説明

組合せ式保温材

【課題】本発明は、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間における配管及び装置等の保温(断熱)に著しく適しているばかりではなく、所望により、コンパクトでありながら、高い保温(断熱)効果を発揮することができ、更には、粉塵、ガス等の不純物、いわゆるパーティクルの発生を著しく低減し得る、組合せ式保温材(断熱材)を提供する。
【解決手段】短辺と長辺の長さの比率が略1対2である、略同一の長方形の形状を表裏面に有する板状の保温材を、その任意の辺同士を接続することにより、複数組み合わせて構成されることができ、かつ、該複数の保温材の長方形の形状が、互いに同一又は相似形であり、ここで、該複数の保温材の長方形の形状が、互いに相似形であるとき、小さい保温材の長方形の長辺及び短辺に対する大きい保温材の長方形の対応する長辺及び短辺の長さの比率が、いずれも1対2の倍数である、組合せ式保温材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組合せ式保温材(断熱材)に関し、更に詳しくは、とりわけ、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間における配管及び装置等の保温(断熱)に好適に使用される組合せ式保温材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管及び装置等に使用する保温材(断熱材)としては、例えば、取り付ける配管及び装置等に適合するように予め作られた保温材、あるいは、現場で切断等の加工を施して、取り付ける配管及び装置等に適合するように加工し得る保温材等が知られていた。しかし、これらの保温材は、例えば、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間において、配管及び装置等を保温するには適していなかった。このような狭い空間における保温に際しては、現場で保温材を切断等して適合させることも可能ではあるが、主として、より自由度の大きなガラスウール、ロックウール又はテープ状の保温材等を使用していた。しかし、その作業においては、多種多様の形状、形態を有する保温材を予め準備し、そして、これらを使用して複雑な配管等を適切に保温する必要がある故、該作業は著しく煩雑であり、結果として、多大なコスト高を招いていた。一方、このような配管等を現場で採寸して、それに適合する保温材を、別途作製するのでは、より一層コストが嵩む。
【0003】
また、上記のような配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間における保温に際して、従来の保温材を使用すると、空間が狭いことから配管及び装置等に、十分に保温材を取り付けることができず、所望の保温(断熱)効果を得ることができないということもあった。このような場合には、複数の配管をまとめて保温する等の対策を講じていた。従って、このような狭い場所では、よりコンパクトでありながら、その一方、高い保温効果を発揮する保温材の必要性が高かった。加えて、とりわけ、半導体製造装置等では、粉塵、ガス等の不純物、いわゆるパーティクルの発生を極力抑える必要があった。
【0004】
特許文献1には、シート状の基材、該基材の表面又はその近傍に配列されたヒーター線、及びこれらを収納するヒーターカバーを備える加熱部と、断熱材及びこれを収納する断熱材カバーを備える保温部とを有する電熱ヒーターにおいて、前記加熱部が、切り込み可能な切込部を備えている電熱ヒーターが開示されている。該電熱ヒーターと同様に切り込み可能な切込部を備えた保温材とすれば、配管及び装置が複雑に入り組んだ狭い空間における配管及び装置等の保温に際しても、十分対応可能であると考えられる。しかし、余分な切り込み部が存在したりするなど不都合な点もある。また、従来の保温材を使用する限りにおいては、コンパクトでありながら、かつ、高い保温効果を発揮するものにはなり得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−199967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間における配管及び装置等の保温(断熱)に著しく適しているばかりではなく、所望により、コンパクトでありながら、高い保温(断熱)効果を発揮することができ、更には、粉塵、ガス等の不純物、いわゆるパーティクルの発生を著しく低減し得る、組合せ式保温材(断熱材)を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、とりわけ、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間において、配管及び装置等を、現場でかつ簡便な作業で保温するにはいかなる保温材が適切であるかを鋭意検討した。特許文献1記載の電熱ヒーターのように、保温材に切り込み可能な切込部を設ければ、複雑な配管、装置等の加熱及び保温においても、該切込部を適宜切断することにより、効率よく対応することができる。しかし、実際の配管及び装置等に取り付けた際、不要な切込部分が存在したり、また、コスト等の改善を必要とする問題も存在していた。また、配管及び装置等の寸法によって何種類もの保温材を用意する必要もあった。そこで、本発明者は、下記所定の、短辺と長辺の長さの比率が略1対2である長方形の形状を表裏2面に有する板状の保温材を複数使用して、これらを適宜組み合わせて使用すれば、狭い空間における配管及び装置等の保温を適切かつ簡便に実施し得ることを見出した。また、該保温材を使用すれば、配管及び装置等の寸法に合わせて、適宜、保温材の寸法を変えることができる。更に、板状の保温材に使用する保温部材において、その部材中に互いに隔離された又は隔離されていない複数の室を設ければ、保温部材中における空気の対流が著しく制限されて、そして、従って、保温(断熱)効果を著しく高め得ることを見出した。加えて、例えば、半導体製造装置等の配管及び装置等を保温するに際しては、板状の保温材を構成する保温部材及び保温部材カバーを特定の材質のものにすれば、半導体製造装置等で著しく嫌われている粉塵、ガス等の不純物、いわゆるパーティクルの発生を大幅に低減し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)短辺と長辺の長さの比率が略1対2である、略同一の長方形の形状を表裏面に有する板状の保温材を、その任意の辺同士を接続することにより、複数組み合わせて構成されることができ、かつ、該複数の保温材の長方形の形状が、互いに同一又は相似形であり、ここで、該複数の保温材の長方形の形状が、互いに相似形であるとき、小さい保温材の長方形の長辺及び短辺に対する大きい保温材の長方形の対応する長辺及び短辺の長さの比率が、いずれも1対2の倍数である、組合せ式保温材である。
【0009】
好ましい態様として、
(2)上記板状の保温材が、保温部材とそれを収納する保温部材カバーとから成り、該保温部材カバーが、その各辺に結合手段を備え、これにより、任意の辺同士を接続して、板状の保温材を組み合わせることができる、上記(1)記載の組合せ式保温材、
(3)上記結合手段が、保温部材カバーに設けられた穴とその穴に挿通して穴同士を固定する手段とから成る、上記(2)記載の組合せ式保温材、
(4)上記保温部材が、その部材中に互いに隔離された又は隔離されていない複数の室を有する、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(5)上記保温部材が、厚さ方向に貫通した又は貫通していない複数の穴を備える板状の部材、複数の中空パイプをその長さ方向に沿って略水平に、該パイプ同士を接触させて又は間隔を設けて束ねた部材、及び、これらを組み合わせた部材より成る群から選ばれる、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(6)上記複数の穴、及び、上記複数の中空パイプの中空部分の最大径が2〜50mmである、上記(5)記載の組合せ式保温材、
(7)上記複数の穴、及び、上記複数の中空パイプの中空部分の最大径が5〜30mmである、上記(5)記載の組合せ式保温材、
(8)上記板状の保温材が、折り曲げ自在な材質により構成される、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(9)上記板状の保温材の厚さが3〜30mmである、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(10)上記板状の保温材の厚さが3〜20mmである、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(11)上記複数の保温材のうちの最大の保温材の長方形の長辺が1,800mmであり、短辺が900mmである、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(12)上記保温部材が、ハニカム構造を有するアルミニウム又はアルミニウム合金から成る、上記(2)〜(11)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材、
(13)上記保温部材カバーが、フッ素樹脂、芳香族ポリアミド樹脂又はポリフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)から成る、上記(2)〜(12)のいずれか一つに記載の組合せ式保温材
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組合せ式保温材は、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間における保温(断熱)に著しく適している故、このような狭い空間における配管及び装置等の保温を著しく簡便かつ安価に実施することができるのみならず、種々の配管及び装置等の寸法に容易に適合可能である。また、コンパクトでありながら、高い保温(断熱)効果を発揮し得る故、従来の保温材では十分な保温効果を達成し得なかった狭い空間においても、適切な保温効果を達成し得る。加えて、本発明の組合せ式保温材は、いわゆるパーティクルを発生しない材質で容易に作製し得ることから、半導体製造装置等の配管及び装置等の保温に適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の組合せ式保温材の一実施態様の平面図である。
【図2】図2は、本発明の組合せ式保温材の固定手段の一例を示した概略図である。
【図3】図3は、保温部材と保温部材カバーとから成る、本発明の組合せ式保温材の一実施態様を示した概略図である。
【図4(a)】図4(a)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(円柱状の室)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【図4(b)】図4(b)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(円柱状及び略三角柱状の室)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【図4(c)】図4(c)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(ハニカム構造、略正六角柱状の室)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【図4(d)】図4(d)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(六角柱状の室)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【図4(e)】図4(e)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(パイプ状の室、パイプ同士を接触させて束ねたもの)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【図4(f)】図4(f)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(パイプ状の室、パイプ同士を、間隔を設けて束ねたもの)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【図4(g)】図4(g)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(波形形状の室)を有する保温部材の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組合せ式保温材の一実施態様の平面図を図1に示した。図1には、該組合せ式保温材(A)を構成する大、中、小の3種類の板状の保温材(1,1’,1”)を示した。もちろん、本発明の組合せ式保温材(A)において、板状の保温材(1)の組合せは任意であり、所定形状の板状の保温材(1,1’,1”)をいくつでも組み合わせることができる。ここで、各板状の保温材(1,1’,1”)の表裏2面は、短辺(2,2’,2”)と長辺(3,3’,3”)の長さの比率が略1対2である長方形の形状を有する。このように、短辺(2,2’,2”)と長辺(3,3’,3”)の長さの比率が略1対2の長方形であることにより、各板状の保温材(1,1’,1”)を適切かつ容易に接続して組み合わせることが可能となるのである。また、組み合わせに使用する複数の板状の保温材の長方形の形状は、互いに同一であってもよいし、相似形であってもよい。これにより任意の寸法の配管及び装置等に適切かつ容易に対応することができる。ここで、複数の板状の保温材の長方形の形状が、互いに相似形であるとき、小さい保温材の長方形の長辺及び短辺に対する、大きい保温材の長方形の対応する長辺及び短辺の長さの比率が、いずれも1対2の倍数であることが必要である。図1においては、最も小さい板状の保温材(1”)の長方形の長辺(3”)及び短辺(2”)に対する、中間の大きさの板状の保温材(1’)の長方形の対応する長辺(3’)及び短辺(2’)の長さの比率は、いずれも1対2(2の倍数)であり、最も小さい板状の保温材(1”)の長方形の長辺(3”)及び短辺(2”)に対する、最も大きい板状の保温材(1)の長方形の対応する長辺(3)及び短辺(2)の長さの比率は、いずれも1対4(2の倍数)である。また、中間の大きさの板状の保温材(1’)の長方形の長辺(3’)及び短辺(2’)に対する、最も大きい板状の保温材(1)の長方形の対応する長辺(3)及び短辺(2)の長さの比率は、いずれも1対2(2の倍数)である。図1には示していないが、所望により、長方形の対応する長辺及び短辺の長さの比率が、1対8、1対16、1対32等の板状の保温材を使用することもできる。小さい保温材の長方形の長辺及び短辺に対する、大きい保温材の長方形の対応する長辺及び短辺の長さの比率は、好ましくは、1対2である。ここで、nは、1以上の整数であり、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数である。これら複数の板状の保温材の組合せは、各板状の保温材の任意の辺同士を接続することにより実施される。
【0013】
図1に示した各板状の保温材(1,1’,1”)同士を接続する方法に特に制限はない。例えば、各板状の保温材(1,1’,1”)の各辺に結合手段を設置して、各板状の保温材(1,1’,1”)の任意の辺同士を接続することにより達成することができる。結合手段としては、図1に示したように、例えば、各辺に、適宜、穴(4,4’,4”)を設けて、その穴(4,4’,4”)に挿通する固定手段、例えば、ピン、割ピン、蝶ネジ、リベット、紐等により、穴(4,4’,4”)同士を固定することにより、又は、各辺に紐を取り付けておき、この紐同士を結ぶことにより結合することができる。図2は、固定手段の一例を示したものであり、板状の保温材(1,1’)の各辺に設けられた穴(4,4’)をピン(5)により固定した状態、及び、ピン(5)の概略図を示したものである。このようにピン(5)を穴(4,4’)に挿通することにより、ワンタッチで各板状の保温材(1,1’)同士を接続することができる。図1に示した板状の保温材(1,1’,1”)においては、穴(4,4’,4”)は、各板状の保温材(1,1’,1”)を効率よく結合して組み合わせることができるように配置してある。もちろん、全ての辺に、夫々、各大きさの板状の保温材の穴の間隔と対応するように穴(4,4’,4”)を設けることもできる。図1に示したように、穴(4,4’,4”)を設けることが好ましく、これにより、穴(4,4’,4”)の数を極力減らすことができて、コスト低減を図ることができる。実際の使用においては、各板状の保温材(1,1’,1”)を互いに結合する際に、板状の保温材の表裏を反対にして使用したり、あるいは、180度回転して使用したりすること等により容易に結合することができる。また、図1に示した各板状の保温材(1,1’,1”)は、その長辺の1/2の部分に切り込み線(9,9’,9”)を有することもできる。配管及び装置の保温に際して、必要に応じて該切り込み線(9,9’,9”)から切断して使用することもできる。
【0014】
上記保温材は、保温部材とそれを収納する保温部材カバーとから成ることが好ましい。ここで、保温(断熱)部材とは、一般的には保温(断熱)材と言われているものであり、主として、配管及び装置等の保温(断熱)を達成するものである。また、保温部材カバーとは、該保温(断熱)部材を覆うものである。もちろん、保温部材カバーが、保温材と同様に、配管及び装置等の保温(断熱)を達成し得るものであってもよい。本発明において、保温部材は、いわゆる袋状の保温部材カバーの中にすっぽりと収納されているもののみならず、表裏面又は表裏面のいずれか一方の面のみが保温部材カバーで覆われているものも含む。もちろん、保温部材カバーを使用せず、保温部材のみで本発明の保温材を構成することもできる。保温部材カバーを使用するに際しては、該保温部材カバーが、その各辺に結合手段を備えていることが好ましく、それにより、任意の辺同士を接続して、板状の保温材を組み合わせることができる。図3は、保温部材と保温部材カバーとから成る、本発明の組合せ式保温材の一実施態様を示した概略図である。図3において、上が平面図であり、下がa−a断面図である。保温部材(10)は保温部材カバー(11)にすっぽりと収納されている。また、保温部材カバー(11)は、図3に示したように、保温材の底部において突出するように形成されていることが好ましい。これにより、複数の組合せ式保温材の間の結合を容易かつ簡便に実施することができる。また、例示した保温部材カバー(11)においては、保温部材カバーの突出している面側に保温材全体を容易に折り曲げることができる。
【0015】
本発明において、板状の保温材の大きさは保温する配管及び装置等に依存して適宜選択することができる。好ましくは、複数の板状の保温材のうちの最大の板状の保温材の長方形の長辺が1,600〜2,000mmであり、短辺が800〜1,000mmであり、より好ましくは、最大の板状の保温材の長方形の長辺が1,750〜1,850mmであり、短辺が875〜925mmであり、最も好ましくは、最大の板状の保温材の長方形の長辺が約1,800mmであり、短辺が約900mmである。上記上限を超えては、作業上の取り扱いが面倒になり、かつ、狭い空間への対応が悪くなることがある。また、上記下限未満では、保温に際して、多数の板状の保温材を使用して組み合わせる必要が生ずることがあり、作業が煩雑となる。上記の特に好ましい寸法にすることにより、作業的にも、また、経済的にも良好である。また、板状の保温材の厚さは、好ましくは3〜30mm、より好ましくは3〜20mmである。上記上限を超えては、例えば、配管等に設置するに際して、折り曲げが容易でなくなることがあり、上記下限未満では、十分な保温効果を達成し得ないことがある。ここで、板状の保温材を構成する保温部材は、保温する配管及び装置の種々の条件、例えば、配管及び装置の温度、保温の程度、配管及び装置等の内容物、使用環境等に依存して適宜選択することができ、その材質、形状等は、板状を形成し得るものであればよく、また、保温部材カバー中に収める場合には、全体として板状を形成し得るものであれば特に制限はない。例えば、紙、木材、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)等の金属、アルミナ、シリカアルミナ、シリコン、ガラス等のセラミック、合成樹脂等が挙げられ、形状も特に制限はなく、板状、繊維状、フェルト状、マット状、スポンジ状、管状、ハニカム状、ペーパー状等が挙げられる。また、保温部材カバーも、同様に、保温する配管及び装置の種々の条件、例えば、配管及び装置の温度、保温の程度、配管及び装置等の内容物、使用環境等に依存して適宜選択することができ、その材質、形状等は任意である。例えば、フッ素樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂を含むポリアミド繊維、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、ポリエステル繊維等の合成繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の無機繊維、天然ゴム及び各種の合成ゴム、ビニル繊維等を布状に成形したものを使用することができる。板状の保温材、並びに、保温部材とそれを収納する保温部材カバーは、これらの材質及び形状のうちから、任意に選ばれるが、折り曲げ自在な材質及び形状であることがより好ましい。これにより、配管及び装置等に良好に対応することができる。
【0016】
本発明の組合せ式保温材における板状の保温材を構成する保温部材は、その部材中に互いに隔離された又は隔離されていない複数の室を有することが好ましい。該室を有することにより、その中に閉じ込められている空気が効果的に保温効果を発揮する。複数の室は互いに隔離されていることが好ましい。これにより、複数の室の間での空気の対流が制限され、これにより、更に効果的な保温効果を達成することができる。また、複数の室が互いに隔離されていないものでも良いが、可能な限り、各室間の空気の流れが制限されていることが好ましい。また、各室を減圧又は真空にすれば更に好ましい。
【0017】
図4(a)〜(g)は、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室を有する保温部材を例示した概略図である。図4(a)〜(g)において、上が平面図であり、下がA−A断面図である。図4(a)は、板状の保温部材(6)の表面から裏面に略円形の穴が貫通しているものである。もちろん、穴の形状は略円形に限らず、楕円形、長円形、三角形、四角形等の多角形及びその他任意の形状であることができる。該穴は必ずしも表面から裏面に貫通している必要はなく、互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(7)が形成されていればよい。該穴は、板状の保温部材(6)に、例えば、穴あけ機等により機械的に穴あけして作製することができる。該板状の保温部材(6)の材質は、好ましくはセラミック(例えば、セラミックペーパー)、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)である。材質として、例えば、合成樹脂を使用し、例えば、スポンジ状、マット状の形態の部材を使用すれば、板状の保温部材(6)中に、無数の孔が存在することから、複数の室(7)同士を完全に隔離することは困難である。しかし、複数の室(7)同士での空気の対流を極力防止することができることから、良好な保温効果を発揮することができる。また、合成樹脂を使用すると、穴あけ等の加工も容易である。図4(b)は、(a)と同様に板状の保温部材(6)の表面から裏面に略円形の穴が貫通しているものである。該板状の保温部材(6)は、複数の管状物を長さ方向に水平に束ねたものを複数重ね合わせ、次いで、保温部材(6)の厚さに合わせて、管状物の長さ方向に垂直な面で切断して作製したものである。従って、略円形の複数の室(7)と共に、各管状物が接してできる略三角形の複数の小さな室(7)も同時に兼ね備えている。該板状の保温部材(6)は、押出成形により容易かつ安価に製造することができる。該板状の保温部材(6)の材質として、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)等の金属を使用して作製したものは、各室間の気密性が良好であり、ほぼ完全に互いに隔離された複数の室を形成することができる。図4(c)は、板状の保温部材(6)の表面から裏面に略正六角形の穴が貫通しているものであり、いわゆるハニカム構造と言われるものである。該板状の保温部材(6)は、通常のハニカム製造法により製造することができる。例えば、所定材質の薄板の面に所定間隔で接着剤を塗布し、これを多数重ね合わせた後に加圧して相互に接着せしめ、次いで、保温部材(6)の厚さに合わせて、これを薄板の面に対して垂直な面で切断して作製したものである。従って、(b)と同様に容易かつ安価に製造することができる。該板状の保温部材(6)の材質は、好ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)等の金属である。該材質を使用すれば、各室の間の気密性が良く、上記と同様に、ほぼ完全に互いに隔離された複数の室を形成することができる。また、該ハニカム構造の板状の保温部材(6)は、図4(d)に示したように六角形部分を正六角形になるように大きく開かずに縮めたまま使用することもできる。もちろん、六角形部分の開き方の程度は、図4(d)に示した状態に限らず、任意に調節することができる。これにより、板状の保温部材(6)を、図4(d)の矢印方向に容易に折り曲げ可能となる。図4(e)に示されている板状の保温部材(6)は、複数の中空パイプをその長さ方向に沿って略水平に、該パイプ同士を接触させて束ねたものである。互いに隔離された又は隔離されていない複数の室(7)は、中空パイプの長さ方向に沿って存在する。該板状の保温部材(6)の材質として、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)等の金属を使用して作製したものは、各室間の気密性が良く、ほぼ完全に互いに隔離された複数の室を形成することができる。図4(f)に示されている板状の保温部材(6)は、平板(13)に所定の間隔で溝(12)を設け、該溝(12)に中空のパイプ(8)を嵌め込んだものである。該態様では、中空のパイプ(8)同士は接触しておらず、平板(13)に存在する溝(12)を介して所定の間隔を設けて束ねられた状態となっている。該中空のパイプ(8)は、図4(f)に示されているように1本のパイプを連続して使用してもよく、又は、一つの溝毎若しくは複数の溝毎に途中で分断して複数のパイプを使用してもよい。中空のパイプ(8)は可能な限り長いほうが保温効果の観点からより良好である。また、図4(f)に示されているように、中空のパイプ(8)が、平板(13)に所定の間隔で設けられている溝(12)の上部から突出していることが好ましい。これにより、該板状の保温部材(6)を保温部材カバー(11)(便宜的に破線で示している)に収納した際に、保温部材カバー(11)と中空のパイプ(8)と平板(13)との間に空隙、即ち、隔離された又は隔離されていない室(7)が形成され、更なる保温効果を達成することができる。平板(13)及び中空のパイプ(8)の材質に特に制限はないが、平板(13)が、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)等の金属を使用して作製されており、かつ、中空のパイプ(8)が、ガラス繊維で編んだスリーブ又はこれにシリコンを含侵させたもので作製されていることが好ましい。図4(g)に示されている板状の保温部材(6)は、例えば、段ボール紙を複数重ね合わせた後、板状の保温部材(6)の厚さに切断することにより作成することができる。材質としては、段ボールのような紙のほか、セラミック(例えば、セラミックペーパー)、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)等の金属を使用することもできる。本発明においては、上記のような種々の保温部材を複数重ね合わせて使用することもできる。重ね合わせは、同種の保温部材同士を使用してもよいし、又は、異種の保温部材同士を使用してもよい。ここで、複数の室を構成する穴は、その最大径が好ましくは2〜50mm、より好ましくは5〜30mmである。上記上限を超えると、高い保温効果が達成し得ないことがあり、上記下限未満では、複数の室の作製が煩雑となり、コスト高を招く。
【0018】
これらの保温部材は、複数の室同士の隔離性を高めるために、例えば、図4(a)の保温部材であれば、穴の開いていない、同種又は異種の材質から成る板状物を該保温部材の表裏面に取り付けることもできる。この場合には、表裏面に取り付けた保温部材が保温部材カバーとして機能することができる。もちろん、図4に示した他の保温部材でも同様である。好ましくは、これらの保温部材は、保温部材カバーに収納される。上記のように、保温部材は、いわゆる袋状の保温部材カバーの中にすっぽりと収納されていてもよいし、表裏面又は表裏面のいずれか一方の面のみが保温部材カバーで覆われていてもよい。保温部材カバーにより、保温部材に存在する複数の室を効果的に隔離することができる。例えば、図4(c)及び(d)に示した保温部材にあっては、該保温部材を、袋状の保温部材カバーの中にすっぽりと収納し、それを配管及び装置等に設置して固定すると、袋状の保温部材カバーが保温部材と密着して、複数の室を効果的に隔離することができる。もちろん、複数の室同士は完全に隔離されている必要はない。これにより、各室間の空気の対流を制限して、非常に良好な保温効果を発揮することができる。
【0019】
本発明の組合せ式保温材は、とりわけ、半導体製造装置における配管及び装置等の保温に適している。保温部材として、ハニカム構造を有するアルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)を使用し、かつ、保温部材カバーとして、フッ素樹脂、芳香族ナイロン又はポリフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)を使用することが好ましい。これにより、半導体製造装置等で著しく嫌われている粉塵、ガス等の不純物、いわゆるパーティクルの発生を大幅に低減し得る。
【0020】
本発明の組合せ式保温材を使用すれば、種々の設備、例えば、製造設備等における多種多様の配管及び装置等を効率よく保温(断熱)することができる。配管の保温に際して、そのエルボー部分も、該組合せ式保温材を使用して保温することもできるが、定形のエルボー部分に関しては、例えば、予めその形状、寸法に合わせて保温材を作製して、これを使用することもできる。もちろん、本発明の組合せ式保温材は、種々の設備の配管及び装置等の保温に限らず、保温(断熱)が必要なあらゆる場合に適用可能である。例えば、予め部屋の骨組みを作製しておき、その骨組みに合わせて周囲に本発明の組合せ式保温材を設置すれば、熱的に周囲の環境から隔離された断熱室を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の組合せ式保温材は、配管及び装置等が複雑に入り組んだ狭い空間における配管及び装置等の保温(断熱)に著しく適しており、かつ、コンパクトでありながら、高い保温(断熱)効果を発揮し得る。従って、各種装置の配管及び装置等の、とりわけ、狭い空間において大いに利用されることが期待される。また、いわゆるパーティクルを発生しない材質で容易に作製し得ることから、半導体製造装置等の配管及び装置等の保温に利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0022】
A 組合せ式保温材
1,1’,1” 板状の保温材
2,2’,2” 板状の保温材の表裏面を構成する長方形の短辺
3,3’,3” 板状の保温材の表裏面を構成する長方形の長辺
4,4’,4” 板状の保温材同士を接続するための穴
5 板状の保温材同士を接続するためのピン
6 保温部材
7 互いに隔離された又は隔離されていない複数の室
8 中空のパイプ
9,9’,9” 切り込み線
10 保温部材
11 保温部材カバー
12 溝
13 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺と長辺の長さの比率が略1対2である、略同一の長方形の形状を表裏面に有する板状の保温材を、その任意の辺同士を接続することにより、複数組み合わせて構成されることができ、かつ、該複数の保温材の長方形の形状が、互いに同一又は相似形であり、ここで、該複数の保温材の長方形の形状が、互いに相似形であるとき、小さい保温材の長方形の長辺及び短辺に対する大きい保温材の長方形の対応する長辺及び短辺の長さの比率が、いずれも1対2の倍数である、組合せ式保温材。
【請求項2】
上記板状の保温材が、保温部材とそれを収納する保温部材カバーとから成り、該保温部材カバーが、その各辺に結合手段を備え、これにより、任意の辺同士を接続して、該板状の保温材を組み合わせることができる、請求項1記載の組合せ式保温材。
【請求項3】
上記保温部材が、その部材中に互いに隔離された又は隔離されていない複数の室を有する、請求項1又は2記載の組合せ式保温材。
【請求項4】
上記保温部材が、厚さ方向に貫通した及び/又は貫通していない複数の穴を備える板状の部材、複数の中空パイプをその長さ方向に沿って略水平に、該パイプ同士を接触させて又は間隔を設けて束ねた部材、及び、これらを組み合わせた部材より成る群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組合せ式保温材。
【請求項5】
上記複数の穴、及び、上記複数の中空パイプの中空部分の最大径が2〜50mmである、請求項4記載の組合せ式保温材。
【請求項6】
上記板状の保温材が、折り曲げ自在な材質により構成される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組合せ式保温材。
【請求項7】
上記板状の保温材の厚さが3〜30mmである、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組合せ式保温材。
【請求項8】
上記保温部材が、ハニカム構造を有するアルミニウム又はアルミニウム合金から成り、かつ、保温部材カバーが、フッ素樹脂、芳香族ナイロン又はポリフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)から成る、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組合せ式保温材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【図4(g)】
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【公開番号】特開2013−53677(P2013−53677A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192417(P2011−192417)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(508057265)
【Fターム(参考)】