説明

組織修復用固体鋳型

本発明は、軟骨修復用サンゴベーススカフォールドと、かかるスカフォールドの軟骨修復部位内への挿入及び軟骨修復部位内での利用のための器具とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関節軟骨表面の欠損及び変性は、痛み及びこわばりを引き起こす。関節を保護する軟骨の損傷は、外傷、スポーツ若しくは反復運動の結果としての身体的傷害(例えば、骨軟骨骨折、十字靭帯損傷による二次損傷)又は疾患(例えば、変形性関節症、リウマチ性関節症、無菌壊死、離断性骨軟骨症、虚血壊死)により生じうる。
【0002】
変形性関節症(Osteoarthritis、OA)は、関節、最も顕著には股関節及び膝関節の全般的な摩耗及び断裂により生じる。変形性関節症は高齢者によく見られるが、実際には40歳までにほとんどの人が、荷重関節に何らかの変形性関節症変化を有する。変形性関節症の蔓延に寄与するまた別の近年の傾向として、肥満の増加がある。米国疾病管理予防センター(CDC)は、アメリカ人成人の30%(すなわち6000万人)が肥満であると推定している。肥満成人は、正常な体重の成人よりも膝OAの発症確率が4倍高い。リウマチ性関節症は、軟骨の損傷をもたらす炎症性疾患である。それは少なくとも部分的には自己免疫疾患であり、罹患者が疾患の遺伝的素因を有すると考えられている。
【0003】
関節損傷の整形外科的予防及び修復は、患者を治療するのにかかる費用及び時間の面で医療従事者にとってかなりの負担である。これは一つには、軟骨が自己修復能力を有しないためである。軟骨欠損の修復のための硝子軟骨の再生の試みは、依然として成功を見ていない。
【0004】
関節における深刻な変性変化を未然に防ぐ試みにおいて、欠損修復及び関節損傷予防のために、整形外科手術を利用できる。外科技術の使用は多くの場合、損傷した組織又は疾患に罹患した組織を置き換えるための、健全な組織の切除及び提供を必要とする。自家移植片、同種移植片、又は異種移植片に由来する提供組織を利用する技術が十分なものであるとは、全く言えない。なぜなら、自家移植片は被験者にさらなる外傷を加え、同種移植片及び異種移植片は、被移植被験者に対する免疫学的反応性により限定され、感染体の移入の可能性があるからである。軟骨再生のためにヒト組織又は動物組織以外の材料を利用する外科的試みは、成功を見ていない。
【発明の概要】
【0005】
実施形態の1つにおいて本発明は、サンゴの露出表面の第2の部分の少なくとも1つに対し起立する、前記露出表面の第1の部分を少なくとも1つ有する前記サンゴを含む軟骨修復用スカフォールドを提供し、ここで前記第1の部分は、サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置及び固定する領域を少なくとも1つ含む。
【0006】
実施形態の1つにおいて本発明は、軟骨修復の誘導又は亢進方法を提供し、前記方法は、本発明のスカフォールドを被験者の軟骨修復部位内へと移植することを含み、ここで前記スカフォールドの領域は骨を貫通し、結果としてこの領域が軟骨修復部位に近接する骨髄内へと挿入される。
【0007】
実施形態の1つにおいて本発明は、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位で最適な深さへと導く、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位で最適な角度へと導く、或いはこれらの組合せである、少なくとも1つのツール、任意で、移植後に軟骨修復部位内で本発明のスカフォールドを処理する少なくとも1つのツール、任意で、本発明のスカフォールドによる骨の貫通及び軟骨修復部位に近接する骨髄内への前記スカフォールドの挿入をもたらす少なくとも1つのツール、及び、任意で、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位で放出し、このことによって、前記スカフォールドの軟骨修復部位内への配置後に、前記スカフォールドから分離されてもよい少なくとも1つのツールを含む、軟骨修復を補助する器具を提供する。
【0008】
実施形態の1つにおいて本発明は、本発明のスカフォールド、本発明のツール、及び組織修復における前記スカフォールド及び前記ツールの利用説明書を含む軟骨修復用キットを提供する。
【0009】
実施形態の1つにおいて本発明は、組織修復用スカフォールドを提供し、ここで前記スカフォールドはサンゴ粒子を包むポリマー鋳型(polymer form)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、本発明のスカフォールドの実施形態の1つを考慮して塗りつぶされた、長軸方向を示す。このスカフォールドは、第2領域1−40に対して起立する第1領域1−20を含み、この第1領域はいくつかの実施形態において空隙1−30に近接し、この空隙は第2領域に隣接する。図1Bが示すのは、同様に長軸方向の図である。図1Cが示すのは、図1Aのスカフォールドの底面方向からの図であり、中空1−20がはっきりとわかる。図1Dが示すのは、図1Cのスカフォールドの末端部の断面図である。図1Eは、調製されたサンゴスカフォールドの顕微鏡写真であり、図1A〜図1Dに示される構造と類似した構造を有する。
【図2】図2Aは、本発明のスカフォールドの実施形態の1つを考慮して塗りつぶされた、長軸方向を示す。このスカフォールドは、第2領域2−40に対して起立する第1領域2−20を含み、この第1領域はいくつかの実施形態において空隙2−30に近接し、この空隙は第2領域に隣接する。図2Bが示すのは、図2Aを斜め方向から見た図である。図2Cが示すのは、同様に長軸方向の断面図である。図2Dが示すのは、図2Cのスカフォールドの末端部の断面図である。
【図3】図3Aが示すのは、本発明のスカフォールドの実施形態の1つの断面図である。図3Bは、本発明のスカフォールドの実施形態の1つを考慮して塗りつぶされた、長軸斜め方向を示し、図3Cが示すのは、スカフォールドのZ軸に沿った断面である。このスカフォールドは、第2領域3−40に対して起立する第1領域3−20を含む。
【図4】図4A〜図4Fが示すのは、スカフォールドの形状の3次元画像及びそれぞれの長軸方向断面である。
【図5】図5A〜図5Bは、ポリマーを内部に組み込んでいる実施されたスカフォールドの調製を写した写真である。図5Aが写しているのは、ポリマー/サンゴスカフォールドの調製に用いられる装置、この実施形態においては漏斗の内部へのスカフォールドの装着であり、図5Bが写しているのは、スカフォールドの所望の領域内のみへの効果的な選択的組込みである。図5C〜図5Eが写しているのは、本明細書において以下でさらに記述するように、適用のタイミングの結果として異なる量のポリマーを組み込んだ様々なスカフォールドの形態である。
【図6】図6は、本明細書に記載の通りに調製された、実施されたまた別の本発明のスカフォールドの写真であり、スカフォールドの特定の領域内へのポリマーの組込みを示している。
【図7】図7は、実施された様々な本発明のスカフォールドの写真であり、これらスカフォールドをオーブン乾燥又は凍結乾燥により乾燥させた。乾燥前にこれらスカフォールドに適用したヒアルロン酸溶液の様々なパーセンテージが示されている。
【図8】図8A及び図8Bは、スカフォールドを指示された濃度でヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)を含有する溶液に接触させた後の、内部にHA8−10が組み込まれたスカフォールドの写真である。
【図9】図9が示すのは、軟骨欠損部位内へのスカフォールドの移植である。
【図10】図10が示すのは、本発明のツールの実施形態の1つである。図10Aが示すのは、交換可能なアダプタ10−4を有するハーベスタ10−1である。プランジャー又はピストン10−5も示されている。このツールはさらに、器具が挿入される深さを示すのに役立つインジケータ10−3を含んでいてもよい。図10Bが示すのは、ツールの長軸に沿った断面図であり、この実施形態において、ツールの長さに沿って伸びる中空の存在を示している。図10Cが示すのは、図10Aのツールを分離した図である。
【図11】図11が示すのは、本発明のツールのまた別の実施形態の概略図であり、ここでこの図が示すのは、例えば、図10Aに示されるハーベスタに挿入されてもよい挿入具である。図に示される挿入体11−2は、溝付きの中空11−3をさらに含み、本明細書に記載の通り、スカフォールドの中空内への挿入を可能にする。挿入体末端部11−4は滑らかである。移植物が挿入具内に充填されている際、プランジャー又はピストン11−1が移植物を挿入具の外部へ、修復部位内へと、例えば図10のハーベスタによりあけられた穴に押し出す。図11Cが示すのは、図11Bに示されるものの断面であり、挿入具内でのスカフォールドの配置を示す。
【図12】図12が示すのは、本発明の調節可能な送達システムの実施形態の1つの概略図である。図12Aが示すのは、ツールの本体12−2に挿入されたプランジャー又はピストン12−1を含み、例えば、交換可能なロッキングヘッド(locking head)でありうる12−4を示す図12B及び図12Cに示されるように、調節可能又は異なる角度の部品と交換可能なジョイント部12−3をさらに含む、角度を付けたツールである。図12Dが提供するのは、拡大された詳細図であり、ここで調節可能又は交換可能なジョイント部12−5は溝に近接し、この溝は移植中に移植物の配置の同定を容易にしうるのであり、このジョイント部12−6は、移植中の組織への外傷を最少化する丸みを帯びた末端部12−7を含んでいてもよい。
【図13】図13は、実施されたまた別の本発明のツールを示す。図13Aが示すのは、半弾性であるツールの軸13−1〜13−2に沿った断面図である。図13Bに示されるように、弾性バネ又は他の強力で弾性の材料13−3が、ピストンからの力をビットドリル(bit drill)又は挿入された移植物13−4へと伝える。
【0011】
[本発明の詳細な記述]
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はとりわけ、被験者の軟骨組織修復のための、スカフォールド、ツール及びこれらの使用方法を提供する。本発明はさらに、被験者の軟骨組織修復用キットを提供する。
【0013】
方解石又は霰石の結晶形でCaCOからなるサンゴは、間葉性幹細胞の軟骨組織への迅速な細胞侵入、接着、増殖及び分化を補助するという利点を有する。
【0014】
3次元(three-dimensional、3−D)サンゴスカフォールドは、骨髄から間葉系幹細胞を誘引し、軟骨修復部位への血管形成を促進する。かかるスカフォールドは、部分的軟骨欠損又は全層軟骨欠損の修復のための被験者の軟骨再生に用いられうる。
【0015】
本発明は、予想外なことにサンゴスカフォールドのみの適用が軟骨修復に有用であることを提供し、さらに、そのサンゴスカフォールドは、軟骨修復方法のために軟骨修復部位内に厳密に且つ最適な形で調製され挿入されうる。
【0016】
「サンゴ」及び「霰石」及び「方解石」なる用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0017】
実施形態の1つにおいて、本発明は、サンゴの露出表面の第2の部分の少なくとも1つに対して起立する前記露出表面の第1の部分を少なくとも1つ有するサンゴを含む、軟骨修復用スカフォールドを提供し、ここで前記第1の部分は、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置及び固定する領域を少なくとも1つ含む。
【0018】
本発明の実施形態の1つにおいて、第1の部分は、サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置及び固定する領域を少なくとも1つ含み、本発明のスカフォールドと軟骨修復部位との間の、軟骨修復の利益をもたらす配置を提供する。
【0019】
実施形態の1つにおいて、「軟骨修復部位内にサンゴを厳密に配置及び固定する」なる用語は、力学的応力が移植物を最適な形で方向付けるのに十分なよう、緊密に適合させることにより、最適な深さ及び角度で配置することを指し、或いはいくつかの実施形態においてこうした配置は、修復部位内又は修復部位に近接する部位内の組織の領域又は壁への厳密な挿入が達成されるよう、スカフォールドの厳密な拡張又は突出を介する。いくつかの実施形態において、欠損部位を最適な形で満たすため、或いはいくつかの実施形態において、修復細胞及び/又は修復材料に富んだ領域から、その領域より最も遠位にある、内部で軟骨修復が必要な部位へと至る面又は線を欠損部位に沿って創出するため、複数のスカフォールドが修復部位内又は修復部位に近接する部位内に挿入される。
【0020】
本発明のスカフォールドの物理的及び/又は化学的性質及びその成分が、軟骨修復の誘導又は亢進のための本発明の使用方法及びそのキットに影響を及ぼしうることは、当業者にとって明らかであろう。
【0021】
実施形態の1つにおいて、軟骨修復の誘導又は亢進のための本発明の方法は、スカフォールドを軟骨修復部位内に厳密に配置及び固定することを提供するために、本発明のスカフォールドの3−D形状を利用する。
【0022】
実施形態の1つにおいて、「配置及び固定する」なる文言は、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位内の特定の位置に安定させる、領域の能力を指す。
【0023】
実施形態の1つにおいて、領域はある範囲を細区画化したものを含み、全体又はその一部は、その細区画へと分割可能である。実施形態の1つにおいて、複数の領域は互いに特徴を共有していてもよい。
【0024】
実施形態の1つにおいて、軟骨修復部位は、軟骨欠損部位又は軟骨欠損の可能性のある部位で、或いはそれら部位に近接して、3次元(3−D)空間を含むとみなされてよい。実施形態の1つにおいて、この3−D空間は、壁又は底、又はそれらの組合せを少なくとも1つ含み、本明細書において、かかる部位内での配置は前記壁又は底と相対的に記載されてもよく、或いはいくつかの実施形態において、配置は、前記壁又は底に近接する組織部位内への挿入と相対的であってもよい。いくつかの実施形態において、配置には、骨髄へのスカフォールドの挿入が生じるように、軟骨組織の壁及び/又は底を貫通した、或いは、軟骨組織における欠損部位若しくは損傷部位又は欠損若しくは損傷の可能性のある部位の壁及び/又は底を貫通した、スカフォールド又はその領域の挿入が含まれる。いくつかの実施形態において、配置は、軟骨修復部位に最も近接する血管及び骨髄への到達を最適化する。いくつかの実施形態において、かかる配置は、修復部位に近接していないが、修復に寄与する間葉系幹細胞に富んだ部位である骨髄内の領域に、スカフォールドを厳密に挿入する。
【0025】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドの領域の少なくとも1つが、軟骨修復部位の組織又は軟骨修復部位に近接する組織と強制的に接触することにより、スカフォールドを軟骨修復部位内に配置して固定し、ここでこのスカフォールドは、組織に接触する領域の力により特定の位置に保たれる。スカフォールドと組織との間の接触の力により、不可逆的損傷又は不要な出血が引き起こされることはない。例えば、もし軟骨修復部位が単一の連続的な壁及び底を有する円柱状の窪みのような形であるなら、図に示される代表的なスカフォールドの領域は、実施形態の1つにおいて、3−Dスカフォールドを適所に保つよう、この部位の壁の組織に強制的に接触していてもよい。この例の実施形態の1つにおいて、スカフォールドの底部領域は、軟骨修復部位の底と隣接している。また別の実施形態において、軟骨修復部位の壁に接触しているスカフォールドの領域により行使される力は、スカフォールドが底に接触することのないようにそれをこの部位内に保ち、維持する。かかる場合にスカフォールドの領域は、この部位の壁を貫通して骨髄腔(bone marrow void)に達していてもよい。さらにまた別の実施形態において、上で述べたスカフォールドの領域により行使される力は、もしスカフォールドのさらなる起立領域が存在するなら、このさらなる領域が今度は骨を貫通し、軟骨修復部位に近接する骨髄腔内に安定的に挿入されるように、スカフォールドを配置する。
【0026】
実施形態の1つにおいて、「近接する」なる用語は、何かが特定の場所に接近して位置することを指す。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、軟骨修復部位に位置する組織又は軟骨修復部位に近接して位置する組織に接触しているスカフォールドの起立領域により、軟骨修復部位内の位置に強制的に保たれる。
【0027】
いくつかの実施形態において、骨を貫通して骨髄内に安定的に挿入されるスカフォールドの領域はまた、スカフォールドを軟骨修復部位内に配置し固定するスカフォールドの領域でもあり、或いはいくつかの実施形態において、骨を貫通して骨髄内に安定的に挿入されるスカフォールドの領域は、スカフォールドを軟骨修復部位内に配置し固定するスカフォールドの領域でない。図1〜図3が示すのは、露出表面の起立領域を含むスカフォールドの代表的実施形態である。もし軟骨修復部位の形が再び、単一の連続的な壁及び底を有する円柱状の窪みのようであるなら、実施形態の1つにおいて、第2の部分の領域は、この部位の底又は壁を貫通して挿入され、そのことにより、骨を貫通して軟骨修復部位に近接する骨髄内に安定的に挿入される。実施形態の1つにおいて、この領域は、スカフォールドの本体の底部が軟骨修復部位で組織に接触するよう、底又は壁を貫通して挿入される。実施形態の1つにおいて、この領域は、スカフォールドのどの他の部分もこの部位で組織に接触しないように挿入される。また別の実施形態において、この領域は、スカフォールドの側壁部が軟骨修復部位で組織と接触するように挿入される。
【0028】
当業者は、軟骨修復部位の形及び本発明の3−Dスカフォールドの形が、安定的にスカフォールドを軟骨修復部位内に配置するための多くの異なる組合せを提供することを認識するであろう。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、本発明の軟骨修復方法における使用の前に形成される。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、本発明の軟骨修復方法における使用と同時進行で形成される。スカフォールドを本発明の方法における使用と同時進行で形成することにより、スカフォールドの形状が、修復部位内でのスカフォールドの厳密な配置のために精確に選択されうる。
【0029】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、軟骨修復部位に密接して位置する組織又は軟骨修復部位の近くに位置する組織を貫通し、軟骨修復部位に近接する骨髄に達する。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの領域による骨髄の貫通は、このスカフォールドの他の領域と独立に、スカフォールドを配置し固定する。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの領域による骨髄の貫通及びこのスカフォールドのさらなる領域の少なくとも1つと修復部位の組織との強制的接触は、共にこのスカフォールドを配置し固定する。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの領域による骨髄の貫通が、スカフォールドを修復領域内に配置し固定する一方で、このスカフォールドのさらなる領域の少なくとも1つが、修復部位の組織と受動的に接触する。
【0030】
上述のように、本発明のスカフォールドを配置し固定するスカフォールドの領域の能力は、その領域の形状及びスカフォールドが移植される軟骨修復部位の形状に依存する。実施形態の1つにおいて、領域の形状は尖った先端を含む。実施形態の1つにおいて、領域の形状は丸味を帯びた先端を含む。実施形態の1つにおいて、領域の形状はギザギザの先端を含む。
【0031】
実施形態の1つにおいて、本発明は、サンゴ表面上の他の部分に対して起立した複数の部分を含み、いくつかの実施形態において、複数の起立部分の領域の少なくとも1つが、サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する。いくつかの実施形態において、複数の起立部分の領域は軟骨修復により適しており、いくつかの実施形態において、起立部分を含まない領域が骨修復により適しており、本発明のスカフォールドはいくつかの実施形態において、骨軟骨欠損の修復に特に適している。
【0032】
本発明の実施形態の1つにおいて、軟骨修復部位内での最適な深さ及び角度は、軟骨修復に最も有益な深さ及び角度を含む。実施形態の1つにおいて、最も有益な最適な深さ及び角度は、本発明のスカフォールドが、間葉系幹細胞、組織環境、血管、栄養分、エフェクター化合物、又は治療化合物、又はこれらの組合せのプールに到達可能であるような位置を含む。
【0033】
本発明の実施形態の1つにおいて、「深さ」なる用語は、修復部位の開いた表面上にあることが想定上の線から、軟骨修復部位の組織の底の下の場所へと延びる、本発明のスカフォールドの測定値を指す。
【0034】
例えば、単一の連続的な壁及び底を有する円柱状の窪みのような形の軟骨修復部位に対して、実施形態の1つにおいてスカフォールドは、底を貫通して延びるように配置されてもよく、したがってスカフォールドの領域の深さは底の下までであり、ここでこの領域は骨髄内へと貫通する。このことは、軟骨修復に有益である。なぜなら、骨髄は代表的な間葉系幹細胞の供給源だからである。さらに、修復部位の組織環境又は修復部位に近接する組織環境に見出されうる他の栄養分、エフェクター化合物、又は治療化合物、又はこれらの組合せをここで、スカフォールドが骨及び他の組織を貫通して骨髄に達する際に、スカフォールドと接触させてもよい。
【0035】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドの領域の深さは、スカフォールドの領域が骨髄内へと貫通するように、軟骨修復部位と並ぶいかなる組織表面の下までであってもよい。
【0036】
スカフォールドの他の領域の深さが、いかなる組織表面の下まででなくてもよいということは、当業者に認識されるであろう。円柱状の窪みのような形の軟骨修復部位に対して、窪みの開口部をまたいで引かれる想定上の線は、窪みの最上部を示す。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの配置の結果として、スカフォールド全体が窪みの最上部の下にあり、したがって、開口部上にまたがる想定上の線の下までの深さにある。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの配置の結果として、スカフォールドの一部が窪みの最上部の上にあり、したがって、完全に軟骨修復部位内にはない。スカフォールドを所定の深さに配置することの利益は、スカフォールドと軟骨修復部位内の周囲組織又は軟骨修復部位に近接する周囲組織との間に結果として生じる接触に依存しうる。
【0037】
実施形態の1つにおいて、「角度」なる用語は、スカフォールドの長軸に沿った想定上の線と、上述の軟骨修復部位の開口部に沿った線に対して垂直な想定上の鉛直線とによって形成される孤の測定値を指し、この孤はこの想定される鉛直線の周囲を時計回りの方向に進む。したがって、実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、スカフォールドがこの垂直線に平行なように、最適な深さ及び角度で配置されて固定されてもよく、したがって角度は0度になるだろう。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、想定上の鉛直線に垂直に配置されてもよく、したがって角度は90度になるだろう。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは10度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは35度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは55度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは75度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは95度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは115度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは125度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは145度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは165度以下の角度で配置されて固定される。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは180度以下の角度で配置されて固定される。
【0038】
いくつかの実施形態において、複数のスカフォールドが、個々のスカフォールド材が異なる角度で挿入されて軟骨欠損部位内の所望の領域内への適切な挿入を可能にし、欠損部位を最大限埋めるように挿入される。上での配置角度への言及は、ある特定の軟骨欠損部位に挿入される1又は2以上のスカフォールドに関するものであってもよいことが理解されるべきである。
【0039】
スカフォールドの露出表面と軟骨修復部位の組織又は軟骨修復部位に近接する組織との間の接触は、本発明の使用方法において軟骨修復を誘導又は亢進しうる生物活性表面を提供する。例えば、実施形態の1つにおいて、スカフォールドの露出表面は、間葉系幹細胞を誘引する生物活性表面を提供する。また別の実施形態において、露出表面は間葉系幹細胞の接着、成長、増殖又は分化、又はこれらの組合せのための場所を提供し、これら全てのプロセスが、軟骨修復を誘導又は亢進する。加えて、スカフォールドの露出表面は、血管を誘引しうる。さらに、軟骨修復部位の組織又は軟骨修復部位に近接する組織は、栄養分、エフェクター化合物、治療化合物、又はこれらの組合せの豊かな供給源であってもよく、このことは、スカフォールドの露出表面とかかる組織との間の接触が軟骨修復を誘導又は亢進する点で、軟骨修復において有益であってもよい。
【0040】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドの配置の角度は、スカフォールドが軟骨修復部位内の壁の領域と接触するような角度である。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、スカフォールドと軟骨修復部位の組織又は軟骨修復部位に近接する組織との間で最大限の接触があるように配置されて固定されてもよい。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、スカフォールドの領域が軟骨を貫通し、スカフォールドと軟骨修復部位の組織又は軟骨修復部位に近接する組織との間に最大限の接触があるように配置されて固定されてもよい。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの露出表面と軟骨修復部位との間の接触は、間葉系幹細胞の細胞集団、血管、エフェクター化合物、又は組織環境の他の成分、又はこれらの組合せとの相互作用のための、スカフォールドの最大限の表面積を提供する。
【0041】
本発明のスカフォールドは、複数の起立部分を含んでいてもよい。スカフォールドの異なる部分は、異なる機能を果たすことができる。例えば、実施形態の1つにおいて、スカフォールドの起立部分は骨髄を貫通してもよく、或いはスカフォールドの起立部分は軟骨修復部位内の適所にスカフォールドを保持してもよく、或いはスカフォールドの起立部分は、間葉系幹細胞の誘引、成長、増殖又は分化のための露出表面として機能してもよく、或いはスカフォールドの起立部分は本発明のツールを適合させるために機能してもよく、あるいはこれらのどのような組合せでもよい。
【0042】
実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の100%がサンゴを厳密に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも80%がサンゴを厳密に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも60%がサンゴを厳密に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも40%がサンゴを厳密に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも20%がサンゴを厳密に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも10%がサンゴを厳密に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも1%がサンゴを厳密に配置し固定する。
【0043】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に配置すること及び固定することは、スカフォールドの露出表面の一部による骨髄の貫通を提供し、結果として露出表面が軟骨修復部位に近接する骨髄内に挿入される。
【0044】
スカフォールドの厳密な配置を最適化することにより、下に記述される本発明のサンゴスカフォールドの多孔性結晶構造が、組織環境内に位置する有益な成分へと到達可能になる。例えば、サンゴの多孔性結晶構造は、血管の内殖が、軟骨修復中にスカフォールドに浸入する軟骨への血液供給を創出することを可能にする。スカフォールドが骨髄内へと貫通することにより、骨髄内に位置する間葉系幹細胞が今やスカフォールドの露出表面に到達できる。実施形態の1つにおいて、骨髄内へと貫通するスカフォールドの領域は、骨髄から間葉系幹細胞を誘引し、軟骨修復部位への血管形成を促進する。実施形態の1つにおいて、骨髄内へと貫通するスカフォールドの領域は、スカフォールドへと誘引された間葉系幹細胞の接着、増殖、又は分化、又はこれらの組合せを促進する。
【0045】
したがって、軟骨修復部位内でのスカフォールドの厳密な配置により、本発明のスカフォールドが軟骨修復に最も効果的であるように配置されるということは当業者にとって明らかであろう。
【0046】
実施形態の1つにおいて、「スカフォールド」は、軟骨修復のために使用される形成されたプラットホーム(platform)を指し、この形成されたプラットホームは、軟骨再生のための部位を提供する。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは暫定的プラットホーム(temporary platform)である。実施形態の1つにおいて、「暫定的プラットホーム」は、軟骨修復中に時間の経過と共に生じる本発明のサンゴの自然分解を指し、ここでサンゴの自然分解は、スカフォールドの形状の経時的変化、スカフォールドの大きさの経時的変化をもたらしてもよい。
【0047】
実施形態の1つにおいて、サンゴは成長させられるべき組織の形で形成される。例えば、サンゴは、膝又は肘のための半月板;関節;骨、胸郭、股関節部、骨盤、耳、鼻、気管支及び椎間板の関節面等の軟骨組織片として形成されうる。
【0048】
本発明は、いくつかの実施形態において、被験者における身体外傷に伴う軟骨組織欠損又は疾患若しくは障害に伴う軟骨組織欠損の修復における使用のためのサンゴスカフォールドを提供する。
【0049】
本発明の実施形態の1つにおいて、「サンゴ」なる用語は、単一のサンゴ断片から切り出されるサンゴを指す。実施形態の1つにおいて、サンゴは孔状の空洞又は間隙を有する。
【0050】
実施形態の1つにおいて、サンゴスカフォールドは、軟骨修復方法における使用前に形成される。実施形態の1つにおいて、サンゴスカフォールドは、軟骨修復方法と同時進行で形成される。例えば、サンゴスカフォールドは、修復部位が最もよく観察され、それゆえ使用されるスカフォールドの形状を最適化しうる手術中に形成されてもよい。
【0051】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットは、サンゴを利用する。実施形態の1つにおいて、サンゴは、とりわけハマサンゴ属(Porites)、ミドリイシ属(Acropora)、アナサンゴモドキ属(Millepora)、又はこれらの組合せを含む、あらゆる種を含む。
【0052】
実施形態の1つにおいて、サンゴはハマサンゴ属の種に由来する。実施形態の1つにおいて、サンゴはコブハマサンゴ(Porites Lutea)である。ほとんどの種において、空隙の固形物に対する比率は概ね0.4〜0.6の範囲であり、空隙相は相互に完全に接続しており、固形炭酸カルシウム相を貫通する高度に規則的なネットワークを形成する。実施形態の1つにおいて、この一様で相互に接続する構造は、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットにおける枠組みとして特に有用である。
【0053】
実施形態の1つにおいて、サンゴはミドリイシ属の種に由来する。実施形態の1つにおいて、サンゴはクロマツミドリイシ(Acropora grandis)であり、これは実施形態の1つにおいて、非常に一般的で、成長が速く、培養液中で成長させるのが容易である。したがって、実施形態の1つにおいて、ミドリイシの試料はサンゴ礁の保護区域において容易に収集されうるのであり、サンゴ礁からの収集は、培養サンゴ材の使用により回避されうる。
【0054】
クロマツミドリイシの平均骨格密度は2.7g/mlである。このサンゴ種の骨格は高密度且つ強固であるので、多様な立体構造を有する形成産物又は様々な大きさを有する構造へと、例えば研磨法により、容易に機械加工されうる。この材料は、移植装置における使用、特に、強度が移植装置の重要な特性である膝関節及び股関節等の荷重関節に特に適している。したがって、実施形態の1つにおいてミドリイシサンゴは、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットにおける枠組みとして有用である。
【0055】
また別の実施形態において、サンゴはアナサンゴモドキ属の種に由来する。実施形態の1つにおいて、サンゴはアナサンゴモドキ(Millepora dichotoma)である。実施形態の1つにおいて、サンゴは150μmの孔の大きさを有し、クローン作製及び培養が可能であり、それゆえアナサンゴモドキ属は、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットの枠組みとして有用である。
【0056】
また別の実施形態において、サンゴは以下の種のうちのどの1又は2以上の種からのものであってもよい:マルカメノコキクメイシ(Favites halicora);コモンキクメイシ(Goniastrea retiformis);ヒメオオトゲキクメイシ(Acanthastrea echinata);ヒラタオオトゲキクメイシ(Acanthastrea hemprichii);イシガキオオトゲキクメイシ(Acanthastrea ishigakiensis);ヒメマツミドリイシ(Acropora aspera);コイボミドリイシ(Acropora austera);ミドリイシ属不明種「茶色指状」(Acropora sp. "brown digitate");ツツミドリイシ(Acropora carduus);ムギノホミドリイシ(Acropora cerealis);アクロポラ・チェスターフィールデンシス(Acropora chesterfieldensis);サンボウミドリイシ(Acropora clathrata);アクロポラ・コフォダクティラ(Acropora cophodactyla);ミドリイシ属不明種「トゲマツミドリイシ様」(Acropora sp. "danai-like");ヤッコミドリイシ(Acropora divaricata);アクロポラ・ドネイ(Acropora donei);トゲヅツミドリイシ(Acropora echinata);アクロポラ・エッフロレッセンス(Acropora efflorescens);オヤユビミドリイシ(Acropora gemmifera);アクロポラ・グロビセプス(Acropora globiceps);ツツハナガサミドリイシ(Acropora granulosa);ヒラタオオトゲキクメイシ近似種(Acropora cf hemprichii);アクロポラ・コスリニ(Acropora kosurini);アクロポラ・ロイセッタエ近似種(Acropora cf loisettae);オオヅツミドリイシ(Acropora longicyathus);マルヅツハナガサミドリイシ(Acropora loripes);アクロポラ・ルトケニ近似種(Acropora cf lutkeni);アクロポラ・パニクラタ(Acropora paniculata);アクロポラ・プロキシマリス(Acropora proximalis);アクロポラ・ルディス(Acropora rudis);タチハナガサミドリイシ(Acropora selago);エンタクミドリイシ(Acropora solitaryensis);Veronによるアクロポラ・スピシフェラ近似種(Acropora cf spicifera as per Veron);Wallaceによるアクロポラ・スピシフェラ近似種(Acropora cf spicifera as per Wallace);ウスエダミドリイシ(Acropora tenuis);アクロポラ・ヴァレンシエッネシ(Acropora valenciennesi);ボーンミドリイシ(Acropora vaughani);アクロポラ・ヴァーミクラタ(Acropora vermiculata);センベイアナサンゴ(Astreopora gracilis);アナサンゴ(Astreopora myriophthalma);アストレオポラ・ランダッリ(Astreopora randalli);アストレオポラ・スッゲスタ(Astreopora suggesta);ヒラサンゴ(Australomussa rowleyensis);ヤスリサンゴ(Coscinaraea columna);ノマヤスリサンゴ(Coscinaraea crassa);コハナガタサンゴ(Cynarina lacrymalis);ムラサキサンゴモドキ(Distichopora violacea);ヒラキッカサンゴ(Echinophyllia echinata);リュウキュウキッカモドキ近似種(Echinophyllia cf echinoporoides);オオリュウキュウキッカサンゴ(Echinopora gemmacea);エキノポラ・ヒルスチッシマ(Echinopora hirsutissima);ナガレハナサンゴ(Euphyllia ancora);コエダナガレハナサンゴ(Euphyllia divisa);ユーフィッリア・ヤエヤメンシス(Euphyllia yaeyamensis);アツキクメイシ(Favia rotundata);ファヴィア・トルンカツス(Favia truncatus);ファヴィテス・アクチコッリス(Favites acuticollis);ファヴィチエス・ぺンタゴナ(Favities pentagona);ナミクサビライシ(Fungia granulosa);フンギア・クルンジンゲリ(Fungia klunzingeri);ネジレクサビライシ(Fungia mollucensis);ガラクセア・アクレリア(Galaxea acrhelia);ヒラカメノコキクメイシ(Goniastrea edwardsi);ゴニアステア・ミヌタ(Goniastea minuta);イボサンゴ(Hydnophora pilosa);センベイサンゴ(Leptoseris explanata);レプトセリス・インクルスタンス(Leptoseris incrustans);アバタセンベイサンゴ(Leptoseris mycetoseroides);ハシラセンベイサンゴ(Leptoseris scabra);チヂミセンベイサンゴ(Leptoseris yabei);カワラサンゴ(Lithophyllon undulatum);オオハナガタサンゴ(Lobophyllia hemprichii);ウスサザナミサンゴ(Merulina scabricula);アナサンゴモドキ;カンボクアナサンゴモドキ(Millepora exaesa);ホソエダアナサンゴモドキ(Millepora intricata);ミッレポラ・ムッレイエンシス(Millepora murrayensis);イタアナサンゴモドキ(Milleporaplatyphylla);モナストレア・クルタ(Monastrea curta);モナストレア・コレマニ(Monastrea colemani);コクボミコモンサンゴ(Montipora caliculata);モンチポラ・カピタタ(Montipora capitata);オオクボミコモンサンゴ(Montipora foveolata);モンチポラ・メアンドリナ(Montipora meandrina);ヒメイボコモンサンゴ(Montipora tuberculosa);モンチポラ・ヴィエトナメンシス近似種(Montipora cf vietnamensis);オウロフィッリア・ラエヴィス(Oulophyllia laevis);オクシポラ・クラッシスピノサ(Oxypora crassispinosa);アナキッカサンゴ(Oxypora lacera);パヴォナ・ビパルチタ(Pavona bipartita);シコロキクメイシ(Pavona venosa);アザミウミバラ(Pectinia alcicornis);レースウミバラ(Pectinia paeonia);プラティギラ・アクタ(Platygyra acuta);プラティギラ・ピニ(Platygyra pini);ノウサンゴ属不明種「緑色」(Platygyra sp "green");プラティギラ・ヴェルウェイイ(Platygyra verweyi);ポダバキア・ラナケンシス近似種(Podabacia cf lanakensis);イワハマサンゴ(Porites annae);ユビエダハマサンゴ(Porites cylindrica);ポリテス・エヴェルマッニ(Porites evermanni);ポリテス・モンチクロサ(Porites monticulosa);ヤスリアミメサンゴ(Psammocora digitata);プサッモコラ・エクスプラヌラタ(Psammocora explanulata);トゲアミメサンゴ(Psammocora haimeana);ベルベットサンゴ(Psammocora superficialis);サンダロリタ・デンタタ(Sandalolitha dentata);フトトゲサンゴ(Seriatopora caliendrum);ヒメムカシサンゴ(Stylocoeniella armata);ムカシサンゴ(Stylocoeniella guentheri);サンゴモドキ属不明種(Stylaster sp.);クダサンゴ(Tubipora musica);ヒメスリバチサンゴ(Turbinaria stellulata);又は当技術分野において知られているあらゆるサンゴ、又はこれらの組合せ。
【0057】
また別の実施形態において、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットにおける使用のためのサンゴは、イシサンゴ類(Madreporaria)、共莢目(the order Coenothecalia)のアオサンゴ科(Helioporida)、クダサンゴ目(the order Stolonifera)のクダサンゴ属(Tubipora)、アナサンゴモドキ目(the order Milleporina)のアナサンゴモドキ属、又は当技術分野に知られている他のものであってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットにおける使用のためのサンゴは、イシサンゴ目のサンゴ(scleractinian coral)を含んでいてもよく、いくつかの実施形態において、ハナガササンゴ属(Goniopora)及びその他のものを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットにおける使用のためのサンゴは、アワサンゴ属(Alveopora)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のスカフォールド、方法及び/又はキットにおける使用のためのサンゴは、竹サンゴ(bamboo corals)を含んでいてもよく、いくつかの実施形態において、トクササンゴ科(the family Isididae)、トクサヤギ属(Keratoisis)、イシデッラ属(Isidella)及びその他のものに由来するサンゴを含んでいてもよい。
【0058】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドの大きさは、当業者によって知られているであろうように、本発明の目的のために有用であると考えられるどのような大きさでもよい。実施形態の1つにおいて、スカフォールド又はその一部は、概ね軟骨修復部位の大きさであってもよい。実施形態の1つにおいて、スカフォールド又はその一部は、スカフォールドが軟骨修復部位内に配置されてもよいように、概ね軟骨欠損の大きさであってもよい。また別の実施形態において、スカフォールドは、軟骨欠損の大きさより大きくてもよい。例えば、実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、軟骨欠損の大きさよりも大きくてもよく、このことによってスカフォールドは、間葉系幹細胞を利用可能な部位へと延びていてもよい。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは軟骨欠損の大きさより小さくてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、スカフォールドの大きさはミリメートル単位であり、例えば、約2〜200mmの、或いはいくつかの実施形態において、約1〜18mmの、或いはいくつかの実施形態において、約0.5mm〜3mmの、或いはいくつかの実施形態において、約6〜12mmの、或いはいくつかの実施形態において、約10〜15mmの、或いはいくつかの実施形態において、約12〜40mmの、或いはいくつかの実施形態において、約30〜100mmの、或いはいくつかの実施形態において、約50〜150mmの、或いはいくつかの実施形態において、約100〜200mmの、少なくとも1つの長軸を有する。
【0060】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドは、組織修復部位の組織空隙と概ね同じ大きさであってもよい。この組織空隙は、軟骨欠損によるもの、軟骨変性によるもの又は軟骨修復方法の間に人工的に創出されたもの、又はこれらのあらゆる組合せであってもよい。実施形態の1つにおいて、組織空隙は軟骨組織の非存在を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、組織空隙は軟骨組織及び骨組織の非存在を含む。実施形態の1つにおいて、スカフォールド又はその一部は、軟骨修復部位での軟骨形成を亢進するためにスカフォールドが軟骨修復部位内に配置されてもよいように、軟骨欠損の大きさであってもよい。また別の実施形態において、スカフォールドは、スカフォールドが間葉系幹細胞を利用可能な部位に達してもよいように、軟骨欠損の大きさより大きくてもよい。
【0061】
本発明の実施形態の1つにおいて、「概ね、約(about)」は、特定の必要性を満たすための手段が、その必要性を満たしているという性質を指し、例えば、大きさは、特定されている大きさと全く同じではないが、大体同じであってもよく、それでいてその大きさは、軟骨修復部位での軟骨修復という特定の必要性を満たす。実施形態の1つにおいて、「概ね、約」は、近い又は近似しているが、精確に同じではないことを指す。小さな誤差の範囲が存在する。この誤差の範囲は、同じ整数値の範囲内のものであると考えられる。例えば、約0.1マイクロメートルは、0以上であるが0.2以下であることを意味すると考えられる。
【0062】
実施形態の1つにおいて、「空隙」なる用語は、占有されていない空間を指す。本発明において、例えば、実施形態の1つにおいて、空隙は、自然に占有されていないサンゴ中の空間であってもよい。実施形態の1つにおいて、空隙は、修復部位において占有されていない空間であってもよい。実施形態の1つにおいて、空隙は、本発明のスカフォールド内で占有されていない空間であってもよい。
【0063】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドにおける使用のためのサンゴは、前駆細胞で播種するのに適した平均孔サイズを含む。実施形態の1つにおいて、サンゴの平均孔サイズは1μm〜1mmである。実施形態の1つにおいて、サンゴの平均孔サイズは30〜180μmである。実施形態の1つにおいて、サンゴの平均孔サイズは50〜500μmである。実施形態の1つにおいて、サンゴの平均孔サイズは150〜220μmである。実施形態の1つにおいて、サンゴの平均孔サイズは250〜1000μmである。
【0064】
スカフォールド、使用方法及びそのキットにおける使用のためのサンゴの処理は、PCT国際出願番号第PCT/IL08/001511号に記載の通りであってもよく、これは参照により本明細書に完全に記載されたものとして組み込まれる。この点に関するさらなる詳細は、本明細書において以下で与えられる。
【0065】
実施形態の1つにおいて、サンゴは前駆細胞での播種前に、有機残渣から精製されるか、洗浄されるか、漂白されるか、凍結されるか、乾燥させられるか、殺菌されるか、或いはこれらの組合せを受ける。
【0066】
実施形態の1つにおいて、スカフォールド並びに本発明の方法及びキットにおける使用のためのスカフォールドは、自然に生じたサンゴ砂を水で洗浄して脱塩すること、その後脱塩したサンゴ砂を殺菌し約80℃〜約150℃、好ましくは90℃〜120℃の温度で乾燥させること、並びに、殺菌し乾燥させたサンゴを小粒子へと粉砕することを含む方法に従って作製され、実施形態の1つにおいて、この小粒子は1〜10μmの粒子を含む。また別の実施形態において、サンゴは、1〜5、1〜20、1〜50、1〜100、5〜10、10〜15、15〜20、10〜50、10〜100、20〜100、50〜100、80〜150、100〜200、100〜350又は150〜500μmの粒子へと粉砕される。
【0067】
本発明のサンゴスカフォールドは、サンゴの露出表面の第2の部分の少なくとも1つに対して起立した露出表面の第1の部分を少なくとも1つ含む(図1〜図3)。露出した起立表面は、本発明の使用方法及びそのキットに関して、複数の機能を果たしてもよい。実施形態の1つにおいて、起立部分は、本発明のスカフォールドを配置し固定する。実施形態の1つにおいて、起立部分は、骨を貫通して骨髄内に挿入され、そのことにより間葉系幹細胞の供給源へと達する。実施形態の1つにおいて、スカフォールドの起立部分及び非起立部分の露出表面は、間葉系幹細胞の誘引、成長、増殖又は分化、又はこれらの組合せのための部位を提供する。
【0068】
本発明の実施形態の1つにおいて、「部分(portion)」なる用語は、全体のうちの限られた一部を指す。
【0069】
実施形態の1つにおいて、「露出表面の部分」なる用語は、露出表面全体のうちの限られた一部を指す。例えば、実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の100%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の90%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の80%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の70%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の60%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の50%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の40%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の30%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の20%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の10%未満を含む。実施形態の1つにおいて、露出表面の部分は、露出表面の1%未満を含む。
【0070】
本発明の実施形態の1つにおいて、「表面」なる用語は、対象の外側境界又は上側境界を指す。
【0071】
本発明の実施形態の1つにおいて、「露出」なる用語は、本発明のサンゴスカフォールドと周囲環境との間に接触が生じてもよいように、周囲環境に対して晒されていることを指す。例えば、実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴは、軟骨修復部位、組織環境、又は細胞培養環境を含む周囲環境と接触していてもよい。
【0072】
実施形態の1つにおいて、「露出表面」なる用語は、例えば軟骨修復部位に到達可能な/晒されている/接触可能なサンゴの表面を指す。実施形態の1つにおいて、露出表面は、組織修復部位に到達可能な/晒されている/接触可能なポリマーコーティングを含んでいてもよい。実施形態の1つにおいて、本発明の露出表面は、間葉系幹細胞に、或いは、既存の軟骨及び軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞等の骨細胞等、軟骨修復プロセスに寄与する隣接する組織に到達可能である。実施形態の1つにおいて、本発明の露出表面は、軟骨修復に有益なエフェクター化合物に到達可能である。実施形態の1つにおいて、本発明の露出表面は、スカフォールドの内面にあるようであってもよい。実施形態の1つにおいて、「内面」なる用語は、外界からの特定の視点から容易には見えない表面を指し、かかる表面は、サンゴの孔状の空洞又間隙内の露出表面及びサンゴ内に創出された中空の露出表面を含み、例えば、図4の長軸断面図に示される内部露出断面、又は露出表面を含む図1〜図3の空隙である。
【0073】
実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴと環境との間の接触は、サンゴが環境に直接接触することを含む。例えば、実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴは、軟骨修復部位の表面に直接接触してもよい。
【0074】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復部位の表面上へのサンゴの配置を伴っていてもよい。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、サンゴの露出表面へと移動するサンゴによる修復部位の組織環境の成分を伴っていてもよく、本発明のサンゴと環境との接触はこのようにして達成されるだろう。
【0075】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、スカフォールドの起立した露出表面を強制的に軟骨修復部位の組織又は軟骨修復部位に隣接する組織と接触させるように、スカフォールドを移植することを伴っていてもよい。このようにして、今や軟骨修復部位と近接するサンゴの露出表面が、軟骨組織、骨組織、骨髄組織、間葉系幹細胞、栄養分、血管又は他のエフェクター化合物、又はこれらの組合せを含む、軟骨修復に有益であろう環境と近接する。
【0076】
実施形態の1つにおいて、サンゴと周囲環境との接触を提供する本発明の方法は、軟骨修復に有益な、間葉系細胞、血管、栄養分、治療化合物又はエフェクター化合物、又はこれらの組合せの移動をもたらす。実施形態の1つにおいて、サンゴと間葉系幹細胞との接触は、インビトロ培養液中で生じる。
【0077】
本発明の実施形態の1つにおいて、「露出表面の第2の部分の少なくとも1つに対して起立した露出表面の第1の部分の少なくとも1つ」なる文言は、露出表面の第1の部分が本発明のサンゴの前記露出表面の第2の部分の少なくとも1つの上に隆起していることを含むように、前記露出表面の前記第1の部分が前記サンゴから突出していることを指す。露出表面の第2の部分の少なくとも1つに対して起立した露出表面の第1の部分が、本発明のサンゴスカフォールドの表面総面積の増加を提供し、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供することは、当業者にとって明らかであろう。実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、露出表面積を最大化するように形成される。
【0078】
本発明の実施形態の1つにおいて、露出表面は、例えば、図1の領域1−20、又は図2の領域2−20又は図3の領域3−20に示される露出表面上の複数の起立部分等の、前記表面上の他の部分に対する複数の起立部分を含む。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分は、サンゴスカフォールドの露出表面積の増加を提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分はそれぞれ、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を、少なくとも1つ提供してもよい。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分のうちの1つのみが、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも10%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも20%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも30%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも50%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも70%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の少なくとも90%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分の100%が、前記サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ提供する。
【0079】
いくつかの実施形態において、スカフォールドの起立部分の形状、数、又は配置、又はこれらの組合せを調節することにより、大きさ、位置、必要な修復のタイプ、存在する欠損のタイプ、又は修復部位から骨髄までの距離、又はこれらの組合せについて互いにきわめて異なりうる軟骨修復部位において軟骨修復を誘導又は亢進するためのスカフォールドを、本発明の方法及び/又はキットにおける使用のために設計することができる。
【0080】
本発明の実施形態の1つにおいて、「スカフォールドの長軸(long axis of the scaffold)」及び「スカフォールドの長軸(longitudinal axis of the scaffold)」なる文言は、互換的に用いられ、スカフォールドの長さ方向に平行に延びる線を指す。「長さ方向(lengthwise)」なる用語は、スカフォールドの長さの方向を指す。元々のスカフォールドに水平断面を生み出すため、元々の幾何学的形状が切断されたということであってもよい。かかる場合には、長さ方向は、スカフォールドに沿って元々の長さの方向であるとみなされるべきである。
【0081】
実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して規則的な距離を置いて配置される。本発明の実施形態の1つにおいて、「規則的な距離(periodic distance)」なる文言は、規則的な間隔で存在すること又は繰り返されることを含む、複数の起立部分間の距離を指す。実施形態の1つにおいて、規則的な距離は、表面上の複数の起立部分のうちの1つの接合部とすぐ隣にある複数の起立部分のうちの1つの接合部との、対面部位間の距離である。実施形態の1つにおいて、規則的な距離は、表面上の複数の起立部分のうちの1つの中心長軸とすぐ隣にある複数の起立部分のうちの1つの中心長軸との間の距離である。
【0082】
実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して不規則な距離で配置される。本発明の実施形態の1つにおいて、「不規則な距離(aperiodic distance)」なる文言は、不規則に存在することを含む、複数の起立部分間の距離を指す。実施形態の1つにおいて、不規則な距離は、表面上の複数の起立部分のうちの1つの接合部とすぐ隣にある複数の起立部分のうちの1つの接合部との、対面部位間の距離である。実施形態の1つにおいて、不規則な距離は、表面上の複数の起立部分のうちの1つの中心長軸とすぐ隣にある複数の起立部分のうちの1つの中心長軸との間の距離である。
【0083】
本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して概ね等しい高さを有する。実施形態の1つにおいて、高さは、スカフォールドの表面から、スカフォールドの表面上の起立部分の上限までの最大距離を含む。
【0084】
本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して概ね等しくない高さを有する。
【0085】
本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して概ね等しい幅を有する。実施形態の1つにおいて、幅は、起立部分の長軸に対して垂直に配置される起立部分の水平線に沿った測定値を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して全ての水平線について概ね等しい幅を有する。
【0086】
実施形態の1つにおいて、複数の起立部分のうちの1つは、起立部分それ自体のどの水平線に沿っても、等しい幅を有していてよい。実施形態の1つにおいて、複数の起立部分のうちの1つは、起立部分それ自体のどの水平線に沿っても、等しくない幅を有していてよい。
【0087】
本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して等しくない幅を有する。本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面上で互いに対して全ての水平線について等しくない幅を有する。
【0088】
本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面の別個の領域内に配置され、ここでこの別個の領域が表面の100%を占めることはない。本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面の別個の領域内に配置され、ここでこの別個の領域は表面の50〜100%を占める。本発明の実施形態の1つにおいて、第1の複数の起立部分は、表面の別個の領域内に配置され、ここでこの別個の領域は表面の50%未満を占める。
【0089】
実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴはスカフォールド全体を通して固形物を含む。本発明の固形サンゴは、依然として孔状の空洞及び/又は間隙を含むことを、当業者は認識するであろう。
【0090】
実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴは、スカフォールドのデカルト座標軸に沿って中空を含む。実施形態の1つにおいて、中空は、本発明のスカフォールドの長軸に沿う。実施形態の1つにおいて、「中空」なる用語は、本発明のスカフォールド内の空洞をもたらすサンゴ内の空洞を指す。実施形態の1つにおいて、中空は、空洞が外部環境に晒されるように、サンゴの少なくとも1つの開口部を含む。例えば、図1及び図2は、本発明の方法において用いられるスカフォールドの実施形態を示し、ここではこれら代表的スカフォールドの長軸に沿って、一連の中空が存在している。実施形態の1つにおいて、中空は本発明のスカフォールドにさらなる露出表面積を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態において、かかる中空又は複数の中空は、中空/複数の中空を導入するどのような機械的手段により構築されてもよい。いくつかの実施形態において、かかる中空の創出は、スカフォールド表面から所望の深さまで内部に向かう、制御されたドリル加工によるものであってもよい。いくつかの実施形態において、かかる特定の中空の創出は、軟骨修復及び/又は骨修復に関与する適切な細胞のスカフォールド内への内殖、血管の成長及び修復に必要な他の要素を可能にする。いくつかの実施形態において、中空は、修復を刺激/亢進するためにスカフォールドが挿入される軟骨領域に及ぶのに十分な深さを有するよう、本発明のスカフォールド内に厳密に構築され、いくつかの実施形態において、かかる深さは骨に達するに十分ではない。
【0092】
いくつかの実施形態において、本発明のスカフォールドは、複数の中空を含み、これら中空はどのような向きであってもよく、或いはいくつかの実施形態において、本発明のスカフォールドは、中空のネットワークをスカフォールド内に含み、或いはいくつかの実施形態において、複数のスカフォールドが修復部位内へと移植され、ここでこれらスカフォールドの中空は、移植されたこれらスカフォールド全体を通して中空のネットワークを形成するよう配列される。
【0093】
本発明のスカフォールドの露出表面積は、間葉系幹細胞の付着、成長、増殖又は分化、又はこれらの組合せのための場所、及び、血管形成のための場所を提供する。したがって、本発明のスカフォールドの表面積は、最終的には、軟骨組織再生にとって有益な場所を提供する。したがって、本発明の方法及びキットにおける使用のための本発明のスカフォールドの表面積を増加させることは、有益である。本発明の実施形態の1つにおいて、スカフォールドは中空を含み、ここで中空の存在は、中空を有しない同様のスカフォールドに比して、スカフォールドの露出表面積を増加させる。実施形態の1つにおいて、スカフォールドは、サンゴの表面積を最大化するために中空空間を有するよう切り出されたサンゴを含む。
【0094】
本発明の実施形態の1つにおいて、サンゴはポリマーコーティングを含む。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングはスカフォールドを強化し、且つ/或いは、軟骨修復を亢進する。
【0095】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは透過性である。実施形態の1つにおいて、透過性ポリマーコーティングは特殊な多孔性膜を含む。実施形態の1つにおいて、「透過性」なる用語は、孔及び開口部を有することを指す。実施形態の1つにおいて、本発明の透過性ポリマーコーティングは、栄養分、治療化合物、細胞集団、キレート剤、又はこれらの組合せの浸入を可能にする孔及び開口部を有する。実施形態の1つにおいて、本発明の透過性ポリマーコーティングは、栄養分、治療化合物、細胞集団、キレート剤、若しくはこれらの組合せの浸出/放出及び/又は血管形成を可能にする孔及び開口部を有する。
【0096】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーコーティングは非連続的である。実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴの領域又は複数の小領域は、ポリマーコーティングが存在せず、サンゴと環境との間の直接接触を可能にすることを含む。
【0097】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーコーティングは薄膜であってもよく、非連続的粒子及び/又は凝集体又はこれらの組合せの形をとってもよい。本明細書の実施例2及び図8は、ヒアルロン酸粒子を組み込んだ本発明のスカフォールドの実施形態の1つの調製を記述しており、本発明の実施形態の1つを代表する。
【0098】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーコーティングは、コラーゲン、エラスチン、絹、ヒアルロン酸、キトサン、及びこれらのあらゆる組合せを含む天然ポリマーを含む。
【0099】
実施形態の1つにおいて、ポリマーは、合成的に修飾された天然ポリマーを含み、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース及びキトサン等のセルロース誘導体を含んでいてもよい。適切なセルロース誘導体の例には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート及びセルローススルフェートナトリウム塩が含まれる。
【0100】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリマーは、合成生分解性ポリマーを含む。本発明の実施形態の1つにおいて、合成生分解性ポリマーは、ポリ−乳酸、ポリグリコール酸を含むアルファ−ヒドロキシ酸、これらのエナンチオマー、これらのコポリマー、ポリオルトエステル、及びこれらの組合せを含む。
【0101】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーは、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アルキル−シアノアクリレート)、ポリ(ケタール)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(アセタール)、ポリ(α−ヒドロキシ−エステル)、ポリ(α−ヒドロキシ−エステル)、ポリ(ヒドロキシル−アルカノエート)、ポリ(プロピレン−フマレート)、ポリ(イミノ−カーボネート)、ポリ(エステル)、ポリ(エーテル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(アミド)、ポリ(シロキサン)、ポリ(シラン)、ポリ(スルフィド)、ポリ(イミド)、ポリ(ウレア)、ポリ(アミド−エナミン)、ポリ(有機酸)、ポリ(電解質)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(オレフィン)、ポロキサマー、無機ポリマー若しくは有機金属ポリマー、エラストマー、又はこれらのあらゆる誘導体、又はこれらの組合せにより得られるコポリマーを含む。
【0102】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーは、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(poly(D,L-lactide-co-glycolide)、PLGA)を含む。また別の実施形態において、ポリマーは、ポリ(D,L−ラクチド)(poly(D,L-lactide)、PLA)を含む。また別の実施形態において、ポリマーは、ポリ(D,L−グリコリド)(poly(D,L-glycolide)、PGA)を含む。実施形態の1つにおいて、ポリマーは、グリコサミノグリカンを含む。
【0103】
実施形態の1つにおいて、ポリマーは、合成分解性ポリマーを含み、これは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)及びこれらのコポリマー等のポリヒドロキシ酸;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ヒドロキシブチル酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ[ラクチド−コ−(ε−カプロラクトン)];ポリ[グリコリド−コ(ε−カプロラクトン)];ポリ(カーボネート)、ポリ(擬アミノ酸)(poly(pseudo amino acids));ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリ(無水物);ポリ(オルトエステル);及びこれらの混合物及びこれらのコポリマーを含んでいてもよいが、これに限られるものではない。
【0104】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリマーは、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、アクチン、α−フェトプロテイン、グロブリン、マクログロブリン、コヒーシン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、オステオカルシン、オステオポンチン、オステオプロテゲリン、又はその他、当業者により認められるであろうもの等のタンパク質を含む。また別の実施形態において、ポリマーは、環状糖、シクロデキストリン、シクロデキストリンの合成誘導体、糖脂質、グリコサミノグリカン、オリゴサッカリド、多糖、例えば、アルギナート、カラギーナン(χ、λ、μ、κ)、キトサン、セルロース、コンドロイチンスルフェート、カードラン、デキストラン、エルシナン、フルセルラン、ガラクトマンナン、ゲラン、グリコーゲン、アラビアゴム、ヘミセルロース、イヌリン、カラヤゴム、レバン、ペクチン、ポルラン(pollulan)、プルラン、ポルフィラン、スクレログルカン、デンプン、トラガカントゴム、ウェラン、キサンタン、キシラン、キシログルカン、ヒアルロン酸、キチン等、又は、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、例えば、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)若しくはポリ(3ヒドロキシ脂肪酸)等、又はこれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0105】
実施形態の1つにおいて、ポリマーは、ポリマーの平滑面が腐食する際に外表面上に露出するカルボン酸基を有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(無水物)、及びポリ(オルトエステル)等の生体内分解性ポリマーを含み、これらもまた用いられてもよい。実施形態の1つにおいて、ポリマーはポリ無水物及びポリエステル等のように、不安定な結合を含む。
【0106】
実施形態の1つにおいて、ポリマーは、その化学的誘導体(例えばアルキル基、アルキレン基等の化学基の置換、付加及び脱離、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者による常法である他の修飾)、例えばタンパク質等の混合物又は炭水化物のみ若しくは炭水化物と合成ポリマーとの組合せを含んでいてもよい。
【0107】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリマーは生分解性である。実施形態の1つにおいて、「生分解性」なる用語又はその文法的変形は、本発明の物質が、それが見出される被験者の生物学的環境中で分解されることを指す。実施形態の1つにおいて、生分解性物質が分解し、その間に酸性産物が、また別の実施形態においては塩基性物質が放出される。実施形態の1つにおいて、生分解には、例えば消化等を介した、生化学プロセスによる、物質のその成分サブユニットへの分解が伴う。実施形態の1つにおいて、生分解は、例えば本発明のポリマー骨格における結合(共有結合又はその他の結合)の切断を伴っていてもよい。また別の実施形態において、生分解は、側鎖内部の結合(共有結合又はその他の結合)又は側鎖を例えばポリマー骨格と結合する結合(共有結合又はその他の結合)の切断を伴っていてもよい。
【0108】
実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴは、架橋剤の使用を介して、ポリマーコーティングと共有結合により結合している。実施形態の1つにおいて、「架橋剤」なる文言は、2原子間の共有結合の形成を促進する試薬を指す。実施形態の1つにおいて、架橋剤はゼロ長架橋剤である。
【0109】
実施形態の1つにおいて、架橋剤は(1エチル3−(3ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1 ethyl 3-(3dimethyl aminopropyl)carbodiimide、EDAC)、N−スルホヒドロキシスクシンアミド(N-Sulfohydroxy succinamide、スルホNHS)、5−ヨードピリミジン、N−カルバルコキシジヒドロキノリン(N-carbalkoxydihydroquinolines)、ピロロキノリンキノン、又はこれらの組合せである。
【0110】
実施形態の1つにおいて、架橋剤は、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート又はジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート))、ホモ二官能性イミドエステル(例えば、アジピミド酸ジメチル(dimethyladipimidate)又はピメリミド酸ジメチル(dimethyl pimelimidate))、スルフヒドリル−反応性架橋剤(例えば、1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン)、ジフルオロベンゼン誘導体(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド)、ビス−エポキシド(例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル)、ヒドラジド(例えば、アジピン酸ジヒドラジド)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、オルトトリジン)、ビス−アルキルハライド、又はこれらの組合せ等のホモ2官能性架橋剤である。
【0111】
実施形態の1つにおいて、架橋剤は、例えば、アミン反応性且つスルフヒドリル反応性の架橋剤(例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、カルボニル反応性且つスルフヒドリル反応性の架橋剤(例えば、4−(4−N−マレイミドフェニル)ブチル酸ヒドラジド、又はこれらの組合せ等のヘテロ2官能性架橋剤である。
【0112】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、例えば、4−アジド−2−ニトロフェニルビオシチン−4−ニトロフェニルエステル、スルホスクシンイミジル−2−[6−ビオチンアミド]−2−(p−アジドベンズアミド)ヘキサノアミド]エチル−1,3’−ジチオプロピオネート(sulfosuccinimidyl-2-[6-biotinamido]-2-(p-azidobenzamido)hexanoamido]ethyl-1,3'-dithiopropionate、スルホ−SBED)、又はこれらの組合せ等の3官能性架橋剤である。
【0113】
また別の実施形態において、架橋剤は酵素である。本発明の実施形態の1つにおいて、架橋剤は、トランスグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ポリメラーゼ、又はリガーゼ、又はこれらの組合せを含む。
【0114】
活性のために利用される架橋剤の濃度の選択は、当業者によって認められるように、ある適用において選択される体積、試薬及びポリマーの関数として様々に変化する。
【0115】
実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴと本発明のポリマーコーティングとの結合は、物理的及び/又は力学的結合を含む。例えば、実施形態の1つにおいて、物理的及び/又は力学的結合は、本明細書に記載のサンゴとポリマーコーティングとの間の物理的及び/又は力学的結合を促進するための、あらゆる手段による浸潤、空気乾燥、架橋剤の使用、熱の適用、真空の適用、凍結乾燥法の適用、凍結の適用、遠心分離の適用、機械力の適用又はこれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0116】
ポリマーコーティング及びその成分の物理的及び/又は力学的及び/又は化学的性質が、軟骨修復を誘導又は亢進するための本発明の使用方法及びそのキットに影響を及ぼしうることは、当業者にとって明らかであろう。
【0117】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーコーティングは、0.01μm〜2.0μmの厚さを有する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、約1.0μmの厚さを有する。実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーコーティングは、10μm〜50μmの厚さを有する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、約10〜25μm、又は約15〜30μm、又は約25〜50μmの厚さを有する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、約50〜80μm、又は約60〜90μm、又は約80〜120μmの厚さを有する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、約100〜150μm、又は約130〜200μm、又は約150〜250μmの厚さを有する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、約200〜350μm、又は約300〜600μm、又は約450〜1000μmの厚さを有する。いくつかの実施形態において、ポリマーコーティングを含む複数のスカフォールドが、修復部位内へと移植され、ここで修復部位に移植される第1のスカフォールドのコーティングの厚さは、第2のスカフォールドのコーティングの厚さと比較して様々に変化してもよい。コーティングの厚さのバリエーションは、本明細書に記載の範囲を反映していてもよい。
【0118】
実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングの厚さは、本発明のスカフォールドの物理的特徴に影響を及ぼす。例えば、ポリマーコーティングの厚さは、本発明のスカフォールドの弾性、抗張力、接着性、又は保持性、又はこれらのあらゆる組合せに影響を及ぼしてもよい。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、本発明のスカフォールドの弾性を増加させる。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、本発明のスカフォールドの抗張力を増加させる。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングの接着性は、間葉系幹細胞、血管、軟骨修復部位の組織、軟骨組織、又は骨組織、又はこれらの組合せとの接着に関する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、本発明のスカフォールドの接着性を減少させる。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、本発明のスカフォールドの接着性を増加させる。ポリマーコーティングが、あるものとの接着性を増加させうる一方で、別のものとの接着性を減少させてもよいことを、当業者は認識するであろう。例えば、実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、間葉系幹細胞との接着性を増加させ、感染体との接着性を減少させる。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングの保持性は、細胞集団の保持に関する。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティング内に保持される細胞集団は、間葉系幹細胞集団である。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティング内に保持される細胞集団は、軟骨細胞集団である。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティング内に保持される細胞集団は、骨芽細胞集団である。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングの保持性は、エフェクター化合物の保持に関する。
【0119】
実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングの厚さは、間葉系幹細胞の増殖及び又は分化に影響を及ぼす。実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングの厚さは、本発明の使用方法の間に、間葉系幹細胞の、本発明のスカフォールドにおける接着、増殖、又は分化、又はこれらの組合せを高めるよう選択される。
【0120】
本発明の実施形態の1つにおいて、スカフォールド、使用方法又はそのキットにおいて使用される間葉系幹細胞は、形質転換されている。
【0121】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマーコーティングは、エフェクター化合物を含む。実施形態の1つにおいて、エフェクター化合物は、本発明のスカフォールドのポリマーコーティングに直接適用される。実施形態の1つにおいて、エフェクター化合物は、本明細書に記載の本発明のスカフォールド内への組込み用のための本発明のキットの成分を含む。実施形態の1つにおいて、エフェクター化合物は、いかなる溶媒に分散させられることもなく、本発明のポリマーコーティングに直接適用される。
【0122】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリマーコーティングは、サイトカイン、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein、BMP)、キレート剤、細胞集団、治療化合物、又は抗生物質、又はこれらのあらゆる組合せを含むエフェクター化合物を含む。
【0123】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールド及び/又はキット及び/又は本発明の方法における使用のためのエフェクター化合物は、とりわけ、サイトカイン、骨形成タンパク質(BMP)、キレート剤、細胞集団、治療化合物、又は抗生物質、又はこれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0124】
実施形態の1つにおいて、「細胞集団」なる文言は、形質移入細胞集団、形質導入細胞集団、形質転換細胞集団、又は被験者から単離された細胞集団、又はこれらの組合せを指す。いくつかの実施形態において、形質移入細胞、形質導入細胞又は形質転換細胞は、本発明のポリマーコーティング、サンゴ、サンゴ粒子又はスカフォールド、又はこれらの組合せ内へと組み込まれてもよい。
【0125】
実施形態の1つにおいて、形質移入細胞、形質導入細胞又は形質転換細胞は、遺伝子操作細胞が本発明のポリマーコーティング、サンゴ、サンゴ粒子、スカフォールド又は材料を含んでもよいように、本発明のポリマーコーティング、サンゴ、サンゴ粒子、スカフォールド、又は材料内へと組み込まれてもよい。
【0126】
実施形態の1つにおいて、本発明の細胞集団は、間葉系幹細胞を含む。実施形態の1つにおいて、間葉系幹細胞は形質転換されている。実施形態の1つにおいて、細胞集団は軟骨修復に有益な細胞を含む。
【0127】
実施形態の1つにおいて、サンゴに前駆細胞が播種される。実施形態の1つにおいて、前駆細胞は間葉系幹細胞である。他の実施形態において、細胞は、間葉系細胞;軟骨細胞;線維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;間質細胞;幹細胞;胚性幹細胞;脂肪組織に由来する前駆細胞;末梢血前駆細胞;成体組織から単離された幹細胞;遺伝的形質転換細胞;又はこれらの組合せであってもよい。また別の実施形態において、前駆細胞は、軟骨細胞と他の細胞との組合せ;骨細胞と他の細胞との組合せ;滑膜細胞と他の細胞との組合せ;骨髄細胞と他の細胞との組合せ;間葉系細胞と他の細胞との組合せ;間質細胞と他の細胞との組合せ;幹細胞と他の細胞との組合せ;胚性幹細胞と他の細胞との組合せ;成体組織から単離された前駆細胞と他の細胞との組合せ;末梢血前駆細胞と他の細胞との組合せ;成体組織から単離された幹細胞と他の細胞との組合せ;及び遺伝的形質転換細胞と他の細胞との組合せを指していてもよい。本発明の実施形態の1つにおいて、本発明の方法における使用のための前駆細胞は、レシピエント哺乳動物(すなわち自家性)又は同系哺乳動物(syngenetic mammal)の臓器組織から調製される。また別の実施形態において、同種及び異種前駆細胞を利用してもよい。
【0128】
本発明の実施形態の1つにおいて、「治療化合物」なる文言は、ペプチド、タンパク質又は核酸、又はこれらの組合せを指す。また別の実施形態において、治療化合物は抗細菌性、抗ウイルス性、抗真菌性又は抗寄生虫性の化合物である。また別の実施形態において、治療化合物は細胞傷害活性又は抗癌活性を有する。また別の実施形態において、治療化合物は酵素、受容体、チャネルタンパク質、ホルモン、サイトカイン又は成長因子である。また別の実施形態において、治療化合物は免疫賦活性である。また別の実施形態において、治療化合物は炎症反応又は免疫反応を抑制する。実施形態の1つにおいて、治療化合物は血管新生促進因子を含む。
【0129】
実施形態の1つにおいて、「治療化合物」なる文言は、必要のある被験者に対して与えられた際に有益な効果を提供する分子を指す。いくつかの例において、分子は、被験者におけるかかる分子の非存在又は存在の減少に代わる形で機能する点において治療性である。実施形態の1つにおいて、分子は、異種タンパク質の発現による内因性ヌル変異体の補完等の場合のように、存在しないタンパク質の発現をコードする核酸である。別の実施形態において、内因性タンパク質が変異し、非機能性タンパク質が生成され、異種機能性タンパク質の発現により補完される。別の実施形態において、異種タンパク質の発現により、低い内因性タンパク質レベルが高まり、結果として所定のタンパク質の発現が累積的に高まる。別の実施形態において、分子は、細胞又は被移植体が機能するための重要要素の発現、又は分泌、又はその他を提供するシグナル伝達カスケードを刺激する。
【0130】
また別の実施形態において、治療化合物は、天然インスリン又は非天然インスリン、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、トリプシノゲン、キモトリプシノゲン、カルボキシペプチダーゼ、ホルモン、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、エラスターゼ、アミラーゼ、血液凝固因子、UDPグルクロニルトランスフェラーゼ、オルニチントランスカルバモイラーゼ、シトクロムp450酵素、アデノシンデアミナーゼ、血清胸腺因子、胸腺液性因子、サイモポエチン、成長ホルモン、ソマトメジン、共刺激因子、抗体、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮成長因子、肝臓赤血球生成因子(へパトポエチン)、肝細胞成長因子、インターロイキン、インターフェロン、ネガティブ成長因子(negative growth factors)、線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子αファミリー、形質転換成長因子βファミリー、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、ソマトスタチン、セロトニン、サブスタンスP、転写因子又はこれらの組合せであってもよい。
【0131】
実施形態の1つにおいて、本発明のキレート剤は、Ca2+キレート剤を含む。実施形態の1つにおいて、カルシウムキレート剤はEDTAである。実施形態の1つにおいて、キレート剤は以下のものを含んでいてもよい:エチレンジアミン−N,N,N’,N’,−四酢酸(ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid、EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニルエチレングリコール)エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(O,O'-bis(2-aminophenylethyleneglycol)ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid、BAPTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(trans-l,2-diaminocyclohexane-ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid、CyDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(1,3-diamino-2-hydroxypropane-ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid、DPTA−OH)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(diethylenetriamine-N,N,N',N",N"-pentaacetic acid、DPTA)、エチレンジアミン−N,N’−ジプロピオン酸ジヒドロクロリド(ethylenediamine-N,N'-dipropionic acid dihydrochloride、EDDP)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)半水化物(ethylenediamine-N,N'-bis(methylenephosphonic acid) hemihydrate、EDDPO)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediamine-N,N',N'-triacetic acid、EDTA−OH)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(ethylenediamine-N,N,N',N'-tetrakis (methylenephosphonic acid)、EDTPO)、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸(O,O'-bis(2-aminoethyl) ethyleneglycol tetraacetic acid、EGTA)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(N,N'-bis(2-hydroxybenzyl)ethylenediamine-N,N'-diacetic acid、HBED)、1,6−ヘキサメチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(1,6-hexamethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid、HDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(N-(2-hydroxyethyl)iminodiacetic acid、HIDA)、イミノ二酢酸(iminodiacetic acid、IDA)、1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸(1,2-diaminopropane-N,N,N',N'-tetraacetic acid、メチル−EDTA)、ニトリロ三酢酸(nitrilotriacetic acid、NTA)、ニトリロトリプロピオン酸(nitrilotripropionic acid、NTP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)トリナトリウム塩(nitrilotris(methylenephosphonic acid)trisodium salt、NTPO)、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン(N,N,N',N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine、TPEN)、及びトリエチレンテトラアミン−N,N,N’,N”,N”−六酢酸(triethylenetetramine-N,N,N',N",N"-hexaacetic acid、TTHA)、rhod−2、DMSA、FLUO 3、FURA 2、INDO 1、QUIN 2、又は当技術分野において知られている他のキレート剤、又はこれらの組合せ。
【0132】
実施形態の1つにおいて、エフェクター化合物は、抗蠕虫剤、抗ヒスタミン剤、免疫調節剤、抗凝固剤、界面活性剤、気管支拡張剤、抗体、ベータアドレナリン受容体阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、ace阻害剤、成長因子、ホルモン、DNA、siRNA、又はベクター又はこれらのあらゆる組合せを含む。
【0133】
実施形態の1つにおいて、「エフェクター化合物」なる文言は、本発明のスカフォールド、キット及び/又は方法に適用された際に、疾患、障害、又は症状の治療、予防、阻害、抑制、遅延又は感染発生率の減少に有用な特定の目的又は適用を有する、あらゆる薬剤又は化合物を指す。本発明のエフェクター化合物は、実施形態の1つにおいて、この化合物をイメージングする能力によってのみもたらされる所望の効果を生み出す。いくつかの実施形態において、エフェクター化合物は、化合物が存在する部位のイメージングに有用であってもよいが、かかる能力は化合物の使用の目的又は選択にとって二次的である。
【0134】
本発明の実施形態の1つにおいて、「エフェクター化合物」なる用語は、本明細書において言及された際には、「薬品」及び「薬剤」なる用語をも含むものと理解されるべきであり、本発明のスカフォールド及び/又はキット内に組み込むこと、或いはそれらにおいて使用されることが望ましい分子を表す。実施形態の1つにおいて、薬剤は、本発明のスカフォールド及び/又はキット内に直接組み込まれる。また別の実施形態において、薬剤は、本発明のポリマーコーティング、サンゴ、又はサンゴ粒子、及び/又は本発明のキットとの物理的相互作用によるか、或いは、これらへの結合によって、本発明のスカフォールド及び/又はキット内に組み込まれる。
【0135】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールド及び/又はキット及び/又は本発明の方法における使用のための化合物は、とりわけ、抗体若しくは抗体断片、ペプチド、オリゴヌクレオチド、生物学的標的のためのリガンド、免疫抱合体、化学模倣官能基(chemomimetic functional group)、糖脂質、標識剤、酵素、金属イオンキレート、酵素補助因子、細胞傷害性化合物、殺菌性化合物、静菌性化合物、殺真菌性化合物、静真菌性化合物、化学療法剤、成長因子、ホルモン、サイトカイン、トキシン、プロドラッグ、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、放射性物質、又はターゲティング成分(targeting moiety)、又はこれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0136】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールド及び/又はキット及び/又は本発明の方法は、オリゴヌクレオチド、核酸、又はベクターを含むか、或いは利用する。いくつかの実施形態において、「オリゴヌクレオチド」なる用語は、「核酸」なる用語と互換可能であり、原核生物配列、真核生物mRNA、真核生物mRNAに由来するcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNAに由来するゲノムDNA配列、及び合成DNA配列までも含んでいてよいが、これに限られない分子を指していてもよい。この用語はまた、DNA及びRNAのあらゆる既知の塩基類似体を含む配列を指す。
【0137】
本発明のスカフォールド及び/又はキット及び/又は本発明の使用方法は、実施形態の1つにおいて核酸を含んでいてもよく、或いはまた別の実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールド及び/又はキット及び/又は本発明の使用方法は、特定のベクターの一部としての核酸の送達を含んでいてもよい。実施形態の1つにおいて、所望の配列をコードするポリヌクレオチド断片が、形質導入/形質転換哺乳動物細胞に適し、形質導入細胞内で組換え産物を発現させるのに適した市販の発現ベクター系内へと連結されうる。かかる市販のベクター系が、存在しているプロモーター配列又はエンハンサー配列を置換するためか、複製するためか、或いは変異させるためか、且つ/或いは、例えば、さらなる選択マーカーをコードする配列又はレポーターポリペプチドをコードする配列等のあらゆるさらなるポリヌクレオチド配列を導入するために、常法である組換え技術を介して容易に修正されうることが認められるだろう。
【0138】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールド及び/又はキット及び/又は本発明の方法は、細胞集団を含むか、或いは利用する。実施形態の1つにおいて、細胞集団は間葉系幹細胞集団である。実施形態の1つにおいて、間葉系幹細胞集団は、形質転換間葉系幹細胞集団を含む。実施形態の1つにおいて、細胞は、軟骨細胞;線維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;間質細胞;幹細胞;胚性幹細胞;脂肪組織に由来する前駆細胞;末梢血前駆細胞;成体組織より単離された幹細胞;遺伝的形質転換細胞;又はこれらの組合せであってもよい。また別の実施形態において、前駆細胞は、軟骨細胞と他の細胞との組合せ;骨細胞と他の細胞との組合せ;滑膜細胞と他の細胞との組合せ;骨髄細胞と他の細胞との組合せ;間葉系細胞と他の細胞との組合せ;間質細胞と他の細胞との組合せ;幹細胞と他の細胞との組合せ;胚性幹細胞と他の細胞との組合せ;成体組織から単離された前駆細胞と他の細胞との組合せ;末梢血前駆細胞と他の細胞との組合せ;成体組織から単離された幹細胞と他の細胞との組合せ;及び遺伝的形質転換細胞と他の細胞との組合せを指していてもよい。本発明の実施形態の1つにおいて、本発明の方法における使用のための前駆細胞は、レシピエント哺乳動物(すなわち自家性)又は同系哺乳動物の臓器組織から調製される。また別の実施形態において、同種及び異種前駆細胞を利用してもよい。
【0139】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、幹細胞又は前駆細胞(progenitor cells)又は前駆細胞(precursor cells)を組み込む。かかる細胞は、直接哺乳動物ドナー、例えば患者自身の細胞から、ドナー由来の細胞の培養物から、或いは樹立細胞培養株から得られる。いくつかの実施形態において、哺乳動物はマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、類人猿又はヒトである。同じ種の細胞及び/又は同じ免疫学的プロファイルの細胞が、患者から或いは近縁者から生検により得られる。その後、標準的細胞培養技術及び条件を用いて、細胞を培養液中で集密的になるまで成長させ、必要なときに使用する。細胞を、特定の適用のために十分な数の細胞が得られるまで培養してもよい。
【0140】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、軟骨修復に寄与しうるあらゆる細胞を組み込む。いくつかの実施形態において、かかる細胞は自家移植片であり、細胞を本発明のスカフォールド上に播種するため、細胞がエクスビボで培養され、かかる播種されたスカフォールドが被験者へと移植される。
【0141】
いくつかの実施形態において、かかる細胞は同種移植片又は異種移植片であってもよく、これらは本発明のスカフォールド内に組み込まれ、修復部位内に移植される。
【0142】
実施形態の1つにおいて、本発明のサンゴは、サンゴに細胞を播種するのに十分な期間にわたるサンゴのインビトロ培養に由来する細胞集団を含む。実施形態の1つにおいて、細胞集団は間葉系幹細胞集団である。実施形態の1つにおいて、細胞は、軟骨細胞;線維軟骨細胞;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;間質細胞;幹細胞;胚性幹細胞;脂肪組織に由来する前駆細胞;末梢血前駆細胞;成体組織より単離された幹細胞;遺伝的形質転換細胞;又はこれらの組合せであってもよい。また別の実施形態において、前駆細胞は、軟骨細胞と他の細胞との組合せ;骨細胞と他の細胞との組合せ;滑膜細胞と他の細胞との組合せ;骨髄細胞と他の細胞との組合せ;間葉系細胞と他の細胞との組合せ;間質細胞と他の細胞との組合せ;幹細胞と他の細胞との組合せ;胚性幹細胞と他の細胞との組合せ;成体組織から単離された前駆細胞と他の細胞との組合せ;末梢血前駆細胞と他の細胞との組合せ;成体組織から単離された幹細胞と他の細胞との組合せ;及び遺伝的形質転換細胞と他の細胞との組合せを指していてもよい。本発明の実施形態の1つにおいて、本発明の方法における使用のための前駆細胞は、レシピエント哺乳動物(すなわち自家性)又は同系哺乳動物の臓器組織から調製される。また別の実施形態において、同種及び異種前駆細胞を利用してもよい。実施形態の1つにおいて、インビトロで播種された間葉系幹細胞は形質転換されている。実施形態の1つにおいて、細胞集団は、軟骨修復に有益な細胞集団を含む。実施形態の1つにおいて、培養液はキレート剤を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、培養液中のキレート剤はカルシウムキレート剤を含む。
【0143】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復を誘導又は亢進し、ここでこの方法は被験者の軟骨修復部位内に本発明のスカフォールドを移植することを含み、ここでスカフォールドの領域は骨を貫通し、結果としてこの領域は軟骨修復部位に近接する骨髄内に挿入される。
【0144】
実施形態の1つにおいて、「軟骨修復」なる文言は、軟骨欠損をより健康な状態へと回復させることを指す。実施形態の1つにおいて、軟骨の回復は、軟骨組織の再生をもたらす。実施形態の1つにおいて、軟骨の回復は、部分的関節軟骨欠損又は全層関節軟骨欠損の再生をもたらす。実施形態の1つにおいて、軟骨の回復は、軟骨修復部位での軟骨組織の部分的又は完全な再生をもたらす。実施形態の1つにおいて、軟骨修復は、損傷又は欠損した骨組織の再生/修復をもたらしてもよい。実施形態の1つにおいて、軟骨修復は、関節(例えば、膝、肘、股関節、肩、足首)、耳、鼻、又は気管の軟骨欠損を回復させることを含む。
【0145】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復の誘導及び亢進を含み、ここで本発明のスカフォールドの軟骨修復部位内への移植は、軟骨修復に影響を及ぼし、それを増進する。
【0146】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、スカフォールドの領域が間葉系幹細胞の豊富な部位に近接するように、スカフォールドの領域を骨髄内に安定的に移植することにより、軟骨修復を誘導又は亢進する。
【0147】
本発明の方法が本発明のスカフォールドを軟骨修復部位内に移植し、ここでスカフォールドの領域が骨髄内に挿入されるがゆえに、スカフォールドが骨髄組織環境と軟骨修復部位とを確実に接続するということを、当業者は認識するであろう。
【0148】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで骨髄内に挿入される領域は細胞集団を骨髄からスカフォールドへと誘引し、このことにより軟骨修復に影響を及ぼすか、或いはそれを増進する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで骨髄内に挿入される領域は、間葉系幹細胞を骨髄から誘引する。
【0149】
本発明のサンゴスカフォールドの3−D構造及び化学組成は、スカフォールドを軟骨修復部位内に厳密に配置し固定することと、軟骨修復を誘導又は亢進する細胞集団の細胞認識、接着、増殖及び分化の両方にとって非常に重要である。下に記載の実施例3は、スカフォールドが強制的に軟骨修復部位の組織と接触し、軟骨修復部位に近接する骨髄内に安定的に移植されるよう、スカフォールドを軟骨修復部位内に移植することによって、間葉系幹細胞がスカフォールドへと誘引され、さらなる成長促進因子又はその他の誘導物質の一切の必要なしに、これら間葉系幹細胞の軟骨組織内における接着、成長、増殖及び分化が補助されることを示す。
【0150】
したがって、実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで被験者への本発明のスカフォールドの移植は、細胞集団のスカフォールド上における接着、増殖又は分化、又はこれらの組合せを促進する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで被験者への本発明のスカフォールドの移植は、骨髄からの間葉系幹細胞の接着、増殖又は分化、又はこれらの組合せを促進する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法に利用される本発明のスカフォールドは、被験者に移植される前に播種された細胞集団を含む。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで被験者への本発明のスカフォールドの移植は、形質転換間葉系幹細胞の接着、増殖又は分化、又はこれらの組合せを促進する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで被験者への本発明のスカフォールドの移植は、血管形成を促進する。
【0151】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで、細胞集団が接着、成長、増殖又は分化、又はこれらの組合せのための最大表面積を有するように、本発明のスカフォールドの露出表面は最大化される。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨修復を誘導又は亢進し、ここで、本発明のスカフォールドと軟骨修復部位との間で最大の接触がなされるように、本発明のスカフォールドの露出表面は最大化される。
【0152】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法に利用されるスカフォールドは、スカフォールドの被験者への移植が軟骨修復を誘導又は亢進するように、サンゴスカフォールドを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ含む。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、スカフォールドの領域が骨髄内への安定的挿入を含むように、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位内に配置し固定する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、サンゴの深さ及び角度により、結果としてスカフォールドの領域が骨髄内への安定的挿入を含むように、本発明のサンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に配置することを含む。実施形態の1つにおいて、本発明の方法において利用されるスカフォールドは、スカフォールドの移植により本発明のスカフォールドと軟骨修復部位との間の接触面積が最大化されるように、サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定する領域を少なくとも1つ含む。
【0153】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法において利用されるスカフォールドは、図4に示されるような、円柱、円錐、長方形棒、皿、円盤、角錐、粒、球、立方体、鋲、又はネジを含む形状を含む。
【0154】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法において利用されるスカフォールドは、軟骨修復又は軟骨再生プロセスを補助する、或いは他の所望の治療活性を有する、他の治療有効物質の吸収又は結合、及び送達のために使用されてもよい。かかる物質には、例を挙げれば、形成された産物又は構造の孔空洞部内に導入されうる既知の合成又は半合成抗生物質、又は形質転換成長因子等の成長因子、又は骨成長を補助又は促進するために使用されうる骨形態形成タンパク質が含まれる。
【0155】
本明細書における実施形態のいずれにおいても、本発明の方法における使用のためのスカフォールドは、例えば、抗酸化剤、成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、保存料、鎮痛剤、他の治療物質、及び賦形剤等の他の化合物をさらに含んでいてもよく、或いはそれらと共に移植されてもよい。実施形態の1つにおいて、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤に加えて投与されてもよい成長因子の例には、上皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)、形質転換成長因子−アルファ(transforming growth factor-alpha、TGF−α)、形質転換成長因子−ベータ(transforming growth factor-beta、TGF−β)、ヒト内皮細胞成長因子(human endothelial cell growth factor、ECGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony stimulating factor、GM−CSF)、骨形態形成タンパク質(bone morphogenetic protein、BMP)、神経成長因子(nerve growth factor、NGF)、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor、FGF)、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor、IGF)、軟骨由来形態形成タンパク質(cartilage derived morphogenetic protein、CDMP)、血小板由来成長因子(platelet derived growth factor、PDGF)、又はこれらのあらゆる組合せが含まれるが、これに限られるものではない。抗生物質の例には、抗微生物剤及び抗菌剤が含まれる。
【0156】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨欠損又は軟骨障害に苦しむ被験者への本発明のスカフォールドの移植を含む。いくつかの実施形態において、スカフォールドは、最小侵襲性の術式、例えば関節鏡手術を介する軟骨欠損/骨欠損への移植に特に適している。
【0157】
実施形態の1つにおいて、「移植」なる用語は、本発明のスカフォールドを被験者の生体部位内に挿入し固定することを指し、この部位には軟骨修復部位が含まれる。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、スカフォールドの領域が骨髄内への安定的挿入を含むように、本発明のスカフォールドを最適な形で移植する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、スカフォールドの領域が間葉系幹細胞、栄養分、血管、又はエフェクター化合物、又はこれらのあらゆる組合せへと到達できるように、スカフォールドを移植する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、本発明のスカフォールドを被験者に移植することを含み、ここでこの方法は、スカフォールドの領域が骨及び/又は他の領域を貫通して骨髄に到達するよう、骨及び/又は他の組織の領域の除去をもたらす。
【0158】
軟骨修復部位内へのスカフォールドの移植を包含する本発明の方法が、軟骨修復部位での準備を必要としてもよいということを、当技術分野に通じた臨床専門家は認識するであろう。これらの準備は、スカフォールドの移植前に或いは移植と同時になされるものであってもよい。例えば、軟骨修復部位に近接する骨組織及び/又は他の組織は、最初に骨髄に達するように穿孔され、本発明の方法において使用されるスカフォールドに適した形状の経路を創出してもよい。その後、スカフォールドは、スカフォールドの領域が穿孔された骨組織を貫通して骨髄内へと延びるように、その部位内に移植される。或いは、スカフォールドは、骨組織又は他の組織、又はこれらの組合せを貫通できる本発明のツールに取り付けられてもよい。この場合、ツールが骨組織を貫通して骨髄に達する際に、スカフォールドの領域が骨髄内へと貫通するよう、取り付けられたスカフォールドが同時に移植される。
【0159】
いくつかの実施形態において、スカフォールド又は複数のスカフォールドの修復部位内への移植の後、スカフォールドは、組込み及び最適な軟骨修復を最適化するよう処理される。いくつかの実施形態において、かかる処理には、最適な修復のための切断、研磨又はさもなければスカフォールド若しくは複数のスカフォールドの表面の平滑化が含まれてもよい。
【0160】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、ヒト被験者へのスカフォールドの移植を含む。
【0161】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、非ヒト哺乳動物被験体へのスカフォールドの移植を含む。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、ウマ、競走馬、ウシ、去勢ウシ、ブタ、ヒツジ、家畜、ウサギ、ペット、イヌ、サル、類人猿、トリ又はネコへのスカフォールドの移植を含む。
【0162】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨欠損又は軟骨障害の修復の誘導又は亢進のために利用される。実施形態の1つにおいて、軟骨欠損は、外傷、裂傷、スポーツ損傷、全層関節軟骨欠損若しくは部分的関節軟骨欠損、関節欠損、虚血壊死、骨軟骨欠損、又は反復運動損傷の結果としてもたらされる(例えば、十字靭帯損傷による二次損傷)。実施形態の1つにおいて、軟骨障害は、軟骨又は軟骨下骨の疾患を含む。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、変形性関節症、リウマチ性関節症、無菌壊死、虚血壊死、骨軟骨欠損、離断性骨軟骨症、関節軟骨損傷、膝蓋軟骨軟化症、軟骨肉腫、頭部及び頸部軟骨肉腫(chondrosarcoma- head and neck)、肋軟骨炎、内軟骨種、強直母趾、股関節唇断裂、離断性骨軟骨症、半月板損傷、再発性多発性軟骨炎、イヌ関節炎、第4鰓弓欠損又はカリフラワー耳における軟骨修復を誘導又は亢進する。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、筋肉、滑液包(滑膜)、腱、及び線維組織を含めた関節又は関節に関連する構造のみならず、成長板、半月板組織(meniscal system)、及び椎間板をも含めた身体の結合組織の変性又は代謝異常により、少なくともその一部が特徴付けられる障害を含む、変性軟骨障害(degenerative cartilagenous disorders)における軟骨修復を誘導又は亢進する。
【0163】
実施形態の1つにおいて、スカフォールド及び/又は本発明のツールの少なくとも1つを利用して本発明の方法により修復される軟骨欠損又は軟骨障害は、被験者の関節(例えば、膝、肘、足首、肩又は股関節)、回旋腱板(rotator cup)、耳、鼻、気管、骨盤、又は被験者内に見出される他のあらゆる軟骨修復部位を含む。
【0164】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法及び/又はキットにおいて用いられる、本発明のスカフォールドの3−D形状及び化学組成は、治療される症状の精確な性質、重症度、被験者の年齢及び全般的な身体的状態、体重、及び個別の被験者の反応等の要因に基づき、当技術分野に通じた臨床専門家により決定されるであろう。
【0165】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法の間の本発明のスカフォールドの厳密な配置は、治療される症状の精確な性質、重症度、被験者の年齢及び全般的な身体的状態、体重、及び個別の被験者の反応等の要因に基づき、当技術分野に通じた臨床専門家により決定されるだろう。
【0166】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、軟骨組織修復部位の検査により評価され、ここで評価は、組織学的検査、触診、内視鏡検査、関節鏡検査、又はX線写真、コンピュータX線デンシトメトリー、コンピュータ蛍光デンシトメトリー、磁気共鳴映像法を含むイメージング技術、又は当技術分野において知られている他の方法、又はこれらのあらゆる組合せによる。
【0167】
実施形態の1つにおいて、本発明は、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位で最適な角度へと導くツール、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位で最適な角度へと導くツール、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位へと送達するツール、本発明のスカフォールドを、スカフォールドが骨を貫通して軟骨修復部位に近接する骨髄内へ挿入されるよう、前記軟骨修復部位に挿入するツール、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位に放出するツール、又は、これらの組合せを提供できるツールを含み、前記ツールがスカフォールドの軟骨修復部位内への配置後にスカフォールドから分離されうる、軟骨修復を補助する器具を提供する。
【0168】
実施形態の1つにおいて、本発明の器具は少なくとも1つのツールを含む。実施例4は、本発明が目論むツールのうちのいくつかの例を提供する。これらツールは、実施形態の1つにおいて、単一のツールが、軟骨欠損/骨欠損への経路の創出及びそこへのスカフォールドの挿入に有用な2つの要素を含んでいてもよいという意味で多用途であり、或いはいくつかの実施形態において、前記ツールは前記のことを達成するために、様々なアダプタ先端部を含む。
【0169】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、本発明のスカフォールドの移植の軟骨修復部位での準備が、組織を貫通して骨髄に達するように穿孔することを含むように、本発明のツールを利用する。実施形態の1つにおいて、穿孔される組織は、軟骨組織、骨組織、結合組織、筋肉組織又は骨髄組織又はこれらのあらゆる組合せである。当業者は、ツールの選択が貫通される組織に依存することを認識するであろう。
【0170】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、本発明の器具を利用し、ここで本発明のスカフォールドの移植は、サンゴを最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置し固定することを含む。他に類を見ず、本発明の実施形態の1つを代表するように、本発明のツールは、例えば感染の危険性を最小限にするための、所望の角度での、或いは関節鏡条件下でのスカフォールドの移植を可能にする。
【0171】
いくつかの実施形態において、かかるツールは、修復部位内へのスカフォールドの挿入のためのツールを含んでいてもよく、このツールは、スカフォールドを保持して部位内に最適な形で配置するために特に構成されている。いくつかの実施形態において、軟骨修復部位又は複数の軟骨修復部位内への多様なスカフォールドの移植を可能にするため、異なる大きさ又は形のスカフォールド用の複数のツールが、本発明のキット内に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のキットは、最適な軟骨修復のための平滑な最適表面をもたらすために、修復部位内への挿入後にスカフォールドを処理するツールを含む。いくつかの実施形態において、本発明のキットは、修復部位と間葉系幹細胞の供給源との間に空隙を創出するためのツールをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、キットは、一般的なツール内に挿入され、かかる空隙をもたらす部品を含んでいてもよく、例えば、スカフォールドが軟骨修復部位へと挿入され、このときにスカフォールド又は隣接する複数のスカフォールドの少なくとも一部が軟骨修復部位内へと挿入されて下にある骨髄に達し、軟骨修復をもたらすために間葉系幹細胞を移動させるための供給源として役立つように、容易且つ適切に近くの骨を貫通して穿孔する大きさ及び深さのドリルビットが、本発明のキットに含まれる。
【0172】
骨髄に達するよう組織を貫通して穿孔することにより創出された経路が、本発明のスカフォールドが骨髄に達し、安定的にこの部位に移植されることを可能にするようなものであることを、当業者は認識するであろう。スカフォールドは、関節が形成される際に除去されないように、軟骨修復部位内で十分安定していなければならない。穿孔される経路の範囲は、スカフォールドは安定して保持されるが、周辺組織にさらなる損傷を加えるほど広範なものではないようなものであることもまた、当技術分野に通じた臨床専門家は認識するであろう。
【0173】
軟骨修復部位の準備は、損傷軟骨組織又は損傷骨組織、又はこれらの組合せの除去を伴っていてもよい。したがって、実施形態の1つにおいて、本発明のツールは、修復部位の損傷組織又は修復部位に近接する損傷組織が除去されるように経路を穿孔する。
【0174】
実施形態の1つにおいて、本発明のスカフォールドは、本発明の器具により提供されるツールに適合する領域を含む。実施形態の1つにおいて、ツールに適合する領域は、適合領域を含むようにサンゴの単一断片を切り出すことを含む。実施形態の1つにおいて、ツールに適合する領域は、ポリマーコーティングにおいて形成された領域を含む。
【0175】
本発明のツールは、したがって、同時進行でスカフォールドが辿る経路を準備し、スカフォールドが移植されるよう導き、且つスカフォールドを移植してもよい。同時進行で部位の準備及びスカフォールドの移植を行うことにより、被験者が受ける侵襲性手術の時間が短縮されうる。
【0176】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドの軟骨修復部位内への配置後に、スカフォールドの領域はツールから分離する。実施形態の1つにおいて、領域はツールから分離し、ここでツールのスカフォールドからの分離は、UV光活性化分離、レーザー活性化分離、ねじり依存分離(torsion-dependent separation)又は化学的活性化分離又はこれらの組合せを含む。実施形態の1つにおいて、ツールのスカフォールドからの分離は、軟骨修復の誘導又は亢進のために修復部位内に厳密に配置されたスカフォールドを後に残す。分離の機序もまた、修復部位へのさらなる外傷を引き起こすことはないはずである。
【0177】
実施形態の1つにおいて、スカフォールドからのツールの分離により、結果としてスカフォールドは、最適な深さ及び角度で軟骨修復部位内に厳密に配置され固定される。実施形態の1つにおいて、ツールのスカフォールドからの分離により、結果としてスカフォールドは被験者の軟骨修復部位内へと移植され、ここでスカフォールドの領域が骨を貫通することにより、結果として領域が軟骨修復部位に近接する骨髄内に挿入される。
【0178】
実施形態の1つにおいて、本発明は、本発明のスカフォールド、本発明のツールのうち少なくとも1つ、及び組織修復におけるスカフォールドの利用のための指示説明書を含む組織修復用キットを提供する。
【0179】
当技術分野に通じた臨床専門家によるキットの選択が、治療される症状の精確な性質、重症度、被験者の年齢及び全般的な身体的状態、体重、及び個別の被験者の反応等の要因に依存するであろうことを、当業者は認識するであろう。
【0180】
したがって、実施形態の1つにおいて、本発明のキットに含まれるスカフォールドは、異なる大きさ、形又は化学組成、又はこれらの組合せを含む。実施形態の1つにおいて、本発明は、本発明のスカフォールド、本発明のツールのうち少なくとも1つ、及び軟骨修復におけるスカフォールドの利用のための指示説明書を含む軟骨修復用キットを提供する。
【0181】
実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、被験者の軟骨修復部位の修復のための本発明のツールのうちの少なくとも1つと共に、本発明のスカフォールドを利用し、ここでツールは、軟骨修復部位内の場所又は軟骨修復部位内に近接する場所で穿孔し、骨髄への経路を提供するために用いられ、しかるのちにこのツールは、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位内に厳密に移植し、ここでスカフォールドの領域は骨髄内へと貫通し、ここで軟骨組織の再生又骨組織の再生又はこれらの組合せが生じる。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、穿孔の際に形成される本発明のスカフォールドを利用してもよい。実施形態の1つにおいて、本発明の方法は、穿孔すると同時に、本発明のスカフォールドを軟骨修復部位内に移植してもよい。
【0182】
これまで記述された本発明の3−Dサンゴスカフォールドの構造的特性及び化学的特性は、サンゴ粒子を包むポリマー鋳型から形成されるスカフォールドにおいて見出されてもよい。したがって、実施形態の1つにおいて、組織修復のための本発明のスカフォールドは、サンゴ粒子を包むポリマー鋳型を含む。
【0183】
実施形態の1つにおいて、ポリマー鋳型は柔軟性ポリマー鋳型を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、「柔軟性」なる用語は、組織修復部位での要件に適応するポリマー鋳型の能力を指す。実施形態の1つにおいて、ポリマー鋳型は、組織修復部位内への移植の際に柔軟性ポリマー鋳型を含み、時間を経て硬化する。実施形態の1つにおいて、ポリマー鋳型は、スカフォールドの耐用期間中は柔軟であり続ける。
【0184】
実施形態の1つにおいて、柔軟性ポリマー鋳型は、スカフォールドと組織修復部位との間の接触が最大化されるように、組織修復部位での要件に適応する。実施形態の1つにおいて、柔軟性ポリマー鋳型は、スカフォールドの領域がポリマーエンベロープを最適な深さ及び角度で組織修復部位内に配置し固定するように、組織修復部位での要件に適応する。実施形態の1つにおいて、柔軟性ポリマー鋳型は、スカフォールドの領域が骨を貫通し、結果として領域が組織修復部位に近接する骨髄内に挿入されるように、組織修復部位での要件に適応する。
【0185】
実施形態の1つにおいて、ポリマー鋳型は、硬質性ポリマー鋳型を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、「硬質性」なる用語は、固定された枠組みを有するポリマーエンベロープを指す。本発明の実施形態の1つにおいて、硬質性ポリマーエンベロープは、上で列挙したサンゴの単一断片の形状の特徴の全てを含んでいてもよい。
【0186】
実施形態の1つにおいて、ポリマー鋳型は、移植部位に接触するスカフォールドの表面積を最大化する。サンゴの単一断片から形成されるスカフォールドと同様に、サンゴ粒子を包むポリマー鋳型の表面積の最大化により、組織修復部位で間葉系幹細胞集団が接触可能な面積が最大化されることを、当業者は認識するであろう。実施形態の1つにおいて、間葉系幹細胞集団及び/又は軟骨細胞及び/又は骨芽細胞が、最大表面積に接触可能である。
【0187】
実施形態の1つにおいて、ポリマー鋳型に包まれるサンゴ粒子は、1〜10μm又は5〜20μm又は10〜50μmの大きさまで微粒子化される。
【0188】
実施形態の1つにおいて、サンゴ粒子は、サンゴの単一断片を含むスカフォールドのために用いられるのと同じ原料のサンゴを含む。
【0189】
実施形態の1つにおいて、本発明のポリマー鋳型は、サンゴの単一断片のポリマーコーティングのために用いられるのと同じ原料のポリマーを含む。
【0190】
いくつかの実施形態において、「含む」なる用語又はその文法的変形は、本発明の指示された要素を包含していることを指し、医薬業界において知られている他の活性薬剤、及び医薬的に許容可能な担体、賦形剤、軟化剤(emollients)、安定剤等を包含していることをも指す。
【0191】
実施形態の1つにおいて、本発明は、組合せ調製物を提供する。実施形態の1つにおいて、「組合せ調製物」なる用語は特に、上で定義された組合せのパートナーが、独立に或いは異なる組合せで、すなわち、同時に、同時進行で、別々に、或いは連続的に用いられうるという意味で、「各部からなるキット」を定義する。
[実施例]
【実施例1】
【0192】
サンゴスカフォールドの調製
サンゴは、150μmの平均孔サイズ及び1.7g/cmの密度を有するヒドロサンゴであるアナサンゴモドキから収集する。この材料から、所望の形の3次元(3−D)サンゴスカフォールド移植物を、まずサンゴを切り出し、研磨することにより調製する。このことは、望ましくない尖った先端部を有しない形成されたサンゴフォームを提供する。この機械的な処理の後、サンゴを4%HCl中に2度、それぞれ15分間浸し、その後、4M NaOHで処理して捕捉された粒子、デブリ及び有機残渣を除去する。その後サンゴを外科的処置の前にオートクレーブし、ガス滅菌により処理する。
【0193】
サンゴスカフォールド移植物を、成体のヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌ及びサルの内側大腿顆の荷重領域に穿孔により生じさせた骨軟骨欠損内へと挿入する。移植物を欠損に緊密に適合させ、長さが余った部分は関節軟骨の面で切り取る。このようにして、サンゴスカフォールドを2種の組織、軟骨及び軟骨下骨を通して移植する。
【0194】
動物被験体を、関節鏡手術後に長期にわたり検査し観察する。それぞれの動物の治療しなかった膝を、これら手術後に比較のための対照として用いる。適切な間隔を置いた後、動物を屠殺し、剖検を行う。軟骨修復部位を検査するための適切な期間は、手術後4週間、8週間、及び16週間である。この際、関節面を写真撮影し、修復部位から組織を除去して組織学的観察の準備をする。具体的には、移植領域をなす区画及び周辺組織を、鋭利なのこぎりを用いて除去する。この材料をさらに、22%クエン酸ナトリウム緩衝ギ酸中で徐々に脱灰することと、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて5mm厚横断面を染色することとを含む常法の組織学的検査にかける。
【実施例2】
【0195】
部分的又は非連続的ポリマーコーティングを含有するサンゴスカフォールド
材料と方法
1%、3%、5%及び10%ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)を含有するヒドロゲルをさらに含むサンゴスカフォールドを調製した。
【0196】
1%、3%、5%及び10%ヒアルロン酸(HA)溶液を調製し、攪拌器で一晩かけて室温で混合した。結果として生じたゲルを、緊密に適合させたサンゴスカフォールド/栓を含む漏斗に適用し、ゲルと接触するスカフォールドの量を様々に変化させた。その後、この漏斗系を遠心分離器で10〜20分間10000RPMで回転させ、その後、スカフォールドを50℃で30分間加熱し、−80℃で2時間凍結し、30〜40mtorr、−100℃で一晩かけて凍結乾燥させた。
【0197】
結果
図5Aは、前述の漏斗内へのスカフォールド挿入と緊密な適合とを示す写真であり、このことにより、図5Bに示されるように漏斗に適用されるものに対するスカフォールドの一部の曝露がもたらされ、ここではHAヒドロゲルが漏斗に適用される。図5Bでは、スカフォールドをHAヒドロゲルと共に含む漏斗を回転させることにより、スカフォールド内へのヒドロゲルの十分な組込みがもたらされている。
【0198】
漏斗を回転させる時間及び速度を様々に変化させることにより、ゲル中のHAの浸入度を制御した。図5Eは、前述の器具を7分間回転させた際にスカフォールド内への浸入度が比較的低いことを示し、図5Dは、図5Cに示される20分間に対して、器具を10分間回転させた際に得られた浸入度を示す。見てとれる染色はサフラニンOであり、スカフォールド内に組み込まれたヒアルロン酸を染色する。
【0199】
凍結乾燥されたスカフォールドが、使用のために望ましくありうる。図6及び図7は、サフラニンOで染色された上層及び染色のない低層を含む、凍結乾燥されたスカフォールドを示し、スカフォールド上層内へのHAの組込みを示している。本発明のいくつかの実施形態において、かかるスカフォールドが望ましく、このことによりHAに富んだ層が軟骨に近接して配置され、HAを欠いた層又はHAに乏しい層が骨に近接して、且つ/或いは、骨髄内に配置される。図7はさらに、オーブン乾燥されたスカフォールドと、利用された乾燥法の結果としてのHA分布の違いとを示す。
【0200】
1%(図8A)及び3%(図8B)HAスカフォールドの光学顕微鏡による評価は、スカフォールドの露出表面をコートする、斑点状に分散したHA粒子8−10を示す。例えば、1%ヒドロゲルスカフォールド調製による平均コーティング面積は約2.3平方マイクロメートルであり、一方で3%ヒドロゲルスカフォールドにおける平均コーティング面積は、3.4平方マイクロメートルである(約50〜70の斑点を評価した)。
【実施例3】
【0201】
骨軟骨欠損の回復
直径3.5mm、長さ6mmの丸味を帯びた移植物を用いて、成体のイヌで骨軟骨欠損の回復を行う。軟骨組織及び骨組織の3×7mmコアをそれぞれのイヌの内側大腿顆から穿孔して除去し、移植物を軟骨修復部位内へと適合させる(例えば、図9に図示される通り)。動物は、移植後様々な時点で屠殺される。それは例えば、手術後4週間、8週間及び16週間である。
【0202】
1ヶ月後の分析は、移植物が関節軟骨内に十分組み込まれ、連続的な平滑面を創出していることを示している。移植物と周辺組織との間の境界面は依然として視認可能であるが、移植物の上層は既に侵入され、移植材料の部分的な分解が観察される。組織切片は、炭酸化水力学的骨格物質(carbonated hydroskeletal material)が脱灰されている空隙領域を明らかにする。
【0203】
2ヶ月後の検査は、生体材料の残遺物が表面関節軟骨上に依然として検出可能であるが、軟骨組織及び軟骨下組織の明確な組織化もまた見られることを示す。
【0204】
4ヶ月後までに、軟骨領域及び軟骨下領域に挿入された移植材料は、新しい軟骨組織及び骨組織に完全に置き換わった。軟骨組織と軟骨下組織との間の境界面に明確な痕跡線(tidemark)を視認可能であり、処置していない膝から採取される断面に観察されるのと類似した円柱状の軟骨細胞及び骨細胞が、軟骨下領域に見出される。
【実施例4】
【0205】
関節修復用移植ツール
関節及び/又は骨修復部位内への本発明のスカフォールドの挿入は、特殊なツールの使用を介するものであってもよい。本発明のスカフォールドの挿入において利用されるツールの実施形態の1つの概略例が、図10に示されている。ハーベスタ10−1は、ブレードエッジを含んでいてもよい交換可能なアダプタ10−4を有し、これは機械力の適用と共に軟骨及び骨の貫通を容易にする。このツールは、交換可能なパンチャーヘッド10−5を含んでいてもよい。このツールはさらに、器具が挿入される深さを示すのに役立ち、そのことによって骨内への挿入が深すぎることを回避する、或いは、適切な深さでの貫通が達成されなかったことを示す、インジケータ10−3を含んでいてもよい。
【0206】
図10Bは、ツールのまた別の実施形態を示し、ツールの長軸に沿った断面を示し、この実施形態において、ツールの長さに沿って延びる中空の存在を示す。この中空により、例えば、スカフォールドの挿入中にツールの安定化に役立つK−鋼線等のリーディングワイヤ(leading wire)、又は他のリーディング装置(leading device)を挿入することが可能である。
【0207】
図11が概略を示すのは、本発明のツールのまた別の実施形態であり、この場合には挿入具であって、これは図10Aに示されるハーベスタに挿入されてもよい。図11Aに示される挿入体11−2は、溝付きの中空11−3をさらに含み、これは中空内のスカフォールドの挿入を可能にする。挿入体末端部11−4は、その内部に含まれるスカフォールドの移植中に一切の組織を貫通しないように、平滑な形に修正されてもよい。移植物が挿入具内に充填されている際、プランジャー又はピストン11−1が移植物を挿入具の外部へと、修復部位内へと、例えば図10のハーベスタによりあけられた穴に押し出す。
【0208】
図12が概略を示すのは、本発明の調節可能な送達システムの実施形態の1つである。図12Aが示すのは、ツールの本体12−2内へのプランジャー又はピストン12−1の配置であり、このツールはジョイント部12−3の取付けを介して末端部から2mmで約50の角度が付き、このことは、関節鏡手術又は他の術式を行うことが侵襲性を最少にすることを意図する際に、例えば膝の内側等の到達が困難な領域への容易な到達を提供する。このジョイント部は、調節可能であるか、或いは異なる角度の部品と交換可能であり、例えば、12−4を示す図12B及び図12Cにおいて示されるように、交換可能なロッキングヘッドでありうる。図12Dが提供するのは、拡大された詳細図であり、ここで調節可能又は交換可能なジョイント部12−5は溝12−6に近接し、この溝は移植中に移植物を収納し、移植中に移植物の配置の同定を容易にしうるのであり、このジョイント部は、移植中の組織への外傷を最少化する丸味を帯びた末端部12−7を含んでいてもよい。
【0209】
また別の実施形態が、半弾性であるツールの軸13−1〜13−2に沿った断面図である図13Aに示される。弾性バネ、又は他の強力且つ弾性の材料13−3が、ピストンからの力をビットドリル又は挿入された移植物13−4へと伝える。
【0210】
挿入システムはシリンジのようなシステムである。挿入物は、先端部に充填され、ピストンが挿入物を外へと、ハーベスタにより前もって創出された穴(欠損)の中へと押し出す。
【0211】
本発明のいくつかの特徴が本明細書において例示され記述された一方で、多くの修正、置換、変更及び等価物を今や当業者が着想するだろう。したがって、かかる修正及び変更の全てを、本発明の真の趣旨の内に収まるものとして包含することを添付の請求項により意図していることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンゴを含んでなり、露出表面の第1の部分を少なくとも1つ含み、前記第1の部分が前記サンゴの露出表面の第2の部分の少なくとも1つに対して起立している軟骨修復用スカフォールドにおいて、前記第1の部分が、前記サンゴを軟骨修復部位内に厳密に配置及び固定する領域を少なくとも1つ含む、スカフォールド。
【請求項2】
サンゴの第1の部分の少なくとも1つが、前記第1の部分の長軸に沿った1又は2以上の中空に近接し、第2の部分の少なくとも1つが前記1又は2以上の中空と隣接する、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項3】
サンゴがサンゴの単一断片から切り出される、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項4】
サンゴがハマサンゴ属の種に由来する、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項5】
サンゴがコブハマサンゴである、請求項4に記載のスカフォールド。
【請求項6】
サンゴがアナサンゴモドキ属の種に由来する、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項7】
サンゴがアナサンゴモドキである、請求項6に記載のスカフォールド。
【請求項8】
サンゴがミドリイシ属の種に由来する、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項9】
サンゴがクロマツミドリイシである、請求項8に記載のスカフォールド。
【請求項10】
露出表面が、前記表面上の他の部分に対する複数の起立部分を含む、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項11】
複数の起立部分が、スカフォールドの長軸に対して約90度の角度で配置される、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項12】
第1の複数の起立部分が、表面上で互いに対して規則的な距離を置いて配置される、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項13】
第1の複数の起立部分が、表面上で互いに対して不規則な距離を置いて配置される、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項14】
第1の複数の起立部分が、表面上で互いに対して等しい高さを有する、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項15】
第1の複数の起立部分が、表面上で互いに対して等しくない高さを有する、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項16】
第1の複数の起立部分が、表面上で互いに対して等しくない幅を有する、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項17】
第1の複数の起立部分が、表面上で互いに対して等しい幅を有する、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項18】
第1の複数の起立部分が、表面の別個の領域内に配置され、前記別個の領域は前記表面の100%を占めない、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項19】
第1の複数の起立部分が、表面の別個の領域内に配置され、前記別個の領域が前記表面の50〜100%を包含する、請求項10に記載のスカフォールド。
【請求項20】
サンゴがスカフォールド全体を通して固形物である、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項21】
サンゴがポリマーコーティングを含む、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項22】
ポリマーコーティングが透過性である、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項23】
ポリマーコーティングが非連続的であり、任意で凝集体又は粒子の形である、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項24】
ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、絹、ヒアルロン酸、キトサン、及びこれらのあらゆる組合せを含む天然ポリマーを含む、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項25】
ポリマーが、合成生分解性ポリマーを含む、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項26】
合成生分解性ポリマーが、ポリ−乳酸、ポリグリコール酸を含むアルファ−ヒドロキシ酸、これらのエナンチオマー、これらのコポリマー、ポリオルトエステル、及びこれらの組合せを含む、請求項25に記載のスカフォールド。
【請求項27】
ポリマーコーティングが0.01μm〜2.0μmの厚さを有する、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項28】
ポリマーコーティングが2μm〜50μmの厚さを有する、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項29】
ポリマーコーティングが50μm〜1000μmの厚さを有する、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項30】
ポリマーコーティングが、サイトカイン、骨形成タンパク質(BMP)、キレート剤、細胞集団、治療化合物、又は抗生物質、又はこれらのあらゆる組合せを含む、請求項21に記載のスカフォールド。
【請求項31】
キレート剤がCa2+キレート剤を含む、請求項30に記載のスカフォールド。
【請求項32】
細胞集団が、間葉系幹細胞、軟骨細胞又は軟骨修復に関与する他の細胞又はこれらの組合せを含む、請求項30に記載のスカフォールド。
【請求項33】
治療化合物が、抗炎症性化合物、抗感染性化合物、成長因子、血管新生促進因子又はこれらの組合せを含む、請求項30に記載のスカフォールド。
【請求項34】
最適な深さ及び角度が、露出表面の部分による骨の貫通を提供し、結果として前記露出表面が軟骨修復部位に近接する骨髄内に挿入される、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項35】
サンゴに細胞集団が播種されている、請求項1に記載のスカフォールド。
【請求項36】
細胞集団が、間葉系幹細胞及び/又は軟骨細胞及び/又は軟骨修復に関与する他の細胞を含む、請求項35に記載のスカフォールド。
【請求項37】
請求項1に記載のスカフォールドを被験者の軟骨修復部位内に移植することを含む軟骨修復の誘導又は亢進方法であって、前記スカフォールドの領域が骨を貫通し、結果として前記領域が前記軟骨修復部位に近接する骨髄内に挿入される、方法。
【請求項38】
細胞集団のスカフォールド上における接着、増殖又は分化、又はこれらの組合せを促進する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
細胞集団が、間葉系幹細胞、軟骨細胞又は軟骨修復に関与する他の細胞又はこれらの組合せを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
被験者が軟骨欠損又は軟骨障害に苦しむ、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
被験者がヒト被験者である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
被験者が動物被験体である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
軟骨欠損又は軟骨障害が、全層関節軟骨欠損若しくは部分的関節軟骨欠損;変形性関節症、骨軟骨症、虚血壊死、関節欠損又は外傷、スポーツ、病気若しくは反復運動によりもたらされる欠損を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
スカフォールドが、円錐、鋲、ネジ、円柱、長方形棒、皿、円盤、角錐、粒、球又は立方体を含む形状を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
軟骨修復を補助する器具であって、
・請求項1に記載のスカフォールドを軟骨修復部位で最適な深さへと導く、請求項1に記載のスカフォールドを軟骨修復部位で最適な角度へと導く、或いはこれらの組合せである、少なくとも1つのツール;
・軟骨修復部位内への移植後に請求項1に記載のスカフォールドを処理する、少なくとも1つのツール;
・任意で、請求項1に記載のスカフォールドによる骨の貫通と、軟骨修復部位に近接する骨髄内への前記スカフォールドの挿入とをもたらす、少なくとも1つのツール;
・任意で、請求項1に記載のスカフォールドを軟骨修復部位で放出し、このことによって、前記スカフォールドの軟骨修復部位内への配置後に、前記スカフォールドから分離されてもよい、少なくとも1つのツール;
を含む器具。
【請求項46】
スカフォールドの一部がツールに適合する領域を含む、請求項45に記載のツール。
【請求項47】
領域が、スカフォールドの軟骨修復部位内への配置後にツールから分離する、請求項46に記載のツール。
【請求項48】
スカフォールドからのツールの分離が、UV光活性化分離、レーザー活性化分離、ねじり依存分離又は化学的活性化分離又はこれらの組合せを含む、請求項47に記載のツール。
【請求項49】
ツールが、角度の付いた、曲がった或いは曲げることができる第1の部分を含む、請求項45に記載のツール。
【請求項50】
請求項1に記載のスカフォールド、請求項45に記載のツール、及び組織修復における前記スカフォールドの利用のための指示説明書を含む、軟骨修復用キット。
【請求項51】
スカフォールドが異なる大きさ及び形状を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
軟骨修復部位に応じたスカフォールド、器具のセット、及び指示説明書を含む、請求項50に記載のキット。
【請求項53】
スカフォールドが、サンゴ粒子を内包するポリマー鋳型を含む、組織修復用スカフォールド。
【請求項54】
ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、絹、ヒアルロン酸、キトサン、及びこれらのあらゆる組合せを含む天然ポリマーを含む、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項55】
ポリマー鋳型が弾力性を有する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項56】
ポリマー鋳型が硬質性である、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項57】
鋳型が、移植部位と接触するスカフォールドの表面積を最大化する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項58】
ポリマーが、軟骨形成及び/又は軟骨修復を亢進する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項59】
サンゴ粒子が、1〜10μm又は5〜20μm又は10〜50μmの大きさにまで微粒子化される、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項60】
サンゴがハマサンゴ属の種に由来する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項61】
サンゴがコブハマサンゴである、請求項60に記載のスカフォールド。
【請求項62】
サンゴがアナサンゴモドキ属の種に由来する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項63】
サンゴがアナサンゴモドキである、請求項62に記載のスカフォールド。
【請求項64】
サンゴがミドリイシ属の種に由来する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項65】
サンゴがクロマツミドリイシである、請求項64に記載のスカフォールド。
【請求項66】
ポリマーが透過性である、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項67】
ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、絹、ヒアルロン酸、キトサン、及びこれらのあらゆる組合せを含む天然ポリマーを含む、請求項66に記載のスカフォールド。
【請求項68】
ポリマーが合成生分解性ポリマーを含む、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項69】
合成生分解性ポリマーが、ポリ−乳酸、ポリグリコール酸を含むアルファ−ヒドロキシ酸、これらのエナンチオマー、これらのコポリマー、ポリオルトエステル、及びこれらの組合せを含む、請求項68に記載のスカフォールド。
【請求項70】
ポリマーコーティングが、0.01μm〜2.0μmの厚さを有する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項71】
ポリマーコーティングが、2μm〜50μmの厚さを有する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項72】
ポリマーコーティングが、50μm〜1000μmの厚さを有する、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項73】
ポリマーが、抗炎症性化合物、抗感染性化合物、成長因子、血管新生促進因子又はこれらの組合せを含む、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項74】
塗布剤(pasting agent)を含む、請求項53に記載のスカフォールド。
【請求項75】
塗布剤剤が、天然若しくは架橋ヒアルロン酸(HA)、コラーゲン又はフィブリノゲンを含む、請求項74に記載のスカフォールド。
【請求項76】
サイトカイン、骨形成タンパク質(BMP)、キレート剤、細胞集団、治療化合物、又は抗生物質、又はこれらのあらゆる組合せを含む、請求項53に記載のスカフォールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−509128(P2012−509128A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537009(P2011−537009)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001092
【国際公開番号】WO2010/058400
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511110809)カルティヘール(2009)エルティーディー. (1)
【氏名又は名称原語表記】CARTIHEAL(2009)LTD.
【Fターム(参考)】