することを示唆する。またこの結果は、効率的な遺伝子送達が、細胞表面で過剰発現される哺乳動物細胞表面レセプターを活用して行われ、それにより個々のエンドソーム内への複数のミニ細胞のエンドサイトーシスを可能にすることを示した。
【0021】
前述の発見に基づいて、本発明は、ミニ細胞の接着、エンドサイトーシス及び遺伝子送達に対して一般的に抵抗力がある標的細胞又は組織においてミニ細胞トランスフェクションの効率を上げることにより、ミニ細胞ベクターを使った遺伝子治療を受け入れることができる病気の範囲を広げる。またミニ細胞をターゲティングする能力は、遺伝子治療のより安全でより柔軟なシステムを提供する。
【0022】
従って1つの態様において、本発明は、二重特異性リガンドを、(a)治療用核酸配列を含む細菌由来のミニ細胞及び(b)非食作用性哺乳動物細胞と接触させることを含む、標的化遺伝子送達方法を提供する。二重特異性リガンドは、ミニ細胞と哺乳動物細胞構成要素の両方に特異性を有しており、該リガンドは、ミニ細胞と哺乳動物細胞との結合を引き起こし、これにより、ミニ細胞が哺乳動物細胞によって取り込まれ(engulfed)、そのあとで、該哺乳動物細胞が治療用核酸配列の発現産生物を産生する。
【0023】
本発明者らは、この方法が、ミニ細胞の特異的な接着とエンドサイトーシスに対して一般的に抵抗力がある非食作用性哺乳動物細胞の範囲に広く適用できることを見出した。例えば、一方のアームにある抗-O-多糖類特異性と、もう一方のアームにある抗-HER2レセプター、抗-EGFレセプター又は抗-アンドロゲンレセプター特異性を有する二重特異性抗体リガンドにより、非食細胞の範囲にあるそれぞれのレセプターとミニ細胞が効率的に結合した。これらの細胞として、肺、卵巣、脳、乳房、前立腺及び皮膚の癌細胞が挙げられる。その上、効率的な結合は、各非食細胞によるミニ細胞の迅速なエンドサイトーシスよりも先に起こった。
【0024】
この発明者らの発見は驚くべきことであり、「プロフェッショナルな」食細胞(例えばマクロファージ及び好中球)のみが、600nmかそれより大きい細菌性細胞のような大きい巨大分子粒子をエンドサイトーシスにより取り込むことができるからである。逆に言えば、非食作用性哺乳動物細胞は150-400nmのリポソーム及び大きさが65-80nmオーダーのウイルスなどの、小さい、生きていない巨大分子粒子のみをエンドサイトーシスにより取り込むことができる。Bondoc及びFitzpatrick、1998を参照されたい。本発明者らの研究で使用した細菌由来のインタクトなミニ細胞は、直径約400nmであった。
【0025】
また本発明者らは、ミニ細胞が保有する組換えDNAは非食作用性哺乳動物宿主細胞により発現され得ることを見出した。ミニ細胞は、一度エンドサイトーシスにより取り込まれると、その後、後期エンドソームで消化される。しかしながら、ミニ細胞が保有する幾つかの組換えDNAはエンドソーム膜を逃れて、哺乳動物細胞の核に移送され、遺伝子発現する。この発見は驚くべきものであり、生きている任意の細胞内病原体のみが遺伝子送達及びエンドソーム膜逃避が可能な病原性タンパク質を保有する、と以前は考えられていたからである。Grillot-Courvalinら、2002を参照されたい。生きていない細菌又は細菌由来のミニ細胞が、これらのin vivoで誘発される病原性タンパク質を発現すると予想されておらず、それゆえ、組み換えDNAによるエンドソーム逃避の可能性はなく、エンドソーム内で完全に分解されると予測された。
【0026】
従って本発明は、細菌由来のミニ細胞を介して遺伝子治療を受け入れることができる哺乳動物細胞の範囲を広げる新規な方法を提供する。これらの方法は、in vitro及びin vivoの両方で行うことができる。
【0027】
本発明に有用なリガンドとして、標的細胞の表面構成要素及びミニ細胞の表面構成要素に結合する任意の物質が挙げられる。好ましくは、標的細胞の表面構成要素は、レセプター、特にエンドサイトーシスを媒介できるレセプターである。リガンドは、ポリペプチド及び/又は炭水化物の構成要素を含んでもよい。抗体は好ましいリガンドである。例えば、細菌由来のインタクトなミニ細胞の表面構成要素と標的哺乳動物細胞の表面構成要素に二重特異性を有する二重特異性抗体を、in vitro及びin vivoでミニ細胞を標的哺乳動物細胞に効率的にターゲティングするのに使用することができる。また有用なリガンドとして、レセプター、酵素、結合ペプチド、融合/キメラタンパク質及び小分子が挙げられる。
【0028】
特定のリガンドの選択は、2つの主な基本に基づいて行われる。その基本とは、(i)インタクトなミニ細胞の表面にある1つ以上のドメインへの特異的結合及び(ii)標的細胞の表面にある1つ以上のドメインへの特異的結合である。従って、リガンドは、細菌由来のインタクトなミニ細胞の表面構造に特異性を有する第一のアームと、非食作用性哺乳動物細胞の表面構造に特異性を有する第二のアームを持つことが好ましい。第一及び第二アームのそれぞれは多価でもよい。各アームは、多価であってもよいが、単一特異性であることが好ましい。
【0029】
細菌由来のミニ細胞との結合に関しては、リガンドの一方のアームが、親の細菌性細胞に見られるリポ多糖類のO-多糖類構成要素に特異的であることが望ましい。リガンド結合に活用することができる他のミニ細胞の表面構造として、外膜、線毛(pilli)、 フィムブリエ(fimbrae)及び鞭毛にある細胞表面に露出したポリペプチド及び炭水化物が挙げられる。
【0030】
標的細胞との結合に関して、リガンドの一方のアームは、非食作用性哺乳動物細胞の表面構成要素に特異的である。このような構成要素には、特徴的であるか又は特徴的でないかに関わらず、細胞表面タンパク質、ペプチド及び炭水化物が含まれる。細胞表面レセプター、特にレセプター仲介エンドサイトーシスを活性化できるレセプターは、標的化にとって望ましい細胞表面構成要素である。
【0031】
例として、腫瘍細胞、転移細胞、脈管系(vasculature)細胞、例えば内皮細胞及び平滑筋細胞、肺細胞、腎臓細胞、血液細胞、骨髄細胞、脳細胞、肝細胞など、又は所望の細胞にある細胞表面レセプターモチーフと特異的に結合するリガンドを選択することにより選ばれた細胞の前駆体を標的にすることができる。細胞表面レセプターの例として、大腸、直腸、乳房、肺、膵臓及び消化管の癌のほとんどに過剰発現される、癌胎児性抗原(CEA)(Marshall, 2003);乳房、卵巣、大腸、肺、前立腺及び子宮頸の癌でしばしば過剰発現される、ヘレグリンレセプター(HER-2, neu又はc-erbB-2)(Hungら、2000);乳房、頭頸部、非小細胞肺及び前立腺の腫瘍を含む固形腫瘍の範囲で過剰発現される、上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)(Salomonら、1995);アシアロ糖タンパク質レセプター(Stockert, 1995);トランスフェリンレセプター(Singh, 1999);肝細胞で発現される、セルピン酵素複合体レセプター(Ziadyら、1997);膵管腺癌(pancreatic ductal adenocarcinoma)細胞で過剰発現される、線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR)(Kleeffら、2002);抗血管新生遺伝子療法のための、血管内皮増殖因子レセプター(VEGFR)(Beckerら、2002及びHoshidaら、2002);非粘液素性(nonmucinous)卵巣癌の90%に選択的に過剰発現される、葉酸レセプター(Gosselin及びLee、2002);細胞表面グリコカリックス(Batraら、1994);炭水化物レセプター(Thurnherら、1994);及び呼吸上皮細胞への遺伝子送達に有用である、また嚢胞性線維症などの肺疾患の治療に魅力的な、多量体イムノグロブリンレセプター(Kaetzelら、1997)が挙げられる。
【0032】
好ましいリガンドは、抗体及び/又は抗体誘導体を含む。本明細書で使用される用語「抗体」は、in vitro又はin vivoでの免疫原性反応の発生により得られる免疫グロブリン分子を含む。用語「抗体」には、ポリクローナル抗体、単一特異的な抗体、モノクローナル抗体、及び単一鎖抗体フラグメント(scFv)などの抗体誘導体が含まれる。また、本発明に有用な抗体及び抗体誘導体は、組換えDNA技術によって得ることができる。
【0033】
野生型抗体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を有する。両方のタイプのポリペプチド鎖は、同じクラスの抗体のなかで最低限変化するか変化しない定常領域、及び可変領域を有する。可変領域は特定の抗体に固有であり、特異的エピトープを認識する抗体結合ドメインを含む。抗体結合に最も直接的に関係する抗原結合ドメインの領域は、「相補性決定領域」(CDR)である。
【0034】
また、用語「抗体」は、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメントなどの抗体の誘導体を含有する。このような抗体フラグメントとして、Fabフラグメント(抗原結合ドメインを含み、かつジスルフィド結合により架橋された重鎖の一部と軽鎖を含むフラグメント)、Fab’(Fabとヒンジ領域を介した重鎖の付加的な部分とを含む単一の抗原結合ドメインを含む抗体フラグメント)、F(ab’)2(重鎖のヒンジ領域にある鎖間ジスルフィド結合により結合した2つのFab’分子)、二重特異性Fab(2つの抗原結合ドメインを持つFab分子であり、それぞれは異なるエピトープに結合し得る)、及びscFv(アミノ酸の鎖によって一緒に結合した抗体の単一の重鎖と軽鎖の、可変の抗原結合決定領域)が挙げられる。
【0035】
抗体(抗体フラグメントを含む)は、リガンドの一部又は全部を構成し、好ましくはヒト由来又はヒトに使用するのに適切に改変される。いわゆる「ヒト化抗体」は当該技術分野で周知である。例えばOsbournら、2003を参照されたい。ヒト化抗体は、ヒトにおける抗原性を低減するために遺伝子操作及び/又はin vitroでの処理により改変されている。抗体をヒト化する方法は、例えば米国特許第6,639,055号、第5,585,089号及び第5,530,101号に開示されている。最も簡単なケースでは、ヒト化抗体は、マウスmAbからヒトIgGに、相補性決定領域(CDR)として知られている抗原結合ループをつないで作られる。Jonesら、1986;Riechmannら、1998;及びVerhoeyenら、1998を参照されたい。しかしながら、一般的に、高親和性ヒト化抗体の作製は、マウスの親のmAbのいわゆるフレームワーク領域(FR)から1つ以上の付加的な残基の移動が必要である。また幾つか改良されたヒト化技術が開発されている。Vaughanら、1998を参照されたい。
【0036】
また、「ヒト化抗体」よりもむしろヒト抗体を本発明に用いることができる。ヒト化抗体はそれぞれの抗原に対して高い親和性を持ち、非常に大きい、単一鎖可変フラグメント(scFv)又はFabファージディスプレイライブラリーから日常的に得られる。Griffithsら、1994;Vaughanら、1996;Sheetsら、1998;de Haardら、1999;及びKnappikら、2000を参照されたい。
【0037】
また、有用なリガンドとして二重特異性単一鎖抗体が挙げられ、一般的には、リンカー分子を介して、対応する可変重鎖部分に共有結合している可変軽鎖部分からなる組換えポリペプチドである。例えば、米国特許第5,455,030号;第5,260,203号及び第4,496,778号を参照されたい。また、二重特異性抗体は他の方法で作ることができる。例えば、化学的なヘテロコンジュゲートは、異なる特異性のインタクトな抗体又は抗体フラグメントを化学的に結合させて作ることができる。Karpovskyら、1984を参照されたい。このようなヘテロコンジュゲートは、再現性のある方法で作ることは難しいが、通常のモノクローナル抗体の少なくとも2倍の大きさである。また、二重特異的抗体は、抗体フラグメントの酵素的切断と再結合を含む、ジスルフィド交換で作ることができる。Glennieら、1987を参照されたい。
【0038】
Fab及びscFvフラグメントは1価であるので、これらはしばしば標的構造に対して低い親和性を持つ。従ってこれらの構成要素から作られる好ましいリガンドは、機能的親和性が増加するように、2量体、3量体又は4量体コンジュゲートに操作される。Tomlinson及びHolliger、2000;Carter、2001;Hudson及びSouriau、2001;及びTodorovskaら、2001を参照されたい。このようなコンジュゲート構造物は、化学的及び/又は遺伝子的架橋で作ることができる。
【0039】
好ましくは、本発明の二重特異性リガンドは、各末端が単一特異的、即ち、一方の末端はミニ細胞の1つの構成要素に対して特異的であり、もう一方の末端は標的細胞の1つの構成要素に対して特異的である。リガンドは一方又は両末端で多価でもよく、例えばいわゆるダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディの形でもよい。Hudson及びSouriau、2003を参照されたい。ダイアボディは2つのscFvの非共有結合により形成される2価のダイマーであり、2つのFv結合部位が生じる。同様に、トリアボディは3つのscFvの3価のトリマーの形成から生じ、3つの結合部位を生成する。テトラボディは4つのscFvの4価のテトラマーの形成から生じ、4つの結合部位を生成する。
【0040】
哺乳動物細胞のレセプターに特異性を有する幾つかのヒト化、ヒト、及びマウスモノクローナル抗体並びにそれらのフラグメントは、ヒトの治療での使用が承認されており、そのリストは急速に大きくなっている。Hudson及びSouriau、2003を参照されたい。二重特異性リガンドの一方のアームを形成するのに使用することができるこのような抗体の例は、HER2:ハーセプチン(HerceptinTM);トラスツズマブ(Trastuzumab)に対する特異性を有する。
【0041】
また、抗体の可変領域は、タンパク質ドメインの広い範囲と融合できる。IgG1 CH3などのヒトイムノグロブリンドメインとの融合により、大きくなって、かつ二量体化が促進される。Huら、1996を参照されたい。ヒトIgヒンジ-Fc領域との融合により、エフェクター機能を付加することができる。また、多量体タンパク質由来の異種タンパク質ドメインとの融合は、多量体化を促進する。例えば、短いscFvと短い両親媒性ヘリックスの融合は、ミニ抗体を作るのに使用されていた。fos/junなどのヘテロダイマーを形成するタンパク質由来のドメインを、二重特異性分子を作るのに使用することができ(Kostelnyら、1992)、或いは、ホモ二量体化ドメインを、「穴にいれるノブ(knobs into holes)」などのストラテジーを計画してヘテロダイマーを形成するように操作することができる。最終的に、多量体化と付加的な機能も提供する、融合タンパク質のパートナーを選択することができる(例えばストレプトアビジン)。Dubelら、1995を参照されたい。
【0042】
本発明のミニ細胞は、大腸菌又は他の細菌性細胞の無核の形態であり、DNA分離を伴う細胞分裂の調整を、二分裂中に、妨害することにより生じる。原核生物の染色体複製は、中期細胞(mid-cell)の隔膜形成を含む通常の二分裂と関連している。大腸菌では、例えば、minCDなどのmin遺伝子の突然変異により、細胞分裂中の細胞極での隔膜形成の抑制を除くことができ、その結果、正常な娘細胞と無核のミニ細胞が作られる。de Boerら、1992;Raskin及びde Boer、1999;Hu及びLutkenhaus、1999;Harry、2001を参照されたい。ミニ細胞は、一定の状況で自然に発生し、放出される他の小さいベシクルと異なり、他の小さいベシクルは、ミニ細胞とは対照的に、特異的な遺伝子再配列又はエピソームの遺伝子発現に依存しない。本発明を実施するためには、インタクトな細胞壁を有するミニ細胞(「インタクトなミニ細胞」)が望ましい。
【0043】
また、minオペロン突然変異の他に、無核のミニ細胞は、例えばバチルス・サブチリス(B.subtilis)のdivIVB1における隔膜形成に影響するある範囲の他の遺伝子再配列又は突然変異のあとに作られる。Reeve及びCornett、1975;Levinら、1992を参照されたい。またミニ細胞を、細胞分裂/染色体分離に関連するタンパク質の遺伝子発現のレベルの摂動のあとに形成することができる。例えばminEの過剰発現はミニ細胞の極分裂(polar division)とミニ細胞の産生をもたらす。同様に、染色体のないミニ細胞は、例えばバチルス・サブチリスでのsmcの突然変異(Brittonら、1998)、バチルス・サブチリスでのspoOJの欠失(Iretonら、1994)、大腸菌でのmukB突然変異(Hiragaら、1989)及び大腸菌でのparC突然変異(Stewart及びD’Ariら、1992)などの、染色体の分離における欠陥により生じ得る。遺伝子産物をin transで供給することができる。高コピー数のプラスミドから過剰発現される場合、例えば、CafAは、細胞分裂の速度を速め及び/又は複製後の染色体配分を抑制することができ(Okadaら、1994)、連鎖した細胞と無核のミニ細胞の形成を生じる(Wachiら、1989;Okadaら、1993)。ミニ細胞はグラム陽性又はグラム陰性起源のいずれの細菌性細胞からも調製できる。
【0044】
本発明のミニ細胞は、所望の産物を作るために転写され及び/又は翻訳され得る核酸分子を含む。本開示の目的において、このような核酸分子は、「治療用核酸分子」として分類される。ある特定の実施形態において、転写及び/又は翻訳産物は、病気を改善したり、或いは治療したり、細胞、組織又は器官における形質を改変する働きをする。通常、治療用核酸はミニ細胞内のプラスミドに見られる。
【0045】
治療用核酸分子は、機能的RNA(例えばアンチセンス、リボザイム、siRNA又はshRNA)又はペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、所望の産生物などの産物をコードする。例えば、目的の遺伝物質は、治療価値があるホルモン、レセプター、酵素又は(ポリ)ペプチドをコードできる。このような方法により、組み込まれていない移入DNAの一時的発現、染色体外複製、及びエピソームなどの移入レプリンコンの発現、あるいは宿主細胞のゲノムDNAに移入された遺伝物質の組み込みが生じ得る。
【0046】
所与の治療用核酸分子の転写又は翻訳は、癌又は後天性疾患、例えばエイズ、肺炎、肺気腫の治療に、又は嚢胞性線維症などの先天性代謝異常を治療するのに有用であり得る。また、治療用核酸の転写又は翻訳により、野生動物の避妊不妊化を含む、避妊不妊化を行うことができる。また、アレルゲン仲介及び感染因子仲介炎症性疾患に対しては、患者での発現でアレルゲン及び感染因子のそれぞれに関連した免疫応答に影響を及ぼす治療用核酸分子を、本発明を通じて投与することにより対抗できる。また、治療用核酸分子は、発現産物を有してもよく、又は移植に関連する免疫性後遺症を低減し若しくは組織の成長及び再生の促進を助ける、発現産物の翻訳後修飾の下流産物があってもよい。
【0047】
治療用核酸分子は、例えば嚢胞性線維症の嚢胞性線維症膜介在コンダクタンス制御因子(Kerenら、1989;Riordanら、1989;Rommensら、1989)、鎌状赤血球貧血のβ−グロブリン、及びサラセミアのα−グロブリン、β−グロブリン及びγ−グロブリンにあることだが、異常に機能するか又は病状において異常なレベルで存在するタンパク質を発現する遺伝子の正常なカウンターパートであってもよい。治療用核酸分子は、上述したアンチセンスRNA転写物又は低分子干渉RNAを有することができる。従って、β−サラセミアの特徴であるβ−グロブリンよりも多いα−グロブリンの過剰生産は、本発明に従って、α−グロブリンmRNAの標的配列に対するアンチセンスRNA転写物を有する配列を組み込んだプラスミドを含むように操作されたインタクトなミニ細胞を使って、遺伝子治療により改善することができる。
【0048】
癌の治療において、本発明による使用に適切な治療用核酸分子は、癌抑制に関連する遺伝子、例えばp53遺伝子、網膜芽腫遺伝子、及び腫瘍壊死因子をコードする遺伝子と関係する遺伝子に対応する又は由来する配列を有するであろう。広範多様な固形腫瘍−癌、乳頭腫及び疣贅−は、本発明に従ってこのアプローチにより治療できるであろう。これに関して代表的な癌として、大腸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、皮膚癌、肝癌、骨癌、卵巣癌、膵臓癌、脳腫瘍、頭頸部癌、及びリンパ腫が挙げられる。例となる乳頭腫は扁平上皮乳頭腫、脈絡叢乳頭腫及び喉頭乳頭腫である。疣贅状態の例は、陰部疣贅、足底の疣贅、及び疣贅状表皮発育異常症である。
【0049】
また、本発明の治療用核酸分子は、不活性なプロドラッグを1以上の細胞傷害性代謝産物に変換する酵素をコードするDNAセグメントを含むことができ、in vivoでプロドラッグを導入して、おそらく隣接した細胞も一緒に標的細胞が実際に自殺させられるようにする。非ヒト由来又はヒト由来であり得るこのような「自殺遺伝子」の臨床前及び臨床適用は、Spencer (2000)、Shangaraら(2000)及びYazawaら(2002)によって検討された。非ヒト由来の自殺遺伝子の例は、HSV-チミジンキナーゼ(tk)、シトシンデアミナーゼ(CDA)+ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシル−トランスフェラーゼ(GPT)、ニトロレダクターゼ(NTR)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP、DeoD)、シトクロームP450(CYP4B1)、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)、及びD-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)をそれぞれコードする遺伝子である。ヒト由来自殺遺伝子は、カルボキシペプチダーゼA1(CPA)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、シトクロームP450(CYP2B1,6)、LNGFR/FKBP/Fas、FKBP/カスパーゼ、及びER/p53をそれぞれコードする遺伝子が例示される。
【0050】
自殺遺伝子治療はAIDSの治療に適用できる。このストラテジーは、治療される哺乳動物細胞がHIV-1に感染すると直ぐに、毒性遺伝子産物を発現する自殺ベクターでテストされた。これらのベクターは、HIV-1調節エレメント、Tat及び/又はRevを使用し、HIV-1に感染した後、α-ジフテリア毒素、シトシンデアミナーゼ、又はインターフェロン-a2などの毒性遺伝子の発現を誘発する。Curielら、1993;Dingesら、1995;Harrisonら、1992a;Harrisonら、1992b;Raghebら、1999を参照されたい。
【0051】
一般的に、本発明の治療用核酸はミニ細胞内のプラスミドに含まれる。またプラスミドは調節エレメントとして機能するさらなる核酸セグメント、例えばプロモーター、ターミネーター、エンハンサー又はシグナル配列を含んでもよく、治療用核酸セグメントと機能的に結合する。適切なプロモーターは、治療関係物が指令するのと同様に、組織特異的であり又は腫瘍特異的でさえあり得る。
【0052】
プロモーターが所定の組織で優先的に活性化される場合、それは「組織特異的」であり、そのため、標的組織において、プロモーターは機能的に結合した構造配列の発現の駆動に効果的である。組織特異的プロモーターの分類として、例えば;アルブミン及びα−アンチトリプシンのそれぞれに対する肝細胞特異的プロモーター;膵線房細胞で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域;膵臓のβ細胞で活性なインシュリン遺伝子制御領域;精巣細胞、乳腺細胞、リンパ球様細胞及び肥満細胞で活性なマウス乳癌ウイルス制御領域;脳のオリゴデンドロサイト細胞で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域;及び視床下部の細胞で活性なゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域が挙げられる。Frainら(1990)、Cilibertoら(1985)、Pinkertら(1987)、Kelseyら(1987)、Swiftら(1984)、MacDonaldら(1987)、Hanahan(1985)ら、Lederら(1986)、Readheadら(1987)、及びMasonら(1986)を参照されたい。
【0053】
また、特定の腫瘍細胞又は腫瘍細胞自体で優先的に発現されるプロモーター及び本発明に従って種々の癌を治療するのに有用なプロモーターがある。癌細胞に特異的なプロモーターのクラスは、メラノーマを標的にするチロシナーゼプロモーター;乳癌を標的にするMUC1/Df3プロモーター;横紋筋肉腫(RMS)に対する発現を標的にするハイブリッドmyoDエンハンサー/SV40プロモーター;大腸癌細胞などのCEA発現細胞に特異的な癌胎児性抗原(CEA)プロモーター及び非小細胞肺癌を標的にするヘキソキナーゼタイプII遺伝子プロモーターにより例示される。Hart(1996)、Morton及びPotter(1998)、Kuraneら(1998)及びKatabiら(1999)を参照されたい。
【0054】
シグナル配列は、本発明に従って、発現産物の分泌又は特定の細胞内コンパートメントへの発現産物の局在化を生じさせるのに使用することができる。従って、インタクトなミニ細胞を経由して送達される治療用ポリヌクレオチド分子は、目的の発現産物が飲食細胞(engulfing cell)又はその後代により分泌され、それにより、選択された治療パラダイムに沿って周囲細胞に影響を与えるように、適切なリーディングフレーム内にシグナル配列を含んでもよい。例となるシグナル配列として、米国特許第5,143,830号に開示された溶血素C末端分泌配列、米国特許第5,037,743号に開示されたBAR1分泌配列、及び米国特許第6,025,197号に開示されたzsig32ポリペプチドのシグナル配列部分が挙げられる。
【0055】
また、本発明のミニ細胞のプラスミドはレセプターエレメントを含んでもよい。レポーターエレメントは、一般的には、発現して、組織学的又はin situ分析により、例えばin vivoの画像技術で検出可能である、宿主によって産生されないポリペプチドをコードすることにより、容易に検出できる表現型又は特徴を組換え宿主に付与する。例えば、本発明によるインタクトなミニ細胞により送達されるレポーターエレメントは、飲食性宿主細胞において、in situ分析で検出でき、転写活性化の定量的又は半定量的関数である比色変化又は蛍光変化が生じるタンパク質をコードすることができるだろう。これらのタンパク質の例は、エラスターゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ及び他の酵素であり、これらの活性により検出可能な発色団又は発蛍光団が生じる。
【0056】
好ましい例は、インジゴ生成の基質、すなわちインドリル-β-ガラクトシドの切断を経由して色の変化を生じさせる大腸菌β-ガラクトシダーゼと、長鎖アルデヒド(細菌性ルシフェラーゼ)又は複素環カルボン酸(ルシフェリン)を酸化するルシフェラーゼであり、光の同時放出を伴う。またこれに関して有用なのは、Prasherら(1995)で開示されるクラゲAequorea victoriaの緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレポーターエレメントである。GFP関連技術の分野は、2つの公開されたPCT出願、WO 095/21191(アミノ酸65〜67から形成された発色団を含む238アミノ酸GFPアポタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を開示)及びWO 095/21191(A.victoria GFPのアポペプチドのcDNAの改変が開示され、変化した蛍光特性を有するペプチドを提供する)により、及び励起振幅が4〜6倍改善されたことを特徴とする突然変異GFPのHeimら(1994)のレポートにより、説明されている。
【0057】
別のタイプのレポーターエレメントは、毒素に対して組換えミニ細胞を耐性にする発現産物に関連する。例えば、neo遺伝子は抗生物質G418の毒性レベルに対して宿主を保護し、ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする遺伝子はメトトレキサートに対して耐性を付与し、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子はクロラムフェニコールに耐性を付与する。
【0058】
レポーターエレメントとして使用する他の遺伝子として、識別できる細胞表面抗原、例えばHIV gp120又はヘルペスgDなどのウイルスエンベロープタンパク質を発現する宿主ミニ細胞を形質転換できる遺伝子が挙げられ、これらはイムノアッセイにより容易に検出できる。
【0059】
本発明の標的細胞には、外因性核酸分子が導入されるべき細胞が含まれる。(「導入される」とは、外来性核酸分子について使用される場合、ミニ細胞内に運ばれる核酸分子が標的細胞に送達されることをいう。)望ましい標的細胞は、リガンドが結合して、エンドサイトーシスを促進する細胞表面レセプターを発現することを特徴とする。好ましい標的細胞は非食作用性(細胞は通常細菌粒子を取り込まないことを意味する)であり、哺乳動物の細胞である。
【0060】
本発明の方法と組成物は、ある範囲の核酸分子を送達するのに使用することができ、その核酸分子はゲノムDNA又はRNAはもちろんcDNAでもよく、またセンス方向又はアンチセンス方向でもよい。ミニ細胞に存在する核酸分子は、本発明に従って、プラスミド、発現ベクター又は他の遺伝子構造物の形をとりうるが、ミニ細胞を生じさせた細菌性細胞由来のゲノムDNAではない。本発明に使用するのに適切なのは、真核細胞遺伝子発現プロモーターの翻訳制御及び転写制御下に置かれ得るか、若しくは宿主細胞由来のトランス活性化因子を使って哺乳動物細胞で発現され得る、真核細胞由来、原核細胞由来、又は人工的なソース由来の所望のDNA又はRNA配列である。
【0061】
本発明の方法はin vivo又はex vivoで行うことができる。ex vivoの手順では、例えば標的細胞を被験者から生検などにより除去することができる。適切なリガンドは、標的細胞によって発現される細胞表面レセプターの知識に基づいて選択することができる。標的細胞に送達される遺伝子は、適切なエピソームのキャリアーDNA、例えばプラスミドにクローニングされ、インタクトなミニ細胞を派生すべき親の細菌性細胞に移転される。ミニ細胞を得るための工程は、当該技術分野で周知であり、PCT/IB/04632で開示されている。それから組換えDNAを持つミニ細胞を当該技術分野で公知の手順及びPCT/IB02/04632で説明されている手順で精製する。そして二重特異性リガンドと組換え精製ミニ細胞を、例えば適切な培地でin vitroでインキュベーションして結合させ、余分のリガンドを、リガンドによる負荷がかかったミニ細胞から洗い流す。次に、ミニ細胞表面構成要素に特異性を持つ一方のアームを介してミニ細胞と結合した二重特異性リガンドと精製されたインタクトなミニ細胞を含む組成物を、in vitro、例えば組織培養で(実施例1、2及び3で説明する)、又はin vivo(実施例4で説明する)のどちらかで、標的細胞と接触させる。
【0062】
従って、本発明は、ミニ細胞仲介遺伝子治療に通常効果がない所望の非食作用性哺乳動物細胞にex vivo遺伝子治療を行う方法を含む。標的細胞及び治療用核酸に応じて、本発明は、所望のタンパク質の発現を増加させる、遺伝子産物の発現又は機能を抑制する、などして様々な疾患状態及び病気の治療に使用することができる。例えば、所与の治療用核酸分子の転写又は翻訳は、癌又は後天性疾患、例えばエイズ、肺炎、肺気腫を治療するのに、又は先天性代謝異常、例えば嚢胞性線維症を治療するのに、有用であり得る。また治療用核酸の転写又は翻訳は野生動物の避妊不妊化を含む避妊不妊化を行うことができる。また、アレルゲン仲介及び感染因子仲介炎症性疾患は、本発明を介して、患者で発現してアレルゲンと感染因子のそれぞれに関係する免疫反応に作用する治療用核酸分子を投与することにより、対抗することができる。また治療用核酸分子は発現産物を有してもよく、又は移植に関連した免疫的後遺症を低減し若しくは組織の成長及び再生の促進を助ける、発現産物の翻訳後修飾の下流産物があってもよい。
【0063】
また本発明は、in vitroで、選択された細胞型への核酸の移入に関連する。このような移入は、例えば多量の選択されたタンパク質を産生できる細胞を作ってそれを収穫できる等の様々な目的に有用である。
【0064】
関連した態様において、本発明は、標的非食作用性哺乳動物細胞への外因性核酸分子を高効率で導入するのに有用な組成物を提供する。該組成物は(i)細菌由来のミニ細胞及び(ii)二重特異性リガンドを含む。ミニ細胞及びリガンドは、本明細書で開示されたもののいずれかであり得る。従って、ミニ細胞は治療用核酸分子を含み、二重特異性リガンドは好ましくはミニ細胞の表面構成要素と標的哺乳動物細胞の表面構成要素に結合可能である。
【0065】
本発明の組換えミニ細胞と二重特異性リガンドから本質的になる組成物(即ち、該組成物のDNA送達の品質を不当に妨げない他の構成要素を有するリガンドとミニ細胞を含む組成物)は、従来の手法で1種類以上の生理学的に許容可能な担体又は賦形剤を使って製剤化できる。注射用の製剤は、例えば保存剤を加えた又は加えない、アンプル若しくはバイアル又は複数回用量の容器に入った単位剤形の形で存在し得る。製剤は溶液剤、懸濁液、又は油性もしくは水性ビヒクルの乳液剤にでき、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含んでもよい。適切な溶液剤はレシピエントの血液と等張であり、食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液が例示される。あるいは、組成物を適切なビヒクル、例えば無菌の、発熱物質の入っていない水又は生理的食塩水で再構成するため、凍結乾燥した粉状でもよい。また、組成物はデポー製剤として製剤化してもよい。このような長時間作用する製剤は、移植(例えば皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射により投与することができる。
【0066】
本発明の組成物は、様々な経路で及び哺乳動物体の様々な部位に投与することができ、局所的に又は全身的に所望の治療効果を達成することができる。送達は、例えば、経口投与により、体腔への製剤の適用により、吸入又は吹入により、又は非経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、門脈内投与、肝臓内、腹膜、皮下、腫瘍内又は皮内投与により行うことができる。投与の方法及び部位は標的細胞の場所に依存する。例えば嚢胞性線維細胞を、標的化組換えミニ細胞の吸入送達させることにより効率的に標的化できる。同様に、腫瘍転移を、標的化組換えミニ細胞の静脈送達を介してもっと効率的に治療することができる。原発性卵巣癌を、標的化組換えミニ細胞の腹腔内送達を介して治療することができる。
【0067】
以下の実施例は、本発明を、提供される実施例に限定することなく、例示すること、および、本発明のより完全な理解を提供することを意図する。
【実施例1】
【0068】
非食作用性ヒト前立腺癌細胞への二重特異性抗体標的化ミニ細胞の高効率な結合及びレセプター仲介内在化
この実験は、抗-サルモネラ・チフィムリウム(S.typhimurium)LPS及び抗-アンドロゲンレセプター結合特異性を有するFabフラグメントを持つ二重特異性抗体が結合して、細胞表面でアンドロゲンレセプターが高発現することが知られている前立腺癌細胞の中にサルモネラ・チフィムリウム由来ミニ細胞がレセプター仲介内在化できることを立証する。
【0069】
あらかじめ作製したサルモネラ・チフィムリウムminCDE-突然変異株(特許出願PCT/IB02/04632)を組換えプラスミドpORF5-HSV1tk::Sh ble(Invivogen,San Diego, CA, 米国)で形質転換した。プラスミドはEF-1α/eIF4gハイブリッドプロモーターの制御下でHSV1tk::Sh ble融合遺伝子を発現する哺乳動物遺伝子発現ベクターである。HSV1tkは単純ヘルペスウイルス血清1型(HSV1)から得られた自殺遺伝子であり、プロドラッグのグアノシン類似体のガンシクロビル(GCV)をガンシクロビル-一リン酸(GCV-MP)に転換できる酵素、即ちチミジンキナーゼをコードする。それから後者を内因性キナーゼにより二リン酸と三リン酸の形態に転換する。GCV-三リン酸は、DNA鎖伸長に必要な2’及び3’炭素間の結合だけでなく、デオキシリボースの3’OHを欠いている。結果として、GCV-三リン酸の組み込みにより、DNA鎖終止を早まらせてアポトーシスに導く。従って、HSV1tkの発現により、トランスフェクションされた哺乳動物細胞はガンシクロビルに対して感受性になり、癌遺伝子治療において最も広く使われている単一自殺戦略(single suicide strategy)の1つである(Singhal及びKaiser,1998)。対照として、プラスミドpORF5-HSV1tk::Sh bleを制限酵素NcoI及びNheIで切断してHSVtk::Sh ble遺伝子融合体を欠失して、その部位をT4 DNAポリメラーゼで平滑末端にして、プラスミドを再連結して、プラスミドを構築した。NcoI及びNheI部位はプラスミドpORF5-HSV1tk::Sh ble中でユニークであり、HSV1tk::Sh ble遺伝子融合体にフランキングする。また、pORF5-HSV1tk-を示す得られたプラスミドを、サルモネラ・チフィムリウムminCDE-突然変異株に形質転換した。
【0070】
プラスミドを有する組換えミニ細胞を、国際特許出願PCT/IB02/04632に開示された勾配遠心分離/線維化(filamentation)/ろ過/内毒素除去手順を使って精製した。
【0071】
二重特異性抗体を、抗-サルモネラ・チフィムリウムリポ多糖類(Biodesign, Saco, Maine, 米国)と抗-アンドロゲンレセプターマウスモノクローナル抗体(IgG; Abcam, Cambridege, 英国)を、各モノクローナル抗体のFcフラグメントを介して精製組換えタンパク質A/Gと結合させることにより構築でき、以下にその手順を要約した。
【0072】
精製された組換えタンパク質A/G(Pierce Biotechnology, Rockford, IL, 米国)をImmunopure binding buffer(Pierce Biotechnology)で最終濃度100μg/mlに希釈し、その溶液0.5mlを、抗-サルモネラ・チフィムリウムLPS(Research Diagnostics Inc., Flanders, NJ、米国)と抗-ヒトアンドロゲンレセプター(Abcam, Cambridge, 英国)モノクローナル抗体を20μg/mlずつ含む予め混合した液と一緒に4℃で一晩インキュベーションした。次にタンパク質A/Gと結合しなかった過剰な抗体を以下のように除去した。Dynabeads(登録商標)Protein G液(磁性粒子の表面に共有結合した組換えプロテインGで被覆したDynabeads[2.8μm]; Dynal Biotech, Oslo, Norway)を穏やかに混合し、その溶液100μlをエッペンドルフ遠心チューブに移した。チューブをDynal MPC-S(磁性粒子濃縮器、タイプS)に設置し、ビーズを固定化し、上清を捨てた。ビーズを0.1M Na-リン酸バッファーを含む洗浄液(pH5.0)0.5mlに再懸濁した。ビーズの固定化及び洗浄工程を3回繰り返した。タンパク質A/G-二重特異性抗体複合体を含む溶液をビーズに添加し、室温で40分間穏やかに混合しながらインキュベーションした。チューブをMPC-Sに設置し、ビーズを固定化し、タンパク質A/G-二重特異性抗体複合体をピペットで取り出した。この工程により、結合しなかった過剰のモノクローナル抗体を溶液から除去し、Fcフラグメントを介してタンパク質A/Gと結合した二重特異性抗体を持つ溶液を準備した。
【0073】
1010個の組換えミニ細胞をタンパク質A/G-二重特異性抗体と一緒に1時間室温でインキュベーションし、その抗体の抗-LPS Fab領域を介して、抗体でミニ細胞を被覆した。
【0074】
前立腺癌細胞であるLNCaP(ATCC, Rockville, MD, 米国)を、10%FCSと抗生物質を追加したRPMI 1640培地でT-75フラスコに十分な集密度に増殖した。細胞をT-25フラスコで50%集密度に継代した。一晩付着させた後、培養培地を新しくして1つのフラスコにプラスミドpORF5-HSV1tk::Sh bleを有する組換えミニ細胞(非標的化組換えミニ細胞)107個を添加して、もう1つのフラスコに二重特異性抗体を付着させた細胞表面を持つ同じミニ細胞(標的化組換えミニ細胞)107個を添加した。ミニ細胞と前立腺癌細胞の割合は100:1であった。トランスフェクションされた細胞を5%CO2、37℃で16、24及び36時間インキュベーターでインキュベーションし、続いて新しい1xダルベッコ培地で穏やかに攪拌して4回洗浄(1洗浄5ml)した。全ての細胞をトリプシン処理し、次に、24ウェルプレートにある13mmカバーガラスに低い集密度(sub-confluency)の細胞数で継代した(各時点3つずつ)。
【0075】
カバーガラス上の細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、5%の標準的なヤギ血清で一晩ブロックし、続いて抗-サルモネラ・チフィムリウムLPS(1:200; Biodesign, Saco, Maine, 米国)モノクローナル抗体で染色した。抗体結合を、Alexa Fluor 594(1:1000、赤色蛍光;励起590nm及び発光617nm;Molecular Probes, Eugene, OR, 米国)とコンジュゲートしたヤギ抗-マウスIgGで示し、共焦点蛍光顕微鏡(Fluoview, Olympus America, Melville, NY, 米国)で観察した。蛍光及び示差画像コントラスト(Differential Image Contrast,DIC)の画像を集めて、図1に示すように重ねた。
【0076】
結果は、分析したどの時点においても、非標的化組換えミニ細胞はLNCaP前立腺癌細胞に特異的に付着せず、或いは内在化されず(図1B及び1D)、細胞は対照の非トランスフェクション細胞と同じであると考えられた。分析した全ての領域で、マイナーバックグラウンドの赤色蛍光を示した。それとは対照的に、標的化組換えミニ細胞は、おそらく細胞表面のアンドロゲンレセプターに対して標的化している二重特異性抗体の結合を介してLNCaP細胞に強く付着することが分かった。更に、16時間と24時間のインキュベーション時点において、ほとんどのLNCaP細胞は、その細胞の細胞質内に極めて強い赤色蛍光を示し(図1C、1E及び1F)、ミニ細胞がレセプター仲介エンドサイトーシスを介して内在化されたことを示す。
【0077】
この結果は、ミニ細胞が持っている表面に結合した二重特異性抗体が、哺乳動物細胞に見られる細胞表面レセプター(上記実施例におけるアンドロゲンレセプター)とミニ細胞の効率の高い結合を媒介したこと、及び付着したミニ細胞は非食作用性哺乳動物細胞(上記実施例における前立腺癌細胞)により迅速に内在化されることを示唆した。
【実施例2】
【0078】
非食作用性ヒト乳腺癌細胞への二重特異性抗体標的化ミニ細胞の高効率の結合及びレセプター仲介内在化
実施例1は、抗-LPS(ミニ細胞特異性)及び抗-アンドロゲンレセプター結合特異性を有する二重特異性抗体が非食作用性哺乳動物細胞、即ち前立腺癌細胞のアンドロゲンレセプターに効率的に強く結合できることを示した。更に、実施例の結果は、レセプター結合は高効率で組換えミニ細胞のレセプター仲介エンドサイトーシスを誘発したことを示した。本例は、上記観察された現象が一般化されること及び本発明と発見が異なる非食作用性哺乳動物細胞において、ある範囲の異なるエンドサイトーシス−コンピテントレセプターに適用できることを立証する。
【0079】
より具体的には、本実験はヒト乳腺癌細胞(MDA-MB-468,ATCC;ヒト乳房上皮細胞;非食作用性)を、抗-サルモネラ・チフィムリウムLPS(ミニ細胞表面結合特異性)及び抗-上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)結合特異性を有するFabフラグメントを有する二重特異性抗体を介して標的化できることを示す。細胞株MDA-MB-468細胞を実施例1で前立腺癌細胞について説明した組織培地で増殖した。二重特異性抗体を、抗-アンドロゲンレセプターモノクローナル抗体を抗-EGFRモノクローナル抗体(Oncogene Research Products, Cambridge, MA, 米国)に代えた以外は、実施例1に説明したように構築した。標的化及び非標的化組換えミニ細胞を作製して、MDA-MB-468細胞をトランスフェクションするのに使用し、その細胞を前立腺癌細胞について上述したように、16時間、24時間及び36時間の時間間隔でサルモネラ・チフィムリウムLPS(ミニ細胞)について染色した。
【0080】
結果(図2)は、対照細胞と非標的化ミニ細胞で処理した細胞は全ての時点でマイナーバックグラウンドの赤色蛍光のみを表したことを示し(図2A及び2B)、ミニ細胞が非食作用性哺乳動物細胞に接着できずまたトランスフェクションできなかったことを示した。それとは対照的に、標的化ミニ細胞で処理した細胞は、24時間のインキュベーション後、細胞質に強い赤色蛍光を示し、その蛍光は36時間後に増加して、細胞質のより多くを覆った図2C−E)。これは、二重特異性抗体がMDA-MB-468細胞の表面にあるEGFレセプターとミニ細胞が強く結合できたこと、及び結合によりミニ細胞のレセプター仲介エンドサイトーシスが誘発されたことを示した。
【実施例3】
【0081】
非食作用性ヒト卵巣癌細胞への二重特異性抗体標的化ミニ細胞の高効率の結合及びレセプター仲介内在化
実施例1及び2は、抗-LPS(ミニ細胞特異性)と抗-アンドロゲンレセプター結合特異性又は抗-EGFR特異性のどちらかとを有する二重特異性抗体が、非食作用性前立腺癌細胞及び乳腺癌細胞のそれぞれにあるアンドロゲンレセプター又はEGFRに効率的に強く結合することができることを示した。更に、これらの結果は、レセプター結合により高効率で組換えミニ細胞のレセプター仲介エンドサイトーシスを誘発したことを示した。本実施例は更に、本発明と発見の一般的な適用可能性を立証する。
【0082】
従って、本実験は、ヒト卵巣癌細胞(SKOV-3, ATCC;上皮細胞;非食作用性)を、抗-サルモネラ・チフィムリウムLPS(ミニ細胞表面結合特異性)とマウス抗-ヒトHer2/neuレセプター(Serotec Inc., Raleigh, NC, 米国)結合特異性を有するFabフラグメントを持つ二重特異性抗体を介して標的化できることを立証する。SKOV-3細胞はHer2レセプターを過剰発現することで知られている(Salomonら、1995)。本実験は実施例1及び2で説明したように行い、サンプルを前と同じように抗-LPS(赤色蛍光)について染色した。
【0083】
結果(図3)は実施例1及び2で得られた結果と同様であった。対照のSKOV-3細胞と非標的化ミニ細胞で処理した細胞は、マイナーバックグラウンドの赤色蛍光を示しただけであった。
【実施例4】
【0084】
組換えミニ細胞の二重特異性抗体仲介標的化を介しての非食作用性哺乳動物細胞への高効率の遺伝子送達
上記の実験は、例えばヒト上皮癌細胞の非食作用性哺乳動物細胞とミニ細胞の高効率な接着を立証した。本実施例は、非食作用性哺乳動物細胞がミニ細胞と同じくらいの大きさ(直径400nm)のエンドサイトーシスで取り込まれた粒子を分解するための効率的な細胞内メカニズムを有することを立証する。また、本実施例は、ミニ細胞内にパッケージングされたプラスミドDNAが細胞内の分解過程を逃れ、エンドソーム膜を逃れ、細胞質に入り、細胞核に入り、組換えにより発現されるようになり得ることを示す。実際、ミニ細胞は遺伝子を非食作用性細胞に効率的に送達することができ、本発明の適用はin vitroのトランスフェクションのツールに有用であることを示す。
【0085】
ヒト乳癌細胞(MDA-MB-468)を、B型肝炎ウイルスの表面抗原(HbsAg;Aldevron, 米国)をコードするプラスミドを有する、対照の非標的化ミニ細胞、非特異的に標的化されるミニ細胞及び実験のEGFR-標的化ミニ細胞と一緒にインキュベーションした。非特異的標的化BsAbを、抗-サイトメガロウイルス(CMV)モノクローナル抗体と抗-サルモネラ・チフィムリウムLPS Mabを使用して構築した。4時間、8時間、16時間、24時間及び36時間の時間間隔で、細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定化し、5%の標準ヤギ血清/2%BSAでブロックした。膜透過性をPBSに1%のTriton X-100で上げて、細胞を抗-HbsAg MAb(Aldevron、1:100に希釈)、次にAlexa Fluor 594-結合ヤギ抗-マウスIgG(Molecular probes、1:1000に希釈)で処理した。HbsAgタンパク質発現細胞を共焦点顕微鏡で分析した。遺伝子送達の効率性を測定するため、フローサイトメトリーで細胞を分析した。FACS分析では、細胞を、抗-HBsAb MAb、次にAlexa Fluor 594の代わりにフィコエリトリン(PE)-結合ヤギ抗-マウスIgGで処理した。FACS分析はAlexa Fluor 594と比べてPEに対してもっと感受性が高いからである。
【0086】
結果は、EGFR-標的化ミニ細胞のみが95%以上の遺伝子送達の効率性があったことを示した(図4Aiv)。組換えタンパク質の発現(鮮やかな赤色の蛍光を発している細胞;図4Bii-iii)が、トランスフェクション後16時間と次の時点で観察され(図4Aiv)、1細胞当たりの組換えタンパク質が十分なレベルであることを示唆した。すべての対照細胞はバックグラウンドの赤色蛍光のドットのみを示した(図4Bi)。
【0087】
これらの結果は驚くべきものであり、なぜなら、非食作用性細胞は、ミニ細胞と同じくらいの大きさ(直径400nm)のトランスフェクションで取り込まれた粒子及び堅い生体膜を有するトランスフェクションで取り込まれた粒子を分解するためのこのような効率的な細胞内メカニズムを有するとは知られていなかったからである。更に、非食作用性哺乳動物細胞への遺伝子送達について、予想もしなかった高いレベルの効率性(95%以上)が観察された。これらの結果は、本発明の適用が有用なin vitroのトランスフェクションツールであることを示す。従来利用可能なツールでは、非食作用性哺乳動物細胞にこのような高いレベルの特異的遺伝子送達を達成していない。
【実施例5】
【0088】
無胸腺雌ヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片へのミニ細胞の二重特異性抗体仲介標的化
本実施例は、HSVtk遺伝子をコードするプラスミドを有する標的化組換えミニ細胞が、6週齢の無胸腺雌ヌードマウスに定着させたヒト乳癌細胞腫瘍移植片の縮退を生じさせることができることを立証する。
【0089】
二重特異性抗体を、抗-アンドロゲンレセプターモノクローナル抗体の代わりに抗-上皮細胞増殖因子レセプター(抗-EGFR)モノクローナル抗体(Oncogene Research Products, Cambridge, MA, 米国)を使用した以外は、実施例1に説明したように構築した。これは、異種移植された細胞が、細胞表面でEGFレセプターを過剰発現することが知られているヒト乳癌細胞MDA-MB-468だからである。マウスをAmimal Resouces Centre, Parth, WAから購入し、全ての動物実験を、実験動物のケアと使用の手引書とAnimal Ethics Committeeの承認に従って行った。実験は、EnGeneIC 社のNSW Agriculture公認小動物施設(Sydney, NSW, オーストラリア)で行った。MDA-MB-468ヒト乳癌細胞を実施例2で説明したように培養し、50μlの成長因子低減マトリゲル(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ, 米国)と一緒に50μlの無血清培地の1.5x106個の細胞を、各マウスの肩甲骨間に23ゲージの針で皮下に注射した。腫瘍を1週間に2度、電子デジタルキャリパー(Mitutoyo, 日本, 精度0.001)を使って測定し、腫瘍体積を、式:長さ(mm)x幅2(mm)x0.5=体積(mm3)で計算した。移植して21日後、腫瘍は50mm3〜80mm3の体積に達し、マウスを1グループ12匹の6つの異なるグループに無作為に振り分けた。
【0090】
本実験を以下のように設計した。グループ1(対照)は治療を受けなかった。グループ2(対照)は21、28及び35日目にプラスミドpORF5-HSV1tk::Sh ble(M-HSVtkと命名)を有する非標的化組換えミニ細胞を受けた。また、マウスは25、26、32、33、39及び40日目にGCV、即ち連続する日にGCVの2回の投与を受けた。このグループは、非標的化ミニ細胞が自殺遺伝子を腫瘍細胞に送達できるか及びGCV治療の後に腫瘍の縮退に影響するかを判断するために設計された。グループ3(対照)は、GCVの不存在下でプラスミドpORF5-HSV1tk::Sh bleを有する標的化組換えミニ細胞での治療が腫瘍の縮退に何らかの影響があるかを判断するために設計された。従って、グループ3のマウスは、グループ2と同じ日にプラスミドpORF5-HSV1tk::Sh ble(TM-HSVtkと命名)を有する標的化組換えミニ細胞を受けたが、GCV処理は受けなかった。グループ4(対照)は、組換えミニ細胞の不存在下で二重特異性抗体が腫瘍の縮退に何らかの影響があるかを判断するために設計された。従って、これらのマウスは組換え標的化ミニ細胞又は非標的化ミニ細胞が与えられたのと同じ日、即ち21、28及び35日目に二重特異性抗体を受けた。抗体治療につづいて、グループ2と同じ日にGCV治療が行なわれた。グループ5(実験)は、プラスミドpORF5-HSV1tk::sh bleを有する標的化組換えミニ細胞がプラスミドを異種移植された腫瘍細胞に効率的に送達できるか及び腫瘍の縮退が各ミニ細胞投与後、GCVの1回の投与でマウスを治療した後に観察されるかを判断するために設計された。従って、グループ5はグループ3と同じ日に標的化組換えミニ細胞を受け、続いて25、33及び39日目にGCV治療を行った。グループ6(実験)は、グループ2及び4と同じように連続する日にGCVの2回の投与を受けた以外は、グループ5と同じであった。
【0091】
それぞれのミニ細胞を受けたマウスに、30μlの滅菌生理食塩水で再懸濁した108個のミニ細胞を腫瘍内に注射した。MDA-MB-468細胞でのin vitroの遺伝子標的実験は、プラスミドを送達されたミニ細胞が、標的化組換えミニ細胞のトランスフェクション後少なくとも48時間後にHSVtk酵素を発現したことを示した。従って、グループ2、4、5及び6は、ミニ細胞接種後の3〜4日後にGCVを与えると、トランスフェクションされた腫瘍異種移植細胞はGCVに反応するHSVtk酵素を十分に発現することができた。GCVをマウス体重100mg/kgの濃度で腹腔内に投与した。
【0092】
図5は、一連の実験にわたる腫瘍体積の進行を示す。結果は、標的化組換えミニ細胞のみ(グループ5及び6)がHSV1tk遺伝子をコードするプラスミドを異種移植された腫瘍細胞にうまく送達できたことを示した。これらの2つのグループの腫瘍体積の大きさは増加せず、一連の実験を通して安定したままだった。対照的に、4つの対照グループ(グループ1−4)では、腫瘍体積は急速に増加した。また興味深いことに、グループ2のマウスは腫瘍の縮退の形跡がなく、非標的化組換えミニ細胞はヒト乳癌細胞をトランスフェクションできず、臨床的に有意な結果が得られなかった。One-way ANOVAを使ってデータを統計学的に分析したところ、実験グループ(5及び6)は対照グループ1−4と比較して大きく有意差があった(p=0.001)。この結果は、細菌由来のインタクトな組換えミニ細胞によって仲介された非食作用性哺乳動物細胞への標的化in vivo遺伝子送達の初めての実証である。また、これらの非食作用性哺乳動物細胞に非常に有意な遺伝子送達を達成することにおいて、ミニ細胞のレセプター仲介エンドサイトーシスにおける役割を立証する(グループ2とグループ5及び6の比較)。
【0093】
この実験の結果は、in vivoで所望の哺乳動物細胞にミニ細胞をターゲティングする創意に富む組成物及び方法の意義を示す。またこの結果は、標的化ミニ細胞の臨床適用、特に癌治療の発達における可能性を立証する。
【実施例6】
【0094】
ヒト乳癌異種移植片の過剰発現EGFレセプターに対して標的化された自殺プラスミドを有するミニ細胞は、ヌードマウスの腫瘍を効率的に縮退させる
前述した異種移植片の研究はミニ細胞の腫瘍内(i.t.)注射により行われた。全身的送達を介してミニ細胞を非食作用性(ヒト癌細胞)細胞表面レセプターにターゲティングすること及びin vivoでの腫瘍安定化/縮退を達成することについての可能性を評価するため、ミニ細胞を静脈内に注射する別の異種移植片研究を設計した。
【0095】
それに合うように、プラスミドpORF5-HSV1tk::Sh ble(HSV1tk)を有する組換えミニ細胞を構築し、精製した。ヒト乳癌細胞MDA-MB-468で過剰発現されることが示されたヒトEGFRに対してミニ細胞を標的化した。これは、抗-ヒトEGFR及び抗-サルモネラ・チフィムリウムLPS特異性を有する二重特異性抗体を構築し、実施例1に説明したように、BsAbをミニ細胞表面に接着させることにより行った。異種移植片を、ヌードマウス(1グループn=11)の肩甲骨間に皮下に(s.c.)定着させ、実験及び対照のミニ細胞を、示した日(図6)に尾静脈にi.v.投与した。また、グループ2、4、6及び7は示した日にGCV(i.p.)を受けた。
【0096】
結果は、EGFR-標的化ミニ細胞HSV1tkで処理したマウスにのみ、定着された腫瘍の有意な安定化/縮退を示した。1投与当たり108又は109個のミニ細胞投与量はどちらも同じくらい効果的であり、標的化方法は非常に効率的であり、治療指数を上げ、制限因子の少ない(もしくは、欠く)ベクター濃度にすることを示した。One-way ANOVAを使ったデータの統計学的な解析により、実験的グループ(6及び7)の結果は対照グループ1〜5と比較して大きな有意差があったことを示した(p=0.0001)。このデータは、ミニ細胞標的化技術が、腫瘍から離れている部位に注射した場合であってもミニ細胞が腫瘍塊にホーミングするのに非常に効果的であったことを示した。またデータは、標的化ミニ細胞の全身的送達によりマウスに対して毒性の明らかなサインは生じなかったことを示した。本研究を通して、発熱、嗜眠、食欲不振、体重減少又は死の明らかなサインは無かった。
【実施例7】
【0097】
ヒト乳癌異種移植片における不十分な発現のHER2/neuレセプターに対して標的化された自殺プラスミド保有ミニ細胞は、ヌードマウスの腫瘍を効率的に縮退させる
上記に説明したin vivoの結果は、癌細胞などの異常細胞での過剰発現レセプターに対してミニ細胞を効率的に標的化できたことを示した。本実施例は、癌細胞表面での不十分な発現のレセプターに対して標的化する場合におけるミニ細胞ベクターの有効性を示す。従来のアプローチでは、不十分に発現したレセプターにターゲティングすることは、抗体をベースとした治療の開発、特に癌治療において非常に困難なことであり、これは、多くの癌細胞は標的化されたレセプターを過剰発現しないからである。例えば、乳癌患者の20%以下に、HER2/neuレセプターが過剰発現するにすぎない。
【0098】
従って、ミニ細胞HSV1tkベクターを、MDA-MB-468乳癌細胞で不十分に発現されることが知られているHER2/neuレセプターに標的化する、異種移植片研究を設計した。実験及び対照グループ(図7)は、もう1つ実験グループ(G8、HER/neu-標的化ミニ細胞HSV1tkを腫瘍内に注射した)を含めた以外は、実施例6と同様にした。結果(図7)は、HER2/neuレセプターは不十分な発現だったにもかかわらず、実験治療は、実施例6の場合(ミニ細胞HSV1tkベクターを、過剰発現されたEGFレセプターに標的化した場合)とちょうど同じように腫瘍安定化/縮退を達成するのに効果的であったことを示した。この結果を達成するのに標的化ミニ細胞HSV1tkの投与(3回)と同じ数を必要とした。本実験において、残存する腫瘍が53日目から81日目の間に増殖し始めると、HER2/neu-標的化ミニ細胞HSV1tkの4回目が投与され、グループ6及び7で腫瘍体積が急速に下がった。One-way ANOVAを使ったデータの統計学的な分析により、実験グループ(6、7及び8)は対照グループ1〜5と比較して大きな有意差があった(p=0.0001)ことが示された。
【0099】
引用文献
本明細書は、以下の文献のそれぞれを参照によって組み込む。
【0100】
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【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】非標的化ミニ細胞と比較した、ヒト前立腺癌LNCaP細胞へのヒトアンドロゲンレセプター-標的化組換えミニ細胞の効果的な内在化(internalization)を示す。手順を実施例1に示したように行い、結果を共焦点顕微鏡で視覚化した。示した全ての画像について、免疫蛍光染色を、抗-S.typhimurium LPS特異的モノクローナル抗体で、次にAlexa Fluor 594-結合ヤギ抗-マウスIgG(H+L)抗体で行った。各画像を、微分干渉コントラスト(DIC)と赤色蛍光画像を重ねたもので示す。(A)ミニ細胞でトランスフェクションしていない対照のLNCaP細胞。S.typhimurium LPSに対する染色後、赤色蛍光は観察されなかった。(B)非標的化ミニ細胞でトランスフェクションし、16時間の同時インキュベーション後染色したLNCaP細胞。バックグラウンドの赤色蛍光のドットはほとんど観察されなかった。(C)標的化ミニ細胞でトランスフェクションし、16時間後染色したLNCaP細胞。ほとんどの細胞が細胞質に赤色蛍光を示し、白黒画像では薄灰色で示される。(D)非標的化ミニ細胞でトランスフェクションし、24時間の同時インキュベーション後染色したLNCaP細胞。バックグラウンドの赤色蛍光のドットはほとんど観察されなかった。(E)標的化ミニ細胞で形質転換し、24時間後染色したLNCaP細胞。その結果はほとんどの細胞の細胞質にきわめて強い赤色蛍光を示した(画像では薄灰色)、(F)単一のトランスフェクションされた細胞を示すために高倍率にした以外は(E)と同じ。ほとんど全部の細胞質が赤い蛍光を発した(薄灰色)。スケールバーを各画像に示す。
【図2】ヒト乳癌MDA-MB-468細胞へのEGFレセプター-標的化組換えミニ細胞対非標的化ミニ細胞の効果的な内在化を示す。手順を実施例2に示したとおりに行い、結果を共焦点顕微鏡で視覚化した。示した全ての画像について、免疫蛍光染色を抗-S.typhimurium LPS特異的モノクローナル抗体、次にAlexa Fluor 594-結合ヤギ抗-マウスIgG(H+L)抗体で行った。各画像はDIC及び赤色蛍光画像を重ねたもので示す。(A)ミニ細胞でトランスフェクションしていない対照のMDA-MB-468細胞。S.typhimurium LPSでの染色後、赤色蛍光は観察されなかった。(B)非標的化ミニ細胞でトランスフェクションし、24時間の同時インキュベーション後染色したMDA-MB-468細胞。バックグラウンドの赤色蛍光のドットはほとんど観察されなかった。(C)標的化ミニ細胞でトランスフェクションし、24時間後染色したMDA-MB-468細胞。ほとんどの細胞が表面で、及び細胞質でいくらか、赤色蛍光を示した(白黒画像の薄灰色部分)。(D)単一の細胞を示すために高倍率にした以外は(C)と同じ。結果は(C)と同じであった。(E)細胞を36時間後に染色した以外は(D)と同じ。結果は、ほとんどの細胞の細胞質で非常に強い赤色蛍光を示した(画像では薄灰色)。スケールバーを各画像に示す。
【図3】ヒト卵巣癌SKOV-3細胞へのHer2/neuレセプター-標的化組換えミニ細胞対非標的化ミニ細胞の効果的な内在化を示す。手順を実施例3に示したように行い、結果を共焦点顕微鏡で視覚化した。示した全ての画像おいて、免疫蛍光染色を、抗-S.typhimurium LPS特異的モノクローナル抗体、次にAlexa Fluor 594-結合ヤギ抗-マウスIgG(H+L)抗体で行った。各画像をDICと赤色蛍光画像を重ねたもので示す。(A)ミニ細胞でトランスフェクションしていない対照のSKOV-3細胞。S.typhimurium LPSに対する染色後、赤色蛍光は観察されなかった。(B)非標的化ミニ細胞でトランスフェクションし、36時間の同時インキュベーション後染色したSKOV-3細胞。バックグラウンドの赤色蛍光のドットはほとんど観察されなかった。(C)標的ミニ細胞でトランスフェクションし、36時間後に染色されたSKOV-3細胞。ほとんどの細胞が細胞質に赤色蛍光を示した(白黒画像で薄灰色の部分)。(D)高倍率の他は(C)と同じ。結果は(C)と同じであった。(E)幾つかの細胞を示すために高倍率の他は(C)と同じ。結果はほとんどの細胞の細胞質で非常に強い赤色蛍光を示した(画像の薄灰色)。スケールバーを各画像に示す。
【図4】B型肝炎ウイルス表面抗原をコードするプラスミドを有するEGFR-標的化ミニ細胞を使った、ヒト乳癌(MDA-MB-468)細胞への遺伝子送達の効率性を示す。(A)(i)抗-HBsAg MAbの次にフィコエリトリン(PE)-結合第二抗体(抗-マウスIgG)、(ii)非標的化ミニ細胞に続いて抗-HBsAg MAb及びPE-結合抗-マウスIgG MAb、(iii)非特異的標的化ミニ細胞に続いて抗-HBsAb MAb及びPE-結合抗-マウスIgG MAb、及び(iv)EGFR-標的化ミニ細胞に続いて抗-HBsAg MAb及びPE-結合抗-マウスIgG MAbで処理した細胞の蛍光強度を示す、フローサイトメトリーの結果。(B)EGFR-標的化ミニ細胞HBsAgでのトランスフェクションに続く、MDA-MB-468細胞での効率的な遺伝子送達及び組換えHBsAg発現を示す共焦点顕微鏡の結果(ii及びiii)。細胞内の非常に強い赤色蛍光(白黒画像で薄灰色で示される)は、抗-HBSAg MAbに続いてAlexa Fluor 594-結合抗-マウスIgG MAbで示される組換えHBsAgタンパク質である。非特異的に標的化されるミニ細胞HBsAgでトランスフェクションされた対照細胞(i)は、バックグラウンドの赤色蛍光のドット2つのみを示した。
【図5】標的化組換えミニ細胞を介したヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片の治療を示す。乳癌異種移植片をヌードマウスに定着させ(実施例5参照)、プラスミドpORF5-HSV1tk::Sh bleを有する標的化組換えミニ細胞を使って腫瘍内で治療した。(グループ1、対照)腫瘍はいかなる治療も受けなかった;(グループ2、対照)腫瘍を非標的化組換えミニ細胞[M-HSVtk]で治療し、次にGCVを2回投与した;(グループ3、対照)腫瘍を標的化組換えミニ細胞[TM-HSVtk]で治療した;(グループ4、対照)腫瘍を二重特異性抗体(BsAb;抗-S.typhimurium LPS/抗-ヒトEGFレセプター特異性)で治療し、次にGCVを2回投与した;(グループ5、実験)腫瘍を標的化組換えミニ細胞[TM-HSVtk]で治療し、次にGCVを1回投与した;(グループ6、実験)腫瘍を標的化組換えミニ細胞(TM-HSVtk)で治療し、次にGCVを2回投与した。X軸の下は、様々な治療が特定のグループに行われた日を示す。
【図6】過剰発現EGFレセプターに標的化した組換えミニ細胞を介したヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片の治療を示す。乳癌の異種移植片をヌードマウスに定着させ(実施例6参照)、プラスミドpORF5-HSVtk::Sh bleを有する標的化組換えミニ細胞で静脈から治療した。腫瘍異種移植片を以下のように治療した。(グループ1、対照)治療なし;(グループ2、対照)非標的化組換えミニ細胞[非-T-MHSVtk]の次に、GCV2回の投与;(グループ3、対照)非標的化組換えミニ細胞[非-T-MHSVtk]、(グループ4、対照)二重特異性抗体(BsAb;抗-S.typhimurium LPS/抗-ヒトEGFレセプター特異性)の次にGCV2回の投与、(グループ5、対照)標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]、(グループ6、実験)108個の標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]の次にGCV2回の投与、及び(グループ7、実験)109個の標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]の次にGCV2回の投与。X軸の下は、特定のグループに行われた様々な治療の日を示す。黒い三角はミニ細胞又は抗体治療を示し、白い三角はGCV治療を示す。
【図7】低発現HER2/neuレセプターに標的化された組換えミニ細胞を介したヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片の治療を示す。乳癌の異種移植片をヌードマウスに定着させ(実施例5参照)、プラスミドpORF5-HSVtk::Sh bleを有する標的化組換えミニ細胞で静脈から治療した。グループ8のマウスに組換えミニ細胞を腫瘍内に注射した。腫瘍異種移植片を以下のように治療した。(グループ1、対照)治療なし;(グループ2、対照)非標的化組換えミニ細胞[非-T-MHSVtk]の次にGCV2回の投与;(グループ3、対照)非標的化組換えミニ細胞[非-T-MHSVtk]、(グループ4、対照)二重特異性抗体(BsAb;抗-S.typhimurium LPS/抗-ヒトHER2/neuレセプター特異性)の次にGCVの二回の投与、(グループ5、対照)標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]、(グループ6、実験)108個の標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]の次にGCV2回の投与、(グループ7、実験的)109個の標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]の次にGCV2回の投与、及び(グループ8、実験)109個の標的化組換えミニ細胞[T-MHSVtk]の腫瘍内注射の次にGCVの2回の投与。X軸の下は、特定のグループに行われた様々な治療の日を示す。黒い三角はミニ細胞又は抗体治療を示し、白い三角はGCV治療を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性リガンドを、(a)治療用核酸配列を含む細菌由来のミニ細胞及び(b)非食作用性哺乳動物細胞と接触させ、これによって、(i)前記二重特異性リガンドが、前記ミニ細胞と前記哺乳動物細胞との結合を引き起こし、及び(ii)前記ミニ細胞は前記哺乳動物細胞に取り込まれ、該哺乳動物細胞が前記治療用核酸配列の発現産物を産生することを含む標的化遺伝子送達方法。
【請求項2】
前記二重特異性リガンドがポリペプチド又は炭水化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二重特異性リガンドが、細菌由来のミニ細胞の表面構造に対して特異性を有する第一のアーム及び非食作用性哺乳動物細胞の表面レセプターに対して特異性を有する第二のアームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のアーム及び第二のアームが単一特異的である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のアーム及び第二のアームが多価である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ミニ細胞の表面構造が、該ミニ細胞の表面にあるリポ多糖類のO-多糖類構成要素である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ミニ細胞の表面構造が、外膜タンパク質、線毛、フィムブリエ、鞭毛及び細胞表面に露出した炭水化物からなる群のメンバーである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物細胞の表面レセプターが、前記ミニ細胞のレセプター仲介エンドサイトーシスを活性化できる、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記二重特異性リガンドが抗体又は抗体フラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記二重特異性リガンドがヒト化抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ミニ細胞がインタクトな細胞壁を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記治療用核酸配列が自殺遺伝子をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記治療用核酸が、前記哺乳動物細胞において異常に機能するか又は異常なレベルで存在するタンパク質を発現する遺伝子の正常なカウンターパートをコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物細胞がin vitroで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物細胞がin vivoで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記治療用核酸が、複数の核酸配列から構成されるプラスミドに含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記プラスミドが調節エレメントを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プラスミドがレポーターエレメントを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
(i)治療用核酸分子を含む細菌由来のミニ細胞と、(ii)前記ミニ細胞の表面構成要素及び非食作用性哺乳動物細胞の表面構成要素と結合できる二重特異性リガンドとを含む組成物。
【請求項20】
前記二重特異性リガンドがポリペプチド又は炭水化物を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記二重特異性リガンドが、細菌由来のミニ細胞の表面構造に対して特異性を有する第一のアームと、非食作用性哺乳動物細胞の表面レセプターに対して特異性を有する第二のアームを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記第一のアームと第二のアームが単一特異的である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第一のアームと第二のアームが多価である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記ミニ細胞の表面構造が、該ミニ細胞の表面にあるリポ多糖類のO-多糖類構成要素である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記ミニ細胞の表面構造が、外膜タンパク質、線毛、フィムブリエ、鞭毛及び細胞表面に露出した炭水化物からなる群のメンバーである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物細胞の表面レセプターが、前記ミニ細胞のレセプター仲介エンドサイトーシスを活性化できる、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記二重特異性リガンドが抗体又は抗体フラグメントを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
前記二重特異性リガンドがヒト化抗体を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
前記ミニ細胞がインタクトな細胞壁を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項30】
前記治療用核酸配列が自殺遺伝子をコードする、請求項19に記載の組成物。
【請求項31】
前記治療用核酸が、前記哺乳動物細胞において異常に機能するか又は異常なレベルで存在するタンパク質を発現する遺伝子の正常なカウンターパートをコードする、請求項19に記載の組成物。
【請求項32】
前記治療用核酸が複数の核酸配列から構成されるプラスミドに含まれる、請求項19に記載の組成物。
【請求項33】
前記プラスミドが調節エレメントを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記プラスミドがレポーターエレメントを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
細胞、組織又は器官に医薬を投与することにより病気を治療するか又は体質を改変する方法に使用するための前記医薬の調製における、細菌由来のインタクトなミニ細胞と二重特異性リガンドの使用であって、前記ミニ細胞は治療用核酸分子を含み、前記二重特異性リガンドは前記ミニ細胞及び標的非食作用性哺乳動物細胞と結合できる、前記使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−534310(P2007−534310A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543663(P2006−543663)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004406
【国際公開番号】WO2005/056749
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(504146523)エンジェネイック モレキュラー デリバリー ピーティーワイ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】