説明

組立式収納箱

【課題】耐水性や耐久性に優れ、汚れても洗浄して繰り返し再利用することができる組立式の収納箱を提供する。
【解決手段】中空状に膨出する多数の突起100が形成されたキャップシート101と、突起100の開口側に積層されたバックシート102と、突起100の頂面側に積層されたライナーシート103とを備え、これらを熱融着により積層一体化した樹脂製の気泡ボート10の所定の部位に切り込み3を入れることによってヒンジ部2を形成し、このヒンジ部2を介して連設された、少なくとも底板片11、側板片12及び背板片13を含む各構成片を箱状に組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の物品を区分け収納するために用いられる組立式の収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、工具や機械部品などを区分け収納するケースとして、所定の形状に切り抜いた段ボールを組み立ててなる段ボール製収納ケースが開示されている。かかる段ボール製収納ケースは、側板部を外側板と内側板との二重構造とすることによって側板部の湾曲変形を抑止するとともに、全面部と背面部についてもフラップ片を介する多重構造とすることで、その強度を高めようとしている。
【0003】
すなわち、引用文献1に開示された段ボール収納ケースにあっては、その強度を高めるために、外側板を起立させるとともに、その内側に内側板を折曲して内側板に突設した突片を底板に透設した係止孔に挿通して係止することで、側板部が二重構造に形成されるようにしている。また、起立させた外背板の内側に、相互に係着させた後プラップ片を配置して内背板を内折りして内背板に突設した突片を底板に透設した係止孔に挿通係止して背面部を多重構造となるように形成し、前面部も同様に、起立させた前外板の内側に前フラップ片を相互に係着して配置し、前内板を内側に屈曲して前内板に突設した突片を底板に透設した係止孔に挿通係止することによって多重構造に形成されるようにしている(引用文献1の[0010]〜[0011]段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3027168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような段ボール製の収納ケースは、段ボールを重ねることで強度を高めているものの、段ボール製であるがために耐水性や耐久性に乏しく、また、工具や機械部品に付着する油などで汚れてしまった場合には、そのような汚れを洗い流すのが困難であることから繰り返し再利用するには適していなかった。
【0006】
そこで、本発明者らは上記のような事情に鑑みて鋭意検討を重ねたところ、一般に気泡ボードと称される樹脂製の中空板に着目し、かかる気泡ボードに加工を施して箱状に組み立てることによって、耐水性や耐久性に優れ、汚れても洗浄して繰り返し再利用することができる組立式の収納箱を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る組立式収納箱は、中空状に膨出する多数の突起が形成されたキャップシートと、前記突起の開口側に積層されたバックシートと、前記突起の頂面側に積層されたライナーシートとを備え、これらを熱融着により積層一体化した樹脂製の気泡ボートからなり、前記気泡ボードの所定の部位に切り込みを入れることによってヒンジ部を形成するとともに、前記ヒンジ部を介して連設された、少なくとも底板片、側板片及び背板片を含む各構成片を箱状に組み立ててなる構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る組立式収納箱は、樹脂製の気泡ボードの所定の部位に切り込みをいれてヒンジ部を形成し、このヒンジ部を介して連設された各構成片を箱状に組み立ててなるものであるため、耐水性や耐久性に優れ、汚れても洗浄して繰り返し再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る組立式収納箱の実施形態の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る組立式収納箱の実施形態の展開図である。
【図3】気泡ボードの一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る組立式収納箱の要部拡大図である。
【図5】図4のA−A断面を示す断面図である。
【図6】図4のB−B断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る組立式収納箱の概略を示す斜視図であり、図2は、図1に示す組立式収納箱の展開図である。
【0011】
これらの図に示すように、本実施形態における組立式収納箱1は、ヒンジ部2を介して連設された構成片としての底板片11、側板片12、背板片13、前板片14、及び連結片15を備えている。そして、連設された各構成片をヒンジ部2で折り曲げるとともに、背板片13の両側縁に形成された係合突起4aと、前板片14の両側縁に形成された係合突起4bとを、それぞれ側板片12に穿設された係合孔5a,5bに係合させることによって箱状に組み立てられるようになっている。
【0012】
また、組立式収納箱1は、図3に示すような樹脂製の気泡ボード10からなっている。かかる気泡ボード10は、中空状に膨出する多数の突起100が形成されたキャップシート101と、突起100の開口側に積層されたバックシート102と、突起100の頂面側に積層されたライナーシート103とを備えている。
【0013】
このような気泡ボード10は、例えば、図示しない多数の吸引孔が設けられた成形ロールの外周面に、シート状に連続して繰り出される溶融樹脂を接触させて中空状に膨出する多数の突起100を真空成形することによってキャップシート101を形成しつつ、このキャップシート101を、突起100の開口側に供給されたバックシート102と、突起100の頂面側に供給されたライナーシート103とで挟み込み、これらを熱融着により積層一体化することによって製造することができる。このとき、キャップシート101、バックシート102、ライナーシート103のそれぞれの厚みは、製造される気泡ボード10に要求される強度、剛性などを考慮して適宜調整することができるが、通常は、100μm〜1.5mm程度とされる。
【0014】
また、気泡ボード10を製造するにあたり、その材料樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を単独で、又は二種以上を混合したものを用いることができるが、比較的硬質であり、曲げ反復に強いヒンジ特性を有するポリプロピレン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0015】
このような樹脂製の気泡ボード10からなる組立式収納箱1は、図2に示すような所定の形状に気泡ボード10を切り抜くとともに、各構成片の境界に切り込み3を入れてヒンジ部2を形成することによって、箱状に組み立てられるようになっている。ヒンジ部2を形成する際に切り込み3を入れるのは、気泡ボード10のバックシート102側、ライナーシート103側のいずれであってもよいが、図示する例では、気泡ボード10のバックシート102側に切り込み3を入れることによってヒンジ部2を形成している。
【0016】
ここで、図2に鎖線で囲む部分の拡大図を図4に示すとともに、図4のA−A断面図を図5(a)に示し、当該部位をヒンジ部2で折り曲げた状態を図5(b)に示す。同様に、図4のB−B断面図を図6(a)に示し、当該部位をヒンジ部2で折り曲げた状態を図6(b)に示す。
これらの図に示すように、突起100がない部位では、キャップシート101とバックシート102との融着部を切断するように切り込み3を入れ(図5(a)参照)、ライナーシート103のみが屈曲してヒンジ部2を形成するようになっている(図5(b)参照)。これに対して、突起100がある部位では、バックシート102と突起100の側壁部とを切断するように切り込み3を入れ(図6(a)参照)、ライナーシート103に突起100の頂面が融着された部分が屈曲してヒンジ部2を形成するようになっている(図6(b)参照)。
【0017】
これにより、ヒンジ部2は、ライナーシート103のみからなる部分と、ライナーシート103に突起100の頂面が融着されて二重構造となっている部分とが交互に配置されて形成されることになる。したがって、気泡ボード10に切り込み3を入れて形成されたヒンジ部2は、ライナーシート103に突起100の頂面が融着された二重構造となっている部分によって部分的に補強されて、ヒンジ部2の曲げ易さを損なわない程度に強度が高められている。すなわち、ヒンジ部2を補強するために、例えば、ヒンジ部2を形成しようとする部位にシート材を積層して二重構造としただけでは、ヒンジ部2が曲げにくくなって、組立式収納箱1の組み立てに支障をきたしてしまうおそれがあるが、本実施形態にあっては、ヒンジ部2が部分的に二重構造となるために、その曲げ易さを損なうことなく適度にヒンジ部2が補強されている。
【0018】
また、曲げ易さを損なうことなくヒンジ部2の強度をさらに高めるために、例えば、ポリエチレン系樹脂フィルムなどのような柔軟なフィルム材を気泡ボード10に積層することもできる。このとき、バックシート102側に切り込み3を入れてヒンジ部2を形成するのであれば、ライナーシート103側の面、すなわち、切り込み3を入れる側とは反対側の面に、必要に応じて接着剤を介するなどして当該フィルム材を積層すればよい。
【0019】
なお、特に図示しないが、気泡ボード10のライナーシート103側から切り込み3を入れてヒンジ部2を形成する場合、突起100がない部位では、ライナーシート103を切断するように切り込み3を入れ、キャップシート101とバックシート102との融着部が屈曲してヒンジ部2を形成することになる。一方、突起100がある部位では、ライナーシート103に突起100の頂面が融着された部分と突起100の側壁部とを切断するように切り込み3を入れ、バックシート102が屈曲してヒンジ部2を形成することになる。
いずれにしても、形成されたヒンジ部2は、バックシート102のみからなる部分と、バックシート102にキャップシート102が融着されて二重構造となっている部分とが交互に配置されて形成されることになり、ヒンジ部2が部分的に二重構造となって、その曲げ易さを損なうことなく適度にヒンジ部2が補強されることになる。
【0020】
以上のような組立式収納箱1は、樹脂製の気泡ボード10からなるため耐水性、耐久性に優れ、汚れても水洗いが可能であるため、繰り返し再利用する用途に適している。さらに、箱状に組み立てる際に互いに係合させる係合突起4a,4bや係合孔5a,5bも破損し難く、これらが破損して組み立てられてなくなってしまというような不具合を有効に回避することができる。
また、組立式収納箱1に収納する物品は特に限定されないが、気泡ボード10には緩衝性もあるため、破損しやすい機械部品などを収納するのに適している。
また、組立式収納箱1は組立式であるため、未使用時には展開された状態で嵩張らずに保管することができ、その保管に際して多くのスペースを必要としない。
【0021】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0022】
例えば、前述した実施形態では、底板片11、側板片12、背板片13、前板片14、及び連結片15を構成片として備え、これらを箱状に組み立てた例を示した。このような形態とされた組立式収納箱1は、本発明に係る組立式収納箱の一例であり、これに限定されるものではない。本発明に係る組立式収納箱は、少なくとも底板片、側板片、及び背板片を構成片として含み、これらによって囲まれる収納部が形成されるようになっていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、耐水性や耐久性に優れ、汚れても洗浄して繰り返し再利用することができる組立式の収納箱を提供する。
【符号の説明】
【0024】
1 組立式収納箱
2 ヒンジ部
3 切り込み
10 気泡ボード
11 底板片
12 側板片
13 背板片
100 突起
101 キャップシート
102 バックシート
103 ライナーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に膨出する多数の突起が形成されたキャップシートと、前記突起の開口側に積層されたバックシートと、前記突起の頂面側に積層されたライナーシートとを備え、これらを熱融着により積層一体化した樹脂製の気泡ボートからなり、
前記気泡ボードの所定の部位に切り込みを入れることによってヒンジ部を形成するとともに、
前記ヒンジ部を介して連設された、少なくとも底板片、側板片及び背板片を含む各構成片を箱状に組み立ててなることを特徴とする組立式収納箱。
【請求項2】
前記気泡ボードの前記バックシート側に前記切り込みを入れるにあたり、
前記突起がない部位では、前記キャップシートと前記バックシートとの融着部を切断するように前記切り込みを入れ、
前記突起がある部位では、前記バックシートと前記突起の側壁部とを切断するように前記切り込みを入れた請求項1に記載の組立式収納箱。
【請求項3】
前記気泡ボードの前記ライナーシート側に前記切り込みを入れるにあたり、
前記突起がない部位では、前記ライナーシートを切断するように前記切り込みを入れ、
前記突起がある部位では、前記ライナーシートに前記突起の頂面が融着された部分と前記突起の側壁部とを切断するように前記切り込みを入れた請求項1に記載の組立式収納箱。
【請求項4】
前記気泡ボードがポリプロピレン系樹脂からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の組立式収納箱。
【請求項5】
前記気泡ボードの前記切り込みを入れた側とは反対側の面に、ポリエチレン系樹脂フィルムを積層してなる請求項4に記載の組立式収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−168290(P2011−168290A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32269(P2010−32269)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】