組織を特徴づける方法
組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定する定量的方法は、バイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性に基づいて、所定の期間にわたる動的光学曲線に関するデータを生成する工程と、データに基づき、動的光学パラメーターの値を決定する工程とを含む。動的光学パラメーターの値は、動的光学パラメーターの基準値であって組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている基準値と比較され、比較に基づき、組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態が決定される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、この方法を実行するコンピュータプログラム命令を保持する。基準値は、公知の代表的組織試料からの動的光学特性を測定することにより計算することができる。好ましい組織試料は、上皮および子宮頸部組織試料を含む。好ましい方法は、腫瘍形成および/またはHPV感染を診断および/またはグレード付けする工程、および/または組織試料の細胞の核対細胞質比を計算する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織を特徴づける方法、ならびにインビボスクリーニング用の自動化診断方法および臨床診断用の半自動化診断方法に関する。本方法は特定のバイオマーカーを適用した後に組織内で起こる動的光学現象の定量的査定および動的光学パラメーターの予測値の決定に依存する。
【背景技術】
【0002】
上皮の癌および前癌を発見しグレード付けする現行の診断およびスクリーニング手順は定性的かつ主観的であり、複数の段階を要し、労力がかかるものであり、全体的にコスト効率が低いと特徴づけられる。
【0003】
子宮頸部の場合、癌予防のためのスクリーニングプログラムの開発は治癒可能な前駆体、例えば子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の早期発見と識別とを目的としている。
【0004】
子宮頸部腫瘍形成の主要なスクリーニング方法はパップテストである。このテストでは、子宮頸部上皮から多くの細胞を採取して適宜固定および染色した後に細胞学的に検査する。この方法の正確さは、サンプリングエラーおよび読み取りエラーの両方により制限され、その結果、誤って陰性とされる率が非常に高い。過去何年もの間パップテストの性能を決定しようとして多くの研究が行われてきた。研究者間では、中間感度は0.59であり中間特異性は0.69〜0.75であるという同意がある(Nanda Kら、(2000) Annals of Internal Medicine, 16; 132(10):810-819; Sankaranarayanana Rら、(2005) International Journal of Gynecology and Obstetrics, 89:S4-S12;およびFahey MTら、(1995) American Journal of Epidemiology, 141:680-689)。パップテストは高い特異性と感度とを同時に達成することはできないということも広く受け入れられている。例えば、特異性を0.90〜0.95の範囲に上昇させることは可能であるが、その場合感度は0.20〜0.35の範囲に下降する(Fahey MTら、(1995) American Journal of Epidemiology, 141:680-689)。
【0005】
典型的には診断テストの性能を表示する定量的統計パラメーターとして感度(SS)と特異性(SP)とが用いられる。感度は真陽性(TP)の割合を表し、特異性は真陰性(TN)の割合を表す。例えば、感度80%(すなわち0.80)とは、至適基準の助けにより、テストが100件のうち80件を当該疾病に対して陽性であると正しく診断することを意味する。
【0006】
通常の臨床検査では、パップ染料が異常に付着すると膣鏡検査を行う。膣鏡検査は、低パワー顕微鏡を用いた子宮頸部の検査を含む。以下の基準に従って子宮頸部の組織を評価する。a)病変周辺の形態、b)異常上皮の脈管パターン、およびc)酢酸溶液などのマーカーを局所適用した後の染色の度合い。膣鏡検査のグレード付けは視覚検査のみに基づき、発見された病変は経験的に得られた定性スケールによって分類される。視覚査定に基づく臨床診断(膣鏡検査)は、感度0.77および特異性0.64を特徴とする(Mitchell MFら、(1998) Obstetrics & Gynecology, 91:626-631)。従来の膣鏡検査では、微小侵襲性子宮頸癌の56%および侵襲性子宮頸癌の30%を発見できず、そのため、この治癒可能な状態で病変を処置することができない。さらに、最も非典型的なバイオプシー部位の識別に対して医師どうしが同意しない確率が高い(77%)。研究者らは、膣鏡検査によって子宮頸部の病変を識別する際に観察者間で意見が大きく分かれることを報告している(Schiffman Mら、(2003) Arch. Pathol, Lab. Med., 127:946-949; NHS Report. Cervical Screening Programme(子宮頸部スクリーニングプログラム), England:2003-04 Statistical Bulletin 2004/20. 2004年10月 U.K;およびCantor SBら、(1998) Obstetrics & Gynecology, 91;(2):270-277)。このことは、膣鏡検査の再現性を損なうが、これは主に膣鏡検査による査定が定性的かつ主観的であるという事実による。
【0007】
より正確なCIN診断とグレード付けとを行うために、疑わしい領域からバイオプシー試料を得て組織学的検査が行われている。しかしバイオプシーサンプリングは例えば以下の問題点を有する。a)主観性であり、観察者間で意見が分かれることが多い(>30%)、これはIsmailら(Ismail SMら、(1989) British Medical Journal, 298;(6675):707-710)、Bellinaら(Bellina JHら、(1982) South Med J., 75;(1):6-8. 56)、およびRobertsonら(Robertson AJら、(1989) J. Clin. Pathol, 42;(3):231-238)の研究によって明らかにされている。b)バイオプシーを行う異常部位を選択する際にサンプリングエラーの危険性がある。
【0008】
子宮頸部腫瘍形成の現行の診断手順により、病気の発生および死亡率は歴史的に低いレベルまで低下した。しかし現行の診断手順ではこれ以上の低下はなし得ないと考えられる。この事実により、1つの段階だけで「見て処置する」ことができるという概念を実現する、別のより効率的な技術の必要性が強調されている。
【0009】
過去約10年間にわたって、組織病理学のために、改良された客観的情報を提供することができる新規な光学的技術を開発すべく多大な努力がなされてきた。これらのアプローチは通常、組織が正常な状態から病変状態へと変化することにより組織の構造と機能とが変化するという事実、さらにこれらの変化は光と組織との相互作用現象を利用することによってインビボで検出可能であるという事実に基づいている。組織からの出射光の特性を測定し分析することにより、異なる分子の存在に関する情報、ならびに疾病の進行中に起こる様々な構造的および機能的変化に関する情報を提供することができ、これにより病変をインビボで識別しグレード付けする手段を提供することができる。
【0010】
これまでこの方向でなされてきた試みは、生化学的および/または構造的変化のインビボ検出を目標とした様々な分光学的および分光イメージング手法を含む。明示的には、米国特許第4,930,516号が癌組織の検出方法を開示している。これによると、組織試料に第1の波長を有する励起光を照射し、検出された励起光に応答する蛍光照射を発生させる。癌組織と正常組織との差異は、発光された蛍光照射の波長および振幅に基づく。あるいは正常組織のスペクトル振幅が同一波長における癌組織のそれと異なる。
【0011】
蛍光減衰時間のモニタリングに基づく時間分解分光法は、照射された組織のタイプまたは状態を判別する潜在的可能性をさらに有していることが知られている。例えば米国特許第5,562,100号は、特定の波長を有する単パルスの励起光を標的組織に照射することに基づいて組織特性を決定し、標的組織が励起光に応答して発した蛍光照射を検出する方法を開示している。組織特性は発光された照射の振幅を記録したものから決定される。同様に、米国特許第5,467,767号は、時間分解蛍光分光法を用いて組織の悪性腫瘍状態を決定する方法を開示している。
【0012】
2つ以上の測定法を組み合わせて組織特性を決定することに焦点を置いた他の発明もある。例えば米国特許第6,975,899号は、癌組織内で起こっている形態学的変化から生化学的変化を分離するために、蛍光を反射率と組み合わせて用いる装置および方法を開示している。この組合せアプローチは、組織が正常組織から癌状態に変化すると、組織特性を決定する際の蛍光分光の有効性が吸光分光に比べて減少するという事実に基づいている。
【0013】
他の特許、例えばUtzingerらの米国特許第5,369,496号は、蛍光、反射率および偏光反射分光法を用いて診断用マルチ分光デジタルイメージングを行う方法および装置を開示している。米国特許第6,427,082号では、レーザ誘起(LIF)に対する組織の蛍光応答と白光による照射に対する後方散乱応答に基づいて子宮頸部の病理組織と健常組織とを判別する方法およびシステムが提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
概して、分光による従来の方法は組織上の限られた数の点における組織特性に焦点を置き、光学イメージングによる方法は、組織領域全体にわたって光学パラメーターを時間とは独立して測定することに焦点を置いている。さらにこれらの方法は、変化した生化学または細胞組織構造に関する情報のみを提供し、変化した上皮機能に関する情報は提供しない。
【0015】
C. Balasが開発した別のアプローチは、これまでの発明とは実質的に異なる。なぜならこのアプローチは、バイオマーカーを適用した後に組織内で起こる動的現象を定量的に測定することを含むからである(PCT公報WO 01/72214 A1 (Balas C.(2001) IEEE Trans. on Biomedical Engineering, 48:96-104)および(Balas CJら、(1999) SPIE 3568:31-37))。動的現象の測定は、組織の構造上の特徴と機能上の特徴との両方に関する情報を提供する可能性を潜在的に有しており、インビボ診断を容易にする。
【0016】
これらの文献に開示された方法および装置は、病理判別因子(バイオマーカー)の管理に依存している。病理判別因子は、異常細胞の変化した構造および機能の選択的視覚化を向上させる性質を有し、時間に対する出射光を任意の空間点および様々な波長帯域で測定する。時間に対する、出射光の記録強度(例えば後方散乱光(IBSL)の強度、拡散反射率(DR)および蛍光強度)は「動的光学曲線(DOC)」と定義され、組織とバイオマーカーとの相互作用中に起こる光学現象の一時的特性を表す。得られたDOCのモデリングおよび分析により、様々な動的光学パラメーター(DOP)の計算が可能となる。動的光学パラメーターは、すべての画像位置(画素または画素群)で、バイオマーカーと組織との相互作用運動を特徴づける。これらのパラメーターの空間的分布は運動マップを含み、運動マップは組織のカラー画像上に広げることができる。これらのデータは、診断、スクリーニングおよびフォローアップのために病変をインビボ検出し、マッピングしグレード付けする手段を提供する可能性を潜在的に有し、同時にバイオプシーサンプリングおよび外科的処置のガイドを可能とする。
【0017】
典型的には、このような診断手法の臨床的価値は、感度(SS)と特異性(SP)の正負の予測値によって表される性能により決定される。SSおよびSPが現行の診断方法のそれよりも多い場合、この新規の技術はスクリーニングおよび/または臨床診断の目的に適しているとみなされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書に記載する発明は、PCT公報WO 01/72214 Al; Balas C.(2001) IEEE Trans. on Biomedical Engineering, 48:96-104;およびBalas CJら、(1999) SPIE 3568:31-37に開示された方法を改良した方法を提供する。具体的には本発明は、スクリーニング目的の自動化診断方法または膣鏡検査における半自動化臨床診断方法を提供する。これらの方法は、適切なDOPと対応するカットオフ値を選択することに基づいており、様々な病理状態を最も良く判別する。上記方法は、DOCから抽出されたDOPと、定性的および定量的病理学の両方とを関連づけることにより達成される。本明細書に開示する本発明はさらに、生存する組織内の構造上の特徴および機能上の特徴の両方を査定する方法を提供し、上皮移動現象のモデリング、および上記特性と、インビボ測定された動的光学特性とを関連づけることによって上記査定を行う。
【0019】
本発明は、組織、例えば癌性または前癌組織(例えば子宮頸部、子宮、口、皮膚、呼吸器官および消化器官の癌および/または前癌組織)を特徴づける(例えばグレード付ける)方法、例えば自動化または半自動化方法を提供する。従って本発明は第1の局面において、組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定する方法であって、
バイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性に基づいて、所定の期間にわたる動的光学曲線に関するデータを生成する工程と、
上記データに基づき、動的光学パラメーターの値を決定する工程と、
動的光学パラメーターの値と、動的光学パラメーターの基準値であって組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている基準値とを比較する工程と、
比較に基づき、組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態を決定する工程と、
を含む方法を提供する。本発明の方法は、例えば、スクリーニング、臨床診断、組織に対するガイド付きバイオプシーサンプリングまたは処置を容易にするために有用である。組織は上皮前癌組織または子宮頸部、子宮、口、皮膚、呼吸器官または消化器官の前癌または癌性組織であってもよい。本方法は、所定の期間バイオマーカーに曝された組織またはその一部分からの後方散乱光の強度に基づいて動的光学曲線をプロットする工程、動的光学曲線に基づき、動的光学パラメーター、例えば「integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」、「Slope A」および「Slope B」を決定する工程、1以上の動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づき、組織を特徴づける工程を含んでもよい。動的光学曲線は、バイオマーカーの適用後に組織部位から得られる後方散乱光の強度の一時的変動を表す。動的光学パラメーターは、1以上の動的光学曲線の数学的分析、または1以上の動的光学曲線の経験的、手動的または視覚的分析により引き出されてもよい。
【0020】
特に好ましい実施形態では、テスト中の組織は子宮頸部組織である。更なる実施形態では、本方法は好ましくは、腫瘍形成を診断するか又は特徴づけるため、および/またはHPV感染を検出するために用いられる。更なる実施形態では、本方法は、組織の細胞の核対細胞質比を決定するために用いられる。テスト中の組織は好ましくは上皮細胞を含む。
【0021】
本発明の方法は好ましくは、少なくとも60%の感度および少なくとも60%の特異性を提供し、さらに好ましくは少なくとも65%または70%の感度および少なくとも65%または70%の特異性、最も好ましくは少なくとも75%、76%、77%、78%、79%または80%の感度および少なくとも75%、76%、77%、78%、79%または80%の特異性を提供する。
【0022】
一実施形態では、バイオマーカーは、酢酸溶液(例えば3〜5%酢酸溶液)、蟻酸、プロピオン酸、ブチル酸、ルゴールヨード、シラーヨード、メチレンブルー、トルイジンブルー、浸透性物質、イオン性物質およびインディゴカーマインの溶液から選択される。
【0023】
別の実施形態では、動的光学パラメーターはIntegralであり、正規化された(無次元の)少なくとも約480〜650という値(例えば少なくとも約480、490、500,510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640または650)は、テスト中の子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0024】
更なる実施形態では、動的光学パラメーターがintegralであり、正規化された(無次元の)少なくとも約420〜490という値(例えば少なくとも約420、430、440,450、460、470、480、485または490)は、HPV感染が上記子宮頸部癌組織の原因であることを示す(例えばHPV感染と重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0025】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターがMaxであり、少なくとも約70〜90という較正単位の値(例えば少なくとも約70、75、80、85、86、87、88、89または90)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0026】
更なる実施形態では、動的光学パラメーターがMaxであり、少なくとも約65〜90という較正単位の値(例えば少なくとも約60、65、70、75、80、85、86、87、88、89または90)は、HPV感染が上記子宮頸部癌組織の原因であることを示す(例えばHPV感染と重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0027】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはArea to Maxであり、正規化された(無次元の)少なくとも約120〜170という値(例えば少なくとも約120、130、140、150、160または170)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0028】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはTime to Maxであり、少なくとも約80〜100秒という値(例えば少なくとも約80、85、90、95、100)は、テスト中の子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0029】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターは「Area to Max」であり、重度の子宮頸部腫瘍形成用の「Area to Max」カットオフ値より大きいか又はほぼ同じである値は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。この場合、「Area to Max」カットオフ値は、正規化された(無次元の)値で約120と約170との間(例えば約120、130、140、150、160または170)である。
【0030】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはSlope Aであり、少なくとも約1.1〜1.3(rad)という値(例えば少なくとも約1.1、1.2、または1.3rad)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0031】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはSlope Bであり、少なくとも約―0.012〜―0.090(rad)という値(最大でも例えば約−0.012、−0.020、―0.025、―0.030、―0.040、―0.050、―0.060、―0.070、−0.080、または−0.090)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0032】
別の局面では、本発明は、子宮頸部組織、例えば子宮頸部癌または前癌組織を特徴づける方法であって、所定の期間バイオマーカーに曝され映像化されたされた子宮頸部組織またはその一部分から得られた光学特性(例えば子宮頸部癌または前癌組織からの後方散乱光の強度)に基づいて動的光学曲線をプロットする工程、動的光学曲線に基づいて、「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される動的光学パラメーターを決定する工程と、1以上の動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づいて子宮頸部癌または前癌組織を特徴づける工程と、によって子宮頸部組織、例えば子宮頸部癌または前癌組織を特徴づける方法を提供する。
【0033】
さらに別の局面では、本発明は、組織を特徴づける方法であって、例えばアプリケータを用いてバイオマーカーを組織に投与する工程と、バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉し整合する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉および整合を行う工程と、一連のスペクトルおよびカラー画像から、すべての画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する出射光を表す工程と、動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示して、それにより組織を特徴づける工程と、を含む方法を提供する。
【0034】
更なる実施形態では、本発明は、組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する方法を提供する。本方法は、例えばアプリケータを用いてバイオマーカーを組織に投与する工程と、バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉し、好ましくは整合する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉および整合を行う工程と、一連のスペクトルおよびカラー画像から、選択された画像点又はすべての画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する組織の光学特性、例えば出射光を表す工程と、データ(すなわち動的光学曲線)から1以上の動的光学パラメーター(例えば「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」)を計算する工程と、上記1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示し、それにより組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する工程と、を含む方法を提供する。
【0035】
本発明の様々な局面について列挙したすべての実施形態は、本発明の他の関連する局面にも、必要な変更を加えることにより適用されるが、冗長になることを避けるために説明を繰り返さないことが確認される。
【0036】
一実施形態では、組織の機能特性および構造特性に関する情報を得るために、動的光学パラメーター「Integral」が用いられる。別の実施形態では、動的光学パラメーターは「Max」であり、組織の機能特性および構造特性は、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、核対細胞質比からなる群より選択される。
【0037】
更なる実施形態では、核対細胞質比(NCR)と「Integral」パラメーターおよび「Max」パラメーターとを関連づける数式は以下の通りである。
NCR=1/1349×Integral−0.278、および
NCR=1/181×Max−0.309。
【0038】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターは「Slope A」であり、組織の機能特性および構造特性は、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在および貧弱なリンパ排出系統からなる群より選択される。
【0039】
関連する局面では、本発明はさらに、癌組織を特徴づけるコンピュータプログラム命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラム命令が演算装置によって実行されると、前記演算装置に、
バイオマーカーの適用後に一連のスペクトルおよびカラー画像から、選択された画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する出射光を表す工程と、
動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、
上記1以上の動的光学パラメーターを保存して癌組織の特徴づけに用いる工程と、
を実行させる、コンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0040】
好ましい実施形態では、動的光学パラメーターは、動的光学パラメーターの組合せを介して、人工神経回路、統計的パターン認識アルゴリズム、ベイジアン分類または分類ツリーの助けにより病理状態を決定するために用いられる。
【0041】
更なる局面では、組織を特徴づける方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記方法が、
所定の期間にわたってバイオマーカーに曝された組織またはその一部分の捕捉された光学特性から動的光学曲線に関するデータを決定する工程と、
上記データに基づいて、動的光学パラメーターを決定する工程と、
1以上の上記動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づいて、前記組織を特徴づける工程と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0042】
同様に本発明は、子宮頸部組織を特徴づけるためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記命令が、
所定の期間にわたってバイオマーカーに曝された子宮頸部組織またはその一部分の1以上の光学特性に基づいて動的光学曲線をプロットするための命令と、
上記動的光学曲線に基づいて、「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される動的光学パラメーターを決定するための命令と、
1以上の上記動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づいて、前記子宮頸部組織を特徴づけるための命令と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0043】
さらに、組織を特徴づける方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記方法が、
バイオマーカーを組織に投与する工程と、
バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉を行う工程と、
一連のスペクトルおよびカラー画像から、選択された画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する光学特性を表す工程と、
動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、
上記1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示し、癌組織を特徴づける工程と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0044】
本明細書においてさらに、組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記方法が、
バイオマーカーを組織に投与する工程と、
バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉し整合する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉および整合を行う工程と、
一連のスペクトルおよびカラー画像から、すべての画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する出射光を表す工程と、
動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、
上記1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示し、組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する工程と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0045】
本発明の方法に関するすべての適切な実施形態は、本発明のコンピュータ読み取り可能な媒体の局面にも、必要な変更を加えることにより適用され、その逆もまたしかりである。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明と請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本明細書に開示する診断方法のフローチャートを示す。
【図2】図2は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類によるヒト乳頭腫ウイルス属(HPV)感染に対応するDOCを示す。
【図3】図3は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による炎症に対応するDOCを示す。
【図4】図4は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による子宮頸部上皮内腫瘍I(CIN I)に対応するDOCを示す。
【図5】図5は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による重度(HG)病変(CIN II、III、微小侵襲性癌)に対応するDOCを示す。
【図6】図6は、組織の様々な病理状態を診断するために用いられ得る、典型的DOCに対応するDOPを示す。
【図7】図7は、明示的DOP(Integral)に対応する受信者操作特性(ROC)曲線と、この特定のDOPの軽度CIN/重度CIN判別性能を表す「ROC曲線下領域」とを示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図8】図8は、明示的DOP(integral)に対応するROC分析から得られた感度(灰色)および特異性(黒)のプロットを示す。これらは、この特定のDOPの軽度病変/重度病変判別性能を表す。480から650の範囲から選択されたIntegral値は、SSおよびSPが共に60%を超える状態で、子宮頸部の軽度腫瘍形成と子宮頸部の重度腫瘍形成とを判別するためのカットオフ値を含む。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で3%酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた
【図9A】図9Aは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9B】図9Bは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9C】図9Cは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9D】図9Dは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9E】図9Eは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図10A】図10Aは、バイオプシー前に同一試料から得られた2つの異なるDOP(IntegralおよびMax)のうちの1つに対する、核対細胞質比(NCR)の散乱したプロットおよび線形退化曲線を示す。核対細胞質比(NCR)は組織試料内で定量的に査定した。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図10B】図10Bは、バイオプシー前に同一試料から得られた2つの異なるDOP(IntegralおよびMax)のうちの1つに対する、核対細胞質比(NCR)の散乱したプロットおよび線形退化曲線を示す。核対細胞質比(NCR)は組織試料内で定量的に査定した。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図11】図11は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による健常(正常)組織に対応するDOCを示す。
【図12】図12は、本明細書で開示した本発明のソフトウェアを実行する工程を、画像組織データを取得するために用いたハードウェア設定の例示的実施形態と関連して示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。全図面を通して、同様の要件には同様の参照符号を付す。
【0049】
光学バイオマーカーは、異常組織の光学応答の一時的変動を誘発する化学物質である。高能率なバイオマーカーの場合、異常組織の構造的、形態的および機能的変化が、バイオマーカーと組織との相互作用中に発生する光学信号内に現れ、病変の識別と局所化とを容易にする。
【0050】
バイオマーカー適用を含む典型的な診断手順は以下を含む。
・1以上のバイオマーカーを局所または全身に投与する。
・バイオマーカーが組織の光学特性に誘発した変化を検査する。
・診断および処置すべき異常領域を突き止める。
【0051】
バイオマーカーを含む伝統的診断方法にはいくつかの欠点があり、これらは主に、動的光学現象の視覚的査定は有効であり得ないという事実に関連する。これは、異なる組織部位において異なる運動によって高速に変化する現象を検出し記録することに対し、人間の光学系には生理学上、限界があるためである。
【0052】
この問題点に対する解決法がBalas C.(2001) IEEE Trans. on Biomedical Engineering, 48:96-104; Balas CJら、(1999) SPIE 3568:31-37;およびPCT公報WO 01/72214 Alに開示された方法および装置によって提供されている。これらの文献には、バイオマーカーと組織との相互作用によって起こる動的光学現象の定量的査定およびマッピングが提供されている。
【0053】
上記したように、本発明は、上記方法を改良した方法を提供する。例えば本発明は、様々な正常状態と病理状態とを判別する際の予測値と能率との両方に関して、DOCの体系的パラメーター分析と引き出されたDOPの比較評価とを提供する。
【0054】
本明細書に記載する本発明は、スクリーニング目的の自動化診断または膣鏡検査における半自動化臨床診断方法に関する。これらは適切なDOPと対応するカットオフ値とを選択することに基づいており、様々な病理状態を最も良く判別する。上記方法は、DOCから抽出されたDOPを、定性的病理学および定量的病理学の両方と関連づけることによって達成される。本明細書に開示する本発明の別の目的は、生存組織での構造上の特徴および機能上の特徴を査定する方法を提供することであり、上記査定は上皮移動現象のモデリング、および上記特性と、インビボ測定された動的光学特性とを関連づけることによって行う。
【0055】
本明細書では用語「動的光学曲線」と「DOC」とを相互交換可能に用いる。これらは、観察対象組織の光学特性、例えば組織またはその一部分からの後方散乱光の強度、組織またはその一部分からの光の反射率および拡散反射率、または所定の期間にわたってバイオマーカーに曝された組織またはその一部分からの蛍光を表す曲線を含む。
【0056】
本明細書において用語「バイオマーカー」は、テスト中の組織試料からの光学信号を変化させることができるいずれの化学物質をも含む。このような物質は例えば、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、ブチル酸、ルゴールヨード、シラーヨード、メチレンブルー、トルイジンブルー、浸透性物質、イオン性物質およびインディゴカーマインを含むがこれらに限られない。上記物質のいずれの溶液も使用可能である。好ましい実施形態では、バイオマーカーは酢酸溶液、例えば3〜5%酢酸溶液である。
【0057】
本明細書において用語「動的光学パラメーター」は、当業者が組織を特徴づける、例えばグレード付ける根拠となり得る1以上のパラメーターを含む。本明細書において、このようなパラメーターは、所定期間にわたってバイオマーカーに曝された癌組織またはその一部分からの後方散乱光の強度に基づいてプロットされた1以上の動的光学曲線を数学的に分析することによって引き出され得る。このようなパラメーターはさらに、1以上の上記動的光学曲線を経験的、手動的または視覚的に分析することによっても引き出され得る。本発明が想定する動的光学パラメーターは例えば、「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」、「Slope A」および「Slope B」を含むがこれらに限られない。
【0058】
これらの動的光学パラメーターの数値は、18%反射較正検体に対して較正し、上記検体に対してシステムの緑チャネルにおいて0〜255のグレースケールで中間値105を得たデジタルイメージングシステム(DySIS技術、Forth Photonics)により得られたものに基づく。この較正プロトコルに基づき、較正単位(0〜255のスケール)における緑の中間値の最大差異または反射率の最大差異(0〜100%のスケール)としてMaxが与えられる。
【0059】
本明細書で言及するintegralカットオフ値は、τ=240秒の積分時間に対応するDOCから計算したものである。
【0060】
【数1】
上記式において、cは値c=8[τIt=0]−1による、またはc=1/30(強度単位)−1秒−1を置換することによるスケーリングファクタである。Itはバイオマーカー適用後の所与の時間点における出射強度である。It=0はバイオマーカー適用前の出射強度である。
【0061】
Area to maxは、同じItg式から計算され、唯一の違いはτ=Tmaxであることである。従って本明細書ではItgおよびArea to Maxを共に無次元量として提示する。
【0062】
取得物、積分時間、較正プロトコルおよび試料が異なれば、カットオフ値も異なる。240秒という積分時間は最適時間として選択されたものであり、本明細書では一例として提示するが本発明を限定するものではない。本明細書で開示する「較正単位」および「無次元量」は「任意単位」とも呼ぶ。
【0063】
このように本明細書で言及する値は、上記した特定のプロトコルによって得た値を示す。これにより当業者には、他のイメージングシステムを用いて得られた定量値を比較するための、容易に識別可能な方法が提供される。
【0064】
冠詞の文法に関して述べると、本明細書で用いる冠詞「a」および[an」は、1または1より大きい数値(すなわち少なくとも1)を意味する。例えば「”a”動的光学パラメーター」は1以上の動的光学パラメーターを意味する。
【0065】
本明細書において用語「組織」は、癌組織および前癌組織を含むいずれの組織またはその一部分をも含む。例えば組織は、上皮組織、結合性組織、筋肉組織または神経組織であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、組織は上皮組織またはその一部分、例えば上皮または腺上皮を覆う又はライニングする部分である。例えば組織は、子宮頸部組織、皮膚組織、消化器官組織(例えば口腔組織、胃組織、食道組織、十二指腸組織、小腸組織、大腸組織、膵臓組織、肝臓組織、胆嚢組織または結腸組織)、または鼻腔組織であってもよい。好ましい実施形態では、組織は前癌または癌組織、例えば異形成、腫瘍形成または癌性病変である。
【0066】
本明細書において、癌組織を「特徴づける」という表現は、本明細書に記載する方法を用いて癌組織を特徴づけることを含み、これによって例えばスクリーニング、臨床診断、癌組織に対するガイドつきバイオプシーサンプリングおよび/または処置などが容易になる。例えば、癌組織は、グレード付けされ得る、すなわち例えば、軽度の(LG)病変(すなわちHPV感染、炎症、CINグレードI病変、またはこれらの組合せ)と特徴づけられ得、あるいは重度の(HG)病変(すなわちCINグレードII病変、CINグレードIII病変、または侵襲性癌(CA)またはこれらの組合せ)として特徴づけられ得る。
【0067】
本明細書において、組織特性は、組織の構造特性、機能特性および病理状態ならびにこれらの組合せを含むがこれらに限られない。
【0068】
以前は異形成と呼ばれていた子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)には様々な段階がある。組織学的に評価された病変は典型的には、CINの命名法を用いて特徴づけられる。細胞の染色は典型的にはベセスダシステムによって分類される。子宮頸癌は典型的には、国際産婦人科連合(FIGO)のシステムに基づいて段階分けされる。CINグレードI(軽度の異形成)は上皮ライニングの下部1/3の乱れた成長と規定される。CINグレードII(中度の異形成)はライニングの2/3の異常成熟と規定される。CINグレードIII(重度の異形成)は、上皮厚みの2/3より大きい部分にインサイチュ癌(CIS)が広がり、厚み全体が異常成熟しているものを含む。子宮頸部異形成の特徴づけには、子宮頸部の上皮ライニングの乱れた成長および発達という周知の分類システムがある(DeCherney, A.ら、Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment(現在の産科学および婦人科学の診断と処置), 9th ed., The McGraw-Hill Companies, New York, NY (2003)を参照のこと。上記文献の内容を参照することにより本明細書に援用する)。
【0069】
「基準値」は、組織の特定の病理状態および/または組織の構造特性および機能特性に相関し、これらを判別するために用いることができる様々な動的光学パラメーター(DOP)の予測値およびカットオフ値に関連する。
【0070】
図1は、本発明の方法の基本的工程を示す。
【0071】
・バイオマーカー適用前に組織の基準画像を取得する(102)。この工程は、検査対象組織の元の光学特性を記録するために必要である。
【0072】
・例えばアプリケータを用いてバイオマーカーを適用する(104)。バイオマーカーアプリケータは、バイオマーカー適用直後(すなわち1秒未満)に画像の取得を開始するためのトリガ信号をも提供する。これにより取得プロセスの同期化と標準化が保証される。
【0073】
・所定のスペクトル帯域において、約5秒から7秒の間のサンプリングまたは取得速度で時間的に連続して一連の画像を取得する。これを約4分の所定期間にわたって行う(106)。所定期間は、バイオマーカーが誘発する光学現象の長さを考慮して決める。当業者であれば、この期間は4分を超えて1〜2時間となることもあり得、その間のいずれの長さでもあり得ることを認識する。しかし所望の期間を決定するためには、ある期間を超えた場合の患者の快適さ、患者にとっての利便性、バイオマーカーによって誘発される光学現象の有効性などの要因、記憶容量および処理能力などのシステム性能、およびその他の要因を用いることができる。あるいは上記期間は、得られた画像の数、例えば30枚、35枚、40枚などに基づいて測定してもよい。スペクトル帯域は、バイオマーカー応答領域と非応答領域との間に最大コントラストが達成されるように選択される。
【0074】
・捕捉した画像を整合させる(108)。この工程は、すべての組織点が発した光の強度の時間的変動を得るために必須である。ある特定の画像位置に対応する画素は、同一の組織点に対応する必要がある。インビボ測定では、組織の画像を連続的に取得している間に、息づかいなどにより光学センサと組織とが相対的に移動する場合がある。例えば機械的安定化手段および/または画像登録アルゴリズムのいずれかにより、光学センサと検査対象組織領域との相対的位置が一定であることを保証してもよい。捕捉した画像を、基準画像(102)と適切に整合させることによりさらに、検査対象組織の特定の位置に対応するすべての画素または画素群からDOCを有効に抽出することが保証される。
【0075】
・上記取得した一連の画像の一部またはすべてから、選択した画像のすべての画像位置(すなわち、すべての画素位置、または画素群によって規定された位置)におけるDOCを演算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する拡散反射率(DR)または蛍光強度(FI)を表す(110)。光学特性(DR、FI)の選択は、採用したバイオマーカーの、拡散反射率または蛍光特性のいずれかを変化させる特性によって決定される。上記したように、適切なスペクトル帯域が選択されて、バイオマーカー応答領域と非応答領域との間に最大コントラストが提供される。図2から図5を参照して後述する別の実施形態では、DOC曲線は、組織学的に分類される様々な病理に対応する酢酸溶液(バイオマーカー)と相互作用する子宮頸部組織部位から得られる。
【0076】
・選択した画像の各画像位置(すべての画素位置、または画素群によって規定された位置)から得たDOCからDOPを計算する(112)。現象の動的特性を表す複数のパラメーターが引き出される。組織の異常部位を選択的に染色する際のバイオマーカーの能率によるが、DOPは様々な組織病理をインビボで査定する定量的手段を提供する可能性を潜在的に有する。これらのパラメーターはその後疑似カラーマップという形態で表示することができる。ここでは異なる色が異なるパラメーター値を表す。このような疑似カラーマップは、病変のグレードおよび縁を決定するために用いることができ、これによりバイオプシーサンプリング、処置、および病変管理全般が容易になる。本発明の一実施形態では、バイオマーカーと組織との相互作用によって起こる光学現象の動的特性を表すDOC(例えば以下の表1に示す、選択した時間範囲にわたるDOCのIntegral、maxima、slopeなど)から様々なDOPが計算される。組織が子宮頸部上皮でありバイオマーカーが酢酸溶液である場合の上記明示的DOPについては、図6を参照して後に詳細に分析する。
【0077】
・別の実施形態では、DOPおよびDOCの予測値が統計的に十分な組織ポピュレーションにおいて実験的に決定される。これはDOP値およびDOC値を、明確な診断を提供する、組織学などの標準的方法(至適基準)で比較することにより行われる。適切な予測値を表示するDOPに対して、様々な病理状態を最も良く判別するカットオフ値が決定される(116)。特定のバイオマーカーおよび上皮組織の場合、この工程は、本方法の通常の実施とは別に独立して行ってもよい。この工程は、DOPおよびDOCを特定の病理状態と関連づけるために必須である。この相関関係が確立された後、DOPの所定のカットオフ値に基づいて病理状態を判別することが可能となる(120)。組織が子宮頸部上皮でありバイオマーカーが酢酸溶液である場合の様々なDOPの予測値の査定については、後に図7から図9を参照して詳細に分析する。
【0078】
・異なる病理状態およびグレードを表すDOP値およびDOC値は、疑似カラーマップという形態で表示することができる。ここでは異なる色が異なるグレードを表す(124)。疑似カラーマップは病理マップを表し、病理マップは病変のインビボグレード付け、および病変の縁の決定に用いることができ、バイオプシーサンプリング、処置、および病変管理全般を容易にする。
【0079】
・本発明の別の実施形態では、インビボおよびインビトロ実験によるバイオマーカーと組織との相互作用の理解および分析に基づき、上皮組織の移動現象および構造上の特徴の両方の生物物理学的モデルが開発される(114)。上皮の移動現象が、組織の機能特性により決定される場合、および機能特性がDOPおよびDOCで表される場合は、モデルパラメーターが後者と関連づけられ、それにより組織の機能特性および構造特性のインビボ査定を行う手段が提供される。特にDOP値は、様々な正常状態および病理状態における組織の機能上の特徴および/または構造上の特徴を表すように変換されてもよい(118)。機能上の特徴は生存組織でのみ決定可能であり、他方、構造上の特徴は組織試料の分析(バイオプシー)によってインビトロで決定可能であることは注目に値する。本発明の方法は、インビボで両方の特性を査定し、それにより、より完全な上皮システムの特徴づけおよび識別を可能にする手段を提供する。完全な上皮システムの特徴づけ/識別は診断性能を上げると予測される。なぜなら様々な病理状態が上皮組織の機能特性および構造特性の両方に影響を与えるからである。例えば、バイオマーカーとして酢酸溶液を用いる場合の子宮頸癌の構造的現象に関して述べると、DOP値が、定量的病理方法によって得られる核密度を表す定量データと関連づけられる。図10および図11に、DOPを核対細胞質比に変換することを可能にする相関を示す。機能上の特徴および構造上の特徴のいずれの場合でも、異なる色が異なる機能上の特徴および構造上の特徴を表す疑似カラーマップを作成することができる(122)。疑似カラーマップは、組織の機能マップおよび/または構造マップを表し、病変のインビボグレード付け、および病変の縁の決定に用いることができ、バイオプシーサンプリング、処置、および病変管理全般を容易にする。疑似カラーマップはさらに、組織の構造上の特徴および機能上の特徴の両方におけるバイオマーカーの効果をインビボでモニタリングするためにも用いてもよく、従って異常組織領域を強調してバイオマーカーの効率を評価するために用いてもよい。
【0080】
本発明を子宮頸部組織に適用する場合を説明する実施形態において、異なるグレードの正常、HPV(ヒト乳頭腫ウイルス属)感染、炎症、および子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)を含む状態を最も良く判別する適切なDOPおよび対応するカットオフ値を決定した。3〜5%酢酸溶液をバイオマーカーとして用いて、DOCを得る上記測定手順を行った。DOCおよびDOPの予測値を決定するために、パップテストの結果が異常と出た308人の女性が登録し検査されたマルチサイト臨床試験から実験データを得た。青から緑にかけてのスペクトル範囲で子宮頸部組織の画像を時間的に連続して捕捉することによりDOCを得た。DOCおよびDOPの疑似カラーマップに示された酢酸応答組織領域にバイオプシーを行い、組織学的評価およびグレード付けを行った。その後、ROC分析によって組織学的グレード付けと最も良く関連づけられるDOPを決定するために、組織学的分類をDOPセットと比較した。ROC曲線から、各パラメーターまたは各パラメーターセットに対する最適カットオフ値を引き出し、それにより所望のSS値およびSP値が提供された。
【0081】
例示的実施形態では、子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCを図2から図5に示す。これらの子宮頸部組織部位は組織学者らによって、HPV感染、炎症、CIN1、および重度(HG)病変と分類されたものである。臨床実務において一般的に用いられる更なるカテゴリー化として、HPV、炎症、CIN1またはこれらの組合せを軽度(LG)病変と呼ぶ。HG病変は、CIN2、CIN3または侵襲性癌(CA)のいずれか又はこれらの組合せに対応する。組織学的グレードであるCIN1、CIN2およびCIN3は、CAの前駆体(CIN1−最低度、CIN3−最高度)である。縦軸はIBSL(任意単位で表す)に対応し、横軸は組織に酢酸を適用してからの時間経過(秒)を表す。様々な病理状態に対応するDOCが強度の時間的変動という面で多様な変化を示すことがはっきりとわかる。
【0082】
特に、HPVと分類された曲線はほとんど指数関数的に上昇して飽和レベルに達するが、他方、炎症に対応する曲線はより早期により高いピークに達しその後急激に下降することがわかる。CIN1と分類された曲線は、HPVまたは炎症に対応する曲線よりも後で最高レベルに達しその後ゆっくりと下降する。この下降速度は炎症の場合に観察されるよりも明確に遅い。HG病変の場合の曲線は、HPVおよびCIN1の場合に観察されるよりも後でより高い最高レベルに達するが、下降速度は炎症と分類された曲線で見られるよりもはるかに遅い。これらの結果とは対照的に、正常組織部位から得られたDOCは測定期間全体を通じてほとんど一定である(図11を参照のこと)。
【0083】
特定の病理状態に関連するDOCのこれまでの記載は助けとはなるが定性的である。従って以下では、動的曲線から抽出した定量的パラメーターを説明する。これらのパラメーターはロバストにLG病変とHG病変、HPV感染とHG病変とを判別することができる。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、病理状態に関する記録済みDOCの様々な特性を表す単一のDOPまたはDOPの組合せを引き出すために、数式を用いて、組織から得たDOCをさらに処理してもよい。数式は多項式、単一、二成分、多成分の指数関数適合、線形および非線形分解、またはこれらの組合せを含むがこれらに限られない。
【0085】
別の実施形態では、得られたDOPにさらに重み付けをしてもよい。これは、検査対象組織に特異な特性、例えば患者の年齢、閉経期間(女性の場合)など、または組織を検査する対象の地域住民または大域住民を特徴づける特性、またはこれらの両方に基づいて行われる。
【0086】
本方法の別の好ましい実施形態では、LG病変とHG病変とを判別する際に高い診断値を有するDOPは以下の通りである。
【0087】
1.Max
このパラメーターは、バイオマーカー適用後の記録済みDOCの最大値と、t=0におけるDOC値との差異として定義される。
【0088】
2.Integral
このパラメーターは、記録済みDOCと、第1のDOC実験点を横切る、時間軸に平行な線とによって囲まれた領域として定義される。integralは所定の期間にわたって計算される。所定の期間は、バイオマーカーと組織との相互作用によって起こる光学効果の長さに依存する。子宮頸部組織と酢酸溶液(バイオマーカー)の場合、integralはt=0からt=4分の期間に求められる。このパラメーターは、測定した曲線を閉形式の数式で近似した後に数式の積分を介して分析的に計算してもよい。
【0089】
3.Tmax
このパラメーターは、DOCの最大値に達するために必要な時間として定義される。但し上記最大値はMaxパラメーターである。
【0090】
4.Area to Max
このパラメーターは、t=0秒(すなわちアセト白化(acetowhitening)現象の開始時間)からt=Tmaxまでの間の、DOCに対応する曲線の領域として定義される。このパラメーターもまた、測定した曲線を閉形式の数式で近似した後に数式の積分を介して分析的に計算してもよい。
【0091】
5.Slope A
これは、「Max」値までの強度増加速度を表すパラメーターである。明示的には曲線の最初の導関数として、または「Max」値に達するまでの中間のスロープの平均値として定義することができる。
【0092】
6.Slope B
これは、曲線の「Max」値からの強度減少速度を表すパラメーターである。明示的には曲線の最後の導関数として、または「Max」値からの中間のスロープの平均値として定義することができる。
【0093】
図6は、DOC曲線に関して上記定義した4つのパラメーター、すなわち「Max」、「Tmax」、[Slope A」および「Slope B」を示す。他の2つのパラメーター(「integral」および「Area to Max」はそれぞれ本質的に、示された点、すなわちKLNPおよびKLMによって囲まれた領域を示す。
【0094】
図7は、上記した「integral」パラメーターに関する累積結果のLG/HG ROC分析を示す。ROC曲線下の領域は0.83であり、高度な判別(感度)を示唆している。
【0095】
図8は、アセト白化特性を定量化するために用いる「Integral」パラメーターの様々な値をROC分析することにより得られた感度(灰色)および特異性(黒)をプロットしたものを示す。ある値では感度と特異性とが共に78%という最大値に達していることがはっきりとわかる。
【0096】
図9は、LGおよびHG診断状態についての、上記のパラメーターのうちいくつかの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。エラーバーは95%信頼区間を表す。上記中間値は組織学者らによって行われたバイオプシー検査を介して結論づけられた。
【0097】
LG病変とHG病変とを判別する際の最適値範囲を、「Integral」パラメーターに関して上記したようにROC分析で計算した。特に各パラメータータイプに関して、真陽性(TP)と偽陽性(FP)の割合を、範囲全体[Pmin、Pmax]にわたる様々な閾値について計算した。ここでPは特定のパラメーターの値を示す。感度(SS=TP)と特異性(SP=100−FP)とが互いにほぼ一致する閾値を、LGとHGとを判別する最適値(カットオフ値)として用いた。
【0098】
表1は、上記で定義したパラメーターのうちのいくつかに関してLG病変とHG病変とを判別する最適値範囲を示す。これらの最適値は特異性および感度が60%を超えるという性能につながる。
【表1】
【0099】
*上記パラメーターは、18%反射較正検体に対して較正し、上記検体に対してシステムの緑チャネルにおいて0〜255のグレースケールで中間値105を得たデジタルイメージングシステム(DySIS技術、Forth Photonics)により得られたものに基づく。この較正プロトコルに基づき、較正単位(0〜255のスケール)における緑の中間値の最大差異または反射率の最大差異(0〜100%のスケール)としてMaxが与えられる。
【0100】
**上記integralカットオフ値は、τ=240秒の積分時間に対応するDOCから計算したものである。
【数2】
上記式において、cは値c=8[τIt=0]−1による、またはc=1/30(強度単位)−1秒−1を置換することによるスケーリングファクタである。Itはバイオマーカー適用後の所与の時間点における出射強度である。It=0はバイオマーカー適用前の出射強度である。
【0101】
従って、Area to maxは、同じItg式から計算され、唯一の違いはτ=Tmaxであることである。本明細書ではItgおよびArea to Maxを共に無次元量として提示する。
【0102】
取得物、積分時間、較正プロトコルおよび試料が異なれば、カットオフ値も異なる。240秒という積分時間は最適時間として選択されたものであり、本明細書では一例として提示するが本発明を限定するものではない。
【0103】
本発明を特定の実施形態に関して示し記載してきたが、当業者であれば、本発明の思想および範囲から逸脱することなく形態および詳細部分の改変がなされ得ることを理解する。
【0104】
上記分析に基づくと、ある好ましい実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約480〜650のカットオフ値範囲を有するDOCの「integral」パラメーターが用いられる。
【0105】
別の好ましい実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約70〜90または35%〜45%のカットオフ値範囲を有するDOCの「Max」パラメーターが用いられる。
【0106】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約120〜170のカットオフ値範囲を有する「Area to Max」パラメーターが用いられる。
【0107】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約80〜100秒のカットオフ値範囲を有する「Tmax」パラメーターが用いられる。
【0108】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約1.1〜1.3のカットオフ値範囲を有する「Slope A」パラメーターが用いられる。
【0109】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約−0.012〜−0.090のカットオフ値範囲を有する「Slope B」パラメーターが用いられる。
【0110】
さらにHPV感染とHG病変とを判別するために、上記パラメーターの適切なカットオフ値を得るべく同様の分析を行った。
【0111】
表2は、「Max」パラメーターおよび「Integral」パラメーターについて、HPVとHGとの判別に対して60%を超える特異性および感度を提供する最適値範囲を示す。
【表2】
【0112】
好ましい実施形態では、HPV感染とHG病変とを判別するために、約380〜490のカットオフ値範囲を有するDOCの「Integral」パラメーターが用いられる。
【0113】
別の実施形態では、HPV感染とHG病変とを判別するために、約65〜90のカットオフ値範囲を有するDOCの「Max」パラメーターが用いられる。
【0114】
さらに別の実施形態では、上記を含むが上記に限られないパラメーターの組合せが、組織の病理を判別する手段を提供し得る。そのようなパラメーターは例えば、上記バイオマーカーの適用後、約40秒サンプリング時間が経過するまでの平均Slope DOCとMax値との積であってもよい。約2.05±0.2を超える積(較正強度単位/時間)が重度の腫瘍形成の存在を示し、それより低い値が軽度の腫瘍形成または健全な組織を示すというようにしてもよい。
【0115】
LG病変とHG病変とを判別するため、またはHPVとHG病変とを判別するためにカットオフパラメーター値を用いる「ハードクラスター」アプローチ以外に、より進んだ統計およびパターン認識分析手法(例えばベイジアン分類、人工神経回路(ANN)、分類ツリー)を用いて、他の線形または非線形パラメーター、あるいは単一パラメーターまたは複数パラメーターの組合せを抽出し、より高度な判別を行ってもよい。さらに別の実施形態では、ベイジアンモデリングを用いたパラメーターアプローチ(例えば、Fukunaga K.(1990) New York: Academic, 2nd Ed.に記載)およびANNを用いた非パラメーターアプローチ(学習レベル量子化-LVQ, 例えばKohonen T., (1986) Int. J. Quant. Chem., Suppl. 13, 209-21に記載)を用いて、LGまたはHG腫瘍形成を有する組織部位の対応DOCから得たDOPを微分した。ベイジアン分類およびNN分類では共に、上記した光学パラメーターの様々な組合せ、およびサンプル全体から選択した様々な数のトレーニングセットにおいて、LG病変およびHG病変に対する全体的判別性能は75%を超えていた。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、疾病の存在を示す動的パラメーター値と対応するカットオフ値とをマッピングすることにより自動化子宮頸部スクリーニングを行う手段を含む。
【0117】
さらに別の実施形態では、本発明は、疾病の存在を示す動的パラメーター値と対応するカットオフ値とをマッピングすることにより半自動化膣鏡検査を行う手段を含む。このような方法は、実務家の熟練度とは無関係の、膣鏡検査の基本性能を保証し、診断手順全体、フォローアップおよびバイオプシーサンプリングおよび処置中のガイドを容易にする。
【0118】
本発明の別の局面は、上皮での機能的および構造的変化に関連する動的パラメーターによって規定されるアセト白化現象の解釈を含む。一実施形態では、子宮頸部組織構造特性に関連する別々のパラメーターが演算されて、同一の組織部位から記録されたDOCから得られた複数の機能上の特徴と関連づけられる。具体的には、腫瘍形成(HPV、CIN1、CIN2およびCIN3)または子宮頸癌の核容量とグレードとの間の直接的な相関関係について一般的な同意がある(Walker DCら、(2003) Physiological Measurement, 24:1-15)。核対細胞質比(NCR)は上皮組織の核密度を表し、ある種の診断状態との相関関係を表すために用いられる最も一般的なパラメーターである。好ましい実施形態では、上記動的パラメーターのいずれか又は組合せと、対応する子宮頸部位置から抽出したバイオプシー材料から計算したNCRとの間の相関式を求めることにより、組織の細胞構造が査定される。この目的のため、組織領域に酢酸を導入した後、上皮の異常機能を反映するDOCパラメーターをNCRと関連づけた。
【0119】
さらに別の実施形態では、この相関関係は、すべての位置における検査済み上皮組織の構造特性を表す疑似カラーマップ、さらにはアセト白化運動特性を表すマップを、高核密度を有する強調された部位と共に抽出することにつながる。マクロ構造組織状態のインビボ査定を表す、組織から得たインビボ光学曲線を定量することにより、組織の細胞特性に関する結論であって微小レベルでの構造に関する代表的考え方を構成する結論を直接引き出せると考えるならば、上記のような作用は例外的な価値を有する。
【0120】
本明細書に開示する方法によって動的パラメーターが得られた上皮組織部位に対してそれぞれNCRを計算するために、膣鏡検査中に同一数の子宮頸部バイオプシー試料を得た。バイオプシーした組織を標準的手順によって処理し、免疫組織化学的に染色し、スライド上に置いて、顕微鏡による画像分析でさらに評価した。均等数の顕微鏡組織構造画像を得た後、多段階画像分析アルゴリズムを用いて画像内に表示した細胞核をセグメントに分けた(Loukas CGら、(2003) Cytometry, 55A(I):30-42)。上皮内に封入された核が占有する面積の合計を上皮組織の全面積で除算したものとしてNCR量を計算した。NCRはまた、上皮組織の「細胞パッキング」特性としても知られており、組織の細胞ポピュレーションの断面構造を本質的に示す。
【0121】
例示的実施形態では、図10Aおよび図10Bに、最も強い相関係数(R)を表す2つの異なるDOPの、NCRに対する散乱プロットを示す。これらのパラメーターは動的光学曲線の、上記に定義した「Integral」および最大値(Max)である。グラフ内の線は線形退行曲線を表す。実験データに対して最小自乗法での適合を行うことによって得られたDOPからNCRへの変換式および相関結果を表3に示す。
【表3】
この表から、両方のパラメーターとも、組織の細胞パッキング特性との重要な相関関係を示していることがわかる。本方法の一実施形態では、線形の式により、特定の組織部位から得られたDOCに対応するDOPを、その基礎となる組織部位のNCR特性に変換する。
【0122】
本方法の別の実施形態では、上記の変換式を用いて、「Integral」か「Max」のいずれかの定量的疑似カラーマップを上皮組織のNCRマップに変換してもよい。
【0123】
腫瘍形成の進行に関連する上皮組織の構造的変化に加えて、酢酸溶液の適用後、上皮の細胞外および細胞内空間でさらにいくつかの機能的変化が起こる。特に、固体腫瘍が酸性微小環境内に生存することが知られている(Webb SDら、(1999) J. Theor. Biol., 196:237-250; Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334;およびMarion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)。さらに、実験測定により、腫瘍内の細胞外pHは、正常組織のそれよりも平均0.5単位だけ低いことが示されている。腫瘍の細胞外pHは典型的には、6.6〜7.0の範囲である(Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334を参照のこと)。腫瘍細胞はさらに、中性または僅かにアルカリ性の細胞内pHを有する(Marion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)。正常細胞同様、腫瘍細胞も狭い範囲で細胞質のpHを調節して様々な細胞内活性に対して好ましい環境を提供している。
【0124】
腫瘍内における酸性細胞外pHの存在に関する事項はまだ賛否両論があるが、腫瘍の酸性環境は、乳酸などの代謝性酸の生成が高速度であること、その細胞外空間からの除去が非効率的であることに起因すると一般的に考えられている(Webb SDら、(1999) J. Theor. Biol., 196:237-250; Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Marion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19;およびPrescott DMら、(2000) Clinical Cancer Research, 6;(6):2501-2505)。さらに腫瘍細胞では、酸素供給レベルにかかわらずグリコリシスの速度が速い。その結果、細胞環境から外部に大量の乳酸(そしてその結果H+)が生成される。組織崩壊した脈管または貧弱なリンパ排出系統および上昇する腸内圧力などの複数の要因により、血液への酸排出(H+排出)が非常に遅い。そのため、腫瘍細胞の細胞外空間と細胞内空間との間でpHグラジエントの逆転が見られる(Webb SDら、(1999) J. Theor. Biol, 196:237-250; Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334;およびMarion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)。癌が過渡的プロセスでありCINが癌の前駆体であるとすると、CIN細胞外環境も酸性である(おそらく酸性度は低い)と考えることもまた理にかなっている。さらに、腫瘍および異形成細胞は、正常細胞と同じ短期間pH調節メカニズム(Marion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)および長期間pH調節メカニズム(Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334およびPrescott DMら、(2000) Clinical Cancer Research, 6;(6):2501-2505)を用いることが知られている。腫瘍細胞代謝により生成される過剰プロトンは、特定の水素ポンプ(Prescott DMら、(2000) Clinical Cancer Research, 6;(6):2501-2505)によって細胞から排出される。
【0125】
子宮頸部内でのアセト白化効果の観察は、異常組織(すなわちHPV、CIN、または癌)を特徴づけるために膣鏡検査で用いられる。アセト白化効果とは、酢酸溶液を子宮頸部の変態ゾーンに適用することにより誘発される現象を指す。酢酸の適用は選択的に子宮頸部の異常領域に対して過渡的白化を誘発する。これは異常領域を見つけるために臨床実務で70年より長く用いられてきたが、組織が白化することに関する正確な物理化学的メカニズムはまだわかっていない。同様の現象は、バイオマーカーとして蟻酸、プロピオン酸、ブチル酸を用いたときにも観察される。
【0126】
アセト白化効果の解釈に関する2つの主要な説明が関連文献に多く見られる。インビトロ研究により、酢酸効果はある種のサイトケラチン(上皮細胞に存在するタンパク質)の量に関係することが示されている(Maddox Pら、(1999) Journal of Clinical Pathology, 52:41-46およびCarrilho Cら、(2004) Human Pathology, 35:546-551)。子宮頸部の腫瘍形成の場合、細胞外環境が酸性であるため、局所的に投与された酢酸分子は構成イオンから分離せず、従って受動的に細胞膜に侵入する。中性pHの細胞質に入ると、酢酸分子は分離して、核タンパク質と相互作用する、カルボキシルイオン、及び水素イオンを発する。その結果、異常細胞の散乱特性が選択的に変化する。
【0127】
サイトゾルのpH値は、これらのタンパク質の配座安定性にとって極めて重大である。中性pH値ではタンパク質は溶液中で安定する。pH値が低下すると、pI(等電点)によっては不安定かつ不溶となる。タンパク質不安定化のプロセスは変性と呼ばれ、この部分的変性は数ミリ秒だけ続く可逆的プロセスである。変性または展開後のタンパク質は異なる屈折率を有し、これが白化効果の原因かもしれない。正常細胞内でのpHの低下は、タンパク質を展開させるには十分でないかもしれず、おそらくこれが、正常組織においてIBSLの変動が検出されない理由である。従って後方散乱光は、子宮頸部上皮に酢酸が侵入することにより影響を受けるpH動態に密接に関係している。にもかかわらず、この効果に貢献するタンパク質は十分わかっていない。さらにこれらのタンパク質の各々は異なるpH値で変性し得る。
【0128】
他の解釈によると、変態ゾーンの上皮に対する酢酸の作用は、その濃度に関係している(MacLean AB. (2004) Gynecologic Oncology, 95:691-694)。酢酸が異形成層の細胞環境に入り、様々な核タンパク質の構造を変化させ、そのため細胞が不透明に見えるようになる。そのため後方散乱光の動態は酢酸濃度の動態に従う。正常組織では、核タンパク質の量が非常に少ないために白化は起こらない。
【0129】
腫瘍形成の発達中に変化する上皮の機能上および構成上の特徴を上記のように分析することに基づくと、動的光学データを診断上重要な上皮の特性に関連づけることが可能である。特に測定された動的特性は、バイオマーカー適用後に時間的に連続して起こる様々な上皮構造および移動現象を分離し、これらをインビボ測定可能な光学パラメーターと関連づけるために用いることができる。これにより逆転の問題に対する解決法が提供される。換言すると、インビボ動的特性およびパラメーターを測定することにより、様々な上皮の特徴に関する情報を得ることが可能である。
【0130】
本方法の一実施形態では、細胞外酸性度、さらには受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数に関する情報を得るために「Slope A」が用いられる。本方法の別の実施形態では、上皮のNCRを決定するために「Max」が用いられる。なぜなら後方散乱光の強度は信号源(細胞核)の密度に比例するからである。本方法の別の実施形態では、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、または腫瘍形成の発展に関連する貧弱なリンパ排出系統に関する情報を得るために「Slope B」が用いられる。別の実施形態では、上記の機能上の特徴および構造上の特徴の両方に関する情報を得るために「integral」パラメーターが用いられる。
【0131】
生物物理学モデルを臨床的に有効にすることは、NCRを上記の「Max」パラメーターおよび「Integral」パラメーターと関連づけることによりなされてきた。しかし、機能上の特徴を臨床的に有効にすることは臨床的に考えて実務的でない。なぜならインビボで特徴を測定することができる基準方法がないからである。対照的に、本明細書で開示した方法は、組織の機能上の特徴をインビボでモデリングし予測することが可能である。これはバイオマーカーと相互作用する組織からインビボで得られた動的光学特性を記録し、分析し、表示する能力が、この方法には元々備わっているからである。
【0132】
図12は、本発明の別の例示的実施形態を示す。演算装置1070は、少なくとも画像処理エンジン1085に示すステップを規定するコンピュータ読み取り可能な媒体上に具現化された命令を、これらの組織画像データを得るために用いたハードウェア設定と協力して実行する。特に組織1020は光源1010により常に照射されている。アプリケータ1030を用いて適切なバイオマーカーを適用した後、トリガ信号が供給されて、画像取得装置1040(例えばビデオCCDまたは他の適切な画像取得装置)を用いた画像取得が開始される。組織1020と画像取得装置1040との間には光学フィルタ1050とレンズ1060とがあり、例えば1以上のズーム可能なレンズが介在できる。光学フィルタ1050は好ましいスペクトル帯域にチューニングすることができる。好ましいスペクトル帯域とは、適切な物質の投与後、様々なグレードの光反射率または蛍光特性変化に曝される領域間で最大のコントラストが得られるスペクトル帯域である。
【0133】
物質の投与前に、参考として組織画像を得る。物質の投与後、一連の画像1080が時間的に連続して所定のスペクトル帯域で且つ所定の時間サイクルで得られ、演算装置1070内部または外部のメモリまたは記憶装置に保存される。これは画像処理エンジン1085によってさらなる処理を行うためである。取得した画像の一部または全部を適切に整合させた後、同一の組織点に対応する特定の画像位置に対するDOC1090を生成する。工程1100では、現象の動的特性を表す複数の動的光学パラメーターをDOCから得る(1100)。
【0134】
DOPを抽出した後、工程1110で、その値を所定のカットオフ値と比較する。これにより工程1120で、組織の様々な病理状態を分類する。1つの結果として、その後疑似カラーマップ1130を表示装置1140に表示することができる。ここでは異なる色または異なるグレー濃淡が異なる病理を表す。あるいは組織の様々な病理状態の分類を保存して別の時に表示するようにしてもよいし、例えばネットワーク環境でデータを移送するに適したパケットまたはその他のユニットで別の演算装置に送ってもよい。
【0135】
あるいは工程1150で、所定の数式を用いてDOP値を変換し、組織の機能上の特徴および構造上の特徴を表してもよい。この場合、疑似カラーマップ1130は表示装置1140上に表示することができ、異なる色または異なるグレー濃淡が異なる機能上の特徴および構造上の特徴を表す。
【0136】
本明細書で引用したすべての参考文献、図面、特許および公開特許公報の内容を参照することにより本明細書に援用する。
【0137】
当業者であれば、通常の実験を超えたものを用いることなく、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識または確認することができる。このような均等物は請求の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織を特徴づける方法、ならびにインビボスクリーニング用の自動化診断方法および臨床診断用の半自動化診断方法に関する。本方法は特定のバイオマーカーを適用した後に組織内で起こる動的光学現象の定量的査定および動的光学パラメーターの予測値の決定に依存する。
【背景技術】
【0002】
上皮の癌および前癌を発見しグレード付けする現行の診断およびスクリーニング手順は定性的かつ主観的であり、複数の段階を要し、労力がかかるものであり、全体的にコスト効率が低いと特徴づけられる。
【0003】
子宮頸部の場合、癌予防のためのスクリーニングプログラムの開発は治癒可能な前駆体、例えば子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の早期発見と識別とを目的としている。
【0004】
子宮頸部腫瘍形成の主要なスクリーニング方法はパップテストである。このテストでは、子宮頸部上皮から多くの細胞を採取して適宜固定および染色した後に細胞学的に検査する。この方法の正確さは、サンプリングエラーおよび読み取りエラーの両方により制限され、その結果、誤って陰性とされる率が非常に高い。過去何年もの間パップテストの性能を決定しようとして多くの研究が行われてきた。研究者間では、中間感度は0.59であり中間特異性は0.69〜0.75であるという同意がある(Nanda Kら、(2000) Annals of Internal Medicine, 16; 132(10):810-819; Sankaranarayanana Rら、(2005) International Journal of Gynecology and Obstetrics, 89:S4-S12;およびFahey MTら、(1995) American Journal of Epidemiology, 141:680-689)。パップテストは高い特異性と感度とを同時に達成することはできないということも広く受け入れられている。例えば、特異性を0.90〜0.95の範囲に上昇させることは可能であるが、その場合感度は0.20〜0.35の範囲に下降する(Fahey MTら、(1995) American Journal of Epidemiology, 141:680-689)。
【0005】
典型的には診断テストの性能を表示する定量的統計パラメーターとして感度(SS)と特異性(SP)とが用いられる。感度は真陽性(TP)の割合を表し、特異性は真陰性(TN)の割合を表す。例えば、感度80%(すなわち0.80)とは、至適基準の助けにより、テストが100件のうち80件を当該疾病に対して陽性であると正しく診断することを意味する。
【0006】
通常の臨床検査では、パップ染料が異常に付着すると膣鏡検査を行う。膣鏡検査は、低パワー顕微鏡を用いた子宮頸部の検査を含む。以下の基準に従って子宮頸部の組織を評価する。a)病変周辺の形態、b)異常上皮の脈管パターン、およびc)酢酸溶液などのマーカーを局所適用した後の染色の度合い。膣鏡検査のグレード付けは視覚検査のみに基づき、発見された病変は経験的に得られた定性スケールによって分類される。視覚査定に基づく臨床診断(膣鏡検査)は、感度0.77および特異性0.64を特徴とする(Mitchell MFら、(1998) Obstetrics & Gynecology, 91:626-631)。従来の膣鏡検査では、微小侵襲性子宮頸癌の56%および侵襲性子宮頸癌の30%を発見できず、そのため、この治癒可能な状態で病変を処置することができない。さらに、最も非典型的なバイオプシー部位の識別に対して医師どうしが同意しない確率が高い(77%)。研究者らは、膣鏡検査によって子宮頸部の病変を識別する際に観察者間で意見が大きく分かれることを報告している(Schiffman Mら、(2003) Arch. Pathol, Lab. Med., 127:946-949; NHS Report. Cervical Screening Programme(子宮頸部スクリーニングプログラム), England:2003-04 Statistical Bulletin 2004/20. 2004年10月 U.K;およびCantor SBら、(1998) Obstetrics & Gynecology, 91;(2):270-277)。このことは、膣鏡検査の再現性を損なうが、これは主に膣鏡検査による査定が定性的かつ主観的であるという事実による。
【0007】
より正確なCIN診断とグレード付けとを行うために、疑わしい領域からバイオプシー試料を得て組織学的検査が行われている。しかしバイオプシーサンプリングは例えば以下の問題点を有する。a)主観性であり、観察者間で意見が分かれることが多い(>30%)、これはIsmailら(Ismail SMら、(1989) British Medical Journal, 298;(6675):707-710)、Bellinaら(Bellina JHら、(1982) South Med J., 75;(1):6-8. 56)、およびRobertsonら(Robertson AJら、(1989) J. Clin. Pathol, 42;(3):231-238)の研究によって明らかにされている。b)バイオプシーを行う異常部位を選択する際にサンプリングエラーの危険性がある。
【0008】
子宮頸部腫瘍形成の現行の診断手順により、病気の発生および死亡率は歴史的に低いレベルまで低下した。しかし現行の診断手順ではこれ以上の低下はなし得ないと考えられる。この事実により、1つの段階だけで「見て処置する」ことができるという概念を実現する、別のより効率的な技術の必要性が強調されている。
【0009】
過去約10年間にわたって、組織病理学のために、改良された客観的情報を提供することができる新規な光学的技術を開発すべく多大な努力がなされてきた。これらのアプローチは通常、組織が正常な状態から病変状態へと変化することにより組織の構造と機能とが変化するという事実、さらにこれらの変化は光と組織との相互作用現象を利用することによってインビボで検出可能であるという事実に基づいている。組織からの出射光の特性を測定し分析することにより、異なる分子の存在に関する情報、ならびに疾病の進行中に起こる様々な構造的および機能的変化に関する情報を提供することができ、これにより病変をインビボで識別しグレード付けする手段を提供することができる。
【0010】
これまでこの方向でなされてきた試みは、生化学的および/または構造的変化のインビボ検出を目標とした様々な分光学的および分光イメージング手法を含む。明示的には、米国特許第4,930,516号が癌組織の検出方法を開示している。これによると、組織試料に第1の波長を有する励起光を照射し、検出された励起光に応答する蛍光照射を発生させる。癌組織と正常組織との差異は、発光された蛍光照射の波長および振幅に基づく。あるいは正常組織のスペクトル振幅が同一波長における癌組織のそれと異なる。
【0011】
蛍光減衰時間のモニタリングに基づく時間分解分光法は、照射された組織のタイプまたは状態を判別する潜在的可能性をさらに有していることが知られている。例えば米国特許第5,562,100号は、特定の波長を有する単パルスの励起光を標的組織に照射することに基づいて組織特性を決定し、標的組織が励起光に応答して発した蛍光照射を検出する方法を開示している。組織特性は発光された照射の振幅を記録したものから決定される。同様に、米国特許第5,467,767号は、時間分解蛍光分光法を用いて組織の悪性腫瘍状態を決定する方法を開示している。
【0012】
2つ以上の測定法を組み合わせて組織特性を決定することに焦点を置いた他の発明もある。例えば米国特許第6,975,899号は、癌組織内で起こっている形態学的変化から生化学的変化を分離するために、蛍光を反射率と組み合わせて用いる装置および方法を開示している。この組合せアプローチは、組織が正常組織から癌状態に変化すると、組織特性を決定する際の蛍光分光の有効性が吸光分光に比べて減少するという事実に基づいている。
【0013】
他の特許、例えばUtzingerらの米国特許第5,369,496号は、蛍光、反射率および偏光反射分光法を用いて診断用マルチ分光デジタルイメージングを行う方法および装置を開示している。米国特許第6,427,082号では、レーザ誘起(LIF)に対する組織の蛍光応答と白光による照射に対する後方散乱応答に基づいて子宮頸部の病理組織と健常組織とを判別する方法およびシステムが提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
概して、分光による従来の方法は組織上の限られた数の点における組織特性に焦点を置き、光学イメージングによる方法は、組織領域全体にわたって光学パラメーターを時間とは独立して測定することに焦点を置いている。さらにこれらの方法は、変化した生化学または細胞組織構造に関する情報のみを提供し、変化した上皮機能に関する情報は提供しない。
【0015】
C. Balasが開発した別のアプローチは、これまでの発明とは実質的に異なる。なぜならこのアプローチは、バイオマーカーを適用した後に組織内で起こる動的現象を定量的に測定することを含むからである(PCT公報WO 01/72214 A1 (Balas C.(2001) IEEE Trans. on Biomedical Engineering, 48:96-104)および(Balas CJら、(1999) SPIE 3568:31-37))。動的現象の測定は、組織の構造上の特徴と機能上の特徴との両方に関する情報を提供する可能性を潜在的に有しており、インビボ診断を容易にする。
【0016】
これらの文献に開示された方法および装置は、病理判別因子(バイオマーカー)の管理に依存している。病理判別因子は、異常細胞の変化した構造および機能の選択的視覚化を向上させる性質を有し、時間に対する出射光を任意の空間点および様々な波長帯域で測定する。時間に対する、出射光の記録強度(例えば後方散乱光(IBSL)の強度、拡散反射率(DR)および蛍光強度)は「動的光学曲線(DOC)」と定義され、組織とバイオマーカーとの相互作用中に起こる光学現象の一時的特性を表す。得られたDOCのモデリングおよび分析により、様々な動的光学パラメーター(DOP)の計算が可能となる。動的光学パラメーターは、すべての画像位置(画素または画素群)で、バイオマーカーと組織との相互作用運動を特徴づける。これらのパラメーターの空間的分布は運動マップを含み、運動マップは組織のカラー画像上に広げることができる。これらのデータは、診断、スクリーニングおよびフォローアップのために病変をインビボ検出し、マッピングしグレード付けする手段を提供する可能性を潜在的に有し、同時にバイオプシーサンプリングおよび外科的処置のガイドを可能とする。
【0017】
典型的には、このような診断手法の臨床的価値は、感度(SS)と特異性(SP)の正負の予測値によって表される性能により決定される。SSおよびSPが現行の診断方法のそれよりも多い場合、この新規の技術はスクリーニングおよび/または臨床診断の目的に適しているとみなされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書に記載する発明は、PCT公報WO 01/72214 Al; Balas C.(2001) IEEE Trans. on Biomedical Engineering, 48:96-104;およびBalas CJら、(1999) SPIE 3568:31-37に開示された方法を改良した方法を提供する。具体的には本発明は、スクリーニング目的の自動化診断方法または膣鏡検査における半自動化臨床診断方法を提供する。これらの方法は、適切なDOPと対応するカットオフ値を選択することに基づいており、様々な病理状態を最も良く判別する。上記方法は、DOCから抽出されたDOPと、定性的および定量的病理学の両方とを関連づけることにより達成される。本明細書に開示する本発明はさらに、生存する組織内の構造上の特徴および機能上の特徴の両方を査定する方法を提供し、上皮移動現象のモデリング、および上記特性と、インビボ測定された動的光学特性とを関連づけることによって上記査定を行う。
【0019】
本発明は、組織、例えば癌性または前癌組織(例えば子宮頸部、子宮、口、皮膚、呼吸器官および消化器官の癌および/または前癌組織)を特徴づける(例えばグレード付ける)方法、例えば自動化または半自動化方法を提供する。従って本発明は第1の局面において、組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定する方法であって、
バイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性に基づいて、所定の期間にわたる動的光学曲線に関するデータを生成する工程と、
上記データに基づき、動的光学パラメーターの値を決定する工程と、
動的光学パラメーターの値と、動的光学パラメーターの基準値であって組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている基準値とを比較する工程と、
比較に基づき、組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態を決定する工程と、
を含む方法を提供する。本発明の方法は、例えば、スクリーニング、臨床診断、組織に対するガイド付きバイオプシーサンプリングまたは処置を容易にするために有用である。組織は上皮前癌組織または子宮頸部、子宮、口、皮膚、呼吸器官または消化器官の前癌または癌性組織であってもよい。本方法は、所定の期間バイオマーカーに曝された組織またはその一部分からの後方散乱光の強度に基づいて動的光学曲線をプロットする工程、動的光学曲線に基づき、動的光学パラメーター、例えば「integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」、「Slope A」および「Slope B」を決定する工程、1以上の動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づき、組織を特徴づける工程を含んでもよい。動的光学曲線は、バイオマーカーの適用後に組織部位から得られる後方散乱光の強度の一時的変動を表す。動的光学パラメーターは、1以上の動的光学曲線の数学的分析、または1以上の動的光学曲線の経験的、手動的または視覚的分析により引き出されてもよい。
【0020】
特に好ましい実施形態では、テスト中の組織は子宮頸部組織である。更なる実施形態では、本方法は好ましくは、腫瘍形成を診断するか又は特徴づけるため、および/またはHPV感染を検出するために用いられる。更なる実施形態では、本方法は、組織の細胞の核対細胞質比を決定するために用いられる。テスト中の組織は好ましくは上皮細胞を含む。
【0021】
本発明の方法は好ましくは、少なくとも60%の感度および少なくとも60%の特異性を提供し、さらに好ましくは少なくとも65%または70%の感度および少なくとも65%または70%の特異性、最も好ましくは少なくとも75%、76%、77%、78%、79%または80%の感度および少なくとも75%、76%、77%、78%、79%または80%の特異性を提供する。
【0022】
一実施形態では、バイオマーカーは、酢酸溶液(例えば3〜5%酢酸溶液)、蟻酸、プロピオン酸、ブチル酸、ルゴールヨード、シラーヨード、メチレンブルー、トルイジンブルー、浸透性物質、イオン性物質およびインディゴカーマインの溶液から選択される。
【0023】
別の実施形態では、動的光学パラメーターはIntegralであり、正規化された(無次元の)少なくとも約480〜650という値(例えば少なくとも約480、490、500,510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640または650)は、テスト中の子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0024】
更なる実施形態では、動的光学パラメーターがintegralであり、正規化された(無次元の)少なくとも約420〜490という値(例えば少なくとも約420、430、440,450、460、470、480、485または490)は、HPV感染が上記子宮頸部癌組織の原因であることを示す(例えばHPV感染と重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0025】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターがMaxであり、少なくとも約70〜90という較正単位の値(例えば少なくとも約70、75、80、85、86、87、88、89または90)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0026】
更なる実施形態では、動的光学パラメーターがMaxであり、少なくとも約65〜90という較正単位の値(例えば少なくとも約60、65、70、75、80、85、86、87、88、89または90)は、HPV感染が上記子宮頸部癌組織の原因であることを示す(例えばHPV感染と重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0027】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはArea to Maxであり、正規化された(無次元の)少なくとも約120〜170という値(例えば少なくとも約120、130、140、150、160または170)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0028】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはTime to Maxであり、少なくとも約80〜100秒という値(例えば少なくとも約80、85、90、95、100)は、テスト中の子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0029】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターは「Area to Max」であり、重度の子宮頸部腫瘍形成用の「Area to Max」カットオフ値より大きいか又はほぼ同じである値は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。この場合、「Area to Max」カットオフ値は、正規化された(無次元の)値で約120と約170との間(例えば約120、130、140、150、160または170)である。
【0030】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはSlope Aであり、少なくとも約1.1〜1.3(rad)という値(例えば少なくとも約1.1、1.2、または1.3rad)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0031】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターはSlope Bであり、少なくとも約―0.012〜―0.090(rad)という値(最大でも例えば約−0.012、−0.020、―0.025、―0.030、―0.040、―0.050、―0.060、―0.070、−0.080、または−0.090)は、上記子宮頸部組織が重度の子宮頸部腫瘍形成であることを示す(例えば重度の子宮頸部腫瘍形成と非重度の子宮頸部腫瘍形成とを判別する)。
【0032】
別の局面では、本発明は、子宮頸部組織、例えば子宮頸部癌または前癌組織を特徴づける方法であって、所定の期間バイオマーカーに曝され映像化されたされた子宮頸部組織またはその一部分から得られた光学特性(例えば子宮頸部癌または前癌組織からの後方散乱光の強度)に基づいて動的光学曲線をプロットする工程、動的光学曲線に基づいて、「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される動的光学パラメーターを決定する工程と、1以上の動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づいて子宮頸部癌または前癌組織を特徴づける工程と、によって子宮頸部組織、例えば子宮頸部癌または前癌組織を特徴づける方法を提供する。
【0033】
さらに別の局面では、本発明は、組織を特徴づける方法であって、例えばアプリケータを用いてバイオマーカーを組織に投与する工程と、バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉し整合する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉および整合を行う工程と、一連のスペクトルおよびカラー画像から、すべての画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する出射光を表す工程と、動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示して、それにより組織を特徴づける工程と、を含む方法を提供する。
【0034】
更なる実施形態では、本発明は、組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する方法を提供する。本方法は、例えばアプリケータを用いてバイオマーカーを組織に投与する工程と、バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉し、好ましくは整合する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉および整合を行う工程と、一連のスペクトルおよびカラー画像から、選択された画像点又はすべての画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する組織の光学特性、例えば出射光を表す工程と、データ(すなわち動的光学曲線)から1以上の動的光学パラメーター(例えば「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」)を計算する工程と、上記1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示し、それにより組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する工程と、を含む方法を提供する。
【0035】
本発明の様々な局面について列挙したすべての実施形態は、本発明の他の関連する局面にも、必要な変更を加えることにより適用されるが、冗長になることを避けるために説明を繰り返さないことが確認される。
【0036】
一実施形態では、組織の機能特性および構造特性に関する情報を得るために、動的光学パラメーター「Integral」が用いられる。別の実施形態では、動的光学パラメーターは「Max」であり、組織の機能特性および構造特性は、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、核対細胞質比からなる群より選択される。
【0037】
更なる実施形態では、核対細胞質比(NCR)と「Integral」パラメーターおよび「Max」パラメーターとを関連づける数式は以下の通りである。
NCR=1/1349×Integral−0.278、および
NCR=1/181×Max−0.309。
【0038】
さらに別の実施形態では、動的光学パラメーターは「Slope A」であり、組織の機能特性および構造特性は、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在および貧弱なリンパ排出系統からなる群より選択される。
【0039】
関連する局面では、本発明はさらに、癌組織を特徴づけるコンピュータプログラム命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラム命令が演算装置によって実行されると、前記演算装置に、
バイオマーカーの適用後に一連のスペクトルおよびカラー画像から、選択された画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する出射光を表す工程と、
動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、
上記1以上の動的光学パラメーターを保存して癌組織の特徴づけに用いる工程と、
を実行させる、コンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0040】
好ましい実施形態では、動的光学パラメーターは、動的光学パラメーターの組合せを介して、人工神経回路、統計的パターン認識アルゴリズム、ベイジアン分類または分類ツリーの助けにより病理状態を決定するために用いられる。
【0041】
更なる局面では、組織を特徴づける方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記方法が、
所定の期間にわたってバイオマーカーに曝された組織またはその一部分の捕捉された光学特性から動的光学曲線に関するデータを決定する工程と、
上記データに基づいて、動的光学パラメーターを決定する工程と、
1以上の上記動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づいて、前記組織を特徴づける工程と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0042】
同様に本発明は、子宮頸部組織を特徴づけるためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記命令が、
所定の期間にわたってバイオマーカーに曝された子宮頸部組織またはその一部分の1以上の光学特性に基づいて動的光学曲線をプロットするための命令と、
上記動的光学曲線に基づいて、「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される動的光学パラメーターを決定するための命令と、
1以上の上記動的光学パラメーターまたはそれらの組合せの値に基づいて、前記子宮頸部組織を特徴づけるための命令と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0043】
さらに、組織を特徴づける方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記方法が、
バイオマーカーを組織に投与する工程と、
バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉を行う工程と、
一連のスペクトルおよびカラー画像から、選択された画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する光学特性を表す工程と、
動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、
上記1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示し、癌組織を特徴づける工程と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0044】
本明細書においてさらに、組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、上記方法が、
バイオマーカーを組織に投与する工程と、
バイオマーカー投与の前後に一連のスペクトルおよびカラー画像を時間的に連続して所定期間にわたって捕捉し整合する工程であって、バイオマーカーの投与と画像捕捉の開始とを適切に同期して捕捉および整合を行う工程と、
一連のスペクトルおよびカラー画像から、すべての画像点における動的光学曲線を計算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する出射光を表す工程と、
動的光学曲線から1以上の動的光学パラメーターを計算する工程と、
上記1以上の動的光学パラメーターを疑似カラーマップの形態で表示し、組織の機能特性および構造特性をインビボで決定する工程と、
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0045】
本発明の方法に関するすべての適切な実施形態は、本発明のコンピュータ読み取り可能な媒体の局面にも、必要な変更を加えることにより適用され、その逆もまたしかりである。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明と請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本明細書に開示する診断方法のフローチャートを示す。
【図2】図2は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類によるヒト乳頭腫ウイルス属(HPV)感染に対応するDOCを示す。
【図3】図3は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による炎症に対応するDOCを示す。
【図4】図4は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による子宮頸部上皮内腫瘍I(CIN I)に対応するDOCを示す。
【図5】図5は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による重度(HG)病変(CIN II、III、微小侵襲性癌)に対応するDOCを示す。
【図6】図6は、組織の様々な病理状態を診断するために用いられ得る、典型的DOCに対応するDOPを示す。
【図7】図7は、明示的DOP(Integral)に対応する受信者操作特性(ROC)曲線と、この特定のDOPの軽度CIN/重度CIN判別性能を表す「ROC曲線下領域」とを示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図8】図8は、明示的DOP(integral)に対応するROC分析から得られた感度(灰色)および特異性(黒)のプロットを示す。これらは、この特定のDOPの軽度病変/重度病変判別性能を表す。480から650の範囲から選択されたIntegral値は、SSおよびSPが共に60%を超える状態で、子宮頸部の軽度腫瘍形成と子宮頸部の重度腫瘍形成とを判別するためのカットオフ値を含む。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で3%酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた
【図9A】図9Aは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9B】図9Bは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9C】図9Cは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9D】図9Dは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図9E】図9Eは、DOCから抽出された5つの異なるDOPのうちの1つの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図10A】図10Aは、バイオプシー前に同一試料から得られた2つの異なるDOP(IntegralおよびMax)のうちの1つに対する、核対細胞質比(NCR)の散乱したプロットおよび線形退化曲線を示す。核対細胞質比(NCR)は組織試料内で定量的に査定した。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図10B】図10Bは、バイオプシー前に同一試料から得られた2つの異なるDOP(IntegralおよびMax)のうちの1つに対する、核対細胞質比(NCR)の散乱したプロットおよび線形退化曲線を示す。核対細胞質比(NCR)は組織試料内で定量的に査定した。これらの結果は、310人の女性が登録した臨床設定で酢酸溶液と相互作用するインビボ子宮頸部上皮から得られた。
【図11】図11は、酢酸と相互作用する子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCであって、組織学の分類による健常(正常)組織に対応するDOCを示す。
【図12】図12は、本明細書で開示した本発明のソフトウェアを実行する工程を、画像組織データを取得するために用いたハードウェア設定の例示的実施形態と関連して示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。全図面を通して、同様の要件には同様の参照符号を付す。
【0049】
光学バイオマーカーは、異常組織の光学応答の一時的変動を誘発する化学物質である。高能率なバイオマーカーの場合、異常組織の構造的、形態的および機能的変化が、バイオマーカーと組織との相互作用中に発生する光学信号内に現れ、病変の識別と局所化とを容易にする。
【0050】
バイオマーカー適用を含む典型的な診断手順は以下を含む。
・1以上のバイオマーカーを局所または全身に投与する。
・バイオマーカーが組織の光学特性に誘発した変化を検査する。
・診断および処置すべき異常領域を突き止める。
【0051】
バイオマーカーを含む伝統的診断方法にはいくつかの欠点があり、これらは主に、動的光学現象の視覚的査定は有効であり得ないという事実に関連する。これは、異なる組織部位において異なる運動によって高速に変化する現象を検出し記録することに対し、人間の光学系には生理学上、限界があるためである。
【0052】
この問題点に対する解決法がBalas C.(2001) IEEE Trans. on Biomedical Engineering, 48:96-104; Balas CJら、(1999) SPIE 3568:31-37;およびPCT公報WO 01/72214 Alに開示された方法および装置によって提供されている。これらの文献には、バイオマーカーと組織との相互作用によって起こる動的光学現象の定量的査定およびマッピングが提供されている。
【0053】
上記したように、本発明は、上記方法を改良した方法を提供する。例えば本発明は、様々な正常状態と病理状態とを判別する際の予測値と能率との両方に関して、DOCの体系的パラメーター分析と引き出されたDOPの比較評価とを提供する。
【0054】
本明細書に記載する本発明は、スクリーニング目的の自動化診断または膣鏡検査における半自動化臨床診断方法に関する。これらは適切なDOPと対応するカットオフ値とを選択することに基づいており、様々な病理状態を最も良く判別する。上記方法は、DOCから抽出されたDOPを、定性的病理学および定量的病理学の両方と関連づけることによって達成される。本明細書に開示する本発明の別の目的は、生存組織での構造上の特徴および機能上の特徴を査定する方法を提供することであり、上記査定は上皮移動現象のモデリング、および上記特性と、インビボ測定された動的光学特性とを関連づけることによって行う。
【0055】
本明細書では用語「動的光学曲線」と「DOC」とを相互交換可能に用いる。これらは、観察対象組織の光学特性、例えば組織またはその一部分からの後方散乱光の強度、組織またはその一部分からの光の反射率および拡散反射率、または所定の期間にわたってバイオマーカーに曝された組織またはその一部分からの蛍光を表す曲線を含む。
【0056】
本明細書において用語「バイオマーカー」は、テスト中の組織試料からの光学信号を変化させることができるいずれの化学物質をも含む。このような物質は例えば、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、ブチル酸、ルゴールヨード、シラーヨード、メチレンブルー、トルイジンブルー、浸透性物質、イオン性物質およびインディゴカーマインを含むがこれらに限られない。上記物質のいずれの溶液も使用可能である。好ましい実施形態では、バイオマーカーは酢酸溶液、例えば3〜5%酢酸溶液である。
【0057】
本明細書において用語「動的光学パラメーター」は、当業者が組織を特徴づける、例えばグレード付ける根拠となり得る1以上のパラメーターを含む。本明細書において、このようなパラメーターは、所定期間にわたってバイオマーカーに曝された癌組織またはその一部分からの後方散乱光の強度に基づいてプロットされた1以上の動的光学曲線を数学的に分析することによって引き出され得る。このようなパラメーターはさらに、1以上の上記動的光学曲線を経験的、手動的または視覚的に分析することによっても引き出され得る。本発明が想定する動的光学パラメーターは例えば、「Integral」、「Max」、「Time to Max」、「Area to Max」、「Slope A」および「Slope B」を含むがこれらに限られない。
【0058】
これらの動的光学パラメーターの数値は、18%反射較正検体に対して較正し、上記検体に対してシステムの緑チャネルにおいて0〜255のグレースケールで中間値105を得たデジタルイメージングシステム(DySIS技術、Forth Photonics)により得られたものに基づく。この較正プロトコルに基づき、較正単位(0〜255のスケール)における緑の中間値の最大差異または反射率の最大差異(0〜100%のスケール)としてMaxが与えられる。
【0059】
本明細書で言及するintegralカットオフ値は、τ=240秒の積分時間に対応するDOCから計算したものである。
【0060】
【数1】
上記式において、cは値c=8[τIt=0]−1による、またはc=1/30(強度単位)−1秒−1を置換することによるスケーリングファクタである。Itはバイオマーカー適用後の所与の時間点における出射強度である。It=0はバイオマーカー適用前の出射強度である。
【0061】
Area to maxは、同じItg式から計算され、唯一の違いはτ=Tmaxであることである。従って本明細書ではItgおよびArea to Maxを共に無次元量として提示する。
【0062】
取得物、積分時間、較正プロトコルおよび試料が異なれば、カットオフ値も異なる。240秒という積分時間は最適時間として選択されたものであり、本明細書では一例として提示するが本発明を限定するものではない。本明細書で開示する「較正単位」および「無次元量」は「任意単位」とも呼ぶ。
【0063】
このように本明細書で言及する値は、上記した特定のプロトコルによって得た値を示す。これにより当業者には、他のイメージングシステムを用いて得られた定量値を比較するための、容易に識別可能な方法が提供される。
【0064】
冠詞の文法に関して述べると、本明細書で用いる冠詞「a」および[an」は、1または1より大きい数値(すなわち少なくとも1)を意味する。例えば「”a”動的光学パラメーター」は1以上の動的光学パラメーターを意味する。
【0065】
本明細書において用語「組織」は、癌組織および前癌組織を含むいずれの組織またはその一部分をも含む。例えば組織は、上皮組織、結合性組織、筋肉組織または神経組織であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、組織は上皮組織またはその一部分、例えば上皮または腺上皮を覆う又はライニングする部分である。例えば組織は、子宮頸部組織、皮膚組織、消化器官組織(例えば口腔組織、胃組織、食道組織、十二指腸組織、小腸組織、大腸組織、膵臓組織、肝臓組織、胆嚢組織または結腸組織)、または鼻腔組織であってもよい。好ましい実施形態では、組織は前癌または癌組織、例えば異形成、腫瘍形成または癌性病変である。
【0066】
本明細書において、癌組織を「特徴づける」という表現は、本明細書に記載する方法を用いて癌組織を特徴づけることを含み、これによって例えばスクリーニング、臨床診断、癌組織に対するガイドつきバイオプシーサンプリングおよび/または処置などが容易になる。例えば、癌組織は、グレード付けされ得る、すなわち例えば、軽度の(LG)病変(すなわちHPV感染、炎症、CINグレードI病変、またはこれらの組合せ)と特徴づけられ得、あるいは重度の(HG)病変(すなわちCINグレードII病変、CINグレードIII病変、または侵襲性癌(CA)またはこれらの組合せ)として特徴づけられ得る。
【0067】
本明細書において、組織特性は、組織の構造特性、機能特性および病理状態ならびにこれらの組合せを含むがこれらに限られない。
【0068】
以前は異形成と呼ばれていた子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)には様々な段階がある。組織学的に評価された病変は典型的には、CINの命名法を用いて特徴づけられる。細胞の染色は典型的にはベセスダシステムによって分類される。子宮頸癌は典型的には、国際産婦人科連合(FIGO)のシステムに基づいて段階分けされる。CINグレードI(軽度の異形成)は上皮ライニングの下部1/3の乱れた成長と規定される。CINグレードII(中度の異形成)はライニングの2/3の異常成熟と規定される。CINグレードIII(重度の異形成)は、上皮厚みの2/3より大きい部分にインサイチュ癌(CIS)が広がり、厚み全体が異常成熟しているものを含む。子宮頸部異形成の特徴づけには、子宮頸部の上皮ライニングの乱れた成長および発達という周知の分類システムがある(DeCherney, A.ら、Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment(現在の産科学および婦人科学の診断と処置), 9th ed., The McGraw-Hill Companies, New York, NY (2003)を参照のこと。上記文献の内容を参照することにより本明細書に援用する)。
【0069】
「基準値」は、組織の特定の病理状態および/または組織の構造特性および機能特性に相関し、これらを判別するために用いることができる様々な動的光学パラメーター(DOP)の予測値およびカットオフ値に関連する。
【0070】
図1は、本発明の方法の基本的工程を示す。
【0071】
・バイオマーカー適用前に組織の基準画像を取得する(102)。この工程は、検査対象組織の元の光学特性を記録するために必要である。
【0072】
・例えばアプリケータを用いてバイオマーカーを適用する(104)。バイオマーカーアプリケータは、バイオマーカー適用直後(すなわち1秒未満)に画像の取得を開始するためのトリガ信号をも提供する。これにより取得プロセスの同期化と標準化が保証される。
【0073】
・所定のスペクトル帯域において、約5秒から7秒の間のサンプリングまたは取得速度で時間的に連続して一連の画像を取得する。これを約4分の所定期間にわたって行う(106)。所定期間は、バイオマーカーが誘発する光学現象の長さを考慮して決める。当業者であれば、この期間は4分を超えて1〜2時間となることもあり得、その間のいずれの長さでもあり得ることを認識する。しかし所望の期間を決定するためには、ある期間を超えた場合の患者の快適さ、患者にとっての利便性、バイオマーカーによって誘発される光学現象の有効性などの要因、記憶容量および処理能力などのシステム性能、およびその他の要因を用いることができる。あるいは上記期間は、得られた画像の数、例えば30枚、35枚、40枚などに基づいて測定してもよい。スペクトル帯域は、バイオマーカー応答領域と非応答領域との間に最大コントラストが達成されるように選択される。
【0074】
・捕捉した画像を整合させる(108)。この工程は、すべての組織点が発した光の強度の時間的変動を得るために必須である。ある特定の画像位置に対応する画素は、同一の組織点に対応する必要がある。インビボ測定では、組織の画像を連続的に取得している間に、息づかいなどにより光学センサと組織とが相対的に移動する場合がある。例えば機械的安定化手段および/または画像登録アルゴリズムのいずれかにより、光学センサと検査対象組織領域との相対的位置が一定であることを保証してもよい。捕捉した画像を、基準画像(102)と適切に整合させることによりさらに、検査対象組織の特定の位置に対応するすべての画素または画素群からDOCを有効に抽出することが保証される。
【0075】
・上記取得した一連の画像の一部またはすべてから、選択した画像のすべての画像位置(すなわち、すべての画素位置、または画素群によって規定された位置)におけるDOCを演算し、所定のスペクトル帯域での時間に対する拡散反射率(DR)または蛍光強度(FI)を表す(110)。光学特性(DR、FI)の選択は、採用したバイオマーカーの、拡散反射率または蛍光特性のいずれかを変化させる特性によって決定される。上記したように、適切なスペクトル帯域が選択されて、バイオマーカー応答領域と非応答領域との間に最大コントラストが提供される。図2から図5を参照して後述する別の実施形態では、DOC曲線は、組織学的に分類される様々な病理に対応する酢酸溶液(バイオマーカー)と相互作用する子宮頸部組織部位から得られる。
【0076】
・選択した画像の各画像位置(すべての画素位置、または画素群によって規定された位置)から得たDOCからDOPを計算する(112)。現象の動的特性を表す複数のパラメーターが引き出される。組織の異常部位を選択的に染色する際のバイオマーカーの能率によるが、DOPは様々な組織病理をインビボで査定する定量的手段を提供する可能性を潜在的に有する。これらのパラメーターはその後疑似カラーマップという形態で表示することができる。ここでは異なる色が異なるパラメーター値を表す。このような疑似カラーマップは、病変のグレードおよび縁を決定するために用いることができ、これによりバイオプシーサンプリング、処置、および病変管理全般が容易になる。本発明の一実施形態では、バイオマーカーと組織との相互作用によって起こる光学現象の動的特性を表すDOC(例えば以下の表1に示す、選択した時間範囲にわたるDOCのIntegral、maxima、slopeなど)から様々なDOPが計算される。組織が子宮頸部上皮でありバイオマーカーが酢酸溶液である場合の上記明示的DOPについては、図6を参照して後に詳細に分析する。
【0077】
・別の実施形態では、DOPおよびDOCの予測値が統計的に十分な組織ポピュレーションにおいて実験的に決定される。これはDOP値およびDOC値を、明確な診断を提供する、組織学などの標準的方法(至適基準)で比較することにより行われる。適切な予測値を表示するDOPに対して、様々な病理状態を最も良く判別するカットオフ値が決定される(116)。特定のバイオマーカーおよび上皮組織の場合、この工程は、本方法の通常の実施とは別に独立して行ってもよい。この工程は、DOPおよびDOCを特定の病理状態と関連づけるために必須である。この相関関係が確立された後、DOPの所定のカットオフ値に基づいて病理状態を判別することが可能となる(120)。組織が子宮頸部上皮でありバイオマーカーが酢酸溶液である場合の様々なDOPの予測値の査定については、後に図7から図9を参照して詳細に分析する。
【0078】
・異なる病理状態およびグレードを表すDOP値およびDOC値は、疑似カラーマップという形態で表示することができる。ここでは異なる色が異なるグレードを表す(124)。疑似カラーマップは病理マップを表し、病理マップは病変のインビボグレード付け、および病変の縁の決定に用いることができ、バイオプシーサンプリング、処置、および病変管理全般を容易にする。
【0079】
・本発明の別の実施形態では、インビボおよびインビトロ実験によるバイオマーカーと組織との相互作用の理解および分析に基づき、上皮組織の移動現象および構造上の特徴の両方の生物物理学的モデルが開発される(114)。上皮の移動現象が、組織の機能特性により決定される場合、および機能特性がDOPおよびDOCで表される場合は、モデルパラメーターが後者と関連づけられ、それにより組織の機能特性および構造特性のインビボ査定を行う手段が提供される。特にDOP値は、様々な正常状態および病理状態における組織の機能上の特徴および/または構造上の特徴を表すように変換されてもよい(118)。機能上の特徴は生存組織でのみ決定可能であり、他方、構造上の特徴は組織試料の分析(バイオプシー)によってインビトロで決定可能であることは注目に値する。本発明の方法は、インビボで両方の特性を査定し、それにより、より完全な上皮システムの特徴づけおよび識別を可能にする手段を提供する。完全な上皮システムの特徴づけ/識別は診断性能を上げると予測される。なぜなら様々な病理状態が上皮組織の機能特性および構造特性の両方に影響を与えるからである。例えば、バイオマーカーとして酢酸溶液を用いる場合の子宮頸癌の構造的現象に関して述べると、DOP値が、定量的病理方法によって得られる核密度を表す定量データと関連づけられる。図10および図11に、DOPを核対細胞質比に変換することを可能にする相関を示す。機能上の特徴および構造上の特徴のいずれの場合でも、異なる色が異なる機能上の特徴および構造上の特徴を表す疑似カラーマップを作成することができる(122)。疑似カラーマップは、組織の機能マップおよび/または構造マップを表し、病変のインビボグレード付け、および病変の縁の決定に用いることができ、バイオプシーサンプリング、処置、および病変管理全般を容易にする。疑似カラーマップはさらに、組織の構造上の特徴および機能上の特徴の両方におけるバイオマーカーの効果をインビボでモニタリングするためにも用いてもよく、従って異常組織領域を強調してバイオマーカーの効率を評価するために用いてもよい。
【0080】
本発明を子宮頸部組織に適用する場合を説明する実施形態において、異なるグレードの正常、HPV(ヒト乳頭腫ウイルス属)感染、炎症、および子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)を含む状態を最も良く判別する適切なDOPおよび対応するカットオフ値を決定した。3〜5%酢酸溶液をバイオマーカーとして用いて、DOCを得る上記測定手順を行った。DOCおよびDOPの予測値を決定するために、パップテストの結果が異常と出た308人の女性が登録し検査されたマルチサイト臨床試験から実験データを得た。青から緑にかけてのスペクトル範囲で子宮頸部組織の画像を時間的に連続して捕捉することによりDOCを得た。DOCおよびDOPの疑似カラーマップに示された酢酸応答組織領域にバイオプシーを行い、組織学的評価およびグレード付けを行った。その後、ROC分析によって組織学的グレード付けと最も良く関連づけられるDOPを決定するために、組織学的分類をDOPセットと比較した。ROC曲線から、各パラメーターまたは各パラメーターセットに対する最適カットオフ値を引き出し、それにより所望のSS値およびSP値が提供された。
【0081】
例示的実施形態では、子宮頸部組織部位から得られた典型的DOCを図2から図5に示す。これらの子宮頸部組織部位は組織学者らによって、HPV感染、炎症、CIN1、および重度(HG)病変と分類されたものである。臨床実務において一般的に用いられる更なるカテゴリー化として、HPV、炎症、CIN1またはこれらの組合せを軽度(LG)病変と呼ぶ。HG病変は、CIN2、CIN3または侵襲性癌(CA)のいずれか又はこれらの組合せに対応する。組織学的グレードであるCIN1、CIN2およびCIN3は、CAの前駆体(CIN1−最低度、CIN3−最高度)である。縦軸はIBSL(任意単位で表す)に対応し、横軸は組織に酢酸を適用してからの時間経過(秒)を表す。様々な病理状態に対応するDOCが強度の時間的変動という面で多様な変化を示すことがはっきりとわかる。
【0082】
特に、HPVと分類された曲線はほとんど指数関数的に上昇して飽和レベルに達するが、他方、炎症に対応する曲線はより早期により高いピークに達しその後急激に下降することがわかる。CIN1と分類された曲線は、HPVまたは炎症に対応する曲線よりも後で最高レベルに達しその後ゆっくりと下降する。この下降速度は炎症の場合に観察されるよりも明確に遅い。HG病変の場合の曲線は、HPVおよびCIN1の場合に観察されるよりも後でより高い最高レベルに達するが、下降速度は炎症と分類された曲線で見られるよりもはるかに遅い。これらの結果とは対照的に、正常組織部位から得られたDOCは測定期間全体を通じてほとんど一定である(図11を参照のこと)。
【0083】
特定の病理状態に関連するDOCのこれまでの記載は助けとはなるが定性的である。従って以下では、動的曲線から抽出した定量的パラメーターを説明する。これらのパラメーターはロバストにLG病変とHG病変、HPV感染とHG病変とを判別することができる。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、病理状態に関する記録済みDOCの様々な特性を表す単一のDOPまたはDOPの組合せを引き出すために、数式を用いて、組織から得たDOCをさらに処理してもよい。数式は多項式、単一、二成分、多成分の指数関数適合、線形および非線形分解、またはこれらの組合せを含むがこれらに限られない。
【0085】
別の実施形態では、得られたDOPにさらに重み付けをしてもよい。これは、検査対象組織に特異な特性、例えば患者の年齢、閉経期間(女性の場合)など、または組織を検査する対象の地域住民または大域住民を特徴づける特性、またはこれらの両方に基づいて行われる。
【0086】
本方法の別の好ましい実施形態では、LG病変とHG病変とを判別する際に高い診断値を有するDOPは以下の通りである。
【0087】
1.Max
このパラメーターは、バイオマーカー適用後の記録済みDOCの最大値と、t=0におけるDOC値との差異として定義される。
【0088】
2.Integral
このパラメーターは、記録済みDOCと、第1のDOC実験点を横切る、時間軸に平行な線とによって囲まれた領域として定義される。integralは所定の期間にわたって計算される。所定の期間は、バイオマーカーと組織との相互作用によって起こる光学効果の長さに依存する。子宮頸部組織と酢酸溶液(バイオマーカー)の場合、integralはt=0からt=4分の期間に求められる。このパラメーターは、測定した曲線を閉形式の数式で近似した後に数式の積分を介して分析的に計算してもよい。
【0089】
3.Tmax
このパラメーターは、DOCの最大値に達するために必要な時間として定義される。但し上記最大値はMaxパラメーターである。
【0090】
4.Area to Max
このパラメーターは、t=0秒(すなわちアセト白化(acetowhitening)現象の開始時間)からt=Tmaxまでの間の、DOCに対応する曲線の領域として定義される。このパラメーターもまた、測定した曲線を閉形式の数式で近似した後に数式の積分を介して分析的に計算してもよい。
【0091】
5.Slope A
これは、「Max」値までの強度増加速度を表すパラメーターである。明示的には曲線の最初の導関数として、または「Max」値に達するまでの中間のスロープの平均値として定義することができる。
【0092】
6.Slope B
これは、曲線の「Max」値からの強度減少速度を表すパラメーターである。明示的には曲線の最後の導関数として、または「Max」値からの中間のスロープの平均値として定義することができる。
【0093】
図6は、DOC曲線に関して上記定義した4つのパラメーター、すなわち「Max」、「Tmax」、[Slope A」および「Slope B」を示す。他の2つのパラメーター(「integral」および「Area to Max」はそれぞれ本質的に、示された点、すなわちKLNPおよびKLMによって囲まれた領域を示す。
【0094】
図7は、上記した「integral」パラメーターに関する累積結果のLG/HG ROC分析を示す。ROC曲線下の領域は0.83であり、高度な判別(感度)を示唆している。
【0095】
図8は、アセト白化特性を定量化するために用いる「Integral」パラメーターの様々な値をROC分析することにより得られた感度(灰色)および特異性(黒)をプロットしたものを示す。ある値では感度と特異性とが共に78%という最大値に達していることがはっきりとわかる。
【0096】
図9は、LGおよびHG診断状態についての、上記のパラメーターのうちいくつかの中間値を、対応するエラーバーと共に示す。エラーバーは95%信頼区間を表す。上記中間値は組織学者らによって行われたバイオプシー検査を介して結論づけられた。
【0097】
LG病変とHG病変とを判別する際の最適値範囲を、「Integral」パラメーターに関して上記したようにROC分析で計算した。特に各パラメータータイプに関して、真陽性(TP)と偽陽性(FP)の割合を、範囲全体[Pmin、Pmax]にわたる様々な閾値について計算した。ここでPは特定のパラメーターの値を示す。感度(SS=TP)と特異性(SP=100−FP)とが互いにほぼ一致する閾値を、LGとHGとを判別する最適値(カットオフ値)として用いた。
【0098】
表1は、上記で定義したパラメーターのうちのいくつかに関してLG病変とHG病変とを判別する最適値範囲を示す。これらの最適値は特異性および感度が60%を超えるという性能につながる。
【表1】
【0099】
*上記パラメーターは、18%反射較正検体に対して較正し、上記検体に対してシステムの緑チャネルにおいて0〜255のグレースケールで中間値105を得たデジタルイメージングシステム(DySIS技術、Forth Photonics)により得られたものに基づく。この較正プロトコルに基づき、較正単位(0〜255のスケール)における緑の中間値の最大差異または反射率の最大差異(0〜100%のスケール)としてMaxが与えられる。
【0100】
**上記integralカットオフ値は、τ=240秒の積分時間に対応するDOCから計算したものである。
【数2】
上記式において、cは値c=8[τIt=0]−1による、またはc=1/30(強度単位)−1秒−1を置換することによるスケーリングファクタである。Itはバイオマーカー適用後の所与の時間点における出射強度である。It=0はバイオマーカー適用前の出射強度である。
【0101】
従って、Area to maxは、同じItg式から計算され、唯一の違いはτ=Tmaxであることである。本明細書ではItgおよびArea to Maxを共に無次元量として提示する。
【0102】
取得物、積分時間、較正プロトコルおよび試料が異なれば、カットオフ値も異なる。240秒という積分時間は最適時間として選択されたものであり、本明細書では一例として提示するが本発明を限定するものではない。
【0103】
本発明を特定の実施形態に関して示し記載してきたが、当業者であれば、本発明の思想および範囲から逸脱することなく形態および詳細部分の改変がなされ得ることを理解する。
【0104】
上記分析に基づくと、ある好ましい実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約480〜650のカットオフ値範囲を有するDOCの「integral」パラメーターが用いられる。
【0105】
別の好ましい実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約70〜90または35%〜45%のカットオフ値範囲を有するDOCの「Max」パラメーターが用いられる。
【0106】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約120〜170のカットオフ値範囲を有する「Area to Max」パラメーターが用いられる。
【0107】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約80〜100秒のカットオフ値範囲を有する「Tmax」パラメーターが用いられる。
【0108】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約1.1〜1.3のカットオフ値範囲を有する「Slope A」パラメーターが用いられる。
【0109】
さらに別の実施形態では、LG病変とHG病変とを判別するために、約−0.012〜−0.090のカットオフ値範囲を有する「Slope B」パラメーターが用いられる。
【0110】
さらにHPV感染とHG病変とを判別するために、上記パラメーターの適切なカットオフ値を得るべく同様の分析を行った。
【0111】
表2は、「Max」パラメーターおよび「Integral」パラメーターについて、HPVとHGとの判別に対して60%を超える特異性および感度を提供する最適値範囲を示す。
【表2】
【0112】
好ましい実施形態では、HPV感染とHG病変とを判別するために、約380〜490のカットオフ値範囲を有するDOCの「Integral」パラメーターが用いられる。
【0113】
別の実施形態では、HPV感染とHG病変とを判別するために、約65〜90のカットオフ値範囲を有するDOCの「Max」パラメーターが用いられる。
【0114】
さらに別の実施形態では、上記を含むが上記に限られないパラメーターの組合せが、組織の病理を判別する手段を提供し得る。そのようなパラメーターは例えば、上記バイオマーカーの適用後、約40秒サンプリング時間が経過するまでの平均Slope DOCとMax値との積であってもよい。約2.05±0.2を超える積(較正強度単位/時間)が重度の腫瘍形成の存在を示し、それより低い値が軽度の腫瘍形成または健全な組織を示すというようにしてもよい。
【0115】
LG病変とHG病変とを判別するため、またはHPVとHG病変とを判別するためにカットオフパラメーター値を用いる「ハードクラスター」アプローチ以外に、より進んだ統計およびパターン認識分析手法(例えばベイジアン分類、人工神経回路(ANN)、分類ツリー)を用いて、他の線形または非線形パラメーター、あるいは単一パラメーターまたは複数パラメーターの組合せを抽出し、より高度な判別を行ってもよい。さらに別の実施形態では、ベイジアンモデリングを用いたパラメーターアプローチ(例えば、Fukunaga K.(1990) New York: Academic, 2nd Ed.に記載)およびANNを用いた非パラメーターアプローチ(学習レベル量子化-LVQ, 例えばKohonen T., (1986) Int. J. Quant. Chem., Suppl. 13, 209-21に記載)を用いて、LGまたはHG腫瘍形成を有する組織部位の対応DOCから得たDOPを微分した。ベイジアン分類およびNN分類では共に、上記した光学パラメーターの様々な組合せ、およびサンプル全体から選択した様々な数のトレーニングセットにおいて、LG病変およびHG病変に対する全体的判別性能は75%を超えていた。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、疾病の存在を示す動的パラメーター値と対応するカットオフ値とをマッピングすることにより自動化子宮頸部スクリーニングを行う手段を含む。
【0117】
さらに別の実施形態では、本発明は、疾病の存在を示す動的パラメーター値と対応するカットオフ値とをマッピングすることにより半自動化膣鏡検査を行う手段を含む。このような方法は、実務家の熟練度とは無関係の、膣鏡検査の基本性能を保証し、診断手順全体、フォローアップおよびバイオプシーサンプリングおよび処置中のガイドを容易にする。
【0118】
本発明の別の局面は、上皮での機能的および構造的変化に関連する動的パラメーターによって規定されるアセト白化現象の解釈を含む。一実施形態では、子宮頸部組織構造特性に関連する別々のパラメーターが演算されて、同一の組織部位から記録されたDOCから得られた複数の機能上の特徴と関連づけられる。具体的には、腫瘍形成(HPV、CIN1、CIN2およびCIN3)または子宮頸癌の核容量とグレードとの間の直接的な相関関係について一般的な同意がある(Walker DCら、(2003) Physiological Measurement, 24:1-15)。核対細胞質比(NCR)は上皮組織の核密度を表し、ある種の診断状態との相関関係を表すために用いられる最も一般的なパラメーターである。好ましい実施形態では、上記動的パラメーターのいずれか又は組合せと、対応する子宮頸部位置から抽出したバイオプシー材料から計算したNCRとの間の相関式を求めることにより、組織の細胞構造が査定される。この目的のため、組織領域に酢酸を導入した後、上皮の異常機能を反映するDOCパラメーターをNCRと関連づけた。
【0119】
さらに別の実施形態では、この相関関係は、すべての位置における検査済み上皮組織の構造特性を表す疑似カラーマップ、さらにはアセト白化運動特性を表すマップを、高核密度を有する強調された部位と共に抽出することにつながる。マクロ構造組織状態のインビボ査定を表す、組織から得たインビボ光学曲線を定量することにより、組織の細胞特性に関する結論であって微小レベルでの構造に関する代表的考え方を構成する結論を直接引き出せると考えるならば、上記のような作用は例外的な価値を有する。
【0120】
本明細書に開示する方法によって動的パラメーターが得られた上皮組織部位に対してそれぞれNCRを計算するために、膣鏡検査中に同一数の子宮頸部バイオプシー試料を得た。バイオプシーした組織を標準的手順によって処理し、免疫組織化学的に染色し、スライド上に置いて、顕微鏡による画像分析でさらに評価した。均等数の顕微鏡組織構造画像を得た後、多段階画像分析アルゴリズムを用いて画像内に表示した細胞核をセグメントに分けた(Loukas CGら、(2003) Cytometry, 55A(I):30-42)。上皮内に封入された核が占有する面積の合計を上皮組織の全面積で除算したものとしてNCR量を計算した。NCRはまた、上皮組織の「細胞パッキング」特性としても知られており、組織の細胞ポピュレーションの断面構造を本質的に示す。
【0121】
例示的実施形態では、図10Aおよび図10Bに、最も強い相関係数(R)を表す2つの異なるDOPの、NCRに対する散乱プロットを示す。これらのパラメーターは動的光学曲線の、上記に定義した「Integral」および最大値(Max)である。グラフ内の線は線形退行曲線を表す。実験データに対して最小自乗法での適合を行うことによって得られたDOPからNCRへの変換式および相関結果を表3に示す。
【表3】
この表から、両方のパラメーターとも、組織の細胞パッキング特性との重要な相関関係を示していることがわかる。本方法の一実施形態では、線形の式により、特定の組織部位から得られたDOCに対応するDOPを、その基礎となる組織部位のNCR特性に変換する。
【0122】
本方法の別の実施形態では、上記の変換式を用いて、「Integral」か「Max」のいずれかの定量的疑似カラーマップを上皮組織のNCRマップに変換してもよい。
【0123】
腫瘍形成の進行に関連する上皮組織の構造的変化に加えて、酢酸溶液の適用後、上皮の細胞外および細胞内空間でさらにいくつかの機能的変化が起こる。特に、固体腫瘍が酸性微小環境内に生存することが知られている(Webb SDら、(1999) J. Theor. Biol., 196:237-250; Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334;およびMarion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)。さらに、実験測定により、腫瘍内の細胞外pHは、正常組織のそれよりも平均0.5単位だけ低いことが示されている。腫瘍の細胞外pHは典型的には、6.6〜7.0の範囲である(Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334を参照のこと)。腫瘍細胞はさらに、中性または僅かにアルカリ性の細胞内pHを有する(Marion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)。正常細胞同様、腫瘍細胞も狭い範囲で細胞質のpHを調節して様々な細胞内活性に対して好ましい環境を提供している。
【0124】
腫瘍内における酸性細胞外pHの存在に関する事項はまだ賛否両論があるが、腫瘍の酸性環境は、乳酸などの代謝性酸の生成が高速度であること、その細胞外空間からの除去が非効率的であることに起因すると一般的に考えられている(Webb SDら、(1999) J. Theor. Biol., 196:237-250; Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Marion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19;およびPrescott DMら、(2000) Clinical Cancer Research, 6;(6):2501-2505)。さらに腫瘍細胞では、酸素供給レベルにかかわらずグリコリシスの速度が速い。その結果、細胞環境から外部に大量の乳酸(そしてその結果H+)が生成される。組織崩壊した脈管または貧弱なリンパ排出系統および上昇する腸内圧力などの複数の要因により、血液への酸排出(H+排出)が非常に遅い。そのため、腫瘍細胞の細胞外空間と細胞内空間との間でpHグラジエントの逆転が見られる(Webb SDら、(1999) J. Theor. Biol, 196:237-250; Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334;およびMarion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)。癌が過渡的プロセスでありCINが癌の前駆体であるとすると、CIN細胞外環境も酸性である(おそらく酸性度は低い)と考えることもまた理にかなっている。さらに、腫瘍および異形成細胞は、正常細胞と同じ短期間pH調節メカニズム(Marion Sら、(2000) Molecular Medicine Today, 6:15-19)および長期間pH調節メカニズム(Lee AHら、(1998) Cancer Research, 58:1901-1908; Yamagata Mら、(1996) Br. J. Cancer, 73:1328-1334およびPrescott DMら、(2000) Clinical Cancer Research, 6;(6):2501-2505)を用いることが知られている。腫瘍細胞代謝により生成される過剰プロトンは、特定の水素ポンプ(Prescott DMら、(2000) Clinical Cancer Research, 6;(6):2501-2505)によって細胞から排出される。
【0125】
子宮頸部内でのアセト白化効果の観察は、異常組織(すなわちHPV、CIN、または癌)を特徴づけるために膣鏡検査で用いられる。アセト白化効果とは、酢酸溶液を子宮頸部の変態ゾーンに適用することにより誘発される現象を指す。酢酸の適用は選択的に子宮頸部の異常領域に対して過渡的白化を誘発する。これは異常領域を見つけるために臨床実務で70年より長く用いられてきたが、組織が白化することに関する正確な物理化学的メカニズムはまだわかっていない。同様の現象は、バイオマーカーとして蟻酸、プロピオン酸、ブチル酸を用いたときにも観察される。
【0126】
アセト白化効果の解釈に関する2つの主要な説明が関連文献に多く見られる。インビトロ研究により、酢酸効果はある種のサイトケラチン(上皮細胞に存在するタンパク質)の量に関係することが示されている(Maddox Pら、(1999) Journal of Clinical Pathology, 52:41-46およびCarrilho Cら、(2004) Human Pathology, 35:546-551)。子宮頸部の腫瘍形成の場合、細胞外環境が酸性であるため、局所的に投与された酢酸分子は構成イオンから分離せず、従って受動的に細胞膜に侵入する。中性pHの細胞質に入ると、酢酸分子は分離して、核タンパク質と相互作用する、カルボキシルイオン、及び水素イオンを発する。その結果、異常細胞の散乱特性が選択的に変化する。
【0127】
サイトゾルのpH値は、これらのタンパク質の配座安定性にとって極めて重大である。中性pH値ではタンパク質は溶液中で安定する。pH値が低下すると、pI(等電点)によっては不安定かつ不溶となる。タンパク質不安定化のプロセスは変性と呼ばれ、この部分的変性は数ミリ秒だけ続く可逆的プロセスである。変性または展開後のタンパク質は異なる屈折率を有し、これが白化効果の原因かもしれない。正常細胞内でのpHの低下は、タンパク質を展開させるには十分でないかもしれず、おそらくこれが、正常組織においてIBSLの変動が検出されない理由である。従って後方散乱光は、子宮頸部上皮に酢酸が侵入することにより影響を受けるpH動態に密接に関係している。にもかかわらず、この効果に貢献するタンパク質は十分わかっていない。さらにこれらのタンパク質の各々は異なるpH値で変性し得る。
【0128】
他の解釈によると、変態ゾーンの上皮に対する酢酸の作用は、その濃度に関係している(MacLean AB. (2004) Gynecologic Oncology, 95:691-694)。酢酸が異形成層の細胞環境に入り、様々な核タンパク質の構造を変化させ、そのため細胞が不透明に見えるようになる。そのため後方散乱光の動態は酢酸濃度の動態に従う。正常組織では、核タンパク質の量が非常に少ないために白化は起こらない。
【0129】
腫瘍形成の発達中に変化する上皮の機能上および構成上の特徴を上記のように分析することに基づくと、動的光学データを診断上重要な上皮の特性に関連づけることが可能である。特に測定された動的特性は、バイオマーカー適用後に時間的に連続して起こる様々な上皮構造および移動現象を分離し、これらをインビボ測定可能な光学パラメーターと関連づけるために用いることができる。これにより逆転の問題に対する解決法が提供される。換言すると、インビボ動的特性およびパラメーターを測定することにより、様々な上皮の特徴に関する情報を得ることが可能である。
【0130】
本方法の一実施形態では、細胞外酸性度、さらには受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数に関する情報を得るために「Slope A」が用いられる。本方法の別の実施形態では、上皮のNCRを決定するために「Max」が用いられる。なぜなら後方散乱光の強度は信号源(細胞核)の密度に比例するからである。本方法の別の実施形態では、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、または腫瘍形成の発展に関連する貧弱なリンパ排出系統に関する情報を得るために「Slope B」が用いられる。別の実施形態では、上記の機能上の特徴および構造上の特徴の両方に関する情報を得るために「integral」パラメーターが用いられる。
【0131】
生物物理学モデルを臨床的に有効にすることは、NCRを上記の「Max」パラメーターおよび「Integral」パラメーターと関連づけることによりなされてきた。しかし、機能上の特徴を臨床的に有効にすることは臨床的に考えて実務的でない。なぜならインビボで特徴を測定することができる基準方法がないからである。対照的に、本明細書で開示した方法は、組織の機能上の特徴をインビボでモデリングし予測することが可能である。これはバイオマーカーと相互作用する組織からインビボで得られた動的光学特性を記録し、分析し、表示する能力が、この方法には元々備わっているからである。
【0132】
図12は、本発明の別の例示的実施形態を示す。演算装置1070は、少なくとも画像処理エンジン1085に示すステップを規定するコンピュータ読み取り可能な媒体上に具現化された命令を、これらの組織画像データを得るために用いたハードウェア設定と協力して実行する。特に組織1020は光源1010により常に照射されている。アプリケータ1030を用いて適切なバイオマーカーを適用した後、トリガ信号が供給されて、画像取得装置1040(例えばビデオCCDまたは他の適切な画像取得装置)を用いた画像取得が開始される。組織1020と画像取得装置1040との間には光学フィルタ1050とレンズ1060とがあり、例えば1以上のズーム可能なレンズが介在できる。光学フィルタ1050は好ましいスペクトル帯域にチューニングすることができる。好ましいスペクトル帯域とは、適切な物質の投与後、様々なグレードの光反射率または蛍光特性変化に曝される領域間で最大のコントラストが得られるスペクトル帯域である。
【0133】
物質の投与前に、参考として組織画像を得る。物質の投与後、一連の画像1080が時間的に連続して所定のスペクトル帯域で且つ所定の時間サイクルで得られ、演算装置1070内部または外部のメモリまたは記憶装置に保存される。これは画像処理エンジン1085によってさらなる処理を行うためである。取得した画像の一部または全部を適切に整合させた後、同一の組織点に対応する特定の画像位置に対するDOC1090を生成する。工程1100では、現象の動的特性を表す複数の動的光学パラメーターをDOCから得る(1100)。
【0134】
DOPを抽出した後、工程1110で、その値を所定のカットオフ値と比較する。これにより工程1120で、組織の様々な病理状態を分類する。1つの結果として、その後疑似カラーマップ1130を表示装置1140に表示することができる。ここでは異なる色または異なるグレー濃淡が異なる病理を表す。あるいは組織の様々な病理状態の分類を保存して別の時に表示するようにしてもよいし、例えばネットワーク環境でデータを移送するに適したパケットまたはその他のユニットで別の演算装置に送ってもよい。
【0135】
あるいは工程1150で、所定の数式を用いてDOP値を変換し、組織の機能上の特徴および構造上の特徴を表してもよい。この場合、疑似カラーマップ1130は表示装置1140上に表示することができ、異なる色または異なるグレー濃淡が異なる機能上の特徴および構造上の特徴を表す。
【0136】
本明細書で引用したすべての参考文献、図面、特許および公開特許公報の内容を参照することにより本明細書に援用する。
【0137】
当業者であれば、通常の実験を超えたものを用いることなく、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識または確認することができる。このような均等物は請求の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定する定量的方法であって、
バイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性に基づいて、所定の期間にわたり動的光学曲線に関するデータを生成する工程と、
前記データに基づき、少なくとも1つの動的光学パラメーターの値を決定する工程と、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの前記決定した値と、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの少なくとも1つの基準値であって前記組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている少なくとも1つの基準値とを比較する工程と、
前記比較に基づき、前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態を決定し、前記組織の病理状態が腫瘍形成およびHPV感染から選択されること、および/または前記組織の前記構造特性または機能特性が、核対細胞質比、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、貧弱なリンパ排出系統、細胞外pH、細胞外と細胞内とのpHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、および細胞分化からなる群より選択されることを特徴とする工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが、「Integral」、「Max」、「Time to Max」「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織が子宮頸部組織であり、および/または上皮細胞を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記組織が子宮頸部上皮組織である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーが酢酸溶液である、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液が3〜5%酢酸溶液である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組織の前記構造特性または機能特性が、前記組織の細胞の核対細胞質比である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Max」であり、前記組織の前記機能特性または構造特性が、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、および核対細胞質比からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」または[SlopeB」であり、前記組織の前記機能特性または構造特性が、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、および貧弱なリンパ排出系統からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞外pH、細胞外および細胞内pHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、ならびに細胞分化からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成を示し、前記基準値が約480と約650との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約420と約490との間のカットオフ値である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成の存在を示し、前記基準値が約70と約90との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約65と約90との間のカットオフ値である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがTmaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約80秒と約100秒との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがArea to Maxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約120と約170との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在、または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Aであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約1.1(rad)と約1.3(rad)との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在、または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Bであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約−0.012と約−0.090との間のカットオフ値であり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在、または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Integral」であり、前記組織の機能特性または構造特性を決定するために用いられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Integral」または「Max」であり、前記組織の前記構造特性が前記組織の細胞の核対細胞質比である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記核対細胞質比(NCR)が、以下の式:
NCR=1/1349×Integral−0.278、および
NCR=1/181×Max−0.309
を用いて「integral」パラメーターおよび「Max」パラメーターと関連づけられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基準値が、
組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第1の動的光学曲線に関する第1のデータを生成し、前記組織またはその一部分が、テスト中のものと同じタイプであって特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られ、バイオマーカーに曝されている、工程と、
更なる組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第2の動的光学曲線に関する第2のデータを生成し、前記更なる組織またはその一部分が、テスト中のものと同じタイプであって特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られ、バイオマーカーに曝されている、工程と、
前記第1のデータに基づいて、前記第1の動的光学曲線から少なくとも1つの動的光学パラメーターの第1の値を決定する工程と、
前記第2のデータに基づいて、前記第2の動的光学曲線から少なくとも1つの動的光学パラメーターの第2の値を決定する工程と、
前記第1の値と前記第2の値とを比較することにより、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターを、組織の特定の構造特性または機能特性および/または病理状態と関連づける工程と、
により決定される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の動的光学曲線を計算する工程と前記第1の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第1の値の群が得られ、
前記第2の動的光学曲線を計算する工程と前記第2の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第2の値の群が得られ、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターと前記特定の組織特性とを関連づける工程が、前記第1の値の群と前記第2の値の群とを比較して前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの基準値を決定する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
バイオマーカー適用前に前記組織の基準画像が取得される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組織の単一の点に対応するすべての画素において動的光学曲線が計算される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記動的光学曲線に関するデータの生成が、前記組織またはその一部分の捕捉画像を整合させる工程を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記決定された動的光学曲線/少なくとも1つの動的光学パラメーター/前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態が、前記組織またはその一部分の疑似カラーマップ上の特定の色により表される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記動的光学曲線が、バイオマーカー適用後の組織部位から得られた光学特性の一時的変動を表す、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定するコンピュータプログラム命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラム命令が演算装置によって実行されると、前記演算装置に
所定期間にわたりバイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性から動的光学曲線を計算する工程と、
前記動的光学曲線から少なくとも1つの動的光学パラメーターを決定する工程と、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの値と、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの少なくとも1つの基準値であって前記組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている少なくとも1つの基準値とを比較する工程と、
前記比較に基づき、前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態に関する出力を提供する工程を実行させ、
前記組織の病理状態が腫瘍形成およびHPV感染から選択されること、および/または前記組織の前記構造特性または機能特性が、核対細胞質比、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、貧弱なリンパ排出系統、細胞外pH、細胞外と細胞内とのpHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、および細胞分化からなる群より選択されることを特徴とする、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項30】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが、「Integral」、「Max」、「Time to Max」「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される、請求項29に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項31】
前記組織が子宮頸部組織であり、および/または上皮細胞を含む、請求項29または30に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項32】
前記組織が子宮頸部上皮組織である、請求項31に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項33】
前記バイオマーカーが酢酸溶液であり、好ましくは3〜5%酢酸溶液である、請求項29から32のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項34】
前記組織の前記構造特性または機能特性が、前記組織の細胞の核対細胞質比である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項35】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Max」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、および核対細胞質比からなる群より選択される、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項36】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞外pH、細胞外と細胞内とのpHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、および細胞分化からなる群より選択される、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項37】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」または[SlopeB」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、および貧弱なリンパ排出系統からなる群より選択される、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項38】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成を示し、前記基準値が約480と約650との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項39】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Integral」であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約480と約650との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項40】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約420と約490との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項41】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成の存在を示し、前記基準値が約70と約90との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項42】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約70と約90との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項43】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約65と約90との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項44】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがTmaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約80秒と約100秒との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項45】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがTmaxであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約80秒と約100秒との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項46】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがArea to Maxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約120と約170との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項47】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがArea to Maxであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約120と約170との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項48】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Aであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約1.1(rad)と約1.3(rad)との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項49】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Aであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約1.1(rad)と約1.3(rad)との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項50】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Bであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約−0.012と約−0.090との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項51】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Bであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約−0.012と約−0.090との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項52】
前記動的光学パラメーター「integral」が、前記組織の機能特性および構造特性を決定するために用いられる、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項53】
前記動的光学パラメーターが「Integral」または「Max」であり、前記組織の前記構造特性が核対細胞質比である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項54】
前記核対細胞質比(NCR)が、以下の式:
NCR=1/1349×Integral−0.278、および
NCR=1/181×Max−0.309
を用いて「Integral」パラメーターおよび「Max」パラメーターと関連づけられる、請求項53に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項55】
腫瘍形成の診断および/または特徴づけに有用な、請求項29から53のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項56】
前記動的光学パラメーターの前記基準値が、
バイオマーカーに曝された第1の組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第1の動的光学曲線を計算し、前記第1の組織が、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られている、工程と、
バイオマーカーに曝された第2の組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第2の動的光学曲線を計算し、前記第2の組織が、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られている、工程と、
前記第1の動的光学曲線に基づいて、少なくとも1つの動的光学パラメーターの第1の値を決定し、前記第2の動的光学曲線に基づいて、少なくとも1つの動的光学パラメーターの第2の値を決定する工程と、
前記第1の値と前記第2の値とを比較することにより、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターを、組織の特定の構造特性または機能特性および/または病理状態と関連づける工程とを実行することにより決定される、請求項29から55のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項57】
前記第1の動的光学曲線を計算する工程と前記第1の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第1の値の群が得られ、
前記第2の動的光学曲線を計算する工程と前記第2の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第2の値の群が得られ、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターと、前記特定の構造特性または機能特性および/または病理状態とを関連づける工程が、前記第1の値の群と前記第2の値の群とを比較して前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの基準値を決定する工程を含む、請求項56に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項58】
前記動的光学曲線が、組織部位から得られた拡散反射率の一時的変動を表す、請求項29から57のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項59】
前記複数の動的光学パラメーターの組合せを介し、人工神経回路、統計的パターン認識アルゴリズム、ベイジアン分類、または分類ツリーを用いて、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの複数が、組織またはその一部分の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定するために使用される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法または請求項29から58のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項60】
前記決定された動的光学曲線および/または少なくとも1つの動的光学パラメーター/前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態が、前記組織またはその一部分の疑似カラーマップ上の特定の色によって表される、請求項29から59のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項1】
組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定する定量的方法であって、
バイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性に基づいて、所定の期間にわたり動的光学曲線に関するデータを生成する工程と、
前記データに基づき、少なくとも1つの動的光学パラメーターの値を決定する工程と、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの前記決定した値と、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの少なくとも1つの基準値であって前記組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている少なくとも1つの基準値とを比較する工程と、
前記比較に基づき、前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態を決定し、前記組織の病理状態が腫瘍形成およびHPV感染から選択されること、および/または前記組織の前記構造特性または機能特性が、核対細胞質比、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、貧弱なリンパ排出系統、細胞外pH、細胞外と細胞内とのpHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、および細胞分化からなる群より選択されることを特徴とする工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが、「Integral」、「Max」、「Time to Max」「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織が子宮頸部組織であり、および/または上皮細胞を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記組織が子宮頸部上皮組織である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーが酢酸溶液である、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液が3〜5%酢酸溶液である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組織の前記構造特性または機能特性が、前記組織の細胞の核対細胞質比である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Max」であり、前記組織の前記機能特性または構造特性が、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、および核対細胞質比からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」または[SlopeB」であり、前記組織の前記機能特性または構造特性が、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、および貧弱なリンパ排出系統からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞外pH、細胞外および細胞内pHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、ならびに細胞分化からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成を示し、前記基準値が約480と約650との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約420と約490との間のカットオフ値である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成の存在を示し、前記基準値が約70と約90との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約65と約90との間のカットオフ値である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがTmaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約80秒と約100秒との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがArea to Maxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約120と約170との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在、または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Aであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約1.1(rad)と約1.3(rad)との間のカットオフ値であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在、または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Bであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約−0.012と約−0.090との間のカットオフ値であり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在、または健常組織を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Integral」であり、前記組織の機能特性または構造特性を決定するために用いられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Integral」または「Max」であり、前記組織の前記構造特性が前記組織の細胞の核対細胞質比である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記核対細胞質比(NCR)が、以下の式:
NCR=1/1349×Integral−0.278、および
NCR=1/181×Max−0.309
を用いて「integral」パラメーターおよび「Max」パラメーターと関連づけられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基準値が、
組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第1の動的光学曲線に関する第1のデータを生成し、前記組織またはその一部分が、テスト中のものと同じタイプであって特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られ、バイオマーカーに曝されている、工程と、
更なる組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第2の動的光学曲線に関する第2のデータを生成し、前記更なる組織またはその一部分が、テスト中のものと同じタイプであって特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られ、バイオマーカーに曝されている、工程と、
前記第1のデータに基づいて、前記第1の動的光学曲線から少なくとも1つの動的光学パラメーターの第1の値を決定する工程と、
前記第2のデータに基づいて、前記第2の動的光学曲線から少なくとも1つの動的光学パラメーターの第2の値を決定する工程と、
前記第1の値と前記第2の値とを比較することにより、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターを、組織の特定の構造特性または機能特性および/または病理状態と関連づける工程と、
により決定される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の動的光学曲線を計算する工程と前記第1の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第1の値の群が得られ、
前記第2の動的光学曲線を計算する工程と前記第2の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第2の値の群が得られ、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターと前記特定の組織特性とを関連づける工程が、前記第1の値の群と前記第2の値の群とを比較して前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの基準値を決定する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
バイオマーカー適用前に前記組織の基準画像が取得される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組織の単一の点に対応するすべての画素において動的光学曲線が計算される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記動的光学曲線に関するデータの生成が、前記組織またはその一部分の捕捉画像を整合させる工程を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記決定された動的光学曲線/少なくとも1つの動的光学パラメーター/前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態が、前記組織またはその一部分の疑似カラーマップ上の特定の色により表される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記動的光学曲線が、バイオマーカー適用後の組織部位から得られた光学特性の一時的変動を表す、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
組織の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定するコンピュータプログラム命令を保持するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラム命令が演算装置によって実行されると、前記演算装置に
所定期間にわたりバイオマーカーに曝された組織またはその一部分の光学特性から動的光学曲線を計算する工程と、
前記動的光学曲線から少なくとも1つの動的光学パラメーターを決定する工程と、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの値と、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの少なくとも1つの基準値であって前記組織の構造特性または機能特性および/または病理状態に関連することが知られている少なくとも1つの基準値とを比較する工程と、
前記比較に基づき、前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態に関する出力を提供する工程を実行させ、
前記組織の病理状態が腫瘍形成およびHPV感染から選択されること、および/または前記組織の前記構造特性または機能特性が、核対細胞質比、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、貧弱なリンパ排出系統、細胞外pH、細胞外と細胞内とのpHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、および細胞分化からなる群より選択されることを特徴とする、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項30】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが、「Integral」、「Max」、「Time to Max」「Area to Max」「Slope A」および「Slope B」からなる群より選択される、請求項29に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項31】
前記組織が子宮頸部組織であり、および/または上皮細胞を含む、請求項29または30に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項32】
前記組織が子宮頸部上皮組織である、請求項31に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項33】
前記バイオマーカーが酢酸溶液であり、好ましくは3〜5%酢酸溶液である、請求項29から32のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項34】
前記組織の前記構造特性または機能特性が、前記組織の細胞の核対細胞質比である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項35】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Max」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞外酸性度、受動的拡散定数、層状上皮の細胞層数、および核対細胞質比からなる群より選択される、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項36】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞外pH、細胞外と細胞内とのpHグラジエント、細胞膜内外の浸透圧の差異、および細胞分化からなる群より選択される、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項37】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Slope A」または[SlopeB」であり、前記組織の前記機能特性および構造特性が、細胞内pHの調節における細胞機能不全、組織崩壊した脈管の存在、および貧弱なリンパ排出系統からなる群より選択される、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項38】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成を示し、前記基準値が約480と約650との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項39】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターが「Integral」であり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約480と約650との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項40】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがintegralであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約420と約490との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項41】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が重度の腫瘍形成の存在を示し、前記基準値が約70と約90との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項42】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約70と約90との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項43】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがMaxであり、前記基準値未満の前記動的光学パラメーターの決定値がHPV感染の存在を示し、前記基準値が約65と約90との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項44】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがTmaxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約80秒と約100秒との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項45】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがTmaxであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約80秒と約100秒との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項46】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがArea to Maxであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約120と約170との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項47】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがArea to Maxであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約120と約170との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項48】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Aであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約1.1(rad)と約1.3(rad)との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項49】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Aであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約1.1(rad)と約1.3(rad)との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項50】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Bであり、前記基準値より小さい前記動的光学パラメーターの決定値が、前記組織が重度の腫瘍形成を含むことを示し、前記基準値が約−0.012と約−0.090との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項51】
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターがSlope Bであり、前記基準値より大きい前記動的光学パラメーターの決定値が軽度の腫瘍形成、腫瘍形成の不存在または健常組織を示し、前記基準値が約−0.012と約−0.090との間のカットオフ値である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項52】
前記動的光学パラメーター「integral」が、前記組織の機能特性および構造特性を決定するために用いられる、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項53】
前記動的光学パラメーターが「Integral」または「Max」であり、前記組織の前記構造特性が核対細胞質比である、請求項29から33のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項54】
前記核対細胞質比(NCR)が、以下の式:
NCR=1/1349×Integral−0.278、および
NCR=1/181×Max−0.309
を用いて「Integral」パラメーターおよび「Max」パラメーターと関連づけられる、請求項53に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項55】
腫瘍形成の診断および/または特徴づけに有用な、請求項29から53のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項56】
前記動的光学パラメーターの前記基準値が、
バイオマーカーに曝された第1の組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第1の動的光学曲線を計算し、前記第1の組織が、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られている、工程と、
バイオマーカーに曝された第2の組織またはその一部分の光学特性に基づいて所定の期間にわたり第2の動的光学曲線を計算し、前記第2の組織が、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られている、工程と、
前記第1の動的光学曲線に基づいて、少なくとも1つの動的光学パラメーターの第1の値を決定し、前記第2の動的光学曲線に基づいて、少なくとも1つの動的光学パラメーターの第2の値を決定する工程と、
前記第1の値と前記第2の値とを比較することにより、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターを、組織の特定の構造特性または機能特性および/または病理状態と関連づける工程とを実行することにより決定される、請求項29から55のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項57】
前記第1の動的光学曲線を計算する工程と前記第1の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有することが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第1の値の群が得られ、
前記第2の動的光学曲線を計算する工程と前記第2の値を決定する工程とが、特定の構造特性または機能特性および/または病理状態を有しないことが知られている別の組織試料を用いて複数回反復され、反復する毎に第2の値の群が得られ、
前記少なくとも1つの動的光学パラメーターと、前記特定の構造特性または機能特性および/または病理状態とを関連づける工程が、前記第1の値の群と前記第2の値の群とを比較して前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの基準値を決定する工程を含む、請求項56に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項58】
前記動的光学曲線が、組織部位から得られた拡散反射率の一時的変動を表す、請求項29から57のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項59】
前記複数の動的光学パラメーターの組合せを介し、人工神経回路、統計的パターン認識アルゴリズム、ベイジアン分類、または分類ツリーを用いて、前記少なくとも1つの動的光学パラメーターの複数が、組織またはその一部分の構造特性および機能特性および/または病理状態を決定するために使用される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法または請求項29から58のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項60】
前記決定された動的光学曲線および/または少なくとも1つの動的光学パラメーター/前記組織またはその一部分の構造特性または機能特性および/または病理状態が、前記組織またはその一部分の疑似カラーマップ上の特定の色によって表される、請求項29から59のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−539366(P2009−539366A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513758(P2009−513758)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002067
【国際公開番号】WO2008/001037
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(503050685)フォース フォトニクス リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Forth Photonics Limited
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002067
【国際公開番号】WO2008/001037
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(503050685)フォース フォトニクス リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Forth Photonics Limited
【Fターム(参考)】
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