説明

組合せ抗高血圧症薬ウェーハ

本発明は、水性環境で迅速に溶解または分解する、高血圧症の処置のための活性成分の組合せを適用するための、扁平形状の薬物製剤に関し、ここで、この薬物製剤は、高血圧症の処置に適した少なくとも2種の有効成分を含有し、かつ、抗高血圧症剤は、ベータ受容体ブロッカー、アルファ受容体ブロッカー、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、AT拮抗薬、中枢作用性降圧剤、直接血管拡張薬および利尿薬を包含する群から選択される。本発明はまた、本発明による活性成分の組合せの、高血圧の治療のための経口薬物製剤の製造のための使用、高血圧症の治療的処置のための方法に、および、扁平形状薬物製剤の製造のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧症の処置のための活性薬剤(active agent)の組合せの適用のための、水性環境で迅速に溶解または崩壊するシート状投与形態に関する。
【0002】
「Hochdruckliga」によると、理想的な血圧は、120/80mmHgである。これに対し、高血圧(高血圧症)は、140mmHgを超える収縮期圧値および90mmHgを超える拡張期圧値への動脈圧の病的な上昇であるとされている。
【0003】
最近の研究により、高血圧症は西洋のライフスタイルを有する国でよくみられる病気であり、患者の90%において高血圧値の原因が見つからないことが明らかになった。この高血圧症が一次性または本態性高血圧症と呼ばれているのはこのためである。それにもかかわらず、高血圧症の発症はいくつかのリスク因子、例えば遺伝的素因、過体重、運動不足、ストレスまたは塩の高消費などによって促進される。一次性高血圧症は、平均以上の数の症例で、他の病気、例えば、過体重、2型糖尿病、高血中脂質値および痛風などと合併して生じ、この場合メタボリック症候群と呼ばれる。
【0004】
しかしながら、約10%の患者では、高血圧は特定の基礎疾患、例えば腎動脈の狭窄、慢性腎疾患およびホルモンバランスの変化または薬物の結果である。このタイプの高血圧は、二次性高血圧と呼ばれている。
ドイツでは、25〜74歳の範囲の年齢の60パーセントを超える男性および40パーセントを超える女性が高血圧症を患っている。50歳以降では、人口のほぼ2人に1人が上昇した血圧に苦しんでいる。
しかしながら、体が機能するためには、血圧が特定の範囲内に絶えず留まっていることが極めて重要である。血圧があまりに低い場合、器官への酸素および栄養分の供給が不十分となり、その機能が制限され、最悪の場合には、完全な器官不全により死に至る可能性がある。
【0005】
他方、極端に高い血圧はしばしば動脈硬化(動脈石灰化)につながり、これはその後、卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全および失明につながる。
上昇した血圧を処置しないと、これらの遅発性後遺症(late sequelae)のリスクは増加するが、血圧を正常化することによって、これらの後遺症を避けることができる。
さらにまた、突発性の血圧の極めて強い上昇は、いわゆる高血圧発作につながる可能性があり、これは、重篤な呼吸異常および狭心症を伴い、緊急の処置を必要とする救急事態とされている。
高血圧は、その初期段階では一般に何の徴候も示さないか、ほとんど徴候を示さず、罹患者は快適に感じるが、深刻な遅発性後遺症の可能性があるため、処置は緊急に必要である。
【0006】
血圧は、血管を循環している血液の総量に密接に関連しており、そしてこれは、腎臓によって調節されている体の水バランスと直接相関している。さらにまた、血管の直径は血圧に影響を及ぼし、そのため、これらの因子は治療の出発点とみなされるべきである。
ほんのわずかに高い血圧の場合には、まず最初に、簡単な方策、例えば、定期的な運動を行い、減量をし、および低ナトリウム食を摂ることにより、血圧を下げることができる。
【0007】
これらの方策が所望の成功につながらない場合、薬物による高血圧の制御および処置が必要であり、これは、薬物の長期にわたる不断の薬物摂取を要する。
しかしながら、上述の研究はまた、高血圧に苦しむ患者の約5%しか最適な薬物処置を受けていないことを示している。
さらにまた、研究により、進行期の高血圧の最適な制御が、しばしば異なる活性薬剤群からの、2種または3種以上の活性薬剤の組合せでしか達成できないことが示されている。
【0008】
高血圧症の治療では、一方で患者のコンプライアンスを改善し、他方で、その者の正常な生活リズムの間に簡単に摂取することを可能にする医薬形態が好ましい。多くの患者にとって、錠剤の通常の適用の不利点は、多くの場合、錠剤を飲み込むために水などを要することである。これは患者の運動の自由度を制限し、不自由とみなされる。
【0009】
さらに、高血圧性緊急症では、迅速かつ有効な治療を提供する必要がある。投与形態は、したがって、活性薬剤の迅速な放出を達成し、素早い作用発現を確保するのに適しているべきである。この理由から、投与形態の崩壊および活性薬剤の放出は、適用部位ですでに生じているべきであり、例えば、経口投与可能な投与形態の場合は、口腔内ですでに生じているべきである。
【0010】
加えて、重篤な呼吸異常および苦悶感を有する患者においてさえも摂取を容易にするために、または、第三者による、例えば無意識患者への適用を可能にするために、投与形態を簡単かつ直接的な方法で適用することが可能であるべきである。
したがって、本発明の目的は、高血圧症治療のための活性薬剤の組合せの適用を、追加の補助手段を用いることなく、別々に、容易に摂取することができるような形で可能にする医薬形態を提供することであった。
【0011】
高血圧症の処置における活性薬剤の投与に用いる一般的な投与形態は、錠剤、カプセルまたはドロップである。
錠剤およびカプセルは、容易に服用することができるが、これらの作用の開始は原則として遅く、活性薬剤は胃腸管を介して吸収される際に「初回通過効果」の影響を受けるため、錠剤またはカプセル中において活性薬剤の初期濃度が高いことが必要である。
【0012】
また、一般に、投与形態を飲み込むためにいくらかの液体が必要であり、それは必ずしもすぐに入手できるわけではない。さらに、高血圧発作の場合、嚥下が困難か、または、不可能なことがあり、このため、適用がしばしば問題となる。
この目的が、口腔内で崩壊する親水性のポリマーフィルムのシート状投与形態であって、該ウェーハが高血圧症の処置に適した少なくとも2種の活性薬剤を含むものによって達成されることが見出された。
個々の活性薬剤の遊離塩基または治療的に活性な塩もまた、活性薬剤として適している。
【0013】
本発明の投与形態における活性薬剤の組合せにより、患者にとって、両方の活性薬剤を服用することがより容易になる。口腔粘膜を介しての活性薬剤の吸収により、他の経口の投与形態と比較して、例えば嚥下において困難を有する患者または錠剤を服用するのを拒否する患者にも経口経路を介して薬物を投与することができる、という利点が付与される。さらに、患者は、両方の活性薬剤のために1種の薬物のみを服用すればよいため、投薬過誤の危険が低下する。これにより、コンプライアンスおよび治療成績が改善される。最後に、本発明による投与形態は、摂取が、人前でさえも、チューインガムを食べるように、または、最近流行となっている「フィルム」を食べるように可能となるよう、目立たないパッケージで包装することができる。それによって、コンプライアンスおよび治療的な成功が改善される。
【0014】
特に、高血圧症の処置のための1つの投与形態における活性薬剤の組合せ(ここで、種々の活性薬剤のクラスの抗高血圧症薬を組み合わせることができる)は、特別な利点を提供する。したがって、例えば、高血圧性緊急症を処置するための迅速に作用する強力な医薬製品は、救急処置の種々の剤の投与を容易にすることができる。
さらに、1つの活性薬剤の組合せは、作用機序が異なり相乗効果を有する活性薬剤を含んでいてもよく、したがって、異なる生理学的活性の結果、単一成分の組成物を用いる場合よりも少量の活性薬剤を高血圧の処置のために投与することができる。
【0015】
これらの活性薬剤の組合せをシート状投与形態(ウェーハ)において投与することにより、容易な摂取のみならず、活性薬剤成分の互いに対する正確な調整も可能になり、したがって摂取を忘れたり、または1種の活性薬剤のみを二重に摂取することによる誤った投薬、およびこれによる不適切な高血圧治療は生じない。
【0016】
いくつかの活性薬剤に関して、活性薬剤の経粘膜的投与の他の利点は、胃腸経路の迂回、およびしたがって経口投与の後の「初回通過」効果の回避、即ち最初の肝臓通過の間の活性薬剤の顕著な部分の代謝の回避にあり、したがって活性薬剤は、高い程度まで利用される。
これらの活性薬剤に関して、初回通過効果による活性薬剤の損失は発生せず、したがって対応して活性薬剤の投与量を減らすことができ、これにより同様に、患者の負担の解消および、比較的低いUDEの結果として福利の改善がもたらされる。
【0017】
ウェーハの製造は単純で低コストであるので、異なる活性薬剤濃度を有する多種の医薬製品を提供することが可能である。
ウェーハを積層物で構成する場合には、例えば、活性薬剤含有層の厚さのみを変化させるか、または活性薬剤の濃度を変化させることが可能である。
他方、活性薬剤の含量は異なるが、同一の活性薬剤比率を有する医薬製品を、単に投与形態の表面を種々の大きさに切断することにより、製造することができる。
【0018】
さらに、活性薬剤の組合せを含有する本発明のウェーハは、その扁平な形状のため、例えば財布に入れて簡単に持ち歩くことができ、そして、旅行しているときでさえも即座に利用することができ、服用が容易であり、高血圧症の処置および突発性の高血圧性緊急症の場合のいずれにおいても、迅速に効果を発揮する。
【0019】
親水性水溶性および/または膨潤性ポリマーフィルム用のベースポリマーとして適する水溶性または膨潤性ポリマーは、デキストラン、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースまたはプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばWalocel)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースを含む多糖類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン、アルギネート類、ペクチン類、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン天然ガム、トラガカント、高分散二酸化ケイ素、ベントナイト、並びに前述の親水性ポリマーの誘導体、またはこれらのポリマーの2種もしくは3種以上の組合せを含む群からのポリマーである。代替として、ポリマーフィルムは、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー製であってもよい。
【0020】
本発明の投与形態に含有されるポリマーの比率は、当該投与形態の乾燥質量に対して、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは15〜75重量%である。
本発明による医薬製剤は、高血圧症の処置のために用いられる少なくとも2種の活性薬剤を含み、ここでまた、各々の活性薬剤群からの少なくとも1種の活性薬剤をその中に含有していてもよい。
【0021】
活性薬剤は、ベータ受容体ブロッカー、アルファ受容体ブロッカー、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、AT拮抗薬、中枢作用性降圧剤、直接血管拡張薬および利尿薬を含む抗高血圧症薬の群から選択される。
【0022】
好ましい態様では、本医薬製剤は少なくとも2〜5種、好ましくは2〜3種の活性薬剤を含有する。
2種の活性薬剤の活性薬剤の組合せの場合、活性薬剤のうちの1種は好ましくは利尿薬の群から選択され、そして、第2の活性薬剤はベータ受容体ブロッカー、ACE阻害剤、カルシウム拮抗薬またはAT受容体拮抗薬の群から選択される。
【0023】
抗高血圧症薬の群の3種の活性薬剤を含有する活性薬剤製剤の好ましい態様の1つにおいて、第1の活性薬剤は好ましくは利尿薬であり、組合せの第2および第3の活性薬剤はベータ受容体ブロッカーおよび血管拡張薬であり、該血管拡張薬は、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、アルファ受容体ブロッカーおよび直接血管拡張薬を含む群から選択されるか、または、第2および第3の活性薬剤はACE阻害剤およびカルシウム拮抗薬であるか、または、第2および第3の活性薬剤は抗交感神経緊張薬(antisympathotonic)および血管拡張薬である。
さらなる好ましい態様では、本医薬製剤は抗高血圧症薬の群に属さない少なくとも1種の活性薬剤、例えば鎮静剤を含有する。あるいは、本医薬製剤は、同様に、利尿薬に起因するカリウムの損失を補填するために、カリウム塩を含有することができる。
【0024】
本発明の医薬製剤で用いる利尿薬は、キサンチン誘導体、浸透圧利尿薬、炭酸脱水酵素阻害薬、チアジド、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿薬、アルドステロン拮抗薬またはシクロアミジン誘導体を含む群から選択される。これらの利尿薬の活性薬剤は、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、マンニット、ソルビット、アセタゾラミド、ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド、ブチジド(butizide)、ベンドロフルメチアジド、ベメチジド(bemetizide)、メフルシド、クロルタリドン、キシパミド、クロパミド、インダパミド、フロセミド、アゾセミド、ブメタニド、ピレタニド、トラセミド、エトゾリン、エタクリン酸、メチルクロチアジド(methylclothiazide)、メトラゾン、ポリチアジド、スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、トリアムテレンおよびアミロリド、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される。
【0025】
投与形態中の利尿薬の活性薬剤含量は、1回量あたり、0.1mg〜50mgの間、好ましくは0.5mg〜20mgの間、より好ましくは2mg〜10mgの間である。
本発明に従って用いられるベータ受容体ブロッカーの活性薬剤は、アルプレノロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ブプラノロール、メチプラノロール、プロパノロール、ナドロール、ピンドロール、メピンドロール、カルテオロール、カラゾロール、チモロール、ソタロール、メトプロロール、ベタキソロール、ビソプロロール、アテノロール、アセブトロール、セリプロロールおよびボピンドロール、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される。
好ましくは、ボピンドロール、ビソプロロールおよびピンドロールが、ベータ受容体ブロッカーとして用いられる。
【0026】
本発明に従って用いられるアルファ受容体ブロッカーは、ブナゾシン、ドキサゾシン、テラゾシンおよびウラピジルならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される活性薬剤を含有する。
ACE阻害剤の活性薬剤は、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリルおよびトランドラプリル、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される。
好ましくは、シラザプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、スピラプリルおよびトランドラプリルが、ACE阻害剤として用いられる。
【0027】
本発明の医薬製剤で用いられるカルシウム拮抗薬は、ベラパミル系のカルシウム拮抗薬、ジルチアゼム系のカルシウム拮抗薬およびジヒドロピリジンを含む群から選択される。
カルシウム拮抗薬の活性薬剤は、ジルチアゼム、ガロパミル、ベラパミル、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピンおよびニトレンジピン、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される。
好ましくは、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、アムロジピンおよびニカルジピンが、カルシウム拮抗薬として用いられる。
【0028】
AT拮抗薬の活性薬剤は、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタン、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される。
本発明の医薬製剤で用いられる抗交感神経緊張薬は、クロニジンおよびメチルドパ、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択される。
直接血管拡張薬として用いられる活性薬剤は、ミノキシジルおよびジヒドララジン、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されるものである。
【0029】
物理化学的特性を改善する、例えば脆性または脆化を低減するために、保湿剤、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールエステルなどを、フィルムに加えてもよい。
他の態様において、フィルムおよび活性薬剤を安定化させるために、酸化防止剤、例えばビタミンC(アスコルビン酸)、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ヒドロキシ安息香酸誘導体を、ウェーハに加えてもよい。さらに、酸性および塩基性イオン交換体を、安定剤として用いてもよい。
【0030】
他の態様において、他の成分、例えば染料、顔料、風味香味剤、天然および/または合成の香味物質、甘味料、緩衝系を、フィルムに加えてもよい。特に、風味香味剤および香味物質は、活性薬剤のしばしば劣悪な特有の風味または臭気をカバーし、かつ/または投与形態に良好な風味を付与することができ、したがって薬剤を服用することに対する患者の受け入れが顕著に改善される。
緩衝系を加えることは、一方でフィルムおよび活性薬剤を外側の影響に対して貯蔵の間安定化する役割を果たし;他方で、投与形態のpHを、これにより生理学的に許容し得るpH値に調整することができ、したがって粘膜の刺激が回避される。緩衝系を用いることにより、酸性または塩基性の活性薬剤のマトリックス中での溶解性を改善することも可能である。
【0031】
本発明の投与形態は、薄くなるように、例えばウェーハの形態に構成される。投与形態の厚さは、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.5〜1mmである。投与形態の厚さについての下限は、約50μmである。投与形態の表面積は、0.09cm〜12cm、好ましくは1cm〜8cm、より好ましくは3cm〜6cmである。
他の態様において、本発明のウェーハは、崩壊剤またはウィッキング剤(wicking agent)、例えば重炭酸塩−酸混合物またはアエロジル(aerosil)を含み、これは、液体との接触により活性化され、適用後のウェーハの崩壊を促進し、これによりまた活性薬剤の放出を促進する。
【0032】
1つの好ましい態様において、ウェーハは、発泡体として存在し、したがって活性薬剤の放出は、拡大された表面のために尚一層迅速に行われる。この態様において、発泡体の空洞は、液体形態での活性薬剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
粘膜を介しての活性薬剤の吸収を改善するために、透過促進剤、例えば脂肪族アルコール類、脂肪酸類、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪族アルコールエステル類および脂肪酸エステル類の群からの物質、特にモノラウリル酸ソルビタンまたは長鎖脂肪酸のメチル、エチルもしくはイソプロピルアルコールとのエステル、または脂肪族アルコールの酢酸もしくは乳酸とのエステル、またはDMSO(ジメチルスルホキシド)およびオレイン酸ジエタノールアミンなどの物質を、同様にフィルム中に包含させてもよい。これらの物質の構成成分の量は、各々の場合において活性薬剤マトリックスの合計重量に対して0.1〜25重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0033】
さらに、ウェーハの組成物は、活性薬剤の放出を遅延させる化合物を含んでいてもよく(例えばマイクロカプセル封入)、該ウェーハは、好ましい態様では、マイクロカプセル形態の液体活性薬剤を含有する。この液体活性薬剤は、例えば、ニトログリセリンのアルコール溶液であってもよい。
他の態様において、ウェーハは、粘膜付着特性を有し、したがって完全に溶解するまで粘膜に付着する。
【0034】
好ましい態様において、活性薬剤の少なくとも1種は、イオン交換体に結合し、したがって親水性ポリマーは、口腔において迅速に崩壊し、他方、活性薬剤の放出は、遅延されるか、または例えば胃腸管中でpHが変化した際に生じる。このようにして、作用および吸収の機序が異なる活性薬剤を、1つの投与形態において投与することができる。即ち、放出された活性薬剤の少なくとも1種は、例えば粘膜を介して適用の部位において吸収されるか、またはこれはさらに輸送され、別の部位において吸収される。
【0035】
ウェーハはまた、異なる層を有する積層物として構成されてもよく、活性薬剤は、空間的に互いに分離しており、これらの組成の点で互いに異なっている別個の層中に包含される。このようにして、ウェーハの種々の層の崩壊時間が互いに異なる場合には、活性薬剤を、異なる作用の部位において、しかしまた遅延を伴って放出させることができる。
同様に、活性薬剤を、異なる速度で崩壊する層内に配置し、したがって製剤が全体的に遅延効果を示すようにしてもよい。
【0036】
さらなる態様において、粘膜に対する投与形態の付着を促進し、直接的な接触を確立することにより粘膜を介する活性薬剤吸収を容易にするために、外層の1つは、粘膜付着性であって投与形態もよい。
本発明の投与形態の水性媒体中での崩壊は、好ましくは、1秒〜5分の範囲内で、より好ましくは5秒〜1分の範囲内で、最も好ましくは10秒〜30秒の範囲内で起こる。
本発明の投与形態は、有利なことに、口腔中に薬物を投与するのに、または直腸内、膣内もしくは鼻腔内投与に適する。これらを、ヒト医学および獣医学の両方において用いることができる。
【0037】
本発明はさらに、高血圧症の処置のための経口の投与形態を製造するための、本発明の活性薬剤の組合せの1種の投与形態使用に関し、前記投与形態は、好ましくはウェーハとして処方される。
さらに、本発明は、高血圧に苦しむヒトの治療的処置のための方法であって、抗高血圧症剤の上記の活性薬剤の組合せの投与を、経粘膜吸収を伴う経口適用可能な投与形態により行う、前記方法に関する。
【0038】
最後に、本発明はまた、シート状投与形態の製造方法であって、以下の工程:
−少なくとも1種のポリマーと少なくとも2種の抗高血圧症性活性薬剤とを含有する溶液を調製する工程、
−前記溶液を被覆基材上に塗布する工程、および
−塗布された溶液を、乾燥および溶媒の除去によって固化する工程、
を含む、前記方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーをベースとし、水分に接触すると迅速に崩壊する、高血圧の処置のためのシート状医薬製剤であって、該投与形態が、高血圧症の処置に適した少なくとも2種の活性薬剤の活性薬剤の組合せを含有することを特徴とする、前記医薬製剤。
【請求項2】
活性薬剤が、ベータ受容体ブロッカー、アルファ受容体ブロッカー、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、AT拮抗薬、中枢作用性降圧剤、直接血管拡張薬および利尿薬を含む抗高血圧症剤の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
活性薬剤のうちの1種がベータ受容体ブロッカーの群から選択され、第2の活性薬剤が利尿薬の群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
活性薬剤のうちの1種がACE阻害剤の群から選択され、第2の活性薬剤が利尿薬の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
活性薬剤のうちの1種がカルシウム拮抗薬の群から選択され、第2の活性薬剤が利尿薬の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項6】
活性薬剤のうちの1種がAT受容体拮抗薬の群から選択され、第2の活性薬剤が利尿薬の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項7】
抗高血圧症剤の群からの3種の活性薬剤の組合せを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項8】
活性薬剤のうちの1種がベータ受容体ブロッカーであり、第2の活性薬剤が血管拡張薬であり、第3の活性薬剤が利尿薬であり、該血管拡張薬が、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、アルファ受容体ブロッカーおよび直接血管拡張薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
活性薬剤のうちの1種がACE阻害剤であり、第2の活性薬剤がカルシウム拮抗薬であり、第3の活性薬剤が利尿薬であることを特徴とする、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項10】
活性薬剤のうちの1種が抗交感神経緊張薬であり、第2の活性薬剤が血管拡張薬であり、第3の活性薬剤が利尿薬であることを特徴とする、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項11】
利尿薬が、キサンチン誘導体、浸透圧利尿薬、炭酸脱水酵素阻害薬、チアジド、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿薬、アルドステロン拮抗薬またはシクロアミジン誘導体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜10のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項12】
利尿薬の活性薬剤が、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、マンニット、ソルビット、アセタゾラミド、ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド、ブチジド、ベンドロフルメチアジド、ベメチジド、メフルシド、クロルタリドン、キシパミド、クロパミド、インダパミド、フロセミド、アゾセミド、ブメタニド、ピレタニド、トラセミド、エトゾリン、エタクリン酸、メチルクロチアジド、メトラゾン、ポリチアジド、スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、トリアムテレンおよびアミロリド、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜11のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
ベータ受容体ブロッカーの活性薬剤が、アルプレノロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ブプラノロール、メチプラノロール、プロパノロール、ナドロール、ピンドロール、メピンドロール、カルテオロール、カラゾロール、チモロール、ソタロール、メトプロロール、ベタキソロール、ビソプロロール、アテノロール、アセブトロール、セリプロロールおよびボピンドロール、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜12のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項14】
アルファ受容体ブロッカーの活性薬剤が、ブナゾシン、ドキサゾシン、テラゾシンおよびウラピジルならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜13のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項15】
ACE阻害剤の活性薬剤が、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリルおよびトランドラプリル、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜14のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
カルシウム拮抗薬が、ベラパミル系のカルシウム拮抗薬、ジルチアゼム系のカルシウム拮抗薬およびジヒドロピリジンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜15のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項17】
カルシウム拮抗薬の活性薬剤が、ジルチアゼム、ガロパミル、ベラパミル、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピンおよびニトレンジピン、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜16のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項18】
AT拮抗薬の活性薬剤が、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタン、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜17のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項19】
抗交感神経緊張薬の活性薬剤が、クロニジンおよびメチルドパ、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項20】
直接血管拡張薬の活性薬剤が、ミノキシジルおよびジヒドララジン、ならびに、これらの活性薬剤の薬学的に許容し得る塩および組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2〜19のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項21】
親水性ポリマーが、デキストラン、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースまたはプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばWalocel)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースを含む多糖類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン、アルギネート類、ペクチン類、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン天然ガム、トラガカント、高分散二酸化ケイ素、ベントナイト、ならびに前述の親水性ポリマーの誘導体またはこれらのポリマーの2種もしくは3種以上の組合せを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項22】
ポリマーフィルムが、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー製であることを特徴とする、請求項1〜21のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項23】
グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールおよびポリグリセロールエステルを含む群から選択される保湿剤を含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項24】
ビタミンC(アスコルビン酸)、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ヒドロキシ安息香酸誘導体を含む群から選択される酸化防止剤を含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項25】
製剤の活性薬剤が、風味遮蔽のための酸性または塩基性イオン交換体に結合していることを特徴とする、請求項1〜24のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項26】
染料および/または顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜25のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項27】
天然および/または合成香味物質を含むことを特徴とする、請求項1〜26のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項28】
崩壊剤またはウィッキング剤を含むことを特徴とする、請求項1〜27のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項29】
製剤のpH値が、緩衝系により調整されていることを特徴とする、請求項1〜28のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項30】
親水性ポリマーが、口腔中に適用された後に5分未満で、好ましくは3分未満で、より好ましくは1分未満で、最も好ましくは30秒未満で崩壊することを特徴とする、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項31】
親水性ポリマーは口腔中で迅速に崩壊するが、活性薬剤は、イオン交換体に結合し続け、該イオン交換体は、前記活性薬剤を胃腸管においてのみ放出することを特徴とする、請求項25〜30のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項32】
活性薬剤が、互いに空間的に分離され組成に関して互いに異なる別個の層中に含まれていることを特徴とする、請求項1〜31のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項33】
製剤が発泡体として存在し、活性薬剤の少なくとも1種が前記発泡体の空洞内で液体形態で存在することを特徴とする、請求項1〜32のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれかに記載の投与形態の、薬学的活性薬剤のヒトまたは動物への直腸内、膣内または鼻腔内投与のための使用。
【請求項35】
請求項3〜11のいずれかに記載の活性薬剤の組合せの、請求項1〜33のいずれかに記載の高血圧症の処置のための経口投与形態の製造のための使用。
【請求項36】
医薬製品がウェーハとして処方されていることを特徴とする、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
高血圧に苦しむヒトの治療的処置のための方法であって、請求項3〜11のいずれかに記載の抗高血圧症剤の活性薬剤の組合せの投与が、経口適用可能な投与形態を用いて、経粘膜吸収により行われることを特徴とする前記方法。
【請求項38】
請求項1〜33のいずれかに記載のシート状投与形態の製造方法であって、以下の工程: −少なくとも1種のポリマーと少なくとも2種の抗高血圧症性活性薬剤とを含有する溶液を調製する工程、
−前記溶液を被覆基材上に塗布する工程、および
−塗布された溶液を、乾燥および溶媒の除去によって固化する工程、
を含むことを特徴とする、前記方法。

【公表番号】特表2009−539894(P2009−539894A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514663(P2009−514663)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004938
【国際公開番号】WO2007/144082
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】