説明

組電池充放電装置

【課題】組電池と充放電用の相手側端子を取り付けたソケット間接続部を一つの通い箱に収納し、充放電作業の効率化を図る。
【解決手段】組電池10とソケット間接続部22を収納した通い箱30と、組電池のリード線の差し込み端部20と、通い箱に設けられ、リード線の差し込み端部に対応した位置に設けられたソケット間接続部の差し込みソケット21と、通い箱の両側壁に設けられた正極端子23および負極端子24と、正極端子および負極端子に近接してこれと接離可能に設けられかつ放電用の電子負荷50或いは充電用の電源あるいは充放電可能な試験装置と通電して設けられている正極および負極の接触端子25,26と、この正極および負極の接触端子を通い箱の両側壁に設けた正極端子および負極端子に接触および非接触させる端子押し込み治具27と、組電池とソケット間接続部を収納した通い箱を搬送する搬送レール40とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアルカリ二次電池などの組電池の充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明の一例として用いるニッケル・カドミウム電池の製法は例えば以下の通りである。電解法または化学含浸法により、多孔性ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを充填した公知の焼結式ニッケル正極を作製する。同様に電解法または化学含浸法により、多孔性ニッケル焼結基板に水酸化カドミウムを充填した公知の焼結式カドミウム負極を作製する。
【0003】
これらの正・負極板を電気絶縁性の例えばポリオレフィン製セパレータを介して渦巻状に捲き回し巻回極板群を作製する。この極板群を円筒缶に挿入し、これにアルカリ電解液を注入して蓋を施し封口して密閉形の電池を作製する。
【0004】
その後、この電池に活性化充電(初充電)を行いセル電池とする。次にこのセル電池をNi端子で複数個直列に接続し両端から導出した正・負極のリード線にコネクタを取り付けて組電池とする。この組電池に出荷検査を行い合格したものを梱包して出荷する。
【0005】
この出荷検査は電池の種類や出荷先によって異なるが、一般的には所定のレートで放電を行い規定の時間に満たなかったものや放電末期の電圧が規定の値に満たなかったものを不良品として選別する。従来、こうした放電作業での結線作業は充電工程の作業者が担当するが、少数ロットのときは組み立て工程の作業者がラインから離れて充電工程を兼務して行なうこともあった。
【0006】
図3(A)は、従来の組電池の放電装置の平面を示す説明図、図3(B)はその装置の側面図である。図3(A)において1は組電池である。2は組電池1のリード線である。組電池1は通い箱3に5個入れられて搬送レール4に載せて矢印方向に作業者が移動させる。作業者によって移動された組電池1は通い箱2個分の10個が充電棚5に並べられる。その後、充電棚5の上の組電池1はそのリード線の差し込み端部6を電子負荷7の差し込みソケット8に1個ずつ接続して放電を行なう。この状態を示したのが図4(A)である。また、その側面を示したのが図4(B)である。その後、電池に充電を行うには先の電子負荷との接続を1個ずつ外して、搬送レール上を移動して電源のある位置まで移動する。そこで新たに電源に接続し直して充電を行なっていた。従って、結線作業に時間がかかり作業能率の低下が問題とされていた。
【0007】
充放電装置の先行技術としては、機枠にフローティングして支持されたトレイベースと、トレイ内の電池上方から押接して支持する押接部を備えた上ベースと、トレイ内の電池に下方から押接する押接部を備えた下ベースと、トレイを交換セットする開き位置とトレイ内の電池に下方から押接する閉じ位置との間で昇降駆動する昇降機を備えた電池充放電検査装置が公知である。
【特許文献1】特開昭2000−299135号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の先行技術の電池充放電検査装置は単電池1個1個の上部と下部からプローブを接触させて充放電を行うものである。本発明のように単電池を複数個直列に接続して組電池として、この両端から正・負極のリード線を導出してその先端にコネクタでまとめたものに対して、コネクタに対応するソケットを使用して充放電することができないという問題があった。
【0009】
この発明は、組電池と充放電用の相手側端子(ソケット)を取り付けたソケット間接続部を一つの通い箱に収納し、この通い箱を搬送レール上で所定の位置まで移動させ、この位置で通い箱の両側に設けられた箱側端子に、電子負荷或いは電源と接続された端子を離接可能とすることで組電池の充放電を行い、充放電作業の効率化を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、組電池とソケット間接続部を収納した通い箱と、組電池から導出した正極および負極のリード線をコネクタでまとめて所定本数としたリード線の差し込み端部と、上記の通い箱に設けられ、前記リード線の差し込み端部に対応した位置に設けられたソケット間接続部の差し込みソケットと、通い箱の両側壁に設けられ、ソケット間接続部の差し込みソケットと接続している箱側正極端子および箱側負極端子と、上記箱側正極端子および箱側負極端子に近接してこれと接離可能に設けられかつ放電用の電子負荷或いは充電用の電源あるいは充放電可能な試験装置と通電して設けられている正極および負極の接触端子と、正極および負極の接触端子を通い箱の両側壁に設けた正極端子および負極端子に接触および非接触させる端子押し込み治具と、組電池とソケット間接続部を収納した通い箱を搬送する搬送レールとからなる組電池充放電装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、組電池と充放電用の相手側端子(ソケット)とを接続したままの状態で一つの通い箱に収納し、これを搬送レール上で所定の位置まで移動させ、この位置で通い箱の両側に設けられた端子に電子負荷或いは電源と接続させて組電池の充放電を行うので充放電作業の効率化を著しく向上することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(A)は、この発明の一実施例になる組電池の充電装置の平面を示す説明図、図1(B)はその装置の側面図である。図1(A)において10は組電池で、組電池10から導出された正極および負極のリード線を先端部のコネクタでまとめて所定の本数としてリード線の差し込み端部20とする。組電池10は所定の数(図1では5個)が通い箱30にセットされている。また、通い箱30には組電池10のリード線の差し込み端部20と同数の差し込みソケット21を有するソケット間接続部22が、リード線の差し込み端部20と対峙させてセットされている。また、通い箱30のソケット間接続部22の両端には箱側正極端子23と箱側負極端子24が取り付けられている。
【0013】
こうした通い箱30は搬送レール40の上に載置されて矢印方向に移動して図示しない電子負荷と接続されている接触端子25,26のある位置(P)まで移動する。その位置で組電池10から導出されたリード線の差し込み端部20の各々を対向する差し込みソケット21に差し込んで接続する。なお、最初から通い箱30の差し込みソケット21に、組電池10から導出されたリード線の単部20を差し込んでも良い。
【0014】
電子負荷50と接続されている接触端子25,26は金属板で、通い箱30の箱側正極端子23および箱側負極端子24と面接触が可能なように近接した位置に取り付けられている。27は負荷端子押し込み冶具で、図示しないピストンロッドに接続されている。ピストンロッドが押し出されることによって、接触端子25,26は通い箱30の箱側正極端子23と箱側負極端子24の方向に押し付けられる。
【0015】
これによって、接触端子25,26は、箱側正極端子23と箱側負極端子24と面接触して組電池の放電が行われる。こうした放電は図2(A)に示すように、搬送レールに複数の通い箱を載せてそれぞれを複数の電子付加のある位置に移動してこれらを一度に放電することもできる。図2(B)は図2(A)に示す装置の側面図である。
【0016】
また、この組電池に充電を行うには、組電池を移送レール上でさらに先の図示しない電源を設置した位置まで移動する。この位置で図示しない電源と接続した負極端子25,正極端子26を通い箱30の箱側正極端子23,箱側負極端子24の方向に押し付けて接触させ組電池を充電させる。この場合も放電の場合と同じように搬送レールに複数の通い箱を載せてそれぞれを複数の充電部に移動してこれらを一度に充電することもできる。
【0017】
あるいは、放電を終えた組電池が入った通い箱をそっくり別のラインに移して、そこに備えた図示しない電源と接続している負極端子,正極端子を通い箱の箱側正極端子と箱側負極端子と接続することによって組電池をまとめて充電することもできる。
【0018】
また、ここでは放電と充電を別の場所で行っているが、電子負荷の近くに電源を設置して同じ場所で行うこともできる。さらに、ここでは電子負荷で放電を電源で充電を行っているが、充放電可能な試験装置にすれば放電後に接続を変えることなく充電を行うことができる。
【0019】
図5は図1と異なった方法で負極端子,正極端子を通い箱30の箱側の正極端子23,負極端子24と接触させるもので、図示しない電子負荷と接続されている負荷接触板40,41が、通い函30の側面の取り付けられた箱側正極通電板43,箱側負極通電板44と蝶番で接続されていて、これを図示するようにピストンロッド45,45で押圧・引き離して箱側正極通電板43,44と接続あるいは遮断するようにしたものである。
【0020】
製品の出荷検査は、一例として3CA(Cは定格容量,Aはアンペアで定格電流の3倍の電流値を示し、ここでは12Aをいう。)10分の放電を行い、その後規定の電圧に満たなかったものを除いて放電量に対して120%の回復充電を行なうものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(A)はこの発明の1実施例になる組電池の充放電装置の上面図、図1(B)はその側面図である。
【図2】図2(A)はこの発明の一実施例になる組電池の充放電装置で、搬送レールの上には多数の通い箱を載置して一度に多数の組電池を放電する状態を示した説明図、図2(B)はその側面図である。
【図3】図3(A)は従来の組電池の充放電装置の上面図、図3(B)はその側面図である。
【図4】図4(A)は組電池を電子負荷に接続した従来の状態を示す組電池の上面図、図3(B)はその側面図である。
【図5】図5は、この発明の他の実施例になる通い箱の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10‥‥組電池、20‥‥リード線の差し込み端部、30‥‥通い箱、21‥‥差し込みソケット、22‥‥ソケット間接続部、23‥‥箱側正極端子、24‥‥箱側負極端子、40‥‥搬送レール、25,26‥‥接触端子、50‥‥電子負荷、27‥‥負荷端子押し込み治具、40‥‥搬送レール,45‥‥ピストンロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池とソケット間接続部を収納した通い箱と、組電池から導出した正極および負極のリード線をコネクタでまとめて所定本数としたリード線の差し込み端部と、上記の通い箱に設けられ、前記リード線の差し込み端部に対応した位置に設けられたソケット間接続部の差し込みソケットと、通い箱の両側壁に設けられ、ソケット間接続部の差し込みソケットと接続している箱側正極端子および箱側負極端子と、上記箱側正極端子および箱側負極端子に近接してこれと接離可能に設けられかつ放電用の電子負荷或いは充電用の電源あるいは充放電可能な試験装置と通電して設けられている正極および負極の接触端子と、正極および負極の接触端子を通い箱の両側壁に設けた正極端子および負極端子に接触および非接触させる端子押し込み治具と、組電池とソケット間接続部を収納した通い箱を搬送する搬送レールとからなる組電池充放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−140881(P2010−140881A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318876(P2008−318876)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】