説明

組立製品の構成部材の縁構造

【課題】複数のフックで結合した組立製品を、部材の傷付きを防止しつつ、容易に分解する。
【解決手段】組立製品を構成する部材の縁に、マイナスドライバーを容易に挿入可能で、かつ回転させたときに他方の部材の縁を押し離す距離が予め定めた距離に保たれるような形状の切り欠きを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立製品を構成する部材の縁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載装置などの情報機器は、回路基板が格納された金属製の箱型の筐体に、装飾が施された樹脂製のフロントカバーが嵌められて構成される。両者の結合状態は、筐体側に配された複数のフック(係合突起ともいわれる)がフロントカバー側のフック受けに引っ掛かることにより保持されている(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特願平5−115537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これを分解するためには、全てのフックを外すと共に、筐体とフロントカバーを引き離す必要がある。ここで、フックを外す動作と距離を離す動作とを、ある程度同時に行わなければならない。フックを一旦外しても、距離を離さないと、再びフックが引っ掛かった状態に戻ってしまうからである。したがって、例えば、マイナスドライバーで一部のフックを外しながら、さらにもう1本のマイナスドライバーを筐体とフロントカバーの隙間に挿入して回転させるなどして隙間を拡大させることを行う。複数のフックがある場合は、この動作を、所定の場所ごとに行うことになる。
【0005】
ところで、フックが外れていないにもかかわらず、マイナスドライバーを無理に回して隙間を広げようとすると、隙間は広がらないばかりか、筐体やフロントカバーのドライバーの接触部分に傷をつけてしまう。これでは、修理したい場合や分解後の部品をリサイクルしたい場合に都合が悪い。
【0006】
一方、ある場所で必要以上に隙間を拡大させてしまうと、未解除の他のフックがフック受けに強固に引っ掛かってしまい、解除しにくくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、複数のフックで結合した組立製品を、部材の傷付きを防止しつつ、容易に分解する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明では、組立製品を構成する部材の縁に、マイナスドライバーを容易に挿入可能で、かつ回転させたときに他方の部材の縁を押し離す距離が予め定めた距離に保たれるような形状の切り欠きを設ける。
【0009】
例えば、本発明の第1の態様は、第1の部材と第2の部材とが、一方の部材に設けられたフックを、他方の部材のフック受けに引っ掛けることにより結合し、
前記第1の部材の、前記第2の部材の縁と対向する縁には、工具を挿入するための切り欠きが設けられている。前記切り欠きは、対向する前記第2の部材の縁の辺に平行な辺を有する第1の凹みと、当該第1の凹みに連結し、当該第1の凹みより深い扇型の第2の凹みとからなる。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、複数のフックにより結合した組立製品の構成部材の縁構造であって、対向する部材の縁と対向する縁には、工具を挿入するための切り欠きが設けられている。前記切り欠きは、対向する部材の縁の辺と平行な辺を有する第1の凹みと、当該第1の凹みに連結した扇型の第2の凹みとからなる。
【0011】
前記切り欠きは、前記第2の部材の縁の辺を長手方向とした長方形の領域と、その領域の中央付近を中心した円の一部であり2本の半径の間の角がおよそ90°の扇形領域とを、前記第2の部材の縁から切り取った形状で構成されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態が適用された車載装置(例えば、ナビゲーション装置)の外観図である。また、図2は、その分解図である。
【0014】
車載装置1は、筐体100とフロントカバー200とを備える。
【0015】
筐体100の内部には、様々な処理を行う回路基板が格納されている。なお、筐体100には、外部機器との接続のためのコネクタやケーブル等を配するための孔、放熱のための空気孔、車両に取り付けのためのネジ孔などが設けられている。筐体100は、その強度を保つため、ステンレス鋼などの金属で構成されている。
【0016】
フロントカバー200は、ユーザの操作を受け付けるためのハードスイッチ202や、CDなどの挿入孔、液晶ディスプレイの表示窓202などが配されており、ユーザに対するインタフェースとして機能する。そのため、所定の装飾がなされている。フロントカバー200は、概ねプラスチックで構成されている。
【0017】
筐体100とフロントカバー200とは、複数のフック構造により結合している。すなわち、筐体100の、フロントカバー200の縁210と対向する縁110には、上下左右の4つの面のそれぞれに、2つずつフック120が配されている。
【0018】
フック120は、フロントカバー200側のフック受け220に引っかかる構造になっている。具体的には、フック120の、筐体100の内部から見て外側方向への突出部121は、フック受け220の孔221に嵌る。これにより、筐体100とフロントカバー200とは、互いに引き離される方向への移動が拘束され、結合状態が保持される。
【0019】
フック120と、フック受け220は、その材質に応じた可撓性を備えているため、組立工程における嵌め込みと、分解工程における取り外しが可能である。
【0020】
フック120が筐体100の内側方向に押されると、又は、フック受け220が筐体の外側方向にめくられると、フック120は、フック受け220から外れる。フック120が外れた状態で、筐体100とフロントカバー200との距離が離されると、筐体100とフロントカバー200との結合状態が解かれ、分解した状態となる。
【0021】
さらに、本実施形態では、筐体100の、フロントカバー200の縁210に対向する縁110には、切り欠き130が設けられている。切り欠き130は、筐体100の、それぞれの面に、2つのフック120の間に、1つずつ設けられている。
【0022】
図3は、かかる切り欠き130の機能について説明するための図である。(A1)〜(A3)は、結合部分(図1の領域A)の拡大図である。(B1)〜(B3)は、フック部(120、220)の断面図(B−B断面図)である。
【0023】
切り欠き130は、分解工具であるマイナスドライバーを挿入するためにある。切り欠き130は、ドライバーが回転したときに、筐体100とフロントカバー200との距離を適度に保つような形状を備えている。
【0024】
そのため、切り欠き130は、第1の凹み131と第2の凹み132とからなる。第1の凹み131は、マイナスドライバーの先端部の断面形状に合わせて長方形を切り取った部分である。その長手方向の縁131aは、対向するフロントカバー200の縁210の辺に平行(すなわち、筐体100とフロントカバー200との隙間dに平行)である。第1の凹み131の長手方向の長さは、使用されるドライバーの先端部の幅(断面の長手方向の長さ)のおよそ半分である。第1の凹み131の深さ131bは、使用されるドライバーの先端部の厚さ(断面の短手方向の長さ)にほぼ等しい。
【0025】
第2の凹み132は、第1の凹み131とつながっており、第1の凹み131より深い。また、ドライバーの先端部の回転軌跡に相当する扇型を切り取った部分である。すなわち、第2の凹み132は、ドライバーを第1の凹み131に挿入した端部D1aが筐体100から離れる方向に90°回転させた場合に、他方の端部D1bが描く軌跡部分に相当する。
【0026】
言い換えれば、切り欠き130は、筐体100の縁110の辺を長手方向とした長方形の第1の領域と、第1の領域の一端を中心とした、第1の領域の長手方向の長さにほぼ等しい半径の円の一部であり2本の半径の間の角がおよそ90°の扇型の第2の領域とを、筐体100の縁110から切り取った形状で構成されている。
【0027】
かかる切り欠き130の機能について、分解工程における分解動作に従って説明する。分解工程では、まず、切り欠き130の付近のフック120を外す。そのため、(A1)に示すように、マイナスドライバーD2をフック120とフック受け220との隙間に挿入し、フック120の突出部121をフック受け220の孔221から外す((B1)のZ方向参照)。
【0028】
このままではドライバーD2を抜くと元に戻ってしまうので、もう1本マイナスドライバーD1を、切り欠き130に挿入する。このとき、(A1)に示すように、第1の凹み131にドライバーD1が嵌まり込むように挿入する。
【0029】
そして、(A2)〜(A3)に示すように、ドライバーD1を回転させ、隙間dを拡大することにより、筐体100とフロントカバー200とを引き離す。回転方向は、第1の凹み131に収まっているドライバーD1の端部D1aがフロントカバー200の対向する縁210を押す方向、言い換えれば、第2の凹み132の扇形の空間に収まっているドライバーD1の端部D1bが、筐体100側に移動する方向である。
【0030】
この回転動作により、(A3)に示すように、筐体100とフロントカバー200とは、ドライバーD1の幅(断面長方形の長手方向)のおよそ半分程度、引き離される。これにより、(B3)に示すように、フック120の突出部121がフック受け220の孔221から外れ、解除状態が保たれる。一方で、隙間dは、必要以上に空かないので、未解除の他のフック120が強固に噛み合うのを防止できる。
【0031】
こうして、全てのフック120について、外す作業と、切り欠き130を利用した引き離す作業を行い、最終的に、筐体100とフロントカバー200とが完全に引き離される。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0033】
フック120を外すためには、フック120の突出部121を押し下げるか、フック受け220をめくり上げるかしなければならない。すなわち、上下方向に力を加えることになる(図3の矢印Z参照)。一方、筐体100とフロントカバー200とを引き離すためには、左右に力を加えなければならない(図3の矢印X参照)。これらの動作は、ある程度同時に行わなければならず、加える力の手加減が難しい。したがって、必要以上に、左右方向に引き離す力を加えてしまうことがある。この点、上記実施形態によれば、所定のマイナスドライバーを用いて、切り欠き130に挿入して回転させるだけで、丁度良い隙間dが達成できる。また、第2の凹み132は、ドライバーの端部の回転軌跡に合わせた形状となっているので、滑らかな回転動作が可能である。これらの作用により、筐体100やフロントカバー200の縁を必要以上に傷つけることなく容易に分解することができる。
【0034】
なお、第1の凹み131及び第2の凹み132の形状(深さ、長さ、半径の大きさ等)は、使用が想定されるドライバーを回転させたときに適度な隙間dが達成できるように、フック120の配置、大きさ、部材の材質等に応じて、適宜変更することができる。
【0035】
また、切り欠き130は、場所や数に特に制限はない。フックの数、配置場所に応じて、適宜設けることができる。
【0036】
また、切り欠き130は、フック120が存在する側の部材に限定されず、フック受け220が存在する部材の方に設けてもよい。
【0037】
また、本発明は、車載装置に限定されない。複数の部材を組み合わせてなる組立製品に適用することができる。また、フック構造も、上記の形態の他に、さまざまに変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用された車載装置の外観図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態が適用された車載装置の分解図である
【図3】図3は、分解工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・車載装置、
100・・・筐体
110・・・縁
120・・・フック
130・・・切り欠き
200・・・フロントカバー
210・・・縁
220・・・フック受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立製品の構成部材の縁構造であって、
第1の部材と第2の部材とが、一方の部材に設けられたフックを、他方の部材のフック受けに引っ掛けることにより結合し、
前記第1の部材の、前記第2の部材の縁と対向する縁には、工具を挿入するための切り欠きが設けられており、
前記切り欠きは、
対向する前記第2の部材の縁の辺に平行な辺を有する第1の凹みと、当該第1の凹みに連結し、当該第1の凹みより深い扇型の第2の凹みとからなる
ことを特徴とする組立製品の構成部材の縁構造。
【請求項2】
複数のフックにより結合した組立製品の構成部材の縁構造であって、
対向する部材の縁と対向する縁には、工具を挿入するための切り欠きが設けられており、
前記切り欠きは、
対向する部材の縁の辺と平行な辺を有する第1の凹みと、当該第1の凹みに連結した扇型の第2の凹みとからなる
ことを特徴とする組立製品の構成部材の縁構造。
【請求項3】
第1の部材と第2の部材とが、一方の部材に設けられたフックを、他方の部材のフック受けに引っ掛けることにより結合し、
前記第1の部材の、前記第2の部材の縁と対向する縁には、断面長方形の工具を挿入するための切り欠きが設けられており、
前記切り欠きは、前記第2の部材の縁の辺を長手方向とした長方形の領域と、その領域の中央付近を中心した円の一部であり2本の半径の間の角がおよそ90°の扇形領域とを、前記第2の部材の縁から切り取った形状で構成されている
ことを特徴とする組立製品の構成部材の縁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−135529(P2008−135529A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320017(P2006−320017)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】