説明

組立品の品質評価方法及びそのシステム

【課題】ユニットの組立前に、ユニットの組立不良率を精度良く求めることができ、ま
た、時間のロスについても少なくすることのできる組立品の品質評価方法を提供すること

【解決手段】複数の部品を組み立てて製造されるユニットの品質を評価するための組立
品の品質評価方法において、部品の寸法規格を示した情報と、ユニットの品質良否の判定
に利用するユニットの設計仕様を示した情報と、部品を実際に測定することによって得ら
れる、部品の寸法のばらつきに関する情報とに基づいて、ユニットの組立不良率を求める
ステップを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組立品の品質評価方法及びそのシステムに関し、より詳細には、電子機器ケー
ス(例えば、オーディオ筐体)など、複数の部品を組み立てて製造される組立品の品質を
評価するための組立品の品質評価方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ筐体や電子機器ケースなど、複数の部品を組み立てて製造される製品の品質
は、部品単品それぞれの品質(例えば、規格からのズレの大きさ)はもちろんであるが、
各部品単品を組み立てて成る組立品(ユニット)の品質(例えば、規格からのズレの大き
さ)とも密接に関係する。そのため、現場では、ユニット組立前に部品単品の品質の良否
を判定し、そしてユニット組立後にユニットの品質の良否を判定している。
【0003】
例えば、図11に示したような、側面視T字形状をした部品1に側面視逆L字形状をし
た部品2を組み付けてユニット3を製造する場合、組立前に部品1、2の寸法1a〜1c
、2a(図12参照)を測定して部品1、2の品質の良否を判定し、組立後に部品1と部
品2とのギャップG(図13参照)を測定してユニット3の品質の良否を判定している。
図14に部品1、2の寸法1a〜1c、2aの測定結果及び良否判定結果の一例を示し、
図15にユニット3の品質良否の判定に用いるギャップGの測定結果及び良否判定結果の
一例を示す。
【0004】
なお、図15に示したユニット3のサンプルはいずれも規格内に収まっているが、実際
には、たとえ部品1、2が規格内のものであったとしても、規格から外れたユニット3(
すなわち不良ユニット)が製造される場合がある。不良ユニットは製品として用いること
ができないため、材料費や加工費の無駄を生じることになる。
【0005】
これら材料費や加工費の無駄を少なくすることは非常に大切である。そのため、ユニッ
ト3の組立不良率(組み立て不良の起き易さ)を組立前に算出しておくことが必要となる
。もし、組立不良率が高ければ、設計や組立動作の見直しなどの対策を施すことによって
、最終的な組立不良率を下げ、材料費や加工費の無駄を少なくすることができる。
【0006】
組立不良率の算出については、従来より種々提案がなされており、例えば、下記の特許
文献1、2には、組立動作と、組立対象部品の性質条件と、組立職場の条件とに基づいて
、組立不良率を算出するといった技術について開示されている。また、別の組立不良率の
算出方法としては、公差解析(CAE:Computer Aided Engineering)システムを利用し
たものがある。
【0007】
公差解析を行う上での使用者の作業手順等を図16に示したフローチャートに基づいて
説明する。
第1段階:CAD(Computer Aided Design )システムを利用して、複数の部品から成
るユニットの3Dモデルを使用者が作成する。例えば、図11(a)に示したような、部
品1及び部品2から成るユニット3の3Dモデルを作成する。
【0008】
第2段階:組立後のユニットの品質良否の判定に利用する箇所「何処の」及び種類「何
を」とその規格範囲を使用者が設定する(すなわち、ユニットの設計仕様を設定する)。
種類「何を」については、アングル、ギャップ、ポジションが挙げられる。例えば、図1
3に示したような、部品1と部品2とのギャップGを設定する。このギャップGが規格内
に収まっているか否かを判断することによって、ユニット3の品質の良否を判定すること
ができる。
【0009】
第3段階:組立後の部品それぞれのジョイント(組付状態)、例えば6自由度(X,Y
,Z軸方向への並進、X,Y,Z軸回りの回転)を使用者が設定することによって、部品
それぞれがどこで接触し、どのように作用するのかを表す。
第4段階:公差解析に参加させる部分の基準寸法及び公差を使用者が設定する。例えば
、部品1の寸法1aの基準寸法を5.00mmに設定し、その公差を±0.10mmに設
定する。公差については使用者(設計者)の経験などに基づいて設定されることになる。
【0010】
第5段階:統計計算プログラムを起動させて、3Dモデルと、ユニットの設計仕様と、
組立後の部品の6自由度と、公差解析に参加させる部分の基準寸法及び公差とに基づいて
(すなわち、これら条件でユニットを組み立てた場合の)ユニットの組立ばらつきを解析
させる。
【0011】
この解析によって、どの部分が組立ばらつきにどの程度の影響を与えているのかを示し
た「感度」や、公差(すなわち、寸法許容差)の組立ばらつきへの影響を示した「寄与率
」、ばらつきの発生状況を示した「工程能力」などの組立ばらつきに関するデータが得ら
れる。なお、ばらつき発生状況を示した「工程能力」としては、ばらつき分布の平均値、
標準偏差、尖度、及び歪度や、組立不良率などが挙げられる。もし、組立不良率が所定の
基準値より高ければ、公差の見直しなどが行われることになる。なお、この解析は、ユニ
ットの組み立てに使用される部品のばらつき分布が、図17に示したような正規分布にな
っているものとして計算されるようになっている。
【0012】
しかしながら、このように組立前に組立不良率を計算したとしても、実際の不良率がそ
れよりも高くなり、前記所定の基準値をはるかに越え、材料費や加工費の大幅な無駄が生
じてしまうことがある。すなわち、実際の不良率と計算によって求められた不良率との間
に大きな差を生じることがある。
【0013】
この原因の一つとして、実際にユニットの組み立てに使用される部品のばらつき分布が
正規分布になっていないということが考えられる。そのため、実際にユニットの組み立て
に使用される部品のばらつき分布が、図18に示したような分布図で表される場合(すな
わち、大きな偏りがある場合)、規格から外れたユニットが数多く製造されるおそれがあ
る。
【0014】
このような事態を解消する一つの方法としては、検査現場で部品のばらつきに偏りがあ
ることが判明した場合、ばらつきに偏りがあったままユニットの組み立て作業を行って良
いかどうかの判断作業を行うようにするといった方法が挙げられる。
しかしながら、検査担当者に部品のばらつきの偏りがユニットの品質にどのような影響
を与えるのか(すなわち、ユニットの組み立て作業をそのまま行って良いかどうか)を判
断させることはほとんど無理である。その判断はやはり設計者に委ねる必要がある。従っ
て、作業現場の段階まで進んできたものを、設計段階にまで戻さねばならず大きな時間の
ロスを生じることになる。
【特許文献1】特開平10−334151号公報
【特許文献2】特開2001−121367号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、ユニットの組立前に、ユニットの組立
不良率を精度良く求めることができ、また、時間のロスについても少なくすることのでき
る組立品の品質評価方法及びそのシステムを提供することを目的としている。
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係る組立品の品質評価方法(1)は、複数の部品を
組み立てて製造される組立品の品質を評価するための組立品の品質評価方法において、前
記部品の寸法規格を示した情報と、前記組立品の品質良否の判定に利用する前記組立品の
設計仕様を示した情報と、前記部品を実際に測定することによって得られる、前記部品の
寸法のばらつきに関する情報とに基づいて、前記組立品の品質を評価し得る値を求めるス
テップを有していることを特徴としている。
【0017】
上記組立品の品質評価方法(1)によれば、前記組立品を構成する前記部品の寸法のば
らつきに関する情報として、正規分布に関する情報ではなく、実際に測定することによっ
て得られる前記部品の寸法のばらつきに関する情報に基づいて、前記組立品の品質を評価
し得る値(例えば、組立不良率)が求められる。
【0018】
すなわち、前記部品の寸法のばらつきに関する情報が、実測値に基づいて得られるもの
であるため、前記組立品の品質を評価し得る値の精度を高くすることができる。これによ
り、予測値と実際の結果値との差を小さくすることができるため、材料費や加工費の無駄
を少なくすることができる。
【0019】
また、本発明に係る組立品の品質評価方法(2)は、上記組立品の品質評価方法(1)
において、前記組立品の品質を評価し得る値が、組立不良率であることを特徴としている

【0020】
上記組立品の品質評価方法(2)によれば、前記組立品の品質を評価し得る値として、
組立不良率が求められるので、設計や組立動作の見直しなどが必要であるか否かの判断を
容易に行うことができるようになる。
【0021】
また、本発明に係る組立品の品質評価方法(3)は、上記組立品の品質評価方法(1)
又は(2)において、前記部品の寸法のばらつきに関する情報に、前記部品を実際に測定
することによって得られるばらつき分布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度のうち、少
なくとも一つの尺度が含まれていることを特徴としている。
【0022】
上記組立品の品質評価方法(3)によれば、前記部品の寸法のばらつきに関する情報に
、前記部品を実際に測定することによって得られるばらつき分布の平均値、標準偏差、尖
度、及び歪度のうち、少なくとも一つの尺度が含まれている。
ばらつき分布の平均値や、標準偏差、尖度、歪度を用いることによって、ばらつき分布
の形状を適切に表すことができる。従って、前記組立品の品質を評価し得る値(例えば、
組立不良率)の精度をより一層高めることができる。
【0023】
また、本発明に係る組立品の品質評価方法(4)は、上記組立品の品質評価方法(1)
〜(3)のいずれかにおいて、前記組立品を構成する前記部品の寸法のいずれかについて
は、ばらつきに関する情報として、正規分布に関する情報を用いることを特徴としている

【0024】
前記組立品の品質を評価し得る値を求める場合、前記部品の寸法のばらつきに関する情
報については、正規分布に関する情報ではなく、実際に測定することによって得られる情
報(実測値)を用いる方が精度は良くなる。しかしながら、実測値を用いるには、部品の
寸法を実際に測定する作業(例えば、サンプル数として10〜20程度)が必要となる。
【0025】
上記組立品の品質評価方法(4)によれば、全ての寸法に対して、実際に測定すること
によって得られる情報を用いるのではなく、いずれかについては、ばらつきに関する情報
として、前記部品を実際に測定することによって得られる情報ではなく、正規分布に関す
る情報を用いる。
【0026】
例えば、組立不良に影響を及ぼす可能性の高いものについては、実際に測定することに
よって得られる情報を用いるようにし、他方、組立不良に影響を及ぼす可能性の低いもの
については、正規分布に関する情報を用いるようにすれば、前記組立品の品質を評価し得
る値の精度を落とさずに、作業の効率化を図ることができる。
【0027】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(1)は、複数の部品を組み立てて製造
される組立品の品質を評価するための組立品の品質評価システムにおいて、前記部品の寸
法規格を示した情報を記憶する寸法規格記憶手段と、前記組立品の品質良否の判定に利用
する前記組立品の設計仕様を示した情報を記憶する設計仕様記憶手段と、前記部品を実際
に測定することによって得られる、前記部品の実寸法を示した情報を記憶する実寸法記憶
手段と、該実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示した情報に基づいて、前記部品の
寸法のばらつきに関する情報を求めるばらつき算出手段と、前記寸法記憶手段に記憶され
ている前記部品の寸法規格を示した情報と、前記設計仕様記憶手段に記憶されている前記
組立品の設計仕様を示した情報と、前記ばらつき算出手段により求められた前記部品の寸
法のばらつきに関する情報とに基づいて、前記組立品の品質を評価し得る値を求める第1
の評価値算出手段とを備えていることを特徴としている。
【0028】
上記組立品の品質評価システム(1)によれば、前記組立品を構成する前記部品の寸法
のばらつきに関する情報として、正規分布に関する情報ではなく、実際に測定することに
よって得られる前記部品の寸法のばらつきに関する情報に基づいて、前記組立品の品質を
評価し得る値(例えば、組立不良率)が求められる。
【0029】
すなわち、前記部品の寸法のばらつきに関する情報が、実測値に基づいて得られるもの
であるため、前記組立品の品質を評価し得る値の精度を高くすることができる。これによ
り、予測値と実際の結果値との差を小さくすることができるため、材料費や加工費の無駄
を少なくすることができる。
【0030】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(2)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)において、前記第1の評価値算出手段が、前記組立品の品質を評価し得る値とし
て、組立不良率を算出するものであることを特徴としている。
【0031】
上記組立品の品質評価システム(2)によれば、前記組立品の品質を評価し得る値とし
て、組立不良率が求められるので、設計や組立動作の見直しなどが必要であるか否かの判
断を容易に行うことができるようになる。
【0032】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(3)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)又は(2)において、前記第1の評価値算出手段により求められた値と、品質良
否の判定基準を示した情報とに基づいて、前記組立品の良否を判定する良否判定手段を備
えていることを特徴としている。
【0033】
上記組立品の品質評価システム(3)によれば、前記組立品の良否の判定が行われるの
で、設計者でなくても、誰でも簡単に設計や組立動作の見直しなどが必要であるか否かを
判断することができる。
【0034】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(4)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記寸法記憶手段に記憶されている前記部品の寸
法規格を示した情報と、前記設計仕様記憶手段に記憶されている前記組立品の設計仕様を
示した情報と、前記ばらつき算出手段により求められる前記部品の寸法のばらつきに関す
る情報ではなく、前記部品の寸法の正規分布に関する情報とに基づいて、前記組立品の品
質を評価し得る値を求める第2の評価値算出手段と、前記第1の評価値算出手段により求
められた値と、前記第2の評価値算出手段により求められた値とを比較する比較手段とを
備えていることを特徴としている。
【0035】
上記組立品の品質評価システム(4)によれば、前記組立品を構成する前記部品の寸法
のばらつきに関する情報として、実際に測定することによって得られる情報を用いた場合
の前記組立品の品質を評価し得る値と、前記情報を用いなかった場合の前記組立品の品質
を評価し得る値との比較が行われる。
従って、前記組立品の不良率が高くなるのが、前記部品のばらつきに偏りがあることに
よるのかどうか(又は設計そのものの余裕度が無いことによるのかどうか)を判断するこ
とができる。
【0036】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(5)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記ばらつき算出手段が、前記部品を実際に測定
することによって得られるばらつき分布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度のうち、少
なくとも一つの尺度を求めるものであり、前記第1の評価値算出手段が、前記ばらつき算
出手段により求められた尺度を用いて、前記組立品の品質を評価し得る値を求めるもので
あることを特徴としている。
【0037】
上記組立品の品質評価システム(5)によれば、前記部品を実際に測定することによっ
て得られるばらつき分布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度のうち、少なくとも一つの
尺度を用いて、前記組立品の品質を評価し得る値(例えば、組立不良率)が求められる。
ばらつき分布の平均値や、標準偏差、尖度、歪度を用いることによって、ばらつき分布
の形状を適切に表すことができる。従って、前記組立品の品質を評価し得る値の精度をよ
り一層高めることができる。
【0038】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(6)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示
した情報に基づいて、前記部品の寸法のばらつき分布の標準偏差を求める標準偏差算出手
段と、前記寸法規格記憶手段に記憶されている前記部品の寸法規格を示した情報と、前記
標準偏差算出手段により求められる標準偏差とに基づいて、前記部品の寸法規格に対する
ばらつき具合を示した第1の工程能力指数を求める第1の工程能力指数算出手段とを備え
ていることを特徴としている。
【0039】
上記組立品の品質評価システム(6)によれば、前記寸法規格記憶手段に記憶されてい
る前記部品の寸法規格を示した情報(例えば、規格上限、規格下限)と、前記標準偏差算
出手段により求められる標準偏差とに基づいて、前記部品の寸法規格に対するばらつき具
合を示した第1の工程能力指数が求められる。従って、前記組立品を構成する前記部品の
品質管理を容易に行うことができる。
【0040】
例えば、下記の数式から工程能力指数Cpは求められる。
p=T/6σ
U:規格上限
L:規格下限
T:規格の幅(=U−L)
σ:標準偏差
工程能力指数Cpが1.00の時、部品が規格から外れる確率は0.3%となり、工程能力指数Cpが1.33の時、部品が規格から外れる確率は0.01%となる。
【0041】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(7)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示
した情報に基づいて、前記部品のばらつき分布の平均値を求める平均値算出手段と、前記
実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示した情報に基づいて、前記部品のばらつき分
布の標準偏差を求める標準偏差算出手段と、前記寸法規格記憶手段に記憶されている前記
部品の寸法規格を示した情報と、前記平均値算出手段により求められる平均値と、前記標
準偏差算出手段により求められる標準偏差とに基づいて、前記部品の寸法規格の中心から
の偏り具合を示した第2の工程能力指数を求める第2の工程能力指数算出手段とを備えて
いることを特徴としている。
【0042】
上記組立品の品質評価システム(7)によれば、前記寸法規格記憶手段に記憶されてい
る前記部品の寸法規格を示した情報(例えば、規格上限、規格下限)と、前記平均値算出
手段により求められる平均値(例えば、ばらつき分布の平均値)と、前記標準偏差算出手
段により求められる標準偏差とに基づいて、前記部品の寸法規格の中心からの偏り具合を
示した第2の工程能力指数が求められる。従って、前記組立品を構成する前記部品の品質
管理を容易に行うことができる。
【0043】
例えば、下記の数式から工程能力指数Cpkは求められる。
pk=(1−K)T/6σ
U:規格上限
L:規格下限
T:規格の幅(=U−L)
K:偏り度{=|M−μ|/(T/2)}
M:規格の中心{=(U+L)/2}
μ:分布の平均値
σ:標準偏差
工程能力指数Cpkが1より大きい時、平均値の偏りに問題はない。工程能力指数Cpkが1以下の時、平均値の偏りに処置が必要となる。
【0044】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(8)は、上記組立品の品質評価システ
ム(1)〜(7)のいずれかにおいて、前記第1の評価値算出手段が、前記組立品を構成
する前記部品の寸法のいずれかについては、ばらつきに関する情報として、正規分布に関
する情報を用いて、前記組立品の品質を評価し得る値を求めるものであることを特徴とし
ている。
【0045】
前記組立品の品質を評価し得る値を求める場合、前記部品の寸法のばらつきに関する情
報については、正規分布に関する情報ではなく、実際に測定することによって得られる情
報(実測値)を用いる方が精度は良くなる。しかしながら、実測値を用いるには、部品の
寸法を実際に測定する作業(例えば、サンプル数として10〜20程度)が必要となる。
【0046】
上記組立品の品質評価システム(8)によれば、全ての寸法に対して、実際に測定する
ことによって得られる情報を用いるのではなく、いずれかについては、ばらつきに関する
情報として、前記部品を実際に測定することによって得られる情報ではなく、正規分布に
関する情報を用いる。
【0047】
例えば、組立不良に影響を及ぼす可能性の高いものについては、実際に測定することに
よって得られる情報を用いるようにし、他方、組立不良に影響を及ぼす可能性の低いもの
については、正規分布に関する情報を用いるようにすれば、前記組立品の品質を評価し得
る値の精度を落とさずに、作業の効率化を図ることができる。
【0048】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(9)は、上記組立品の品質評価システ
ム(8)において、使用者が操作し得る入力手段から得られる情報に基づいて、前記組立
品を構成する前記部品の各寸法のうち、実際に測定することによって得られる情報を用い
るものを選択する選択手段と、該選択手段により選択されたものを使用者へ紹介する第1
の紹介手段とを備えていることを特徴としている。
【0049】
上記組立品の品質評価システム(9)によれば、前記組立品を構成する前記部品の各寸
法のうち、実際に測定することによって得られる情報を用いるものを使用者が任意に選択
することができる。従って、使用者は組立不良に影響を及ぼす可能性の高いものについて
のみ、実際に測定するようにすることができる。
【0050】
また、選択されたものが使用者へ紹介される。例えば、測定が必要となるものを示した
部品寸法測定要求シートなるものがプリントアウトされれば、使用者は測定すべき対象を
容易に把握することができ、また、測定作業についても効率良く行うことができるように
なる。
【0051】
また、本発明に係る組立品の品質評価システム(10)は、上記組立品の品質評価シス
テム(1)〜(9)のいずれかにおいて、前記組立品を構成する部品に関する情報を使用
者へ紹介する第2の紹介手段を備え、該第2の紹介手段が、前記ばらつき算出手段による
ばらつきに関する情報の算出が完了しているものの紹介と、完了していないものの紹介と
の差別化するものであることを特徴としている。
【0052】
実際に測定することによって得られるばらつきに関する情報を算出するためには、当た
り前ではあるが、前記組立品を構成する前記部品の寸法(例えば、サンプル数として10
〜20程度)を実際に測定する必要があり、また、測定して結果を入力する必要がある。
換言すれば、測定が完了していないもの、測定結果の入力が完了していないものについて
は、ばらつきに関する情報を算出することができない。
【0053】
上記組立品の品質評価システム(10)によれば、前記ばらつき算出手段によるばらつ
きに関する情報の算出が完了しているものの紹介と、完了していないものの紹介とが差別
化される。例えば、ディスプレイ上に表示することによって紹介される場合、一方は黄色
の文字で表示されるようにし、他方は青色の文字で表示されるようにする。これにより、
使用者はばらつきに関する情報の算出が完了しているものと、完了していないものとの区
別を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明に係る組立品の品質評価方法及びそのシステムの実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0055】
図1は、実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システムの要部を概略的に示したブ
ロック図である。図中11は品質評価システムを示しており、品質評価システム11は計
算部12と、キーボード16aやマウス16bなどの入力部16と、ディスプレイ17a
やプリンタ17bなどの出力部17と、各種情報を記憶する記憶部18とを含んで構成さ
れている。計算部12はCPU13と、所定のプログラム(解析モデルプログラムや統計
計算プログラムなど)を格納したROM14と、各種データを一時記憶するRAM15と
を含んで構成されている。
【0056】
解析モデルプログラムを起動させると、「背景技術」の項目でも説明したユニットの3
Dモデルの作成や、組立後のユニットの品質良否の判定に利用する箇所「何処の」及び種
類「何を」(ユニットの設計仕様)の設定、組立後の部品それぞれの6自由度(X,Y,
Z軸方向への並進、X,Y,Z軸回りの回転)の設定、ユニットの解析に参加させる部分
の基準寸法及び公差の設定を、使用者はキーボード16aやマウス16bなどの入力部1
6を使って行うことができるようになっている。また、統計計算プログラムを起動させる
と、使用者により設定された内容に基づいてユニットを製造した場合の組立ばらつきに関
するデータが得られるようになっている。
【0057】
記憶部18にはユニットの3Dモデルに関する情報(モデルファイル18a)や、組立
ばらつきの解析結果に関する情報(解析結果ファイル18b、18c)などが記憶される
ようになっている。また、記憶部18には部品寸法のばらつき指数(ばらつき分布の平均
値、標準偏差、尖度、歪度)を求めるばらつき指数計算プログラム(プログラムファイル
18d)が記憶されている。
【0058】
次に、実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システム11における計算部12で行
う処理動作を図2〜図4に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動
作は解析モデルプログラムが起動された場合に行われる動作である。但し、ここでは記憶
部18(モデルファイル18a)から作成済のユニットの3Dモデルに関する情報を読み
込む動作から説明する。
【0059】
まず、記憶部18(モデルファイル18a)からユニットの3Dモデルに関する情報を
読み込むと(ステップS1)、次に、組立後のユニットの品質良否の判定に利用する、ユ
ニットの設計仕様(例えば、図13に示したギャップGの基準寸法及び公差)の入力を容
易にするための入力インターフェース画面をディスプレイ17aに表示し(ステップS2
)、その後、使用者によるユニットの設計仕様の入力の完了を待つ(ステップS3)。
【0060】
使用者(ここでは設計者)によるユニットの設計仕様の入力が完了したと判断すれば、
次に、組立後の部品それぞれの6自由度(組付状態)の入力を容易にするための入力イン
ターフェース画面をディスプレイ17aに表示し(ステップS4)、その後、使用者によ
る6自由度の入力の完了を待つ(ステップS5)。
【0061】
使用者による6自由度の入力が完了したと判断すれば、次に、ユニットの解析に参加さ
せる寸法(例えば、図12に示した部品1、2の寸法1a〜1c、2a)の基準寸法及び
公差の入力を容易にするための入力インターフェース画面をディスプレイ17aに表示し
(ステップS6)、その後、使用者による基準寸法及び公差の入力の完了を待つ(ステッ
プS7)。なお、ここではユニットの解析に参加させるものとして、寸法だけを例に挙げ
ているが、ユニットの解析に参加させるものとしては、寸法に限定されず、別の実施の形
態では、角度や位置などを参加させるようにしても良い。
【0062】
基準寸法及び公差に関するデータについては、例えば、図5に示したようなフォーマッ
トをしたデータベースに記憶されるようになっており、「名前」の項目にある「104−
1」は部品番号「104」とそれに対する枝番「1」とを示し、部品番号が「104」で
ある部品の点P1からX方向への長さの基準寸法が11mm、その公差が±0.1mmに
設定されていることを示し、「名前」の項目にある「104−2」は部品番号「104」
とそれに対する枝番「2」とを示し、部品番号が「104」である部品のX方向に対する
X方向の角度の基準角度が90度、その公差が±0.5度に設定されていることを示して
いる。
【0063】
使用者による基準寸法及び公差の入力が完了したと判断すれば、次に、統計計算プログ
ラムを起動させて、3Dモデルと、ユニットの設計仕様と、組立後の部品の6自由度と、
ユニットの解析に参加させる部分の基準寸法及び公差とに基づいて(すなわち、これら条
件でユニットを組み立てた場合の)ユニットの組み立てばらつきを解析する(ステップS
8)。なお、ここでは、寸法のばらつき分布が正規分布(例えば、図17参照)になって
いるものとして、組立ばらつきを解析する。
【0064】
解析することによって得られた結果については解析結果ファイル18bへ保存する(ス
テップS9)。なお、「背景技術」の項目でも説明したように、この解析によって、どの
部分が組立ばらつきにどの程度の影響を与えているのかを示した「感度」や、公差(すな
わち、寸法許容差)の組立ばらつきへの影響を示した「寄与率」、ばらつきの発生状況を
示した「工程能力」などの組立ばらつきに関するデータが得られる。「工程能力」として
は、ばらつき分布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度や、組立不良率などが挙げられる

【0065】
次に、ユニットの解析に参加させる部分のうち、理想的な正規分布ではなく、実測値か
ら得られるばらつき分布(例えば、図18参照)を用いるものの選択を容易にするための
入力インターフェース画面をディスプレイ17aに表示し(ステップS10)、その後、
使用者による選択の完了を待つ(ステップS11)。図6に、前記入力インターフェース
画面の一例を示す。
【0066】
画面の上部21には「完了」、「分布表示」、「一覧表示」、「選択」、「取消」など
のボタン21a〜21eが形成されている。画面の中央部22には「名前」、「特徴」、
「基準」、「公差」が表示されており、例えば、「名前」が「104−1」の行には、部
品番号が「104」である部品の点P1からX方向への長さの基準寸法が11mm、その
公差が±0.1mmに設定されていることが示されている。
【0067】
また、画面の下部23には「名前」が「104−3」である部分のばらつき分布に関す
る情報などが表示されている。なお、図6に示したように、「名前」が「104−3」で
ある部分のばらつき分布に関する情報を表示させるには、例えば、まず「名前」が「10
4−3」となっている行にマウスポインタを移動させてマウス16bをクリックしてから
、次に、マウスポインタを「分布表示」ボタン21b上に移動させてマウス16bをクリ
ックすれば良いようになっている。
【0068】
また、実測値から得られるばらつき分布を用いるものの選択については、例えば、まず
選択対象の行にマウスポインタを移動させてマウス16bをクリックしてから、次に、マ
ウスポインタを「選択」ボタン21d上に移動させてマウス16bをクリックすれば良い
ようになっている。なお、選択を取り消す場合には、取消対象の行にマウスポインタを移
動させてマウス16bをクリックしてから、次に、マウスポインタを「取消」ボタン22
e上に移動させてマウス16bをクリックすれば良いようになっている。
【0069】
使用者による選択入力が完了した(例えば、「完了」ボタン21aがクリックされた)
と判断すれば、次に、図7に示したような、使用者により選択された部分と該部分の基準
寸法及び公差とを示した部品寸法測定要求シートをディスプレイ17aに表示することに
よって、当該部分の寸法の測定(例えば、サンプル数として10〜20程度)を使用者へ
要求し(ステップS12)、その後、使用者による測定結果入力の完了を待つ(ステップ
S13)。
【0070】
なお、部品寸法測定要求シートについてはプリンタ17bから紙面で出力するようにし
ても良い。また、選択された内容に関するデータについては、例えば、図8に示したよう
なフォーマットをしたデータベースに記憶されるようになっている。また、項目として、
実測値の入力完了済(「1」は済、「0」は未)と、実測値から得られるばらつき指数の
算出済(「1」は済、「0」は未)とが準備されており、各寸法毎に実測値の入力が完了
しているかどうか、また、ばらつき指数の算出が完了しているかどうかを管理することが
できるようになっている。例えば、名前「104−1」に対応する寸法の実測値が測定さ
れ、その測定結果が入力されると、名前「104−1」の実測値入力の項目の値が「1」
とされ、また、入力された実測値に基づいてばらつきの指数の算出が行われると、名前「
104−1」のばらつき算出の項目の値が「1」とされるようになっている。
【0071】
そのため、別の実施の形態では、これら情報に基づいて、実測値の入力が完了している
ものと、入力が完了していないもの、また、ばらつき指数の算出が行われたものと、行わ
れていないものとの区別が容易にできるように、紹介の差別化を図るようにしても良い。
例えば、図6に示したような入力インターフェース画面の中央部22に各寸法に関する情
報を表示する場合、下記のようにして紹介の差別化を図る。
【0072】
1.ばらつき指数の算出が完了しているものについては、青色で表示する。
2.ばらつき指数の算出が完了していないが、実測値の入力は完了しているものついて
は、黄色で表示する。
3.実測値の入力が完了していないものについては、赤色で表示する。
なお、実測値の入力が要求されていないものを、例えば、これらの色と別の色(黒色な
ど)で表示するようにすれば、実測値の入力が要求されているものとそうでないものとの
区別についても容易に行うことができるようになる。
【0073】
ステップS13で、使用者による測定結果の入力が完了したと判断すれば、次に、記憶
部18(プログラムファイル18d)からばらつき指数計算プログラムを読み込み(ステ
ップS14)、ばらつき指数計算プログラムを起動させて、当該部分のばらつき指数(ば
らつき分布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度)を算出する(ステップS15)。
【0074】
標準偏差については、分散の平方根から求めることができ、尖度については、平均の周
りの4次のモーメントμ4と標準偏差σの4乗との比(すなわちμ4/σ4)から求めることができ、また、歪度については、平均の周りの3次のモーメントμ3と標準偏差σの3乗との比(すなわちμ3/σ3)から求めることができる。
【0075】
次に、「ユニット組立ばらつき」の解析、又は「部品単品工程能力」の算出の選択を容
易にするための入力インターフェース画面をディスプレイ17aに表示し(ステップS1
6)、その後、使用者による選択を待つ(ステップS17)。
【0076】
使用者により「ユニット組立ばらつき」の解析が選択されたと判断すれば、次に、統計
計算プログラムを用いて、3Dモデルと、ユニットの設計仕様と、組立後の部品の6自由
度と、ユニットの解析に参加させる部分の基準寸法及び公差とに基づいて(すなわち、こ
れら条件でユニットを組み立てた場合の)ユニットの組み立てばらつきを解析する(ステ
ップS18)。なお、ここでは、使用者により実測値から得られるばらつき指数の使用を
指示された部分については、ステップS15での算出により得られたばらつき指数を用い
、その他の部分については、理想的な正規分布を用いて、組立ばらつきを解析する。
【0077】
解析することによって得られた結果については解析結果ファイル18cへ保存し(ステ
ップS19)、その後、ステップS24(図4)へ進む。なお、上記したように、この解
析によって、「感度」や、「寄与率」、ばらつきの発生状況を示した「工程能力」などの
組立ばらつきに関するデータが得られる。「工程能力」としては、ばらつき分布の平均値
、標準偏差、尖度、及び歪度や、組立不良率などが挙げられる。また、解析結果を解析結
果ファイル18cへ保存し、蓄積していくようにすれば、ロット毎の組立不良率などを比
較することができる(すなわち、組立不良率の変動を把握することができる)ため、品質
低下などの原因の究明に役立てることができる。
【0078】
一方、ステップS17(図3)において、使用者により「部品単品工程能力」の算出が
選択されたと判断すれば、次に、ステップS15での算出により得られたばらつき指数(
例えば、ばらつき分布の平均値μ、標準偏差σ)と、使用者により予め設定された規格の
中心(基準寸法)M、規格上限U(=M+公差)、規格下限L(=M−公差)、規格の幅
T(=U−L)とに基づいて、工程能力指数Cpと工程能力指数Cpkとを算出し(ステップS20)、その算出結果をディスプレイ17aに表示し(ステップS21)、その後、
「ユニット組立ばらつき」の解析開始の指示を容易にするための入力インターフェース画
面をディスプレイ17aに表示し(ステップS22)、使用者による解析開始の指示を待
つ(ステップS23)。
【0079】
工程能力指数Cpは、下記の数式から求められる。
p=T/6σ
U:規格上限
L:規格下限
T:規格の幅(=U−L)
σ:標準偏差
工程能力指数Cpが1.00の時、部品が規格から外れる確率は0.3%となり、工程能力指数Cpが1.33の時、部品が規格から外れる確率は0.01%となる。
【0080】
工程能力指数Cpkは、下記の数式から求められる。
pk=(1−K)T/6σ
U:規格上限
L:規格下限
T:規格の幅(=U−L)
K:偏り度{=|M−μ|/(T/2)}
M:規格の中心{=(U+L)/2}
μ:分布の平均値
σ:標準偏差
工程能力指数Cpkが1より大きい時、平均値の偏りに問題はない。工程能力指数Cpkが1以下の時、平均値の偏りに処置が必要となる。
【0081】
ステップS23において、使用者による「ユニット組立ばらつき」の解析開始の指示が
行われたと判断すれば、ステップS18へ進んで、ユニットの組立ばらつきの解析を行い
、その後、ステップS24(図4)へ進む。
ステップS24では、「評価判定結果」の出力、又は「初期の設計仕様との比較」の出
力の選択を容易にするための入力インターフェース画面をディスプレイ17aに表示し、
その後、使用者による選択を待つ(ステップS25)。
【0082】
使用者により「評価判定結果」の出力が選択されたと判断すれば、次に、ステップS1
8(図3)での解析によって得られた組立不良率が、予め設定された規格内(例えば、4
.3ppm)に収まっているか否かを判断し(ステップS26)、例えば、図9に示した
ように、その判断結果と共に、ユニットの組立ばらつきに関する情報をディスプレイ17
aに表示する(ステップS27)。
【0083】
一方、使用者により「初期の設計仕様との比較」の出力が選択されたと判断すれば、次
に、ステップS8(図2)での解析(ユニットの解析に参加させる寸法のばらつき分布が
全て理想的な正規分布になっているものとして解析)によって得られた結果と、ステップ
S18(図3)での解析(実測値から得られるばらつき分布を一部使用)によって得られ
た結果とを比較して、部品単品のばらつき分布の偏りによるユニットの組立ばらつきへの
影響度を算出し(ステップS28)、その算出結果をディスプレイ17aに表示する(ス
テップS29)。
影響度については、例えば、下記の数式から求められる。
影響度=(A2/B2)×100
A:部品単品の各寸法の、感度×標準偏差
B:ユニット全体の標準偏差
【0084】
その後、「評価判定結果」の出力の指示を容易にするための入力インターフェース画面
をディスプレイ17aに表示し(ステップS30)、使用者による出力の指示を待ち(ス
テップS31)、使用者による「評価判定結果」の出力の指示が行われたと判断すれば、
ステップS26へ進む。
【0085】
上記実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システムによれば、ユニットを構成する
部品の寸法のばらつきに関する情報として、正規分布に関する情報だけではなく、実際に
測定することによって得られるばらつきに関する情報に基づいて、ユニットの品質を評価
し得る値(ここでは、組立ばらつきに関するデータ)が求められる。
【0086】
すなわち、部品の寸法のばらつきに関する情報として、実測値に基づいて得られるもの
を利用するため、ユニットの品質を評価し得る値の精度を高くすることができる。これに
より、予測値と実際の結果値との差を小さくすることができるため、材料費や加工費の無
駄を少なくすることができる。
【0087】
また、部品単品のばらつき指数に基づいて、部品単品の工程能力指数Cp、Cpkが求められるので、使用者はユニットだけでなく、ユニットを構成する部品単品の品質管理につ
いても容易に行うことができる。
【0088】
また、ユニットの解析に参加させる寸法のばらつき分布が全て理想的な正規分布になっ
ているものとして解析する(図2のステップS8)ことによって得られた結果と、実測値
から得られるばらつき分布を用いて解析する(図3のステップS18)ことによって得ら
れた結果とが比較され、その比較結果が使用者へ紹介される。従って、ユニットの不良率
が高くなるのが、部品のばらつきに偏りがあることによるのかどうか(又は設計そのもの
の余裕度が無いことによるのかどうか)を容易に判断することができるようになる。
【0089】
なお、実施の形態(1)に係る品質評価システムでは、入力部16としてキーボード1
6aやマウス16bを使用する場合について、出力部17としてディスプレイ17aやプ
リンタ17bを使用する場合について説明しているが、別の実施の形態に係る組立品の品
質評価システムでは、図10に示したように、入力部16、出力部17としてネットワー
クを介してデータのやり取りを行うことための通信手段を用いるようにしても良い。
【0090】
図中31は品質評価システムの本体装置(例えば、PC)であり、本体装置31はネッ
トワークを介してデータのやり取りを行うための通信手段(図示せず)を有しており、ネ
ットワークに繋がれている別の装置(例えば、端末装置41〜44)との間でデータのや
り取りを行うことができるようになっている。
【0091】
本体装置31はユニットを構成する部品のばらつき指数を算出する部品ばらつき指数算
出手段32aと部品の工程能力指数Cp、Cpkを算出する工程能力指数算出手段32bとを有した部品ばらつき指数等算出システム32と、ユニットの組立ばらつきを解析する組
立ばらつき解析手段33aを有した公差解析システム33と、解析結果を記憶するための
記憶手段34と、ステップS26(図4)で示した処理を実現するための評価結果判定手
段35aとステップS28(図4)で示した処理を実現するための初期設計仕様比較手段
35bと過去の結果との比較を行う過去結果比較手段35cとを有した評価結果判定等シ
ステム35とを含んで構成されている。
【0092】
部品ばらつき指数等算出システム32は、図7に示したような部品寸法測定要求シート
を各工場などに設置されている端末装置41〜44へ送信することによって、寸法測定を
工場にいる検査担当者に要求するようになっている。また、この要求に応じて、端末装置
41〜44から送信されてきた測定結果を取り込み、その測定結果に基づいて部品のばら
つき指数を算出するようになっている。
【0093】
公差解析システム33は、部品ばらつき指数等算出システム32で算出された部品のば
らつき指数に基づいて、ユニットの組立ばらつきの解析を行うようになっている。また、
公差解析システム33で得られた結果や、評価結果判定等システム35で得られた結果に
ついては、ネットワークを介して端末装置41〜44へ送信されるようになっている。
【0094】
これにより、組立ばらつきの解析によって得られた結果などを時間のロス無く、各工場
などの作業現場へ伝えることができるようになる。例えば、電子メールで伝えたり、We
b上で閲覧可能にする。また、部品単品のばらつき指数の算出に必要となるサンプルの測
定についても時間のロス無く、現場へ要求することができるようになる。また、現場で測
定することによって得られた結果についても時間のロス無く、システムの本体側で取得す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システムにおける計算部で行う処理動作を示したフローチャートである。
【図3】実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システムにおける計算部で行う処理動作を示したフローチャートである。
【図4】実施の形態(1)に係る組立品の品質評価システムにおける計算部で行う処理動作を示したフローチャートである。
【図5】基準寸法及び公差に関するデータが記憶されるデータベースのフォーマットの一例を示した図である。
【図6】入力インターフェース画面の一例を示した図である。
【図7】部品寸法測定要求シートの一例を示した図である。
【図8】実際に寸法を測定すべき対象に関するデータが記憶されるデータベースのフォーマットの一例を示した図である。
【図9】評価判定結果の表示例を示した図である。
【図10】別の実施の形態に係る組立品の品質評価システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図11】複数の部品を組み立てて成るユニットを示した図であり、(a)はその斜視図であり、(b)はその側面図である。
【図12】(a)、(b)はユニットを構成する部品それぞれを示した斜視図である。
【図13】ユニットの品質良否の判定に利用するギャップを説明するための説明図である。
【図14】(a)、(b)はユニットを構成する部品それぞれの寸法測定結果及び良否判定結果を示した図である。
【図15】ユニットの品質良否の判定に用いるギャップの寸法測定結果及び良否判定結果を示した図である。
【図16】公差解析を行う上での使用者の作業手順等を示したフローチャートである。
【図17】正規分布を示した図である。
【図18】実測値から得られるばらつき分布の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0096】
11 組立品の品質評価システム
12 計算部
13 CPU
16 入力部
17 出力部
18 記憶部
31 本体装置
41、42、43、44 端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を組み立てて製造される組立品の品質を評価するための組立品の品質評価方
法において、
前記部品の寸法規格を示した情報と、
前記組立品の品質良否の判定に利用する前記組立品の設計仕様を示した情報と、
前記部品を実際に測定することによって得られる、前記部品の寸法のばらつきに関する
情報とに基づいて、前記組立品の品質を評価し得る値を求めるステップを有していること
を特徴とする組立品の品質評価方法。
【請求項2】
前記組立品の品質を評価し得る値が、組立不良率であることを特徴とする請求項1記載
の組立品の品質評価方法。
【請求項3】
前記部品の寸法のばらつきに関する情報に、前記部品を実際に測定することによって得
られるばらつき分布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度のうち、少なくとも一つの尺度
が含まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の組立品の品質評価方法。
【請求項4】
前記組立品を構成する前記部品の寸法のいずれかについては、
ばらつきに関する情報として、正規分布に関する情報を用いることを特徴とする請求項
1〜3のいずれかの項に記載の組立品の品質評価方法。
【請求項5】
複数の部品を組み立てて製造される組立品の品質を評価するための組立品の品質評価シ
ステムにおいて、
前記部品の寸法規格を示した情報を記憶する寸法規格記憶手段と、
前記組立品の品質良否の判定に利用する前記組立品の設計仕様を示した情報を記憶する
設計仕様記憶手段と、
前記部品を実際に測定することによって得られる、前記部品の実寸法を示した情報を記
憶する実寸法記憶手段と、
該実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示した情報に基づいて、前記部品の寸法の
ばらつきに関する情報を求めるばらつき算出手段と、
前記寸法記憶手段に記憶されている前記部品の寸法規格を示した情報と、前記設計仕様
記憶手段に記憶されている前記組立品の設計仕様を示した情報と、前記ばらつき算出手段
により求められた前記部品の寸法のばらつきに関する情報とに基づいて、前記組立品の品
質を評価し得る値を求める第1の評価値算出手段とを備えていることを特徴とする組立品
の品質評価システム。
【請求項6】
前記第1の評価値算出手段が、前記組立品の品質を評価し得る値として、組立不良率を
算出するものであることを特徴とする請求項5記載の組立品の品質評価システム。
【請求項7】
前記第1の評価値算出手段により求められた値と、品質良否の判定基準を示した情報と
に基づいて、前記組立品の良否を判定する良否判定手段を備えていることを特徴とする請
求項5又は請求項6記載の組立品の品質評価システム。
【請求項8】
前記寸法記憶手段に記憶されている前記部品の寸法規格を示した情報と、前記設計仕様
記憶手段に記憶されている前記組立品の設計仕様を示した情報と、前記ばらつき算出手段
により求められる前記部品の寸法のばらつきに関する情報ではなく、前記部品の寸法の正
規分布に関する情報とに基づいて、前記組立品の品質を評価し得る値を求める第2の評価
値算出手段と、
前記第1の評価値算出手段により求められた値と、前記第2の評価値算出手段により求
められた値とを比較する比較手段とを備えていることを特徴とする請求項5〜7のいずれ
かの項に記載の組立品の品質評価システム。
【請求項9】
前記ばらつき算出手段が、前記部品を実際に測定することによって得られるばらつき分
布の平均値、標準偏差、尖度、及び歪度のうち、少なくとも一つの尺度を求めるものであ
り、
前記第1の評価値算出手段が、前記ばらつき算出手段により求められた尺度を用いて、
前記組立品の品質を評価し得る値を求めるものであることを特徴とする請求項5〜8のい
ずれかの項に記載の組立品の品質評価システム。
【請求項10】
前記実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示した情報に基づいて、前記部品の寸法
のばらつき分布の標準偏差を求める標準偏差算出手段と、
前記寸法規格記憶手段に記憶されている前記部品の寸法規格を示した情報と、前記標準
偏差算出手段により求められる標準偏差とに基づいて、前記部品の寸法規格に対するばら
つき具合を示した第1の工程能力指数を求める第1の工程能力指数算出手段とを備えてい
ることを特徴とする請求項5〜9のいずれかの項に記載の組立品の品質評価システム。
【請求項11】
前記実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示した情報に基づいて、前記部品のばら
つき分布の平均値を求める平均値算出手段と、
前記実寸法記憶手段に記憶されている実寸法を示した情報に基づいて、前記部品のばら
つき分布の標準偏差を求める標準偏差算出手段と、
前記寸法規格記憶手段に記憶されている前記部品の寸法規格を示した情報と、前記平均
値算出手段により求められる平均値と、前記標準偏差算出手段により求められる標準偏差
とに基づいて、前記部品の寸法規格の中心からの偏り具合を示した第2の工程能力指数を
求める第2の工程能力指数算出手段とを備えていることを特徴とする請求項5〜10のい
ずれかの項に記載の組立品の品質評価システム。
【請求項12】
前記第1の評価値算出手段が、前記組立品を構成する前記部品の寸法のいずれかについ
ては、ばらつきに関する情報として、正規分布に関する情報を用いて、前記組立品の品質
を評価し得る値を求めるものであることを特徴とする請求項5〜11のいずれかの項に記
載の組立品の品質評価システム。
【請求項13】
使用者が操作し得る入力手段から得られる情報に基づいて、前記組立品を構成する前記
部品の各寸法のうち、実際に測定することによって得られる情報を用いるものを選択する
選択手段と、
該選択手段により選択されたものを使用者へ紹介する第1の紹介手段とを備えているこ
とを特徴とする請求項12記載の組立品の品質評価システム。
【請求項14】
前記組立品を構成する部品に関する情報を使用者へ紹介する第2の紹介手段を備え、
該第2の紹介手段が、前記ばらつき算出手段によるばらつきに関する情報の算出が完了
しているものの紹介と、完了していないものの紹介との差別化するものであることを特徴
とする請求項5〜13のいずれかの項に記載の組立品の品質評価システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2006−23238(P2006−23238A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203407(P2004−203407)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】