説明

組立体の組付構造

【課題】キーレスエントリーシステムの車輌用キーなどのように第1部材と第2部材を組み立てて構成する組立体に関し、第1部材と第2部材とを簡単にして確実に組み立てすることができる組立体の組付構造を提供する。
【解決手段】第1キー部材21のガイド部21bには、弾性部材からなる係止部材27を設け、その係止部材27の先端側には、山形の係止部27bと係止爪とを設け、さらに、ガイド部には、係止爪を含む係止部材27の先端部を突入させる逃し溝21dと、この逃し溝21dの一部に形成し係止爪を係止する段形係止部とを設け、第2キー部材22には、ガイド部21bを嵌合させる嵌合溝22bと、この嵌合溝22bの側壁に設け、係止部27bを弾性力で突入させる係止孔22dとを設けて構成してある

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、別体として形成された2つの部材である第1部材と第2部材とを簡単にして確実に組み付けることができる組立体の組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドア錠を携帯機の遠隔操作で施錠又は解除することができるキーレスエントリーシステム、或いは、携帯機を所持して車両に接近することでドア錠を自動的に施錠又は解除できるスマートエントリシステムに備える携帯機としての車両用キーには、一般的に、ドア錠に対し無線信号からなる施解錠信号を出力する電子部品の他に、ドア錠を機械的に施解錠することができるキープレートを備えたものが多い。
【0003】
図11〜図15は、この種の車両用キーの一例を示す。
図示するように、この車両用キーは、第1キー部材11と第2キー部材12とを一体的に組み付けて一つのキー体となっている。
そして、この車両用キーは、図11及び図12に示す通り、第1キー部材11にはドア錠を機械的に施解錠するためのキープレート13が支軸14を中心に旋回自在に取り付けてあり、また、第2キー部材12には図示省略のトランスミッタ用の電気部品が内装され、操作ボタン15の押し操作にしたがって無線信号である施解錠信号を出力し、ドア錠を施錠又は解錠することがでる。
【0004】
なお、図11はキープレート13を第1、第2キー部材11、12の収納部11a、12a内に格納させた状態を示し、この状態から押しボタン16を押し操作すると、図12に示すように、キープレート13が旋回し、収納部11a、12aから脱出して使用可能状態にとなる。
【0005】
図13及び図14は、第1キー部材11と第2キー部材12とを分離させた状態を示す。
第1、第2キー部材11、12は合成樹脂材で形成してあり、第1キー部材11には、図13に示す如く、一体に突出形成した連結用のガイド部11bが設けてあり、また、ガイド部11bには係止片部11cが一体に形成してある。
すなわち、係止片部11cは、ガイド部11bの先端からガイド部11bの基部側に折り返し、所定の間隔をおいてガイド部11bに併設させた弾性板となっており、先端部には山形の係止部11dが形成してある。
なお、突出形成した今一つのガイド部11eは組み付けを安定させるものである。
【0006】
第2キー部材12は図14に示す如く、第1キー部材11のガイド部11bを嵌合させる嵌合溝12bと、この嵌合溝12bと収納部12aとの間の側壁12cに形成し、第1キー部材11の係止部11dを突入させて係止する係止孔12dとが設けてある。
【0007】
上記のように構成した第1、第2キー部材11、12は、第1キー部材11のガイド部11bを第2キー部材12の嵌合溝12b内に挿入するようにして組み付けるが、組み付けの過程では、係止片部11cの係止部11dが嵌合溝12bの側壁12cに当接して進むため、係止片部11cが弾性に抗してガイド部11b側に押されて弾性力を蓄えるようになる。
【0008】
第1キー部材11の右側端11fと第2キー部材12の左側端12eが接合するまで組み付け過程が進むと、図15に示したように、係止片部11cの弾性力によって係止部11dが側壁12cの係止孔12d内に突入し、この係止作用によって第1キー部材11と第2キー部材12の組み付けが保持され、車両用キーが構成される。
【0009】
他方、その他の従来の車両用キーとしては、キープレートの頭部に形成したキーヘッド部に凹所を設け、施解錠信号を出力させる電子部品をその凹所に挿入した後、係止保持するホルダによって上記の凹所を塞ぐ構成のものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第1677769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図11〜図15に示したような車両用キーは、第1キー部材11と第2キー部材12とを別々に生産することができるので、得意分野に応じて第1キー部材11又は第2キー部材12の生産が可能になり、その上、第1キー部材11又は第2キー部材12の一方が故障した場合には、故障したキー部材を交換することもでき、そのキー部材の故障を修理すればよい等の利点がある。
【0012】
反面、この種の車両用キーは、第1キー部材11と第2キー部材12とが係止部11dの係止によって組み付けられているため、第1キー部材11と第2キー部材12とを引き離す強い力が作用したり、また、キープレート(メカニカルキー)13が格納される収納部12aから係止孔12dに向けて差し入れたドライバ等によって係止部11dが強く押されたりすることによって、係止片部11cが折れたり、また、第1、第2キー部材11、12が不用意に分離することがあった。
【0013】
そこで、本発明では、上記した実情にかんがみ、第1キー部材に相当する第1部材と第2キー部材に相当する第2部材とを簡単にして確実に組み立てすることができ、不用意に分離することのない組立体の組付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するため、本発明は、第1部材と第2部材とから構成され、第1部材は、突出形成したガイド部と先端部に係止部を有する弾性変形可能な係止部材とを備え、第2部材は、前記ガイド部を嵌合させる嵌合溝と前記係止部を係止させる係止孔とを備え、前記ガイド部を前記嵌合溝に嵌合させ、前記係止部を前記係止孔に係止させて第1、第2部材を組み付ける組立体の組付構造において、前記第1部材の係止部材は、前記ガイド部に対して所定の間隔を設けて併設した弾性部材であり、その先端側には、前記ガイド部から離れる方向に隆起形成した山形状の係止部と、その係止部から前記ガイド部の突出方向に対し直交させて延設した係止爪とを設け、さらに、前記第1部材のガイド部には、前記係止爪を含む前記係止部材の先端側を突入させる逃し溝と、この逃し溝の一部に形成して前記係止爪を係止する段形係止部とを設け、前記第2部材の嵌合溝には、前記係止部材の係止部を圧接する側壁と、その側壁の一部に設けて前記係止部を突入させる係止孔とを設けて構成したことを特徴とする組立体の組付構造を提案する。
【0015】
また、上記のように構成した本発明の組付構造は、ドア錠を機械的に施解錠するキープレートを第1部材に備え、ドア錠に対し無線信号からなる施解錠信号を出力する電子部品を第2部材に備えて車両用キーとして構成することができる。
さらに、上記のように構成した本発明の組付構造は、第1部材の係止部材については、金属製の板ばねで形成し、ガイド部に一体的に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明の組付構造は、第1部材のガイド部と係止部材とを第2部材の嵌合溝に挿入して第1、第2部材を組み付ける。
すなわち、第1部材のガイド部と係止部材とを第2部材の嵌合溝に挿入すると、その挿入初期において、係止部材の係止部が第2部材の側壁に当たるため、係止爪を含む係止部材の先端がガイド部に設けた逃し溝内に突入する。
【0017】
ガイド部を嵌合溝内に押し進めると、上記の状態で係止部が側壁を摺動しながら進み、嵌合溝に対しガイド部の進入が最終段階となったとき、係止部材の弾性力で係止部が第2部材の側壁に設けた係止孔に突入する。
このとき、係止部及び係止爪が共に逃し溝から脱出方向に移動するが、少なくとも、係止爪が逃し溝に突入している状態となる。
【0018】
そして、組み立て完了後に第1部材と第2部材とを引き離す方向に力が作用した場合には、係止部材の係止爪が逃し溝に設けた段形係止部に係合することから、ガイド部側への係止部材の移動が阻止される。
そのため、組み立て完了状態では、第1部材と第2部材とが不用意に分離することがない。
すなわち、係止爪の先端が段形係止部に係止されるため、ガイド部側への係止部材の移動が阻止され、したがって、係止部が係止孔から脱出することなく、係止部の係止によって第1部材と第2部材との組み付けが確実に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用キーの正面図である。
【図2】キープレートを引き出した状態を示す上記車両用キーの正面図である。
【図3】図2に示す車両用キーの側面図である。
【図4】上記車両用キーの第1キー部材を示す正面図である。
【図5】上記車両用キーの第2キー部材を示す一部断面とした正面図である。
【図6】上記第1キー部材に設けたガイド部と係止部材とを示した部分的な拡大図である。
【図7】上記した第1キー部材と第2キー部材の組み付け初期過程を示す一部切欠正面図である。
【図8】上記した第1キー部材と第2キー部材の組み立て完了状態を示す一部切欠正面図である。
【図9】上記した第1キー部材と第2キー部材の組み立て後、第1キー部材と第2キー部材とに引き離し力が作用した状態を示す正面図である。
【図10】上記した第1キー部材と第2キー部材の組み立て完了後、第1キー部材と第2キー部材とに引き離し力が作用した時の係止部材の動作を示した部分的な拡大図である。
【図11】従来例として示した車両用キーの正面図である。
【図12】キープレートを引き出した状態を示す従来例の車両用キーの正面図である。
【図13】上記した従来例の車両用キーの第1キー部材を示す正面図である。
【図14】上記した従来例の車両用キーの第2キー部材を示す正面図である。
【図15】上記した従来例の第1キー部材と第2キー部材の組み立て完了状態を示す正面図である
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を車両用キーとして実施した一実施形態について図面に沿って説明する。
図1はキープレートを格納した状態を示す車両用キーの正面図、図2はキープレートを引き出した状態を示す同車両用キーの正面図、図3はキープレートを引き出した状態の同車両用キーの側面図である。
【0021】
また、本実施形態の車両用キーは、第1キー部材(第1部材)21と第2キー部材(第2部材)22の組付構造以外は図11〜図15に示した従来例の車両用キーと同じ構成となっている。
したがって、これらの図面に示す通り、本実施形態の車両用キーは、外観上は従来例と変わらない。
なお、21a、22aは収納部、23はキープレート、24は支軸、25は操作ボタン、26は押しボタンを示し、これらは従来例の収納部11a、12a、キープレート13、支軸14、操作ボタン15、押しボタン16と同じ部材と部所を示す。
【0022】
第1キー部材21と第2キー部材22の組付構造については、図4、図5に示す特有の構造となっている。
第1キー部材21は、合成樹脂材で形成したもので、図4に示す如く、ガイド部21bが一体に突出形成してあり、また、このガイド部21bには、板状の係止部材27が取り付けてある。
【0023】
係止部材27は、ほぼU字形に折り曲げた折曲部27aと、その一辺側の先端側に形成した山形の係止部27bと、山形の係止部27bの更に先端側に設けた係止爪27cとから構成してある。
そして、この係止部材27は、折曲部27aの他辺側とをガイド部21bに設けた取付溝21cに嵌着してある。
【0024】
すなわち、係止部材27は、所定の間隔を設けてガイド部21bに併設すると共に、ガイド部21bから離れる方向に山形に隆起させた係止部27bを設け、さらに、係止部27bのさらに先端側にはガイド部21bの突出方向に対しほぼ直角とした係止爪27cが形成してある。
【0025】
さらに、第1キー部材21のガイド部21bには、ガイド部21bの突出方向に直交する溝部を設け、この溝部が係止部材27の係止部27bと係止爪27cを突入させる逃し溝21dとしてある。
また、図6に拡大して示したように、その逃し溝21dには、係止部材27の係止爪27cを係止する段形係止部21eが形成してある。
すなわち、この段形係止部21eは、後述する如く、係止部材27の係止部27bが係止状態となっているとき、係止爪27cの先端を段形係止部21eの段部によって係止し、第1、第2キー部材21、22の係止状態を保持する。
【0026】
第2キー部材22には、図5に示す如く、第1キー部材21のガイド部21bを嵌入する嵌合溝22bが形成してあり、また、この嵌合溝22bと格納部22aとの間の側壁22cには、上記した係止部材27の係止部27bを突入させる係止孔22dが設けてある。
【0027】
上記した第1、第2キー部材21、22は、図7〜図8に示す組み付け過程にしたがって組み付けて車両用キーを構成する。
先ず、第2キー部材22の嵌合溝22bに第1キー部材21のガイド部21bを挿入させると、図7に示す如く、係止部材27の係止部27bが嵌合溝22bの側壁22cに当たり、係止部材27の先端側がガイド部22bに接近するように押動され、係止部材27の先端側がガイド部22bから離れる方向の弾性力を蓄える。
なお、このとき係止部材27の係止部27bと係止爪27cが逃し溝21d内を孔奥方向(図7において上方向)に進む。
【0028】
第1、第2キー部材21、22の組み付けが進み、第1キー部材21の右端21fと第2キー部材22の左端22eが接合する段階になると、図8に示す如く、側壁22cの係止孔22dが係止部材27の係止部27bに対向する位置に移動するため、係止部材27の弾性力で係止部27bが係止孔22dに一挙に突入し、第1、第2キー部材21、22の組み立てが完了する。
また、このとき係止部材27の係止部27bと係止爪27cが逃し溝21dを脱出する方向に移動する。
なお、この組み立て状態では、第1キー部材21に設けた今一つのガイド部28が第2キー部材22のガイド溝22fに嵌入する。
【0029】
その後、第1キー部材21と第2キー部材22とに引き離し力が作用すると、図9に示した通り、係止部材27の係止爪27cが段形係止部21e内に移動し、係止爪27cの先端が段形係止部21eの段部によって係止される状態となる。
具体的には、拡大して示した図10より明らかであるように、第1キー部材21と第2キー部材22とを引き離す力が加わると、係止部27bの下り勾配部27bbが係止孔22dの孔縁22ddによって押され、係止爪27cが段形係止部21e内に入り込む。
【0030】
この結果、係止爪27cの先端が段形係止部21eの段部によって係止されるため、係止部27bの係止孔22dからの脱出が阻止され、第1キー部材21と第2キー部材22の組み立て状態が確実に保持される。
すなわち、組み立て状態では、第1キー部材21と第2キー部材22とに引き離し力が作用しても、第1、第2キー部材21、22が不用意に分離することがない。
【0031】
なお、本発明では、図10のように係止部27bの下り勾配部27bbが係止孔22dの孔縁22ddに押されることにより、係止爪27cが段形係止部21eに係止するため、意図的にも不用意に分離しにくい構成となっている。
そのため、第1キー部材21と第2キー部材22のいずれかが故障等により交換や修理をする場合等に第1キー部材21と第2キー部材22とを分離する必要があるときには、キープレート13を収納部21a、22aから引き出した状態で、第1キー部材21の右端21fと第2キー部材22の左端22eが接合した状態として、図8に示すように係止爪27cを段形係止部21eの外部に移動させる。
そして、従来例と同様に収納部21aにドライバなどを差し入れて、係止孔22dから係止爪27cが逃し溝21dの孔奥方向に移動するように係止部27bを押動すれば、係止部27bを係止孔22dから脱出させることができるから、第1、第2キー部材21、22を分離することができる。
【0032】
以上、一実施形態について説明したが、係止部材27についてはガイド部21bと共に樹脂材で一体形成してもよいが、弾性を有する金属板で形成し、不用意に破損しにくい構成とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
キーレスエントリーシステムやスマートエントリシステムに備える携帯機としての車両用キーの他に、建物のドア錠を無線信号で施解錠するドアキーなどとして利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
21 第1キー部材
21b ガイド部
21d 逃し溝
21e 段形係止部
22 第2キー部材
22b 嵌合溝
22c 側壁
22d 係止孔
23 キープレート
27 係止部材
27b 係止部
27c 係止爪




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とから構成され、
第1部材は、突出形成したガイド部と先端部に係止部を有する弾性変形可能な係止部材とを備え、第2部材は、前記ガイド部を嵌合させる嵌合溝と前記係止部を係止させる係止孔とを備え、前記ガイド部を前記嵌合溝に嵌合させ、前記係止部を前記係止孔に係止させて第1、第2部材を組み付ける組立体の組付構造において、
前記第1部材の係止部材は、前記ガイド部に対して所定の間隔を設けて併設した弾性部材であり、その先端側には、前記ガイド部から離れる方向に隆起形成した山形状の係止部と、その係止部から前記ガイド部の突出方向に対し直交させて延設した係止爪とを設け、
さらに、前記第1部材のガイド部には、前記係止爪を含む前記係止部材の先端側を突入させる逃し溝と、この逃し溝の一部に形成して前記係止爪を係止する段形係止部とを設け、
前記第2部材の嵌合溝には、前記係止部材の係止部を圧接する側壁と、その側壁の一部に設けて前記係止部を突入させる係止孔とを設けて構成したことを特徴とする組立体の組付構造。
【請求項2】
請求項1に記載した組付構造において、
ドア錠を機械的に施解錠するキープレートを第1部材に備え、ドア錠に対し無線信号からなる施解錠信号を出力する電子部品を第2部材に備えて車両用キーとして構成することを特徴とする組立体の組付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した組付構造において、
第1部材に設けた係止部材は、金属製の板ばねによって形成したことを特徴とする組立体の組付構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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