説明

組合せハニカムピース構造によるハニカムパネル

【課題】ハニカム構造のハニカムピース体とそれを利用したサンドイッチ構造のハニカムパネルの提供を図る。
【解決手段】複数のハニカムピース体を自在に組み合わせて形成するハニカム心材を用いたサンドイッチ構造とし、前記ハニカムピース体を構成する枠体と中空ハニカムセルとジョイント部を熱可塑性樹脂により一体に成形し、該ハニカムピース体を前記ジョイント部によって複数連接して所望する形状及び寸法のハニカム心材を形成した後、該形成後のハニカム心材に対応する面板で狭着した構成手段を採用するサンドイッチ構造のハニカムパネルとした。また、少なくとも一以上のセルに、外部構造体と接合するための接合部材を埋設する構成や、断熱材、防音材、又はこれらの組合せ材を充填する構成手段を採用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチ構造のハニカムパネルに関し、詳しくは、量産される一般のバスや船舶などの大型乗合物の床構造材としても広く利用することが可能で、汎用性及び設計の自由度も高く、更に、低コストで軽量・高強度なサンドイッチ構造のハニカムパネル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミ製ハニカムパネルは、防振性、防音性、遮熱性、軽量性、強靭性、平坦性、高強度面圧性などの多くの優れた構造的特性を持ち、航空機、人工衛星やロケットなどの航空宇宙機器に始まり、その応用範囲は多岐にわたるようになった。現在では軽量化が要求されるレーシングカーや軍事用の運輸産業機器、超高層ビルのカーテンウォール、クリーンルーム壁などの特殊な建築用材料、或いはパラボラアンテナなどの電子通信機器などにも使用されるようになっている。しかし、量産されるような一般の構造物に用いる床材としては、未だにアルミ製ハニカムパネルの応用利用は少なく、特に、一般のバスや電車、船舶などの大型乗合物の合板床材としての応用利用は極めて少ない。その理由として、以下の問題が挙げられる。
【0003】
まず、ハニカムパネルは、他の構造材と比して高コストであるという問題がある。通常のハニカムパネルでは、ハニカム心材にアルミ材を用いて製造されることが多いことから、材料コストが他の構造材と比較して高コストとなってしまう。また、ハニカムパネルの製造工程では、ハニカム心材の製造工程と、面板の製造工程と、枠体の製造工程と、更にそれらを組み立てる組立工程といった多くの複雑な工程が必要とされ、特にハニカム心材の製造工程では、展張方式やコルゲート方式が用いられ、形状精度を決める材料の切断と接着工程と積層と、展張工程や、コルゲート加工工程が必要となる。これらはそれぞれ特別な装置も必要となる。従って、アルミ製ハニカムパネルの製造には、これらの多数の工程と特別な設備の必要性により、他の構造材の製造コストと比較して高コストである。
【0004】
また、自動車車体等のような複雑な床面形状の場合では特にその応用性が悪いという問題がある。車体フレームへの配置等に際しては、上面板と下面板に挟まれたハニカム心材を車両の形状や取り付け部の形状に合わせた形状にするために、定尺のハニカム心材を展張後にカットしたり、周縁を固定する形状に加工したり、更に周縁を形成する枠体を取り付ける必要も生じるなど、多くの工程数を必要とする。
【0005】
また、前記枠体を設ける際に、ハニカム心材と枠体との隙間は構造上不連続にならないように接着剤で接着したり、心材と枠体の隙間を接着剤で接着しなければならないという問題がある。また、心材の定尺以上の大きさのパネルを作る場合も、心材同士の隙間を構造上不連続にならない様にハニカムパネル内で確実に接着しなければならず、接着工程が必要という問題もある。
【0006】
また、ハニカムパネルの面板に、構造物が取り付けられない問題がある。ハニカムパネルは、ハニカム心材を上面板と下面板に挟んだサンドイッチ構造であるため、ハニカムパネルの平面上は薄板である。そのため、取付ボルトやスポット溶接によって乗車席や手摺や点検口を取り付けることいができない。従って、従来の車両用床構造体にはハニカムパネルは応用し難いという問題があり、従来より重い鋼板や木製合板が主として使用されている。
【0007】
なお、前記問題点については、予めハニカム心材内に外部構造体との接合部材を埋設しておくことも考えられる。しかし、ハニカムパネルの広い平面部に乗車席や手すり、点検口などを設けようとすると、予め所定の位置のハニカム心材にヘリサートやブッシュなどの連結金具を埋設しけなければならず、組み立て工程での作業工数の増大が伴うと共に、ハニカムパネルの製造後の改造や配置変更に対応できないため、車内構造物の配置設計の自由度が制限されるものであった。
【0008】
また、ハニカムパネルを車両の形状や取り付け部の形状に合わせて任意の形状に加工しなければならない問題がある。ハニカム心材を上面板と下面板に挟んだサンドイッチ構造のハニカムパネルを定尺以外の曲線や刳り抜き、任意の形状に加工するには、ウォータージェット加工などの特殊加工を必要とするもので、既存の製造ラインに組み込むことが困難である。
【0009】
さらになお、ハニカムパネルのハニカム心材に、上面板と下面板を確実に接着しなければない問題がある。ハニカム心材のセルを上面板と下面板に挟んでサンドイッチ構造に接着するには、定尺のハニカムパネルの製造ラインで接着することは可能であるが、車両の形状や取り付け部の形状が異なったハニカムパネルを接着するには、製造コスト面から困難なものとなる。
【0010】
そこで、以上の問題点を解決しようと、従来からも種々の技術が提案されている。例えば、それぞれ多数の目を有すると共に細長いシート状とされた一対のメッシュ部材同士を、所定方向に伸ばした状態で互いに相対向させて成形型に保持し、前記成形型のキャビティに供給された樹脂によって、前記所定方向と交差する方向に伸びると共に前記一対のメッシュ部材に対して溶融接合されたリブ部を、該所定方向に間隔をあけて複数形成する、ことを特徴とする射出成形品およびその製造装置、製造方法や(特許文献1参照)、樹脂製ハニカム心材において、可撓性を有する樹脂を材料として一体成形してあり、各々が略々平板形状で互いに略々平行に延展している複数の主板部と、各々が略々平板形状で隣り合う主板部どうしを連結している複数の副板部とを備え、隣り合う一対の主板部と隣り合う一対の副板部とでセル壁が画成された断面形状が略々四角形のセルが多数配列した構造を有し、前記副板部の屈曲性を前記主板部の屈曲性より十分に大きくしてあることを特徴とする樹脂製ハニカム心材及びその製造方法がある(特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2では、ハニカム心材に樹脂を使用しているため、アルミを用いたものと比して材料コストが軽減できるが、車両の形状や取り付け部の形状に合わせた形状に加工しなければならず、任意の形状に加工するには、ウォータージェット加工などの特殊加工を必要とする点など、上記の問題を解決するには至っていない。
【0011】
また、アルミニウムよりなるハニカム心材の表裏両面に表面板と裏面板を接着剤で固着してなる建築用ハニカムパネルにおいて、表面板は底片、側片、および、内方への折り返し片で箱型状をなし、ハニカム心材および裏面板は、その外周縁を折り返し片の端縁内より大きくし、かつ複数個に平行に分割してあって、表面板内にハニカム心材と裏面板を互いの分割線を交叉させて挿入し、折り返し片の下面と裏板間に間隙を有して、表面板、ハニカム心材、裏面板をそれぞれ固着したことを特徴とする建築用ハニカムパネルがある(特許文献3参照)。係る技術によれば、従来不可能だった天井面や壁面様で折り返し片付きの箱型状パネルに対し、アルミハニカムパネルが適用できるようになった。したがって、高強度、高剛性でありながら超軽量であるハニカムパネルを、ビスなしの奥行きのある目地を形成する箱状パネルに使用できる。しかしながら、心材にアルミを用いているので、一般のバス等の床材に用いるにはコストの問題が解決できない。
【0012】
また、複数の貫通孔を設けて断面が蜂の巣状に形成されたアルミ製ハニカム材の上下両面にシート材をそれぞれ貼り付けてサンドイッチ状にした床材を敷設して成ることを特徴とするトラック用荷台がある(特許文献4参照)。係る技術はトラックの荷台に使われるもので、軽量で、強度的にも優れた荷台が得られる。また、パネル状に形成された荷床の両端に、ネジを用いて根太に固定するための桟を設け、この桟を用いて荷床に固定するようにした場合では、固定時にネジを強く締め付けても心材を潰してしまったりするのを防ぐことができる効果を発揮している。しかしながら、心材にアルミを用いているので、前記同様にコストの問題が解決できない。
【0013】
そこで、本出願人は、ハニカムパネルの有する優れた特性を生かしつつ、どのようにすれば、量産される一般のバスや船舶などの大型乗合物の床構造材としても広く利用することが可能となるかという課題の下、コストを下げる点については、成形が容易な樹脂素材を用いる点に着目し、汎用性及び設計の自由度も高くする点については、ピース体を組み合わせるという点に着目し、これらの着想を相互に組み合わせて、樹脂製のハニカムピース体から構成される心材を利用するという新しい技術的思想の下、従来問題となっていた多くの課題を解決するサンドイッチ構造のハニカムパネルの提案に至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003-159721号公報
【特許文献2】特許第3426745号公報
【特許文献3】特開平6-93682号公報
【特許文献4】特開平8-113168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑み、一般のバスや船舶などの大型乗合物の床構造材としても広く利用することが可能で、汎用性及び設計の自由度も高く、更に、低コストで軽量・高強度なサンドイッチ構造のハニカムパネルの技術提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、複数のハニカムピース体を自在に組み合わせて形成されるハニカム心材を用いたサンドイッチ構造のハニカムパネルであって、前記ハニカムピース体は、枠体と、該枠体内部に連続して形成される複数の中空ハニカムセルと、該枠体外周部に形成される凹凸状のジョイント部とから成り、前記枠体と前記ハニカムセルと前記ジョイント部は熱可塑性樹脂により一体に成形され、前記ハニカム心材は、前記ハニカムピース体を前記ジョイント部によって複数連接して所望の形状及び寸法に形成され、該形成後のハニカム心材の面形状に対応する形状及び寸法の面板で狭着したことを特徴とするサンドイッチ構造のハニカムパネルとした。
【0017】
また、本発明は、前記枠体内部に連続して形成される複数の中空ハニカムセルの内、少なくとも一以上のセルに、外部構造体と接合するための接合部材が埋設されている外部構造体接合セルを有することを特徴とする前記サンドイッチ構造のハニカムパネルとすることもできる。
【0018】
また、本発明は、前記中空ハニカムセルに、断熱材、防音材、又はこれらの組合せ材が充填されていることを特徴とする前記サンドイッチ構造のハニカムパネルとすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るハニカムパネルによれば、単体のハニカムピース体を複数組み合わせることで心材を構成するため、従来の製造工程におけるハニカム材料の切断・積層工程、接着工程、ホットプレス工程、ハニカム積層材の切断工程、切断されたハニカム積層材の展張工程、枠体の切断工程、枠体の穴空け工程、枠体の組み付け工程など、これら一連の複雑な工程を大幅に削減できるため、製造コストの低廉を図ることが可能となる。また、本発明は心材に高価なアルミを用いず、パネルの製造時に接着剤を使用しないため、材料コストの低廉も図れるという優れた効果を奏する。さらには、パネルの一部を切断して形状合わせを不要とするため、廃棄処分による無駄や材料再利用等による費用を省くことができるという有利な効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係るハニカムパネルによれば、単体のハニカムピース体を連結することによって、所望する形状及び寸法を得られるため、直線、曲線、刳り抜き、切り欠状など設計の自由度を高めることができるという優れた効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係るハニカムパネルにおいて、ハニカムピース体の枠体内部に連続して形成される複数の中空ハニカムセルの内、少なくとも一以上のセルに、外部構造体と接合するための接合部材を埋設する構成を採用した場合は、従来の問題点であった外部構造体との接合を容易にできるという優れた効果を発揮し得る。
【0022】
また、本発明に係るハニカムパネルにおいて、前記中空ハニカムセルに、発砲体などの軽量で断熱効果や防音効果を有する断熱材や防音材、又はこれらの組合せ材を充填させる構成を採用する場合には、例えば、床下からのタイヤのパターンノイズやエンジンノイズ等を遮断し、静粛性の優れた車両等を製作でき、エアーコンディショナー等の空調効率を高めることが可能となる効果を発揮し得る。
【0023】
また、本発明に係るハニカムパネルにおいて、前記枠体内部に連続して形成される複数の中空ハニカムセルの内、少なくとも一以上のセルに、外部構造体と接合するための接合部材が埋設されている構成を採用する場合は、例えば、車内構造物の取り付け位置のみならず、位置調整や将来的に変更が予想される車内構造物との交換に際し、必要と考えられる位置のセルに、予め前記接合部材を設けておき、これを面板に刻示しておくことで、車両取り付け後における手すりや座椅子等の車両構造物の取り換え・位置変更にも対応し易くなるという優れた効果を発揮し得る。
【0024】
また、本発明に係るハニカムパネルは、心材に熱可塑性樹脂のハニカムピース体を用いていることから、該ハニカムピース体と面板との接着手段に高価な接着剤を使用しなくても、例えば、超音波溶着、振動溶着や、面板が金属表面を加温する誘導溶着で加工することができるため、接着剤の塗布及び接着剤の乾燥時間が不要のため、低コスト化が可能である。
【0025】
また、本発明に係るハニカムパネルによれば、建築構造用の平坦な床材はもとより、バスや船舶、鉄道車両など、床材に乗客席や手すりなどの構造物を多数固定する必要のある分野において特に利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るハニカムピース体の実施形態を示す説明図である。
【図2】外部構造体接合セルを有する構成を採用した場合の実施例説明図である。
【図3】本発明に係るハニカムパネルの全体構成を示す説明図である。
【図4】本発明に係るハニカムパネルの実施例を示す説明図である。
【図5】本発明に係るハニカムパネルの製造工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のハニカムパネル1は、複数のハニカムピース体10を自在に組み合わせて形成されるハニカム心材60を用いたサンドイッチ構造のハニカムパネル1とする手段を採ったことを最大の特徴とするもので、以下、実施例を図面に基づいて説明する。
【0028】
尚、本実施例で示す寸法ならびに形状は、下記に述べる実施例に特に限定されるものでなく、本発明の技術的思想の主旨に逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
【0029】
また、本実施例で示すサンドイッチ構造のハニカムパネル1は、バスや電車、船舶などの大型乗合物の合板床材を例にとって説明しているが、大型乗合物の床構造材のほかに住宅や高層ビル、マンションなどの軽量床材としてや、照明機器などが取り付けられる遮熱性天井材としてや、発泡樹脂などを充填して防音性、冷暖房効果が高い壁材など、あらゆるハニカムのパネルに利用できることは言うまでもない。
【0030】
図1は、本発明に係るハニカムピース体10の実施形態を示す説明図であり、図1(a)は単体の平面図を示し、図1(b)は単体の斜視図を示し、図1(c)は連結状態の斜視図を示している。本発明におけるハニカムピース体10は、ジョイント部40を有する枠体20の内側に、連続して形成される複数の中空ハニカムセル30を有し、該枠体20、ハニカムセル30、及びジョイント部40は、熱可塑性樹脂で一体成型される。
【0031】
枠体20は、図1に示すような、正四角形に形成されるものを基本形とし、他には、該基本形に対応する長方形としたり、三角形等の形状の異形ピース体11を組合せて設計の自由度を高めたり、汎用性などの利便性を考慮した形状のものを用意しておくのが望ましい。各辺には隣り合うハニカムピース体10を連続して連結を可能にする凹凸状のジョイント部40を有して形成する。
【0032】
ジョイント部40は、枠体20の周辺に嵌合により連結可能な凹凸状の連結形状を有して形成され、転合によるすき間ばめ程度のはめ合いにより、適度な保持力と、組み立て時の作業性確保することが望ましい。係るジョイント部40が設けられたハニカムピース体10は所望する心材60の大きさまで連結を繰り返して拡大していくことで対応できるが、直辺、曲辺、繰り抜き71・72、切り欠状70に形成したい部分においては、例えば、組合せ後のハニカム心材60として最外縁部に位置するハニカムピース体10の、当該最外縁部辺に位置することになる枠体20の辺には凸部を有しないハニカムピース体10を配置して車両等の車体P形状等に対応した形状にさせる。
【0033】
ハニカムセル30は、各図面に示すような正六角形が望ましいが、ハニカムセル30の形状はこれに限定されるものではなく、四角形、三角形、円形など、等方的なものを連続して形成させたものであればよい。
【0034】
外部構造体と接合するための接合部材を埋設する外部構造体接合セル31は、枠体20の中心と、当該セル31の中心が位置する配置関係とし、必要に応じてこれを位相させたり、複数のセル30に埋設して形成する。
【0035】
ハニカムピース体10は、枠体20とハニカムセル30とジョイント部40が、熱可塑性樹脂材料を射出成形機で一体成型されるもので、材質的には、ポリプロピレン(PP:polypropylene)等の合成樹脂を用いることがコスト及び軽量化の観点から望ましいが、ハニカムピース体10の素材は、これに限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリスチレン(PS:polystyrene)、ポリビニルクロライド(PVC:Poly Vinyl Cloride)、ABS樹脂(ABS:Acrylonitrile Butadiene Styrene)などでもよい。
【0036】
ハニカムピース体10単体の形状寸法は、ジョイント部40の凹凸がないと仮定したときの全体形状として、例えば、一つの基準体を例示すると、横50×縦50×高さ19mm、枠体20の厚み1mm、セル30の箔厚0.5mm、対辺距離12.5mm、凹凸部の厚み3mmで形成することが考えられる。或いは、長方形(例えば、100×50mm、150×50mm等)でもよい。但し、例えば、船舶の広範囲な平面床などに用いる場合では、一つのハニカムピース体10の大きさを、比較的に大きい基準体とする。例えば、横100×縦100mm、や横500×縦250mm等)。
【0037】
図2は、外部構造体接合セル31を有する別のハニカムピース体10の実施形態を示す説明図である。本発明におけるハニカムピース体10の外部構造体接合セル31の取り付け構造を説明する。図2(a)は、枠体20の中心位置に配置された外部構造体接合セル31以外は、空間部32を形成している実施形態を示している。即ち、中心の外部構造体接合セル31のみが、無垢成形、所定厚さの肉厚33成形、アウトサート成形、インサート成形、無垢に貫通穴成形、六角ナット62埋設用の多角形座ぐり34部成形等などをする。なお、ローレット加工したインサート金具(穴径+0.4〜1.0mm)を成形後に超音波インサートするなどでしてもよい。
【0038】
図2(b)から図2(e)は、外部構造体接合セル31を有する構成を採用した場合の実施例を示している。外部構造体接合セル31は、他の中空セル30と異なり、図2(e)のように、タッピングネジ61などに対応できるような無垢としたり、図2(c)のような無垢に座ぐり34部を形成して締付用ナット62を挿入できるようにしたり、図2(d)のように、無垢に貫通穴を形成してブッシュ66を圧入したり、図2(a)のように、無垢に下穴をあけてネジ部を形成したり、あるいはそのネジ部にヘリサート65を挿入したりできるようにした場合を例示したものである。但し、図面に記載した取付構造に限定されるものではなく、これらはあくまで例示であって、他の締結手段、例えば、テーパ穴やキー溝付き穴など、外部構造体接合セル31を利用して構造物Cと締結するために当業者が考え得る手段が除かれるものではない。
【0039】
図3は、本発明のサンドイッチ構造のハニカムパネル1の実施形態を示す説明図である。本発明におけるサンドイッチ構造ハニカムパネル1は、ハニカムピース体10を自在に連結させて形成すると共に、両面を面板50でサンドイッチ状に挟んで狭着するものである。
【0040】
図3(a)はパネル体の分解斜視図、図3(b)はハニカムピース体10を複数結合し状態の平面図を示している。本発明におけるサンドイッチ構造のハニカムパネル1は、複数のハニカムピース体10を、所望する形状及び寸法に配置し、両面を面板50でサンドイッチ状に挟んで狭着するものである。
【0041】
また、従来構造で用いられてきたような枠体を必要としないため、車体フレームFや車体パネルPに取り付けるには、ハニカムピース体10の中心位置にあるセル31の取り付け構造に合わせてボルト63などで固定する。なお、面板50に取り付け位置を刻示しておけば、完成後、改造などで取り付け位置が変更される場合などでも、ボルト孔などが空け易いようになる。
【0042】
図4は、本発明に係るハニカムパネル1の実施例を示す説明図であり、図4(a)はパネル体の分解斜視図を示し、図4(b)はハニカムピース体10及び異形ピース体11により、切り欠き状70や繰り抜部71を有する構成を採用した状態の平面図を示している。本発明に係るサンドイッチ構造のハニカムパネル1は、ハニカムピース体10を曲線形状や切り欠き状70、あるいは繰り抜き部71等の形状に連結させて形成するなど、取り付けられる車両の車体パネルP形状や車体フレームF形状に応じて、自在に対応できる。また、基準体等の対角から分割した三角形状等の異形ピース体11なども用意しておけば、より、車体パネルPの形状等に近似の形状とすることができる。
【0043】
さらに、ハニカムピース体10を一定の形状にパターン化できる場合は、予めそのパターンで配置するハニカムピース集合体を形成しておいて作業の効率化を図ることができる。
【0044】
図5は、本発明のサンドイッチ構造のハニカムパネル1の製造工程と、従来のアルミハニカムパネルの製造工程を対比する説明図であり、図5(a)は従来のアルミハニカムパネルの製造工程を示し(例として展張式)、図5(b)は本発明に係る樹脂製のハニカムパネル1の製造工程を示している。本発明の製造工程は、以下のように簡潔な工程で製造可能である。まず、請求項1に係るハニカムパネル1の場合であれば、
(A)射出成型機によりハニカムピース体10を一体成形する。
(C)金属製面板50を、シャーリングマシン・穴あけ等の機械加工により所定の形状に成形する。
(E)ハニカムピース体10及び面板50の表面処理をコロナ放電等により行う。
(F)複数のハニカムピース体10をジョイントさせ、接着する面板50と略同形状になるよう連結してハニカム心材60を得る。
(G)前記ハニカム心材60の片方に金属製面板50を配置する。
(H)前記ハニカム心材60と面板50を超音波溶着などでプレス溶着する。その後、前記ハニカム心材60の他面に面板50を超音波溶着などでプレス溶着する。
(I)完成。
請求項2に係るハニカムパネル1の場合であれば、
(A)射出成型機によりハニカムピース体10を一体成形する。このとき、所定のセル31だけは無垢成形、所定厚さの肉厚33成形、アウトサート成形、インサート成形、無垢に貫通穴成形、六角ナット62埋設用の多角形座ぐり34部成形等などをする。
(B)前記アウトサート成形ではブッシュ66等を圧入し、六角ナット62埋設用の多角形座ぐり34部成形ではナット62を挿入し、ヘリサート65を用いる場合は貫通穴にタップ等で雌ネジを形成した後、挿入具を用いてヘリサート65を挿入し、樹脂部材に強い雌ネジ部を設ける。
(C)金属製面板50を、シャーリングマシン・穴あけ等の機械加工により所定の形状に成形する。また、外部構造体と接合するための接合部材が埋設されているセル31に対応する位置の穴あけや溝加工などを行う。なお、他の接合部材埋設部に刻示しておくことも望ましい。
(E)ハニカムピース体10及び面板50の表面処理をコロナ放電等により行う。
(F)複数のハニカムピース体10をジョイントさせ、接着する面板50と略同形状になるよう連結してハニカム心材60を得る。
(G)前記ハニカム心材60の片方に金属製面板50を配置する。
(H)前記ハニカム心材60と面板50を超音波溶着などでプレス溶着する。その後、前記ハニカム心材60の他面に面板50を超音波溶着などでプレス溶着する。
(H)完成。
【0045】
また、請求項3に係るハニカムパネル1では、セル30内に発泡性樹脂を充填させる工程を設けて、防振性、防音性、遮熱性の高いハニカムパネル1を製作する。面板50に充填孔を設けて発泡性樹脂を充填させる方法もあるが、ハニカムピース体10の成形時に、ハニカム形状の雄型をスライドさせ、空間を空けて発泡性樹脂を充填するダブルモールド(2色成形)によれば、異材質どうしを組み合わせて一体に成形できるため効率的である。
【0046】
このように、極めて短い工程で製造でき、図5(a)に示した従来のアルミハニカムパネルと比して、工程数を極めて減らせることは明確である。次に、各工程の詳細を説明する。
【0047】
(A)成型工程
樹脂製のハニカムピース体10を汎用射出成型機で成型加工する。単品の成型品であるため従来のハニカム材と比較して展張することなく製造することができる上、セルの側壁の接着が必要とされないため高額な接着剤と接着工数、切断と接着と展張の専用設備が不要となり大きなコスト削減が図れる。
【0048】
(B)接合部材取り付け工程
ハニカムピース体10の所定セル31に外部構造体との接合部材をはめ込む。場所によって中央の心材部の構造が異なるハニカムピース体10を手作業または作業ロボットで配置する。具体的には、所定のセル31に、ローレット加工したインサート金具(穴径+0.4〜1.0mm)を成形後に超音波インサートしたり、多角形座ぐり34部に六角ナット62を埋設したり、貫通穴にタップ等で雌ネジを形成し、必要であれば、雌ネジ部強化のためのヘリサート65を装着する。
【0049】
(C)面板50の切断工程
面板50を所定の形状に切断する。汎用切断機(シャーリングマシン、レーザー、ガス、水圧)を用いて直線、曲線、繰り抜き、切り欠状70に切断する。従来では、心材60と面板50の接着後、成形されたアルミハニカムパネルを切断していたため、心材の無駄が生じていたが、本発明では、基本的には面板50のみを切断すればよいので、不用な心材の発生は生じることなく経済的である。
【0050】
(D)面板50の表面処理工程
面板50に付着している油脂類や、誇り等を除去して、結合力を高めるための表面処理をする。具体的には、例えば、面板50が鋼板の場合、防錆力の確保と均一な防錆塗膜を得るために、脱脂後、リン酸亜鉛被膜と塗膜が自動的に形成される電着塗装を行う。また、面板50がアルミ板の場合、切断後に脱脂し、使用地域の腐食環境に応じ、電着塗装やアルマイト処理を施す。
【0051】
(E)ハニカムピース体10と面板50の表面処理工程
ハニカムピース体10と面板50の接着において、溶着性が悪いポリオレフィル系の熱可塑性樹脂のハニカムピース体10には放電による表面処理を行うのが望ましい。放電処理の例としては、例えば、コロナ放電表面処理を行い、表面を活性化することによって溶着性を高める。同様に金属面板50にもコロナ放電表面処理を行い、異種材料どうしの溶着を安定させることが望ましい。
【0052】
(F)ジョイント工程
ハニカムピース体10をジョイントさせて面板50と同形状に連接させる。配置が自在なため、多様な形状のハニカムパネル1に対応することができる。例えば、従来、定尺サイズの高価なアルミハニカムパネルを購入し、これを切断して使用していた場合と比較すると、本発明ではジョイントにより所望の形状が自在に作れるので、廃材がほとんど出ることがなく経済的である。また、開発段階のように、バス床の形状や寸法が定まらず、設計変更が繰り返し変更になるような場合でも柔軟に対応可能である。
【0053】
(G)配置工程
ジョイントされたハニカムピース体10を面板50上に配置する。
【0054】
(H)溶着工程
その後に、金属製面板50の温度を高めて樹脂を溶着させる超音波溶着、振動溶着、誘導溶着などにより、面板50とジョイントされたハニカムピース体10を溶着する。いずれも、熱可塑性樹脂の特性を生かした溶着であり、従来の高価な接着剤を使用しない。従って、従来の接着剤による結合工程においては、コスト高、作業負担、乾燥時間など問題が多いが、本発明では、超音波溶着機などを使用することで、これらの問題を解決することができる。
【0055】
(H)完成。
【0056】
上記のとおり、本発明に係る樹脂製のサンドイッチ構造のハニカムパネル1は、従来のアルミ製サンドイッチ構造のハニカムパネルの製造方法と比較して、格段の製造コストの削減が図れる構造のハニカムパネル1の製造方法である。
【符号の説明】
【0057】
1 ハニカムパネル
10 ハニカムピース体
11 異形ピース体
20 枠体
30 セル
31 外部構造体接合セル
32 空間部
33 肉厚
34 座ぐり
40 ジョイント部
50 面板
60 心材
61 タッピングネジ
62 ナット
63 ボルト
64 連結金具
65 ヘリサート
66 ブッシュ
70 切り欠状
71 繰り抜き部
72 繰り抜き部
F 車体フレーム
P 車体パネル
C 車内構造物



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハニカムピース体を自在に組み合わせて形成されるハニカム心材を用いたサンドイッチ構造のハニカムパネルであって、
前記ハニカムピース体は、
枠体と、
該枠体内部に連続して形成される複数の中空ハニカムセルと、
該枠体外周部に形成される凹凸状のジョイント部とから成り、
前記枠体と前記ハニカムセルと前記ジョイント部は熱可塑性樹脂により一体に成形され、前記ハニカム心材は、前記ハニカムピース体を前記ジョイント部によって複数連接して所望の形状及び寸法に形成され、
該形成後のハニカム心材の面形状に対応する形状及び寸法の面板で狭着したことを特徴とするサンドイッチ構造のハニカムパネル。
【請求項2】
前記枠体内部に連続して形成される複数の中空ハニカムセルの内、少なくとも一以上のセルに、外部構造体と接合するための接合部材が埋設されている外部構造体接合セルを有することを特徴とする請求項1に記載のサンドイッチ構造のハニカムパネル。
【請求項3】
前記中空ハニカムセルに、断熱材、防音材、又はこれらの組合せ材が充填されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサンドイッチ構造のハニカムパネル。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139931(P2012−139931A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294518(P2010−294518)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【特許番号】特許第4865907号(P4865907)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(507101370)ジェイ・バス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】