説明

組換えヒトアルファ1−アンチトリプシン

本発明はN結合グリカンを含む組換えヒトα1−アンチトリプシン(rhAAT)に関し、前記N結合グリカンの少なくとも10%は、テトラアンテナリーグリカンであり、および前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度(Z/A)は少なくとも50%である。本発明はさらに、薬としての使用のための、特にAAT欠乏に関連する病気、および/または好中球媒介組織損傷に関わる病気の予防および/または処置での使用のための、rhAATに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬上の生産物の分野に、特に組換えヒトα1-アンチトリプシンに関し、とりわけそれはα1-アンチトリプシン欠乏関連気腫の予防および/または処置のために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を述べる。α1-アンチトリプシン(AAT)またはα1-プロテアーゼインヒビター(α1PI)は活性化好中球によって放出されるプロテアーゼの自然なインヒビターである。AATは、394個のアミノ酸からなり、そして52kDの分子量を有する糖タンパク質である。ヒトのAATは418個のアミノ酸前駆体として発現され、それから24個のアミノ酸前駆体が394個のアミノ酸の最終生成物を生じさせるように切り取られ(クリップされ)る。AATは肝臓で主に合成されるが、しかし、発現はまた好中球、単球および大食細胞(マクロファージ)でも示されていた。
【0003】
AATの低いか、またはゼロの血しょうレベルは、肺での好中球プロテアーゼの対抗されない、そして破壊的な作用のために、気腫の進行のための危険因子を構成する要素となる。AAT欠乏関連の気腫の予防および/または処置のために、AATオーグメンテーション(増大)療法が開発されてきた〔Mulgrew(マルグルー)ら、2007年〕。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】AT Mulgrewら、2007年、Lung(ラング)185: 191-201
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目下、AAT欠乏関連の気腫を患う患者は、血しょうから由来した(pd)AATの高用量で処置される〔60mg/kg/週、Talecris(タレクリス社)からのProlastin(R){プロラスチン(商標)}、Baxter(バクスター社)からのAralast(R){アララスト(商標)}およびZLBからのZemaira(R){ゼーマイラ(商標)}〕。AATの大量で、かつ頻繁な注射は、AAT欠乏関連気腫から解放するために要求される。血しょうから由来した材料に対する主な関心事は、調製物の安全性である。すべてのヒト由来の材料と同様に、pdAATの潜在的危険性は、プリオンまたは他の外来性の媒介物での汚染である。第2の懸念は血しょう材料の利用が限られることである。
【0006】
ヒトの血しょうから由来したAATは、Asn残基46、83および247で、3つのN結合グリカンを含む。これらのグリカンは、大部分はジ-およびトリ-アンテナリー構造からなる。組換えタンパク質上のグリカンのシアリル化(シアル酸付加)の高い程度は、最適な薬物動態(PK)にとって重要である。
【0007】
これまで、AATの組換え生産は、ほとんどの組換えプラットホーム(組換え構築基盤)における低い発現によって妨げられていた〔Karnaukhova(カルナウホワ)ら、2006年〕。組換えAATはトランスジェニックシステムにおいて高水準で生成されていたがしかし、その臨床上の開発は、次善最適(サブオプティマル)の薬物動態(PK)および非ヒト汚染物質による安全性の問題のために中止されていた〔Spencer(スペンサー)ら、2005年〕。
【0008】
したがって、活性であり、十分な量で得ることができ、そして有用な薬物動態の特性を有する組換えヒトAAT(rhAAT)についての必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概要を述べる。
本発明によれば、適切な薬物動態学的プロファイルを有する組換えヒトα1-アンチトリプシン(rhAAT)は、PER.C6細胞において大量に生産することができることが示された。
【0010】
本発明に至る研究において、ヒトのAATを発現し、およびα-2,3-シアリルトレンスフェラーゼ(シアル酸転移酵素)(ST3)またはα-2,6-シアル酸転移酵素(ST6)を共発現する(co-expressing)細胞系を、無血清状況の下で生じさせた。これらの細胞系はrhAATの高いレベルを発現することが可能であった。このようにして、1日につき1細胞ごと(pcd)に最高22ピコグラムまでのrhAATの産生が達成された。重要なことに、本発明のrhAATは好中球エラスターゼインヒビター(抑制物質)として活性であることが示された。グリカンプロファイルの分析は、シアル酸でのキャッピングの良好な全体的な程度を示した。興味深いことに、血しょうから導き出されるAAT〔プロラスチン(商標)〕と比較して、テトラアンテナリー(四本分岐)のグリカンでの増加は、本発明のrhAAT上で注目された。さらにまた、血しょうから導かれるAATと比較して、ST3を共発現する細胞で生産されるrhAATは、ラットにおいて増加した平均滞留時間(MRT)を示した。ST6を共発現する細胞で生産されるrhAATは、血しょうから導かれるAATと比較して、減少した平均滞留時間を示した。
【0011】
したがって、1種の見地において、本発明は、N結合グリカンを含む組換えヒトα1-アンチトリプシン(rhAAT)を提供し、そこでは、
(a)前記N結合グリカンの少なくとも10%はテトラアンテナリーグリカンであり、および
(b)前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピング(capping with sialic acid)の程度(Z/A)は少なくとも50%である。
【0012】
別の具体化において、前記N結合グリカンの少なくとも20%はテトラアンテナリーグリカンである。
【0013】
さらなる具体化では、テトラアンテナリーグリカンである前記N結合グリカン上のシアル酸でのキャッピングの程度は、少なくとも30%である。
【0014】
さらなる具体化では、前記N結合グリカン上の合計シアリル化の少なくとも50%はα-2,3-シアリル化である。なるべくなら、前記N結合グリカン上の合計シアリル化の少なくとも90%はα-2,3-シアリル化である。
【0015】
さらなる見地では、本発明は、前記rhAAT、および随意に1種またはそれよりも多くの薬学上受入れ可能な賦形剤を含む調製物および製薬上の組成物を提供する。
【0016】
別の見地では、本発明は、とりわけAAT関連気腫および/または好中球媒介組織損傷を有する炎症性の病気の予防および/または処置のために、前記rhAAT、前記rhAATを含む調製物および/または製薬上の組成物の使用に関連する。
【0017】
さらなる具体化では、本発明は、組換えヒトα1-アンチトリプシンを生産するための方法を提供し、そこでは、ヒトα1-アンチトリプシンがコード(化)される核酸を有するPER.C6細胞を、前記PER.C6細胞が前記核酸を発現可能な形態でかくまう(harbours)ように提供すること、および前記PER.C6細胞を、前記組換えヒトAAT(α-1アンチトリプシン)の生産をもたらす(促す)条件下に培養することのステップを含み、前記PER.C6細胞はα2,3-シアリルトランスフェラーゼ(シアル酸転移酵素)またはα2,6-シアリルトランスフェラーゼを共発現するように修飾される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】α2,3-シアリルトランスフェラーゼを過剰発現する細胞系(A:PER.C6-AAT-ST3)およびα2,6-シアリルトランスフェラーゼを過剰発現する細胞(B: PER.C6-AAT-ST6)の双方についての、バッチ培養の比生産性(specific productivity)の度数分布である。
【図2】PER.C6-rAAT(未精製)の試料の細胞培養収集物(cell culture harvests)を有する4-12%のビストリス(BIS-Tris)SDS-PAGEゲルであり、コロイド青(ブルー)により染色した。
【図3】AAT上でのグリカンのシアリル化の程度をZ/A比によって定めるためのアッセイの図式的な外観である。
【図4】AATを発現するPER.C6細胞系の比生産性はPER.C6-rAATのグリカンのシアリル化の程度と相関しない。〔Spearman(スピアマン)のr=0.024、p=0.893)。(◇:PER.C6-AAT-ST3、○:PER.C6-AAT-ST6)。
【図5】ECL陰性試料からのPER.C6-rAATのグリカンの、ECL陽性FIG試料およびプロラスチン(商標)からのPER.C6rAATのグリカンとの比較におけるシアリル化(図5A)およびアンテナリティ(antennarity)(図5B)である。
【図6】すべてのグリカン上(図6A)およびPER.C6-rAAT-ST3のテトラアンテナリーグリカン上(図6B)でのシアリル化の程度のPER.C6-rAAT-ST6およびプロラスチン(商標)のグリカンとの比較である。
【図7】ラットへの静脈内ボーラス(i.v. bolus)投与後の緩衝剤(PBS/T)での、またはPER.C6-CMでのプロラスチン(商標)の種々のドーズのための血しょう濃度-時間プロファイルである。黒四角:PER.C6-CMでのプロラスチン(商標)、50μg/kg、黒三角:PER.C6-CMでのプロラスチン(商標)、100μg/kg、黒丸:PER.C6-CMでのプロラスチン(商標)、200μg/kg、○:PER.C6-CMでのプロラスチン(商標)、2000μg/kg。
【図8】PER.C6-rAAT-ST3、PER.C6-rAAT-ST6およびプロラスチン(商標)についての血しょう濃度-時間プロファイルである。黒三角:PER.C6-rAAT-ST3、MRT〜18-23時間、黒四角:PER.C6-rAAT-ST6、MRT〜4-4時間、黒丸:プロラスチン、MRT〜11-12時間。
【図9】AAT発現ベクターpAATopt-ST3(A)およびpAATopt-ST6(B)のプラスミドマップである。CMV=サイトメガロウイルスプロモーター、BGHp(A)=ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、fl ori=複製のf1起点、SV40=シミアンウイルス40プロモーター、Neo=ネオマイシン耐性マーカー、SV40p(A)=シミアンウイルス40ポリアデニル化配列、AAT=アルファ1-アンチトリプシン、ColE1=複製のColE1起点、Amp=アンピシリン耐性マーカー、SIAT4C=ST3をコードする遺伝子=ヒトシアル酸転移酵素IV(L23767)(図9A)、SIAT1=ST6をコードする遺伝子=ヒトシアル酸転移酵素I(NM_003032)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を詳細に記載する。
アルファ1-アンチトリプシン(AAT)は、活性化した好中球によって放出されるプロテアーゼの自然なインヒビターである。AATは、血しょう中に分泌されるが、その作用の一次的な部位は肺柔組織(実質)である。ヒト白血球エラスターゼ(HLE)は(また、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)として知られ、正常な炎症反応の一部として好中球のアズール性(アズール親和性)の顆粒から放出されるセリンプロテアーゼである。正常なホメオスタシス(恒常性)状況の下で、AATはヒト白血球エラスターゼ(HLE)によるタンパク質分解の重要なレギュレーター(制御因子)としてはたらき、それによって肺の肺胞マトリックスの損害が防止される。HLEの他に、AATも好中球によって肺へ放出される2つの他のプロテアーゼ、すなわちカテプシンG(catG)およびプロテアーゼ3(Pr3)を抑制する。
【0020】
血しょうから導かれるAAT生成物が開発され、そして目下のところ、たとえば、プロラスチン(商標)、(タレクレス)、アララスト(商標)(バクスター)およびゼマイラ(商標)(ZLB)のように、気腫に関連したAAT-不足になやむ(すなわち、低いか、またはゼロの血しょうAATレベルを有する)患者の処置のために用いられる。この生成物の高い量(およそ60mg/kg/週)が概して患者毎に必要である。気腫以外に、AATはまた好中球媒介損傷による炎症性の病気の(潜在的な)治療でもある。
【0021】
AATの、たとえばE.coli(エシェリキア・コリ)における組換え生産は、大部分の組換えプラットホームでの低い発現によって妨げられた〔Karnaukhova(カルナウホワ)ら、2006年〕。組換えAATはトランスジェニック(形質転換)システムにおいて高レベルで生産されたが、その臨床開発はサブオプティマル(最適状態に及ばない)薬物動態(PK)および非ヒト汚染物質による安全性の問題から中止された〔Spencer(スペンサー)、2005年〕。
【0022】
本発明は今回、適切な薬物動態学的特性を有する組換えヒトα1-アンチトリプシン(rhAAT)を提供し、そしてそれをたとえば、PER.C6細胞において、大量に生産することができる。本発明の組換えAATは、ヒト好中球エラスターゼの抑制に基づく色を生成する(色素形成)アッセイ(分析評価)によって定められるように、機能的に活性であり、そして血しょうから導き出される、たとえばプロラスチン(商標)のようなAAT生成物と比較して、有望な薬物動態学的特性を有することが示された。
【0023】
このようにして、本発明はN結合グリカンを含むrhAATを提供し、それは、
(a)前記N結合グリカンの少なくとも10%がテトラアンテナリーグリカンであり、および
(b)前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度(Z/A)が少なくとも50%である。
【0024】
N結合グリカンはポリペプチドのアスパラギン残基に共有結合する糖鎖である〔Varki(バルキ)ら、1999年〕。N-グリコシル化のプロセスは、アスパラギン前駆体のドリコールオリゴ糖前駆体の付加から始まる。この前駆体は次に、高マンノースの、ハイブリッドの、または複雑なタイプのオリゴ糖に修飾される。複合タイプのN結合された糖において、双方のα3-およびα6-結合されたマンノース残基は、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基によって置換される。複合タイプのNグリカンは、アンテナと称される2〜5のGlcNAcを支える分枝(bearing branches)を含むことができる。宿主細胞上で、および宿主細胞が培養される状況に関して、複雑なタイプのN結合糖の最終的な構造は、広範囲にわたって変動し、それらが付着するタンパク質に依存することがある。GlcNAcを支える分枝は、いわゆるLacNAcまたはLacdiNAc構造を形成するガラクトース(Gal)またはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)で修飾することができる。また、GlcNAcを支える分枝は、いわゆるポリラクトサミン構造を形成するマルチ(複数)のLacNAc構造を含むことができる。終端(ターミナル)のガラクトースはα2,3-またはα2,6-結合シアル酸で修飾されうるが、その一方、終端のN-アセチル-ガラクトサミンはα2,6-結合シアル酸で修飾されうるだけである。終端のGalまたはGalNAcへのシアル酸の付加は、シアル酸転移酵素によって媒介される。おそらく、20よりも多くの異なるシアル酸転移酵素は、ヒトゲノムによってコードされる〔Harduin-Lepers(ハードイン-レパーズ)ら、2001年〕。それらは、基質特異性、組織分布および種々の生化学的パラメータ(媒介変数)において相違する。
【0025】
自然なAATは3つのグリコシル化部位を有する。このように、AATは、分枝が起こることがある3つのN結合グリカンを含む。これらのグリカンは、2、3または4つのいわゆる“アンテナ”または分枝を有することができる。驚くべきことに、本発明のrhAATの前記N結合グリカンの少なくとも10%、なるべくならおよそ10%からおよそ50%までが、テトラアンテナリーグリカンであることが示された。別の具体化では、前記N結合グリカンの少なくとも20%はテトラアンテナリーグリカンであり、なるべくなら、前記N結合グリカンのおよそ20から40%までは、テトラアンテナリーグリカンである。本発明によれば、驚くべきことに、グリコシル化プロファイル、たとえば、アンテナリーに関して、ならびに薬物動態学的特性、たとえば、本発明のrhAATの平均滞留時間が、プロラスチン(商標)のような血しょう由来AATと相違することが示された。
【0026】
組換えタンパク質上のグリカンの十分なシアリル化が最適な薬物動態学的特性のために重要であるので、本発明のrhAATは、rhAATの高度にシアリル化されたアイソフォームを達成するためにシアル酸転移酵素と組み合わせてPER.C6細胞で発現される。PER.C6細胞はこのようにして、α2,3シアル酸転移酵素(PER.C6-ST3)またはα2,6シアル酸転移酵素(PER.C6-ST6)のいずれかで、コ(同時)トランスフェクションされた。本発明の好ましい具体化において、前記N結合グリカン上の合計のシアリル化の少なくとも50%はα-2,3-シアリル化である。たとえば、前記N結合グリカン上の合計シアリル化の少なくとも50、70または80%はα-2,3-シアリル化である。さらにもう一つの具体化において、前記N結合グリカン上の合計シアリル化の少なくとも90%はα-2,3-シアリル化である。驚くべきことには、これらの具体化において、本発明のrhAATは、プロラスチン(商標)のような血しょう由来のAATと比べ、異なる薬物動態学的特性、特に長期の平均滞留時間を有することが示された。シアリル化によって、AATの糖質(炭水化物)構造上に存在するシアル酸残基(sialic residue)の量が意味され、α-2,3-シアリル化は、2,3位置でのシアリル化、すなわち、α2,3-結合シアル酸(またこの技術においてよく知られる)を意味し、およびα-2,6-シアリル化は2,6位置でのシアリル化、すなわち、あるもの、またはα2,6-結合シアル酸(またこの技術で知られる)を意味する。“前記N結合グリカン上の合計シアリル化の少なくとも50%がα-2,3-シアリル化である”ことで、このように、rhAATにおいて存在するシアル酸残基の総数の少なくとも50%が2,3位置においてシアリル化されることが意味される。
【0027】
本発明によれば、ラットでのPK調査において、PER.C6-ST3(rhAAT-ST3)によって生産されるrhAATおよびPER.C6-ST6(rhAAT-ST6)によって生産されるrhAATの双方の平均滞留時間(MRT)が血しょう由来AAT〔プロラスチン(商標)〕のものと著しく異なることが示された。このように、rhAAT-ST3のラットのMRTがおよそ18-23時間に変動することが示された一方、プロラスチン(商標)のラットでのMRTはおよそ11-12時間である。長期のMRTを有するrhAATを用いることは、たとえば、受動体(患者)につき必要な投薬量を減らすことができる。対照的に、rhAAT-ST6のラットにおけるMRTは、プロラスチン(商標)のそれと比較して減らされる(およそ3-4時間)。本発明のrhAAT-ST6の使用は、シアル酸の“より一層自然な”2,6-連結(リンケージ)のために有利である場合があり、それは、プロラスチン(商標)のような血しょう由来AAT上でのシアル酸連結に対応する。さらに、減少したMRTが有益であることができ、その場合に、rhAAT-ST6の使用は有利でありうる。
【0028】
上記のように、組換えタンパク質上のグリカンのシアリル化の程度は、最適薬物動態学的特性のために重要である。したがって、好ましい具体化において、本発明のrhAATの前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの全体的な程度は(Z/A比によって算出され)、少なくとも70%である。より一層好ましくは、前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度(Z/A)は少なくとも80%であり、さらにより一層好ましくは、前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度(Z/A)は少なくとも90%である。
【0029】
さらなる具体化において、テトラアンテナリーである前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度は、少なくとも20%、たとえば、20%および65%の間である。前記テトラアンテナリーN-グリカン上でのシアリル化の比較的低い程度は、血しょう由来AATと比較して、減少したMRTを有するrhAAT生成物を生じさせうる。別の具体化において、前記テトラアンテナリーのN結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度は、少なくとも50%であり、たとえば50%および97%の間であり、好ましくは少なくとも60%であり、より一層好ましくは70および95%の間である。この具体化におけるシアリル化のより一層高いレベルは、血しょう由来AATと比較して、長期のMRTに寄与することができる。
【0030】
さらに、本発明は、調製物および製薬上の組成物を提供し、それは、前記rhAATおよび随意に1またはそれよりも多くの薬学的に許容される賦形剤を含む。“薬学的に許容される賦形剤”により、適切な、または便利な剤形を調製するための活性分子(薬物、薬剤、またはタンパク質のようなもの)と組み合わせられる任意の不活性な物質をも意味される。“薬学的に許容される賦形剤”は、採用される投薬量および濃度でレシピエント(受けて)に対し無毒であり、そして活性分子を含む調剤物(製剤)の他の原材料に適合性の賦形剤である。
【0031】
本発明の製薬上の組成物は、投与の任意のルートのために種々の組成物に調剤することができ、熟練した者にはよく知られている。製薬上の組成物の投与の最適なルートの選択は、たとえば、組成物内の活性分子の物理化学的な特性、臨床状況の緊急性および望ましい治療上の効果に対しての活性分子の血しょう濃度の関係を含むいくつかの要因によって影響される。本発明での調製物および製薬上の組成物は好ましくは、静脈内投与またはエアゾール投与のために調製される。rhAATの薬学的に適切な調剤物は、この技術で熟練する者に知られている方法によって調製することができる〔Reminton(レミントン)のPharmaceutical Sciences(ファーマシューティカル・サイエンシーズ)、第18版、A.R. Gennaro(ジェンナーロ)編、Mack Publishing Company(マック出版社)(1990年);Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(ペプチドおよびタンパク質の製薬上の調剤物の開発)、S. Frokjaer(フロークヤー)およびL. Hovgaard(ホーブガード)編、Taylor & Francis(テイラー・アンド・フランシス)(2000年);およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(製薬上の賦形剤のハンドブック)、第3版、A. Kibbe(キービ)編、Pharmaceutical Press(ファーマシューティカル・プレス社)(2000年)参照〕。
【0032】
典型的に、製薬上の組成物は、製造および貯蔵の状況の下で殺菌された、そして安定でなければならない。本発明のrhAATを含む調製物および/または製薬上の組成物は、配送の前、またはその時に、適切な薬学的に許容できる賦形剤における再構成のための粉体の形態であることができる。無菌の注入(注射)可能な溶液の調製のための殺菌された粉体の場合に、調製の好ましい方法は、活性な原材料プラス任意の追加の望ましい原材料の粉体を予め滅菌したフィルタ処理したその溶液から生じさせる減圧乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0033】
あるいはまた、本発明のrhAATは溶液であることができ、そして適切な薬学的に許容できる賦形剤は、単位投薬量の注射可能な形態を提供するために配送の前、またはその時に添加および/または混合することができる。
【0034】
rhAAT、前記rhAATを含む調製物または製薬上の組成物は、薬として用いることができる。rhAAT、その調製物および製薬上の組成物は、AATの投与が有益であると証明される病気および/または障害の防止および/または処置において好適に用いることができる。それらは、とりわけ、AAT欠乏(不足)に関連する気腫の、その防止および/または処置または組合せで用いることができる。さらに、本発明のrhAAT、その調製物または製薬上の組成物は、喫煙関連の気腫、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の防止および/または処置にて用いることができる。AATが抗炎症性および抗(アンチ)アポトーシスの効果を有することが説明されているので、本発明のrhAAT、その調製物または製薬上の組成物はまた、抗炎症剤としても用いることができる。〔Lewis(ルイス)ら、2008年;Koulmanda(クルマンダ)ら、2008年〕
【0035】
さらなる具体化では、本発明は、組換えヒトα1-アンチトリプシンを生産するための方法を提供し、それには、ヒトα1-アンチトリプシンをコード化する核酸を有するPER.C6細胞を、前記PER.C6細胞が前記核酸を発現可能な形態で抱える(harbors)ように提供すること、および前記組換えヒトα1-アンチトリプシンの生産を促す状況の下で前記PER.C6細胞を培養することのステップが含まれ、そこでは、前記細胞は、さらにシアル酸転移酵素、なるべくなら、アルファ-2,6-シアル酸転移酵素またはアルファ-2,3-シアル酸転移酵素を、異種プロモーターの制御下でコード化する核酸配列を含む。具体化において、シアル酸転移酵素はヒトシアル酸転移酵素である。しかし、本発明のrhAATは、他の哺乳類の細胞、たとえば293細胞のように、随意にシアル酸転移酵素を共(同時)発現するものでも生産することができる。
【0036】
具体化において、本発明は、組換えヒトα1-アンチトリプシンを生産するための方法を提供し、それには、ヒトα1-アンチトリプシンをコード化する核酸を有するPER.C6細胞を、前記PER.C6細胞が発現可能な形式(フォーマット)において前記核酸を抱えるように提供することであり、そこでは、前記細胞は、さらにシアル酸転移酵素を、なるべくなら、アルファ-2,6-シアル酸転移酵素またはアルファ-2,3-シアル酸転移酵素を、異種プロモーターの制御下でコード化する核酸配列を含んでいること、前記PER.C6細胞を、無血清媒体において培養すること、および前期細胞において前記ヒトα1-アンチトリプシンの発現を許すこと、発現されたヒトα1-アンチトリプシンを収集すること、および随意に前記ヒトα1-アンチトリプシンを精製することのステップが含まれる。
【0037】
興味のあるタンパク質のための生産プラットホームとしてのPER.C6細胞の使用は、国際公開第00/63403号において記載され、ここにその開示を参照することによって組み込む。国際公開00/63403号において示されるように、PER.C6は組換えタンパク質の生産のために適当に用いることができる。細胞培養を通して組換えタンパク質の大規模な(連続的な)生産を達成するために、足場の必要性を伴わないで増殖することができる細胞をもつのが好ましい。本発明での細胞はその能力を有する。この発明に従うPER.C6細胞は、ECACC 番号第96022940号の下に2006年2月29日付けにthe Center for Applied Microbiology and Research & European Collection of Applied Microbiology(ザ・センター・フォー・アプライド・ミクロバイオロジー・アンド・リサーチ・アンド・ヨーロピアン・コレクション・オブ・セル・カルチャー)(ECACC)に寄託されたような細胞の上流または下流の継代からの細胞または上流または下流の継代の子孫である(米国特許第5,994,128号明細書参照)。産業上のプロセスのためのPER.C6細胞の使用は、広範囲にわたって記述され、たとえば、Nichols(ニコルズ)ら、2002年においてであり、およびより一層具体的には、組換えタンパク質生産について、たとえば、Yallop(ヤロップ)ら、2005aおよび2005bにある。
【0038】
本発明に従う細胞、特にPER.C6細胞は、それらが動物またはヒトから導き出される血清または動物またはヒトから導き出される血清成分の不存在下において培養することができるという追加の利益を有する。したがって、分離や単離はより一層簡単で、その一方、安全性は、その培養において追加のヒトまたは動物のタンパク質の不存在のために高められ、そしてその系(システム)は非常に信頼性がある(合成媒体は再現性において最良である)。さらにまた、アデノウイルスの初期領域(Early region)1A(“E1A”)の存在は、この特定の遺伝子を欠く(ヒト)細胞系と比較して別のレベルの利点を加える。転写アクチベーターとしてのE1Aは、CMVの前初期遺伝子(Immediate Early gene)のCMVエンハンサー/プロモーターからの転写を高めることが知られている〔Olive(オリーブ)ら、1990年、Gorman(ゴーマン)ら、1989年〕。生産される組換えタンパク質がCMVエンハンサー/プロモーターのコントロール下にあるとき、発現レベルは細胞において増加し、そしてE1Aが不足する細胞ではそうでない。
【0039】
一般に、宿主細胞で、PER.C6細胞のようなものでは、rhAATのような組換えタンパク質の生産は、宿主細胞への発現可能な形式での核酸の導入、核酸の発現を促す状況下に細胞を培養すること、および前記細胞において前記核酸の発現を許すことを含む。あるいはまた、望ましい宿主細胞において自然に発現されるが、十分なレベルでないタンパク質は、望ましい遺伝子との動作可能な関連での強いプロモーターのような適切な調節配列を導入することによって増加したレベルで発現することができる(たとえば国際公開99/05268号参照、そこでは内在性EPO遺伝子がヒト細胞において遺伝子の上流の強いプロモーターの導入によって過剰に発現される)。
【0040】
AATを発現可能な形式においてコード化する核酸は、発現カセットの形態であることができ、そして通常、核酸の発現をもたらすことが可能な配列、たとえば、エンハンサー(群)、プロモーター、ポリアデニル化シグナル(信号)、およびその同類のようなものを必要とする。いくつかのプロモーターは、組換え核酸の発現のために用いることができ、そしてこれらはウイルスの、哺乳類の、合成によるプロモーター、およびその同類のものを含むことができる。一定の具体化において、興味ある核酸の発現を駆動させるプロモーターはCMVの前初期のプロモーターであり、例として、CMV前初期遺伝子エンハンサー/プロモーターからのnt.-735〜+95を含み、それはこのプロモーターがアデノウイルスのE1Aを発現する細胞で高い発現レベルを与えることが示されたからである(たとえば、国際公開03/051927号参照)。興味ある核酸は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、これらの組合せ、などであることができる。
【0041】
細胞培養媒体は種々のベンダーから入手可能で、そして無血清培養媒体が今日では細胞培養のために用いられることが多く、それはそれらが血清を含有する媒体よりも確定したものだからである。本発明での細胞は、血清を含有する媒体において、ならびに無血清媒体において良好に増殖する。本発明での細胞は、概して血清を含有する媒体において、付着性で増殖するが、無血清培養培地において高い細胞密度(10×106細胞/mlおよびそれよりも高く)で懸濁状態において増殖させることに非常に有能であり、それはそれらが付着する表面を必要としないが、大部分の時間の間、互いから、そして培養容器の壁から比較的自由なままであることを意味する。本発明での細胞を高密度に培養するための、および/またはこれらの細胞から非常に高い生産物収率を得るためのプロセスは説明されている(国際公開第2004/099396号)。
【0042】
細胞において生産される組換えタンパク質のグリコシル化を変えるための遺伝子工学の概念は、十分に確立されおり、そして例として、たとえば、米国特許出願公開第2005/0164386号明細書において詳述される。この目的のために、望ましいグリコシル化酵素を発現可能なフォーマットにおいてコード化する核酸は、細胞中にあるか、または本発明に従ってそれに導入され、そして興味あるタンパク質が発現されるとき、望ましいグリコシル化酵素は本発明に従う細胞の培養の間に発現される。これは、組換えグリコシル化酵素が細胞において発現されないとき、その状況と比較して興味あるタンパク質の変えられたグリコシル化パターンをもたらす。本発明では、グリコシル化酵素はシアル酸転移酵素であり、より一層好ましくはアルファ-2,3-シアル酸転移酵素および/またはアルファ-2,6-シアル酸転移酵素である。好ましくは、コード化されたシアル酸転移酵素は、哺乳類のシアル酸転移酵素であり、より一層好ましくは、ヒトシアル酸転移酵素である。なるべくなら、シアル酸転移酵素をコード化する核酸は異種プロモーターの制御下にあり、それは活性であるか、または本発明での細胞において調節される可能性を有しなければならない。なるべくなら、シアル酸転移酵素をコード化する核酸は、安定した継承(遺伝)を確実にするために細胞のゲノム中に統合され、そして細胞のその後の世代におけるシアル酸転移酵素の安定した発現を提供する。
【0043】
本発明はさらに、組換えヒトAATを提供し、本発明に従う方法によって入手可能である。本発明に従い、rhAATは、分離された自然なヒト対応物タンパク質と異なるヒトのグリコシル化パターンを有する。本発明は、特に、N結合グリカンを含むrhAATを提供し、そこでは、前記N結合グリカンの少なくとも10%はテトラアンテナリーグリカンである。加えて、本発明に従い得られうるrhAATは驚くべき薬物動態学的特性を有する。
【0044】
本発明に従う組換えヒトAATには、全長ヒトAATが含まれるが、また例は、タンパク質のN末端で、1またはそれよりも多くのアミノ酸欠失を有するヒトAATのフラグメント(断片)のような、生物学的に活性なポリペプチド断片、ならびにヒトAATで、たとえば、1またはそれよりも多くのアミノ酸置換(例は、保存的置換)、1またはそれよりも多くのアミノ酸の欠失または付加で、それらはそのタンパク質の機能的な活性をほとんど変化させないものを有するAATのような、ヒトAATの生物学的に活性な変異体を包含することができる。具体化において、本発明のrhAATは、配列番号1としてここに提供するアミノ酸配列を含む。若干の具体化において、AATの変異体のアミノ酸配列は、配列番号1に対し少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相同である。
本発明をさらに、以下の非制限的な例によって例示する。
【実施例】
【0045】
例1
細胞系の生成および比生産性
【0046】
ヒトAATを発現し、そしてα2,6-シアル酸転移酵素(SIAT1;NM_003032)またはα2,3-シアル酸転移酵素(SIAT4C;L23767)のいずれかを共発現する七百のPER.C6細胞株(PER.C6-AAT-ST3/PER.C6-AAT.ST6)を、無血清条件下に、国際公開第2006/070011号に記載するように発生させた。AAT-ST3(27の細胞株)またはAAT-ST6(20の細胞株)のいずれかを生産する四十七の無血清PER.C6細胞株を、トランスフェクションツール(形質移入ツール)としてヌクレオフェクション(nucleofection)を用いた独立した細胞系生成プログラムからELISA〔AAT Elisa Kit(エライザキット)、US Biologicals(ユーエス・バイオロジカルズ社)〕によって定められる最高収率に基づいて選んだ。発現プラスミドは、ヒトのAAT(配列番号:2)のためのコード配列およびヒトのST3GalIVのためのコード配列を含み、それらの双方ともは、PER.C6細胞での遺伝子発現の高水準を達成するために修飾されたサイトメガロウイルスプロモーターによって駆動された〔Yallop(ヤロップ)ら、2005年〕。AAT発現ベクター(pAATopt-ST3およびpAATopt-ST6)のプラスミドマップを図9に示す。
【0047】
細胞株の生産性は、1細胞につき1日あたり(pcd)8-22ピコグラム(PER.C6-AAT-ST3)および7-19pcd(PER.C6-AAT-ST6)の間を変動した(図1ならびに表1および2を参照)。細胞株はProper(プロパー)-1媒体中〔Lonza(ロンザ)〕(6つのバイアル、3-5×106細胞/ml)で低温保存し、すべての受け入れ基準を満たした〔生存率>80%、蘇生後(post resuscitation)良好な増殖の2回の継代〕。バッチ培養物を生じさせ(プロパー-1媒体中で)、それを生化学的分析のために用いた(例2参照)。
例2
生化学的分析
【0048】
PER.C6-rAATの完全性
47のバッチ培養物の上澄みを、コロイド青で染色するSDS-PAGE上で分析した。PER.C6-rAAT(未精製)試料の細胞培養物の収集は、SDS-PAGE上での主要なタンパク質バンドとしてAATを示した。さらにまた、ゲル類は材料の完全性を示す無傷のAATバンドを示した(図2に示す)。
【0049】
PER.C6-rAATの活性
最初に(色素形成活性のアッセイ代わりに)、活性についての徴候を、PER.C6-rAATのヒト好中球エラスターゼとの複合体の形成を分析することによって定めた。このために、PER.C6-rAAT試料の細胞培養収集物を、37°Cで30分間、0、0.1、0.2および0.4μgのエラスターゼと共にインキュベーションし、そして次いで4-12%のBIS-トリスSDS-PAGE上に適用し、そしてコロイド青で染色した)。試験したすべてのPER.C6-rAAT試料はエラスターゼと複合体を形成し(データは示してない)、調製物の活性が指し示された。さらなる活性テストは、参照としてプロラスチン(商標)を用いるヒト好中球エラスターゼの抑制に基づく色素形成アッセイで行った〔出典はBruin(ブルイン)ら、2005年から〕)。試験されたすべてのPER.C6-rAAT試料は、一つのものを除き(PER.C6-rAAT-ST3-234c)、プロラスチン(商標)と少なくとも同じくらい活性であった(>90%)(表1および2)。
【0050】
PER.C6-rAATのグリカン分析
グリカンが、最適PKプロファイルのために必要とされる、シアル酸によるキャッピングの比較的高い程度を有するPER.C6-rAAT試料についてスクリーニング(選別)するために、レクチンアッセイを、Erythrina cristagalli(エリスリナ・クリスタガリ)のレクチン(ECL)を用いて、露出したガラクトースの検出用に適用した(用いたアッセイの図式的概観について図3を参照)。試験した47の試料からの15は、ECLによるOD405でのシグナル、>ブランク(空白)+ 0.2を示し、これらのAAT試料のグリカン上での終端のガラクトースの露出の比較的高い程度が指し示された。これらの試料の少数(2、3)について、シアル酸によってグリカンがキャッピングされる低い程度を、HPLCに基づく方法を用いる更なるグリカン分析によって確かめた〔Hermentin(ハーメンチン)ら、1996年;Ggervais(ジェルベー)ら、2003年〕。したがって、OD405でのECLシグナル>ブランク+ 0.2を有するrhAAT試料は、更には拡張グリカン分析を受けず、そしてPK調査において試験されなかった。
【0051】
拡張グリカンプロファイリング方法を、図3に図式的に示し、そしてそれは酵素N-グリコシダーゼF(PNGaseF)によるAATからのN結合グリカンの放出に関わり、そしてグリカンが蛍光性2-アントラニル酸(2-aa)でラベルを付けられる。その後、グリカンは、それらの負電荷に従う陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)によってグループに分けられ、すなわちシアル酸の異なる数を有するグリカンの分離によって分けられる。このプロファイルから、Z数は、N結合グリカンの電荷(すなわちシアリル化)の程度を表し、それが定められる。
Zのための式:
Z =(Aアシアロx0)+(Aモノシアロx1)(Aジシアロx2)+(Aトリシアロx3)+(Aテトラシアロx4)〔A=エリア、Hermentin(ハーメンチン)ら、1996年〕。
【0052】
さらにまた、脱シアル化グリカンを、順相クロマトグラフィー(NP)によってそれらのサイズに従うグループにまで、すなわち分枝性(branching)の程度(アンテナリティー)の異なるものを有するグリカンの分離により分けられる。このプロファイルから、A数は、N結合グリカンの分枝性の程度を表し、それが定められる。
Aのための式:
A=(Aジアンテナリーx2)+(Aトリアンテナリーx3)+(Aテトラアンテナリーx4)。
【0053】
最後に、Z/A比率を算出することによって、糖タンパク質(グリコプロテイン)のN結合グリカンのシアル酸によるキャッピングの程度(パーセンテージ)が得られる(ジェルベーら、2003年)。
【0054】
PER.C6-rAATのグリカンプロファイルを表1および2に示す。PER.C6-rAAT試料のの全体的なプロファイル(表1および2)は、12-54%のジアンテナ、13-39%のトリアンテナおよび22-48%のテトラアンテナおよび0-55%のジシアロ、0-30%のトリシアロ、0-29%のテトラシアロを示す。PER.C6-rAATのシアル酸によるグリカンのキャッピングの程度は0から92%にまで及び、シアル酸によるこのキャッピングの程度はPER.C6-rAAT細胞株の比生産性と相関しない(スピアマンのr=-0.024、p=0.893)(表1および2ならびに図4)。
【0055】
グリカンで予想されるように、ECL陽性rAATは、より一層低いレベルの電荷(シアリル化)(Z数範囲:0-124)をECL陰性PER.C6-rAAT(Z数範囲:151-253)に対して含む〔Mann-Whitney test(マン-ホイットニーのテスト)によって試験されるように、違いは有意である、p<0.001〕(図5参照)。ECL陽性PER.C6-rAATのグリカンは、より一層高いレベルのアンテナリティ(A数範囲:299-322)を、ECL陰性PER.C6-rAAT(A数範囲:266-307)に対して含む(マン-ホイットニーのテストによって試験されるように、違いは有意である、p<0.001)(図5参照)。さらにまた、PER.C6-rAAT-ST6(ECL陰性)のテトラアンテナリーグリカン上のシアリル化のより一層低い程度があり、PER.C6-rAAT-ST3(ECL陰性)に対して6から62%までに及び、35から106%にまで及ぶが(マン-ホイットニーのテストによって試験されるように、違いは有意である、p<0.001)、その一方で、これがシアリル化の全体的な程度のための場合ではない(表1および2、図6)。より一層高い枝分かれグリカンについてのST6のより一層低い優先度(preference)〔Joziasse(ジョジアセ)ら、1987年〕は、PER.C6-rAAT-ST6対PER.C6-rAAT-ST3のテトラアンテナリーグリカン上でのシアリル化のより一層低い程度の原因でありうる。
【0056】
プロラスチン(商標)のプロファイルが以下の、80%のジアンテナ、18%のトリアンテナおよび2%のテトラアンテナ(表1および2)であるので、グリカンプロファイルは、血しょう由来AAT〔プロラスチン(商標)〕に比べてPER.C6-rAATのグリカン上での分枝性のより一層高い程度についての傾向を指し示す。この現象はまた、A数(図5ならびに表1および2)の比較からも明白である。プロラスチン(商標)のシアル酸によるグリカンのキャッピングの程度は、96%である(表1および2)。
例3
ラットモデルでのPER.C6-rAATの薬物動態
【0057】
ラットモデルを、PER.C6-rAATの薬物動態(PK)を定めるために確立した。このモデルは、約40-100μg/mLの濃度での精製してないPER.C6のならし(馴化)培地(コンディションドメディウム)(CM)に存在するAATを検出することができるべきであった。
【0058】
四つの実験を実行した。すなわち、モデルをセットアップするための最初の二つ、大部分の最適なPKの特徴を有するrAATを生産するPER.C6-rAAT細胞株を選ぶための第二、第三および第四の実験である。これらの調査において、ヒトpdAAT〔プロラスチン(商標)〕を、モデルを確立するために、および参照として用いた。実験的な手順は以下のようである。すなわち、ラット〔雄性ウィスター(Wistar)、8週齢〕を、AAT試験試料(用量容量2ml/kg、用量範囲50-200μg/kg、グループにつきn=3ラット)により尾静脈において静脈内(i.v.)ドーズ(投薬)した。血液を、尾端から、プレドーズ、そして用量投与の後の種々の時点でサンプリングした。血液を、K2EDTAマイクロ(コル)ベット中に集め、そして血しょうを調製した。血しょう試料における残余AAT濃度を次に、ELISA〔AAT Elisa Kit(AATエライザ・キット)、Affinity Biologicals(アフィニティバイオロジカルズ社)〕によって測定した。得られたデータを2-コンパートメントモデルでラットにつきモデル化し、そしてその後PKパラメーターを定めた。
【0059】
実験1からのデータによって示されるように(図7参照)、モデルは精製されてない試料においてPKプロファイルを定めるために適切であることが見出され、それは血しょう濃度対PER.C6-CMにおけるスパイクの付いた(添加された)プロラスチン(商標)および緩衝剤コントロールの時間曲線〔PBS、0.01%のw/vのTween(トゥイーン)-80(PT)(用量200μg/kg)が類似するからである。似た結果は、100μg/kgのプロラスチン(商標)の用量で見出された(データは示してない)。図7において、また増加した反応が50-200μg/kgからのCMでスパイクの付いたプロラクチン(商標)の用量で観察されることも示される。データから、プロラスチン(商標)が11-12時間の平均滞留時間(MRT)を有することが算出された。また、PER.C6-rAAT試料が検出され、それと共に、PER.C6-rAAT-ST3-202cが、プロラスチン(商標)と比べてより一層遅いクリアランス(MRT〜20.5時間)を示し、およびPER.C6-rAAT-ST6-530が、プロラスチン(商標)と比べてより一層速いクリアランス(MRT〜3.6時間)を示す(表1および2)。したがって、これらの観察結果に基づき、モデルは精製されてないPER.C6-rAAT試料用に用いることができたと結論され、それらはすべての試料について100μg/kgの用量レベルでの実験2-4において試験された。図8において、プロラスチン(商標)に比較したPER.C6-rAAT-ST3およびPER.C6-rAAT-ST6についての代表的なPKプロファイルを示す。
【0060】
表1および2における最後の欄はPK実験において得られるMRT値を示す。MRTに関する試料および試料のグループの間の違いに関する統計的テストを、対数変換値に関するANOVA(分散分析)によって行った。PER.C6-rAAT-ST3および試験されたPER.C6-rAAT-ST6調製物の双方のMRTsは、プロラスチン(商標)のそれと著しく異なった。試験された10のPER.C6-rAAT-ST3調製物中の8つについてのMRTは、プロラスチン(商標)のそれよりも著しく高く、そして18-23時間に及んだ。これらの8つのPER.C6-rAAT-ST3調製物の間で、MRTにおける違いは重要でなかった。
【0061】
PER.C6-rAAT-ST3-053bおよび-539のMRTsは、プロラスチン(商標)のそれよりも著しく低かった。PER.C6-rAAT-ST3-0539について、これは、アシアロフェチュインでの同時注射によってアシアロ糖タンパク質受容体をブロックする間に、最初の時間におけるこの調製物のPKプロファイルのレスキュー(救出)によって確かめられるように、シアリル化の比較的低い程度(49%)による(データは示していない)。PER.C6-rAAT-ST3-053bについてのグリカンプロファイルは不確定であった〔明らかなピーク割当の可能性はない(no clear peak assignment possible)〕が、しかしながら、またこの場合、アンダーシアリル化がたぶん低いMRTの原因である。
【0062】
試験したすべてPER.C6-rAAT-ST6調製物について、MRTは、3.4-3.9時間から変動するプロラスチン(商標)のそれよりも著しく低かった。このことは、PER.C6-rAAT-ST6上でのテトラアンテナリーグリカンのシアリル化の相対的な低い程度(6から62%にまで及ぶ)によって、および/またはα2,3シアル酸付加AAT対α2,6シアル酸付加AATについてのクリアランスの潜在的に異なる機構によって説明することができる。
【0063】
結論
本発明によれば、PER.C6細胞系が生み出され、それは、高収率(最高で22pcd)を有し、そして受入れ可能な品質を有するヒトAATを生成し、すなわち、調製物は生体外(試験管内)のアッセイにおいて活性であった。驚くべきことに、そして興味深いことに、有望なPKプロファイルがラットモデルで実証された。PER.C6細胞は、このようにして、とりわけAAT-不足に関連した気腫(肺気腫)における使用のための、または好中球媒介組織損傷を伴う他の炎症性の病気での使用のための、ヒト組換えAATの生産のために適切なプラットホームを形成する。本発明のrhAATは、しかしまた、2,3-または2,6-シアル酸転移酵素を共発現する他の哺乳類の細胞タイプでも適切に生産することができる。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
配列番号1
AATのアミノ酸配列
Mpssvswgilllaglcclvpvslaedpqgdaaqktdtshhdqdhptfnkitpnlaefafslyrqlahqsnstniffspvsiatafamlslgtkadthdeileglnfnlteipeaqihegfqellrtlnqpdsqlqlttgnglflseglklvdkfledvkklyhseaftvnfgdteeakkqindyvekgtqgkivdlvkeldrdtvfalvnyiffkgkwerpfevkdteeedfhvdqvttvkvpmmkrlgmfniqhckklsswvllmkylgnataifflpdegklqhlenelthdiitkflenedrrsaslhlpklsitgtydlksvlgqlgitkvfsngadlsgvteeaplklskavhkavltidekgteaagamfleaipmsippevkfnkpfvflmieqntksplfmgkvvnptqk*
【0067】
配列番号2
AATの最適化CDS(NM_000295に基づく)
atgcccagcagcgtgagctggggcatcctgctgctggccggcctgtgctgcctggtgcccgtgagcctggccgaggacccccagggcgacgccgcccagaaaaccgacaccagccaccacgaccaggaccaccccaccttcaacaagatcacccccaacctggccgagttcgccttcagcctgtaccggcagctggcccaccagagcaacagcaccaacatctttttcagccccgtgagcatcgccaccgccttcgccatgctgtccctgggcaccaaggccgacacccacgacgagatcctggaaggcctgaacttcaacctgaccgagatccccgaggcccagatccacgagggcttccaggaactgctgcggaccctgaaccagcccgacagccagctccagctcaccaccggcaacggcctgtttctgagcgagggcctgaaactggtggacaagtttctcgaagatgtgaagaagctgtaccacagcgaggccttcaccgtgaacttcggcgacaccgaggaagccaagaagcagatcaacgactacgtggagaagggcacccagggcaagatcgtggacctggtgaaagagctggaccgggacaccgtgttcgccctggtgaactacatcttcttcaagggcaagtgggagcggcctttcgaggtgaaggataccgaggaagaggacttccacgtggaccaggtgaccaccgtgaaggtgcccatgatgaagcggctgggcatgttcaacatccagcactgcaagaagctgtccagctgggtcctgctgatgaagtacctgggcaacgccaccgccatcttttttctgcccgacgagggcaagctgcagcacctggaaaacgagctgacccacgacatcatcaccaagtttctggaaaatgaggaccggcggagcgccagcctgcacctgcccaagctgtccatcaccggcacctacgacctgaagagcgtgctgggccagctgggcatcaccaaggtgttcagcaacggcgccgacctgagcggcgtgaccgaagaggcccccctgaagctgtctaaggccgtgcacaaggccgtgctgaccatcgacgagaaggggaccgaagccgccggagccatgtttctggaagccatccccatgagcatcccccccgaggtgaagttcaacaagcccttcgtgttcctgatgatcgagcagaacaccaagagccccctgttcatgggcaaggtggtgaaccccacccaaaagtga
【0068】
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【受託番号】
【0069】
ECACC 96022940

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N結合グリカンを含み、
(a)前記N結合グリカンの少なくとも10%はテトラアンテナリーグリカンであり、および
(b)前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度(Z/A)は少なくとも50%である
ことを特徴とする、組換えヒトα1−アンチトリプシン(rhAAT)。
【請求項2】
前記N結合グリカンの少なくとも20%はテトラアンテナリーグリカンである、請求項1に従うrhAAT。
【請求項3】
前記N結合グリカンの約10%から50%まではテトラアンテナリーグリカンである、請求項1または2に従うrhAAT。
【請求項4】
前記N結合グリカンの約20%から40%まではテトラアンテナリーグリカンである、請求項1または2に従うrhAAT。
【請求項5】
前記N結合グリカン上での合計シアリル化の少なくとも50%はα−2,3−シアリル化である、請求項1〜4のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項6】
前記N結合グリカン上の合計シアリル化の少なくとも90%はα−2,3−シアリル化である、請求項5に従うrhAAT。
【請求項7】
前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度(Z/A比によって算出して)は、少なくとも70%、このましくは少なくとも80%、より一層このましくは少なくとも90%である、先行する請求項のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項8】
テトラアンテナリーである前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度は少なくとも20%である、先行する請求項のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項9】
テトラアンテナリーである前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度は少なくとも50%である、先行する請求項のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項10】
テトラアンテナリーである前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度は約50%から約97%である、請求項9に従うrhAAT。
【請求項11】
テトラアンテナリーである前記N結合グリカン上でのシアル酸によるキャッピングの程度は約70%から約95%である、先行する請求項のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項12】
薬としての使用のための、先行する請求項のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項13】
AAT(α1−アンチトリプシン)欠乏に関連する病気、および/または好中球媒介組織損傷に関わる病気の予防および/または処置での使用のための、先行する請求項のいずれか一項に従うrhAAT。
【請求項14】
組換えヒトα1−アンチトリプシン(rhAAT)を生産するための方法であって、ヒトα1−アンチトリプシンをコードする核酸を有するPER.C6細胞を、前記PER.C6細胞が前記核酸を発現可能な形態で抱えるように提供すること、および前記PER.C6細胞を、前記組換えヒトα1−アンチトリプシンの生産をもたらす条件下に培養することのステップを含み、前記PER.C6細胞はあるものを共発現するように修飾され、前記シアリルトレンスフェラーゼはα2,3−シアリルトランスフェラーゼまたはα2,6−シアリルトランスフェラーゼである、方法。
【請求項15】
請求項14に従う方法によって得られうるrhAAT。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−524747(P2012−524747A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506465(P2012−506465)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055177
【国際公開番号】WO2010/127939
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(301055549)クルセル ホランド ベー ヴェー (27)
【Fターム(参考)】