説明

組立体、画像記録装置

【課題】支軸にバネなどの伸縮性を有する部材が挿通された状態で、上記支軸をフレームに容易に組み付けることが可能な組立体及び画像記録装置を提供すること。
【解決手段】プリンタ部11は、複数のモータの駆動力の伝達経路を切り換える駆動切換機構70を備える。駆動切換機構は、ギヤユニット110と支持フレーム120とを備える。ギヤユニットは、支軸73に第1コイルバネ111や第2コイルバネ112、ストッパ150などと挿通した状態で支持フレームに装着される。支持フレームの第1側壁124に切欠部127とブリッジ137とが形成されている。ストッパには、挟持部153が設けられており、挟持部がブリッジと連結可能である。挟持部は、第1コイルバネを圧縮させたり、ストッパをブリッジに連結したりする際に、作業者によって摘まれる把手の役割を果たす。挟持部を摘んでストッパを操作することで、ストッパをブリッジに容易に連結できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支軸に伸縮部材などの複数の部材が挿通された状態でフレームに支持されてなる組立体及びこれを備えた画像記録装置に関し、特に、フレームに対する支軸の支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動源であるモータから各駆動部への駆動伝達を切り換える動力伝達切換手段を有するインクジェット方式の画像記録装置が知られている。この動力伝達切換手段は、プラテン上を移動する記録ユニットの位置に応じて、複数の駆動部へ択一的に動力伝達する(特許文献1参照)。これによって、1つの駆動源から、例えば、画像記録の際には記録用紙を搬送する搬送ローラなどに駆動伝達を行い、記録ヘッドのノズルに詰まった異物をパージする際にはメンテナンスユニットに駆動伝達を行うことができる。
【0003】
特許文献1によれば、1つのLFモータ(42)の駆動を、動力伝達切換手段(100)によって複数の作動部位へ動力伝達を行う。この動力伝達切換手段(100)は、1つの切換ギヤ(102)と、間欠給紙伝動ギヤ(113)、連続給紙伝動ギヤ(114)、下段給紙用伝動ギヤ(121)及びメンテナンス用伝動ギヤ(115)の4種類の伝動ギヤとを有する。切換ギヤ(102)は、レバー部(104a)が第1、第2、第3セット部(111,112,108)にそれぞれ位置決めされることにより、その位置に対応する種類の伝動ギヤと択一的に噛合して動力伝達する。レバー部(104a)は、作動モードに対応したキャリッジ(13)の主走査方向への移動によって、その位置が変更される。なお、かっこ内の参照符号は特許文献1に示されたものである。
【0004】
切換ギヤ(102)及びレバー部(104a)は、第1付勢バネ(106a)及び第2付勢バネ(106b)とともに支軸(103)に挿通されている。詳細には、切換ギヤ(102)及びレバー部(104a)が支軸(103)の中央に配置され、その両側に第1付勢バネ(106a)及び第2付勢バネ(106b)が配置されている(特許文献1の図15参照)。この支軸(103)は、所定のフレームに取り付けられる。支軸(103)の両端には段差が形成されており、支軸(103)の両端がフレームに形成された軸孔に挿入されると、上記段差が軸孔の周縁と係合する。これにより、支軸(103)が上記フレームに組み付けられる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−90761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、切換ギヤ(102)、レバー部(104a)、第1付勢バネ(106a)、及び第2付勢バネ(106b)が挿通された状態で支軸(103)をフレームに組み付ける作業は容易ではない。すなわち、支軸(103)をフレームに組み付けるには、切換ギヤ(102)及びレバー部(104a)を第1付勢バネ(106a)及び第2付勢バネ(106b)で挟むようにして支持軸(103)に挿通させ、第1付勢バネ(106a)及び第2付勢バネ(106b)を指で挟んで圧縮させつつ、支軸(103)をフレームに組み付ける必要がある。仮に、指の持つ位置がずれたり、バネを押さえつける力がバネの弾性力に負けたりすると、第1付勢バネ(106a)及び第2付勢バネ(106b)が飛び出すおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支軸にバネなどの伸縮性を有する部材が挿通された状態で、上記支軸をフレームに容易に組み付けることが可能な組立体及び画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の組立体は、フレームと、切欠部と、被連結部と、穴部と、支軸と、係合溝と、伸縮部材と、連結部材と、把手部とにより構成されている。フレームは、互いに対向する第1壁及び第2壁を有する。切欠部は、上記第1壁に設けられている。この切欠部は、第1壁の端辺から切り欠かれることにより形成される。被連結部は、上記第1壁に設けられており、上記切欠部の近傍に配置されている。穴部は、上記第2壁に設けられており、該第2壁の厚み方向に延びている。支軸は、上記第1壁及び上記第2壁によって支持され、第1端が上記穴部に挿入されている。係合溝は、上記支軸における上記第1端とは反対の第2端側の外周面に形成されている。この係合溝は、上記切欠部の縁部と係合される。伸縮部材は、圧縮された状態で上記支軸に挿通されている。連結部材は、上記伸縮部材よりも上記第2端側で上記支軸に挿通されており、上記被連結部と連結されている。把手部は、上記連結部材に設けられている。この把手部は、上記支軸に直交する方向へ突出されている。
【0009】
この組立体は、以下の要領で組み立てられる。まず、作業者は、上記軸の第1端が上記穴部に挿入された状態で上記軸に上記伸縮部材及び上記連結部材を順次挿通する。このとき、作業者は、把手部を持って連結部材を伸縮部材側へ押し付ける。これにより、伸縮部材を容易に圧縮することができ、更に圧縮状態を簡単に維持することができる。この状態で、作業者は把手部を持ちながら連結部材とともに軸の第2端を切欠部へ案内する。切欠部に係合溝が進入すると、係合溝と切欠部の縁部とが係合する。その後、把手部を操作して連結部材を被連結部材に連結する。これにより、組立体が組み立てられる。
【0010】
本発明の組立体には、連結部材に把手部が設けられている。そのため、作業者は、把手部を持って操作するだけで、伸縮部材を圧縮する工程から、圧縮状態に維持する工程、伸縮部材を圧縮状態に維持しつつ切欠部に係合溝を係合する工程、そして、連結部材を被連結部材に連結させる工程までの一連の作業を容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明の組立体によれば、フレームを撓ませることなく軸をフレームに組み付けることができるため、フレームに剛体を用いることができる。その結果、剛体のフレーム対する支軸の中心の位置精度が向上し、しかも、支軸に挿通される各部材の位置精度が向上する。
【0012】
(2) 上記被連結部は、上記切欠部を跨ぐブリッジ部を有する。上記把手部は、上記ブリッジ部を挟持して上記被連結部と連結する挟持部を有する。
【0013】
この構成によれば、切欠部がブリッジ部で補強されるため、フレームの剛性を高めることができる。また、把手部が挟持部を兼ねるため、連結部材の構成が簡素化される。
【0014】
(3) 上記支軸の第1端側に段差が設けられている。
【0015】
これにより、穴部に支軸の第1端を挿入させた際に、段差が穴部の縁に引っ掛かり、穴部に対して支軸を立てた状態に維持することができる。その結果、支軸に各部材を挿入し易くなる。
【0016】
(4) 上記切欠部は、上記第1壁の端辺に隣接する第1切り欠きと、当該切欠部に奥部に形成され上記第1切り欠きよりも幅狭な第2切り欠きとからなる。
【0017】
これにより、支軸の第2端を切欠部へ容易に案内することができる。
【0018】
(5) 本発明は、キャリッジと、第1切換ギヤと、第2切換ギヤと、複数の伝達ギヤと、位置決め部材と、伸縮部材と、支軸と、フレームと、切欠部と、被連結部と、穴部と、係合溝と、連結部材と、把手部とを具備する画像記録装置として捉えることもできる。キャリッジは、記録ヘッドを搭載して所定方向へ往復動される。第1切換ギヤは、第1駆動源からの駆動力に応じて回転駆動される。第2切換ギヤは、第2駆動源からの駆動力に応じて回転駆動される。伝達ギヤは、少なくとも上記第1切換ギヤ又は上記第2切換ギヤのいずれか一方と噛合可能に配置され、複数の駆動部それぞれに駆動力を伝達するものであり、複数設けられている。位置決め部材は、上記キャリッジの当接により当該キャリッジが往復動する所定方向へスライドして、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの位置を変更するように設けられ、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤを上記伝達ギヤの配置に対応した複数の駆動伝達位置のいずれかに選択的に位置決めするものである。伸縮部材は伸縮性を有し、上記キャリッジが往復動する所定方向に沿った一方向へ上記位置決め部材を弾性付勢する。支軸は、上記第1切換ギヤ、上記第2切換ギヤ、上記位置決め部材、及び上記伸縮部材に挿通され、これらの第1切換ギヤ、第2切換ギヤ、位置決め部材、及び伸縮部材を上記キャリッジが往復動する所定方向へスライド可能に支持する。フレームは、互いに対向する第1壁及び第2壁を有し、上記第1壁及び上記第2壁間で上記支軸を支持する。切欠部は、上記第1壁に設けられている。この切欠部は、第1壁の端辺から切り欠かれることにより形成される。被連結部は、上記第1壁に設けられており、上記切欠部の近傍に配置されている。穴部は、上記第2壁に設けられている。この穴部に支軸の第1端が挿入される。係合溝は、上記支軸の第2端側の外周面に形成されている。この係合溝は、上記切欠部の縁部と係合される。把手部は、上記連結部材に設けられている。この把手部は、上記支軸に直交する方向へ突出されている。
【0019】
このように構成された画像記録装置において、支軸をフレームに容易に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バネなどの伸縮性を有する部材が挿通された支軸をフレームに容易に組み付けることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0022】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかる複合機10の外観構成を示す図であり、正面側から見た斜視図である。図2は、複合機10の内部構成を示す縦断面図である。図3は、プリンタ部11の内部構成を示す図であり、背面側から見た斜視図である。図4は、図3における矢印105の方向からみたパージ機構55及びその周辺機構の構成を示す斜視図である。図5は、駆動伝達機構70の構成を示す斜視図である。図6は、駆動伝達機構70の分解図であり、上段には支持フレーム120の正面図が示されており、下段にはギヤユニット110の正面図が示されている。図7は、ギヤユニット110の分解図である。図8は、ストッパ150の構成を示す図であり、(A)から(F)には六面図が示されており、(G)には(A)における切断線VIIIG−VIIIGの断面図が示されている。図9は、支持フレーム120の構成を示す斜視図であり、(A)から(D)には、図6に示される正面姿勢から水平方向へ所定角度ずつ回転された各姿勢が順次示されている。図10は、支持フレーム120にギヤユニット110を組み付ける方法を説明するための図である。図11は、入力レバー74が第1駆動伝達位置に配置された状態を示す図である。図12は、入力レバー74が第2駆動伝達位置に配置された状態を示す図である。なお、図11及び図12には、説明の便宜上、支持フレーム120及びガイドレール43の図示が省略されている。
【0023】
[複合機10の概略構成]
図1及び図2に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12を一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明にかかる画像記録装置に相当する。なお、プリンタ部11以外の機能は任意であり、例えば、スキャナ部12がなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像記録装置が実施されてもよい。
【0024】
複合機10の下側にプリンタ部11が配置され、上側にスキャナ部12が配置されている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器と接続されて、外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙(シート状の被記録媒体)に画像や文字を記録する。スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナである。
【0025】
複合機10の外形は、高さ(矢印102)より横幅(矢印101)及び奥行き(矢印103)が大きい幅広薄型の概ね直方体である。プリンタ部11の正面に開口13が設けられている。開口13の内部側には、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が設けられている。給紙トレイ20に収容された記録用紙が、プリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21に排出される。
【0026】
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14において、プリンタ部11及びスキャナ部12に所望の動作をさせるための所定の入力が行われる。操作パネル14は、入力を行うための複数のボタンや、複合機10の状態やエラー表示などを行うためのディプレイを有する。なお、複合機10に外部情報機器が接続されていると、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどの通信ソフトを通じて送信される指示に基づいても、複合機10は動作する。
【0027】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、複合機10の最も底側に給紙トレイ20が設けられている。給紙トレイ20の上側に排紙トレイ21が設けられている。つまり、給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、上下二段に配置されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21の両者は、用紙搬送路23によって記録用紙が搬送可能に連続して接続されている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23によって下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24へ搬送され、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0028】
給紙トレイ20は上側が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙が積層状態で収容される。給紙トレイ20には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。
【0029】
排紙トレイ21は、トレイ形状であり、その上面に画像記録済みの記録用紙が排出される。排紙トレイ21は、奥行き方向(矢印103)において給紙トレイ20より装置正面側に配置されている。したがって、装置奥部側においては、給紙トレイ20の上側に排紙トレイ21は存在しない。
【0030】
給紙トレイ20の装置奥部側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、図示しないASF(Auto Sheet Feed)モータの駆動力(回転力)が、複数のギアが噛合されてなるギヤ列27によって駆動伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に回転可能に支持されている。給紙アーム26は、給紙ローラ25側を回動先端側として回動可能であり、この回動により、給紙ローラ25が給紙トレイ20に接離する方向へ上下動する。給紙アーム26は、給紙ローラ25の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、給紙トレイ20に収容された記録用紙の量に応じて上側へ移動する。これにより、給紙ローラ25が給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が用紙搬送路23へ送り出される。
【0031】
用紙搬送路23は、給紙トレイ20の装置奥部側から上方へ向かった後、装置正面側へ曲がって、複合機10の背面側から正面側へ延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。用紙搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、用紙搬送路23が湾曲している部分は、装置フレームなどに固定された外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって構成されている。
【0032】
用紙搬送路23に画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、記録ヘッド39を搭載して往復動するキャリッジ38(本発明のキャリッジの一例)を備えている。記録ヘッド39には、複合機10内に配置されたインクカートリッジからインクチューブ41(図3参照)を通じて各色のインクが供給される。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることによって、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。なお、画像記録ユニット24の詳細な構成については後述する。
【0033】
画像記録ユニット24より搬送方向の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。なお、図2においては、ピンチローラが他の部材に隠れて現れていないが、ピンチローラは搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60は、図示しないLF(Line Feed)モータの駆動力(回転力)が駆動伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。
【0034】
画像記録ユニット24より搬送方向の下流側には、一対の排紙ローラ62及び拍車が設けられている。なお、図2においては、拍車が他の部材に隠れて現れていないが、拍車は排紙ローラ62の上側に圧接状態で配置されている。排紙ローラ62は、搬送ローラ60と同様に、上記LFモータの駆動力が駆動伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。排紙ローラ62及び拍車は、画像記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。
【0035】
[画像記録ユニット24]
図3に示されるように、用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向に所定距離を隔てられて、一対のガイドレール43,44が記録用紙の搬送方向と直交する方向(矢印101の方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部11の筐体内に設けられて、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐように載置されて、ガイドレール43,44上を記録用紙の搬送方向と直交する方向にスライド可能である。
【0036】
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38における搬送方向上流側の端部がガイドレール43上に載置され、下流側の端部がガイドレール44上に載置されて、ガイドレール43,44の長手方向に沿ってキャリッジ38が摺動される。ガイドレール44における搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対などの狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能になる。
【0037】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ(不図示)と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のベルト49が張架されてなるものである。なお、図3において、駆動プーリはキャリッジ38によって隠されている。駆動プーリの軸にはCRモータ(不図示)から駆動力(回転力)が入力され、駆動プーリの回転によりベルト49が周運動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
【0038】
図3に示されるように、ガイドレール43には、レバーガイド91が設けられている。レバーガイド91は、ガイドレール43のパージ機構55側に形成された孔(不図示)に嵌め込まれてガイドレール43に固定されている。レバーガイド91の下方に駆動切換機構70が配置されている。レバーガイド91は、内側に所定形状のガイド孔95(図11参照)が形成された略平板状の部材である。ガイド孔95には、後述する入力レバー74の入力部77が挿入されて、ガイドレール43の上側へ突出される。ガイド孔95に挿入された入力部77は、外力が付与されなければ、図11に示されるように、ガイド孔95における装置内側の端部である第1駆動伝達位置に維持される。
【0039】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に固着されている。したがって、CRモータによるベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)を所定方向として往復動される。
【0040】
図3に示されるように、キャリッジ38の搬送方向上流端には、搬送方向上流側へ水平方向に突出するガイド片92が設けられている。ガイド片92はキャリッジ38とともに往復動される。キャリッジ38の移動に伴って、ガイド片92がガイド孔95(図11参照)からガイドレール43の上側へ突出する入力部77(図5参照)と当接する。これにより、入力レバー74の位置が変えられる。入力レバー74の位置は、キャリッジ38の往復動を制御することにより任意に選択的に変更することができる。入力レバー74が所定の位置(後述する第1駆動位置又は第2駆動位置)に選択的に移動されると、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72が入力レバー74の位置に対応する位置に位置決めされる。
【0041】
用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38が往復動する範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、プリンタ部11において使用可能な記録用紙の最大幅より十分に幅広である。プラテン42の上面に支持された記録用紙は、記録ヘッド39との距離が一定に保持される。この記録用紙に、記録ヘッド39から吐出されたインク滴が着弾する。
【0042】
図3に示されるように、プラテン42における幅方向(矢印101の方向)の両側のうち、一方にパージ機構55が配設され、他方に廃インクトレイ56が配設されている。図3において、パージ機構55は左端部に設けられ、廃インクトレイ56は右端部に設けられている。廃インクトレイ56は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ56内にはインク吸収材としてフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、このフェルトに吸収されて保持される。
【0043】
パージ機構55は、記録ヘッド39のノズルから気泡や異物を吸引除去するものである。図4に示されるように、パージ機構55は、記録ヘッド39のノズルや記録ヘッド39の排気口を覆うキャップ57を有する。キャップ57は、公知のリフトアップ機構によって上下動されて記録ヘッド39と接離する。図4には現れていないが、パージ機構55は、さらに吸引ポンプを有する。吸引ポンプは、キャップ57と接続されており、吸引ポンプが動作されることによって、キャップ57の内部が負圧にされる。キャップ57が記録ヘッド39と接触してノズル及び排気口をそれぞれ覆った状態において吸引ポンプが作動されると、記録ヘッド39から気泡や異物が吸引除去される。パージ機構55における吸引ポンプは、上記LFモータの駆動力が駆動伝達されることによって動作される。また、パージ機構55におけるリフトアップ機構は、上記ASFモータの駆動力が駆動伝達されることによって動作される。つまり、パージ機構55における吸引ポンプ及びリフトアップ機構が、本発明における複数の駆動部の一つにそれぞれ相当する。このようにパージ機構55及び廃インクトレイ56が用いられて、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止などのメンテナンスが行われる。
【0044】
[駆動切換機構70]
以下、上記LFモータ及び上記ASFモータの2つのモータから給紙ローラ25、パージ機構55へ駆動伝達を切り換える駆動切換機構70(本発明の組立体の一例)について説明する。駆動切換機構70は、ガイドレール44,45などにより構成されるフレームの右側(図3における左側)に配置されて、2つのモータ(LFモータとASFモータ)から独立に出力される2系統の駆動力を、各駆動部へそれぞれ択一的に伝達するものである。
【0045】
駆動切換機構70は、図5及び図6に示されるように、第1切換ギヤ71(本発明の第1切換ギヤの一例)や第2切換ギヤ72(本発明の第2切換ギヤの一例)などからなるギヤユニット110と、このギヤユニット110や上記ASFモータを支持する支持フレーム120(本発明のフレームの一例)とに大別される。ギヤユニット110は、支持フレーム120に支持された1本の支軸73(本発明の支軸の一例)に第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72が回転可能、かつ、軸線方向にスライド可能に支持されている。なお、本実施形態では、支持フレーム120はギヤユニット110とASFモータとを支持するものとして説明するが、例えば、支持フレーム120がギヤユニット110のみを支持するものであってもよい。
【0046】
上述の2つのモータ(LFモータ及びASFモータ)は図には現れていないが、一方のLFモータの駆動力は、搬送ローラ60の一端(図3における右側の端部)に入力される。搬送ローラ60の他端(図3における左側の端部)には第1駆動ギヤ(不図示)が搬送ローラ60と同軸かつ一体に回転するように設けられている。この第1駆動ギヤに駆動切換機構70の第1切換ギヤ71が噛合されている。したがって、第1切換ギヤ71は、LFモータの駆動力に応じて回転駆動される。第1切換ギヤ71を回転駆動するための上記LFモータが、本発明における第1駆動源に相当する。第1駆動ギヤの厚みは、第1切換ギヤ71のスライド範囲に対して十分に厚いので、第1切換ギヤ71のスライド範囲において第1切換ギヤ71と第1駆動ギヤとは常時噛合される。第1切換ギヤ71の軸線は、第1駆動ギヤの軸線と平行であり、第1切換ギヤ71は第1駆動ギヤに対して平行移動可能である。第1駆動ギヤの軸線方向の厚みは、第1切換ギヤ71の移動範囲に対応されており、第1切換ギヤ71の移動範囲において、第1駆動ギヤと第1切換ギヤ71の噛合は維持される。
【0047】
他方のASFモータは、後述するモータ支持部140(図9(C)参照)に取り付けられている。ASFモータの出力軸から第2駆動ギヤ(不図示)を介して第2切換ギヤ72に駆動力が伝達される。したがって、第2切換ギヤ72は、ASFモータの駆動力に応じて回転駆動される。第2切換ギヤ72を回転駆動するための上記ASFモータが、本発明における第2駆動源に相当する。第2駆動ギヤの厚みは、第2切換ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2切換ギヤ72のスライド範囲において、第2切換ギヤ72と第2駆動ギヤとは常時噛合される。第2切換ギヤ72の軸線は、第2駆動ギヤの軸線と平行であり、第2切換ギヤ72は第2駆動ギヤに対して平行移動可能である。第2駆動ギヤの軸線方向の厚みは、第2切換ギヤ72の移動範囲に対応されており、第2切換ギヤ72の移動範囲において、第2駆動ギヤと第2切換ギヤ72の噛合は維持される。
【0048】
図6及び図7に示されるように、ギヤユニット110は、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72に加えて、第1コイルバネ111(本発明の伸縮部材の一例)と、第2コイルバネ112(本発明の伸縮部材の一例)と、入力レバー74と、バネホルダ79と、ストッパ150(本発明の連結部材の一例)とが支軸73に支持されてなる。これら各部材は、支軸73の軸線方向にスライド可能に支持されている。
【0049】
図7に示されるように、支軸73は、丸棒状の部材からなる。支軸73は、後述の支持フレーム120によって水平方向に支持されている。支軸73において、装置の外側(図5における右側)の端部88(本発明の第2端に相当)には、係合溝97(本発明の係合溝の一例)が形成されている。係合溝97は、支軸73の外周面に形成されている。係合溝97の幅は、後述する第1側壁124の第2切り欠き132が係合可能なサイズに設定されている。また、支軸73において、装置の内側(図5における左側)の端部89(本発明の第1端に相当)には、段差98(本発明の段差の一例)が形成されている。段差98は、端部89の外周面を周方向に切削することにより形成され得る。係合溝97及び段差98は、支持フレーム120による支軸73の支持に用いられる。なお、支軸73の支持機構については後述する。
【0050】
第1切換ギヤ71は、装置の外側(図5における右側)に配置され、第2切換ギヤ72は装置の内側(図5における左側)に配置されている。支軸73の軸線方向(図5における左右方向)は、キャリッジ38が往復動する方向(図1の矢印101)と一致する。この支軸73を第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライド移動されることにより、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72と後述の第1〜3伝達ギヤ171,172,173(本発明の複数の伝達ギヤの一例)との噛合が選択される。
【0051】
入力レバー74は、第1切換ギヤ71よりもキャリッジ38の往復動方向外側(図5における右側)に配置されている。この入力レバー74と、上述のレバーガイド91とによって、本発明にかかる位置決め部材が実現されている。
【0052】
図6に示されるように、入力レバー74は、支軸73に外嵌される筒状の円筒軸76と、円筒軸76から軸線方向へ延出された小径筒状のガイド軸75(図7参照)と、円筒軸76から径方向に突設された入力部77とを有する。円筒軸76及びガイド軸75は、支軸73に外嵌されて軸線方向にスライド自在且つ回転自在である。つまり、入力部77は、支軸73の軸線方向にスライドさせることができ、また、支軸73回りに回転させることができる。入力部77の基端付近にはリブ78が円筒軸76の軸線方向に延設されている。
【0053】
バネホルダ79は、入力レバー74のガイド軸75に外嵌される円筒軸80と、円筒軸80の装置の外側(図5における右側)に設けられたフランジ81と、フランジ81から装置の外側(図5における右側)に延出された円筒軸82とを有する。円筒軸80は、入力レバー74のガイド軸75に外嵌されて軸線方向にスライド自在且つ回転自在である。円筒軸80の入力レバー74側の端部には、端面から軸線回りを螺旋状に進むガイド面83が形成されている。ガイド面83は、円筒軸80の一部が切り欠かれるようにして形成されている。このガイド面83は、入力レバー74の円筒軸76の内面に設けられたリブ(不図示)に当接される。
【0054】
円筒軸80の外径は、入力レバー74の円筒軸76の外径より小さい。これにより、ガイド軸75に対する円筒軸80の外嵌位置が円筒軸76によって規制される。円筒軸82の端部84はテーパ状に形成されている。そのため、円筒軸82に第1コイルバネ111が挿通されやすくなり、第1コイルバネ111が確実に円筒軸82及びフランジ81に着座される。
【0055】
ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112(図7参照)は圧縮されている。第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は、支軸73の軸線方向に伸縮可能に設けられている。バネホルダ79は、第1コイルバネ111によって入力レバー74側(図6における矢印85の方向)へ付勢されている。また、第2切換ギヤ72は、第2コイルバネ112(図7参照)によって入力レバー74側(図6における矢印86の方向)へ付勢されている。第2切換ギヤ72を介在させて、第1切換ギヤ71も、同じ第2コイルバネ112によって入力レバー74側へ付勢される。つまり、第2切換ギヤ72とバネホルダ79とは、相反する方向へ付勢する2つのコイルバネ111,112によって、第1切換ギヤ71及び入力レバー74を介在させて互いに接近する方向へ付勢されている。
【0056】
支軸73において、装置の最も外側(図5における右側)にストッパ150が配置されている。ストッパ150は、支軸73に挿通された状態で支持フレーム120に連結される。ストッパ150が支持フレーム120に連結されることにより、支軸73の装置の外側の端部88が支持フレーム120に固定される。また、このストッパ150は、第1コイルバネ111の一端を保持するバネホルダの役割を果たすものでもある。ストッパ150は、ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、第1コイルバネ111によって付勢されている。なお、ストッパ150の詳細な構成及び連結機構については後述する。
【0057】
このように構成されたギヤユニット110においては、第2コイルバネ112、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74、バネホルダ79、第1コイルバネ111、及びストッパ150がその順番で相互に当接されて一体となった状態で支軸73に挿通されている。バネホルダ79を付勢する第1コイルバネ111の付勢力(矢印85の方向の付勢力)は、第2切換ギヤ72を付勢する第2コイルバネ112の付勢力(矢印86の方向の付勢力)より大きい。したがって、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74及びバネホルダ79は、外力が付与されなければ、第1コイルバネ111に付勢されて、支軸73を矢印85へ向かってスライド移動して、支軸73の装置内側(図5における左側)の端部89側に配置される。このとき、入力レバー74の入力部77は、第1駆動伝達位置(図11参照)に配置される。なお、2つのコイルバネ111,112によって相互に当接された第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、一体となった状態、すなわち、それぞれの部材が互いに当接してそれぞれの位置関係が一定となった状態において独立して回転可能である。
【0058】
図8に示されるように、ストッパ150は、基部151と、挟持部153(本発明の把持部、挟持部の一例)とを有する。基部151の中央付近に軸孔159が形成されている。この軸孔159に支軸73が挿通される。基部151の裏面162には、第1コイルバネ111を支持するための溝164が形成されている。溝164は、軸孔159を中心とする同心円の一部が切り欠かれた円弧形状に形成されている。この溝164に第1コイルバネ111の一端が挿嵌される。これにより、第1コイルバネ111がストッパ150の裏面162で確実に着座される。なお、実施形態では、図8(C)に示されるように、基部151は、左右非対称に形成されているが、基部151の形態がこれに限定されることはない。基部151は、左右対称に形成されたものであってもよい。基部151が左右対称に形成されている場合は、溝164が概ね環状に形成される。
【0059】
挟持部153は、基部151の表面161から垂直方向((A)において右側)へ突出された2つのアーム155,157からなる。基部151には、周縁((A)において上端)から径方向外側、つまり、軸孔159の軸線に直交する方向へ突出された台座158を有する。アーム155は、台座158から突出している。そのため、ストッパ150は、アーム155を容易に摘むことができる構成となっている。一方、アーム157は、軸孔159とアーム155との中間付近から突出している。アーム155の先端には、アーム157側へ向けて突出されたフック156が設けられている。アーム155とアーム157との間に支持フレーム120のブリッジ137(図9参照、本発明の被連結部、ブリッジ部の一例)が挿入されることにより、挟持部153によってブリッジ137が挟み持たれる。これにより、挟持部153とブリッジ137とが連結固定される。
【0060】
[支持フレーム120]
支持フレーム120は、ギヤユニット110及び上記ASFモータを支持するものである。この支持フレーム120は、合成樹脂を射出成形することにより得られる。合成樹脂としては、ABS樹脂やポリアセタール(POM)などの種々のものを用いることができるが、本実施形態では、強化ABS樹脂と称される剛性の高い樹脂、例えば、ガラス繊維が20%混入された強化ABS樹脂(ABS/PBT−20GF)で支持フレーム120が成形されている。
【0061】
図9(A)に示されるように、支持フレーム120の一方面に開口122が形成されている。開口122は横長に形成されている。開口122の内部側に、ギヤユニット110を収容するための収容部123が形成されている。収容部123は、開口122から支軸73に垂直な方向を深さ方向とするものである。この収容部123は、その深さ方向を抜き方向として樹脂型などで成形される。
【0062】
収容部123には、その奥面から立設された平板状のリブ117が設けられている。リブ117は、収容部123の深さ方向、つまり、樹脂型の抜き方向に延出されている。したがって、リブ117には、抜き勾配が付けられている。本実施形態では、リブ117の全体に抜き勾配が付けられているのではなく、その一部には抜き勾配が付けられていない。具体的には、リブ117には、支軸73に垂直な平面からなる平坦部118が設けられている。この平坦部118は、後述するボス149(図9(C)参照)に対応する位置に設けられており、ロッド148をボス149に圧入する際に圧入加工を補助するための治具などで押さえつけられる部分である。なお、リブ117において平坦部118が占める面積は、樹脂型の抜き作業に支障を来さない程度に設定されている。
【0063】
支持フレーム120は、第1側壁124(本発明の第1壁に相当)と第2側壁125(本発明の第2壁に相当)とを有する。これら第1側壁124と第2側壁125は互いに対向している。開口122の長手方向の両端は、第1側壁124及び第2側壁125によって区画されている。
【0064】
第2側壁125には、貫通孔134(本発明の穴部に相当)が形成されている。貫通孔134は、第2側壁125の厚み方向に延びて、この第2側壁125を貫通している。貫通孔134には、支軸73の端部89が挿入される。支軸73の端部89が貫通孔134に斜めから挿入されると、端部89に形成された段差98が貫通孔134の周縁に引っ掛かり、それ以上の挿入が規制される。なお、本実施形態では、本発明の穴部を貫通孔134としたが、これに限定されることはない。例えば、本発明の穴部として、第2側壁125の内面に形成された凹陥部や、同内面に突出されたボスに穴が形成されたものなどを採用してもかまわない。
【0065】
第2側壁125の内面にバネ座135が設けられている。バネ座135は、孔134の周縁に沿って一部が切り欠かれた概ね環状に形成されている。ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、バネ座135に第2コイルバネ112の一端が着座される。
【0066】
第1側壁124には、切欠部127(本発明の切欠部の一例)が形成されている。切欠部127は、第2側壁125の貫通孔134に対応する位置に形成されている。この切欠部127に支軸73の端部88が挿入される。切欠部127は、第1側壁124の開口122側の端辺129から支持フレーム120の奥側へ切り欠かれた第1切り欠き131と、第1切り欠き131の奥部から更に奥側へ切り欠かれた第2切り欠き132とを有する。第1切り欠き131は、端辺129に隣接している。第2切り欠き132は、第1切り欠き131よりも幅が狭く形成されている。
【0067】
第1切り欠き131の幅は、支軸73の径よりも十分に大きく設定されている。一方、第2切り欠き132の幅は、支軸73の径よりも小さく、係合溝97の径よりも幾分か大きく設定されている。第1切り欠き131と第2切り欠き132との継ぎ目にはテーパが施されている。支軸73の係合溝97と切欠部127とが位置合わせされた状態で端部88が切欠部127に挿入されると、第1切り欠き131によって端部88が第2切り欠き132へ案内される。そして、係合溝97が第2切り欠き132へ挿入される。この状態で、軸線方向への支軸73の移動が規制される。なお、第2切り欠き132の奥部は、係合溝97に対応して円弧状に形成されている。
【0068】
第1側壁124にはブリッジ137が設けられている。ブリッジ137は、第1側壁124の外面において、切欠部127の近傍に設けられている。詳細には、ブリッジ137は、第1側壁124の外面において、第1切り欠き131を跨ぐように設けられている。ブリッジ137と第1切り欠き131との間には挿通口138が形成されている。支軸73の端部88が切欠部127に挿入される際に、端部88は挿通口138を通って切欠部127へ案内される。
【0069】
図5に示されるように、支持フレーム120の上面121に開口126が形成されている。この開口126は、支軸73の軸線方向へ延びる長孔である。支持フレーム120にギヤユニット110が装着された状態で、開口126に入力レバー74の入力部77が挿通される。開口126の横幅、すなわち支軸73の軸線方向に沿った方向の幅は、入力レバー74の移動範囲よりも大きく設定されている。したがって、入力レバー74の移動が開口126によって規制されることはない。
【0070】
図9に示されるように、支持フレーム120の背面側にモータ支持部140が設けられている。モータ支持部140は、収容部142を有しており、この収容部142内に上記ASFモータが収容される。収容部142は、支軸73の軸線方向と同じ方向を深さ方向とするものである。この収容部142は、その深さ方向を抜き方向として樹脂型などで成形される。したがって、収容部142の底面は、深さ方向、つまり、支軸73の軸線方向に垂直な平面となっている。収容部142にASFモータが収容されると、その出力軸が、収容部142の底壁143に形成された孔144に挿通されて、底壁143の裏側へ露出される。
【0071】
底壁143の裏面145には、ロッド146が立設されている。ロッド146は、上記ASFモータの出力軸から駆動力を伝達するための駆動ギヤを軸支するものである。ロッド146は、裏面145に設けられたボス147に圧入されることにより、底壁143に取り付けられる。ロッド146をボス147に圧入する際は、収容部142の内部側から底壁143を上記治具で押さえつつ、ボス147へ向けてロッド146を押圧する。これにより、ボス147にロッド146が圧入される。
【0072】
ボス147の近傍にボス149が設けられている。ボス149は、底壁143の裏面145と同一面上に設けられている。このボス149は、図9(C)に示されるように、底壁143から外れて収容部123側へ配設されている。このボス149は、収容部123に形成されたリブ117の平坦部118を基端として、支軸73の軸線方向へ延出されている。このボス147にロッド148が圧入される。このロッド148は、ロッド146に軸支された駆動ギヤから伝達された駆動力を第2切換ギヤ72に伝達するための中継ギヤを軸支するものである。ロッド148をボス149に圧入する際は、収容部123の内部側から平坦部118を上記治具で押さえつつ、ボス149へ向けてロッド148を押圧する。これにより、ボス149にロッド148が圧入される。
【0073】
[駆動切換機構70の組立方法]
以下、図10を参照して、支持フレーム120にギヤユニット110を組み付ける方法、つまり、駆動切換機構70の組立方法について説明する。
【0074】
まず最初に、第1側壁125を下にし第1側壁124を上にした状態で支持フレーム120を所定の組立用台座(不図示)に立て置く。そして、支軸73の端部89を開口122側から貫通孔134に斜め方向から挿入する。このとき、端部89に形成された段差98が貫通孔134の周縁に引っ掛かり、それ以上の挿入が規制される。また、支軸73が傾倒した状態で貫通孔134の周縁で支持される(図10(A)参照)。
【0075】
次に、支軸73の端部88から、第2コイルバネ112、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74、バネホルダ79を順番に挿通する(図10(B)及び(C)参照)。入力レバー74を挿通する際は、入力レバー74を第2コイルバネ112のバネ力に抗して下方へ押圧して第2コイルバネ112を圧縮させる。そして、第2コイルバネ112を圧縮状態にしたまま、入力レバー74の入力部77を開口126に挿通させる。これにより、入力レバー74から手を放しても、第2コイルバネ112を圧縮状態に維持することができる(図10(B)参照)。
【0076】
バネホルダ79の次に、第1コイルバネ111を支軸73に挿通し(図10(D)参照、)その後、ストッパ150を支軸73に挿通する。ストッパ150を支軸73に挿通する際は、アーム155を把手代わりに使用する。すなわち、アーム155を摘みながらストッパ150を支軸73に挿通する(図10(E)参照)。このとき、ストッパ150を第1コイルバネ111のバネ力に抗して下方へ押圧しながら挿通する。これにより、第1コイルバネ112が圧縮される。
【0077】
その後、引き続きアーム155を摘みながら、支軸73の端部88をブリッジ137側へ案内する。これにより、端部88は、ブリッジ137の挿通口138を潜って切欠部127に到達する。そして、支軸73の係合溝97と切欠部127とを位置合わせして、端部88を切欠部127に挿入させる。このとき、第1切り欠き131から第2切り欠き132に連なる上述したテーパによって端部88が第1切り欠き131から第2切り欠き132へと案内されて、係合溝97が第2切り欠き132へ挿入される。この状態で、軸線方向への支軸73の移動が規制される。なお、係合溝97が第2切り欠き132へ挿入された状態で、アーム157が第1切り欠き131に挿入される。
【0078】
最後に、アーム155を摘みながらストッパ150を上方へ持ち上げると、アーム155とアーム157との隙間にブリッジ137が挿入される。このとき、アーム155のフック156がブリッジ137に引っ掛かけられて、ストッパ150とブリッジ137とが連結固定される。これにより、切欠部127の切欠方向への支軸73の移動が規制される。このようにギヤユニット110が支持フレーム120へ取り付けられることにより、駆動切換機構70の組み立てが完了する。
【0079】
[伝達ギヤ171〜173]
図11及び図12に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の下方には、支軸73と平行な支軸180に第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173が並列に配置されている。第1伝達ギヤ171は、第1切換ギヤ71と噛離可能である。第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は第2切換ギヤ72と噛離可能である。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、その厚みや傘歯ギヤ174の有無が異なるが、外径は同等である。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、支軸180に、装置外側(図11における右側)から順に並べられている。また、第1伝達ギヤ171と第2伝達ギヤ172との間にはスペーサ175が設けられており、これらの間が隔てられている。
【0080】
第1伝達ギヤ171の装置外側には、傘歯ギヤ174が設けられている。傘歯ギヤ174の外径は第1伝達ギヤ171より大きく、これによって、これら間に径方向外側へ突出する規制面177が形成されている。第1切換ギヤ71は、この規制面177に当接することによって、第1伝達ギヤ171と噛合した位置からさらに矢印86へのスライド移動が制止される。これによって、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ171との噛合が維持され、かつ入力レバー74及びバネホルダ79から第1切換ギヤ71から離れる。
【0081】
第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達するためのものである。詳細には、第1伝達ギヤ171は、その一端側に設けられた傘歯ギヤ174とともにパージ機構55における吸引ポンプなどへ駆動伝達を行う。第2伝達ギヤ172は、パージ機構55におけるノズルキャップ57のリフトアップ機構へ駆動伝達を行う。第3伝達ギヤ173は、給紙ローラ25へ駆動伝達を行う。図11に示されるように、入力レバー74の入力部77が第1駆動伝達位置に配置されると、第2切換ギヤ72が第3伝達ギヤ173と噛合され、第1切換ギヤ71がいずれとも噛合しない位置に配置される。また、図12に示されるように、入力レバー74の入力部77が第2駆動伝達位置に配置されると、第2切換ギヤ72が第2伝達ギヤ172と噛合され、第1切換ギヤ71が第1伝達ギヤ171と噛合される。このように、第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、複数の各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達すべく割り当てが定められている。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173から各駆動部への駆動伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の駆動伝達機構を採用することができ、本発明の要旨には直接影響しないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0082】
[本実施形態の作用効果]
このように本実施形態によれば、駆動切換機構70が支持フレーム120とギヤユニット110とから構成されており、ギヤユニットを110を支持フレーム120に組み付ける際に、作業者は、ストッパ150のアーム155を把手代わりに摘んでストッパ150を操作するだけで、第1コイルバネ111を圧縮する作業(工程)や、第1コイルバネ111を圧縮状態に維持しつつ切欠部127の第2切り欠き132と係合溝97とを係合する作業(工程)、そして、挟持部153をブリッジ137に連結させる作業(工程)までの一連の作業を容易に行うことができる。また、従来の組み付けとはことなり、支持フレーム120を撓ませることなくギヤユニット110を支持フレーム120に組み付けることができるため、支持フレーム120として剛体を用いることができる。そのため、剛体の支持フレーム120対する支軸73の中心の位置精度が向上し、しかも、支軸73に挿通される各部材の位置精度が向上する。
【0083】
[実施形態の変形]
なお、本実施形態では、プリンタ部11に適用される駆動切換機構70について例示したが、このような駆動切換機構70に本発明は限定されない。例えば、少なくともコイルバネなどの伸縮部材とストッパ150とが支軸73に挿通されて、その状態で支軸73が支持フレーム120に装着された構成の組立体であれば、如何なる装置に適用されるものであってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる複合機10の外観構成を示す図であり、正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、複合機10の内部構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構成を示す図であり、背面側から見た斜視図である。
【図4】図4は、図3における矢印105の方向からみたパージ機構55及びその周辺機構の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、駆動伝達機構70の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、駆動伝達機構70の分解図であり、上段には支持フレーム120の正面図が示されており、下段にはギヤユニット110の正面図が示されている。
【図7】図7は、ギヤユニット110の分解図である。
【図8】図8は、ストッパ150の構成を示す図であり、(A)から(F)には六面図が示されており、(G)には(A)における切断線VIIIG−VIIIGの断面図が示されている。
【図9】図9は、支持フレーム120の構成を示す斜視図であり、(A)から(D)には、図6に示される正面姿勢から水平方向へ所定角度ずつ回転された各姿勢が順次示されている。
【図10】図10は、支持フレーム120にギヤユニット110を組み付ける方法を説明するための図である。
【図11】図11は、入力レバー74が第1駆動伝達位置に配置された状態を示す図である。
【図12】図12は、入力レバー74が第2駆動伝達位置に配置された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
11・・・プリンタ部
38・・・キャリッジ
55・・・パージ機構
70・・・駆動切換機構
71・・・第1切換ギヤ
72・・・第2切換ギヤ
73・・・支軸
74・・・入力レバー
77・・・入力部
88,89・・・端部
97・・・係合溝
98・・・段差
110・・・ギヤユニット
111・・・第1コイルバネ
112・・・第2コイルバネ
120・・・支持フレーム
131・・・第1切り欠き
132・・・第2切り欠き
134・・・貫通孔
150・・・ストッパ
153・・・挟持部
155・・・アーム
157・・・アーム
171・・・第1伝達ギヤ
172・・・第2伝達ギヤ
173・・・第3伝達ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1壁及び第2壁を有するフレームと、
上記第1壁に設けられ、該第1壁の端辺から切り欠かれた切欠部と、
上記第1壁に設けられ、上記切欠部の近傍に配置された被連結部と、
上記第2壁に設けられ、該第2壁の厚み方向に延びる穴部と、
上記第1壁及び上記第2壁によって支持され、第1端が上記穴部に挿入された支軸と、
上記支軸における上記第1端とは反対の第2端側の外周面に形成され、上記切欠部の縁部と係合された係合溝と、
圧縮された状態で上記支軸に挿通された伸縮部材と、
上記伸縮部材よりも上記第2端側で上記支軸に挿通され、上記被連結部と連結された連結部材と、
上記連結部材に設けられ、上記支軸に直交する方向へ突出された把手部とを具備する組立体。
【請求項2】
上記被連結部は、上記切欠部を跨ぐブリッジ部を有し、
上記把手部は、上記ブリッジ部を挟持して上記被連結部と連結する挟持部を有する請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
上記支軸の第1端側に段差が設けられている請求項1又は2に記載の組立体。
【請求項4】
上記切欠部は、上記第1壁の端辺に隣接する第1切り欠きと、当該切欠部に奥部に形成され上記第1切り欠きよりも幅狭な第2切り欠きとからなる請求項1から3のいずれかに記載の組立体。
【請求項5】
記録ヘッドを搭載して所定方向へ往復動されるキャリッジと、
第1駆動源からの駆動力に応じて回転駆動される第1切換ギヤと、
第2駆動源からの駆動力に応じて回転駆動される第2切換ギヤと、
少なくとも上記第1切換ギヤ又は上記第2切換ギヤのいずれか一方と噛合可能に配置され、複数の駆動部それぞれに駆動力を伝達する複数の伝達ギヤと、
上記キャリッジの当接により当該キャリッジが往復動する所定方向へスライドして、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの位置を変更するように設けられ、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤを上記伝達ギヤの配置に対応した複数の駆動伝達位置のいずれかに選択的に位置決めする位置決め部材と、
上記キャリッジが往復動する所定方向に沿った一方向へ上記位置決め部材を弾性付勢する伸縮部材と、
上記第1切換ギヤ、上記第2切換ギヤ、上記位置決め部材、及び上記伸縮部材に挿通され、これらの第1切換ギヤ、第2切換ギヤ、位置決め部材、及び伸縮部材を上記キャリッジが往復動する所定方向へスライド可能に支持する支軸と、
互いに対向する第1壁及び第2壁を有し、上記第1壁及び上記第2壁間で上記支軸を支持するフレームと、
上記第1壁に設けられ、該第1壁の端辺から切り欠かれた切欠部と、
上記第1壁に設けられ、上記切欠部の近傍に配置された被連結部と、
上記第2壁に設けられ、上記支軸の第1端が挿入された穴部と、
上記支軸の第2端側の外周面に形成され、上記切欠部の縁部と係合された係合溝と、
上記支軸において上記第1壁に隣接する位置に挿通され、上記被連結部と連結された連結部材と、
上記連結部材に設けられ、上記支軸に直交する方向へ突出された把手部とを具備する画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−161267(P2009−161267A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339687(P2007−339687)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】