終端回路、車載制御装置、車載通信システム
【課題】対ノイズ効果を犠牲にすることなく、伝送速度の高速化や良好な信号波形の確保が可能な終端回路、及びその終端回路を備える車載制御装置、車載通信システムの提供。
【解決手段】終端回路25は、コモンモードチョークコイル27を形成する一対のコイルL1,L2を備え、各コイルLi(i=1,2)は、一端が抵抗素子Riを介して信号線LNiに接続され、他端がコンデンサCiを介して接地されている。コモンモードチョークコイル27は、両コイルL1,L2にコモン電流が流れた場合、コイルL1,L2が互いに弱め合う方向の磁界を発生して、コイルL1,L2の両端間が低インピーダンスとなり、両コイルL1,L2にデファレンシャル電流が流れた場合、コイルL1,L2が互いに強め合う方向の磁界を発生し、コイルL1,L2の両端間が高インピーダンスとなるように接続されている。
【解決手段】終端回路25は、コモンモードチョークコイル27を形成する一対のコイルL1,L2を備え、各コイルLi(i=1,2)は、一端が抵抗素子Riを介して信号線LNiに接続され、他端がコンデンサCiを介して接地されている。コモンモードチョークコイル27は、両コイルL1,L2にコモン電流が流れた場合、コイルL1,L2が互いに弱め合う方向の磁界を発生して、コイルL1,L2の両端間が低インピーダンスとなり、両コイルL1,L2にデファレンシャル電流が流れた場合、コイルL1,L2が互いに強め合う方向の磁界を発生し、コイルL1,L2の両端間が高インピーダンスとなるように接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路,車載制御装置、及び、これら終端回路や車載制御装置を用いて構成される車載通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の端末装置をバス状又はスター状に配線された伝送路に接続してなる通信システムでは、伝送路端での信号の反射を防止するため、図15(a)に示すように、その伝送路LNの端部に終端回路100が接続されている。
【0003】
その終端回路100の一種として、伝送路LNを介して端末装置110から放射されるノイズ(エミッションノイズ)の低減や、伝送路LNを介して端末装置110に侵入するノイズ(イミュニティノイズ)に対する耐量の向上させる機能を有するものが知られている。
【0004】
具体的には、単線の伝送路に対してはRC終端回路(例えば、非特許文献1参照)、差動信号を伝送する二線式の伝送路に対しては、RC終端を変形したスプリット終端回路(例えば、非特許文献2参照)等が用いられている。
【0005】
なお、RC終端回路101は、図16(a)に示すように、抵抗素子Rと容量素子(コンデンサ)Cとを直列接続した回路からなり、また、スプリット終端回路103は、図16(b)に示すように、二線式の伝送路を構成する各信号線の間に直列接続された一対の抵抗素子Rと、その一対の抵抗素子R同士の接続点(中性点)に一端が接続され、他端が接地された容量素子Cとからなる。
【0006】
なお、以下では、これらRC終端回路101及びスプリット終端回路103を、従来回路というものとする。
そして、特に、差動信号を伝送する二線式の伝送路に従来回路101,103を適用した場合、従来回路101,103を構成する容量素子Cが伝送路上の交流成分をグランドにバイパスすることにより、コモンモードノイズが除去され、ひいてはイミュニティノイズ耐量が向上する。また、伝送路を流れる差動信号の波形が非対称であれば、容量素子Cの充放電動作によって、その波形が対称な形状に整形されるため、エミッションノイズも減少する。
【0007】
しかし、通常、終端回路100(101,103)は、上述したように伝送路端に設けられるため、その伝送路端(即ち、終端回路の接続箇所)から離れた所に位置する端末装置110ほど、終端回路100による上述したような対ノイズ効果が得られにくくなる。
【0008】
これに対して、終端回路100による対ノイズ効果を通信システム全体で享受できるように、図15(b)に示すように、通信システムを構成する全端末装置110に終端回路100を設ける手法(マルチターミネーションコンセプト)が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【非特許文献1】原著 Mark I.Montrose 発行者 松塚晃佑 三末株式会社出版事業部 「プリント配線板のEMC設計」2006/01/20(初版)240ページ
【非特許文献2】トランジスタ技術編集部編 発行者 CQ出版「トランジスタ技術」 1997年7月号、286ページ、
【非特許文献3】Cia(CanInAutomotive)http://www.can-cia.org/ 「CANphy仕様書」34〜35ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、伝送路の終端に従来回路101,103を用いた場合、上述した対ノイズ効果を向上させるためには、高周波成分が容量素子Cを介してグランドにパイパスされ易くなるように、抵抗素子Rの抵抗値を下げることが望ましい。
【0010】
一方、伝送路での伝送速度の高速化のためには、伝送路を流れる差動信号の信号波形の立ち上がりエッジや立ち下がりエッジの減衰,鈍化の原因を除去すること、即ち、終端回路を構成する抵抗素子Rの抵抗値を上げることにより、デファレンシャルモードとなる伝送信号(差動信号)の高周波成分が容量素子Cを介してグランドにパイバスされにくくすることが望ましい。
【0011】
つまり、従来回路101,103を構成する抵抗素子Rの抵抗値は、対ノイズ効果の向上のためには下げる必要があり、伝送信号の振幅の確保および伝送速度の高速化のためには上げる必要があった。
【0012】
また、従来回路101,103を構成する抵抗素子Rは、信号を送受信する送受信回路(トランシーバ)の出力インピーダンスと共に分圧回路を構成し、トランシーバの出力電圧を分圧してしまうため、その抵抗値を下げるほど、伝送路上に出力される差動信号の振幅が低下する。
【0013】
この差動信号の振幅低下は、受信側で差動信号を2値化する際の精度を低下させてしまうだけでなく、伝送路の配線長や搭載製品内での配線の引き回しにも大きな制限を与えてしまうという問題がある。
【0014】
そもそも、終端回路を構成する抵抗素子の抵抗値が変化すると、終端回路の本来の機能(ツイストペア線の特性インピーダンスと抵抗値が一致することで、信号が反射することを抑制する)が低下するため、対ノイズ効果を向上させるためとはいえ、抵抗値を無闇に変更することはできなかった。
【0015】
また、マルチターミネーションを採用した場合、各端末装置110に設けられる終端回路の抵抗素子は全て並列接続の関係となり、端末装置110の接続数が増えるほど、その合成抵抗値は低下するため、上述した抵抗素子の抵抗値を下げた場合と同様の問題(差動信号の振幅の低下)が発生する。
【0016】
つまり、従来回路101,103を用いてマルチターミネーションを実現するには、差動信号の振幅確保のために、端末装置101の接続数が多いほど、抵抗素子Rの抵抗値を上げなければならず、その結果、従来回路101,103による対ノイズ効果が低下してしまうという問題がある。
【0017】
このように、伝送信号の振幅の確保および伝送速度の高速化と、対ノイズ効果の向上とはトレードオフの関係にあり、両立させることが困難であるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、対ノイズ効果を犠牲にすることなく、伝送速度の高速化や良好な信号波形の確保が可能な終端回路、及びその終端回路を備える車載制御装置、車載通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路であって、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、抵抗素子側の端部が信号線に接続されると共に、誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される直列回路が、伝送路を構成する信号線毎に設けられている。つまり、終端回路は一対の直列回路を備えている。
【0019】
そして、この一対の直列回路を構成する各誘導素子は、伝送路を伝搬する信号がデファレンシャルモードである場合に、互いに強め合う方向の次回を発生させ、且つ、伝送路を伝搬する信号がコモンモードである場合に、互いに弱め合う方向の磁界を発生させるように配置されている。
【0020】
つまり、前者の場合、誘導素子には、互いに強め合うよう合成された磁界に比例する大きなインピーダンスが発生し、一方、後者の場合、誘導素子には、互いに弱め合うよう合成された磁界に比例する小さなインピーダンスが発生する(磁界が完全に相殺されている場合にはインピーダンスが発生しない)。
【0021】
このように、本発明の終端回路では、デファレンシャルモードとなる差動信号に対しては高インピーダンスとなり、等価的には終端回路が接続されていないものとみなすことができ、エミッションノイズやイミュニティノイズの主要因であるコモンモードノイズに対しては低インピーダンスとなり、等価的には誘導素子の両端が短絡しているものとみなすことができる。
【0022】
従って、本発明の終端回路によれば、対ノイズ効果を犠牲にする(即ち、抵抗素子の抵抗値を上げる)ことなく、伝送信号(差動信号)の高速化や良好な信号波形の確保を実現でき、また、マルチターミネーションを採用することができる。
【0023】
更に、伝送信号(差動信号)の波形を良好に保つことが可能であることから、伝送路の配線長や配線の引き回しの制限を緩和することができ、ネットワークの設計自由度を大幅に向上させることができる。
【0024】
なお、本発明の終端回路においては、請求項2に記載のように、一対の直列回路を構成する一対の誘導素子として、コモンモードチョークコイルを用いてもよい。
なお、コモンモードチョークコイルは、閉磁路状のコアと、そのコアに巻回された一対のコイルとからなり、両コイルが発生させる磁界は、コアに沿ったものとなる。そして、コモンモードチョークコイルは、図14(a)に示すように、互いに強め合う方向の磁界が発生するよう、両コイルに電流を流した場合は高インピーダンスとなる。一方、図14(b)に示すように、互いに弱め合う方向の磁界が発生するよう、両コイルに電流を流した場合は低インピーダンスとなり、特に、その電流が同じ大きさである場合には、等価的に短絡しているものとみなすことができる。
【0025】
このようなコモンモードチョークコイルを用いた場合、コモンモードノイズが容量素子を介して効率良く除去されるため、伝送路を流れる差動信号の信号波形を精度良く均等化することができ、この差動信号の信号波形が不均等であることに基づくエミッションノイズをより効果的に抑制することができる。
【0026】
なお、誘導素子に印加する基準電位は、請求項3に記載のように、基準電位発生回路が発生させるように構成しても良く、この場合、基準電位発生回路は、基準電位として、差動信号の中心電位に相当する電位を発生させることが望ましい。
【0027】
次に請求項4に記載の発明は、差動信号を伝送する一対の信号線にて使用される終端回路であって、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、抵抗素子側の端部が信号線に接続されると共に、誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される直列回路が、伝送路を構成する信号線毎に設けられている。つまり、終端回路は一対の直列回路を備えている。これと共に、基準電位として、差動信号の中心電位に相当する電位を発生させる基準電位発生回路を備えている。
【0028】
このように構成された本発明の終端回路では、請求項1に記載の終端回路とは異なり、伝送路を伝搬する信号がデファレンシャルモードである場合とコモンモードである場合とでインピーダンスが大きく変化することはないが、誘導素子が存在しない従来の終端回路と比較して、終端回路を構成する抵抗素子によって生じる伝送信号(差動信号)の振幅の減少を緩和することができる。
【0029】
ところで、請求項3及び4に記載の終端回路において、基準電位発生回路は、具体的には、請求項5に記載のように、一端が直列回路の誘導素子側の端部に接続され、他端が接地された容量素子により構成されていてもよく、請求項6に記載のように、電源電圧を分圧することで基準電位を発生させる分圧回路により構成されていてもよい。
【0030】
つまり、前者の場合、容量素子は、特別な構成を付加しなくても、差動信号の中心電圧(平均電圧)で充電されるため、極めて簡易な構成にて基準電位を発生させることができる。
【0031】
また、後者の場合、伝送路の状態によらず、基準電位を常に一定に保持できるだけでなく、分圧回路を構成する抵抗素子の抵抗値を適宜設定することにより、終端回路の対ノイズ効果の特性を簡単に調整することができる。
【0032】
なお、基準電位発生回路は、直列回路毎に個別に設けられていてもよいが、請求項7に記載のように、一対の直列回路に対して共通に設けられていてもよい。
この場合、装置構成を簡略化できるだけでなく、両直列回路間で基準電位のばらつきがなくなるため、対ノイズ効果の精度を向上させることができる。
【0033】
次に、請求項8に記載の発明は、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路に接続して使用され、該伝送路を介した通信を行う車載制御装置であって、上述した請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路を備えている。
【0034】
このように構成された本発明の車載制御装置によれば、車載通信システムに組み込まれた時に、ノイズ受信により誤動作することや、伝送路に接続される他装置を誤動作させてしまうことを抑止できる。
【0035】
また、本発明の車載制御装置において、終端回路は、請求項9に記載のように、差動信号を送受信する送受信回路と伝送路が接続される入出力端子とが、コモンモードノイズを抑止するためのノイズ抑止部品を介して接続されている場合には、ノイズ抑止部品より送受信回路側、及びノイズ抑止部品より入出力端子側のうち、少なくとも一方に接続されていることが望ましい。
【0036】
なお、ノイズ抑止部品としては、例えば、コモンモードチョークコイル等が考えられる。
そして、終端回路が、送受信回路側に接続されている場合には、送受信回路にて発生するコモンモードノイズに対して、高い抑制効果を得ることができる。
【0037】
また、終端回路が入出力端子側に接続されている場合は、車載制御装置の外部から入出力端子を介して侵入するイミュニティノイズに対して、高い抑制効果を得ることができる。
【0038】
更に、その双方に接続した場合には、いずれに対しても高い抑制効果を得ることができる。しかも、終端回路は、上述したようにデファレンシャルモードに対して高インピーダンスとなるため、終端回路を二つ接続しても、伝送信号(差動信号)の振幅を低下させることなく、これらのノイズ抑圧効果を得ることができる。
【0039】
但し、これらの場合、その対ノイズ効果を最大限に引き出すためには、終端回路を、送受信回路や入出力端子に可能な限り接近させて配置することが望ましい。
次に、請求項10に記載の発明は、車載通信システムであって、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路と、伝送路を介して通信を行う複数の車載制御装置と、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路とを備えている。
【0040】
このように構成された本発明の車載通信システムによれば、上述した終端回路を備えていることにより、対ノイズ効果を犠牲にすることなく、伝送速度の高速化や良好な信号波形の確保がされるため、システム設計の自由度が高く、様々な状況に柔軟に対応することができる。
【0041】
なお、本発明の車載通信システムにおいて、終端回路は、請求項11に記載のように、車載制御装置に内蔵されていてもよいし、請求項12に記載のように、伝送路に接続されていてもよい。
【0042】
また、伝送路に接続されている場合は、請求項13に記載のように、車載制御装置との接続端に設けられていることが望ましい。
このように終端回路を車載制御装置に内蔵させたり、車載端末との接続端に設けることによって、各車載制御装置から放射されるノイズ(エミッションノイズ)、及び各車載制御装置に侵入する外来ノイズ(イミュニティノイズ)を、効率よく抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された車載通信システム1の全体構成図である。
<全体構成>
車載通信システム1は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を構成する伝送路3と、この伝送路3に接続される複数の車載制御装置10とかなる。
【0044】
このうち伝送路3は、両端に終端回路5が接続された幹線3aと、幹線3aの途中で分岐する支線3bとによってバス状に形成され、支線3bの先端に車載制御装置10が接続されている。なお、伝送路3は、一対の信号線を撚り合わせたツイストペア線からなる。
【0045】
また、終端回路5として、伝送路3を構成する一対の信号線間に直列接続され、且つ同じ抵抗値を有する一対の抵抗素子と、これら一対の抵抗素子同士の接続点(中性点)に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサとからなる、いわゆるスプリット終端回路が用いられている。
【0046】
<車載制御装置の構成>
図2は、車載制御装置10の構成を示すブロック図である。
車載制御装置10は、外部電源(バッテリ)Bから給電を受け、電圧変換等を施して装置各部に電源供給する電源回路11と、外部機器K1,K2との間で各種信号を入出力するための入出力回路13と、伝送路3を介して差動信号を送受信するトランシーバ(送受信回路)15と、入出力回路13を介して各種センサやスイッチ等(外部機器K1)から検出信号や状態信号を入力したり、各種駆動回路や負荷回路等(外部機器K2)に対して駆動信号を出力したりすると共に、トランシーバ15を介して、伝送路3に接続された他の車載制御装置10との通信を行うことにより、様々な車両制御を実行するマイクロコンピュータ17とを備えている。
【0047】
なお、マイクロコンピュータ17は、CPU,ROM,RAMを中心に構成され、更に、トランシーバ15を制御する通信コントローラ19を備えた周知のものである。
ここで、図3は、トランシーバ15周辺の詳細構成を示すブロック図である。
【0048】
図3に示すように、車載制御装置10において、伝送路の支線3bの端部が接続される入出力端子21とトランシーバ15とが一対の信号線LN1,LN2により接続されている。また、この一対の信号線LN1,LN2には、コモンモードチョークコイルからなるノイズ抑止部品23が挿入されており、更に、トランシーバ15とノイズ抑止部品23との間には終端回路25が接続されている。
【0049】
なお、トランシーバ15は、通信コントローラ19から送信許可信号ENを受けると、通信コントローラ19から供給される2値化された送信データSを、差動信号に変換して信号線LN1,LN2(ひいては伝送路3)に送出する送信回路15aと、信号線LN1,LN2(ひいては伝送路3)を介して受信した差動信号を、その大小比較を行うことにより2値化された受信データRに変換して通信コントローラ19に供給する受信回路15bとからなる。
【0050】
<終端回路の構成>
ここで図4は、終端回路25の構成を示す回路図である。
終端回路25は、閉磁路状のコアと、そのコアに巻回された一対の誘導素子(コイル)L1,L2とで構成されたコモンモードチョークコイル27を備えている(図14参照)。
【0051】
そして、各コイルLi(i=1,2)は、一端が抵抗素子Riを介して信号線LNiに接続され、他端が容量素子(コンデンサ)Ciを介して接地(グランドに接続)されている。
【0052】
但し、両コイルL1,L2のいずれにも、グランドから信号線LNi(又は、信号線LNiからグランド)に向けて電流(以下、コモン電流という)が流れた場合(図5(a)参照)、コイルL1,L2は、互いに弱め合う(相殺する)方向の磁界を発生し、また、両コイルL1,L2のうち、一方では信号線LNiからグランドに向け、他方ではグランドから信号線LNiに向けて電流(以下、ディファレンシャル電流という)が流れた場合(図5(b)参照)、コイルL1,L2は、互いに強め合う方向の磁界を発生するように、コモンモードチョークコイル27と抵抗素子R1,R2及びコンデンサC1,C2とが接続されている。
【0053】
なお、トランシーバ15が、信号線LN1,LN2に出力する差動信号の信号レベルは、予め設定されたアイドル電位(差動信号の中心電位)を中心にして、互いに対称な信号レベルを有するように変動する。また、トランシーバ15は、差動信号の未送信時に、信号線LN1,LN2の信号レベルをアイドル電位に保持するように構成されている。
【0054】
このため、コンデンサC1,C2は、アイドル電位に充電され、このアイドル電位を基準(即ち、本発明における基準電位に相当)として、信号線LN1,LN2の電位がアイドル電位より高ければ、コンデンサC1,C2に電荷を充電する向きに電流が流れ、逆に信号線LN1,LN2の電位がアイドル電位より低ければ、コンデンサC1,C2から電荷を放電する向きに電流が流れる。
【0055】
このように構成された終端回路25では、コモン電流が流れた場合、コモンモードチョークコイル27が低インピーダンス(等価的には従来のRC終端回路と同様の構成)となり、一方、ディファレンシャル電流が流れた場合、コモンモードチョークコイル27が高インピーダンス(等価的には終端回路25が接続されていない状態)となる。
【0056】
なお、コモン電流(即ち、コモンモードノイズ)は、トランシーバ15が発生させるものと、伝送路3に重畳されたイミュニティノイズが伝搬してくるものとがあり、そのどちらに対しても、終端回路25は同様に動作する。
【0057】
<効果>
以上説明したように、車載通信システム1においては、車載制御装置10に内蔵される終端回路25は、トランシーバ15が送受信する差動信号(ディファレンシャルモード)に対して、等価的に接続されていない(有効に動作しない)状態となるため、作動信号の信号波形を鈍らせたり、信号レベルを低下させたりすることがなく、また、エミッションノイズやイミュニティノイズの主要因となるコモンモードノイズに対して、等価的に従来のRC終端回路と同様な動作をする状態となるため、コモンモードノイズを除去することができる。
【0058】
従って、車載通信システム1によれば、終端回路25での対ノイズ効果を犠牲にする(即ち、抵抗素子R1,R2の抵抗値を上げる)ことなく、差動信号の高速化や良好な信号波形の確保を実現することができ、また、全ての車載制御装置10に終端回路25を搭載するマルチターミネーションを採用することも可能となる。
【0059】
更に、差動信号について、良好な信号波形が確保されることから、伝送路3の配線長や配線の引き回しの制限を緩和することができ、ネットワークの設計自由度を大幅に向上させることができる。
【0060】
ここで、図17は、コモンモードチョークコイル27(但し、本実施形態ではTDK株式会社製のZJYS90V−101−2PTLを使用)の特性を示すグラフである。
図示されているように、差動信号の周波数(速度)を10MHzとすると、デファレンシャル電流が流れた場合は数kΩ程度、コモン電流が流れた場合は数Ω程度となる。また、伝送路3のインピーダンスが、伝送路3に接続された終端回路5によって100Ωに調整されているものとすると、伝送路3のインピーダンスと、デファレンシャル電流が流れた時の終端回路25のインピーダンスとは、1桁以上異なっている。
【0061】
従って、伝送路3に終端回路25を接続したとしても、伝送路3のインピーダンスを大きく低下させてしまうことはない。
具体的に、コモンモードチョークコイル27のインピーダンスが5000Ω、抵抗素子R1,R2がいずれも750Ωであるとすると、終端回路25を接続した時の伝送路3のインピーダンスは、約98.3Ωであり、約1.7%減少するに過ぎず、この低減割合は部品の誤差程度である。
【0062】
また、図18は、伝送路3上での差動信号の信号レベルを測定した結果を表すグラフである。
但し、伝送路3に終端回路を設けない場合、終端回路としてRC終端回路を用いた場合、本実施形態の終端回路25を用いた場合を示す。また、終端回路25は、抵抗素子R1,R2が750Ω、コンデンサC1,C2が4700pFとし、RC終端回路でも同じ大きさの抵抗素子とコンデンサを使用した。
【0063】
図示されているように、本実施形態の終端回路25を設けた場合、終端回路を設けない場合と同程度の信号レベルを確保できることがわかる。
図19は、エミッションノイズ(輻射ノイズ)を測定した結果を示すグラフであり、(a)は、終端回路25を設けない場合、(b)は終端回路25を設けた場合である。
【0064】
但し、抵抗素子R1,R2の抵抗値、コンデンサC1,C2の容量は、信号レベルを測定した時と同じである。また、図中、PKレベルとは、ノイズのピークレベルのことであり、また、AVレベルとは、ノイズの平均レベルのことである。
【0065】
図示されているように、車載通信システム1では、エミッションノイズを、8MHz以下の周波数領域で、最大20dBμV/m低減することができ、また、1GHzまでの全周波数領域に渡って、AVレベルが狭帯域基準値を下回っており、CISPR25規格のCLASS4を満たしていることがわかる。
【0066】
<他の実施形態>
上記実施形態では、終端回路25は、抵抗素子Ri及びコイルLiからなる直列回路に印加する基準電圧を、二つのコンデンサC1,C2によって、その直列回路毎に発生させているが、図6に示す終端回路25aのように、一つのコンデンサCによって両直列回路に共通の基準電圧を発生させるように構成してもよい。
【0067】
また、図7に示すように、終端回路25におけるコンデンサC1,C2の代わりに、電源電圧を分圧する一対の抵抗素子からなる分圧回路DV1,DV2を用いて基準電圧を発生させるように構成された終端回路25bを用いてもよい。
【0068】
更に、図8に示すように、終端回路25aにおけるコンデンサCの代わりに、電源電圧を分圧する一対の抵抗素子からなる一つの分圧回路DVを設け、この分圧回路DVにより両直列回路に共通の基準電圧を発生させるように構成された終端回路25cを用いてもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、終端回路25を構成する二つのコイルL1,L2は、コモンモードチョークコイル27を形成しているが、図9に示すように、これを個別のコイルL1,L2で構成した終端回路25dを用いてもよい。
【0070】
この場合、コモン電流に対してコイルL1,L2のインピーダンスが低下しないため、コモンモードノイズの除去効果が低下するが、個々のコイルは、コモンモードチョークコイルより小さいため、装置構成を小型化することができる。
【0071】
上記実施形態では、終端回路25を、ノイズ抑止部品23よりトランシーバ15側に接続したが、図10に示すように、ノイズ抑止部品23より入出力端子21側に接続したり、図11に示すように、ノイズ抑止部品23よりトランシーバ15側、及びノイズ抑止部品23より入出力端子21側の両方に接続したりしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、終端回路25を車載制御装置10に内蔵しているが、図12に示すように、伝送路3側(特に支線3bの車載制御装置10との接続端近傍)に設けてもよい。
【0073】
上記実施形態では、伝送路3の幹線3aの両端に接続する終端回路5として、スプリット終端回路を用いたが、この終端回路5の代わりに、車載制御装置10に設けた終端回路25と同じものを用いてもよい。
【0074】
更に、上記実施形態では、伝送路3の幹線3aの両端に、終端回路5のみを接続したが、図13に示すように、終端回路25を内蔵した車載制御装置10を接続した車載通信システム1aを構成してもよい。また、終端回路25は、バス状の伝送路3の他、スター状の伝送路に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】車載通信システムの全体構成図。
【図2】車載制御装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】車載制御装置のトランシーバ周辺の詳細な構成を示すブロック図を含んだ回路図。
【図4】終端回路の詳細な構成を示す回路図。
【図5】終端回路の動作を示す説明図。
【図6】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図7】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図8】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図9】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図10】終端回路の他の接続例を示す説明図。
【図11】終端回路の他の接続例を示す説明図。
【図12】終端回路の他の接続例を示す説明図。
【図13】車載通信システムの他の構成例を示す説明図。
【図14】コモンモードチョークコイルの構成と動作を示す説明図。
【図15】従来の車載通信システムの全体構成図。
【図16】従来の終端回路の構成を示す回路図。
【図17】コモンモードチョークコイルの特性を示すグラフ。
【図18】終端回路が伝送路上の差動信号の振幅に与える影響を示すグラフ。
【図19】終端回路のエミッションノイズ低減効果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0076】
1,1a…車載通信システム 3…伝送路 3a…幹線 3b…支線 5,25,25a〜25d…終端回路 10…車載制御装置 11…電源回路 13…入出力回路 15…トランシーバ 17…マイクロコンピュータ 19…通信コントローラ 21…入出力端子 23…ノイズ抑止部品 27,…コモンモードチョークコイル C,C1,C2…容量素子(コンデンサ DV,DV1,DV2…分圧回路 K1,K2…外部機器 L1,L2…誘導素子(コイル) R,R1,R2…抵抗素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路,車載制御装置、及び、これら終端回路や車載制御装置を用いて構成される車載通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の端末装置をバス状又はスター状に配線された伝送路に接続してなる通信システムでは、伝送路端での信号の反射を防止するため、図15(a)に示すように、その伝送路LNの端部に終端回路100が接続されている。
【0003】
その終端回路100の一種として、伝送路LNを介して端末装置110から放射されるノイズ(エミッションノイズ)の低減や、伝送路LNを介して端末装置110に侵入するノイズ(イミュニティノイズ)に対する耐量の向上させる機能を有するものが知られている。
【0004】
具体的には、単線の伝送路に対してはRC終端回路(例えば、非特許文献1参照)、差動信号を伝送する二線式の伝送路に対しては、RC終端を変形したスプリット終端回路(例えば、非特許文献2参照)等が用いられている。
【0005】
なお、RC終端回路101は、図16(a)に示すように、抵抗素子Rと容量素子(コンデンサ)Cとを直列接続した回路からなり、また、スプリット終端回路103は、図16(b)に示すように、二線式の伝送路を構成する各信号線の間に直列接続された一対の抵抗素子Rと、その一対の抵抗素子R同士の接続点(中性点)に一端が接続され、他端が接地された容量素子Cとからなる。
【0006】
なお、以下では、これらRC終端回路101及びスプリット終端回路103を、従来回路というものとする。
そして、特に、差動信号を伝送する二線式の伝送路に従来回路101,103を適用した場合、従来回路101,103を構成する容量素子Cが伝送路上の交流成分をグランドにバイパスすることにより、コモンモードノイズが除去され、ひいてはイミュニティノイズ耐量が向上する。また、伝送路を流れる差動信号の波形が非対称であれば、容量素子Cの充放電動作によって、その波形が対称な形状に整形されるため、エミッションノイズも減少する。
【0007】
しかし、通常、終端回路100(101,103)は、上述したように伝送路端に設けられるため、その伝送路端(即ち、終端回路の接続箇所)から離れた所に位置する端末装置110ほど、終端回路100による上述したような対ノイズ効果が得られにくくなる。
【0008】
これに対して、終端回路100による対ノイズ効果を通信システム全体で享受できるように、図15(b)に示すように、通信システムを構成する全端末装置110に終端回路100を設ける手法(マルチターミネーションコンセプト)が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【非特許文献1】原著 Mark I.Montrose 発行者 松塚晃佑 三末株式会社出版事業部 「プリント配線板のEMC設計」2006/01/20(初版)240ページ
【非特許文献2】トランジスタ技術編集部編 発行者 CQ出版「トランジスタ技術」 1997年7月号、286ページ、
【非特許文献3】Cia(CanInAutomotive)http://www.can-cia.org/ 「CANphy仕様書」34〜35ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、伝送路の終端に従来回路101,103を用いた場合、上述した対ノイズ効果を向上させるためには、高周波成分が容量素子Cを介してグランドにパイパスされ易くなるように、抵抗素子Rの抵抗値を下げることが望ましい。
【0010】
一方、伝送路での伝送速度の高速化のためには、伝送路を流れる差動信号の信号波形の立ち上がりエッジや立ち下がりエッジの減衰,鈍化の原因を除去すること、即ち、終端回路を構成する抵抗素子Rの抵抗値を上げることにより、デファレンシャルモードとなる伝送信号(差動信号)の高周波成分が容量素子Cを介してグランドにパイバスされにくくすることが望ましい。
【0011】
つまり、従来回路101,103を構成する抵抗素子Rの抵抗値は、対ノイズ効果の向上のためには下げる必要があり、伝送信号の振幅の確保および伝送速度の高速化のためには上げる必要があった。
【0012】
また、従来回路101,103を構成する抵抗素子Rは、信号を送受信する送受信回路(トランシーバ)の出力インピーダンスと共に分圧回路を構成し、トランシーバの出力電圧を分圧してしまうため、その抵抗値を下げるほど、伝送路上に出力される差動信号の振幅が低下する。
【0013】
この差動信号の振幅低下は、受信側で差動信号を2値化する際の精度を低下させてしまうだけでなく、伝送路の配線長や搭載製品内での配線の引き回しにも大きな制限を与えてしまうという問題がある。
【0014】
そもそも、終端回路を構成する抵抗素子の抵抗値が変化すると、終端回路の本来の機能(ツイストペア線の特性インピーダンスと抵抗値が一致することで、信号が反射することを抑制する)が低下するため、対ノイズ効果を向上させるためとはいえ、抵抗値を無闇に変更することはできなかった。
【0015】
また、マルチターミネーションを採用した場合、各端末装置110に設けられる終端回路の抵抗素子は全て並列接続の関係となり、端末装置110の接続数が増えるほど、その合成抵抗値は低下するため、上述した抵抗素子の抵抗値を下げた場合と同様の問題(差動信号の振幅の低下)が発生する。
【0016】
つまり、従来回路101,103を用いてマルチターミネーションを実現するには、差動信号の振幅確保のために、端末装置101の接続数が多いほど、抵抗素子Rの抵抗値を上げなければならず、その結果、従来回路101,103による対ノイズ効果が低下してしまうという問題がある。
【0017】
このように、伝送信号の振幅の確保および伝送速度の高速化と、対ノイズ効果の向上とはトレードオフの関係にあり、両立させることが困難であるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、対ノイズ効果を犠牲にすることなく、伝送速度の高速化や良好な信号波形の確保が可能な終端回路、及びその終端回路を備える車載制御装置、車載通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路であって、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、抵抗素子側の端部が信号線に接続されると共に、誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される直列回路が、伝送路を構成する信号線毎に設けられている。つまり、終端回路は一対の直列回路を備えている。
【0019】
そして、この一対の直列回路を構成する各誘導素子は、伝送路を伝搬する信号がデファレンシャルモードである場合に、互いに強め合う方向の次回を発生させ、且つ、伝送路を伝搬する信号がコモンモードである場合に、互いに弱め合う方向の磁界を発生させるように配置されている。
【0020】
つまり、前者の場合、誘導素子には、互いに強め合うよう合成された磁界に比例する大きなインピーダンスが発生し、一方、後者の場合、誘導素子には、互いに弱め合うよう合成された磁界に比例する小さなインピーダンスが発生する(磁界が完全に相殺されている場合にはインピーダンスが発生しない)。
【0021】
このように、本発明の終端回路では、デファレンシャルモードとなる差動信号に対しては高インピーダンスとなり、等価的には終端回路が接続されていないものとみなすことができ、エミッションノイズやイミュニティノイズの主要因であるコモンモードノイズに対しては低インピーダンスとなり、等価的には誘導素子の両端が短絡しているものとみなすことができる。
【0022】
従って、本発明の終端回路によれば、対ノイズ効果を犠牲にする(即ち、抵抗素子の抵抗値を上げる)ことなく、伝送信号(差動信号)の高速化や良好な信号波形の確保を実現でき、また、マルチターミネーションを採用することができる。
【0023】
更に、伝送信号(差動信号)の波形を良好に保つことが可能であることから、伝送路の配線長や配線の引き回しの制限を緩和することができ、ネットワークの設計自由度を大幅に向上させることができる。
【0024】
なお、本発明の終端回路においては、請求項2に記載のように、一対の直列回路を構成する一対の誘導素子として、コモンモードチョークコイルを用いてもよい。
なお、コモンモードチョークコイルは、閉磁路状のコアと、そのコアに巻回された一対のコイルとからなり、両コイルが発生させる磁界は、コアに沿ったものとなる。そして、コモンモードチョークコイルは、図14(a)に示すように、互いに強め合う方向の磁界が発生するよう、両コイルに電流を流した場合は高インピーダンスとなる。一方、図14(b)に示すように、互いに弱め合う方向の磁界が発生するよう、両コイルに電流を流した場合は低インピーダンスとなり、特に、その電流が同じ大きさである場合には、等価的に短絡しているものとみなすことができる。
【0025】
このようなコモンモードチョークコイルを用いた場合、コモンモードノイズが容量素子を介して効率良く除去されるため、伝送路を流れる差動信号の信号波形を精度良く均等化することができ、この差動信号の信号波形が不均等であることに基づくエミッションノイズをより効果的に抑制することができる。
【0026】
なお、誘導素子に印加する基準電位は、請求項3に記載のように、基準電位発生回路が発生させるように構成しても良く、この場合、基準電位発生回路は、基準電位として、差動信号の中心電位に相当する電位を発生させることが望ましい。
【0027】
次に請求項4に記載の発明は、差動信号を伝送する一対の信号線にて使用される終端回路であって、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、抵抗素子側の端部が信号線に接続されると共に、誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される直列回路が、伝送路を構成する信号線毎に設けられている。つまり、終端回路は一対の直列回路を備えている。これと共に、基準電位として、差動信号の中心電位に相当する電位を発生させる基準電位発生回路を備えている。
【0028】
このように構成された本発明の終端回路では、請求項1に記載の終端回路とは異なり、伝送路を伝搬する信号がデファレンシャルモードである場合とコモンモードである場合とでインピーダンスが大きく変化することはないが、誘導素子が存在しない従来の終端回路と比較して、終端回路を構成する抵抗素子によって生じる伝送信号(差動信号)の振幅の減少を緩和することができる。
【0029】
ところで、請求項3及び4に記載の終端回路において、基準電位発生回路は、具体的には、請求項5に記載のように、一端が直列回路の誘導素子側の端部に接続され、他端が接地された容量素子により構成されていてもよく、請求項6に記載のように、電源電圧を分圧することで基準電位を発生させる分圧回路により構成されていてもよい。
【0030】
つまり、前者の場合、容量素子は、特別な構成を付加しなくても、差動信号の中心電圧(平均電圧)で充電されるため、極めて簡易な構成にて基準電位を発生させることができる。
【0031】
また、後者の場合、伝送路の状態によらず、基準電位を常に一定に保持できるだけでなく、分圧回路を構成する抵抗素子の抵抗値を適宜設定することにより、終端回路の対ノイズ効果の特性を簡単に調整することができる。
【0032】
なお、基準電位発生回路は、直列回路毎に個別に設けられていてもよいが、請求項7に記載のように、一対の直列回路に対して共通に設けられていてもよい。
この場合、装置構成を簡略化できるだけでなく、両直列回路間で基準電位のばらつきがなくなるため、対ノイズ効果の精度を向上させることができる。
【0033】
次に、請求項8に記載の発明は、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路に接続して使用され、該伝送路を介した通信を行う車載制御装置であって、上述した請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路を備えている。
【0034】
このように構成された本発明の車載制御装置によれば、車載通信システムに組み込まれた時に、ノイズ受信により誤動作することや、伝送路に接続される他装置を誤動作させてしまうことを抑止できる。
【0035】
また、本発明の車載制御装置において、終端回路は、請求項9に記載のように、差動信号を送受信する送受信回路と伝送路が接続される入出力端子とが、コモンモードノイズを抑止するためのノイズ抑止部品を介して接続されている場合には、ノイズ抑止部品より送受信回路側、及びノイズ抑止部品より入出力端子側のうち、少なくとも一方に接続されていることが望ましい。
【0036】
なお、ノイズ抑止部品としては、例えば、コモンモードチョークコイル等が考えられる。
そして、終端回路が、送受信回路側に接続されている場合には、送受信回路にて発生するコモンモードノイズに対して、高い抑制効果を得ることができる。
【0037】
また、終端回路が入出力端子側に接続されている場合は、車載制御装置の外部から入出力端子を介して侵入するイミュニティノイズに対して、高い抑制効果を得ることができる。
【0038】
更に、その双方に接続した場合には、いずれに対しても高い抑制効果を得ることができる。しかも、終端回路は、上述したようにデファレンシャルモードに対して高インピーダンスとなるため、終端回路を二つ接続しても、伝送信号(差動信号)の振幅を低下させることなく、これらのノイズ抑圧効果を得ることができる。
【0039】
但し、これらの場合、その対ノイズ効果を最大限に引き出すためには、終端回路を、送受信回路や入出力端子に可能な限り接近させて配置することが望ましい。
次に、請求項10に記載の発明は、車載通信システムであって、差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路と、伝送路を介して通信を行う複数の車載制御装置と、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路とを備えている。
【0040】
このように構成された本発明の車載通信システムによれば、上述した終端回路を備えていることにより、対ノイズ効果を犠牲にすることなく、伝送速度の高速化や良好な信号波形の確保がされるため、システム設計の自由度が高く、様々な状況に柔軟に対応することができる。
【0041】
なお、本発明の車載通信システムにおいて、終端回路は、請求項11に記載のように、車載制御装置に内蔵されていてもよいし、請求項12に記載のように、伝送路に接続されていてもよい。
【0042】
また、伝送路に接続されている場合は、請求項13に記載のように、車載制御装置との接続端に設けられていることが望ましい。
このように終端回路を車載制御装置に内蔵させたり、車載端末との接続端に設けることによって、各車載制御装置から放射されるノイズ(エミッションノイズ)、及び各車載制御装置に侵入する外来ノイズ(イミュニティノイズ)を、効率よく抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された車載通信システム1の全体構成図である。
<全体構成>
車載通信システム1は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を構成する伝送路3と、この伝送路3に接続される複数の車載制御装置10とかなる。
【0044】
このうち伝送路3は、両端に終端回路5が接続された幹線3aと、幹線3aの途中で分岐する支線3bとによってバス状に形成され、支線3bの先端に車載制御装置10が接続されている。なお、伝送路3は、一対の信号線を撚り合わせたツイストペア線からなる。
【0045】
また、終端回路5として、伝送路3を構成する一対の信号線間に直列接続され、且つ同じ抵抗値を有する一対の抵抗素子と、これら一対の抵抗素子同士の接続点(中性点)に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサとからなる、いわゆるスプリット終端回路が用いられている。
【0046】
<車載制御装置の構成>
図2は、車載制御装置10の構成を示すブロック図である。
車載制御装置10は、外部電源(バッテリ)Bから給電を受け、電圧変換等を施して装置各部に電源供給する電源回路11と、外部機器K1,K2との間で各種信号を入出力するための入出力回路13と、伝送路3を介して差動信号を送受信するトランシーバ(送受信回路)15と、入出力回路13を介して各種センサやスイッチ等(外部機器K1)から検出信号や状態信号を入力したり、各種駆動回路や負荷回路等(外部機器K2)に対して駆動信号を出力したりすると共に、トランシーバ15を介して、伝送路3に接続された他の車載制御装置10との通信を行うことにより、様々な車両制御を実行するマイクロコンピュータ17とを備えている。
【0047】
なお、マイクロコンピュータ17は、CPU,ROM,RAMを中心に構成され、更に、トランシーバ15を制御する通信コントローラ19を備えた周知のものである。
ここで、図3は、トランシーバ15周辺の詳細構成を示すブロック図である。
【0048】
図3に示すように、車載制御装置10において、伝送路の支線3bの端部が接続される入出力端子21とトランシーバ15とが一対の信号線LN1,LN2により接続されている。また、この一対の信号線LN1,LN2には、コモンモードチョークコイルからなるノイズ抑止部品23が挿入されており、更に、トランシーバ15とノイズ抑止部品23との間には終端回路25が接続されている。
【0049】
なお、トランシーバ15は、通信コントローラ19から送信許可信号ENを受けると、通信コントローラ19から供給される2値化された送信データSを、差動信号に変換して信号線LN1,LN2(ひいては伝送路3)に送出する送信回路15aと、信号線LN1,LN2(ひいては伝送路3)を介して受信した差動信号を、その大小比較を行うことにより2値化された受信データRに変換して通信コントローラ19に供給する受信回路15bとからなる。
【0050】
<終端回路の構成>
ここで図4は、終端回路25の構成を示す回路図である。
終端回路25は、閉磁路状のコアと、そのコアに巻回された一対の誘導素子(コイル)L1,L2とで構成されたコモンモードチョークコイル27を備えている(図14参照)。
【0051】
そして、各コイルLi(i=1,2)は、一端が抵抗素子Riを介して信号線LNiに接続され、他端が容量素子(コンデンサ)Ciを介して接地(グランドに接続)されている。
【0052】
但し、両コイルL1,L2のいずれにも、グランドから信号線LNi(又は、信号線LNiからグランド)に向けて電流(以下、コモン電流という)が流れた場合(図5(a)参照)、コイルL1,L2は、互いに弱め合う(相殺する)方向の磁界を発生し、また、両コイルL1,L2のうち、一方では信号線LNiからグランドに向け、他方ではグランドから信号線LNiに向けて電流(以下、ディファレンシャル電流という)が流れた場合(図5(b)参照)、コイルL1,L2は、互いに強め合う方向の磁界を発生するように、コモンモードチョークコイル27と抵抗素子R1,R2及びコンデンサC1,C2とが接続されている。
【0053】
なお、トランシーバ15が、信号線LN1,LN2に出力する差動信号の信号レベルは、予め設定されたアイドル電位(差動信号の中心電位)を中心にして、互いに対称な信号レベルを有するように変動する。また、トランシーバ15は、差動信号の未送信時に、信号線LN1,LN2の信号レベルをアイドル電位に保持するように構成されている。
【0054】
このため、コンデンサC1,C2は、アイドル電位に充電され、このアイドル電位を基準(即ち、本発明における基準電位に相当)として、信号線LN1,LN2の電位がアイドル電位より高ければ、コンデンサC1,C2に電荷を充電する向きに電流が流れ、逆に信号線LN1,LN2の電位がアイドル電位より低ければ、コンデンサC1,C2から電荷を放電する向きに電流が流れる。
【0055】
このように構成された終端回路25では、コモン電流が流れた場合、コモンモードチョークコイル27が低インピーダンス(等価的には従来のRC終端回路と同様の構成)となり、一方、ディファレンシャル電流が流れた場合、コモンモードチョークコイル27が高インピーダンス(等価的には終端回路25が接続されていない状態)となる。
【0056】
なお、コモン電流(即ち、コモンモードノイズ)は、トランシーバ15が発生させるものと、伝送路3に重畳されたイミュニティノイズが伝搬してくるものとがあり、そのどちらに対しても、終端回路25は同様に動作する。
【0057】
<効果>
以上説明したように、車載通信システム1においては、車載制御装置10に内蔵される終端回路25は、トランシーバ15が送受信する差動信号(ディファレンシャルモード)に対して、等価的に接続されていない(有効に動作しない)状態となるため、作動信号の信号波形を鈍らせたり、信号レベルを低下させたりすることがなく、また、エミッションノイズやイミュニティノイズの主要因となるコモンモードノイズに対して、等価的に従来のRC終端回路と同様な動作をする状態となるため、コモンモードノイズを除去することができる。
【0058】
従って、車載通信システム1によれば、終端回路25での対ノイズ効果を犠牲にする(即ち、抵抗素子R1,R2の抵抗値を上げる)ことなく、差動信号の高速化や良好な信号波形の確保を実現することができ、また、全ての車載制御装置10に終端回路25を搭載するマルチターミネーションを採用することも可能となる。
【0059】
更に、差動信号について、良好な信号波形が確保されることから、伝送路3の配線長や配線の引き回しの制限を緩和することができ、ネットワークの設計自由度を大幅に向上させることができる。
【0060】
ここで、図17は、コモンモードチョークコイル27(但し、本実施形態ではTDK株式会社製のZJYS90V−101−2PTLを使用)の特性を示すグラフである。
図示されているように、差動信号の周波数(速度)を10MHzとすると、デファレンシャル電流が流れた場合は数kΩ程度、コモン電流が流れた場合は数Ω程度となる。また、伝送路3のインピーダンスが、伝送路3に接続された終端回路5によって100Ωに調整されているものとすると、伝送路3のインピーダンスと、デファレンシャル電流が流れた時の終端回路25のインピーダンスとは、1桁以上異なっている。
【0061】
従って、伝送路3に終端回路25を接続したとしても、伝送路3のインピーダンスを大きく低下させてしまうことはない。
具体的に、コモンモードチョークコイル27のインピーダンスが5000Ω、抵抗素子R1,R2がいずれも750Ωであるとすると、終端回路25を接続した時の伝送路3のインピーダンスは、約98.3Ωであり、約1.7%減少するに過ぎず、この低減割合は部品の誤差程度である。
【0062】
また、図18は、伝送路3上での差動信号の信号レベルを測定した結果を表すグラフである。
但し、伝送路3に終端回路を設けない場合、終端回路としてRC終端回路を用いた場合、本実施形態の終端回路25を用いた場合を示す。また、終端回路25は、抵抗素子R1,R2が750Ω、コンデンサC1,C2が4700pFとし、RC終端回路でも同じ大きさの抵抗素子とコンデンサを使用した。
【0063】
図示されているように、本実施形態の終端回路25を設けた場合、終端回路を設けない場合と同程度の信号レベルを確保できることがわかる。
図19は、エミッションノイズ(輻射ノイズ)を測定した結果を示すグラフであり、(a)は、終端回路25を設けない場合、(b)は終端回路25を設けた場合である。
【0064】
但し、抵抗素子R1,R2の抵抗値、コンデンサC1,C2の容量は、信号レベルを測定した時と同じである。また、図中、PKレベルとは、ノイズのピークレベルのことであり、また、AVレベルとは、ノイズの平均レベルのことである。
【0065】
図示されているように、車載通信システム1では、エミッションノイズを、8MHz以下の周波数領域で、最大20dBμV/m低減することができ、また、1GHzまでの全周波数領域に渡って、AVレベルが狭帯域基準値を下回っており、CISPR25規格のCLASS4を満たしていることがわかる。
【0066】
<他の実施形態>
上記実施形態では、終端回路25は、抵抗素子Ri及びコイルLiからなる直列回路に印加する基準電圧を、二つのコンデンサC1,C2によって、その直列回路毎に発生させているが、図6に示す終端回路25aのように、一つのコンデンサCによって両直列回路に共通の基準電圧を発生させるように構成してもよい。
【0067】
また、図7に示すように、終端回路25におけるコンデンサC1,C2の代わりに、電源電圧を分圧する一対の抵抗素子からなる分圧回路DV1,DV2を用いて基準電圧を発生させるように構成された終端回路25bを用いてもよい。
【0068】
更に、図8に示すように、終端回路25aにおけるコンデンサCの代わりに、電源電圧を分圧する一対の抵抗素子からなる一つの分圧回路DVを設け、この分圧回路DVにより両直列回路に共通の基準電圧を発生させるように構成された終端回路25cを用いてもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、終端回路25を構成する二つのコイルL1,L2は、コモンモードチョークコイル27を形成しているが、図9に示すように、これを個別のコイルL1,L2で構成した終端回路25dを用いてもよい。
【0070】
この場合、コモン電流に対してコイルL1,L2のインピーダンスが低下しないため、コモンモードノイズの除去効果が低下するが、個々のコイルは、コモンモードチョークコイルより小さいため、装置構成を小型化することができる。
【0071】
上記実施形態では、終端回路25を、ノイズ抑止部品23よりトランシーバ15側に接続したが、図10に示すように、ノイズ抑止部品23より入出力端子21側に接続したり、図11に示すように、ノイズ抑止部品23よりトランシーバ15側、及びノイズ抑止部品23より入出力端子21側の両方に接続したりしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、終端回路25を車載制御装置10に内蔵しているが、図12に示すように、伝送路3側(特に支線3bの車載制御装置10との接続端近傍)に設けてもよい。
【0073】
上記実施形態では、伝送路3の幹線3aの両端に接続する終端回路5として、スプリット終端回路を用いたが、この終端回路5の代わりに、車載制御装置10に設けた終端回路25と同じものを用いてもよい。
【0074】
更に、上記実施形態では、伝送路3の幹線3aの両端に、終端回路5のみを接続したが、図13に示すように、終端回路25を内蔵した車載制御装置10を接続した車載通信システム1aを構成してもよい。また、終端回路25は、バス状の伝送路3の他、スター状の伝送路に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】車載通信システムの全体構成図。
【図2】車載制御装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】車載制御装置のトランシーバ周辺の詳細な構成を示すブロック図を含んだ回路図。
【図4】終端回路の詳細な構成を示す回路図。
【図5】終端回路の動作を示す説明図。
【図6】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図7】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図8】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図9】終端回路の他の構成例を示す回路図。
【図10】終端回路の他の接続例を示す説明図。
【図11】終端回路の他の接続例を示す説明図。
【図12】終端回路の他の接続例を示す説明図。
【図13】車載通信システムの他の構成例を示す説明図。
【図14】コモンモードチョークコイルの構成と動作を示す説明図。
【図15】従来の車載通信システムの全体構成図。
【図16】従来の終端回路の構成を示す回路図。
【図17】コモンモードチョークコイルの特性を示すグラフ。
【図18】終端回路が伝送路上の差動信号の振幅に与える影響を示すグラフ。
【図19】終端回路のエミッションノイズ低減効果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0076】
1,1a…車載通信システム 3…伝送路 3a…幹線 3b…支線 5,25,25a〜25d…終端回路 10…車載制御装置 11…電源回路 13…入出力回路 15…トランシーバ 17…マイクロコンピュータ 19…通信コントローラ 21…入出力端子 23…ノイズ抑止部品 27,…コモンモードチョークコイル C,C1,C2…容量素子(コンデンサ DV,DV1,DV2…分圧回路 K1,K2…外部機器 L1,L2…誘導素子(コイル) R,R1,R2…抵抗素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路であって、
前記伝送路を構成する信号線毎に設けられ、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、前記抵抗素子側の端部が前記信号線に接続され、前記誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される一対の直列回路を備え、
前記一対の直列回路を構成する各誘導素子は、前記伝送路を伝搬する信号がデファレンシャルモードである場合に、互いに強めあう方法の時間を発生させ、前記伝送路を伝搬する信号がコモンモードである場合に、互いに弱め合う方向の次回を発生させるように配置されていることを特徴とする終端回路。
【請求項2】
前記一対の直列回路を構成する一対の誘導素子として、コモンモードチョークコイルを用いることを特徴とする請求項1に記載の終端回路。
【請求項3】
前記基準電位として、前記差動信号の中心電位に相当する電位を発生させる基準電位発生回路を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の終端回路。
【請求項4】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路であって、
前記伝送路を構成する信号線毎に設けられ、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、前記抵抗素子側の端部が前記信号線に接続され、前記誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される一対の直列回路と、
前記基準電位として、前記差動信号の中心電位に相当する電位を発生させる基準電位発生回路と、
を備えることを特徴とする終端回路。
【請求項5】
前記基準電位発生回路は、一端が前記直列回路の誘導素子側の端部に接続され、他端が接地された容量素子からなることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の終端回路。
【請求項6】
前記基準電位発生回路は、電源電圧を分圧することで前記基準電位を発生させる分圧回路からなることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の終端回路。
【請求項7】
前記基準電位発生回路は、前記一対の直列回路に対して共通に設けられていることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の終端回路。
【請求項8】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路に接続して使用され、該伝送路を介した通信を行う車載制御装置において、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路を備えることを特徴とする車載制御装置。
【請求項9】
前記差動信号を送受信する送受信回路と前記伝送路が接続される入出力端子とは、コモンモードノイズを抑止するためのノイズ抑止部品を介して接続され、
前記終端回路は、前記ノイズ抑止部品より前記送受信回路側、及び前記ノイズ抑止部品より入出力端子側のうち、少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の車載制御装置。
【請求項10】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路と、
前記伝送路を介して通信を行う複数の車載制御装置と、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路と、
を備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項11】
前記終端回路は、前記車載制御装置に内蔵されていることを特徴とする請求項10に記載の車載通信システム。
【請求項12】
前記終端回路は、前記伝送路に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の車載通信システム。
【請求項13】
前記終端回路は、前記車載制御装置との接続端に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の車載通信システム。
【請求項1】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路であって、
前記伝送路を構成する信号線毎に設けられ、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、前記抵抗素子側の端部が前記信号線に接続され、前記誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される一対の直列回路を備え、
前記一対の直列回路を構成する各誘導素子は、前記伝送路を伝搬する信号がデファレンシャルモードである場合に、互いに強めあう方法の時間を発生させ、前記伝送路を伝搬する信号がコモンモードである場合に、互いに弱め合う方向の次回を発生させるように配置されていることを特徴とする終端回路。
【請求項2】
前記一対の直列回路を構成する一対の誘導素子として、コモンモードチョークコイルを用いることを特徴とする請求項1に記載の終端回路。
【請求項3】
前記基準電位として、前記差動信号の中心電位に相当する電位を発生させる基準電位発生回路を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の終端回路。
【請求項4】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路にて使用される終端回路であって、
前記伝送路を構成する信号線毎に設けられ、直列接続された抵抗素子及び誘導素子からなり、前記抵抗素子側の端部が前記信号線に接続され、前記誘導素子側の端部に予め設定された基準電位が印加される一対の直列回路と、
前記基準電位として、前記差動信号の中心電位に相当する電位を発生させる基準電位発生回路と、
を備えることを特徴とする終端回路。
【請求項5】
前記基準電位発生回路は、一端が前記直列回路の誘導素子側の端部に接続され、他端が接地された容量素子からなることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の終端回路。
【請求項6】
前記基準電位発生回路は、電源電圧を分圧することで前記基準電位を発生させる分圧回路からなることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の終端回路。
【請求項7】
前記基準電位発生回路は、前記一対の直列回路に対して共通に設けられていることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の終端回路。
【請求項8】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路に接続して使用され、該伝送路を介した通信を行う車載制御装置において、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路を備えることを特徴とする車載制御装置。
【請求項9】
前記差動信号を送受信する送受信回路と前記伝送路が接続される入出力端子とは、コモンモードノイズを抑止するためのノイズ抑止部品を介して接続され、
前記終端回路は、前記ノイズ抑止部品より前記送受信回路側、及び前記ノイズ抑止部品より入出力端子側のうち、少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の車載制御装置。
【請求項10】
差動信号を伝送する一対の信号線からなる伝送路と、
前記伝送路を介して通信を行う複数の車載制御装置と、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の終端回路と、
を備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項11】
前記終端回路は、前記車載制御装置に内蔵されていることを特徴とする請求項10に記載の車載通信システム。
【請求項12】
前記終端回路は、前記伝送路に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の車載通信システム。
【請求項13】
前記終端回路は、前記車載制御装置との接続端に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の車載通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−219098(P2008−219098A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49556(P2007−49556)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]